成人以上各年代の正常天然歯の咬頭嵌合位における咬合接触状態を明らかにするため三次元咬合検査法を用いて定量的に解析し,上顎臼歯について比較検討した.顎□腔系に自覚的、他覚的に機能障害を認めず,歯の欠損のない日本人健常有歯顎者20歳代(以下,Y-group),45〜54歳(以下,M-group),60歳以上(以下,E-group),各群5名の上顎臼歯を被検歯とした.咬みしめ強度を30%MVCに規定してシリコーンバイトを採得し,上下顎歯間距離60μm以下の領域を咬合接触域として解析を行った.また,第一,第二小臼歯の咬合面を頬側咬頭(以下,BC),舌側咬頭(以下,LC)近心辺縁隆線(以下,MMR),遠心辺縁隆線(以下,DMR)の4部位に分類し,第一,第二大臼歯の咬合面を近心頬側咬頭(以下,MBC),遠心頬側咬頭(以下,DEC),近心舌側咬頭(以下,MLC),遠心舌側咬頭(以下,DLC),近心辺縁隆線(以下,MMR),遠心辺縁隆線(以下,DMR),の6部位に分類し,それぞれの咬合接触域の傾斜方向を表現するため前頭面観における側方的な傾斜方向(Lateral angle)と矢状面観における前後的な傾斜方向(A/P angle)の2つのパラメータを用いた.
第一小臼歯および第二小臼歯のLCにおいて3群すべてに100%の接触率で1点以上の接触点が認められ,接触面積ではY-groupとM-group,Y-groupとE-groupの間に有意な差が認められた.第一大臼歯のMLC,DLCおよび第二大臼歯のMLCにおいて3群すべてに100%の接触率で1点以上の接触点が認められ,接触面積ではY-groupとM-group. Y-groupとE-groupの間に有意な差が認められた.また,DBCの接触面積においてY-groupとM-groupの間に有意な差が認められた.さらに,これら有意差が認められた咬合面部位のLateral angle, A/P angleについて,5°ごとの咬合接触面積を統計学的検討したところ,咬合接触面積の変化が大きい傾斜角度が明らかになった.
これらのことから,上顎臼歯の咬合面においてY-groupとM-groupとの間,Y-groupとE-groupとの間で,とくに機能咬頭における咬合接触状態の変化が大きいことが示された.
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