明治神宮境内林の樹木根辺土壌より得られた、
Xiphinema5種の形態に関する知見を報告する。
X.incognitum LAMBERTI et
BLEVE
- ZACHEO, 1979は、日本からイギリスへ持ち込まれた盆栽の樹木数種の根辺より分離された標本を基に原記載されたが, これまで日本より
X.americanum COBB, 1913として報告されていたものと, 計測値・形態的特徴ともによく一致する。本種は世界各地より
X.americanum として記載・報告された集団からは明らかに形態的に区別され, 本種を独立種としたLAMBERTI &
BLEVE
-ZACHEOの措置は妥当であると考えられる。
X.chambersi THORNE, 1939は, これまで北アメリカのみから知られていたが, 幼虫期の形態が初めて記載された。その形態計測値と尾部の形態とから, 本種は幼虫期を3つしか持たないことが強く示唆される。
X.simillimum LOOF et YASSIN, 1971はこれまでコンゴ, スーダンのみから少数個体しか知られていない。最終期幼虫が初めて記載されたが, これまで検出例・検出個体数ともに少ないため, 本種の種内変異に関する知見は乏しい。
X.bakeri WILLIAMS, 1961は, これまで北アメリカ・朝鮮・日本のみから知られるが, 群馬県赤城山天然林数箇所からも検出され, 日本に土着の種と見られる。本種は原記載において, 雌が2対の尾乳頭をもつことが
X.index THoRNE et ALLEN, 1950との識別点の1つとされたが、尾乳頭の数には変異が認められた。
X.insigne LOOS, 1949は, 中近東から南アジアを通り東アジアまで分布する種であると考えられるが、日本の集団は, 極めて大きな体長・V値をもつことが特徴的である。
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