GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC ESOPHAGEAL STENTING WITH OVER-THE-SCOPE CLIP FIXATION
Tsunetaka KATO Takuto HIKICHIJun NAKAMURA
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2024 Volume 66 Issue 7 Pages 1495-1502

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要旨

悪性食道狭窄に伴う食道通過障害や嚥下困難感は,患者の栄養状態や生活の質のみならず,生命予後にも影響する.そのような患者の中で,切除不能な場合には,金属ステント留置術が選択肢の1つとなる.ステント留置で通過障害が改善し,栄養状態が改善すれば,化学療法を施行できることで生命予後が延長する可能性がある.しかし,狭窄が軽度である患者や食道胃接合部に病変がある患者では,ステントが胃内に逸脱することが危惧される.したがって,ステント逸脱リスクがある悪性食道狭窄の患者では,逸脱の予防策を考慮したステント留置術が必要である.本稿では,強い組織把持力を有するover-the-scope clipを使用し,食道ステントと食道壁を固定することで,ステント逸脱を予防する内視鏡的食道ステント留置術の手順ならびに手技のコツを解説する.

Abstract

Malignant esophageal stricture is associated with esophageal passage obstruction and dysphagia, which affect patient nutritional status, quality of life, and prognosis. Endoscopic esophageal stenting is an option for such patients when resection is impossible. If stenting improves nutritional status, chemotherapy can be administered, prolonging life expectancy. However, in patients with mild stenosis or esophagogastric junction lesions, stents may migrate into the stomach. This paper describes the procedure and tips for endoscopic esophageal stenting, which uses an over-the-scope clip with strong tissue-grasping force to secure the stent to the esophageal wall and prevent stent migration.

Ⅰ 緒  言

悪性食道狭窄は,進行食道癌のみならず,食道胃接合部癌,胃癌,他臓器癌の転移などが原因で生じ,それに伴う食道の通過障害や嚥下困難は患者の食生活に影響する.経口摂取が困難になり,栄養状態が悪化することは,患者の生活の質や治療の継続,生命予後に影響する 1),2.食道癌診療ガイドライン第5版において,経口摂取の希望が強い患者では,内視鏡的食道ステント留置術が弱く推奨されている 3),4

一方,食道ステント留置術後,9%の頻度でステントが胃内へ逸脱するとされている 5.また,狭窄が弱い症例,食道胃接合部に狭窄がかかる症例,化学療法継続例,フルカバーステント留置例などは,逸脱リスクが高いとされている 6.そのため,嚥下困難感が強く経口摂取が困難な症例であっても,逸脱リスクが高いと判断される悪性食道狭窄患者では,食道ステント留置が回避されることがある.

近年,消化管穿孔や瘻孔,縫合不全の閉鎖を目的とした消化管壁縫合器として,over-the-scope clip(OTSC)(Ovesco Endoscopy GmbH, Tüebingen, Germany)が開発された.OTSCは,通常の内視鏡用クリップと比べて,組織把持力が強いことが特徴である 7),8.そこで,われわれは,食道ステント逸脱のリスクが高いと思われる悪性食道狭窄症例に対し,OTSCを用いてステントを食道壁と固定することで,食道ステントの逸脱を回避できると考えた 9.本稿では,悪性食道狭窄に対するOTSC固定を併用した食道ステント留置術の手順,手技のコツ,成績を解説する.

Ⅱ 食道ステント留置術

1.ステント留置術の適応

Dysphagia score(DS)1以上の嚥下困難感を有する悪性食道狭窄患者が,内視鏡的食道ステント留置術の適応とされている(Table 1).しかし,ステント留置前に放射線療法または化学療法を施行している症例や,癌の浸潤が著しい症例に対しては,食道ステント留置部位での穿孔の報告があり,食道ステント留置術を慎重に検討すべきと厚生労働省が注意喚起している.したがって,われわれの施設では1カ月以内に放射線療法や化学療法を施行していない症例をステント留置の適応としている.また,食道癌診療ガイドライン第5版において,ステント留置後に40Gyを超える放射線療法を施行しないことを弱く推奨しているため 4,今後放射線療法を予定している症例は,適応外としている.また,ステントの留置部位に関しては,留置後の違和感・疼痛などの自覚症状の出現を考慮し,狭窄の上端が胸骨上縁までの症例としている.

Table 1 

Dysphagia score.

2.ステントと手技の選択

内視鏡的食道ステント留置術の適応症例におけるステントの種類や留置法に関して,フローチャートをFigure 1に示す.

Figure 1 

悪性食道狭窄に対する内視鏡的食道ステント留置術の治療フローチャート.

