Yearbook of Asian Affairs
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2019 Volume 2019 Pages 389-418

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2018年のインドネシア

概 況

インドネシアの2018年は「政治の年」だと言われた。5年ごとの国政選挙は2019年に実施されるが,そこに向けて選挙に関連するスケジュールが目白押しだったからである。とくに注目されたのは,大統領選に誰が立候補するかだった。現職大統領のジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)とプラボウォ・スビアントが立候補したことで2019年の大統領選は5年前と同じ戦いになることになったが,それぞれ副大統領候補には5年前とは異なる人物が選ばれた。

2018年は大きな災害の続いた年でもあった。ロンボク島,中スラウェシ州,スンダ海峡で大きな地震や津波が発生して,多くの犠牲者が出た。また,航空機や船舶の事故も相次いだ。5月にはイスラーム過激派によるテロ事件が連続して起こった。とくに,スラバヤの連続爆弾テロ事件では女性や子供がテロ実行犯となったことに国民は強い衝撃を受けた。

2018年のインドネシア経済はアメリカの金利引上げの影響によるルピア安に翻弄された1年であった。「歴史的な安さ」という表現で危機感があおられたルピアは,アメリカの4回の金利引上げとトルコ・リラ危機などの外的要因に加え,国際収支では経常収支赤字の拡大と貿易収支の赤字転落という要因が重なり,下落が続いた。貿易赤字の要因となった輸入の増加は,インフラ整備や投資向けの資本財の増加によるものであった。ルピア安にもかかわらず,失業率や貧困率は低下し,ルピア安による経済のさらなる悪化は免れた。

政権発足当初のジョコウィ大統領は外交よりも内政を重視する姿勢だったが,2018年には積極的な外交を展開した。アジア競技大会・パラ競技大会や国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会などの大きな国際イベントを成功させたほか,多国間外交でも独自の「インド太平洋協力」構想を発表し,国際社会で存在感を示した。

国内政治

災害や事故が多発

インドネシアは,インド洋プレートがユーラシア大陸に沈み込む場所に位置するため,古くから地震や火山噴火などの自然災害が多く発生してきた地域である。2018年は,そうした自然災害が各地で大きな被害をもたらした。

7月29日,ロンボク島でマグニチュード6.4の地震が発生し,20人が死亡した。その1週間後の8月5日には再び同島をマグニチュード7の地震が襲い,483人が死亡,1413人が負傷した。被災地からは約43万人が避難を余儀なくされた。

さらに,9月28日には,中スラウェシ州パルでマグニチュード7.4の地震が発生した。この地震に伴って津波や液状化による地滑りが発生し,死者・行方不明者は2860人,負傷者は4000人以上にのぼる大惨事となった。

12月22日には,スンダ海峡に位置するアナック・クラカタウ火山の噴火とそれに伴う山体崩壊が津波を引き起こし,ジャワ島西岸(バンテン州)およびスマトラ島南端(ランプン州)で437人が死亡,1万4000人以上が負傷した。

これら天災以外にも,人災による大きな事故も多く発生した。3月31日には東カリマンタン州バリクパパン湾沖で海底のパイプラインが破損して約4万バレルもの原油が流出,火災が発生して5人が死亡した。6月には北スマトラ州のトバ湖で渡船が沈没,乗員乗客ら200人以上が行方不明になる事故が発生した。さらに,10月29日,格安航空会社(LCC)ライオンエアのジャカルタ発パンカル・ピナン行きのボーイング737 Max8型機が離陸13分後にジャワ島沖で墜落し,乗員乗客あわせて189人全員が死亡した。当局は11月に回収したフライトレコーダーと2019年1月に回収したボイスレコーダーの解析を進めているが,システムの誤作動だったとの指摘がなされている。2019年3月に墜落したエチオピア航空の同型機の事故でも同様の指摘がなされており,2つの事故の原因が共通のものだった可能性がある。

スラバヤでの爆弾テロ事件の衝撃

5月13日にスラバヤで自爆テロ事件が発生した。日曜日朝のミサで多くの信者が集まっていた3つのキリスト教会を狙った同時多発テロで,一般人の死者7人,負傷者40人以上を出す惨事となった。イスラーム過激派によるテロ事件は毎年数件ずつ発生してはいたものの,最近はテロを取り締まる警察への恨みから警官を狙った小規模な事件が続いていたため,多数の民間人の犠牲者を出したテロは2009年以来である。

スラバヤは東ジャワ州の州都で,同国第2の規模の大都市であるが,治安の良い街であった。これまでテロが発生したことのなかったスラバヤで事件が発生したことは人々を驚かせた。しかし,最も衝撃だったのは,この自爆テロの犯人が,子供を含む一家族だったことである。17歳と15歳の兄弟,12歳と8歳の姉妹と42歳の母親,そして46歳の父親がそれぞれ爆弾を抱えて,3つの教会を襲撃したのである。女性が自爆テロを起こしたのはインドネシアでは初めてであるばかりでなく,子供4人までもがテロの加害者となった事実に,多くの人がやりきれない気持ちになった。

