Yearbook of Asian Affairs
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2016 Volume 2016 Pages 349-374

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2015年のマレーシア ナジブ首相の巨額汚職疑惑にゆれる

概況

2015年は,ワン・マレーシア開発(1MDB)関連問題に翻弄される1年となった。深刻な経営難と多額の負債に関連する捜査のなかで,ナジブ首相自身の巨額汚職疑惑が浮上した。ナジブ首相は,自らに批判的な発言をした副首相を内閣改造で更迭し,1MDB関連の捜査を主導していた司法長官を,健康問題を理由に任期満了前に交代させた。

2008年から共闘していた野党連合の人民連盟(PR)が,構成政党間の対立により6月に瓦解した。その後,汎マレーシア・イスラーム党(PAS)の内部分裂によって結成された新党「国民信頼党」(Amanah)が,民主行動党(DAP),人民公正党(PKR)とともに,新しい野党連合「希望同盟」(Pakatan Harapan)を発足させた。

経済面では,実質GDP成長率が5.0%となり,前年と比較して鈍化した。世界的な原油安や,国内の政治情勢の不安定などを背景に,マレーシアの通貨リンギは1年を通して下落し,対ドルレートは1ドル=4リンギ台に突入した。

対外関係では,2015年マレーシアはASEAN議長国を務めた。任期中,関連会議が開催され,ASEAN共同体や南シナ海問題など重要な問題について協議が行われた。ASEAN経済共同体は12月末に予定どおり発足した。南シナ海問題は,関係諸国間で合意が取れず,拡大国防相会議では異例の共同宣言見送りとなった。

国内政治

1MDB問題

2015年は,政府系投資会社ワン・マレーシア開発(1MDB)に関連する問題で大きく揺れ動いた1年となった。1MDBは,首相自らが経営諮問委員会の委員長を務めている投資会社である。1MDBが,深刻な経営難に陥っていることが2014年に明らかとなり,それに関連して1MDBの乱脈経営や資金の不正流用問題が多く報じられるようになった。

1MDBの負債総額は2014年3月の時点で約420億リンギあり,2015年明け早々の1月7日には20億リンギのブリッジ・ローンが,期限であった2014年12月までに国内の大手銀行に返済できなかったことが発覚した。この20億リンギのブリッジ・ローンは返済が完了したと,CEOのアルル・カンダサミーによって2月13日に報告された。一部報道によると,政府と密接な関係にあるマレーシア人企業家による救済支援があったという。さらに,3月になると,政府は1MDBに対し,公的資金投入を決め,9億5000万リンギがスタンドバイ・クレジットから拠出された。一連の救済措置の後も,依然として1MDBは多額の負債を抱えており,3月12日に財務省の第二大臣であるアフマド・ハスニは,「1MDBの負債は巨額で,その経営は不安定な状態である」と認めた。

1MDBに関する問題は深刻な経営難にあることに加え,資金の不適切な利用,不正流用疑惑にある。1MDBとペトロサウジ・インターナショナル(以下ペトロサウジ)との合弁事業において,事業への出資金やペトロサウジに貸し付けた資金の一部がペトロサウジを経由して,ナジブ首相およびその家族と懇意にある企業家ロウ・テックジョー(通称ジョー・ロウ)の企業グッド・スターに流れた疑いがあり,マネーロンダリング目的による1MDBの設立も疑われている。

当初,1MDBの負債や,資金流用問題について会計検査は実施しないとしていた決算委員会(PAC)だったが,2月26日になると,その方針を撤回し,会計検査院に対して検査を実行するよう求めた。また,ナジブ首相もPACのこの方針を追認し,会計検査院に対し,1MDBに対する検査および,その結果のPACへの報告を指示した。PACは,国内の銀行から借り入れた20億リンギのローン返済の資金源,ペトロサウジ関連問題,財務省による公的資金注入などを重要問題として挙げ,これらの点に注意を払い検査するよう助言した。

この検査の動きに対して,汚職対策庁は,会計検査院がPACに提出する報告書を待って,1MDBの口座の違法性や犯罪性に関する独自の捜査を実施する,と3月9日に発表した。翌日10日には,1MDBの捜査に関する特別タスクフォースが,司法長官府と警察,汚職対策庁で構成,設置されることも発表された。さらに,バンク・ヌガラ(中央銀行)も6月には特別タスクフォースに加わり,捜査に協力することになった。

バンク・ヌガラは,8月21日に調査報告書を新司法長官(後述)に提出し,1953年外国為替管理法違反で1MDBの刑事起訴を求めたが却下された。10月1日に対応の見直しを再度司法長官に求めたが覆らず,両者の溝が明らかとなった。同月9日,バンク・ヌガラは1MDBに付与していた総額18億3000万ドルのペトロサウジ関連の海外投資に対する3つの許可の取り消しを発表し,投資総額をマレーシアへ返送するよう1MDBに指導した。このバンク・ヌガラの決定を受け,司法長官府は「1MDBによる法律違反行為はなかった」「(バンク・ヌガラは)これ以上何もすべきではない」という声明を発表した。

11月23日には,1MDB関連会社で火力発電などを手がける,エドラ・グローバル・エナジー(Edra Global Energy)およびその子会社の全株式を,中国の大手国営企業で原子力発電などを手がける中国広核集団(China General Nuclear Power Corporation: CGN)に売却することが発表された。株式売却総額は98億3000万リンギだった。さらに,12月31日は,不動産再開発を扱う関連会社バンダール・マレーシア(Bandar Malaysia)の株式60%を,中国国営の鉄道建設会社の中国中鉄(China Railway Engineering Corporation: CREC)とマレーシアのイスカンダール・ウォーターフロント・ホールディングス(Iskandar Waterfront Holdings: IWH)に総額74億1000万リンギで売却することを発表した。一連の株式売却で,1MDBの債務不履行の可能性は薄れた。

ナジブ首相の疑惑発覚

特別タスクフォースによる捜査が進むなか,ついにはナジブ首相の巨額汚職疑惑にまで事態は発展し,1MDB問題はマレーシア社会をいっそう混乱に陥れた。7月2日に『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)が,「ナジブ首相の個人名義のものと思われる口座に7億ドル近い資金が1MDBから流れていた」と報じた。この疑惑は,WSJのほかに,イギリス人ジャーナリストが運営するウェブサイト「サラワク・リポート」によっても報じられた。

