Journal of Rural Problems
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Short Papers
Purchasing Behavior of Tochigi-ken Rice and its Market Potential in Foreign Countries: The Case of Hong-Kong, China
Tetsuya NakamuraAtsushi Maruyama
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2015 Volume 51 Issue 3 Pages 227-232

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1. 課題

東日本大震災以降,わが国の農林水産物及び食品輸出額は,5,000億円の壁にぶつかっている.2013年度は,福島第一原子力発電所の事故後に落ち込んだ輸出額は円安の恩恵を受け,統計を取り始めて以来過去最高の5,500億円規模に成長した.しかし,農産物輸出額が2016年の中間目標値7,000億円,2020年の1兆円規模の目標値を到達するには課題も多い.海外での日本産の評価は,「美味しいけど高い」という評価が最も一般的であり,日本産が抱える最大の課題である.コメを例にすれば,香港におけるコシヒカリの1㎏当たりの小売価格を比較しても,アメリカ産が490円であるのに対し,日本産は950円程度であり,主要国の同産品と比較しても2倍の格差がある(農林水産省,2013:p.3).すでに中国市場では,品質差を上回る高価格で流通しているのが実情である.しかも小売価格の内訳の約6割は先方の手数料であり,生産費を下げる等の努力によってもこの差は埋まらない.そして,海外でも日本産品種が栽培されていることを考えれば,許容できる価格差で販売できる国・地域以外では,米粒の輸出が爆発的に伸びるとは考えにくい.しかしながら福島の事故後もコメの商業用輸出量が最も伸びているのは香港であり,最も重要な輸出地域である.

香港市場を課題にした学術的な研究は,森・藤島(2009)が挙げられるものの,香港のバイヤーや消費者の視点から研究したものは日本貿易振興機構(2011)がある程度である.そこで,栃木県の香港輸出を事例として,香港人が栃木産と外国産のコメを両者の価格差が大きいという状況下で,どのように選択するのか,また品種が異なる栃木産米をどのように選択するのかを考察する.栃木県が香港市場に輸出するコメは,なすひかりや特別栽培米・無洗米こしひかりである.栃木県のコメの収穫量は国内第8位であり,関東では茨城に次ぐ第2位の米の生産県である.また,両品種は2014年の関東産15品種の中で特Aにランクされ,高い品質評価を得ており,栃木県は輸出意欲も高い.これらの事柄を背景として栃木産を研究対象とした.香港では外食:内食の比率は8:2であり,食費の61%を外食に充当している(日本貿易振興機構,2011:p. 50).また香港では米の小売店向けとレストラン向けの需要比率は7:93であり,業務用の米販売網は確立されている(日本貿易振興機構,2011:p. 45).コメビジネスに新規参入するためには既存の米販売網の弱点を解明し,それをカバーする戦略が必要となる.そのため本稿では香港人の購買選択行動を分析し,今後の市場可能性を探る.

2. 香港における日本産米の輸出動向と市場可能性

(1) 香港における日本産米の輸出動向

香港における栃木産米の購買選択行動と市場可能性を考察する前に,香港市場では日本産米がどのような位置づけで販売されているのか考察しよう.

まず,農林水産省(2014)によると,コメ・コメ加工品全体の輸出額(2012年)は130億円である.現地での精米や外食への販売,コメ加工品(米菓や日本酒等)を重点化し,2016年には300億円規模に拡大する戦略を打ち出している.2020年に農林水産物・食品の輸出規模を1兆円にする際,コメ産業の輸出を600億円規模に拡大する計画も立てている.

そして,コメ・コメ加工品の中でも,コメ粒の輸出額は7.3億円(2012年),そのシェアは5.6%に過ぎないのだが,5年間(2008年~2012年)で2倍に倍増している.主なコメ輸出国のシェアは香港が41%,シンガポールが29%であり,香港は日本産米の最大の輸出先である.両地域のシェアが大きいのは,コメに係る関税がゼロであることが大きい.

(2) 日本産米輸出に関する市場可能性

1は,日本産米輸出に関する市場可能性分析表(SWOT分析)を示した.SWOTとは,強み,弱み,機会,脅威を示す.日本産米の強みは,「高いけれども美味しい」という評価があり,日本産食材ブランドへの信頼やイメージの良さがある.その一方で,弱みは,許容できる価格差には限界があることや,精米後半年を経過しても販売されているものも散見される等,品質が適切に保たれているかについても疑念がもたれている.ただし,香港では元気寿司や味千ラーメン等の日本食レストランも多数出展しており,短粒種を食べる機会も増えている.その一方で,日本食レストランでは現在,アメリカ産や中国産が購入されていることや,日本産のコストダウンが要求されていること,原発事故の影響で福島を含む5県の青果物・乳製品が輸出停止品目になっていること等が,輸出の脅威となっている.

