近年, 透析療法の著しい進歩や, エリスロポエチンの使用によるquality of lifeの向上とともに, 血液透析患者の出産例の報告が散見されるようになった. 今回, 我々は過去6年間に2例の慢性血液透析患者および1例の保存期腎不全患者の出産を経験し, 妊娠経過に及ぼす因子について検討したので報告する.
症例1は23歳, 透析歴7年, 子癇発作と思われる痙攣発作にて妊娠20週当院入院し, 妊娠34週で帝王切開にて870gの女児を出産した. 児はApgar score 8-10, 奇形等は認められなかった. 症例2は24歳, 透析歴1.5年, 妊娠後期に高血圧症の合併が見られたが, 39週で経膣分娩にて2856gの男児を出産した. 児はApgar score 9-10, 狭頭症を認めたが他に奇形は見られなかった. 症例3は38歳, 慢性腎不全 (Cr 4.2mg/d
l, BUN 54mg/d
l, 24hr Ccr 15.6
l/日), 高血圧症, 貧血にて当院入院. 38週で帝王切開にて2202gの女児を出産した. 児はApgar score 9-10, 奇形等は認められなかった.
慢性腎不全患者の出産例の合併症には種々の報告があり出産時はもとより妊娠中も細心の注意が必要である. 特にBUN値を60mg/d
l以下に保つべく食事療法, 頻回の透析を行うことや貧血, 血圧のコントロール等が重要と考える.
また, 妊娠経過や奇形の危険性を回避するために, 計画的な妊娠, 出産を行うことが今後の課題であると思われた.
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