2018 Volume 2018 Pages i
IMFの世界経済見通しによれば,2017年の先進国・地域の経済成長率は2.3%,日本は1.8%にとどまったのに対し,アジア新興国・地域ならびに途上国・地域では前年の6.4%を上回る6.5%の成長率を記録しました。CLMV諸国や南アジアをはじめとするアジア諸国の経済はインフラ投資と旺盛な国内需要,外需に支えられ,なお順調に成長しているといえます。世界的な原油安から物価が安定したことも経済活動を下支えしました。また,デジタル技術を用いたイノベーションの促進によって生産性の向上や経済構造改革をめざそうとする動きも多く見られました。
各国では大きな政権交代もなく,堅調な経済成長を実現したアジア諸国でしたが,アジア諸国を取り巻く環境は不安定です。2017年は北朝鮮が核実験・ミサイル発射実験を繰り返したことに対応して,日本・アメリカは国際社会に制裁の強化を求めたのに対し,中国・ロシアは比較的穏健な対応を求めるなど朝鮮半島情勢は緊張が高まりました。また,中国は前年に引き続き「一帯一路」の名の下,東南アジア,南アジア,中央アジア等で,きわめて精力的に経済協力プロジェクトを推進し,その成果が見える反面,各地で懸念も表明されています。
『アジア動向年報』は,こうしたアジアの動向を各国・地域研究者が現地の一次資料に基づいて分析し,的確な情報と判断を日本の政府と国民に提供することを目的として,1970年以降毎年発刊しております。2018年版ではアジアの23の国・地域を網羅し,2017年の動向を政治,経済,対外関係にわたって分析しております。また,各国地域編に加え「主要トピックス」編ではアジアとアメリカの関係,ロシアのアジア政策といったテーマを取り上げ,アジア情勢の総合的な把握に努めました。
昨年度版よりウェブ上での公開を行っております。本年報が,世界経済と国際政治において大きな役割を果たしているアジア地域の現状を理解し,将来を展望するうえで一助となることを大いに期待します。
2018年5月