Tetsu-to-Hagane
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Application of Admittance Analysis for Corrosion Rate Evaluation of Carbon Steel with Rust Layer in Electrochemical Impedance Spectroscopy
Yusaku AkimotoYoshinao Hoshi
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2024 Volume 110 Issue 15 Pages 1195-1202

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Abstract

This paper describes an evaluation method for corrosion rate of carbon steel covered with rust layer by admittance analysis in electrochemical impedance spectroscopy. The polarization resistance, Rp, is often estimated from the impedance spectrum of carbon steel to determine the corrosion rate. The Rp can be determined from the impedance spectrum when the low frequency impedance is converted to the real axis on the Nyquist diagram. Because the impedance spectrum of carbon steel covered with rust layer often describes a part of loop in the low frequency range, it is difficult to determine the Rp by extrapolating the low frequency impedance to the real axis. In the present study, an admittance analysis was employed to determine the Rp from the admittance spectrum of carbon steel covered with rust layer. The admittance is plotted as the reciprocal of impedance on the complex plane. In this case, the Rp can be determined from the admittance spectrum when the low frequency admittance is converged to the real axis. The admittance spectrum of carbon steel with rust layer indicated that the low frequency admittance was converted to the real axis, namely, the Rp could be determined from the admittance spectrum. The corrosion rate of carbon steel with rust layer could be estimated from the Rp by admittance analysis, demonstrating that the value was corelated to that estimated from corrosion loss. The impedance and admittance simulations were performed using an equivalent circuit to discuss the time constant observed in the low frequency range.

1. 緒言

鉄鋼材料は安価で加工性に優れており,多くの構造物に用いられている金属材料の一つである。しかしながら高度経済成長期から半世紀が経過した我が国では,鉄鋼材料の腐食による構造物の劣化が懸念されている。この課題に対し, 近年では鉄鋼材料の表面に形成したさびの画像解析から大気腐食環境下での鉄鋼材料の耐食性を評価する手法の開発が検討されている1)。この手法の確立には,さびの画像データと鉄鋼材料表面に形成したさび層の耐食性に起因する腐食パラメータの対応関係を明らかにする必要がある。

さび層を有する鉄鋼材料の耐食性に起因する腐食パラメータの解析法として,電気化学インピーダンス法(EIS)が挙げられる。EISは,微小交流電位(あるいは電流)信号を用いるため,測定による系へのダメージが極めて小さい点に加えて交流信号の周波数を変化させることでスペクトル解析が可能となる利点がある2)。そのため,EISは構造材料やインフラストラクチャーの腐食検出やモニタリングに適用されている3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14)。EISによる鋼材表面に形成されたさび層の特性評価では,Kihiraら3)は大気暴露した低合金鋼のインピーダンスを測定し,さび層のイオン透過抵抗値とさび層の厚さからさび層の安定度診断手法を開発している。Itagakiら4)はイオン交換膜で覆われた炭素鋼のインピーダンス測定をおこない,さび膜内部のイオン透過率がアノード溶解に与える影響について報告している。Nishikataら5,6,7)は炭素鋼の腐食速度のモニタリングにEISを適用し,伝送線モデルにより乾湿繰り返し環境における炭素鋼の腐食速度を評価している。Katayamaら8)は降雨を模擬した環境において炭素鋼のインピーダンス測定をおこない,大気腐食挙動に及ぼす降雨の影響を明らかにしている。

さび層を形成した鉄鋼材料の耐食性評価において,腐食速度は重要なパラメータとなる。EISによる腐食速度の推定では,分極抵抗法15)が用いられることが多い。インピーダンス測定では,ナイキスト線図上において低周波数領域のインピーダンスが実数軸に収束した際に得られる実数成分のインピーダンスの値から,分極抵抗Rpを見積もることができる。さび層が形成した鉄鋼材料のインピーダンス測定では,さび層の形成や電極反応に起因した時定数から構成されるインピーダンススペクトルが報告されている9)。このとき,低周波数領域のインピーダンスがナイキスト線図の実数軸に収束せず円弧の外挿からのRpの決定が困難な場合がある。Itagakiら13)は,EISによるコンクリート内鉄筋の腐食環境評価をおこない,電荷移動抵抗が大きく低周波数領域のインピーダンスがナイキスト線図の実数軸に収束しない場合には,測定されたインピーダンスをアドミッタンスとしてプロットすることで正確に低周波数領域のインピーダンスの値を評価できることを報告している。