頸部食道の悪性狭窄例では,細径のフルカバーステント,または内視鏡の鉗子チャネルを通して留置可能なデリバリー径の細いステント(through-the-scopeタイプ)を選択する.このような頸部食道狭窄の症例では,OTSC留置は違和感につながることを懸念し,施行していない.一方,頸部食道以外の食道狭窄の症例のうち,通常径のスコープ(径8.9mmのスコープを目安)が通過できる患者,化学療法の継続を予定している患者,食道胃接合部(esophagogastric junction:EGJ)に狭窄がかかる患者をステント逸脱リスクと考え,OTSC固定法を選択する.カバーステントを選択するが,OTSCをステント辺縁で固定する際に,カバーされていない部分がある方が固定性が良いため,パーシャルカバーステントを選択している 10),11.また,狭窄部がEGJにかかる症例では,ステント留置後の逆流防止のため,先端にフレアがついているロングカバーステントを選択している.

Ⅲ OTSC固定を併用した食道ステント留置術の実際

1.デバイス

① 処置用スコープ:GIF-Q260JやGIF-H290T(Olympus Medical Systems Corp., Tokyo, Japan).

② OTSC t(traumatic clip)type,9mm幅サイズ(Ovesco Endoscopy GmbH, Tüebingen, Germany).

③ ステント:Niti-S食道用ステント(Taewoong Medical, Seoul, Korea)のパーシャルカバーステントまたはロングカバーステント.

2.デバイスの準備

OTSCは食道ステントの口側端と食道粘膜を把持するため,短い歯のt typeで,9mm幅のサイズを使用する(Figure 2-a).この規格のOTSCに適合するスコープ径は添付文書に8.5~11mmと記載されているが,より安定した装着ができるようにGIF-Q260JやGIF-H290Tを選択し,さらに装着後にスコープとOTSC装着部の部分をビニルテープで固定している(Figure 2-b).その際,アプリケーターキャップに連結した糸を鉗子口チャネルの方向とあわせて装着する(Figure 2-c).OTSCをリリースするための糸を巻き付けるハンドホイールは,スコープの鉗子口部にしっかりと固定する(Figure 2-d).Niti-S食道用ステントは,拡張能の指標であるradial forceとaxial forceが弱いため 11,食道壁への負荷を軽減し,穿孔のリスクを減じる効果が期待できるために,内径18 mmのNiti-S食道用ステントを選択している.

Figure 2 

Over-the-scope clip固定法での使用デバイス.

a:短い歯のt type,9mm幅のサイズのOTSCを使用する.

b:スコープとOTSC装着部をビニルテープで固定する(黄色の矢頭).

c:アプリケーターキャップに連結した糸(黄色の矢頭)を鉗子チャネルの位置をあわせて装着する.

d:OTSCをリリースするための糸を巻き付けるハンドホイール(黄色の矢頭)は,スコープの鉗子口部にストラップ(黄色の矢印)でしっかりと固定する.

3.ステント留置の実際とコツ

① X線透視下で,鎮静のもと,左側臥位でスコープを挿入する.汎用スコープが狭窄部を通過できない場合には,GIF-1200N(Olympus Medical Systems Corp., Tokyo, Japan)などの極細径スコープを使用する.

② 狭窄部の両端にX線透視で視認可能なマーキングを置く.汎用スコープが通過可能な場合は,狭窄部両端の粘膜にマーキングクリップを打つ.極細径スコープを使用する場合は,患者を仰臥位にし,狭窄部最下端をスコープで確認しながら,X線透視下に視認可能な注射針(18G針)などを体表にテープ固定して最下端のマーキングをする.狭窄部最上端には汎用スコープを用いてマーキングクリップを置く(Figure 3-a).マーキング後はガイドワイヤー(0.025-0.035 inch)を胃内に留置し,スコープを抜去する.

Figure 3 

Over-the-scope clip固定を併用した食道ステント留置術の手順.

a:狭窄部両側端にX線透視で視認可能なマーキングをする.汎用スコープが狭窄部を通過できなかったため,狭窄肛門側端は体表に18G注射針を貼り付け(黄色矢印),狭窄口側端は内視鏡的にマーキングクリップ(黄色矢頭)を行った.

b:マーキング後,ガイドワイヤーを胃内に留置し,仰臥位の体位で,X線透視下でマーキングの位置を確認しながら,ステントを展開する.

c:スコープ先端のアプリケーターキャップに,ステント上端と食道壁を密着させ,吸引をかける.その際,ステントよりも食道壁を多めに把持するように意識して密着させる.

d:OTSCをリリースする.

e:OTSCで固定された食道ステントの透視画像.ステント口側端がOTSCで固定されている(黄色矢頭).

③ マーキング間の距離を測定し,使用するステント長を選択する.狭窄部の両側端より2cm程度長くステントでカバーすることを想定し,実際の狭窄長より4cm程度長いものを選択する.

④ 仰臥位とし,X線透視下でマーキングの位置を確認しながら,ゆっくりとステントを展開する(Figure 3-b).