WSJおよびサラワク・リポートの報道によると,総額で約7億ドルの資金は,2つのルートからナジブ首相の個人口座に入金された。1つめは,アブダビのInternational Petroleum Investment Company(IPIC)傘下(株式の約98%を保有)のAabar投資会社が所有するスイスのFalcon Private Bankのシンガポール支店経由で2013年3月(第13回総選挙直前)に約6億8200ドル(約26億リンギ),2つめは,1MDBの子会社であったSRC Internationalの口座から,関連会社のGardingan MentariおよびIhsan Perdanaの口座を経由して,2014年12月から2015年2月にかけて,総額4200万リンギが流れたとされる。

1MDBおよびナジブ首相はともに,一連の報道を即座に否定した。また,ナジブ首相は,発表した声明のなかでマハティール元首相について言及し,「すべて私を打倒するための陰謀である」と,裏でマハティール元首相が外国と結託して,このような「最新の嘘」を報道させたと説明した。

特別タスクフォースは,7月6日にWSJで資金流入が指摘された口座を凍結し,8日に1MDB本社への家宅捜査を実施した。その際,会議の議事録,銀行取引明細書,帳簿,ノート型パソコン数点などを含む重要参考物品を押収した。また,6日に実施した銀行口座凍結に関して,WSJで報道された口座のうち,AmIslamic Bank本店(クアラルンプール)のナジブ首相名義の3口座は,2013年8月30日と,2015年3月9日にすでに閉鎖されており,凍結は行っていないが,これらの口座に関わる書類については特別タスクフォースが押収したと発表した。

8月3日に汚職対策庁から出された声明で,約7億ドルが振り込まれた口座が,ナジブ首相の個人口座であったことが正式に認められたが,翌々日の5日に出された声明で,これは中東のある者から寄付された献金であり,1MDBとは直接関係のないものであったとの捜査結果が公表された。

1MDB問題対応人事

7月28日にナジブ首相は内閣改造を実行した。その結果,ムヒディン・ヤシン副首相が更迭された。ムヒディン副首相は,3月の政府による1MDBへの公的資金注入に反対するなど,これまでも1MDB問題に対する懸念を示していた。

ムヒディン更迭の決定打となったのは,「エッジ」2誌の発行停止処分に対する発言であった。「エッジ」は,ペトロサウジやジョウ・ローが絡む1MDB資金不正流用疑惑について,資金の流れを詳細に報じた記事を7月20日付の日刊誌『エッジ・ファイナンシャル・デイリー』(Edge Financial Daily)に掲載した。その記事が問題視され,3カ月の発禁処分命令が下された。「エッジ」は当該記事の根拠が,ペトロサウジの元社員から提供されたデータであるとしていたが,それに対する政府側の見解は,それらのデータは改竄されたものであるというものだった。一方,ムヒディンは,「1MDBについて事態を把握するために自身も『エッジ』を講読していた」と,1MDBに関する「エッジ」の記事を信用している趣旨の発言をした。1MDB問題に批判的な立場をとっていたモハマド・シャフィ・アプダル農業・農業関連産業相も更迭された。その一方で,後任の副首相には,ナジブ首相の元秘書で,首相擁護の姿勢,発言を貫いているアフマド・ザヒド・ハミディが就任した(内務相兼任)。さらに,新聞などでナジブ首相擁護の発言をしていたサバ州議会議長のサレー・サイド・ケルアクが,上院議員に任命され,通信・マルチメディア相として入閣した。

さらに,1MDB関連の捜査を主導していたガニ司法長官が,健康問題を理由に任期満了前に交代させられる,事実上の更迭人事が内閣改造と同日に発表された。8月5日に汚職対策庁は,新司法長官から「特別タスクフォースは今後不要である」との助言を受け,ともに特別タスクフォースを構成していた警察やバンク・ヌガラとの合同捜査は今後行わず,各機関が個別に捜査を行っていくと発表し,特別タスクフォースは解散となった。これにより,マレーシア国内においてナジブ首相の責任を追及しうる本格的な捜査が行われる可能性が低くなった。

ナジブ首相は,内閣改造後に発表した声明で,ムヒディンおよびそのほかの大臣の解任について触れ,「政府に対する国民の理解に否定的な影響を及ぼしうるような内閣内部の意見や見解の相違を,公の場において示すべきではなく,それは連帯責任の原則に相反する行為である」と述べ,1MDB問題に不都合な人物外しが行われたと社会に強く印象づけた。

疑惑に対する社会の反応

一連の1MDB問題および首相自身の巨額汚職疑惑に対し,ナジブ首相の責任を追及する声が各方面から多く上がった。8月初旬には,約7億ドルがナジブ首相の個人口座に振り込まれていたことが確認され(前述),ナジブ首相自身もそれを認めた。しかしながら,7億ドルもの巨額資金が中東のある個人による,個人的な政治献金であり,違法性のないものだ,という説明は,マレーシアの多くの人々を納得させるに足るものではなかった。捜査結果が公表された後も,ナジブ首相への不信感は,オンラインメディアなどを通して高まり続けた。

独立記念日直前の8月29・30日にかけて,市民団体ブルシ(Bersih)による大規模デモ「ブルシ4.0」(Bersih 4.0)が全国的に展開された。これまでにも,過去3回,ブルシは公正な選挙などを求めて,大規模なデモを全国的に展開してきた。4回目となったブルシ4.0は,ナジブ首相の退任を求めたものとなった。ブルシ4.0のデモには,2日間で約30万人(主催者発表)が参加した。デモには,マハティール元首相も参加し,後日警察から事情聴取を受けた。

ブルシ4.0に対抗する形で,マレー系の非政府組織や統一マレー人国民組織(UMNO)党員などによる「赤シャツデモ」が約2週間後の9月16日にクアラルンプールで実施され,彼らはナジブ首相支持を掲げた。「赤シャツデモ」は,全国から約8万人を動員したと推定されている。ナジブ首相支持を掲げて実施されたデモであるが,与党連合の国民戦線(Barisan Nasional: BN)を構成する各党は,公式な見解を出さないことで合意した。したがって,表立った支持はなされなかったが,現職の閣僚がデモに参加するなどした。

