Journal of Rural Problems
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China’s Agri-Food Intra-Industry Trade: Focusing on Trade with East and Southeast Asia
Tomoo HiguchiRomio MoriSotaro Inoue
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2019 Volume 55 Issue 4 Pages 197-204

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Abstract

This study analyzes China’s agri-food intra-industry trade using the Grubel–Lloyd (GL) indices for 2000–2016. The GL indices of China are lower than the average values for East Asian countries during this period. This reflects the fact that Broad Economic Categories (BEC) 112 and BEC 121 have a larger trade share and lower GL indices. The BEC 122 trade between China and Korea, Thailand, and Malaysia has a large share and higher intra-industry trade rate.

1. はじめに

中国は,2001年のWTO加盟,さらにASEAN,チリ,ニュージーランド,韓国など多くの国・地域とのFTA締結で,貿易の自由化が進展し,大幅に関税が低下した.食料品・飲料についても,この過程で関税障壁が小さくなり,油糧種子,畜産物の輸入が一方的に増加する(産業間貿易)と同時に,ビールや食料調製品などで産業内における双方向的な貿易の比率が高まっている.

このような食料品・飲料(BEC(Broad Economic Categories)の1類)の貿易について,東アジア・東南アジア(以下,東・東南アジアと呼ぶ)を対象にした産業内貿易に関連する既存研究をみると,金田(20092013),樋口他(2017)を挙げることができる1金田(20092013)はBEC集計データをもとに産業内貿易の様態を数値で明らかにした.樋口他(2017)は,分析対象は同じくBEC1であるが,HS6桁データを利用することで,小部門の産業内貿易が全体に反映されるように計算している2.ただし樋口他(2017)は,BEC集計データとHS6桁分類のデータの違いによる分析結果の相違に関心をおいており,個別の国に対する観察は不十分といえる.

そこで本稿では,中国の食料品・飲料の産業内貿易に注目し,東・東南アジア諸国との貿易の状況とその変動要因を分析する.

なおここでの東・東南アジア諸国とは,本稿の分析期間で中国との貿易データが入手可能な,日本,韓国,台湾(UNのComtradeでは,「Other Asia, nes」と表記される),香港,シンガポール,マレーシア,タイ,インドネシア,フィリピン,ベトナムの10カ国・地域とした.

2. 分析方法とデータ

(1) データ

本研究の分析対象である食料品・飲料は,BEC1に該当する.BEC1をさらに3桁分類すると,BEC111:素材・原料,産業用,BEC112:素材・原料,家計消費用,BEC121:加工品,産業用,BEC122:加工品,家計消費用,の4つに分かれる.

具体的に述べると,BEC111には,大豆や小麦など,産業部門(植物油脂製造業,製粉業)が買い手となる原料,BEC112には,野菜,果実,魚介類(生鮮,冷蔵)など中間に加工業が介入せず直接消費者が購入する原料,BEC121には,パーム油などのさらなる加工が必要な加工品,BEC122には,精米,ビールなど消費者が直接消費する加工品が含まれる.

利用するデータは,UNのComtradeから得たHS(1996年版)6桁品目コードのドルベースの輸入額(2000~16年)である3.このHSデータを対照表にしたがってBEC3桁分類に対応させて以下で示す指数を計算した.

(2) 産業内貿易指数

ある貿易関係における産業内貿易の比率を示す値としてGrubel-Lloyd(以下,GL)指数を利用する.i国に関し(以下,添え字iは省略),b品目におけるj国とのGL指数(GLjb)は,j国への輸出(Ejb)とj国からの輸入(Mjb)を利用して,

  
GLjb={1-|Ejb-Mjb|/[Ejb+Mjb]}*100 (1)

となる.b品目がB部門に属する(b∈B)とすると,B部門のGL指数は,GLjbを用いて

  
GLjB = b[Ejb+Mjb]/b[Ejb+Mjb]*GLjb = bwjbGLjb (2)

で計算できる.