本研究では,さび層を有する鉄鋼材料のインピーダンススペクトルに対してアドミッタンス解析を用いることで,Rpを決定する方法を提案する。さび層を有する炭素鋼のインピーダンス特性を明らかにし,低周波数領域のインピーダンスがナイキスト線図の実数軸に収束しないインピーダンススペクトルをアドミッタンススペクトルに変換することにより見積もられるRpから,さび層を有する鉄鋼材料の腐食速度の評価法を検討した。

2. 実験方法

2・1 試料

試料には,沖縄県宮古島の暴露試験場にて直接暴露試験をおこなった炭素鋼(SM490A)を用いた。暴露試験期間は1年,1.5年,2年である。直接暴露試験はJIS Z 2381に基づき実施されている。各炭素鋼の表面は赤褐色のさび層で覆われており,暴露試験期間の増加にともない黒褐色が観察された。また,これらの試料においてさび層の剥離は確認されなかった。直接暴露試験により形成したさび層は,断面観察により調査した。8 mm×8 mm×2 mmの試料表面をエポキシで被覆して硬化させた後,精密水平研磨機を使用して断面を#2000まで乾式研磨した。断面の加工はクロスセクションポリッシャ(JEOL,IB19520CCP)を用いて奥行きおよそ100 µmとなるようにアルゴンイオンビームを照射した。イオンの加速電圧は4.0 kV,加工時間は5時間である。断面観察は,走査型電子顕微鏡(SEM, JSM-IT200,日本電子株式会社) を用いておこなった。

2・2 電気化学インピーダンスの測定

暴露試験後のさび層を有する炭素鋼に対して二電極法により電気化学インピーダンスの測定をおこなった。Fig.1に測定セルの平面図を示す。電極のサイズは13 mm × 25 mm × 4.5 mmとし,両極に同じ試料を用いた。2つの電極の間に厚さ1 mmのアクリル板を挟むことで,両極が接触しないようにしている。アクリル板を挟んだ2つの電極の表面に電解液を滴下して測定をおこうなうため,直径10 mm の円内部に試験溶液が滴下できるようにその他の部分をエポキシ樹脂により絶縁している。したがって,直径10 mmの円内部が試験面となる。試験溶液は0.1 mol L−1 Na2SO4とし,試験面に150 µL滴下後に電気化学インピーダンスの測定をおこなった。測定にはFRA内蔵のポテンショ/ガルバノスタットを用いた。測定は直流0 Aとし,入力電流振幅は応答電圧振幅が10 mV以下となるように制御した14)。測定周波数は1 MHz – 10 mHz,対数掃引1桁5点とした。電気化学インピーダンスの測定は飽和K2SO4を用いた飽和塩法による高湿度環境下でおこなうことで,試験溶液の高さをおよそ3 mmに制御した。

Fig. 1.

Schematic of the top view of two-electrode cell. (Online version in color.)

3. 実験結果

3・1 さび層を有する炭素鋼のインピーダンススペクトルと断面観察

Fig.2に二電極法により測定したさび層を有する炭素鋼のインピーダンスを示す。図中の〇,□,△はそれぞれ暴露期間1, 1.5, および2年のインピーダンスを示している。ナイキスト線図(Fig.2(a))におけるインピーダンススペクトルでは,各々の試料において高周波数領域にはひずんだ半円,低周波数領域にはひずんだ軌跡の一部が観察される。また,ボード線図(Fig.2(b))から,各々の試料のインピーダンスにおける位相差は小さく,各々の試料において同様のインピーダンス特性を示すことがわかる。

Fig. 2.

Impedance plots of steel covered with rust layer (a) Nyquist diagram and (b) Bode diagram. The circle, square and triangle symbols denote the exposure period for 1, 1.5 and 2 years, respectively.

インピーダンス測定に用いた暴露期間の異なる試料におけるさび層の形成状態を調査するために,SEMにより各試料の断面観察をおこなった。一例として,1.5年間直接暴露試験をおこなった試料の断面像をFig.3に示す。この結果から,炭素鋼の表面には50から100 µm程度の厚さのさび層が形成されており,さび層が炭素鋼を覆っていることわかる。その他の試料でも同様にさび層が炭素鋼表面全体を覆っていることが確認できた。

Fig. 3.

Cross-sectional SEM image of carbon steel covered with rust layer. The exposure period is 1.5 year.

