2018 Volume 2018 Pages 515-538
2017年のネパール国内政治は目まぐるしく揺れ動いた。5月のネパール国民会議派(NC)とネパール共産党毛沢東主義センター(CPN-MC)連立政権内でのダハールからデウバへの首相交代,10月の左派連合の結成および,それに対抗するためのNCを中心とする民主連合の結成によるCPN-MCとNCの事実上の分裂,年末の連邦議会の下院にあたる代表議会選挙での左派連合の勝利と続いた。前年から引き続き重要な政治的課題となっていた第2次憲法改正案の処理については,マデシ系(インド国境沿いのタライ地域に居住するインド系ネパール人)政党が地方選挙(村・市議会選挙)実施日の発表前までに第2次憲法改正を行うよう要求をしていたが,改正されないまま地方選挙を迎えた。憲法改正案については,8月の立法議会での投票の結果,改正は認められず,年内に決着をみることはなかった。他の重要な政治的課題は新憲法下で初となる地方選挙,州議会選挙,連邦議会選挙の実施であった。政党間の対立に伴う爆弾騒動等があったもののそれぞれ複数回に分けて実施され無事終了した。親インドの民主連合と親中国の左派連合との一騎打ちといわれた代表議会選挙では左派連合が勝利した。
経済面では,実質成長率が6.94%となり過去10年でもっとも高い水準であった。国民1人当たりの名目所得も2006/07年度のおよそ2倍になるなど好調さを印象づけた。他方,対外貿易収支については,貿易赤字が拡大した。
対印関係は,2016年にインドがマデシ系住民の要望を受け入れるよう経済封鎖を強行したことに起因する関係悪化が続いた。また年末の代表議会選挙における親中左派連合の勝利は中国との関係のさらなる強化につながった。
2017年のネパール国内政治は,5月のダハールCPN-MC党首の首相辞任,6月のデウバNC党首への首相交代,10月の左派連合の結成,12月の連邦議会の代表議会選挙での左派連合の勝利とめまぐるしく変化した。
前年8月に誕生したNCとCPN-MCとの連立による第2次ダハ―ル連立政府で政権の舵取りを担っていたダハール首相は,デウバNC党首との紳士協定(『アジア動向年報2017』参照)に基づき5月24日に辞任した。6月6日の立法議会(2013年の第2回憲法制定議会選挙で成立した一院制議会。2015年9月20日のネパール憲法成立,公布により憲法制定議会から立法議会に移行。2017年10月14日解散)での首相選出選挙に先駆けて,CPN-MCとNCは,マデシ系政党の国家国民党(RJP-N)と連邦社会主義フォーラム・ネパール(FSF-N)とそれぞれ3項目の合意を交わした。3項目の合意とは,憲法改正の実施,タライ地域における地方自治体の増設,デウバ党首への支持である。6月6日の投票でデウバ党首は,388票を獲得し首相に選出され,第4次デウバ政権が誕生した。しかし,後述するように,選挙の実施と憲法改正をめぐる駆け引きのなかで政権の舵取りは困難を極めた。政権への支持を集めるためデウバ首相就任後3カ月間に7度に及ぶ内閣拡大が実施され,ネパール史上最大の内閣が誕生した。
しかし,10月に入るとNCとCPN-MCとの連立関係に陰りがみえはじめた。デウバ首相が,2日に開催した党幹部集会で「憲法改正を行うためにすべての選挙でNCを第1党にすることが必要だ。それはマデシの人々の福祉の実現につながる」と述べた翌日の10月3日に野党ネパール共産党統一マルクスレーニン主義(CPN-UML)は,州議会選挙と代表議会選挙においてCPN-MCとバブラム・バッタライ率いる新しい力(Naya Shakti)と左派連合を結び選挙協力を行うと発表した(10月15日に新しい力は左派の理念に反するという理由で左派連合との選挙協力を中止した)。
左派連合結成の背景には,5月,6月,9月の地方選挙の結果があるといわれている。地方選挙の第1段階,第2段階でCPN-UMLは得票を伸ばした一方で与党CPN-MCは振るわなかったこと,CPN-UMLの場合は,9月18日に別途実施されたタライ地域(第2州)での選挙結果が振るわなかったことがある。後述のとおり地方選挙では,CPN-UMLは最大政党となっており,左派という同じイデオロギー,戦術で代表議会選挙を戦えば,最大の政治的勢力になることができると考えられた。また,インドによる国境封鎖時にインドから支援を受けていたNCが明確な異論を唱えなかったことへの国民の不信があるといわれている。10月3日,マデシ系のRJP-Nの5人が,マデシへの差別,抑圧,搾取を終わらせ,マデシ系住民の繁栄,公正,平等を担保することを目的に離党し,左派連合に参加した。ダハール氏はデウバ首相と会談し,左派連合は社会主義社会の実現に向けた結束であり,NCに対抗するものではないと述べた。10月4日再び開催された会合のなかで,デウバ首相はNCとCPN-MCとの連立を続けるために首相の地位をダハール氏に譲ることを申し出たが,ダハール氏は申し出を拒絶した。
これに対し10月4日,デウバ首相は,右派の国民民主党ネパール(RPP),RJP-N,FSF-N,マデシ人権フォーラム(民主)(MJF-L)と会合を開き,NCがリーダーシップをとるかたちで民主連合を結成した。10月13日に7度目になる内閣拡大を行い,RPPより5人を新たに大臣に指名した。これでデウバ内閣の閣僚は64人に達した。なおCPN-MCの大臣は,10月17日のデウバ首相とダハールCPN-UML党首との話し合いで州議会選挙,連邦議会選挙の候補者選定後に職務を辞任することで合意したが,その後も辞任することなく続投した。後述のとおり12月の代表議会(立法議会)選挙では,左派連合が快勝したが首相についてはCPN-UMLの要請があるまでデウバ首相が留まることになり,年内の政権交代はなかった。
次年度に持ち越された第2次憲法改正の処理与党CPN-MCとNCは,1月から8月にかけて憲法改正に反対するCPN-UMLの説得が困難な中で,選挙への参加の条件として憲法改正を求めるマデシ系政党の要望にこたえるという難局に立たされた。