ここでwjbはb品目のB部門における貿易ウェイトである.(2)式から分かるように,B部門のGL指数は,b品目のGL指数を,b品目の貿易額(輸入+輸出)をウェイトとして集計したものとなる.したがって全体のGL指数計算には,各品目のGL指数のみではなく,貿易ウェイト×GL指数が大きな影響を与えていることが分かる.

またi国のGL指数(GLB)を求めるには,全ての貿易相手国jとのGL指数を加重平均すればよく,

  
GLB = j[EjB+MjB]/j[EjB+MjB]*GLjB = jφBjGLjB (3)

となる.ここで φBj はi国のB部門の貿易におけるj国の貿易ウェイトである.

本稿では,(1)式を用いて,HS6桁品目コードの各品目に対するGL指数を計算し,その後,(2)式によって,BEC3桁分類のGL指数を求める.さらにBEC1のGL指数は,(2)式でb={BEC111, BEC112, BEC121, BEC122},B={BEC1}とみなして得た.

(3) IITダイアグラム

(2)式において,例えばBEC122のGL指数を計算する場合,bはHS6桁品目コードで244品目になる.このように多数の品目の加重平均である部門全体のGL指数の構造を可視的な形で表現するために,IIT(Intra-Industry Trade,産業内貿易)ダイアグラムを利用する.

IITダイアグラム(図1)は,(2)式で,bがn品目あるとし,点Akに関して,第1品目から第k品目(1≤k≤n)に対する累積貿易ウェイト( b=1kwb )を横軸の座標,累積GL指数( b=1kwbGLb )を縦軸の座標とし,原点から順にこれらの点を結んでいったものである(以下,煩雑になるので,j国を示す添え字は省略する).

図1.

IITダイアグラムの例

最初に,B部門に属するn品目の各々のGL指数を求め,それを大きい順に並べ,第1品目,…第k品目,…,第n品目とする.図1にあるように,第1品目について,高さがw1*GL1,底辺がw1,C1が直角となる∆A1A0C1を描くと(ただしA0≡0),A1=(w1, w1GL1)となり,∠A1A0C1はarctan(GL1)を満たす.

同様にして第2品目から順に三角形を作図し,第k品目まで積み上げていくと,∆AkAk-1CkにおいてAkの座標は( b=1kwb , b=1kwb*GLb )となる.最終的に,第n品目に対するAnの座標は,横軸が1(=∑bwb),縦軸がこの部門のGL指数(GLBbwbGLb)となる.

なお図1は,1つの例として,第2品目のGL指数が10%以上で,第3品目が10%未満と想定して描かれている(GL2≥10>GL3).この時,A2を起点,G10を終点とする破線矢印は,GL指数が10%以上の品目の累積貿易ウェイト(W)を指し,その長さは累積GL指数(S)を示す.図1では,W=w1+w2,S=w1GL1+w2GL2となっている.

10%を基準として,G10の左側は産業内貿易指数が10%以上と比較的高い品目群,G10の右側は産業間貿易が支配的な品目群となる.G10の左右で2つの部門とみなすと,G10より左側のGL指数はS/Wで計算できる.

3. 分析結果

(1) 食料品・飲料の産業内貿易

まず,中国における食料品・飲料(BEC1)の貿易の概況を,顕示貿易統合比較優位指数を用いて確認しよう.表1にあるように,2000年ですでに,BEC111とBEC121の指数はマイナスで比較劣位部門となっている.これは小麦,大豆,パーム油などの加工用・飼料用原料に対する国内需要の大きさが反映されている.

表1. 中国の顕示貿易統合比較優位指数(%)
BEC 2000年 04年 08年 12年 16年
111 −1.1 −1.6 −1.4 −1.7 −1.7
112 0.72 0.54 0.37 0.29 0.29
121 −0.52 −0.97 −0.85 −0.78 −0.40
122 0.68 0.41 0.27 0.19 0.04

1)顕示貿易統合比較優位指数は,以下で定義するXRとMRを利用してXR―MRであり,0より大きいと比較優位であると判断する.ここでXR={[i国のB部門の輸出/i国の総輸出]/[世界のB部門の輸出/世界の総輸出]}とし,同様の式を輸入についても定義し,MRとする.計算では,全世界向け輸出,輸入データを用いた.