表1. 日本産米輸出に関する市場可能性分析表(SWOT分析)
強み(Strength) 弱み(Weakness) 機会(Opportunity) 脅威(Threat)
・冷めても美味しい ・価格が高い ・日本食レストランが多い ・一般日本食レストランは米国/中国産を購入
・日本産食材ブランドへの信頼,イメージの良さ (通常,米国・中国産ジャポニカ米の2倍以上,中国では,現地産コシヒカリ,あきたこまちの5倍以上) ・長粒種から短粒種へのシフトの可能性 ・輸入・卸業者からのコストダウンの要求
・中国は富裕層が特に多く,潜在的需要が大きい ・中国では植物検疫条件が厳しく,コストもかかる
・中国では原発事故の影響により一部都県産は輸入停止

3. 調査概要

(1) サンプル属性

調査対象者は香港FOODEXPO2013栃木県ブースの来訪者であり,調査は2013年8月15日~17日に実施した.調査票は305通回収したが,分析には完全回答の236通を用いた.表2はサンプル属性を示した.調査サンプルは男性(25.8%)より女性(74.2%)が多かった.年齢階層は40~49歳(29.7%)が最も多いが,30~39歳,50~59歳の年齢階層も2割を占め,平均年齢は42.5歳であった.居住地も香港人が87.7%を占め,九龍や新界(各31.4%),香港島(25.0%)等といったように地域で集中しなかった.職業は一般客・主婦(30.1%)が最も多いが,食品関連企業や飲食店,食に関わる一般企業や官庁・公的役人が各1割程度を占めた.更に平均年収は12~24万HKD(34.3%)が最も多く,24~48万HKDと12万HKDが2割強であり,平均年収は28.3万HKDであった.香港の1人当たりGDP(IMF,2013年)は37,777USDであり,調査対象者の1人当たり平均年収は香港の1人当たりGDP(IMF)と同水準にある.一般に同平均年収は同GDPより低いため,回答者はやや高水準の所得を有する集団であることが分かる.

表2. サンプル属性
属性 割合1) 属性 割合
男性 25.8% 食品関連企業 16.5%
女性 74.2% 飲食店 14.0%
19歳以下 1.7% 一般企業 14.8%
20~29歳 16.5% 官庁・公的役人 13.6%
30~39歳 23.3% 一般客・主婦 30.1%
40~49歳 29.7% その他 11.0%
50~59歳 21.6% 12万HKD以下 26.7%
60~69歳 7.2% 12~24万HKD 34.3%
香港島 25.0% 24~48万HKD 27.5%
香港九龍 31.4% 48~60万HKD 5.1%
香港新界 31.4% 60~120万HKD 4.7%
中国華南 6.8% 120万HKD 1.7%
台湾 2.5% 平均2)
中国東北 1.7% 年齢(歳) 42.5
その他 1.3% 年収(万HKD) 28.3

出所:香港FOODEXPOでの調査票より作成.

1)度数は紙面の関係で省略した.

2)平均値は年齢と年収の階級値から推計.

(2) 普段食べる米・日本産購入時の重要項目

3は,香港人が普段食べる米や日本産米を購入する際の重要項目について示した.以下,質問項目は,香港で普段食する米がタイ産等のインディカ種であることと,提供する栃木産がジャポニカ種であることを明記した上で,米の購買行動を検討した.

表3. 普段食べる米・日本産購入時の重要項目
質問 項目 度数 割合
どちらの
お米を食
べるのか
インディカ種 76 32.2%
どちらも食べる 124 52.5%
ジャポニカ種 36 15.3%
おコメは食べない 0 0.0%
日本のお
米を購入
する際の
重要項目
美味しさ 154 65.3%
高品質 85 36.0%
安全性 81 34.3%
減農薬栽培の検査証明 81 34.3%
信頼性 75 31.8%
放射性物質の検査証明 72 30.5%
低価格 35 14.8%
高級感 28 11.9%
ブランド 20 8.5%
外見 17 7.2%
簡便性 17 7.2%
その他 2 0.8%

表より,香港人の52.5%が両種ともどちらも食べていたが,32.2%がインディカ種を,15.3%がジャポニカ種を食べていた.また,日本貿易振興機構(2011)によると,香港ではインディカ種が3分の2,ジャポニカ種が3分の1を占め,インディカ種の90%がタイ米であるジャポニカ種だけを食べる者は少ないが,両種とも食べる者は7割弱いた.