Nishimuraら9)は,鉄さびが生成している炭素鋼のインピーダンスにおいて,1 Hz以上の高周波数領域におけるインピーダンスはさびの抵抗に起因していることを報告している。また,低周波数領域のインピーダンスは腐食反応抵抗に起因することを示唆している。Fig.3の断面観察から,Fig.2のインピーダンス測定における試料では,表面全体がさび層で覆われていることが確認されている。したがって,Fig.2のインピーダンスにおいて,高周波数領域に観察されるひずんだ半円は炭素鋼表面に形成されたさび層の電流線分布に起因したものと考えられる。一方,低周波数領域のインピーダンスは,大きな腐食反応抵抗の値に起因して実数軸に収束していないことが確認できる。このことから,低周波数領域のインピーダンスの外挿からRpを決定することは容易ではないことがわかる。

3・2 インピーダンススペクトルとアドミッタンススペクトルの関係

インピーダンスとアドミッタンスの関係を検討するために,さび層を有する炭素鋼のインピーダンス解析における等価回路を検討した。本研究で使用する等価回路をFig.4に示す。この等価回路において,Rsolは溶液抵抗,RctZCPE,dlは電荷移動抵抗と電気二重層に起因した定位相素子CPE(Constant phase element),RrustZCPE,rustはさび層に起因した抵抗とCPEである。各試料の断面観察(Fig.3)において,炭素鋼表面はさび層で覆われていることを確認している。そのため,ここではRctZCPE,dlおよびRrustZCPE,rustにより構成されるそれぞれの並列回路をRsolと直列に接続した等価回路とした。

Fig. 4.

Equivalent circuit used in the present study.

Fig.4 の等価回路から算出されるインピーダンスとアドミッタンスの関係を議論する。実数成分Z’と虚数成分Z”を含むインピーダンスZZZ’+jZ”)は,式(1)により表される。

  
Z=Rsol+Rct1+(jω)pdlTCPEdlRct+Rrust1+(jω)prustTCPErustRrust(1)

ここで,jは虚数単位,ωは角周波数,pdlおよびprustはCPE指数,TCPE,dlおよびTCPE,rustはCPE定数を表す。式(1)ZZ’Z”は以下のよう表される。

  
Z=Rsol+Rct{1+ωpdlTCPEdlRctcos(π2pdl)}1+2ωpdlTCPEdlRctcos(π2pdl)+ω2pdlTCPEdl2Rct2+Rrust{1+ωprustTCPErustRctcos(π2prust)}1+2ωprustTCPErustRrustcos(π2prust)+ω2prustTCPErust2Rrust2(2)
  
Z=ωpdlTCPEdlRct2sin(π2pdl)1+2ωpdlTCPEdlRctcos(π2pdl)+ω2pdlTCPEdl2Rct2ωprustTCPErustRrust2sin(π2prust)1+2ωp2TCPErustRrustcos(π2prust)+ω2prustTCPErust2Rrust2(3)

式(2)および式(3)より計算されるインピーダンススペクトルをFig.5(a)に示す。高周波数領域に小さなひずんだ半円,低周波数領域に大きなひずんだ半円が描かれることがわかる。ここで,Z”=0において,式(2)および式(3)から図中の実数軸においてインピーダンススペクトルとRsolRrustおよびRctの関係が得られる。これらの関係からRsolとひずんだ2つの容量性半円の直径の大きさの和がRpRpRsolRrustRct)となる。一方,アドミッタンスYはインピーダンスの逆数で表されるため,YZの実数成分Z’と虚数成分Z”の関係は式(4)となる。

  
Y=1Z=ZZ2+Z2jZZ2+Z2(4)
Fig. 5.

Calculations of (a) impedance and (b) admittance using equivalent circuit in Fig. 4. The calculation parameters are Rsol = 100 Ω, Rrust = 500 Ω, Rct = 5000 Ω, TCPE,rust = 1.0 × 10−6, TCPE,dl = 1.0 × 10−4, prust = 0.9 and pdl = 0.9. The calculations of impedance and admittance were performed at 10 frequencies per decade. (Online version in color.)

式(4)から計算されるアドミッタンススペクトルをFig.5(b)に示す。アドミッタンススペクトル(Fig.5(b))では,インピーダンススペクトル(Fig.5(a))と同様に高周波数領域と低周波数領域においてひずんだ半円が描かれている。インピーダンススペクトルでは低周波数領域において値が大きくなるが,アドミッタンススペクトルでは低周波領域において値が小さくなる。ここで,Yの実数成分Y’の高周波数極限(ω → ∞ s−1)および低周波数極限(ω → 0 s−1)の値を求める。式(4)から,Y’は以下の式となる。

  
Y=ZZ2+Z2(5)

式(2)および式(3)式(5)に代入し,Y’の高周波数極限および低周波数極限の値を求めると式(6)式(7)が導かれる。

  
Yω=1Rsol(6)
  
Yω=1Rsol+Rct+Rrust(7)