4.OTSCによるステントの固定

① 処置用スコープにOTSCを装着し,左側臥位で挿入する.最も細いサイズのt type,9mmのOTSCであっても先端のアプリケーターキャップ径が16.5mmあるため,愛護的に挿入する.

② スコープ先端に装着したアプリケーターキャップに,ステント上端と食道壁を密着させた状態で吸引をかけ(Figure 3-c),OTSCをリリースする(Figure 3-d,e).アプリケーターキャップをステントに押し付ける際,ステントを胃側に押し込まない様に,X線透視下に確認しながら行う.また,食道壁側の固定範囲が狭い場合にはOTSC脱落のリスクがあるため,ステントより食道壁側を広めにOTSCで把持することを意識する.GIF-Q260JやGIF-H290Tなどの処置用スコープを用いる場合,OTSCの歯は1時方向と7時方向になるため,まず1時方向でのOTSC固定を試みる.スコープの捻りやアングルが強くかかり過ぎるとOTSCがリリースされないことがあるため,1時方向での固定が困難な時は,7時方向で固定する.術者が視野を保持しながら,手元のハンドホイールを回してOTSCをリリースするのが難しい場合には,介助者がハンドホイールを回す.

5.OTSC固定を併用した食道ステント留置術の治療成績

2014年1月から2023年6月までに28症例33治療のOTSC固定を併用した内視鏡的食道ステント留置術を行った.対象症例の臨床的特徴をTable 2に示す.悪性食道狭窄の原因は,扁平上皮癌13例,EGJの腺癌13例,神経内分泌癌1例,肺癌1例であった.狭窄の主な占拠部は,胸部食道,EGJはそれぞれが13例,胸部からEGJが7例であった.ステント留置術前に,10例が化学放射線療法,9例が化学療法を受けており,9例は緩和対症療法中であった.また,OTSC固定を併用した食道ステント留置術後の4症例で計5回の再狭窄(5回とも腫瘍のover growthによる狭窄)が生じ,それらに対してステントの再留置を施行した.

Table 2 

OTSC固定を併用した食道ステント留置術施行例の臨床的特徴(28症例33治療).

治療成績をTable 3に示す.使用ステントはロングカバーステントが26回(78.8%)でパーシャルカバーステントが7回(21.2%)であった.全治療時間中央値は38分で,OTSC固定に要した時間の中央値は9分(範囲3-22分)であった.ステント留置後に8例(28.6%)で化学療法を継続可能であり,ステント留置後の生存期間中央値は3カ月(範囲1-23カ月)であった.ステント留置前後でDSは改善した(留置前 vs 留置後;3[1-4]vs 1[0-1],P<0.001)(Table 4).主な有害事象は胸部痛であったが,全例で投薬により症状の改善が得られ,ステントの逸脱は認めなかった.

Table 3 

OTSC固定を併用した食道ステント留置術の治療成績(28症例33治療).

Table 4 

OTSC固定を併用した食道ステント留置術前後のdysphagia scoreの変化(33治療).

6.症例提示

70歳台の男性.嚥下困難感(DS 3)に対する精査で,EGJ腺癌,多発リンパ節転移の診断となり,化学療法の治療方針となった(Figure 4-a).化学療法を5コース施行された時点で,腫瘍の縮小が得られたものの,食道の内腔狭窄,および嚥下困難感(DS 3)は残存した(Figure 4-b).患者の全身状態は良好であり,固形の食事摂取の希望も強く,内視鏡的食道ステント留置術が検討された.今後も化学療法を継続予定で,食道胃接合部領域の狭窄であったため,食道ステント逸脱の高リスク群と考えられ,OTSC固定を併用した食道ステント留置術を施行する方針とした.狭窄長が5cmであったため,Niti-S ロングカバーステント(18mm×10cm)を留置し,ステント口側端1時方向をOTSCで固定した(Figure 4-c).有害事象は認めなかった.食道ステント留置後は嚥下困難感の改善(DS 0)が得られ,常食の摂取が可能となった(DS 0).ステント留置術施行の9カ月後に永眠されるまで,化学療法を追加で6コース継続可能であり,その間に食道ステントの逸脱は認めなかった.

Figure 4 

症例提示.

a:初回の上部消化管内視鏡画像.食道胃接合部領域に全周性の悪性狭窄を認めた.汎用スコープは通過不能であった.

b:化学療法5コース施行後の上部消化管内視鏡画像.腫瘍は著明に縮小が得られたが,汎用スコープは通過不能であった.

c:内視鏡的食道ステント留置術時の内視鏡画像.ステント留置後に,OTSCでステント辺縁と食道壁を固定した.

Ⅳ おわりに

悪性食道狭窄に対するOTSC固定を併用した食道ステント留置術は,安全に施行可能で,DSの改善もみられた.また,逸脱を認めなかった.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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