BEC112やBEC122の指数は,プラスで比較優位性をもつが,低下傾向にある.BEC122に関しては,低下が急速で,近年では比較優位性を失いつつある.この理由は,所得の増加とともに畜産品やワインなどの需要が増大し,WTO加盟やFTAの締結などで,輸入の増加としてそれが顕在化したためと思われる.

BEC112は,2016年においても0.29で依然として輸出競争力を維持している.これについては,輸出が好調な野菜や水産物が含まれていること,国内に生産基盤があり輸入がそれほど増加していないことなどを挙げることできる.

では以上の特徴をもつ中国のBEC1類(食料品・飲料)貿易のGL指数を東・東南アジア貿易の視点から観察していこう(表2).2000~16年における中国のGL指数は東・東南アジア諸国の平均値(以下,東・東南アジア平均とする)と比べ相対的に小さく,中国は東・東南アジアの中で産業内貿易の比率が低い国といえる.しかし,指数自体は増加傾向にあり,産業内貿易が徐々に活発になっていることが見て取れる.

表2. 中国のGL指数(%)
BEC 2000年 04年 08年 12年 16年
1 3.5 3.1 4.3 4.8 7.0
4.8 5.8 6.1 6.9 8.5
111 2.1 0.52 0.80 1.3 2.1
(0.07) (0.05) (0.05) (0.04) (0.04)
112 4.9 3.0 4.0 2.6 2.7
(0.31) (0.29) (0.24) (0.30) (0.34)
121 1.1 0.86 0.62 0.68 1.7
(0.07) (0.15) (0.29) (0.25) (0.14)
122 3.1 4.1 7.5 9.1 12
(0.55) (0.50) (0.41) (0.42) (0.48)

1)BEC1で下線付きの値は,東・東南アジア11カ国・地域の平均値.

2)( )内は貿易ウェイト.四捨五入の関係で,4部門の合計が1にならない場合がある.

次にBEC1を3桁分類に細分して,GL指数が東・東南アジア平均より小さくなる要因を考えていこう.ただしBEC111は,全期間で貿易ウェイトが非常に小さく(表2),全体へ与える影響はほとんどないため,以下の議論では除外する.まず2000年は,貿易ウェイトが5割を超えるBEC122のGL指数が,東・東南アジア平均より小さかったことに起因する.2004年以降は,貿易ウェイトが大きいBEC112とBEC121のGL指数が,東・東南アジア平均より小さく,BEC1のGL指数が低くなっていた4

BEC122に関しては,2000年代前半に値は小さいが,その後,2012年に9.1,2016年には10を超えて12となる.産業内貿易の理論的な背景には規模の経済による差別化された製品の生産が仮定されている.BEC122は,加工産業でかつ家計消費用の財を生産する部門でこの仮定に最も近い.このため,産業内貿易の比率が他の部門よりも相対的に高くなっている.また上昇傾向をもつのは,それまで生産できなかった財の製造が技術移転などを通じて可能になったためと思われる.

このようなBEC122の産業内貿易比率を2004年と16年の二時点で比較すると,貿易ウェイトがほぼ一定(0.50と0.48)となっており,BEC122の産業内貿易比率の増加はこの期間におけるBEC1のGL指数の上昇に寄与している.

最後に比較優位性と産業内貿易指数の関係を確認しておこう.先ほどみた比較優位指数とGL指数の相関係数を求めると,0.08(BEC111),0.64(BEC112),0.62(BEC121),−0.95(BEC122)となった5

ここで興味深いのは,BEC112とBEC122の相関係数の符号が異なっている点である.どちらの財も家計消費用であるが,世界貿易での比較優位性が低下する中,東・東南アジアでは,BEC112(素材・原料)の産業内貿易比率は低下する一方,BEC122(加工品)のそれは上昇している.

