摂食障害患者でのパーソナリティ障害併発は治療を困難にする因子に挙げられやすい.効率的な治療進行のためにはパーソナリティ傾向を注視することが肝要である.病院機能をもつ矯正施設である当科では重症摂食障害例の移入が年々増加しているが,社会で治療に定着できず,また過去にパーソナリティ障害と診断されていた症例が多い.治療開始時の患者の多くは身体危機状態にもかかわらず拒絶や衝動行為が目立つ.初期にパーソナリティ障害に該当しても治療経過で表出が著しく変化することも多く,摂食障害自体にも対人関係上の問題や自我確立不全性の特徴はあり,パーソナリティ障害の診断には長期経過を追う必要があるといえる.当科の過去4年63名あまりの摂食障害症例では82%が経過中に何らかのパーソナリティ障害の基準に該当した.また犯罪群別で生活歴やパーソナリティ傾向,嗜癖傾向,臨床像に大きな隔たりがあるが,当科ではそれを衝動性と強迫性から検討している.身体危機からの一貫した行動療法的治療環境下で,摂食障害患者がどのように観察され治療されるのかについて述べ,従前の報告と比較し考察する.
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