実数軸上ではインピーダンスとアドミッタンスは逆数の対応関係があり,Fig.5(b)に示されるアドミッタンススペクトルとRsolRrustおよびRctの関係から,低周波数領域においてアドミッタンススペクトルが実数軸に収束した値からRpが決定できることがわかる。

3・3 さび層を有する炭素鋼のアドミッタンス解析による腐食速度評価

3・1では,表面がさび層で覆われている暴露期間1, 1.5, および2年の炭素鋼のインピーダンス測定をおこない,各々の試料のナイキスト線図において低周波数領域のインピーダンスが実数軸に収束しないことが確認できた。ここで,3・2におけるインピーダンスとアドミッタンスの関係に基づき,得られた各試料のインピーダンスをアドミッタンスに変換し,アドミッタンススペクトルを用いたRpの決定方法を検討する。

Fig.2の暴露期間1, 1.5および2年のさび層を有する炭素鋼のインピーダンスをアドミッタンスに変換してプロットした結果をFig.6に示す。この図において,横軸はアドミッタンスの実数軸,縦軸はアドミッタンスの虚数軸である。Fig.6(a)の暴露期間1年のさび層を有する炭素鋼のアドミッタンススペクトルでは,高周波数領域にひずんだ半円の一部が見られ,低周波数領域ではひずんだ小さな半円が観察される。このとき,低周波数領域のアドミッタンスは実数軸に収束することが確認できる。暴露期間1.5(Fig.6(b))および2年(Fig.6(c))のさび層を有する炭素鋼のアドミッタンススペクトルでも,Fig.6(a)と同様のアドミッタンス挙動を示すことがわかる。

Fig. 6.

Admittance plots of carbon steel covered with rust. The exposure period is (a) 1, (b) 1.5 and (c) 2 years, respectively.

ここで,各試料におけるアドミッタンススペクトル(Fig.6)から暴露期間1, 1.5および2年のさび層を有する炭素鋼の分極抵抗Rp,1year, Rp,1.5year, Rp,2year をそれぞれ決定する。Fig.5(b)より,低周波数領域のアドミッタンススペクトルに観察されるひずんだ半円の実数成分の値は,それぞれ1/(RsolRrustRct)および1/(RsolRrust)となる。これら関係より,Fig.6のアドミッタンススペクトルからRp,1year, Rp,1.5year, Rp,2yearを求めた。その結果,Rp,1year, Rp,1.5year, Rp,2yearはそれぞれ,7043 Ω, 16567 Ωおよび8233 Ωと求めることができた。これらの値を用いて腐食速度を算出した。Rp,1year, Rp,1.5yearおよびRp,2yearの値を用いて見積もられた腐食速度と試料の腐食減量から算出された腐食速度をFig.7に示す。Rp,1year, Rp,1.5yearおよびRp,2yearの値による腐食速度の算出には,Stern-Gearyの関係式(icorrK / Rp, KはStern-Geary定数)15)を用いた。本研究においてKは20 mVを用いている6)。各試料のアドミッタンスから算出された腐食速度と腐食減量から算出された平均の腐食速度は,アドミッタンスから算出された腐食速度が大きく見積もられるものの,概ね一致していると考えられる。

Fig. 7.

Plots of corrosion rate of carbon steel covered with rust layer vs. exposure period. The white and black bars denote corrosion rate estimated from admittance analysis and corrosion loss.

3・4 低周波数領域におけるインピーダンスとアドミッタンスの時定数の関係

本研究において使用したさび層を有する炭素鋼のインピーダンスでは,ナイキスト線図上において低周波数領域のインピーダンスが実数軸に収束しないことが確認できた。このインピーダンスをアドミッタンスとして複素平面にプロットすると,低周波数領域におけるさび層を有する炭素鋼のアドミッタンスは実数軸に収束するため,容易にRpを決定することが可能となった。この理由を,低周波数領域におけるインピーダンスとアドミッタンスの時定数(頂点周波数)に着目して検討する。

Fig.4の等価回路により計算されたインピーダンススペクトル(Fig.5(a))では,高周波数領域に時定数の小さいRrustZCPE rustの並列回路に起因したひずんだ半円,低周波数領域に時定数の大きなRctZCPE dlの並列回路に起因したひずんだ半円が描かれる。このとき,低周波数領域では,ZCPE rustのインピーダンスは増加にともない大部分の交流電流はRrustに流れると考えられる。したがって,低周波数領域においてFig.4の等価回路はRsolRrustRctZCPE dlの並列回路に直列に接続されたFig.8の等価回路として考えることができる。この低周波数領域において仮定される等価回路を用いて,インピーダンススペクトルとアドミッタンススペクトルにおける低周波数領域のひずんだ半円の頂点周波数の関係を調べる。RsolRrustRctZCPE dlの並列回路に直列に接続された等価回路のインピーダンスは式(8)で表すことができる。

  
Z=Rsol+Rrust+Rct1+(jω)pdlTCPEdlRct(8)
Fig. 8.

