本論文は,学童期小児における下顎底部皮質骨の成長発育過程の流れを民族・食生活・風土の異なる日本・中国の2国間で比較検討する目的で,九州歯科大学附属病院小児歯科外来と北京医科大学口腔医学院小児牙科外来を受診した正常咬合を有する9歳児から12歳児までの小児80名を対象に,パノラマエックス線写真上で下顎底部皮質骨の計測を行い,拡大率に従い,補正後次のような結果を得た.
1.下顎底部皮質骨の厚さの平均値は日本人小児では,9歳2.24±0.19mm,10歳2.30±0.41mm,11歳2.41±0.32mm,
12
歳
2.51±0.47mm,中国人小児は,9歳2.67±0.21mm,10歳2.90±0.29mm,11歳2.90±0.33mm.,
12
歳
2.98±0.30mmであった.男女別にみた下顎底部皮質骨の厚さの平均値は,日本人小児では,男児9歳2.26±0.15mm,10歳2.10±0.26mm,11歳2.44±0.41mm,
12
歳
2.51±0.57mm,女児9歳2.21±0.24mm,10歳2.50±0.45mm,11歳2.38±0.26mm,
12
歳
2.50±0.41mm,中国人小児では,男児9歳2.75±0.22mm,10歳2.84±0.34mm,11歳2.96±0.44mm,
12
歳
2.75±0.14mm,女児9歳2.59±0.18mm,10歳2.95±0.25mm,11歳2.84±0.20mm,
12
歳
3.22±0.21mmであった.左右別の下顎底部皮質骨の厚さの平均値は,日本人小児では,左側9歳2.19±0.18mm,10歳2.28±0.36mm,11歳2.50±0.26mm,
12
歳
2.53±0.45mm,右側9歳2.28±0.31mm,10歳2.32±0.54mm,11歳2.32±0.46mm,
12
歳
2.49±0.59mm,中国人小児では,左側9歳2.56±0.32mm,10歳2.76±0.32mm,11歳2.86±0.44mm,
12
歳
2.96±0.37mm,右側9歳2.78±0.36mm,10歳3.03±0.30mm,11歳2.94±0.42mm,
12
歳
3.00±0.36mmであった.
2.t検定の結果,男女間の下顎底部皮質骨の厚さは,日本人小児では,9歳から12歳まで有意差は認められなかったが,中国人小児の12歳で,女児が男児に有意に高値を示した.年齢間では日本人小児では9歳から12歳いずれの年齢間でも有意差は認められなかった.中国人小児では,9歳・12歳間において年齢の高い後者が前者に対し有意に高値であった.左右間の有意差は,両国小児のいずれの年齢でも有意差は認められなかった.
3.両国間の下顎底部皮質骨の厚さのt検定の結果,中国人小児が日本人小児比べて9歳,10歳,11歳(p<0.01),
12
歳
(p<0.05)と有意に高値であった.
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