日本の建設作業現場において面接調査, 質問紙調査を行い, 現場の安全風土の潜在構造を把握するとともに, 現場の安全風土と作業員の安全意識, 所属
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の安全レベルとの関係を明らかにすることを試みた. 自記式質問紙調査票を作成し, 大手建設
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の建設現場で働く本社の所長, 現場職員300人, および協力会社の職長300人に配布し, 496部を回収(回収率82.7%)した. 作業現場の風土に関して因子分析(最尤推定法, 斜交回転)を行い, 8因子解を採択した. そのうち, 「厳しい上下関係」の因子スコアは, 「和や協調を重視」や「協力し合う」などの因子スコアと負の相関を示しており, 厳しい上下関係と作業員同士が協調, 協力する風土とは相容れないものであることが示された. 職長の安全意識についても同様に因子分析(最尤推定法, 斜交回転)を行い, 「周囲の不安全行動も許さない厳しい態度」など安全を重視する意識(正の安全意識)4因子と「工程重視」, 「他人ごと」など安全を軽視する意識(負の安全意識)4因子を含む8因子解を採択した. 安全意識の因子スコアは, 風土の因子スコアとの相関が見られたが, 特に負の安全意識において関連が強かった. また,
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の安全レベル(事故率)と関連が強いのも負の安全意識であった. 以上の結果から, 建設作業現場の安全確保のために, 安全風土の醸成を通じた安全意識の高揚, 不安全意識の低減が有効であると考えられる.
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