このスラバヤ同時多発テロ事件の発端となったのは,5月8日の夜にジャカルタ近郊の国家警察機動隊本部拘置所で発生したテロ犯の暴動である。ここにはテロ容疑で逮捕され,公判を待つイスラーム過激派の活動家が多数勾留されている。そのうちの1人が家族からの差し入れの食料が届かない不満を爆発させたことをきっかけに収監者155人が暴徒化し,押収・保管されていた武器を奪ったうえで警察官らを人質にして立て籠もったのである。警察が事態を収拾したのは,暴動発生から36時間経った10日の朝だった。その間,人質となった警官5人と収監者1人が死亡している。この事件が国内の過激派を刺激したとみられている。11日には,暴動があった機動隊本部拘置所で警備に当たっていた警官が刺殺される事件も発生している。

スラバヤでの同時多発テロの後にもテロ事件が続いた。5月13日の夜には,スラバヤ近郊のシドアルジョの住宅で製造中の爆弾が誤って爆発し,40代の夫婦2人と17歳の長女が死亡する事件が発生している。彼らも,一家でテロを起こすことを計画していたとみられている。さらに翌14日には,スラバヤ市警察本部で爆弾テロ事件が再び発生,実行犯4人が死亡した。この事件も,50歳と43歳の夫婦と3人の子供からなる家族が2台のオートバイに分乗して起こした事件であった。さらに,16日には,スマトラ島のリアウ州警察本部を5人の男が刀で襲撃する事件が発生している。

これら一連の事件の背後にいるのは,IS(「イスラーム国」)を支持するインドネシアのイスラーム過激派組織「ジュマー・アンシャルド・ダウラー」(JAD)である。JADは,テロ犯として収監中のアマン・アブドゥルラフマンの指令で2015年に設立され,ISへの忠誠を誓うインドネシア人を糾合する国内最大規模のイスラーム過激派組織に成長した。2016年1月にジャカルタの中心部で発生したテロ事件をはじめ,インドネシアで発生している近年のテロ事件の多くにこのJADの構成員が関与したとみられている。

5月8日の機動隊本部拘置所での暴動でも,首謀者は同じ拘置所内に勾留されていたJADの指導者アマンとの面会を求めていた。スラバヤの教会を狙った同時多発テロも,JADの東ジャワにおける指導者ザエナル・アンシャリの逮捕がきっかけだったという見方がある。また,シリアのISからテロの実行を促す指令が出されていたという情報もある。

高い支持率を維持したジョコウィ大統領

災害や事故,テロ事件などが相次いだが,ジョコウィ大統領に対する国民の支持は高いレベルを維持した。各種世論調査における政権運営に対する国民の満足度は,2016年以降60%以上の高いレベルを保ち,2017年後半以降は70%台で安定した。

その要因は,ジョコウィ政権にこれまでのところ大きな失政がなく,経済運営にも安定感がみられるところにある。2014年の政権発足直後は不安定だった政局も,2016年までに政権基盤固めに成功したことで落ち着いた。彼の目玉政策である貧困削減や低所得層向けの政策,インフラ整備を通じた地域開発政策なども,批判を受けながらも,着実に実行されつつある。経済成長率は目標の6%にはなかなか届かないが,経済状況に暗さは見られず,政権に対する評価の足を引っ張るまでには落ち込んでいない。

それ以上にジョコウィの人気を支えているのは,大統領になっても失われないジョコウィ自身の「個人的な親しみやすさ」や「エリートずれしない性格」である。ジョコウィは,地方首長時代から現場を直接視察することや住民と直接対話することを重視し,それをジャワ語の「ブルスカン」と呼んで自らの政治スタイルとしてきた。その政治スタイルは大統領就任後も変わることなく続けられている。現場視察や地方視察はいまでも頻繁に行われており,地方視察時には住民との直接対話の機会が必ず設けられている。インターネットを利用した国民とのコミュニケーションにも積極的に取り組んでおり,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて首脳同士の交流が公開されるなど,ジョコウィは新しい政治指導者像をアピールし続けた。

2019年総選挙・大統領選へ向けた動き

2019年選挙の投票日は2019年4月17日である。これまでの選挙は,4月に議会選挙を実施し,その結果をうけて各政党が合従連衡を模索しながら大統領候補を擁立し,7月に大統領選挙の第1回投票が行われていた。しかし,それを規定していた法律に対して憲法裁判所が憲法の趣旨に反していることや経済的損失などを理由に2014年1月に違憲判決を出したため,2019年は初めて議会選と大統領選が同日に実施されることになった。

そのため,今回は大統領候補の擁立が前倒しで動き始めた。大統領選の立候補届出が8月4~10日,総選挙委員会(KPU)による資格審査を経て立候補者が正式に決まったのが9月20日,そして選挙戦が9月23日から始まった。これと並行して,国会(DPR),地方代表議会(DPD),州議会,県・市議会の各議員選挙に参加する政党の登録,審査,立候補届出などの手続きが進められた。

