糖尿病と強い関連を有する形質との間の遺伝的関係を分析することは, 糖尿病発症の遺伝機構の解明のみならず, 糖尿病病態あるいは合併症の出現などの予後の予測にも極めて重要な知見を与えてくれる.
著者らは, 上記の点を解明するため, まず, 予備的研究として, IDDM81人, NIDDM28人についてPnlcnyl-thio-carbanlidc (PTC) の味覚反応について調査を行った.
その結果は,(1) IDDMおよびNIDDMいずれの群でも男女間のPTC味盲頻度の差はみられなかった. (2) 調査1時年齢および発症年齢をそれぞれ16歳までの群と16歳以上の群に分け, PTC味盲頻度を比較したところ, IDDM群ではいずれも16歳以上の群の方が16歳までの群に比べ高く, 男ではP<0.001, 女では0.05<p<0.10水準で統計的に有意である. (3) PTC味盲頻度について一般集団 (P
G=0.1276±0.0082) とIDDM群 (P
I=0.1235±0.0366) とNIDDM群 (P
N=0.5000±0.0945) との間で比較したところ, P
GとP
Iとの問では差がみられないが, P
GとPNおよびP
IとP
Nとの間ではそれぞれ統計的有意差がみられた.
以上の結果は, NIDDMとPTC味盲との問に強い関連を示したが, 病因との関係は, 多面発現, 連鎖不平衡およびepistasisの解析や, 臨床遺伝小上化学的解明が必要であり, 今後さらに調査例数を増して詳細に検討したい.
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