人民連盟の瓦解

2014年,「カジャンの布石」(Kajang Move)と呼ばれたスランゴール州の州首相交代問題で露呈した野党連合・人民連盟(Pakatan Rakyat: PR)の構成政党間の不協和音(『アジア動向年報 2015』参照)は,2015年にはさらに深刻化し,結局6月に人民連盟は瓦解した。決定打となったのは,汎マレーシア・イスラーム党(PAS)が政権を担っているクランタン州の州法で導入を目指していたハッド刑をめぐる,民主行動党(DAP)とPASの対立だった。

ハッド刑とは,シャリーアで量刑が定められた刑罰で,その罪状にあわせて手首切断や,石打ちによる処刑などが科せられるものである。ハッド刑施行のための法案は,1993年にクランタン州の州議会レベルではすでに可決されていたが,施行は連邦憲法違反のため,長らく保留されたままとなっていた。今回,クランタン州におけるハッド刑施行に向けた法案を連邦下院議会に提出することをPASは目指していたが,DAPは強く反対し,PASを批判していた。ハッド刑の施行法案の提出をめぐっては,PAS党内部でも意見が分かれていた。ハッド刑の導入を強く目指していたのは,党内のイスラーム知識人のウラマーたちであった。一方で,イスラーム系学生運動出身者が多い進歩派はPRの構成政党間の協力関係を重視し,導入には慎重な立場をとっていた。このような,党間,党内の立場の対立が,事態を余計に混乱させることとなった。

改善の糸口が見えないなか,2月8日には首都クアラルンプールのPAS本部でPRを構成するDAP,PAS,人民公正党(PKR)の3党党首会合が開催され,引き続き同盟関係を維持,問題解決にむけて協力していくことが確認された。ただし,党首会合後の合同記者会見に,PASの党首であるアブドゥル・ハディは出席せず,依然として構成党間の軋轢が解消しきれていない印象を与えた。

DAPとPASのハッド刑をめぐる対立が,PR解体へと展開した決定的な出来事は,2015年6月初旬に開催されたPASの党大会で,ウラマーを中心とした新指導部が選出され,さらにはDAPとの協力関係を断つ,という決議が出されたことにある。ウラマーを中心としたPASの新指導部主導によるこの決議を受け,同月15日,DAPは,党の中央執行部会議を開いた。協議の結果,幹事長であるリム・グアンエンは,PASの決議を了承し,7年間にわたった人民連盟を解消すると発表した。さらに,翌16日には,PRのもうひとつの構成党である人民公正党(PKR)の総裁であるワン・アジザもPRの解体を宣言した。

その後,PAS党内にあった対立は,指導部に選出されなかった進歩派が分裂し,7月13日には「新たな希望運動」(Gerakan Harapan Baru)の結成を宣言した。その後,「新たな希望運動」は,8月にマレーシア労働者党として登録されていた党名を改変して,新党「国民信頼党」(Amanah)の結成を決定し,諸々の手続きを経て,9月16日に発足した。その後,Amanahは,PASとの協力関係を解消し,PRを解体したPKRとDAPとともに,新たな野党連合である「希望同盟」(Pakatan Harapan)の結成を9月22日に宣言した。

首相自らの巨額汚職疑惑でナジブ政権が不安定化するなか,体制転換の好機ともいえる時期に,野党連合自体も解体および再結成と,安定さと勢いを欠き,その実現に向けた具体的な施策を講じることができないままであった。

野党指導者たちの死去,議員資格剥奪,停職

2015年は,長らく野党を率いた指導者たちが政界から姿を消した。年明けに,長年PASの最高指導者で,クランタン州の州首相を務めたニック・アブドゥル・アジズ・ニクマ(以下,ニック・アジズ)が,がんで予断を許さない状態だと報じられ,2月12日に84歳で死去した。葬儀には,数千人が集まったとされ,ナジブ首相は「我々は尊敬するムスリム指導者を失った」と哀悼の意を表明した。2日前に有罪判決を受け,収監されたPKRの指導者アンワル・イブラヒムは,葬儀参列のために一時保釈を求めたが,認められなかった。

そのアンワル・イブラヒムは,2月10日に同性愛行為の罪に対して連邦裁判所(最高裁)から有罪判決が言い渡された。アンワルの同性愛行為の罪については,2012年に高等裁判所が無罪の判決を出していたが,2014年3月に出された控訴裁判所の判決では,高裁の判決が覆され有罪となっていた。今回の連邦裁の有罪判決により5年間の禁錮刑が確定し,アンワルは連邦下院議員資格を剥奪された。3月7日には,この判決を不服とし,アンワルの釈放を求めた抗議集会「我々は反対する」(KitaLawan)が首都クアラルンプールで実施された。

長らく野党を先導してきたDAPのリム・キッシャンは, 10月22日に半年間の議員停職処分を受けた。リム・キッシャンは,PACの新委員長の任命に関する議論の際,「パンディカー・アミン連邦下院議会議長は1MDBに対する捜査を放棄し,議長としての権力を乱用している」と非難した。リム・キッシャンのパンディカー議長に対する一連の発言は,「議長を侮辱するもの」であると政府から判断され,首相府相のアズリナ・オスマンによってリム・キッシャンの議員資格停止処分の審議案が提出された。審議の結果,107人の賛成多数(反対77人)で可決され,6カ月間の議員停職処分が決定した。

順当な補選

2014年の補選では,ペラ州のテロック・インタンの連邦下院議員の補選選挙で,DAPが与党連合である国民戦線側に議席を奪回されるという予想外の敗北を喫し,野党の勢いがそがれた(『アジア動向年報 2015』参照)。これに対し,2015年に3選挙区で実施された連邦下院議員の補選は波乱なしの結果に終わり,前職議員の所属政党の候補者が当選し,議席を引き継ぐことになった。

PASのニック・アジズ死去に伴い,3月22日にクランタン州チェンパカ選挙区で補選が実施された。その結果,PASのアフマド・ファサン・マフムードが,1万899票を獲得し,そのほかの3人の無所属候補を大きく引き離して当選した。ニック・アジズの選挙区とあり,与党は対立候補を立てることはしなかった。

ヘリコプター墜落事故によるジャマルディン・ジャリス(UMNO)死去に伴い,5月5日に実施されたスランゴール州ロンピン選挙区の連邦下院議員補選において,BN・UMNOの候補者であるハッサン・アリフィンが,PR・PASの候補者であるナズリ・アフマドを得票差8895票で破り,当選した。2013年の総選挙の際と比較して,得票差が縮まったことと,華人有権者のBN支持回帰が指摘された。