議会選挙に参加が認められた政党数は16である。2014年の総選挙で国会に議席を獲得した10政党(登録番号順に,民族覚醒党,グリンドラ党,闘争民主党,ゴルカル党,ナスデム党,福祉正義党,開発統一党,国民信託党,ハヌラ党,民主主義者党)に,前回の選挙に参加しながらも議席を獲得できなかった2政党(月星党,公正統一党),そして今回新たに設立された4政党(ガルーダ党,ブルカルヤ党,インドネシア統一党,インドネシア団結党)が議席を争う。選挙制度は前回と同じ非拘束名簿式の比例代表制だが,国会の定数が15増やされて575議席に増員されたり,議席獲得のための最低得票率(代表阻止条項)が3.5%から4%に引き上げられたりするなど,いくつかの変更点もある。

一方,大統領選に立候補を届け出たのは現職のジョコウィ大統領と,元陸軍将校のプラボウォ・スビアントであった。5年前の2014年大統領選と同じ顔合わせで選挙が戦われることになったのである。しかし,それぞれの大統領候補とペアを組む副大統領候補は,前回とは異なる人物が選ばれた。

現職のジョコウィ大統領は,早くから政党の支持を固めて有利に選挙に向けた準備を進めてきた。大統領選では無所属の立候補は認められておらず,国会で20%以上の議席を有している単独の政党もしくは複数の政党の連合,もしくは前回の選挙で25%以上の得票率を得た政党・政党連合の支持が必要である。ジョコウィは,自身の出身政党である闘争民主党(PDIP)や議会第2党のゴルカル党をはじめ,現与党連合を構成する6政党からの支持を2月までに固めた。

ジョコウィとしては,現副大統領であるユスフ・カラと再び手を組んで2期目を目指すのが最善の策であった。しかし,カラは2009~2014年のスシロ・バンバン・ユドヨノ第1期政権で副大統領をすでに務めており,「正副大統領への就任は2回まで」という憲法の規定があって,立候補の資格がなかった。

そのため,ジョコウィは新しいパートナーを探す必要に迫られた。ジョコウィ擁立に加わった各政党は自党の党首を副大統領に推していたが,どの党首も人気や実力といった点で弱く,ジョコウィの選択肢には入っていなかった。そうすると,政党人以外で,選挙戦におけるジョコウィの弱点を埋められる人物が副大統領候補として最適任となる。それは,ジョコウィに対する支持が最も脆弱である「敬虔なイスラーム教徒」の有権者からの支持が得られる人物であった。

そこでジョコウィが選んだのが,マアルフ・アミンである。マアルフは,今年57歳になったジョコウィよりも18歳年上,75歳のイスラーム教指導者である。彼はイスラーム法学者であるが,1970年代から政治家としても活動してきた。近年は,インドネシア最大のイスラーム組織ナフダトゥル・ウラマー(NU)の総裁や,半官半民組織のインドネシア・ウラマー評議会(MUI)議長などの要職も務めている。ジョコウィとしては,自らの支持が最も脆弱である「敬虔なイスラーム教徒」の有権者からの支持を得られることを目論んでの選択であった。ジョコウィは,連立9党の党首・幹事長と協議の後,立候補届出の前日となる8月9日にマアルフとともに立候補することを発表した。

しかし,マアルフの選択は,ジョコウィを以前から支持してきた市民社会運動家らからすると,驚きだった。なぜなら,マアルフは,イデオロギー的には,ジョコウィと最も対極的な立場に立つ人物だからである。

インドネシアのイスラームは,暴力に訴えてイスラーム的価値観を実現しようとする急進派から,多元主義や世俗主義を尊重するリベラル派までその内実は多様である。このなかでマアルフは,多元主義的な教義解釈を否定する保守的なイスラーム指導者である。マアルフは,キリスト教などの少数派宗教施設の建設を制限することに賛成したり,LGBTなどの性的少数者に対する刑罰の導入を支持するなどの発言をこれまでしてきた。とくに彼の保守性が典型的に示されたのが,2016年に中国系キリスト教徒のジャカルタ首都特別州知事バスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)がイスラームの聖典コーランを侮辱したとのファトワ(法的見解)をMUIが出すことを主導したことである。このファトワは,アホック州知事がイスラーム教を冒涜したと糾弾する動きに正統性を与え,イスラーム保守派団体による宗教対立を利用した大衆煽動へとつながった。

ジョコウィは,宗教や民族の多様性を認める世俗派のイスラーム教徒であり,保守派とは反対の立ち位置にいる人物である。なぜジョコウィは,思想的に遠い位置にいるはずのイスラーム保守派をパートナーに選んだのであろうか。それは,ジョコウィ陣営が,2019年大統領選で鍵を握るのがイスラーム票だと考えていることのあらわれにほかならない。5年前の大統領選でも,イスラーム組織の影響力が強い地域ではジョコウィは苦戦している。しかも,2017年のジャカルタ州知事選で,住民から人気のあった現職知事アホックがイスラーム保守派からの攻撃を受けて敗北するなど,イスラーム保守派の勢いが増しているという現実がある。ジョコウィとしては,イスラーム保守派を陣営に取り込むことで「敬虔なイスラーム教徒」の有権者からの支持を固め,選挙での勝利を確実にしたいという思惑があったのである。