これは,素材・原料の製造は差別化が困難で,比較優位性低下が産業間貿易の増加となるが,加工品では世界貿易での比較優位性が低下しても,東・東南アジア諸国を対象にした場合,財の差別化を通じて一部の財を輸出することが可能なためであろう6

(2) BEC112,121の産業内貿易

前節では,2004年以降,中国におけるBEC1の低いGL指数の要因が,BEC112,BEC121のGL指数の低さにあることを明らかにした.そこで本節ではこの2つの部門を詳察する.

3には,BEC112について貿易ウェイトが大きい4カ国のGL指数が記されている.2004年以降,これら主要な相手国とのGL指数は東・東南アジア平均と比べて小さく,BEC112全体のGL指数を引き下げていた.

表3. 中国のGL指数(BEC112)(%)
国名1) 2004年 08年 12年 16年
日本 2.8 4.1 3.8 2.2
3.1 4.7 7.4 19
(0.42) (0.29) (0.21) (0.18)
タイ 2.8 5.2 1.6 2.0
34 56 36 54
(0.12) (0.14) (0.26) (0.25)
韓国 2.0 4.2 5.8 8.5
14 22 16 17
(0.16) (0.15) (0.10) (0.10)
香港 0.5 0.3 0.2 1.0
0.5 0.3 0.2 1.0
(0.10) (0.09) (0.10) (0.11)

1)2004年以降の2年以上でウェイトが0.1を超える国.

2)斜字体は,BEC112の集計値で算出したGL指数.全ての年で,日本,韓国,香港の輸入超過,タイの輸出超過.

3)( )内は,貿易ウェイト.

ただし個々の貿易パターンは異なっている.表3の集計値によるGL指数(斜字体)をみると,日本,韓国,そして香港はほぼ20以下で,中国の輸出特化が起こっているのが分かる7.一方タイは全ての年で30より大きく,2008年と16年には50を超えており,集計値では産業内貿易の比率が非常に高い.

以上のことは,中国と4カ国との貿易は,HS6桁レベルで産業間貿易が支配的であるが,日本,韓国,香港との貿易は,中国の輸出特化になっていることを示している8.一方タイとの貿易は,中国がにんじんや温帯果実(りんご,みかん,ぶどうなど)を輸出する中で,タイからキャッサバチップや熱帯果実(マンゴー,マンゴスチン)を輸入する相互貿易を反映して9,集計値の産業内貿易指数が高くなっているといえる.

なお2012~16年に日本の集計値のGL指数が大きく上昇する一方,HS6桁データでは低下しているが,その理由は以下のようである.この期間に,日本の冷凍ホタテの輸出が著増し10,日本の輸出集計値(BEC112)が中国のそれに近づいたため,集計値のGL指数は増加した.一方HS6桁レベルでは,冷凍ホタテ(GL指数は0)の貿易ウェイトが高まり,BEC112のGL指数は低下した.

次にBEC121を観察する.表4には,2004年以降,中国のBEC121に占める貿易ウェイトを合計するとほぼ8割を超えるインドネシアとマレーシアに対するGL指数を示している.GL指数は,2016年のマレーシアで1.45,それ以外の全ての年で1未満となっている.

表4. 中国のGL指数(BEC121)(%)
分類 2004年 08年 12年 16年
    インドネシア
BEC121 0.04 0.10 0.02 0.03
(0.28) (0.33) (0.40) (0.49)
パーム油1) 0.00 0.00 0.00 0.00
(0.89) (0.83) (0.89) (0.82)
    マレーシア
BEC121 0.25 0.27 0.28 1.45
(0.56) (0.54) (0.43) (0.29)
パーム油1) 0.00 0.00 0.00 0.01
(0.96) (0.94) (0.92) (0.85)

1)パーム油は本文の注11を参照.

2)( )内は貿易ウェイト.BEC121は東・東南アジア10カ国・地域でのウェイト.パーム油はBEC121でのウェイト.