同性愛の罪に対する有罪が確定したアンワル・イブラヒムの議員資格剥奪に伴い,5月7日に実施されたペナン州プルマタン・パウ選挙区の補選(連邦下院議員)において,アンワル・イブラヒムの妻でPKRの代表を務めるワン・アジザが3万316票を獲得し,前職である夫の議席を引き継いだ。BNからはUMNOのスハイミ・サブディンが立候補し,2万1475票を獲得したが落選した。

懸念が残る法案の可決

2015年は,社会で広く問題視された法案が複数可決され,成立した。大きな議論となった法案のひとつが,修正扇動法であった。もともと,ナジブ首相は扇動法(Sedition Act)を廃止し,国家調和法(National Harmony Act)に置き換えると2012年に発表していたが,その決定を翻し,扇動法を維持すること,改正するつもりであることを,2014年のUMNOの党大会で明言していた。

2012年に7人だった扇動法(修正前)違反の逮捕者は,2013年に18人,2014年に44人と,2013年以降,増加の傾向にある。2015年の逮捕者には,アンワル・イブラヒムの娘で,連邦下院議員のヌルル・イザも含まれる。ヌルル・イザは,下院議会で,同性愛の罪で収監された父アンワルのスピーチを代読し,父の収監へ抗議,司法を批判したことが扇動的とされ,3月16日に逮捕された(18日に保釈)。3月30日には,ハッド刑関連の扇動的な記事を掲載したとして,エッジ・メディア・グループが運営するオンラインのニュースサイト「マレーシアン・インサイダー」(Malaysian Insider)の記者3人が逮捕された。翌日にはエッジ経営者と,「マレーシアン・インサイダー」の最高責任者が扇動法違反で逮捕された。

近年の扇動法を取り巻く状況から,野党は,本修正法が政府に対する批判を押さえつけるために利用されるのではないかと懸念を抱いていた。修正扇動法案が連邦議会に上程されると,「基本的人権を侵害する」として,野党は強く反対したが,同法案は4月10日に可決された。修正法では,刑期が最長3年から7年に延長され,傷害や財産の損害を伴う扇動行為に対しては最長20年となった。さらに,ソーシャルメディアなどオンライン上の言論についても取り締まりが強化される修正内容となった。これは,社会の分裂を教唆するソーシャルメディアを通した言論活動を政府は問題視しており,サバ州やサラワク州をマレーシアから分離独立させようとする活動などをターゲットとしている。一方で,政府および司法に対する批判を禁止するという条項は削除された。

修正扇動法案とほぼ同時期に国会に上程,審議されたのが,テロ防止法案(POTA)である。テロ防止法は,IS(「イスラーム国」)支持者などによる国内のテロ活動の脅威が日々高まりを見せるなか,それらを未然に防ぐための法であると説明された。しかし,本法案は,すでに廃止となった国内治安法(Internal Security Act: ISA)との類似性が指摘され,ISAの複製ではないかとの批判が上がった。テロ防止法は,下院議会の本会議で10時間という長時間の議論の後,4月7日に成立した。本法案の採決が深夜に野党議員が不在のタイミングで行われたため,野党議員からその採決のタイミング,手法に対する非難が表明された。 テロ防止法では,容疑者を起訴なしで59日間拘束することができる。さらに,司法権の管轄外にある同法の審議会は,国の治安を理由に個人を拘束,自由を制限する命令を承認する権限や,容疑者に対する拘束命令を無期限に延長する権限をも持つ。

国家安全評議会法案は,12月3日に下院議会で可決,成立した。本法案が上程されたのが12月1日であったため,非常に短い審議期間での強行採決に,野党から批判が上がった。国家安全評議会の議長は首相が務める。マレーシアが国家安全保障上の脅威に直面した際,議長は「治安維持区域」を設定することができる権限が,同法によって認められることとなった。「治安維持区域」指定は,最長で6カ月となっているが,延長も可能となっている。さらに,「治安維持区域」内では,人や乗り物の移動の制限や域外への退去,逮捕状なしの逮捕,夜間外出禁止令の発令,建物や財産の一時差し押さえなどを行う権限が議長に与えられている。本来は,連邦憲法に基づき,「非常事態」は国王が宣言するものだったが,それと同等のことを首相が行うことが可能になり,首相の権限の拡大が認められたこととなる。本法は,国内治安法との類似性が指摘されており,また非常に強い権限が首相に与えられることに対する懸念も大きい。

経済

2015年の実質GDP成長率は,前年の6.0%から減速して5.0%となり,マレーシア政府が年明けに下方修正した見通し4.5~5.5%の範囲内となった。

需要面では,物品・サービス税(GST)の導入などによる伸び悩みが懸念されていた民間消費が,前年より鈍化こそしたものの,6.0%増の成長となった。ただし,民間消費を四半期ごとに概観すると,2015年の第1四半期は,GST導入前(4月1日より導入)の駆け込み需要により,8.8%と比較的高かったが,第2四半期6.4%,第3四半期4.1%,第4四半期4.9%と,とくに後半は減速が目立ち,4%台に落ち込んだ。

産業別では,農業で1.0%増,鉱業・採石が4.7%増,製造業で4.9%増,建設業が8.2%増,サービス業が5.1%増であり,前年に比べると,顕著な伸びを見せた業種はなく,やや減速傾向にある。GDPの約半分(53.5%)を占めるサービス業のうち,情報・通信が9.4%増となり,前年同様高い伸びを見せた。卸売・小売りは昨年に比べると減速はしたが,6.9%増となった。

貿易統計によれば,2015年の輸出は前年比1.9%増の7799億4700万リンギ,輸入は0.4%増の6856億5200万リンギで,悪化が懸念されていた貿易収支は1088億9100万リンギの黒字となった。貿易総額は1兆4655億9900万リンギとなり,9年連続で1兆リンギを超えた。石油の輸出総額は前年度の327億2300万リンギから222億7500万リンギまで減少し,31.9%の大幅な減少となった。貿易収支の縮小により,赤字に転じることが懸念されていた経常収支も,340億2600万リンギと黒字を維持した。