第1次憲法改正は2016年1月23日に賛成多数で可決され成立した。しかし,マデシ系政党は,(1)国家的要職への就任にかかわる市民権上の要件の修正,(2)タライ地域にある第2州および第5州の区画変更,(3)選挙区割りを地理的要因ではなく人口数に基づいて行うこと,(4)国民議会(上院)の議席配分を人口数のみに比例させること,(5)州公用語規定の明文化,等のさらなる改正を求めていた。その要望に応えるために提出された第2次憲法改正案については2016年11月29日に閣議決定を経て立法議会に登録されたものの,最大野党のCPN-UMLが審議を拒否した。連立与党は憲法改正に必要な議席数を確保することができずに越年した。2017年1月8日に統一民主マデシ戦線(UDMF)および,NCとCPN-MCの連立与党は憲法改正の審議入りに着手したが,CPN-UMLをはじめとする野党9党の抗議にあい中断した。CPN-UMLは,「憲法改正は,ネパールを丘陵地と平原に分断し調和を乱すため国益に反する」,「外国の圧力による」という理由で反対した。そして,3月4日から15日間にわたり国家の結束を強めるためのメチ・マハカリ(ネパール極西部から東部にかけての全土)・キャンペーンを実施するとした。一方マデシ系政党は,地方選挙実施日の発表前に第2次憲法改正を行うことを要求した(2月3日)。これに対して政府は2月20日に,地方選挙を5月14日に行うことを発表するとともに,マデシ系政党に憲法改正の実現と選挙参加を求め,一方CPN-UMLとは憲法改正に同意するよう交渉を継続した。4月8日にダハール首相は,マデシ系政党とCPN-UML双方が受容可能な新しい第2次憲法改正案を提案すると述べ,4月10日に前年11月29日に登録されていた憲法改正案を撤回し,翌11日に修正された第2次憲法改正案を立法議会に登録した。
しかし,マデシ系政党は,旧憲法改正案を撤回することに抗議し11日の会議をボイコットした。マデシ系政党は,旧案において州の区画変更にあたり関係する州議会の同意を得ることを義務づけた第274条の削除を求めていたにもかかわらず,新憲法改正案では,第274条は削除されたが,代わりに第296条(4)(a)によって「連邦議会は州議会が発足するまで(立法上の)権力を行使し区画に関係する州の同意なしで区画変更ができる,ただし,州議会発足後の1年後に第296条(4)に従って公式化された立法は無効になる」とされたからである。
4月12日UDMFは,5月14日の選挙のボイコットを決定した。さらに4月16日には憲法改正案が不十分であることを理由に4月18日から5月14日に抗議プログラムを実施することを宣言した。これに対して4月22日には,CPN-MC,NCと連邦同盟(Federal Alliance, FA)との協議が行われた。FAには,RJP-N(UDMFを構成していた6政党が参加して4月20日に結成)とFSF-Nのほか,その他の少数民族政党が参加している。協議では,(1)議会において新憲法改正案を可決させること,(2)マデシ系政党も参加する地方選挙を2段階,すなわち,第1段階の選挙を5月14日に山岳部,丘陵部の3州(第3州,第4州,第6州)で,第2段階の選挙を6月14日に4州(第1州,第2州,第5州,第7州)に分けて実施することが合意された。しかし,5月26日にRJP-Nが第2段階の地方選挙に参加せず抗議活動を続けることを表明したため,5月29日,政府は6月23日に延期することを発表した。さらに5月31日に6月28日に再延期した。
事態を打開するため政府はRJP-Nを選挙に参加させる意図で,6月8日に地方選挙関連法案を成立させた。この法案により,6月1日に設定されていた6月28日実施の選挙候補者の登録(6月16日)に必要な党代表者の署名の締め切りが延長され,RJP-Nの選挙参加が可能になった。RJP-Nは6月9日にデウバ首相が6月28日の選挙実施までに憲法改正の実施は不可能であると立法議会で発言したことに反発し,10日に連立政権に対し地方選挙延期を申し入れたが,拒否された。11日にRJP-Nは政府との協議の場で,第2段階の選挙前に憲法を改正すること,拘留されている幹部を解放すること,5月26日に最高裁判所より増設停止の仮命令が出されていたタライの地方自治体の増設を求めたが,合意に至らなかった。そのため11日に地方選挙第2段階の妨害活動を強化することを決定し,翌12日に地方選挙への不参加を表明した。
RJP-Nの選挙妨害運動による治安悪化の懸念から6月15日に政府は,マデシ系住民の多い第2州での選挙の実施を9月18日に延期することにした。6月18日の候補者登録においてはRJP-Nは党としてではなく個人資格で選挙に参加することを決めた。7月7日にNC,CPN-MCの連立政権とRJP-Nの間で会合が開催され,憲法改正の実現は容易ではないものの改正に向けて努力すること,タライの地方自治体の増設が約束はされたが,実際は進展がみられなかったため8月8日にRJP-Nは9月18日の地方選挙への不参加と選挙妨害活動を宣言した。これに対して,8月11日に連立政権はRJP-Nと話し合いを行い,自治体の増設(政府は12日に最高裁の仮命令を取り消し,18日に第2州に9つの地方自治体を増設,合計で753になった),立法議会での憲法改正の投票実施,RJP-Nの地方選挙への参加についての合意を得た。これにより16日に4月以降中断されていた憲法改正の審議が開始され,賛成大多数を得ることが難しいと予想されていたものの21日に投票が行われた。
憲法改正にあたっては592人で構成される議員の3分の2である395票を獲得することが求められたが,最大野党CPN-UMLのほか,右派のRPPが反対票を投じたため,投票の結果48票足らず,年内に決着をみることはなかった。
選挙の実施5月14日,6月28日,9月18日の3回に分けて実施された地方選挙(村・市議会選挙)では753の首長(Mayor/Chairperson),副首長,区長を各1人,区議会議員4人を選出した。投票の結果,最大野党CPN-UMLが高い支持を集めた。753の市長・議長ポストのうち,CPN-UMLが294(39%),NCが266(35%),CPN-MCが106(14%)を獲得した。その他のポストを含む全獲得数は,CPN-UMLが1万4099(40%),NCが1万1456(33%),CPN-MCが5441(16%)であった。CPN-UMLは予想に反し,タルー人口の多いカイラーリ,バルディヤ,ダーンで多数を獲得したほか,マデシ人口の多いルパンデヒ,バーンケ,カピルバストゥでも多数を獲得した。CPN-UMLは,反マデシ政党という烙印を押されているものの第5州で39%の議席を獲得した。政治評論家は,CPN-UMLが主権,領土の保全,均衡のとれた外交についての明確な方針を示したこと,RJP-Nが選挙をボイコットしたこと,NCのリーダーシップの弱さがCPN-UMLの集票につながったと分析している(The Kathmandu Post, 2017年7月7日)。他方,CPN-MCの敗因は,憲法改正に必要な3分の2の賛成を得ることが難しい中で過度に憲法改正に固執し政治の空転を招き国民の不満を買ったこと,かつての汚職スキャンダルのイメージをぬぐえなかったことがあると分析されている(The Rising Nepal, 2017年7月14日)。
