応用生態工学研究会は,札幌近郊の3河川を対象とした現地ワークショップを開催し,施工事例を評価した.
水位変動が少ない湖沼的性格で背後の土地利用はほとんど固定している茨戸川においては,水質保全との連携を考慮したモニタリングの必要性,周辺の土地利用実態を踏まえて長期的な水辺の利用と管理のあり方を調整する必要性,粗放な維持管理に適した手法という観点では現在の工法は適切であること,などを指摘した.
新興住宅地に囲まれて住民の利用が多い漁川では,水辺の改変や管理に関する住民の協力があることには一定の評価が得られたが,利用者の適切な誘導とが必要であることを指摘した.また,河岸の植生回復工法の結果生まれた水辺林は隣接地の公園的利用と低水路に挟まれて細長く成長しており,望ましい水辺林に導くための維持管理が必要である.
森林に囲まれ自然豊かな厚別川では,動的な自然性の保全に注目して評価したが,河床の低下や河道の変動を許容する余裕がほとんどない断面になっている.旧河川を保全した区間については,山裾までの空間を広く保全するなどの検討が望まれる,そのほか魚道や護岸,コンクリート水路部などに様々な指摘がされたことを報告した.
ワークショップによる多自然型川づくりの評価は,参加者共通の視点で議論を進めて理解を深める意味では有効な手法であり,合意形成にも応用できると思われたが,背後の地域社会が河川環境に色濃く反映している河川ほど,より慎重で評価が分かれた.
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