消費者物価上昇率は2.1%と,前年の3.2%より低下し,やや落ち着いた。部門別に見ると,食料品・飲料(アルコールを除く)とサービスの上昇率がもっとも高く,それぞれ3.6%,3.7%を記録した。とくに2015年後半の上昇率が高く,4%台を推移している。これは,悪天候によって生鮮食品の供給量が不足したことに伴う価格上昇に起因している。一方で,輸送・運送については,4.5%減と大幅なマイナスになった。これは,世界的な原油安に伴う国内の燃料価格の下落が大きく影響しており,年間を通して概観すると,とくに世界的に原油価格が下落した時期に大幅なマイナスとなっている。

雇用面では,労働市場は比較的安定した状態を維持した。失業率は3.0~3.2%の間を推移していたが,12月には3.3%に上昇し,これが2015年においてもっとも高い数値となった。労働力化率については,67.6%でほぼ横ばいであった。

原油価格下落・リンギ下落・株価下落

世界的な原油安や,国内の政治情勢の不安定などを背景に,通貨リンギは1年を通して下落した。7月2日にナジブ首相の7億ドル受領疑惑が報じられた後,7月6日のリンギの対ドルレートが, 1ドル=3.8045リンギを記録し,1998年にアジア通貨危機に伴い導入された固定相場制を2005年に解除して以来の最安値を記録した。8月12日に,リンギは1ドル=4リンギ台に突入し,以降,年末まで4リンギ台を推移した。一方,ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)の株価指数も,8月11日の終値が,2013年以来の安値を記録し,翌日はさらに下落した。その後もしばらく株価は値下がりが続いた。

為替,株価ともに,もっとも大きな下げ幅を記録したのは, 7月から8月にかけての時期であった。この時期は,いったん下げ止まりかと思われた原油価格が再度下落しはじめたタイミングであり,中国の人民元の切り下げが行われ,さらにはナジブ首相の約7億ドル受領疑惑によって政治的不安定さが露呈するなど,内外ともにマレーシアに対する不安要素が重なり,マレーシア通貨や株価の売りが加速したと見られる。7月末には,外貨準備高が1000億ドルを割った。年初の1160億ドルから,年末には953億ドルまで減少した。継続的なリンギ下落に対応して,バンク・ヌガラによって為替介入のための外貨準備切り崩しが行われていた可能性が高い。外貨準備高は,第3四半期まで減少を続け,第4四半期に少しずつ増加したが,1000億ドル台を回復するまでには至っていない。

このような為替や株価の大きな下げ幅は,1998年のアジア通貨危機を関係者に思い出させた。アジア通貨危機の際と同様,資本取引規制や固定相場制などを導入するのではないか,という憶測が流れた。これに対し,ゼティ中銀総裁は8月13日に「バンク・ヌガラは,変動相場制を維持し,固定相場制や資本規制を実施するつもりはない」と説明した。ゼティ総裁は,国際的な原油価格の下落が産油国の通貨安に影響を与えており,またアメリカの景気回復を受けてドルの通貨価値が高まっていることもあり,これらがマレーシアのリンギ安を引き起こしていると説明した。さらに,1MDB問題などの内的要因についても暗に触れたうえで,「外的な環境が改善され,我々がすべての国内問題を解決すれば,リンギは回復する」と述べ,現在のリンギ安はコントロール可能なものであり,アメリカの利上げにも対応可能であるとの見解を示した。

原油安の影響を強く受ける分野のひとつが,財政である。国営石油会社ペトロナスの配当金額は,政府予算の10%前後を占める。配当金は,原油価格が1バレル=80ドル前後を想定しており,1バレル=70~75ドルで推移した場合,2015年の配当金を含めた財政貢献は約260億リンギ減少する可能性があることが,第3,第4四半期と減収が続いた2014年末に,CEOによって言及されていた。

2015年のペトロナスの収益は前年比25%減,税引き前利益で前年比53%減と大幅な減収となった。当初,270億リンギと見積もられていた2015年の配当金は260億リンギへ修正された。2015年の政府の財政赤字は総額372億4900万リンギ,対GDP比は3.2%と予想されている。2015年のペトロナスの大幅な減収を受け,2016年の配当金は160億リンギと大幅減で見積もられている。また,2016年の財政赤字は387億8300万リンギと,赤字拡大が予想されている。

第11次マレーシア計画

2016年から2020年までを対象期間とする国家5カ年計画「第11次マレーシア計画」が5月に発表された。マレーシアは,2020年までに先進国入りすることを国家目標としている。2020年が対象期間に含まれる第11次マレーシア計画では,マクロ経済戦略として,(1)生産性の向上,(2) 経済成長を先導する投資の促進,(3)輸出拡大,(4) 財政の柔軟性を高める,の4点が挙げられている。第10次マレーシア計画の対象期間(2011~2015年)のGDP成長が年率5.3%だったのに対し,年率5.0~6.0%のGDP成長,年率7.9%の国民総所得(GNI)の成長が第11次マレーシア計画では目標として設定されている。

その他,経済成長を牽引することが期待されている民間投資については年率9.4%(年平均2910億リンギ),政府投資については年率2.7% (年平均1310億リンギの増加)が目標値として掲げられている。輸出については,年率4.6%の増加を目指している。財政については,2010年に対GDP比5.3%あった財政赤字は,2015年までに3.2%まで減少した。次の5年間も引き続き財政赤字の縮小に努め,政府の総債務残高の対GDP比が55%に達しないよう留意するとされている。なお,現段階で対GDP比53.3%まで上昇した政府総債務残高を2020年には45%まで引き下げることを目標としている。

第11次マレーシア計画では,所得階層下位40%を「B40」(Bottom 40)と呼び,B40の平均月額世帯所得を2020年までに5500リンギ(現在2500リンギ)に引き上げることが目指されている。B40の7割をブミプトラ(マレー人および先住諸民族の総称)が占めている。その他,ブミプトラ資本30%確保達成や,技能労働者の60%をブミプトラが占めることを目標にするなど,ブミプトラを中心に据えた諸政策が盛り込まれている。

対外関係

ロヒンギャ問題

5月初旬,マレーシアとタイの国境付近のタイ側の領土で,すでに閉鎖された人身取引キャンプと,多くの墓を発見し,そこから移民とみられる33人の遺体が発見された。これらのタイ側の人身取引キャンプは,マレーシアに密入国する人々を収容するものであった可能性が高かった。