なおダハール元首相の地盤であるチトワン郡バラトプル市では,2つの選挙区の開票を残すだけとなった5月28日に劣勢だったCPN-MCの党員によって未開票の投票用紙90枚が破られる事件が発生し,8月4日に再選挙が実施された。NCとCPN-MCとの選挙同盟とCPN-UMLとの選挙戦が展開され,再選挙の結果,再選挙前には784票あまり得票数を上回っていたCPN-UMLのギャワリ候補を破り,ダハール元首相の娘であるCPN-MCのレヌ候補が市長に当選し,副市長にはNCのシャハ候補が当選した。
(注)1)首長(Mayor/Chairman)の定数。2)小選挙区の定数。(出所)ⒸKarl-Heinz Krämer, Nepal Research, Results of Local Elections in Nepal, 2017, The Kathmandu Post(http://kathmandupost.ekantipur.com/news/2017-12-14/no-of-directly-electedfemale-candidates-slumps-further.html).
新憲法下では初めての州議会選挙および代表議会選挙が11月26日(北部山地・丘陵地の32郡)と12月7日(中南部丘陵地・タライの45郡)の2回に分けて実施された。インド寄りの与党NCが主導する民主連合と左派連合が争う選挙戦になった。州議会の定数は全州合計で550人(州小選挙区330人,比例代表220人),代表議会の定数は275人(小選挙区165人,比例代表110人)である。投票率は,それぞれ65%,69%であった。
州議会選挙(小選挙区)では,CPN-UMLが330議席中168議席(全体の51%),CPN-MCが73議席(22%)を得て左派連合が高い支持を集めた。NCは41議席(12%)であった。代表議会選挙(小選挙区)でもCPN-UMLは165議席中80議席を獲得したのに対し,NCは23議席(14%)で,左派連合が合わせて116議席(70%)を獲得した。NCは,240議席中105議席(44%)を獲得した2013年の立法議会選挙(小選挙区)から議席数を大きく減らし第3党となった。当選者の特徴としては女性や少数派が少ないことがあげられる。憲法第84条(2)は,女性,ダリット,アディバシ・ジャナジャーティ,カス・アーリア,マデシ,タルー,ムスリムから代表者が選出されるよう各党の候補者を擁立すること,また同条(8)は「各政党において全議員の3分の1を女性とする」よう定めている。しかし,小選挙区における女性候補者は少なく,女性候補者が代表議会選挙の小選挙区候補者に占める割合は5.5%,州議会選挙の候補者に占める割合は4.7%であった。「憲法が規定する女性の議席確保が困難な状況のまま選挙をすべきではない」という前制憲議会議員の請願書に応じるかたちで11月22日に,最高裁判所が各政党に策を講じるよう呼び掛けたが,選挙結果には反映されなかった。代表議会選挙(小選挙区)での女性の当選者はわずか6人で,いずれも左派連合であった。
民主連合の大敗の要因として,デウバ首相にリーダーシップやカリスマ性が欠如していたこと,党の若返りに失敗していたこと,組織体制の弱さなどが挙げられている(The Kathmandu Post,2017年 12月14日)。また,左派連合が公約で経済的発展を挙げていたのに対し,NCは明確な言及がなかったこと,そしてNCは,医療,教育,およびインフラストラクチャーの整備による経済的発展への国民の期待にこたえられなかったのが敗因だという見方もある(Kamal Dev Bhattarai,2017年11月16日,Diplomat)。
12月29日には,バンダリ大統領が国民議会(上院)選挙実施のための規則(ordinance)を承認,選挙に向けた手続きが開始され,2017年のネパールは幕を閉じた。国民議会の定数は59人で,州議会議員および地方自治体首長等が選出する56人と大統領指名の3人で構成される。首相交代については,前述のように当面はデウバ首相が留まることになり,年内の政権交代はなかった。2018年2月には左派連合のオリ(CPN-UML)党首が首相に就任し政権交代が完了した。
政府が発表した経済白書(Economic Survey Fiscal Year 2016/17)によれば,実質成長率は,6.94%で,過去10年でもっとも高い水準に到達した。これは,順調なモンスーンによる高いコメ生産量(520万トンで最高記録を達成),水力発電能力の回復による十分な電力供給,地震からの建築復興事業の順調な進捗,貿易,観光業が好調だったことによる。観光業界では,2017年の1~10月にネパールを訪れた者の数は25.47%増の75万7448人に達した。前年度が低成長だったことも要因に挙げられる。国民1人当たりの名目所得は862ドルで,前年度より105ドル増加した。これは,11年前の2006/07年度の414ドルのおよそ2倍に当たる。地震により2年間続いた消費者物価上昇率は,4月までの8カ月間の平均は5.1%に下がり(2014/15年度の消費者物価上昇率の平均は7.2%,2015/16年度の平均は9.9%),最近10年間で最低水準に達した。貿易正常化や食料品の値下がりによるものと考えられる。それでも首都カトマンドゥは南アジアではダッカとコロンボに次いで3番目に生活費が高い都市であることに変わりはない(The Economist Intelligence Unit, Worldwide Cost of Living Report 2017)。
2016/17年度の農業・林業・水産業・鉱業・採石を含む第一次産業のGDPに占める割合は,33.5%であった。各産業部門の前年度からの成長率は,いずれの部門においても前年度を上回る(表2)。
(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2016/17,8-11.