この要因を,BEC121を構成する個々の品目にさかのぼって調べると,パーム油に関連する4品目(以下,パーム油とする)に起因することが分かる11.パーム油は,この2国から中国への輸出特化状態であり,産業内貿易指数がほぼゼロである(表4).またパーム油のウェイトから,2国のBEC121の大部分がパーム油の貿易であり,中国のBEC121に対するGL指数の低さはパーム油に由来しているといえる.

(3) BEC122の産業内貿易

本節では,IITダイアグラムを利用してBEC122の産業内貿易の変動要因を観察する.

BEC122における各国のGL指数を表5に示した.中国のBEC122のGL指数が東・東南アジア平均より大きくなる2008年以後(表2),GL指数が高い国は,マレーシア,台湾,韓国,タイ,シンガポールである.ただし台湾やシンガポールは,貿易ウェイトが小さく,全体(BEC122)への寄与は微々たるものである.そこで以下では,マレーシア,韓国,タイの3カ国に注目し,IITダイアグラムを通して,中国との関係を観察する12

表5. 中国のGL指数(BEC122)(%)
国名1) 00年 04年 08年 12年 16年
マレーシア 7.6 20 17 31 31
(0.03) (0.02) (0.04) (0.04) (0.05)
シンガポール 7.7 6.7 2.7 11 21
(0.02) (0.03) (0.04) (0.04) (0.03)
韓国 6.0 6.8 14 18 20
(0.09) (0.11) (0.13) (0.11) (0.12)
タイ 3.2 4.5 9.6 19 18
(0.03) (0.05) (0.06) (0.06) (0.08)
台湾 8.7 24 24 21 15
(0.005) (0.01) (0.02) (0.03) (0.04)
香港 2.7 2.3 6.0 7.4 9.1
(0.18) (0.17) (0.19) (0.19) (0.24)
フィリピン 3.5 12 7.9 6.9 8.2
(0.01) (0.01) (0.01) (0.02) (0.02)
インドネシア 2.1 8.6 8.4 6.8 7.6
(0.03) (0.01) (0.03) (0.04) (0.05)
日本 2.4 2.8 4.8 4.3 7.5
(0.62) (0.60) (0.47) (0.43) (0.28)
ベトナム 4.6 6.3 9.9 3.1 5.1
(0.002) (0.01) (0.01) (0.05) (0.09)

1)2016年のGL指数が高い順に並べた.

2)( )内は,貿易ウェイト.

まずマレーシアのIITダイアグラムをみてみよう(図2).2004年に,GL指数は20.5で,10%以上のGL指数を示す品目群に関して,図1で定義したG10の座標(W, S)は(0.27, 20)となっている.この年のGL指数は,他の国と比較すると(表5),台湾と共に突出して高い値である.これは,G10の左側にある品目群の寄与である.具体的な品目名を把握するため,各品目の(GL指数×貿易ウェイト)を基準にして調べると,その他の冷凍魚(HS030379)や調製品食料品(HS210690)の影響が強くあらわれているといえる13

図2.

IITダイアグラム(マレーシアのBEC122)

1)S/Wは,75(2004年),75(08年),64(12年),60(16年).

2004年以降,曲線は,08年に一時的に下方に移動するが,12年に大きく上昇し,16年にはその水準を維持している.2004年と16年の(GL指数×貿易ウェイト)を求め,その差の大きい品目を並べると表6のようになる.ここから,砂糖菓子(HS170490)やベーカリー製品(HS190590)などの製菓類,その他の調製食料品(HS210690),ソース(HS210390)のGL指数あるいは貿易ウェイトが大きくなり,曲線の上昇に寄与したことが分かる.さらにこれらの部門は,12年や16年の高い曲線の位置に強い影響を与えている.