5月7日には,タイからマレーシアに密入国しようとしていたミャンマーからの不法移民79人がクダ州のカユ・ヒタムで,タイ側でも63人が逮捕された。また,同日に,同州のジトラで12人のミャンマー人を車に乗せ,違法にマレーシアに入国させた容疑でマレーシア人が警察当局によって逮捕された。

一連の事件により,マレーシア側にもタイ同様に人身取引のための「死のキャンプ」が存在するのではないかという疑いが浮上した。当初,その存在をマレーシア側は否定していたが,その後の警察の捜査により,プルリス州で139の墓と28の人身取引キャンプが発見された。

5月中旬に,警察当局の国境付近に対する厳しい取り締まりによりキャンプが閉鎖されたことで,移民を乗せてバングラデシュから出港した木造船が,目的地であるタイに入港できず,人身取引の斡旋業者に放棄され,マレーシア,タイおよびインドネシア沖で漂流する事態となった。すでに数千人ものロヒンギャおよびバングラデシュ人と思われる漂流者が,マレーシアとインドネシアによって保護されていたが,その後も,木造船で漂流する人々は増え続け,国連や人権団体から人道的な対応が求められるも,マレーシアはその対応に苦慮した。

ミャンマーからの移民については,マレーシアの重要な社会問題であった。3月にミャンマーのテインセイン大統領が来訪した際,ナジブ首相は議論すべき問題としてロヒンギャ問題を挙げたが,ロヒンギャをミャンマー人とみなすかという問題が絡み,具体的な話し合いにはならなかった。5月になって一連の問題が表面化した際,タイの首相から,これらの問題は,マレーシアおよびミャンマーと協力して解決したい,との見解が公に示されていた。しかしながら,数千ともいわれる人々が海上で漂流する事態となり,国連などを巻き込んで深刻な国際問題へと発展すると, 17カ国および国際機関による会合がバンコクで開催されることとなった。この会合による話し合いにより,マレーシアは,インドネシアとともに,1年という期限付きで海上を漂流しているロヒンギャおよびバングラデシュからの移民を受け入れることを決定した。しかしながら,会合によるこの決定は一時的な解決策でしかないため,今後も人身取引や密入国などの問題に,関係諸国と連携して取り組むことが求められる。

ASEAN議長国・ASEAN経済共同体

ASEAN議長国であったマレーシアにおいて,ASEAN関連の会議が1年を通して開催された。ASEAN首脳会議では,主にASEAN共同体形成に向けた今後のビジョンや,南シナ海問題などが話し合われた。4月にクアラルンプールおよびランカウィで開催された第26回ASEAN首脳会議は,「人々を優先し,中心に考えるASEANのためのクアラルンプール宣言」「穏健派によるグローバルな運動に関するランカウィ宣言」および,災害や気候変動にASEANのコミュニティや人々が柔軟に対応するための制度づくりのための宣言の計3つの宣言が採択された。11月に行われた第27回ASEAN首脳会議の会期にあわせて,アメリカのオバマ大統領や,日本の安倍晋三首相もマレーシアを訪問した。

ASEAN関連の会議で,その問題の複雑さが際立ったのが南シナ海問題であった。4月に行われた第26回ASEAN首脳会議においても,その直前に開催された外相会議において,中国による南シナ海埋め立ての中止を求める声が出たことに対して中国が反発を示したことにより,どの程度まで踏み込んだ議長声明を出すかの調整が難航し,1日ずれこんで28日に議長声明が発表された。中国との関係に配慮した声明となるとの予測もあったが,中国を厳しく批判したフィリピンのアキノ大統領の意向が反映され,「埋め立て」への「深刻な懸念を共有する」といった強い表現を含んだ内容となった。さらに,11月4日に開催されたASEAN拡大国防大臣会議(ADMMプラス)では,アメリカと中国の意見が対立し,南シナ海問題をめぐる文言の調整がつかなかった結果,共同宣言を見送るという異例の事態となった。

2016年の課題

2016年1月26日に,司法長官が記者会見を開き,「ナジブ首相の個人口座に振り込まれた約7億ドルは,サウジアラビア王室からの寄付であり,賄賂ではなかった」との説明がなされ,これまで「中東のある個人」とされていた寄付者が明らかにされた。これに伴い,汚職対策庁などによる首相への捜査を打ち切る方針が明らかにされた。すでに,政権継続に向けた体制固めを進め,1MDB問題の収束を図ろうとしているようだが,世論や国際社会からの風当たりは依然として強い。他国の調査機関もナジブ首相の捜査に乗り出しており,これらのプレッシャーに,ナジブ首相がどのように対応するのかが注目される。一方で,野党は,新たに「希望同盟」を結成したが,今度はDAPとPKRの間に不協和音が響いており,先行きに暗雲が漂う。政党間の関係を改善させ,与党を揺るがすだけの存在に「希望同盟」がなりうるか,今後の動向が注目される。

(地域研究センター)

