古海面を記録する地形・堆積物の高度・年代資料から,完新世における海面の推移を考察するために,琉球列島の喜界島で調査を行なった.本島の完新世段丘はI~IVの4段丘面に細分され,4回の相対的な海面停滞期があったことを示す.I面は,その一部のみが,またII面以下はすべてがサンゴ礁からなる.とくにII面は幅が広く,典型的な裾礁として形成された.各段丘面を構成するサンゴの
14C年代と旧汀線高度は,I面で6,000~6,800 y. B. P., 9~13m,II面で3,500~5,200 y. B. P., 5~7m,III面で3,000~3,500 y. B. P., 2.5~5m,IV面で1,500~2,500 y. B. P., 1.5~2mである.これらは,新しいものほど低位置の海岸側にあり,サンゴ礁が水平方向に拡張してきたことを示す.1.5m/1,000年という等速な隆起を仮定して相対的海面変化曲線からユースタティックな海面変化曲線をえがくと, 6,500 y. B. P. と4,000 y. B. P.を中心とする2回の高海面停滞期と, 5,500 y. B. P.と2,000 y. B. P.を中心とする2回の海面低下期が現われる.両期の間の海面変化の量はせいぜい±2~3m程度と思われる.2回目の高海面停滞期は長期にわたり,II面の広いサンゴ礁の形成をうながした.サンゴの成長が,いわゆるクライマティックオプティマム期よりおくれて5,000 y. B. P.ごろからさかんになったことは,酸素同位体比の分析結果による融氷状況とも一致している.
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