表6. HS6桁レベルのGL指数(%)
HS 2004年 2016年
GL w GL w
   マレーシア
170490 8.7 0.029 90 0.045
210690 98 0.078 96 0.102
210390 76 0.017 75 0.045
190590 43 0.013 49 0.041
   韓国
030379 3.5 0.302 21 0.155
200899 18 0.017 60 0.039
220300 45 0.005 97 0.022
210690 38 0.020 51 0.053
   タイ
210690 46 0.018 53 0.097
170490 99 0.005 84 0.027
030379 5.5 0.052 55 0.035
190410 43 0.002 83 0.015

1)GLはGL指数,wは貿易ウェイトである.2004年と16年の(GL×w)を求め,各国においてその差が大きい順にHSコードを記した.

次に韓国をみると(図3),2004年のGL指数は6.8で,その後,曲線は徐々に上方にシフトし,16年には13.5ポイント増加した20.3であった.これは,G10より左の品目群の貿易ウェイトが0.2から0.49に増加し,またその品目群の平均GL指数(S/W)も26から39に増加したことが貢献している.この現象を個別品目で確認すると(表6),その他の冷凍魚(HS030379),調製食料品(HS210690),ビール(HS220300),果実,ナット(HS200899)で,GL指数と貿易ウェイトが同時に高まり,曲線が上昇している.

図3.

IITダイアグラム(韓国のBEC122)

1)S/Wは,26(2004年),28(08年),36(12年),39(16年).

タイに関しては(図4),2004~12年に曲線が上方にシフトし,その後やや低下する.2004年と16年のS/Wは51であるので,曲線が上昇したのは,産業内貿易の割合が比較的高い品目群のGL指数が高まったのではなく,その貿易ウェイトが0.08から0.35となったことによる.このような変化には,タイから中国へ一方的に輸出(GL指数が0)する精米(HS100630)が影響している.2004~16年に,その貿易ウェイトが0.64から0.22へと低下しており,それに伴ってG10が右に移動した.

図4.

IITダイアグラム(タイのBEC122)

1)S/Wは,51(2004年),32(08年),50(12年),51(16年).

またこれと並行してG10の左側では,その他の調製食料品(HS210690),砂糖菓子(HS170490),その他の冷凍魚(HS030379),穀物の調製食料品(HS190410)で,GL指数あるいは貿易ウェイトが高まり(表6),全体のGL指数の上昇に寄与した.なお上記の品目群は,2012年(19)や16年(18)の高いGL指数自体にも貢献している.

4. おわりに

本稿ではWTO加盟後の中国に関し,東・東南アジア諸国との食料品・飲料(BEC1)貿易の構造変化を解明した.GL指数を用いて中国の産業内貿易の割合を計測すると,2000~16年で常に東・東南アジア平均値より小さく,東・東南アジア地域内では産業内貿易比率が小さい国であることが示された.ただし2004年からGL指数は上昇傾向にあり,産業内貿易が徐々に活発になっていることが分かった.

次にBEC3桁分類によって,BEC1のGL指数の変動要因を探ると,2004年以降,GL指数が小さいのは,貿易ウェイトが相対的に大きいBEC112やBEC121で産業内貿易の比率が低いことが1つの理由となっていた.またBEC1のGL指数上昇にはBEC122が寄与していた.

中国のBEC112のGL指数が東・東南アジア平均(BEC12)より低いことに関しては,この部門での日本,韓国,香港,タイとの貿易の影響が大きい.BEC121については,インドネシアとマレーシアからパーム油を輸入(産業間貿易)していることに起因してGL指数が小さくなっていた.

最後にIITダイアグラムによって,マレーシア,韓国,タイの貿易構造を分析した.その結果,同じBEC122に属する品目でも,産業内貿易が活発なものと産業間貿易が優勢なものに分かれており,品目ごとにGL指数は大きく異なっていた.

そして全体のGL指数の変動に対しては,多数の品目の中で,GL指数と貿易ウェイトの積が大きく上昇する少数の品目が強く影響していることが明らかになった.

1  既存研究の中には,加賀爪(2009)のように,生産工程間での垂直的な分業に伴う貿易を産業内貿易とするものもある.しかし本稿では,産業内貿易を差別化された商品による双方向の貿易と定義しており,工程間分業による貿易は産業間貿易となる.工程間分業を産業内貿易と捉えた分析は今後の課題としたい.

