目的:脊椎関節炎(SpA)の早期診断と活動性の評価に腱付着部炎の超音波検査が用いられている.当科では下肢腱付着部炎の超音波検査スコアであるGlasgow ultrasound enthesitis scoring system(
GUESS
)を用いて,スクリーニング,活動性の評価を行っている.
GUESS
では腱肥厚の閾値が設定されているが,日本人における腱の厚さの正常値が不明である.日本人における大腿四頭筋腱付着部,膝蓋腱付着部(膝蓋骨側,脛骨側),アキレス腱付着部,足底腱膜付着部の腱の厚さの正常値を明らかにすることを目的とした.
対象と方法:2014年6月から2015年5月の間に,SpAの
GUESS
による評価を目的として超音波検査を施行した77名(770部位)の中で,圧痛のない部位を対象とした.炎症性腸疾患,乾癬,SpAや関節リウマチなど膠原病,X線靭帯骨棘を認める症例を除外した.
結果と考察:大腿四頭筋腱付着部41膝,膝蓋腱膝蓋骨付着部では58膝,膝蓋腱脛骨腱付着部53膝,アキレス腱付着部24足,足底腱膜付着部39足が健常群となった.大腿四頭筋腱付着部の厚さは,5.11 mm(95%CI 4.88‐5.34,p<0.01),膝蓋腱膝蓋骨付着部の厚さは,3.25 mm(95%CI 3.08‐3.43,p<0.01),膝蓋腱脛骨腱付着部の厚さは,3.84 mm(95%CI 3.64‐4.05,p<0.01),アキレス腱付着部の厚さは,4.16 mm(95%CI 3.90‐4.43,p<0.01),足底腱膜付着部の厚さは,2.69 mm (95%CI 2.46‐2.92,p<0.01)だった.
結論:本調査結果は目安の1つとして有用であるが,日常生活の活動性,体格,疾患,X線靭帯骨棘など腱肥厚に影響を及ぼす因子を考慮し,日本人における正常値を検討する必要がある.
抄録全体を表示