対外貿易収支については,製品輸出は12.8%増大し2016/17年度の最初の8カ月で482億2000万ルピーに達したものの,製品輸入が44.2%増大し6285億6000万ルピーに達したため,結果として,本会計年度の最初の8カ月で貿易赤字は47.6%上昇し5803億4000万ルピーに達した。貿易赤字は,GDPの34.4%に達すると見積もられている。貿易輸出振興センター(TEPC)によれば,2016/17年度の対インド貿易赤字は過去10年間で最大で,主に,石油製品,鉄鋼,自動車などの輸入が増えたことが原因と考えられる。
国家財政については,効果的・効率的な予算執行における課題が指摘されている。The Kathmandu Post(2017年7月16日)によれば,設備投資に割り当てられた予算の約70%が会計年度の最後の3カ月で執行され,予算総額の36%が会計年度の最後の21日で執行されていた。水力発電,送電線,潅漑,空港,道路のように重大なインフラストラクチャーの整備の遅れは,民間投資の誘致,雇用創出,経済成長促進の障害になると指摘されている。
貧困削減・社会保障・出稼ぎ労働者への新社会保障政策貧困線以下にある人の割合は,貧困削減プログラムが開始された2006/07年度の50.7%から2016/17年には33.1%に低下した。その間の1人当たりの平均消費量は124.2%に増加し,貧困線は毎年平均2.49%減少していると見積もられている。貧困世帯支援調整庁(The Poor Household Support Coordination Board)は,7月29日に貧困世帯に医療(健康保険),教育の補助金,職業訓練の支援を行うことを盛り込んだ社会保障計画を内閣に提出し承認を得た。本計画では,貧困の度合いに応じて3つのグループに世帯を分け,それぞれの経済状況に応じて,政府の補助金の支給額が決まる。調査で選定された39万1831世帯に受給のための貧困身分証明書が配布された(11月に第一段階の配布が実施された)。10月11日には,国民皆保険の実現のための健康保険法案が承認された。法案の条項21によれば,各世帯の世帯員数や収入額に応じた保険料を支払うことで,5人世帯では年間5万ルピーまでの医療サービスを受けることができる。
出稼ぎ労働者としての労働力の海外への流出が続いている。2015/16年度の出国者数は,前年度の41万8713人から63万9167人に増加した。2015/16年度までの出稼ぎ労働者の総計は361万9981人であった。うち,96%に当たる346万4868人は男性である。出稼ぎ労働者の増加に伴い送金の流入量も増加し,ネパール中央銀行によれば,2016/17年度における海外送金受け取り額は,前年度比4.6%増加の6954億ルピーに達した。
これまでの出国者総計に占める主な出国先の割合をみると,マレーシア(31%),カタール(27%),サウジアラビア(21%),アラブ首長国連邦(UAE,13%),クウェート(3%)である。マレーシア政府は,不法就労者の取り締まりを強化しており,約4万人いるとされるネパール人不法滞在者も対象になっている。最近では,韓国が人気の出稼ぎ先となり,6月には,7万5000人の若者が韓国語の試験を受験した。
出稼ぎ労働者の増加に伴い,出稼ぎ先での過労による突然死や自死,事故死,出稼ぎ労働者の社会保障が課題となっている。ILOによれば,2008/09年度から2014/15年度に24の出稼ぎ国で死亡したネパール人労働者の数は,全出稼ぎ労働者の0.16%にあたる4322人であった(ILO 2016: When the Safety of Nepali Migrant Workers Fails: A Review of Data on the Numbers and Causes of the Death of Nepali Migrant Workers)。2017年1月24日に政府は,出稼ぎ労働者への新社会保障政策を2月12日より実施することを発表した。これにより,生命保険の保障額が150万ルピーから200万ルピーに上がるほか,15の重大疾病への保障がなされることとなった。出稼ぎ労働者の遺族は,収入の保障として20万ルピー,葬儀費用のために10万ルピー,遺体の輸送費用10万ルピーが受け取れるようになる。また,出稼ぎ労働者は,癌,腎不全,心臓発作,全盲,麻痺,脳腫瘍,事故による精神疾患などの治療費50万ルピーが受け取れるようになる。
自然災害への対応2017年度は,2015年に起きた大地震からの復興に加えて,8月に相次いで発生した洪水被害への対応に追われた年であった。地震の復興事業については,1月11日にネパール復興庁長官の交代劇があり,復興の遅れが懸念された。4月5日の報道では,地震で被害を受けた医療機関の4分の1しか再建されていない。遅々とした歩みではあったが,2016/17年度の最初の8カ月で,被害にあった14県の65万3913人の被災者のうち,55万4614の家屋の所有者と補助金交付書類への署名を交わした。そして,第1回目の補助金5万ルピーが53万3691人の銀行預金口座に振り込まれた。同様に,破損した教育機関,医療機関,歴史遺産,および政府建物でも復旧工事が実施された(Economic Survey 2016/17,xvi)。
8月に発生した洪水被害からの復興については,730億ルピーが必要であると試算された。また,農業セクターでは,28億6000万ルピーの損失を被ると見積もられた(The Kathmandu Post,2017年8月15日)。そのほかの復興については,住宅:195億ルピー,灌漑:175億ルピー,家畜:107億ルピーが損失として見積もられている(The Kathmandu Post,2017年11月12日)。
世界銀行は,10月11日に発表した2018年の経済予測について,当初好調な成長を見込んでいたものの,洪水による食糧価格の高騰,地震と洪水復興のために増大した財政支出による財政赤字の悪化などが,出稼ぎの送金や輸出産業の緩やかな伸びを相殺して,成長の足かせになると予想している。
インドは,2016年9月にマデシの憲法改正要求に応じないCPN-UMLのオリ政権に圧力をかけるため5カ月に及ぶ経済封鎖を強行した。思惑どおり政権交代を成功させたが,ネパール国内では,ナショナリズムを高揚させ,外交面では親中路線を促進させることとなった。