次に,日本産米を購入する際の重要項目は,美味しさ(65.3%)であり,SWOT分析の強みが示された.次いで重要な項目は,高品質(36.0%)であり,安全性(34.3%)や信頼性(31.8%)とともに日本産の信頼性やイメージの良さも上位にあげられた.

検査に関わる項目として,減農薬栽培の検査証明(34.3%)や放射性物質(30.5%)の検査証明も3割前後の回答者が提示を求めた.しかし,放射性物質の検査証明は減農薬栽培の検査証明を求める声より少なく,日本政府の検査体制は評価されていた.

他方,日本産米に対しては,低価格(14.8%)性もそれほど求められていないのだが,逆に高級感(11.9%)を求める声も少ない.また,アメリカや中国でもこしひかりを始めとした銘柄米も作付けており,ブランド(8.5%)を求める声も少ない.銘柄を含め,日本産を見慣れた香港人にとっては,日本産ブランドを強く求める者も少ない.

(3) 外国産米と栃木産米の購買行動比較

4の上段には,栃木産米と外国産米(2 kgパック)が販売されており,なすひかり(110 HKD)とアメリカ産(90 HKD),中国産(40 HKD)の店頭価格を提示した場合,どれを購入するのか尋ねた結果を示した.まず,中国産とアメリカ産を比較すると,どちらでも購入する(60.6%)者が多く,アメリカ産(9.3%)より中国産を購入する(17.4%).

表4. 外国産と栃木産,栃木産同士の購入志向
質問 項目 度数 割合
外国産と栃木産の購入比較 中国産とアメリカ産 中国産 41 17.4%
どちらでも1) 143 60.6%
アメリカ産 22 9.3%
買わない2) 30 12.7%
中国産となすひかり 中国産 27 11.4%
どちらでも 129 54.7%
なすひかり 69 29.2%
買わない 11 4.7%
アメリカ産と
なすひかり
アメリカ産 8 3.4%
どちらでも 100 42.4%
なすひかり 116 49.2%
買わない 12 5.1%
栃木産での購入比較 なすひかりと特別
栽培米こしひかり
なすひかり 59 25.0%
どちらでも 119 50.4%
特別栽培米 49 20.8%
買わない 9 3.8%
なすひかりと
無洗米こしひかり
なすひかり 77 32.6%
どちらでも 111 47.0%
無洗米 39 16.5%
買わない 9 3.8%
特別栽培米と
無洗米こしひかり
特別栽培米 68 28.8%
どちらでも 121 51.3%
無洗米を購入 30 12.7%
買わない 17 7.2%

1)「どちらでも」は「どちらでも購入する」.

2)「買わない」は「どちらも買わない」

同様に,なすひかりと中国産,アメリカ産を購入する際,どちらでも購入する者は各54.7%,42.4%と最も多い.中国産となすひかりを比較しても,中国産(11.4%)よりなすひかりを購入する(29.2%).同様にアメリカ産となすひかりを比較しても,アメリカ産(3.4%)よりなすひかりを購入する(49.2%).

以上,外国産米となすひかりの店頭価格を比較した場合,なすひかり,中国産,アメリカ産の順で回答者は購入し,その多くは高価ななすひかりを購入するが,中国産とアメリカ産では安価な中国産を購入した.本調査は栃木県ブースに来た来客に依頼しているため,日本産やなすひかりの購入希望を表明する者の割合が高いというサンプル・バイアスを伴う可能性は否めない.しかし,そのバイアスを考慮してもなすひかりは香港で高い競争力を持つだろう.

4の下段には,栃木産の中でも,なすひかりと特別栽培米こしひかり(135 HKD),無洗米こしひかり(150 HKD)が販売された場合どれを購入するのか尋ねた結果を示した.なすひかりと外国産との比較においても,栃木産米3種との比較においても,どちらでも購入する者が47.0%~51.5%を占めた.

まず,なすひかりと特別栽培米を比較した場合,特別栽培米を購入する(20.8%)者より,なすひかりを購入する(25.0%)者が多かった.次に,なすひかりと無洗米を比較した場合でも,無洗米を購入する(16.5%)者よりなすひかりを購入する(32.6%)者が多い.同様に,特別栽培米と無洗米を比較した場合,無洗米を購入する(12.7%)者より特別栽培米を購入する(28.8%)者が多かった.

