群馬県主要9病院における1994年度分離病巣由来細菌1, 794株の疫学情報を収集し, 分離菌種および14薬剤の耐性について, 特にメチシリン耐性
Staphylococcus aureus (MRSA), ペニシリン耐性
Streptococcus pneumoniae (PRSP) に注目し, 過去5年間と比較した。
1.各種検査材料から分離された菌株の分離頻度は,
S. aureus (22.3%),
Pseudomonas aeruginosa (11.8%), コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (CNS: 8.4%),
Escherichia coli (6.4%),
Haemophilus influenzae (5.4%),
Enterococcs faecalis (5.4%) の順であった。昨年比で, 外来の
H. influenzaeが3%, 入院の
S. aureusが5%増加していたが, その他の菌種の分離頻度については著明な年次変化はみられなかった。
2.
S. aureusについて薬剤耐性菌分離頻度をみると, MRSAはペニシリン系, セフェム系, アミノ配糖体系, マクロライド系, テトラサイクリン系, 新キノロン系薬等に75%以上が多剤耐性を示し, メチシリン感受性
S. aureus (MSSA) ではペニシリン系薬に対し耐性を示すものが多いが, その他の抗生物質では耐性菌の分離頻度は15%以下と少ない。ポリペプチド系のvancomycin (VCM) 耐性菌は認められなかった。
3.1つの診療科においてMRSAの多い (10株以上) 施設は, ベッド数の多い施設の内科に集中していた。
4.
S. pneumoniaeの感受性分布はcefaclor (CCL) が6.25μg/mlを境に明らかな2峰性の分布を示すのに対し, benzylpenicillin (PCG), ampicillin (ABPC), piperacillin (PIPC) では感受性と耐性の境は不明確であった。CCLのMICが12.5μg/ml以上の株をPRSPとした場合, 他のβ-lactam剤に対しては, 一濃度ディスク法の阻止円直径がPCG:<30mm, ABPC:<32mm, PIPC:<29mmでは明らかなPRSPと判定できた。
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