2016年からの課題である関係修復の一環として,4月17~21日にバンダリ大統領が就任後初めてインドを訪問し,ムカルジー大統領,ハミド副大統領,モディ首相,シン内務大臣,スワラージ外務大臣らと会談した。訪問は,前年5月に予定されていたが,中止されていた。バンダリ大統領の訪問は両国のわだかまりを解消し,協力を深化させるものとして両国で歓迎された。
一方で,ネパールにおける反印ナショナリズムの高揚に関連した出来事が起きた。3月9日にネパールカンチャンプル郡の国境でインド国境警備隊の発砲によってネパール住民1人が死亡した事件である。当時,国境付近で建設された排水溝をめぐり,インド住民とネパール住民との衝突が起きていたことがその背景にある。これを受けて,CPN-UMLは,射殺された住民を殉教者と宣言することを政府に勧め,3月10日に政府は殉教者とした。国境付近でのインドへの抗議活動は激しさを増し,1万人が参加した。これに対しインド国境警備隊は,催涙弾を発砲するなど対抗した。抗議活動は,カトマンドゥにも広がり,若者等がインド大使館前に集結するなどした。
中国への経済面,政治面での接近インドとの関係修復が模索されるなかで,強化されたのが中国との関係である。ネパールの中国への接近は,インドへの対抗策として2016年より顕著になったが,それを強化する軍事面,経済面での動きが注目を集めた。軍事面では,4月16日に中国人民解放軍とネパール国軍との初めての合同軍事演習「サガルマータ・フレンドシップ2017」がマハラジガンジで実施された。10日間の訓練では,対テロ対策,災害復興の専門的知識の交換のほか,軍隊の潜在的な実行能力を強化することが目的とされた。
経済面では,2月28日にネパール・中国商工会議所の第14回年次総会がカトマンドゥで開催され,于紅中国大使のほか,マハラ副首相兼財務大臣(当時)らが参加した。3月2日のネパール投資サミットにはアジアインフラ投資銀行(AIIB)の総裁が参加した。中国企業が道路や水力発電設備への83億ドルの投資を表明し,3億1700万ドルの投資を表明したインドに対し圧倒的な差をみせつけた。また,5月12日の「一帯一路」構想への署名により,80億ドルの投資による中国・ネパール間の道路,鉄道網の整備が約束された。8月15日には,ネパール訪問中の汪洋副総理の立ち合いのもと,経済技術協力,中国の対ネパール投資促進,ネパールでの石油・ガス資源の調査に関する合意がなされた。両国企業が結んだ33の貿易合意は,2116万ドルに相当する。しかし,11月13日に中国との関係に冷や水をかけるような出来事が生じた。総額約25億ドルを投じ,中部のブディガンダキ川に建設予定だったダムと出力1200MWの水力発電所の建設の中止が閣議後にタパ副首相より発表されたのだ。同計画は,5月23日の閣議で決定され,6月4日にエネルギー省と中国の企業,葛洲坝能源重工有限公司との間で覚書に署名されていた。海外メディアは,同時期にパキスタン,ミャンマーが相次いで中国が関与するインフラ建設案件を中止や延期したことをあげ,中止の背景には中国への不信感などがあると報じた。確かに,2月には中国企業が請け負ったルンビニのゴータマ・ブッダ空港建設の遅延が問題になるなどネパールにおいても中国に対する不信感がなかったとはいえない。しかし,ネパール国内では,「国家の威信をかけたプロジェクト」(National pride project)と表された本計画が中止された理由として,中国企業が競争入札なしで事業を受注したことに対し議会から反発が出たことに加え,11月末からの選挙にむけたパフォーマンスという見方も出ている。CPN-UMLのオリ党首は,「選挙の集票のための策略」だと非難し,CPN-MCは,「NC主導の政府の失敗が原因である」と批判した。
中印外交における均衡点の模索中印両国とネパールとの距離を試される出来事として,中印国境のドークラーム高原(Doklam,中国名は洞朗)における両国の緊張があった。国境線は複雑で大英帝国と清朝との条約締結に遡る。対立の発端は,6月半ばから中国軍が中国とブータンの国境付近のドークラーム高原を横断する道路の建設を始めたことにあった。ブータン政府はこれに抗議し,ブータンと親密なインドがこれを支持した。インドは2017年5月末に,アルナーチャル・プラデーシュ州とアッサム地方を結ぶ,9.2キロメートルの橋を開通させるなど,当該地域に関心をもっている。他方,中国政府は8月3日にブータンと中国の国境付近のドークラーム高原にインド軍が兵舎を建設していることについて「地域の緊張を高めている」とし,即時撤退を要求した。これに対して,インド政府は「ブータン領内に中国軍が不法に侵入している」と非難し,緊張が高まった。しかし,8月28日に両軍が撤退することで決着をみた。本件についてネパールは8月7日にマハラ副首相が独立外交の原則のもと中立の立場を保持することを表明している。
その他諸国との関係国際社会におけるネパールの存在感を示すものとして,11月6~17日に開催された国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)での発言が挙げられる。COP23は,2020年以降の世界各国の気候変動対策を進めるための指針を合意に導くための会合である。ネパールは,気候変動の影響による脆弱性がもっとも高い国のひとつとして,先進国に対し,(1)開発途上国の温室効果ガス削減(緩和)と気候変動の影響への対処(適応)を支援するための「緑の気候基金」(Green Climate Fund:GCF)へのアクセス向上,(2)8月の洪水被害の経験に基づいて,脆弱性の高い国々で生じた災害の損失・損害の保障のための基金設立,(3)2020年までに年間1000億ドルの資金支援目標の達成,について先進国がどのように関与するか明確な道筋の提示を要望した。
ネパールと他国との民間の往来を示すものとして,入国管理局が11月に公表した観光での来訪者の国別トップ10が挙げられる。注目すべき点は,スリランカ,ミャンマー,タイ,韓国のような仏教国からの来訪が急増している点である。なお日本からの観光客数は,2000年から2001年にかけて4万人から2万9000人に減少し,その後ほぼ横ばいの状態が続いている。
