ネマチック液晶状態を取る多くの化合物について, NMRの磁場中 (~12 T) では液晶場の配向ベクトルが磁場の方向と一致することが知られている. 液晶の一部に重水素ラベルをして
2H NMR測定を行うと, 核四極子相互作用による分裂を示し, 分裂巾からラベルを施した結合の配向秩序度が求まる. 分子内回転が許されている鎖状分子の四極子分裂は, 分子全体としての配向に加えて, コンホメーションに関する平均にも依存する. 二つの寄与を適当な理論モデルまたは統計的シミュレーション・モデルを用いて分離することにより, 液晶などの異方性場に置かれた鎖状分子のコンホメーションを推定することが可能である. 本論文では, 回転異性状態 (RIS) シミュレーション法により, (1) リオトロピック液晶を形成するポリ (γ-ベンジルL-グルタメート) (PBLG) α-ヘリックスの側鎖コンボメーションと (2) サーモトロピック液晶となるα, ω-ビス [ (4, 4′-シアノビフェニル) オキシ] アルカン (CBA-n) に含まれるスペーサー-O (CH
2)
nO-のネマチック・コンボメーションを解析した. いずれの例においても, 鎖に沿って結合コンボメーションに長距離の相関が見られることを指摘した. これらの結果を踏まえて, 鎖状部分のコンホメーションと系の熱力学的性質との関わり合いについて考察した. さらに, MDシミュレーションの現状についても言及した.
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