重度脳障害児9例を対象に経外耳道的に蝸電図法で蝸牛神経複合活動電位 (AP) を記録し, 聴性脳幹反応 (ABR) と比較した.
臨床的に聴覚の反応が鈍いながらも観察された3症例はABRもAPもともに確認された.臨床的に聴覚的反応がなかった6例のABRは無反応で, このうち4例はAPも無反応で蝸牛, 蝸牛神経レベルでの障害が推定された.2例は低振幅, あるいは幅広い波形のAPが記録された.
特に無酸素脳症の2例でABRはいずれも無反応であったが1例にはAPが観察され, 1例ではAPも無反応であった.すなわちABRが無反応であっても異なったレベルでの障害を示すものがあることが非侵襲的, 臨床神経生理学的に証明された.
蝸電図はABR無反応で高音圧の音に反応する重度脳障害児の病態解明に役立つものと考えられる.
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