2  Bojnec and Fertőb(2016)は,HS6桁データを用いてヨーロッパ諸国の農産物の産業内貿易を分析している.

3  以下で説明するGL指数の計算では,i国からj国への輸出額は,j国のi国からの輸入額を利用する.

4  2004年は,2000年と同様,BEC122の影響もある.2000年と04年におけるBEC122の低いGL指数と高いウェイトは,脚注12にあるように,日本との貿易に由来する.

5  2000~16年の全てのデータを利用して計算.

6  東・東南アジアでは,比較優位性低下要因の畜産品やワインの交易が少ないということもある.

7  韓国のGL指数が相対的に高いのは,魚介類(冷凍のいか030749,その他のもの030799)やくり(080240)の輸出による.

8  樋口他(2017)は,BEC1について集計値によるGL指数とHS6桁データによるGL指数との相違を議論している.

9  HSコードを示すと,071410(キャッサバ芋),070610(にんじんおよびかぶ),080450(グアバ,マンゴスチン,マンゴー),080610(生鮮ぶどう),081090(その他の生鮮果実(ランブータン,パッションフルーツ,レイシなどを含む),080520(温州みかんなど),080810(りんご)となる.

10  HS030729(スキャロップ(その他のもの;冷凍))の増加.

11  パーム油4品目は,パーム油およびその分別物(HS151110, 151190),パーム核油およびババス油ならびにこれらの分別物(HS151321, 151329)を指す.

12  なお2000年と04年に高い貿易ウェイトを記録した日本のGL指数は非常に低い.このように日本は,2000年代前半に,BEC122部門を通じて中国のGL指数を引き下げる効果をもった.

13  HS030379のGL指数(貿易ウェイト)は72(0.11)である.HS210690は表6参照.なお本文中で,HS6桁品目コードの名称を全て表記すると煩雑になるので,省略して記した.正確な名称は,付表1を参照.

Notes
付表1. HSコードの名称
HS 名称
030379 魚(冷凍したものに限る),その他のもの(さんま,かじき,たいなど)
030749 いか(冷凍,乾燥)
160414 まぐろ,かつお,はがつお(調製しまたは保存に適する処理をしたものに限る)で気密容器入りのもの
170490 砂糖菓子(チューインガムを除く)
190410 穀物または穀物産品を膨張させてまたはいって得た調製食料品
190530 スイートビスケット,ワッフル,ウエハー
190590 その他のベーカリー製品(あられ,せんべいなどを含む)
200899 果実,ナットその他植物の食用の部分(その他の調製をしまたは保存に適する処理をしたものに限る)で,その他のもの.
210390 その他のソース,ソース用調製品など
210690 調製食料品(他に該当しないその他のもの)

資料:日本関税協会(1999)を参考にした.

引用文献
  •  加賀爪 優(2009)「東アジア共同体構想における農業・環境問題と産業内貿易の意義」『京都大学生物資源経済研究』14:43–63.
  • 金田憲和(2009)「東・東南アジア域内の食料品産業内貿易の変化―加工度・用途別の分析―」『2009年度日本農業経済学会論文集』,303–309.
  •  金田 憲和(2013)「東アジアにおける食品貿易の構造―産業内貿易の視点から―」『フードシステム研究』20(2):96–107.
  • 日本関税協会(1999)『輸出統計品目表 2000年版』.
  •  樋口 倫生・ 井上 荘太朗・ 伊藤 紀子(2017)「東アジアにおける産業内貿易の再考―HS6桁データを利用して―」『フードシステム研究』24(3):293–298.
  •  Bojnec,  S. and  I.  Fertőb (2016) Patterns and Drivers of the Agri-Food Intra-Industry Trade of European Union Countries, International Food and Agribusiness Management Review 19(2): 53–74.
 
© 2019 The Association for Regional Agricultural and Forestry Economics
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