四エチル鉛(TEL)の中枢神経への影響を評価するため各種量のTEL投与前後におけるラットの中毒症状と自発行動量の変化を詳細に観察した。その結果, TEL 20mg/kg以上の投与群では少数の生存例を除き, 投与量の多いほど各種神経症状の発現時間と生存時間は短縮した。なお, 20mg/kg投与群は症状発現時間は最も長く, その症状も他群に比して多彩であった。10mg/kg投与例では暫時体重減少を来したが, 特徴的な神経症状はみられず, 全例生存した。一方, 自発行動量は, 10mg/kg, 20mg/kg投与の生存例では逐日的変化は見られず, 20 mg, 40 mg/kg投与の死亡例では, 投与量が多いほど行動量の急増する傾向が見られたが, 個体差は比較的大きかった。このことから, ANIMEXによる行動量の計測は神経症状の経過を総括的に継続観察するのに有効と思われた。今回の実験から投与量の多いほど死亡率が増大する傾向にあり, 最小致死量(MDL)と50%致死量(LD_<50>)は10および20mg/kgの間にあるものと推測された。しかし, 20mg/kg以上でも生存する例がみられたことは, TEL中毒作用機序に未だ解明すべき点があることを示唆している。
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