以上,栃木産米3種の店頭価格を単純に比較した場合,なすひかり,特別栽培米こしひかり,無洗米こしひかりの順で回答者は購入する傾向があった.そして,日本産と外国産を比較すれば,価格が高くとも日本産を購入するが,栃木産同士の比較であれば,価格の安いなすひかりを購入した.

4. 栃木産米の購買選択行動に関する要因分析

(1) 推計方法

本節では,前節で検討した栃木産米の購買選択行動を規定する要因についてプロビットモデルを用いて分析する.食品関連業者等は付加価値のある特別栽培米を購入するのか,簡便化を求めて無洗米を購入するのか,安価ななすひかりを購入するのか,より安価な外国産米を購入するのか,勤務先が購買行動に影響するのか,統計的に分析する.目的変数は外国産米と栃木産米との購買行動と栃木産米3種との購買行動を用いた.説明変数は男性,食品関連企業,飲食店,一般企業,普段食べる米,日本産米を購入する際の重要項目を1,その他を0としたダミー変数を,年齢や年収を連続変数として導入した.

(2) 外国産・栃木産米の購買行動に関する分析

5は外国産と栃木産米の購買行動に関する推計結果であり,全ての係数がゼロであることを帰無仮説とする尤度比検定も全モデルで棄却された.各推計式はAICや尤度比の値を考慮し,最適な結果が得られるまで推計し,有意確率を示した変数を残した.

表5. 外国産米と栃木産米との購買行動に関する要因分析(多項プロビット分析結果)
変数 どちらでも購入 中国産よりアメリカ産 どちらも買わない
係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値
香港島 0.508 0.33 0.127 1.079 0.44 0.013 0.607 0.41 0.138
香港・九龍 0.816 0.35 0.019 1.309 0.45 0.003 1.169 0.40 0.004
インディカ種 −0.454 0.28 0.106 −0.849 0.40 0.036 −0.620 0.35 0.073
定数項 0.839 0.21 0.000 −0.799 0.30 0.007 −0.464 0.27 0.088
標本サイズ 236 尤度比 −246.8 AIC 517.7 備考:中国産が参照カテゴリー
変数 どちらでも購入 アメリカ産よりなすひかり どちらも買わない
係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値
所得 0.782 0.25 0.001 0.722 0.24 0.003 0.855 0.27 0.002
香港島 −1.109 0.54 0.040 −0.585 0.52 0.264 −1.567 0.74 0.033
食品関連企業 −1.768 0.70 0.011 −2.204 0.69 0.002 −1.969 0.78 0.011
飲食店 −1.368 0.65 0.037 −1.696 0.64 0.008 −1.190 0.78 0.126
定数項 1.491 0.75 0.047 1.740 0.75 0.020 −0.064 0.81 0.937
標本サイズ 236 尤度比 −216.6 AIC 463.2 備考:アメリカ産が参照カテゴリー

まず,中国産でもアメリカ産でも『どちらでも購入』する者は九龍(0.816)に多い.他方『中国産よりアメリカ産』を選択する者は香港島(1.079)や九龍(1.309)等の香港中心部の者であり,インディカ種(−0.849)はあまり食さない傾向にあった.

次に,アメリカ産でもなすひかりでも『どちらでも購入』する者は香港島(−1.109)や食品関連企業(−1.768),飲食店(−1.368)以外の者であり,『アメリカ産よりなすひかり』を選択する者は,食品関連企業(−2.204)や飲食店(−1.696)以外の者であった.

(3) 栃木産米3種の購買行動に関する要因分析

6は,栃木産米3種との購買行動に関する要因を多項プロビット分析で推計した結果を示した.