重要日誌 マレーシア 2015年
  1月
7日 財務省,『物品・サービス税(GST)の企業むけガイドブック』を刊行し,GSTの納税者登録済み企業に送付。
7日 マレーシア国籍の男女2人,オーストラリアのキャンベラ空港で,IS(「イスラーム国」)と関係している疑いで拘束,送還される。
9日 サラワク州の元州元首のアブドゥル・ラーマン・ヤーコブ,87歳で死去。
11日 2014年12月28日に墜落したエアアジアQZ8501便のブラック・ボックス,ジャワ海で発見,回収される。
13日 連邦政府,12月に東海岸で発生した洪水被害に対する「復興計画」発表。
14日 RHB銀行,CIMB銀行,マレーシア建築協会(株式会社)の合併計画の中止決定。
20日 ナジブ首相,2015年GDP成長率予想,財政赤字目標の修正を発表。
26日 マレーシア航空ウェブサイト,「IS関係者」にハッキングされる。
27日 初等教育段階修了試験(UPSR)の2014年試験問題を漏えいさせた試験担当職員明らかになる。
27日 マレーシア・インド人会議(MIC)の州代表4人交代。
28日 イスラーム過激派組織メンバーで国際指名手配犯の通称マルワン(本名ズルキフリ・アブドゥル・ヒール),フィリピンのマギンダナオ州で発生したママサパノ(Mamasapano)事件で死亡が確認。
29日 2014年3月に行方不明になったマレーシア航空MH370便,「事故,生存者なし」との結論。ただし,航空機および乗客,乗員の捜索は継続。
  2月
2日 マラッカ州政府,州内のコンビニエンスストアでのアルコール類販売を禁止。
5日 ジョコ・ウィドド・インドネシア大統領,来訪。ナジブ首相と会談。
7日 シリアを拠点とするテロ組織のメンバー,マレーシア入国後にクアラルンプールで逮捕,国外退去処分。
8日 野党連合・人民連盟(PR)を構成する3党(民主行動党[DAP], 汎マレーシア・イスラーム党[PAS],人民公正党[PKR])の党首会合,PAS本部で開催。同盟関係維持を確認。
9日 次期ペトロナス(国営石油会社)のCEOにワン・ズルキフリ氏内定。
9日 ナジブ首相,中国共産党中央委員会中央政治局メンバー孟建柱と,プトラジャヤの首相府で会合。
10日 アンワル・イブラヒム,同性愛行為の罪に対する連邦裁判所(最高裁)の判決により有罪が確定。5年間の禁錮刑。
11日 電気料金の値下げ発表。新料金は,暫定的に6月30日まで適用。
12日 PASの元最高指導者で,元クランタン州首相のニック・アジズ,84歳で死去。
18日 クアラルンプール国際空港で,エジプトに出国しようとしていた14歳の少女,ISの戦闘に参加を計画していたとして拘束。
  3月
7日 アンワル・イブラヒムの釈放を求めてクアラルンプールで抗議集会開催。
7日 サバ州沖の海上警護中にフィリピンのアブサヤフに誘拐された警察官解放。
10日 ワン・マレーシア開発(1MDB)に対する特別タスクフォース設置発表。
12日 ミャンマーのテインセイン大統領,訪問。ナジブ首相と会談。
16日 ナジブ首相,サービス部門ブループリント,物流および貿易ファシリティ・マスタープランを発表。
16日 PKRの副党首ヌルル・イザ,下院議会における扇動的な演説で警察に拘留。
19日 クランタン州議会でイスラーム刑法関連法案(ハッド刑法案)が可決。
22日 ニック・アジズ死去によるクランタン州チェンパカ選挙区の補選,PASの候補者アフマド・ファサン・マフムード当選。
23日 第25代ジョホール州スルタン即位。
26日 ナジブ首相,リー・クァン・ユー元首相弔問のためシンガポールを訪問。
30日 ハッド刑に関連する扇動的な記事を掲載した容疑で「マレーシアン・インサイダー」(Malaysian Insider)の記者3人,警察が拘束,取り調べ。
31日 エッジ・メディア・グループ経営者,マレーシアン・インサイダーの最高責任者,扇動法により逮捕。
  4月
1日 GST導入開始。
4日 公用ヘリコプター,スランゴール州カジャン(Kajang)のスメニ地区に墜落。ロンピンの下院議員ジャマルディン・ジャリスを含む数人が死亡。
7日 テロ防止法案,連邦下院議会で可決。
10日 修正扇動法案,連邦下院議会で可決。
20日 ナジブ首相,アジア・アフリカ会議60周年記念会議出席のためインドネシアへ。
26日 第26回ASEAN首脳会議,クアラルンプールおよびランカウィで開催(~27日)。
27日 サバ州に中国領事館開設。
  5月
1日 GSTの反対を唱えるデモ,クアラルンプールで実施。数千人が参加。
2日 マレーシア人学生,ロンドンで児童ポルノ画像およびビデオ所持の罪で禁錮5年。
5日 ナジブ首相,シンガポール訪問。リー・シェンロン首相と会談し,両国を結ぶ高速鉄道開通の延期を発表。
5日 スランゴール州ロンピンの補選,統一マレー人国民組織(UMNO)の候補者ハッサン・アリフィン氏当選。
6日 第35代ペラ州スルタン即位。
7日 タイからマレーシアに違法に入国しようとしたロヒンギャと思われる79人逮捕。
7日 ペナン州のプルマタン・パウの補選,PKRのワン・アジザ当選。
14日 サバ州サンダカンの海鮮レストラン・オーシャンキングで,同店マネージャーと客の計2人,フィリピンのアブサヤフに誘拐される。
21日 第11次マレーシア計画発表。
24日 プルリス州パダン・ブサールでロヒンギャの墓が発見される。
  6月
1日 マレーシア航空,6000人のリストラ開始。
4日 マレーシア東海岸沖で,マレーシア籍のオイル・タンカー(船舶名:オーキム・ビクトリー),海賊被害。
5日 午前7時20分頃,サバ州のキナバル山周辺ラナウ地域を震源地とするマグニチュード5.9の地震発生。地震による犠牲者は19人(1人の日本人登山客を含む)。
6日 PASの年次党大会において,新指導部,DAPとの協力関係解消を決定。
10日 地震発生の数日前の5月30日,キナバル山の山頂で全裸になった計4人の外国人登山客,サバ州の警察に拘留される。
12日 キナバル山山頂で全裸になった外国人登山客に対する裁判で,禁錮3日,罰金1人5000リンギ,国外退去処分,の判決。
15日 野党連合・人民連盟(PR)解体。DAP,6月15日に中央執行部会議を開催。PASの決議(DAPとの協力関係の解消)を了承,人民連盟の解消を書記長リム・グアンエン,発表。
16日 PR構成党のPKR党首ワン・アジザ,PRの解消を宣言。
  7月
2日 『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ),ナジブ首相の個人口座に,7億㌦(26億7000万リンギ)近い資金が1MDBから流れたと報じる。