一方で,67歳になったプラボウォが副大統領候補に選んだのは,若手実業家のサンディアガ・ウノ(通称サンディ)であった。1969年生まれのサンディは,自ら投資会社を設立するなど若手有望実業家として注目されるようになり,青年会議所会頭やインドネシア商工会議所(KADIN)副会頭を歴任するなど,財界でも活躍してきた。

2015年に政界入りした彼は,2017年のジャカルタ州知事選で,若手知識人アニス・バスウェダンの副州知事候補として選挙戦を戦い,現職州知事のアホックに対するイスラーム保守派のバッシングが吹き荒れるなか,当選を果たした。今回,サンディはジャカルタ副州知事の職を任期途中で辞して,プラボウォの副大統領候補として立候補したのである。

プラボウォの副大統領候補選びは,ジョコウィ以上に難航した。連立を組んだイスラーム系の福祉正義党(PKS)は自党の有力者を,ユドヨノ前大統領が率いる民主主義者党はユドヨノが後継者と考えている自らの長男を副大統領候補にするよう圧力をかけた。しかし,プラボウォは,知名度の低いイスラーム系政党の指導者を選ぶことも,借りを作ることになるユドヨノの長男を選択することも躊躇した。ジョコウィが誰を副大統領候補に選ぶのか分からなかったことも,プラボウォの決断を遅らせた。プラボウォが副大統領候補をサンディとすると発表したのは,ジョコウィがマアルフとの立候補を発表した直後,立候補登録締切の前日深夜のことだった。

当初は候補者リストになかったサンディが選ばれたのは,ジョコウィと対抗するうえでプラボウォと最も相互補完性が高いとみなされたからである。ジョコウィはイスラーム票を取り込むためにイスラーム保守派の指導者を副大統領候補に選んだが,もともとプラボウォはイスラーム票の支持が強い政治家である。ここでプラボウォがジョコウィと同じ戦略を採ってもあまり意味はない。

むしろ,プラボウォは,若くてフレッシュなイメージがあり,容姿端麗なサンディをパートナーに据えることで,有権者の半数を占める女性や,過半数以上を占めるといわれる30歳代までの「ミレニアル世代」からの支持を固める戦略に出たのである。また,若手実業家であるサンディであれば,「経済に強い」ことを有権者にアピールすることができるうえ,有力な華人実業家に対抗できるマレー系原住民出身の実業家として有権者のシンパシーを獲得することもできる。敬虔なイスラーム教徒というイメージもサンディは持っているため,イスラーム票を逃すこともない。パートナー決定までは混乱もあったものの,サンディの選択はプラボウォにとって間違いではなかったといえるだろう。

(川村)

経 済

ルピア安ながらも安定したマクロ経済

2018年の名目GDPは1京4837兆3575億ルピアで,実質GDP成長率は5.17%と予算の前提であった5.4%には届かなかったものの,前年の5.07%を上回った。家計消費は名目GDPの55.7%で前年とほぼ同水準であり,伸び率は5.0%,寄与度は2.7%と前年と変わらずであった。「対家計民間非営利団体」(NPISH)消費支出の割合は1.2%であり,前年比9.1%増の高い伸びを示した。NPISHには政党,財団,宗教団体,労働組合,援助機関などが含まれるため,6月に実施された地方首長同時選挙や2019年総選挙・大統領選の準備のための全国規模の政党活動などにより消費が伸びた。政府支出の割合は9.0%で前年比4.8%増,寄与度は0.4%と前年に比べて高かった。投資(総固定資本形成)の割合は32.3%で同6.7%増と前年より高くなり,寄与度も2.2%と高かった。とりわけ機械・設備投資の伸び率が高く,第3四半期までは前年同期比20%を超える伸びを示し,通年でも19.5%増であった。輸出がGDPに占める割合は20.1%で,前年比6.5%増であった。非石油・ガスの輸出は8.3%伸びたが,石油・ガスの輸出は5.8%減少した。一方,輸入はGDPの22.2%を占め,12.0%伸びた。そのため純輸出(輸出マイナス輸入)の成長への寄与度は1.0%のマイナスとなった。

国際収支は,経常収支が310億6000万ドルの赤字となり,赤字幅は前年の161億9600万ドルから大幅に拡大した。GDP比でみても2.98%と前年の1.6%から拡大した。財輸出は1807億4700万ドル,財輸入は1811億7800万ドルとどちらも前年より増加したものの,輸入の増加率が大きかったため,国際収支上1967年以来初めての貿易収支赤字(4億3100万ドル)を計上した。非石油・ガスの輸出は1611億ドル,輸入は1499億ドルとそれぞれ前年より増加し,同部門の貿易収支は112億ドルの黒字であったものの前年から141億ドル減と大幅な減少を記録した。石油・ガス輸出は176億ドル,輸入は10月までの原油価格上昇の影響を受けた結果292億ドルに増加したため,石油・ガス部門の貿易赤字は前年の73億ドルから拡大し,116億ドルの赤字となった。

