北海道大雪山系南麓の低標高域に位置するペンケニコロ川,パンケニコロ川の中流域にある8箇所の小規模岩塊地において,エゾナキウサギの利用状況を2007年5月〜11月に調査した.調査はプレイバック法を取り入れた定点観察,痕跡調査および自動撮影カメラにより行った.また,各調査地点にデータロガーを設置し,気象条件として岩塊内気温と外気温,岩塊内湿度と外湿度,林内日射,地形データとして各調査地点における岩塊の体積,岩間の空隙の水平深度および垂直深度を測定した.調査によって,エゾナキウサギの個体,鳴き声,糞は確認されず,少量の貯食および食痕のみが確認された.それらの痕跡は7月以降では減少した.よって,本調査地には定着した個体群は存在せず,非定住個体による一時的な利用であると考えられた.本調査地において,気象条件では岩塊内気温,地形では空隙の水平深度および垂直深度がエゾナキウサギの岩塊地利用に関係する要因であった.
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