【目的】
鉛は蓄電池・合金等の原料として幅広く使用されているが、環境中からの鉛の過剰曝露は生体において様々な機能障害を引き起こすことが知られている。代表的な毒性として造血機能障害があり、赤芽球細胞において 0.1-1 mMでヘモグロビン合成に必要なδアミノレブリン酸デヒドラターゼを阻害することが報告されている。その他の毒性として神経毒性が知られているが、その詳細なメカニズムは明らかにされていない。そこで本研究では、平常時のカルシウムイオン透過性を決定する
AMPA
型グルタミン酸受容体
の GluR2 サブユニット発現に鉛が影響を与えている可能性を考え、検討を行った。
【方法】
胎生 18 日齢ラット(Slc:Wistar/ST)より調製した大脳皮質初代培養細胞に、0.1-100 uM の酢酸鉛を9日間曝露し、タンパク質の発現を調べた。 GluR2 タンパク質の発現変動は特異的抗体を用いた western blotting により評価した。また、 5-20 uM で細胞生存率の評価を行った。
【結果及び考察】
5 uM より濃度依存的に GluR2 の発現減少が認められた。さらにこの発現減少に伴い、細胞生存率の低下が認められた。GluR2 サブユニットは AMPA 受容体のカルシウム透過性決定因子であり、 GluR2 を含む AMPA 受容体は通常カルシウムイオンの細胞内流入を阻害している。 GluR2 発現が減少すると GluR2 を含む AMPA 受容体の割合が減少し、カルシウム透過性が亢進する結、神経細胞死が惹起されることが報告されている。以上より、鉛の神経毒性メカニズムに GluR2 発現減少が関与している可能性が示唆された。
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