Approximated equivalent circuit in the low frequency range.

式(8)において,実数成分と虚数成分のインピーダンスはそれぞれ式(9)式(10)で表される。

  
Z=Rsol+Rrust+Rct{1+ωpdlTCPEdlRctcos(π2pdl)}1+2ωpdlTCPEdlRctcos(π2pdl)+ω2pdlTCPEdl2Rct2(9)
  
Z=ωpdlTCPEdlRct2sin(π2pdl)1+2ωpdlTCPEdlRctcos(π2pdl)+ω2pdlTCPEdl2Rct2(10)

一方,RsolRrustRctZCPE dlの並列回路に直列に接続された等価回路から計算されるインピーダンススペクトルにおいて,ナイキスト線図に描かれるひずんだ半円の頂点周波数fiにおける実数成分のインピーダンスは,以下の式となる。

  
Z=Rsol+Rrust+12Rct(11)

式(9)式(11)から,fi式(12)となる。

  
fi=12π(1TCPEdlRct)1pdl(12)

ここで,Fig.5(b)のアドミッタンススペクトルにおける低周波数領域のひずんだ半円の頂点周波数faにおけるY’式(13)として表される。

  
Y=1Rsol+Rrust+Rct+12(1Rsol+Rrust+Rct1Rsol+Rrust)(13)

このとき,式(4)式(9)式(10)および式(13)より,faは以下の通り導かれる。

  
fa=12πξ(1TCPEdlRct)1pdl(14)

ここで,ξは以下の式で表される。

  
ξ=(RctRsol+Rrust+1)1pdl(15)

ここで,式(12)式(14)から,インピーダンスペクトルおよびアドミッタンススペクトルの低周波数領域に描かれるひずんだ半円の各々の頂点周波数を比較すると,アドミッタンススペクトルにおけるひずんだ半円のfaはインピーダンススペクトルにおけるひずんだ半円のfiに対してξ(>1)倍faが大きい値を示すことがわかる。したがって,インピーダンスペクトルおよびアドミッタンススペクトルに描かれる低周波数領域のひずんだ半円の頂点周波数において,インピーダンススペクトルに対してアドミッタンススペクトルでは高い周波数においてひずんだ半円の頂点が確認できることを示している。したがって,さび層を有する炭素鋼のアドミッタンススペクトルでは,低周波数領域において頂点周波数を含むひずんだ半円が観察されたと考えられる。

本研究において使用したさび層を有する炭素鋼のインピーダンススペクトルにおいて,腐食反応抵抗が大きく低周波数領域のインピーダンスがナイキスト線図において実数軸に収束しない場合には,アドミッタンス解析を適用することで複素平面図において低周波数領域のアドミッタンススペクトルが実数軸に収束した値(Rp)が決定できることを明らかにした。大気腐食ではさび層の性質は環境変化にともない時々刻々と変化するため,これにともないインピーダンス特性も大きく変化する。さびの組成や表面の分布状態を考慮したインピーダンスおよびアドミッタンス解析が,今後の精密な腐食速度評価法の開発に繋がると考えられる。

4. 結論

本研究では,大気暴露試験をおこなったさび層を形成する炭素鋼のインピーダンス測定をおこない,アドミッタンス解析による腐食速度評価法を検討し,以下の結論を得た。

(1)ナイキスト線図においてさび層を形成する炭素鋼の低周波数領域のインピーダンススペクトルが実数軸に収束しない場合,低周波数領域のインピーダンスの外挿により分極抵抗の決定が困難となる。このとき,アドミッタンススペクトルでは,低周波数領域のアドミッタンスが実数軸に収束するため,分極抵抗を決定することができる。

(2)アドミッタンス解析から決定された分極抵抗より見積もられたさび層を形成する炭素鋼の腐食速度は,腐食減量から算出された平均の腐食速度とよい相関を示した。

謝辞

本研究は日本鉄鋼協会研究会I「インフラ劣化診断のためのデータサイエンス研究会」からの支援により遂行されたものである。研究会共通試験片SM490Aの屋外暴露試験は研究会により実施された。試料の断面加工と分析は名古屋工業大学産学官金連携機構設備共用部門における共用設備を利用した成果である。ここに謝意を表する。

文献
 
© 2024 The Iron and Steel Institute of Japan

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