表6. 栃木産米3種と購買行動に関する要因分析(多項プロビット分析結果)
変数 どちらでも購入 なすひかりより特別栽培米 どちらも買わない
係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値
香港島 −0.704 0.30 0.018 0.148 0.32 0.639 −0.773 0.56 0.167
食品関連企業 −0.680 0.34 0.043 −0.445 0.37 0.233 0.135 0.47 0.772
インディカ種 −0.889 0.27 0.001 −0.542 0.30 0.070 0.050 0.41 0.903
低価格 −0.878 0.37 0.019 0.188 0.37 0.612 −0.642 0.57 0.261
定数項 1.279 0.20 0.000 0.062 0.23 0.786 −0.995 0.37 0.007
標本サイズ 236 尤度比 −251.4 AIC 532.7 備考:なすひかりが参照カテゴリー
変数 どちらでも購入 なすひかりより無洗米 どちらも買わない
係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値
インディカ種 −0.732 0.27 0.006 −0.461 0.30 0.123 −0.369 0.44 0.398
高品質 0.575 0.26 0.027 0.051 0.31 0.870 0.505 0.41 0.215
外見 1.025 0.52 0.048 0.380 0.63 0.549 0.906 0.74 0.220
定数項 0.274 0.18 0.134 −0.364 0.21 0.083 −1.471 0.29 0.000
標本サイズ 236 尤度比 −260.3 AIC 544.6 備考:なすひかりが参照カテゴリー
変数 どちらでも購入 特別栽培米より無洗米 どちらも買わない
係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値
食品関連企業 0.405 0.35 0.251 1.036 0.41 0.012 −0.537 0.62 0.384
一般企業 1.105 0.41 0.008 0.640 0.50 0.204 −0.680 0.70 0.329
低価格 −0.815 0.37 0.029 −1.575 0.55 0.004 0.638 0.41 0.117
放射性物質 −0.884 0.29 0.002 0.060 0.34 0.859 0.267 0.37 0.474
高品質 0.763 0.28 0.006 −0.334 0.38 0.384 0.048 0.40 0.906
定数項 0.381 0.19 0.043 −0.600 0.23 0.010 −1.170 0.28 0.000
標本サイズ 236 尤度比 −241.4 AIC 518.8 備考:特別栽培米が参照カテゴリー

まず,なすひかりでも特別栽培米でも『どちらも購入』する者は香港島(−0.704)や食品関連企業(−0.680)以外の者であり,インディカ種を食べる(−0.889)傾向がなく,低価格(−0.878)性も求めていない.『なすひかりより特別栽培米』を購入する者もインディカ種はあまり食べない(−0.542).

同様に,なすひかりでも無洗米でも『どちらでも購入』する者もインディカ種を食べない(−0.732)が,高品質(0.575)や外見(1.025)に拘っていた.

最後に,特別栽培米でも無洗米でも『どちらでも購入』する者は,食品関連企業(0.405)や一般企業(1.105)に勤務する者であり,高品質(0.763)性を求めた.ただし,低価格(−0.815)性や放射性物質の検査証明(−0.884)は求められなかった.他方『特別栽培米より無洗米を選択する』者は,食品関連企業(1.036)の勤務者が多いが,低価格(−1.575)性は求めず,高品質や高級感を求めていた.

栽培方法に拘った特別栽培米を選択する者はジャポニカ種に拘りを持ち,手間がかからない高価な無洗米を選択する者は高級食材を扱う食品関連企業に勤務する者が多いが,低価格性は求めていなかった.

5. 結論

本稿では,栃木産米の輸出を事例とし,香港人の購買選択行動を考察し,その市場可能性を検討した.

香港ではジャポニカ種の需要も多く,栃木産の強みは,美味しさや安全性,信頼性であり,なすひかりは中国産やアメリカ産より高くても購入された.

中国産よりアメリカ産を選択する者は,香港の中心部の者が多く,ジャポニカ種を好む者が選択した.そして,アメリカ産よりなすひかりを選択する者の平均年収は高かった.しかしながら,栃木産の弱みは高価格であることも現実であり,食品関連企業や飲食店に勤務する者は,なすひかりより安価なアメリカ産を選択する可能性が高かった.また,なすひかりより特別栽培米こしひかりを選択する者は,ジャポニカ種を食す傾向が強く,特別栽培米こしひかりより無洗米こしひかりを選択する者は,食品関連企業の勤務者が多いが低価格性は求めていなかった.

以上,日本産の中でも安価ななすひかりは一般客にも主婦にも受け入れられたが,食品関連企業や飲食店の勤務者はより安価なアメリカ産を選択する傾向があった.外食産業に関わりが深い者がアメリカ産を選択する事実を,彼等の職場での知識や経験を照らせて考えれば,なすひかりであってもコストパフォーマンスは低いのかもしれない.香港の外食比率の高さを考慮し,栃木産の普及を図るには,日本食レストランを販売ターゲットとし,アメリカ産との価格差を克服しつつ,栃木産米の良さを更にPRする必要がある.良質な栃木産米が香港の食品関連企業や飲食店に浸透した後,一般の消費者にも購入してもらえるように,更なる販促活動が求められる.

引用文献
 
© 2015 The Association for Regional Agricultural and Forestry Economics
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