ヘルニオグラフィーは,腹腔造影によってヘルニア嚢を描出する安全かつ簡便な検査法であり,従来理学所見のみで診断されていた鼠径部ヘルニアを客観的に診断することができる.われわれは,なんらかの鼠径部愁訴がある患者57症例に対して本法を施行し,以下の結果を得た.
理学的にヘルニアと診断された症例においては,全例で病型診断が可能であった.理学所見のはっきりしない鼠径部愁訴がある症例の54%にヘルニアを認めた.臨床的には一側性のヘルニアであっても高頻度に対側ヘルニアを認め,全体として85%の症例が両側性であった.一側において,複数のヘルニアの重複発生が27%に認められた.
ヘルニオグラフィーは, (1)鼠径部ヘルニアの病型診断, (2)対側や同側に合併しているヘルニアの存在診断, (3)不顕性のヘルニアの診断などが可能であり,成人鼠径ヘルニアの臨床において非常に有用である.
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