輸出のうち,上位を占めたのは,前年同様石炭(全輸出の13.1%)とパーム油(同9.1%)であった。石炭の輸出は,中国,インドからの需要が高まったため前年比17.4%増加し,生産量も前年比19%増加した。一方,パーム油の輸出は,主要輸出先であるインドが2018年3月からパーム原油とパーム油製品の輸入関税をそれぞれ30%から44%に,40%から54%に引き上げたことが大きな要因となり,10.7%の大幅な減少となった。なお,2017年に未加工鉱石の輸出禁止が条件付きで解除されたことにより,ニッケルは前年の4倍の6億2803万ドル(全輸出に占める割合は0.3%),ボーキサイトも同4倍の2億6501万ドル(同0.1%)と輸出は拡大したものの,輸出禁止前の2013年の水準(それぞれ0.9%,0.7%)には至っていない。全輸出(石油・ガス含む)に占める鉱物資源の割合は24.4%であり,前年の22.3%から微増した。

2018年の輸出(石油・ガスを含む)先の1位は中国で輸出額は268億ドル,2位は日本の188億ドル,3位はアメリカの185億ドルであった。輸入先の1位は中国で437億ドル,2位はシンガポールで243億ドル,3位は日本で183億ドルであった。対中国の貿易赤字は,前年の111億ドルから169億ドルに拡大した。

金融収支は,アメリカの金利引上げによる資本流出によるルピア安に苦しんだものの,通年では251億ドルの純流入となった。ポートフォリオ投資の流出は第1四半期が最も大きく,11億1000万ドルの流出(ネット)となった。民間部門からの流出が大きかった。とりわけ株式投資への影響が大きく,上半期で35億7500万ドルが流出した。そのため年初6339で始まったインドネシア総合株式指数は半年で10%以上値下がりした。政府部門では第2四半期に12億7200万ドルの短期債務が流出した。しかし,ルピア安が一段落した11月以降には一変して長期債務流入が増加し,通年での長期債務は,政府部門が105億1000万ドル,民間部門が94億1200万ドルの流入となった。その結果,通年でのポートフォリオ投資は93億4200万ドルの純流入となった。一方,インドネシアへの直接投資の流入は前年とほぼ変わりはなく,201億7100万ドルだった。インドネシアへの投資がもっとも多かったのはシンガポールで105億ドル,次いで日本が49憶ドル,3位が中国で21億ドル,4位は香港の12億ドルであった。

投資調整庁(BKPM)によると,国内投資実施額は328兆6049億ルピア(1万815案件)と前年の262兆3505億ルピア(8838案件)から大幅に伸びた。運輸・倉庫・通信が58兆7000億ルピア(17.9%),建設が45兆ルピア(13.7%),食品産業が39兆1000億ルピア(11.9%)であった。一方,海外投資実施額は293億790万ドル(2万1972案件)と前年の322億3980万ドル(2万6257案件)から減少した。電気・ガス・水道に44億ドル(15.0%),住宅・工業団地・オフィスビルに43憶ドル(14.7%),鉱業に30億ドル(10.4%)が投資された。なお,国際収支統計上の直接投資額は,株式など資本の対外取引を対象としているのに対して,BKPMの投資実績額はインドネシアで事業を行う個々の事業主が投資活動について報告する活動報告書(LKPM)に基づいていることから,両者の内容は異なる。加えて,BKPMの情報には石油・ガスや金融,保険,リース,家内工業部門は含まれていない。また,LKPMには設備投資などが含まれるため,BKPMの統計の方が大きくなる。

消費者物価指数は前年同期比2.88~3.41%増の幅で推移し,ルピア安が進行するなかでも安定していた。補助金の引き上げによる燃料価格の抑制や航空運賃などの管理価格品目の安定および食糧価格の管理ができたことによる。低いインフレ率と安定的な経済成長は貧困率の低下をもたらした。3月の貧困率は都市部で6.89%,農村部で13.1%,都市・農村の合計では9.82%と初めて1桁台に低下した。続く9月も貧困率は低下し,9.66%となった。2010年から1桁になっていた都市部では,ジョコウィ大統領就任時の2014年9月からの低下率は15.6ポイントと,農村部の低下率4.8ポイントをはるかに上回り,農村部での貧困削減が都市部ほど進んでいないことがわかる。失業率も5.3%と前年の5.5%から低下した。