学術交流については,アメリカの高等教育機関に留学する学生に占めるネパール人の割合が急激な増加傾向にあることが話題を集めた(The Kathmandu Post,2017年11月16日)。アメリカ国務省教育文化局の支援の下,国際教育協会(IIE)が発行する年次リポートによれば,アメリカ国内の大学・カレッジに在籍する2016/17年度のネパール人留学生の数は,2015/16年度の9662人から20%増の11607人に達した。ネパールは,学部生と大学院生の双方を合わせた留学生数が13番目に多い。学部学生のみに焦点を当てると,2015/16年度から2016/17年度の増加率は42.4%で,上位25カ国のなかでもっとも高い。なお,高等教育機関への留学のため出国するネパール人の数は,2012~2013年のおよそ2倍に達した。教育省が公表した2016年度(2016年4月13日~12月15日)のノー・オブジェクション・レター(留学同意書)の発行数にみる人気の留学先は,オーストラリア(1万5549人),日本(6880人),アメリカ(5509人)となっている。
非公式な人の移動については,人身売買先がインドや湾岸諸国から中国,韓国,アフガニスタンに移行していることが挙げられる。とくに,結婚や「オーケストラダンサー」の斡旋先として,顕著になっているのが中国や韓国であるという。ネパール国家人権委員会が2017年6月に公表したTrafficking in Person National Report 2015-16によれば,2015/16年度に人身売買の被害に遭ったネパール人は6000人を超え,その6割が女性であった。また,行方不明になっている3900人の7割が女性であった。被害者の多くは教育を受けていない貧困層であるが,教育を受けた人がよりよい仕事を求めて騙されて売買される事案もあるという。また,偽装結婚,雇用の斡旋,偽造旅券の発行などの犯罪が新しい手口として増え,臓器売買のための子どもの取引も増大しているという。
2017年前半はマデシ系住民の反発を抑え政治を安定させることが課題であったが,年末の選挙結果をふまえて,2018年は新しい首相の任命,民主連合との調整による政治の安定化,および,インドや中国との外交の舵取りが課題になりそうだ。
2018年の国内政治の課題としては,決着をみなかった第2次憲法改正,国民議会選挙の実施,左派連合勝利後の新首相の任命による政治の安定化,州都の決定と地方政治の安定化が課題に挙げられる。新首相については,2018年2月にCPN-UMLのオリ党首が第41代首相に任命された。連邦民主主義の理念の実現に向けた女性や少数派の意見が反映される政治の実現も求められよう。少数派に関しては10月に結成された左派連合には,マデシ系政党出身者も入っていることから,少数派の意見を反映した安定的な連邦民主主義の実現が期待される。
経済については,地震に加え8月の洪水被害の復興を行い,経済成長を軌道に乗せること,貿易赤字を抑えることが課題として挙げられる。
対外関係では,インドと中国との間での舵取りが重要である。ネパールは両国から,水力発電,道路,空港といったインフラ整備の支援を受けている。左派連合の勝利による政権交代によって,デウバ政権が11月に中止を宣言したブディガンダキ水力発電所の整備は再開されるのか,左派連合の勝利を2016年の高圧的な外交政策の失敗ととらえるインドとの外交は,今後どのように展開されるのか,注目が集まる。
(福岡県立大学)
1月 | |
1日 | マデシ戦線(UDMF),ネパール国民会議派(NC)とネパール共産党毛沢東主義センター(CPN-MC)は憲法改正の審議にむけた準備に着手。 |
6日 | CPN-MCとNC,UDMF等7つのマデシ系政党の同盟は,憲法修正案を可決するために必要な3分の2の賛成を得るため連携することに合意。 |
8日 | ネパール共産党統一マルクスレーニン主義(CPN-UML)の反対により憲法改正の審議は中断。 |
13日 | ダハール首相がマデシ系政党の要望にそうかたちで,現在の7州から10州に増やすことは可能と発言。 |
17日 | 2016年12月/2017年1月の消費者物価上昇率が12年ぶりに最低水準3.8%に落ち着く。 |
23日 | インド経由でバングラデシュに電力輸出することをインドが許可。 |
24日 | IMFは今会計年度におけるネパールの経済成長の見通しを5.5%に上方修正。 |
25日 | 国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル2016年の報告書におけるネパールの腐敗指数は131位。 |
26日 | ネパール航空,中国からの6航空機購入で2機目となる56人乗りMA60航空機を受領。 |
2月 | |
3日 | マデシ系政党が,地方選挙実施日発表までに憲法改正が行われるよう求める。 |
6日 | ネパール軍が中国人民解放軍との初めての合同軍事訓練を発表。 |
11日 | 「地震復興基金」がいまだに機能していないことが明らかに。 |
12日 | CPN-UMLとマデシ系政党は,政治的行き詰まり打開のための話し合いを再開。 |
12日 | バングラデシュ企業が電力不足解消のためネパールの水力発電セクターに対して約10億ドルの投資を検討。 |
19日 | ネパール産業連盟(CNI)がカトマンドゥで主催したネパール・インフラ・サミット2017で,インドがカトマンドゥとデリーなどを結ぶ高速鉄道建設計画について言及。 |
20日 | 閣議で,地方選挙を5月14日に実施することを決定。 |
23日 | マデシ系政党の要求を受け,地方選挙実施の条件として2016年11月29日に議会に提出されていた憲法改正案が審議入り。 |
27日 | 政府,ゴータマ・ブッダ国際空港の建設に関し,工事遅延などにより2014年10月に受注した中国企業との契約打切りを示唆。 |
3月 | |
6日 | サプタリ郡バスビティにて,CPN-UMLの選挙キャンペーン集会に反対するUDMFの支持者が警備にあたっていた警察の射撃によって死亡。 |
6日 | CPN-UMLは上記サプタリ郡の事件を受け,現在進行中の「メチ・マハカリ・キャンペーン」を3日間中止し3月10日に再開する旨を発表。 |
8日 | マデシ系政党がシラーハでバンダ(ゼネスト)を実施。6日のサプタリ暴動で死者が出たことに対する抗議。 |
9日 | ネパールカンチャンプル郡国境でインドの国境警備隊の発砲によってネパール住民が死亡。 |
14日 | 政府が地震の被災者を故郷に戻すためカトマンドゥ避難キャンプを撤去。 |
15日 | 全国復興庁が地震被災家庭への住宅補助金の3回目の支給を開始。 |
18日 | 鳩山元首相が来訪(~22日)。 |
23日 | 中国の防衛大臣が3日間の滞在のため来訪。 |
