大気中の温度,混合比分布は,熱力学の式,水蒸気の連続の式に示される関係をとおして海面からのエネルギー補給エネルギーの積雲対流による輸送などと矛盾なく首尾一貫したものでなくてはならない.
この様な観点から,高層観測のない海域上でその周囲の高層観測,海域上の海上観測および
航空機
•気象衛星で与えられる積雲の分布の資料にもとついて,海面からの補給対流輸送を考慮した熱力学の式,水蒸気の連続の式を共に満足させる気温と混合比分布を客観的に求めることが期待される.
その最も単純な例として定常で,平均上昇流がなく,地衛風の仮定のもとで,問題をあつかう.
この様な仮定は,実際問題としては,冬期の日本海域の比較的に弱い北西季節風の状況のなかで見出される.
計算の一例として,1966年1月18日の日本海域での解析を示す.求められた混合比,気温の分布は,われわれが他の解析で得ている特徴的な分布を示し,また海面水温が雲層内の気温傾度によく反映している.得られた対流輸送量:の水平分布と雲量も比較的よい対応を示していた.
この初歩的な問題のとり扱いの成功は,雲量分布に関する情報を熱の式,水蒸気の式に組み入れることによって,高層観測の乏しい地域でより正確に大気の状態を解析できる可能性を示すものと考えられよう.
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