当科にて, 1982年12月より1990年9月まで, 局所温熱化学療法によって27患者32腫瘍が治療された.32腫瘍の内訳は, 局所再発腫瘍19例, 肝転移7例, 肺転移2例, 悪性リンパ腫2例, 腹膜播種2例であり, 全例, 化学療法単独では効果を期待し難い局所進行例, あるいは放射線照射後または化学療法施行後の局所再発等の難治性腫瘍であった.8MHzRF誘電または430MHzマイクロ波加温装置を用い, 週1~2回, 1回当り30~60分の温熱治療を合計2~15回 (平均6.4±3.8回) 施行した.このうち1~6回 (平均3.0±1.5回) の温熱治療では, 加温直前または加温と同時に制癌剤を静注もしくは動注された.32腫瘍の一次効果は, CR2例 (6%), PR13例 (69%), NC11例 (34%), PD6例 (19%) であり, 一次効果の良好な症例程, 3ヵ月後の局所効果も良好であった.一次効果がCRまたはPRであった患者の生存率は, NCまたはPDであった患者の生存率より有意に高く, 腫瘍の深さ, 腫瘍内平均温度, 腫瘍内最低温度, 有効加温回数, 併用された制癌剤の種類数が, 一次効果に影響を与えた.また放射線治療や化学療法の既往のある病変に対しても, 各々11/15 (73%), 12/26 (46%) に, さらに以前に使用された制癌剤と同種の薬剤を再使用した場合5/13 (38%) に, 異種の薬剤を使用した場合7/13 (54%) に, CRまたはPRが得られた.以上より, 放射線治療を適用し難い症例や化学療法による制御の困難な症例に対しても局所温熱化学療法は適応になり得ると考えられる.
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