27日 | ネパール電力公社がクシャハ―カタイヤ間の新送電線経由で50MWの電気をインドから輸入することを計画。 |
27日 | ダハール首相,北京で習近平国家主席と会談。「一帯一路」構想に参加を表明。 |
4月 | |
7日 | 自殺が2011/12年度の3997件から2015/16年度の4667件に増加。2012年は10万人当たり25人で世界7位。2015年の地震発生後に増加したことが明らかに。 |
8日 | ネパール・ルピーの対ドルレートが20カ月ぶりに最高水準に到達。 |
10日 | 政府は2016年11月29日に立法議会に登録されていた憲法改正案を撤回。 |
11日 | 与党が新しい憲法改正案を立法議会に登録。州区画変更に関連した第274条改正が追加されたものの,旧案の国民議会,公民権,および言語に関連した8項目は保持。 |
16日 | ネパール国軍,中国人民解放軍との初の合同軍事演習を開始。 |
17日 | 中国政府が5月14日に予定されている地方選挙を支援するため,選挙管理委員会に対し,約140万ドル相当の物品を提供。 |
20日 | UDMFを構成する7政党のうち,6政党が合併し,新たに「国家国民党」(RJP-N)を立ち上げ,第5党に。 |
21日 | ネパールとアメリカの自由貿易協定締結により66品目が免税に。 |
22日 | CPN-MC,NCが連邦同盟(FA)と協議。憲法改正案の可決,マデシ系政党も参加して地方選挙を実施すること等に合意。 |
23日 | 閣議で地方選挙を5月14日と6月14日に実施することに決定。 |
25日 | 政府統計局,23年ぶりの高い経済成長率6.9%達成と発表。 |
27日 | 政府がマデシ系政党を説得するために11郡の地方自治体の増設を検討することを決定。 |
30日 | 与党連合は政治への干渉を理由に,立法議会にスシラ・カルキ最高裁長官に対する弾劾動議を提出。 |
5月 | |
1日 | インドは86の選挙車両を贈与。 |
9日 | ダハール首相が土地改革省・管理省,文化・観光・民間航空省,連邦制度・地域開発省の3人の大臣を任命。 |
9日 | 与党および野党CPN-UMLは,憲法改正プロセスを5月の立法議会に進めることに合意。 |
11日 | 選挙管理委員会がIDを配布開始。 |
12日 | ネパールと中国が,北京で「一帯一路」構想参加のための覚書に署名。 |
14日 | 20年ぶりの地方選挙が実施。 |
15日 | ネパール=中国間の鉄道,道路網の整備をネパールが中国に提案。 |
20日 | 牛乳の価格が9~14%上昇。 |
24日 | ダハール首相辞任。NCへ政権移行。 |
29日 | 政府は,6月14日に予定されていた地方選挙第2段階を6月23日に延期すると発表。 |
31日 | 政府は,地方選挙第2段階を6月28日に再度延期。 |
6月 | |
2日 | 権力乱用調査委員会(CIAA)は,民間企業の税金を不正に免除した疑いで,シャルマ税務局長を逮捕。 |
3日 | 選挙管理委員会は,開票中に投票用紙が破棄されたチトワン郡バラトプル市第19区で再選挙を実施することを決定。 |
6日 | 立法議会での首相選出に先立ち,NC,CPN-MCは, RJP-Nと連邦社会主義フォーラム・ネパール(FSF-N)のそれぞれと3項目について合意。 |
6日 | デウバNC党首は立法議会で演説。6月28日に実施される地方選挙第2段階を自由かつ公正に実施すること,憲法の規定に従って2018年1月21日までに州議会選挙および連邦議会選挙を実施すること,憲法改正を行いマデシ系政党の懸念事項を解決することを課題に挙げた。 |
7日 | デウバが12年ぶり4度目の首相就任。 |
8日 | 地方選挙法関連法案が立法議会で可決成立。RJP-Nを選挙に参加させるため。 |
9日 | アメリカ大使,中国大使がデウバ新首相を公邸へ招待。 |
9日 | ネパールとドイツが,16万ユーロのエネルギー支援の協定に署名。 |
11日 | RJP-Nは政府との協議で合意に至らなかったため,地方選挙のボイコット,6月13~16日にバンダ実施を決定。 |
14日 | RJP-Nが6月28日の地方選挙の実施に抗議してネパールバンダを決行。 |
15日 | 政府は,RJP-Nの選挙妨害運動による治安悪化の懸念から6月28日実施予定の地方選挙のうち第2州での選挙実施を9月18日に見送ることを決定。 |
16日 | ブータン,中国,インドの3カ国の国境が交わる付近のドークラーム高原をめぐり,中国軍とインド軍が対峙。 |
16日 | 中国大使とインド大使が相次いでデウバ首相を招待。二国間関係,地方選挙を含むさまざまな点について議論。 |
18日 | 韓国での就労を目指す若者7万5000人,韓国語の試験を受験。 |
18日 | 候補者選定の日に抗議活動で500人に上るRJP-Nの幹部が逮捕。 |
18日 | CPN-UMLとCPN-MCがタライ平野に面したバーンケ郡で衝突。 |
18日 | 西部タライのカピルバストゥ選挙管理委員会事務所付近で爆発。5人が負傷。 |
19日 | チベット航空は,カトマンドゥ=成都間の国際便の就航を開始。中国系航空会社による就航は週55便に。 |
28日 | 地方選挙第2段階の投票開始。 |
7月 | |
2日 | ポカラ国際空港の建設開始。 |
5日 | インド政府,シタマルヒ(ビハール州)とジャナクプル(ネパール,ダヌシャ郡)間の鉄道再建に関する書類上の手続きを開始。 |
6日 | マレーシア政府が150人近いネパール人を不法就労で拘束。 |
7日 | CPN-UMLが地方選挙の投票の結果40%以上の議席を獲得。 |
8日 | RJP-Nが9月の第3段階の地方選挙にむけて政党として選挙登録。 |
9日 | カイラーリ郡ダンギリで低カースト出身の市長が誕生。 |
10日 | CPN-UMLが憲法改正案に反対。 |
12日 | デウバ首相が憲法改正に必要な数を確保するための内閣拡大を実施。 |
15日 | 国民民主党ネパール(RPP)内部の確執が分裂を喚起。 |
16日 | ネパールの新会計年度(2017/18年度)開始。 |
19日 | RJP-Nが,賛成多数が得られない状況で憲法改正の採決を進めることに反発。 |
20日 | 大雨による土砂崩れで中国とネパールの貿易に悪影響。 |
25日 | 韓国語の試験に1万2108人が合格。 |
27日 | デウバ首相が19人の大臣を発表。 |
29日 | 立法議会で貧困世帯向けの社会保障制度法案が通過。 |
