大阪府茨木市南塚古墳出土の銅赤ガラス, 京都府中郡桃谷古墳から出土したガラス玉, インドアリカメド出土の褐色ガラス玉について考古化学的研究を行なった。定性分析の結果いずれもソーダ石灰ガラスと推定された。発色源としては銅および鉄と考えられたので定量分析を行なった。銅は2,2'-ビキノリン錯体として, イソアミルアルコールで抽出し吸光光度法で定量, 鉄はo-フェナントロリン法により吸光光度法で定量した。その結果インド出土のものは銅として, レンガ色破片1. 39%, 管玉1. 35%,
ピーズ
玉1. 44%, 酸化鉄 (III) としては0. 94, 1. 14,1. 26%の含有量を示し, いずれも同一の原料からつくられたものと推定された。また桃谷古墳のものは銅として,緑ビーズ玉O. 73%, 青
ピーズ
玉0. 17%, 青色ガラス片O. 08%といずれも銅の含有量が少なく, 酸化鉄 (III) として2. 05, 1. 40,1. 36%含まれており, 鉄による発色と考えられる。南塚古填の銅赤ガラスについては銅として7. 39%, 酸化鉄 (III) 3. 87%で銅の量が非常に多く, 明らかに銅による発色と考えられる。この場合の銅は低酸化状態にあると推定されるが, その還元には還元剤を使用したものではなく, 焼成のときの還元炎によるものと考えられる。
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