バイオフィードバックは一般には知覚できない自律神経系の反応を工学的に知覚できるようにすることで,コントロール可能とするものである.インドのヨーガ行者が心拍をコントロールできることに興味をもったアメリカの生理学者の研究から発展し,多くの成果をあげてきたが,その適応範囲はまだ限定的だと思われる.一方,東洋的な行法は近年まで特段の変化のないまま経過してきたが,近年Mindfulness-based Stress Reduction (MBSR)をはじめ,
マイン
ドフルネスがストレス対処の方法として大きく注目されている.そこで本論では,このMBSRによるフィードバックとバイオフィードバックとの関係を検討する.行動心理学では,行動を意志ではコンロールできないレスポンデント反応と意志によってコントロール可能なオペラント反応に分類し,レスポンデント反応ではフィードバックを知覚できないために意志では行動を変容できないと考えられているが,バイオフィードバックでは,このレスポンデント反応の知覚化をおこなっている.一方,MBSRでは禅やヨーガ等の東洋行法を用い,身体反応や行動だけでなく,思考や感情をモニタリングすることで,セルフコントロールを行う.これは,レスポンデント反応とオペラント反応の両方の性質を持つ「レスペラント反応」(春木,2011)と呼ばれる反応が発生している.ヨーガ行者の研究からバイオフィードバックが生まれ発展してきたように,時を経て今日,MBSRの効果や機序を調査研究していくことは,バイオフィードバックの新たな側面の開拓に貢献できると考えられる.
抄録全体を表示