ネコおよびウサギを用いて,新しく合成されたbenzodiazepinooxazol誘導体, CS-370の中枢神経系に対する作用を検討した.また,その効果をdiazepamおよびchlordiazepoxideと比較した.
1. CS-370は10~20mg/kgの経口投与で, 20~30
m後から,ネコ(慢性)およびウサギ (gallamine, 不動化, encéphale isolé, 慢性)の脳波を徐波化傾向にさせた..diazepamも質的に同様の効果を示した.
2. 後部視床下部および中脳網様体の高頻度刺激による皮質覚醒反応に対して,CS-370とdiazepam.は20mg/kgまで影響しなかった.
3. CS-370の20mg/kgはaugmenting responseの振幅を増大させたが, recruiting responseに対しては, 40mg/kgまで無効であった. diazepamも同様であった.
4. 扁桃核後発射の持続時間は, CS-370, 10mg/kg投与の30
m後には延長し, 60
m以降は短縮する二相性の変化を示した.これに対してdiazepamの作用は短縮方向のみであった.
5. 後部視床下部の高頻度刺激による瞬膜収縮反応は, CS-370, 2mg/kgの静注または20mg/kgの経口投与によって抑制された.節前線維刺激またはnoradrenalineの静注による収縮に対して, CS-370は影響をおよぼさなかった. chlordiazepoxideの抑制効果はCS-370よりも弱かった.
6. 坐骨神経刺激による脳内誘発電位のうち,中心灰白質,赤核および黒質内の電位はCS-370, 2mg/kgの静注によって抑制されたが,中脳網様体および視床正中核の電位は影響されなかった.このうち,中心灰白質の抑制が最も著しかった.
7. 中心灰白質内で記録した誘発電位に対して, CS-370, 2mg/kgの静注は坐骨神経,迷走神経および後部視床下部刺激によるものを抑制し,外側視床下部刺激による電位を増強した.しかし,外側扁桃核および中隔野刺激による誘発電位には影響しなかった.
8. CS-37, 10mg/kgの腹腔内投与では,下位脊髄ネコの単およぴ多シナプス反射に変化見られなかったが,更に20mg/kgを追加することにより両者の振幅は若干抑制された.しかし,この量でも後根電位には影響が認められなかった.
9. Sherrington型の除脳固縮は, CS-370, 10mg/kgの腹腔内投与によって, 40
m後から著明に抑制された. diazepamも5mg/kgで同様の効果を示したが, chlordiazepoxideは40mg/kgまで無効であった.
10. CS-370, 10mg/kgの腹腔内投与によって,除脳固縮時のγ-運動二ューロンの自発性発射は消失した.その効果は,不規則な放電パターンを有する線維において,より早く現われた.
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