歴史的ルピア安の進行と対応策

アメリカの金利引き上げの影響を受け,ルピアは年初から下落を続け,10月11日には1ドル1万5269ルピアをつけた(図1)。この為替水準はアジア通貨危機後の1998年6月の最安値の1万6500ルピアに迫るものであった。数値だけをみるとたしかに歴史的な安さといえるものの,2018年のルピア安をアジア通貨危機当時と比較してもあまり意味はない。なぜなら,アジア通貨危機当時は1ドル2300ルピアから一気に1万6500ルピアまで暴落したが,2018年は年初と比較しても1万3500ルピアから1万5269ルピアへの下落であり,下落率では比べ物にならないからである。さらに,危機当時と比べると国際経済も大きく変化し,インドネシア経済自体も過去の経験を経て外貨準備の積み増しなど耐性も大きく改善したため,ルピア安が経済危機から政治危機につながったアジア通貨危機とは全く異なるものであった。しかし当然ながら,ルピア安は経済に大きな打撃を与えた。

図1  ルピアの対ドル為替レート(終値)推移(1996~2019)

(出所)Bank Indonesia, Factiva.

アメリカの金利引き上げが実施されると新興国経済からの資本流出が懸念されはじめ,インドネシアからも流出が本格化した。4月に入ると為替相場が1ドル1万4000ルピアに近付いたため,インドネシア銀行(中銀)は4月23日には「相当な額」の為替介入を実施すると声明を出し,加えて通貨の安定に向けた対策をとる準備のあることを明らかにした。中銀は,その後も下落の続くルピアの防衛として,政策金利である7日物リバースレポ金利の引き上げをアメリカの金利引き上げに先行して実施した。政策金利は5月17日に4.25%から4.5%に,さらに2週間後の5月30日には4.75%に引き上げられた。6月にアメリカの金利引き上げによりルピア安が進行すると,中銀はこれに対処するため,6月29日に政策金利を50ベーシスポイント引き上げて5.25%とした。しかし,8月10日にトルコ・リラが暴落し,これによって新興国通貨が軒並み下落するなかでルピア売りも激しくなったことから,中銀は8月15日に政策金利を5.5%に引き上げた。さらに,アメリカが2018年に入って3度目の利上げを9月26日に実施したことを受けて,翌9月27日に中銀は政策金利を5.75%に引き上げ,11月15日には6.0%に引き上げた。したがって,政策金利は,6回にわたる金利引き上げにより合計175ベーシスポイント引き上げられたことになる。

中銀は,金利の引き上げと並行して,外国為替市場への介入や債券市場での国債の買い支えを積極的に実施した。為替介入の結果,外貨準備は前年末の1302億ドルから1206億5000万ドルに減少した。外貨準備を維持するために2国間スワップ協定も強化した。8月にはオーストラリアとの間で,100億豪ドル相当のスワップ協定が改正された。10月には日本との取極を改定し,227億6000万ドル相当を上限として,ルピアをドルに加えて日本円とも交換可能とした。11月には中国とのスワップ協定が更新され,上限も300億ドルに引き上げられた。

さらに,為替市場の厚みを増し,国内の企業や外国人投資家にヘッジ手段を提供することを目的として,国内ノンデリバラブル・フォーワード(NDF)市場が設立され11月1日より取引が開始された。インドネシアは為替取引に実需原則を適用し,インドネシアにはオフショア市場が存在しないため,為替取引の多くは海外のオフショア市場においてNDFで取引されている。従来,先物取引は非常に少なかったが,アメリカで量的緩和政策の縮小が示唆された2013年5月以降,先物取引の売り越しが急増するのにともないNDF取引も急増した。そのため,国内に資金を取り込み,中銀もルピアの動きを掌握することができる国内NDF市場の創設に中銀が乗り出したといえる。

これらの政策が実施されたことや,アメリカの金利引き上げが一段落したことなどから,11月以降のルピア相場は比較的落ち着きを取り戻し,年末の12月31日は1ドル1万4380ルピアで取引を終えた。

貿易収支赤字とインフラ整備

ルピアの下落は,アメリカの金利引き上げによって新興国から資金が引き揚げられ,とくに経常収支赤字国の通貨がターゲットになったことによる。前年のインドネシアの経常収支赤字のGDP比は1.6%であり,ブラジルやトルコ,南アフリカなどと比較して小さかった。しかし,2018年に入り赤字幅は第1四半期の2.07%,第2四半期の3.01%,第3四半期の3.28%,第4四半期の3.57%と悪化の一途をたどった。

その原因は(国際収支上の)貿易収支の赤字化にある。第1四半期の貿易収支は23億2300万ドルだったが,第2四半期には2億7700万ドルに減少し,第3四半期には4億5400万ドルの赤字に転落,第4四半期には25億7600万ドルの赤字と悪化していった。この貿易収支・経常収支赤字の拡大がルピア安を加速した原因であるものの,貿易収支赤字の要因は,インフラ整備が進捗したことによる中間財や資本財の輸入が伸びたことが一因とされる。これらの輸入は家計消費にかかわる消費財の輸入の増大とは異なり,将来の生産性増加につながるものであるため,今後の経済成長の基盤作りという点を考慮すると,輸出が伸び悩むなかで赤字が生じることは致し方なかったといえる。