30日 | 最高裁判所が,CPN-MC党員によって投票用紙が意図的に破棄された事件で,バラトプル19区で再選挙実施を決定。 |
8月 | |
6日 | UPN-MCのダハール元首相の娘レヌ・ダハール氏が,バラトプル第19区での再選挙によりバラトプルの市長に当選。 |
8日 | RPPが内閣拡大の不支持を表明。 |
11日 | 最高裁判所,12の地方自治体新設案を退ける。第2州においてのみ8地方自治体を増やすことは可能とした。 |
11日 | 損害補填をめぐるネパール石油公社と小売り業者との対立によるストでガソリン不足。 |
11日 | 立法議会において新労働法が可決。 |
13日 | 洪水・土砂災害で少なくとも30人が死亡,4人が行方不明,サプタリで1万5000棟が浸水,5万人が被災。 |
16日 | 立法議会で憲法改正案が議案化。 |
21日 | 立法議会で憲法改正案が否決。 |
21日 | 新しい力脱退者がCPN-MCに参加。 |
21日 | ネパール中央銀行によると,2016/17年度における海外送金受取額は,前年度比4.6%増の6954億ルピー。 |
22日 | デウバ政権,内閣拡大。史上最大規模の内閣に。 |
24日 | デウバ首相がインド・モディ首相と2006年以来の公式対談。 |
25日 | デウバ首相,今後の憲法改正を約束。 |
25日 | インド,ネパール地震復興のため4つの覚書に署名。 |
9月 | |
1日 | 選挙管理委員会が11月26日と12月7日に選挙の投票日を決定。 |
8日 | 中国政府高官が,記者との懇談の場でネパールの「一帯一路」構想への参加の真意を確認。参加への不確実性を払拭できず。 |
11日 | デウバ首相,新しい3閣僚を発表。 |
11日 | 政府,2014年にバイラワ空港建設を請負った中国企業の建設遅延について警告。 |
18日 | 延期されていた第2州での投票開始。 |
18日 | 世界銀行が2016/17年のネパールの経済成長予測を4.5%に下方修正。 |
27日 | RJP-NとFSF-Nとの選挙提携。 |
10月 | |
3日 | 5人のRJP-Nの成員がCPN-UMLに合流。 |
3日 | CPN-UML, CPN-MC,新しい力が左派連合による選挙連携を宣言。 |
4日 | NCは5つの政党と民主連合として選挙連携。 |
7日 | 中国の山西建筑工程集団がスペインの会社によって不履行になっていたトリブバン国際空港の建設を受注。 |
12日 | パキスタンがネパールの洪水被害の復興のために100万ドルの支援を公表。 |
14日 | デウバ政権,7度目の内閣拡大。 |
14日 | 憲法第296条に従い立法議会が解散。 |
26日 | 左派連合は11月26日,12月7日の選挙を予定どおり行うよう主張。 |
11月 | |
16日 | 政府は未決定のままになっている州都を選挙後に発表する予定。 |
26日 | 選挙妨害にもかかわらず第1段階の州議会・代表議会選挙は無事終了。 |
12月 | |
4日 | NCのタパ候補含む11人が,首都で初めての,選挙妨害による爆発で怪我。 |
7日 | 第2段階の州議会・代表議会選挙が無事終了。 |
14日 | 選挙開票。左派連合,代表議会で勝利。 |
25日 | CPN-UML,連立政権に向けてマデシ系政党に接近。 |
28日 | オリとダハール,政党統一のために会合。 |
28日 | ネパール復興庁によれば,ゴルカ地震の被災者の11%のみが家屋を再建。 |
29日 | インド大使がデウバ首相を訪問。ネパールで進行中の政治的な問題を議論。 |
29日 | バンダリ大統領が国民議会(上院)選挙にかかわる規則を承認。7つの州の知事を任命し国民議会(上院)選挙の準備に入る。 |
31日 | CPN-UMLオリがCPN-MCと連立政権発足に向けて話し合い。 |
31日 | 政府は,1月12日までに国民議会(上院)選挙の日程を決定する旨発表。 |
(注)カッコ内は所属政党。CPN-MC:ネパール共産党毛沢東主義センター,CPN-U:統一ネパール共産党,NC:ネパール国民会議派,NLF:ネパール民主フォーラム,RPP:国民民主党ネパール。*は女性。
(出所) Nepal Research Website on Nepal and Himalayan Studies Politics (government),http://opmcm.gov.np/en/cabinet/参照。
(注) 1)暫定値。2)2014/15を基準年とする。3)外貨売り渡しと買い取り価格の年平均値。
(出所) Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2016/17, Macroeconomic Indicators.
(注) 1)修正値。2)暫定値。
(出所) Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2016/17, Table 1.7 : GDP by Expenditure Category(at current prices).
(注) 1)修正値。2)暫定値。
(出所) Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2016/17, Table 1.2 : Gross Value Added by Industrial Division (At 2000/01 Prices).
(注) 1)2016年7月16日から2017年3月15日までの暫定値。2)輸出はFOB,輸入はCIF。
(出所) Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2016/17, Table 6.1 : Direction of Foreign Trade.
(注) 1)2016年7月16日から2017年3月15日までの暫定値。
(出所) Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2016/17, Table 6.7 : Balance of Payments Summary.
(注) 1)推定値。
(出所) Government of Nepal Ministry of Finance, 29 May 2017, Budget Speech of Fiscal Year 2017/18, Budget Summary Annex ‒ 1 Fiscal Year 2017/18.