6日 埼玉りそな銀行と近畿大阪銀行,パブリック・バンクと業務提携することで合意。
6日 1MDBに対する特別タスクフォース,資金流入が指摘された6つの口座凍結。
8日 1MDBに関する特別タスクフォース,1MDB本社に家宅捜査。
9日 イスカンダル地域開発庁,マレーシア三菱東京UFJ銀行と,業務提携に関する覚書締結。
11日 クアラルンプールの電化製品専門のショッピングモール「ローヤット・プラザ」で窃盗事件をきっかけにした抗議活動発生。
13日 PASの進歩派,「新たな希望運動」(Gerakan Harapan Baru)の結成を宣言。
17日 ウクライナ上空で撃墜されたMH17,1周年追悼式。
27日 『エッジ・ウィークリー』と『エッジ・ファイナンシャル・デイリー』,3カ月の発行停止処分。
28日 ナジブ首相,内閣改造でムヒディン・ヤシン副首相更迭,新副首相にアフマド・ザヒド・ハミディ就任(内務相兼任)。
28日 アブドゥル・ガニ・パタイル司法長官辞任。新司法長官にモハムド・アパンディ・アリ就任。
  8月
1日 「ナジブを逮捕せよ」デモで29人を逮捕。
1日 WSJおよび「サラワク・レポート」に対する情報漏洩の容疑で,汚職対策庁の関係者2人,司法長官府の検察官1人逮捕。
3日 汚職対策庁,ナジブ首相個人名義の口座に振り込まれた約7億㌦について,入金の事実を認め,献金と説明。
4日 フランス領ユニオン島で見つかった航空機の残骸,フランスの研究所による鑑定の結果MH370便と同じボーイングB777型機のものと発表,ナジブ首相はMH370便であると確認したと発表。
4日 ASEAN外相会議開催。
18日 国立動物園で,マレーシアで初めてジャイアントパンダのリャンリャン出産。
18日 バンコクで発生した爆弾爆発事件で,マレーシア人5人死亡。
21日 アジアインフラ投資銀行(AIIB)に調印署名。
22日 国内でテロを計画したとして,ISに関与する男女10人逮捕。
25日 国内経済の成長のための特別経済委員会設立。
29日 ナジブ首相退陣を求める大規模デモ「ブルシ4.0」(Bersih 4.0)実施(~30日)。
  9月
1日 クアラルンプール,プトラジャヤ,および半島部6州で,ゴミの分別制度開始。
3日 マハティール元首相,ブルシ4.0に関する声明で取り調べを受ける。
10日 建設産業改革計画に基づく18のイニシアティブ発表。
11日 メッカで発生したクレーン倒壊事故でマレーシア人6人死亡。
14日 ナジブ首相,中長期的な経済振興策発表。
14日 タイのバンコクで発生した爆弾テロ事件(8月17日)の共犯者3人,マレーシアで逮捕。
16日 ナジブ首相支持と反ブルシを謳う「赤シャツデモ」,クアラルンプールで実施。
16日 行方不明だった検察官ケビン・モラスの遺体発見。
16日 PASの進歩派,「新たな希望運動」を基盤とする新政党・国民信頼党(National Trust Party: Amanah)結党。
22日 PKRとDAP,新政党Amanahと新野党連合・希望同盟(Pakatan Harapan)結成を宣言。
24日 北海道電力および関西電力,マレーシアLNGとの間で,液化天然ガス調達に関する基本合意書を締結したと発表。
  10月
1日 世界銀行,クアラルンプールのバンク・ヌガラ(中央銀行)内に研究拠点開設。
5日 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定,大筋合意に至る。
5日 ヘイズにより学校閉鎖。
9日 バンク・ヌガラ,1MDBに対するペトロサウジ関連の海外投資許可取り消しを決定。
9日 46日間行方不明のオラン・アスリ(先住民族)の子ども7人のうち生存者2人を発見。
13日 オランダ安全委員会,「MH17便を撃墜したのはロシア製地対空ミサイル」と結論付ける最終報告書を発表。
15日 主要高速道路の利用運賃値上げ。
22日 政府,大量高速輸送(MRT)2号線建設計画を正式認可。
22日 DAPのリム・キッシャン下院議員,下院議会議長への侮辱的な発言が問題視され,6カ月の議員資格停止処分。
23日 2016年予算案上程。
25日 マレーシア日本国際工科院(MJIIT)の第1期生卒業式。
31日 軽便鉄道(LRT)アンパン線延伸事業,第1期の4駅が開通。
  11月
4日 ASEAN拡大国防大臣会議開催。南シナ海問題で異例の共同宣言見送り。
9日 5月にアブサヤフに誘拐されたサバ州サンダカンの海鮮レストラン・オーシャンキングのマネージャーの女性,解放。
17日 5月に海鮮レストラン・オーシャンキングでフィリピンのアブサヤフによって誘拐されたサラワク州出身の男性,斬首遺体で発見。
17日 ナジブ首相,APEC閣僚・首脳会議出席のためフィリピン訪問。
17日 中国の習近平国家主席と首脳会談。
20日 第27回ASEAN首脳会議,クアラルンプールで開催(~22日)。
20日 安倍晋三首相,来訪(~23日)。
20日 バラク・オバマ米大統領,来訪(~22日)。
20日 ナジブ首相,オバマ大統領と会談。
23日 1MDB,関連会社エドラ・グローバル・エナジーおよびその子会社の全株式を中国国営企業の中国広核集団(CGN)に売却。売却額98億3000万リンギ。
  12月
2日 KTMコミューター運賃改定。
3日 国家安全評議会法案,可決。
5日 ジョホール州の王子トゥンク・アブドゥル・ジャリル,25歳で死去。
8日 マレーシア航空,エミレーツ航空との共同運航契約締結。
10日 UMNO年次党大会開催(~12日)。
14日 テナガ・ナショナル,トルコの電力会社GAMAエネルジと株式売買契約締結。
20日 マレーシア初のシャリア準拠航空会社ラヤニ航空,運航を開始。
20日 クアラルンプールのショッピングモールコタ・ラヤで暴行事件。
21日 通信大手のアシアタ・グループ,ネパールの携帯最大手のエヌセルの買収を発表。
31日 東南アジア諸国連合経済共同体(AEC)発足。
31日 1MDB,関連会社バンダー・マレーシアの株式60%を中国国営企業の中国中鉄(CREC)とイスカンダール・ウォーターフロント・ホールディングスに売却。売却額74億1000万リンギ。

参考資料 マレーシア 2015年
①  国家機構図(2015年12月末現在)
②  ナジブ内閣名簿(2016年2月末現在)
②  ナジブ内閣名簿(2016年2月末現在)(続き)
③  州首相名簿

主要統計 マレーシア 2015年
1  基礎統計
2  連邦政府財政
3  支出別国民総所得(名目価格)
4  産業別国内総生産(実質:2010年価格)
5  国際収支
6  国・地域別貿易
 
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