インフラ整備の促進はジョコウィ政権のもっとも重要な成果であり,インフラ整備の進展が経済成長につながっていることが選挙戦でも大きく宣伝されている。大統領令2014年第75号によって設置された優先インフラ整備促進委員会(KPPIP)は,2018年に総額225兆1500億ルピアにのぼる32の国家優先プロジェクトが完了したと発表した。

2018年度の財政予算では,インフラ整備に410兆4000億ルピア(歳出の18.5%)が割り当てられた。しかしこの額も十分ではなく,政府は民間企業と共同で実施する官民連携手法(PPP)を推進した。それに伴い政府の保証も重要になり,2018年末の政府保証残高は176兆2700億ルピアとなった。

また経常収支赤字の拡大がルピア安に拍車をかけたことから,政府は赤字拡大を阻止するための対策をとった。8月に政府は,国内で生産され代替可能な消費財および原材料の輸入時の前払い所得税(PPh22)を2.5%から7.5%ないし10%に引き上げることを決定し,未着工かつ輸入比率の高いインフラ投資の延期を決定した。国営石油会社プルタミナと国営電力会社PLNに対しても,資本財の輸入の抑制と資金の手当てができていない案件の延期や資本財の輸入を6カ月間保留することなどが指示された。PPh22の引き上げの対象品目は,検討当初は500品目程度であったが,最終的には1147品目まで拡大され9月13日に導入された。加えて,原油輸入を抑制するために,9月以降パーム油由来のバイオディーゼルを軽油に20%混合することが義務づけられた。

財政赤字の改善

2018年度の財政赤字は2012年以来最小の259兆8959億ルピアとなり,GDP比1.76%と目標の2.19%を大幅に下回った。上半期時点で税収・税外収入の見通しがよかったため,政府は7月の段階で2018年度補正予算を策定しない方針を示し,編成せずに年度を終えた。歳入は1942兆3420億ルピア,歳出は2202兆2389億ルピアであった。前年から続く原油価格の上昇によるインフレ上昇を抑制するため,6月に軽油の補助金が1リットル当たり500ルピアから2000ルピアに引き上げられ,補助金の支出は予算額の139%(216兆ルピア)に大幅に拡大したものの,歳出全体は99.2%と若干予算を下回った。一方,税収は1521兆3811億ルピアと予算額の94%にとどまったが,税外収入の伸びが前年比31%増と大きく,予算額の147.8%となる407兆609億ルピアとなった。原油や天然ガス,石炭の価格の上昇により天然資源の輸出からの税外収入が増加したことによるものである。その結果,歳入は予算額の102.5%を達成した。

加えて,贈与が増加し,予算額の11.6倍にあたる13兆9000億ルピアとなったことも赤字改善に貢献した。そのうち11兆300億ルピアは国内からのもので,そのほとんどは6月に実施された地方首長同時選挙の費用として地方自治体から中央政府に供与されたものである。

投資促進策

国内外からの投資を促進するため,政府は4月にタックスホリデーの供与に関する財務大臣令2018年35号を制定し,優先分野とする17分野のパイオニア産業を決定した。100%減税の対象となる投資額と税優遇期間はそれぞれ,5000億ルピア以上1兆ルピア未満が5年間,1兆ルピア以上5兆ルピア未満が7年間,5兆ルピア以上15兆ルピア未満が10年間,15兆ルピア以上30兆ルピア未満が15年間,30兆ルピア以上が20年間である。

7月9日には,事業許認可をインターネット上で一元的に行うオンライン・シングル・サブミッション(OSS)によるサービスが正式に始まった。OSSの始動により,新規申請や更新,会社情報の変更など投資に関するすべての許認可はOSSを通じてなされることになった。窓口はBKPMで,他の中央省庁や地方政府は許認可業務を行わないことになる。12月21日時点でOSSには22万5965件の登録がなされ,事業認可件数は17万3310件に達した。

11月16日には,ネガティブ・リストの緩和,タックスホリデーの対象拡大,所得税の優遇措置を適用し,天然資源輸出代金を外国為替銀行の特別口座に入れることを義務付けることで為替管理を強化する政策が,第16弾経済政策パッケージとして発表された。ネガティブ・リストの改定は,2016年に制定されたリストの改定である。54の分野で見直しがなされ,うち25分野で100%の外国資本の所有が認められることになった。しかしその直後,インドネシア商工会議所が,国内経済への影響について協議が終わっていないとして,外資の100%出資実施の延期を要請した。インドネシア経営者協会(Apindo)からも政府の政策に対する批判が上がり,ネガティブ・リストの改正は先送りされた。

タックスホリデーの対象拡大は,ミニ・タックスホリデーを創設し,4月に決定した投資額よりも少額の投資についても税優遇の対象とするというものである。1000億ルピア以上5000億ルピア未満は50%の減税5年間,パイオニア産業も17分野から18分野に変更された。

電子商取引の急拡大

電子商取引(eコマース)拡大の加速度は年々増している。シンガポールのソブリン・ファンド,テマセク・ホールディングスとグーグルの共同レポートは,2018年のインドネシアのeコマース売上高は122億ドルで,2025年には530憶ドルになると予想している。またアメリカのコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーは,2022年にはインドネシアのeコマース市場は550億~650憶ドルになると予想している。ASEAN市場においても群を抜く規模を持ち,急拡大するインドネシアのeコマース市場は世界中から注目されている。

しかしながら,この急拡大する市場の実際の規模について,インドネシア国内ではまだ十分に把握されておらず,市場規模はもっぱら海外の推計値を用いて語られている。そこで,中央統計庁(BPS)は1月からeコマースのデータ収集に乗り出したものの,9月の時点で,BPSが対象とする79のeコマース企業のうち情報を提供してきたのは17企業でしかなく,データの収集は難航している。2019年1月に財務省はeコマースへの課税を検討し始めるなど,今後のインドネシア経済に与える影響は大きい。そのため,政府としてはこの急速に拡大する巨大市場を早急に把握する必要がある。

eコマースの発展と表裏一体となるのが,オンライン決済の拡充や電子マネーの利用拡大である。経済インフラとなるインターネットが普及するのに並行して,銀行部門でも電子マネーの普及が急速に拡大している。インドネシアの各銀行は,ATM,電子的データ収集(EDC)端末への投資や,プリペイドカード普及のための電子マネー・リーダーの導入を進めている。

2018年の電子マネー取引の急激な伸びには目を見張るものがある(図2)。中銀もキャッシュレス化を推進している。2019年3月には,国営銀行4行と国営通信会社テレコムセルが参加する電子支払いサービスのプラットフォーム・リンクアジャ(LinkAja)が運営を開始することになるなど,電子決済の仕組みも急速に整いつつある。

図2  電子マネー取引の推移(2011~2018)

(出所)Bank Indonesia.

eコマースの拡大は今後も続くと思われるが,それとともに問題も発生してくると思われる。eコマースの拡大には配送サービスの拡充・拡大が伴わなければならない。現在,インターネットの利用はジャカルタ首都特別州を中心にジャワ島やその他の大都市に限られている。今後インターネット利用が拡大すれば,輸送網の十分でないインドネシア全土で宅配サービスの需要が高まることになり,ここでもインフラの拡充が課題となる。

(濱田)

対外関係

大きな国際会議・大会を多数開催

2018年は,インドネシアが主催した大きな国際的イベントや国際会議が多数開催された。第11回を迎えたバリ民主主義フォーラムのほかにも,海洋汚染の問題などを話し合った第5回アワオーシャン会合,人身売買問題などを討議する第7回バリ・プロセス大臣級会合,アフリカとの経済協力・海洋協力を話し合った第1回インドネシア・アフリカ・フォーラム,第1回インドネシア・アフリカ海洋対話,アフガニスタン紛争の解決に向けたアフガニスタン・パキスタン・インドネシア3カ国ウラマー会議などがインドネシアの主催で開催された。

そのなかでも特筆されるのが,8月18日から9月2日までジャカルタとパレンバンを会場として開催されたアジア競技大会の成功である。インドネシアでは56年ぶり2度目の開催となった同大会には,アジア45カ国・地域の選手1万1000人,関係者5500人が参加した。チケットの発券ミスや施設建設の遅れなどの混乱も多かったが,ジョコウィ大統領自身が開会式にバイクで登場したり,頻繁に競技会場での応援に出向いたりするなど,大会の盛り上げに一役買った。大会の開催にあわせて会場周辺の道路やライトレールトランジット(LRT)などのアクセス交通も整備された。

選手団も奮闘し,最終的なメダル獲得数は金31個,銀24個,銅43個の計98個で総合4位となり,史上最高の成績を残した(総合順位では1962年に日本に続く2位になったことがある)。アジアパラ競技大会も10月6日から13日までジャカルタで開催され,アジア42カ国・地域の選手2800人余が参加した。

IMF・世界銀行年次総会の開催

10月にはIMF・世界銀行の年次総会がバリ島で開催された。同年次総会は3年に1度,アメリカ以外の加盟国で開催されるが,アジアでの開催は香港,シンガポール,日本に次いで4カ所目である。国内にはアジア通貨危機時の経験からIMFに対する嫌悪感がいまだに残るなか,インドネシアが議長国となって開催した年次総会は,インドネシアがIMFの債務国ではないことを明らかにし,インドネシア経済の健全さをアピールする場になった。また,開会演説でジョコウィ大統領が人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」をたとえに気候変動などへの国際協調をないがしろにする大国の覇権争いを暗に批判したことが話題を呼んだ。一国主義の流れが世界的に強まるなかで国際協力の必要性を訴えたことは,インドネシア外交の面目躍如となった。

政府は,この機会を利用して多くの経済合意を取り付けることにも成功している。投資家に向けて国営企業20社による80件にのぼるインフラプロジェクトが紹介され,その結果,19のプロジェクトで総額135億ドルの案件が成立した。中銀とシンガポール金融通貨庁との間では,外貨準備高の強化にむけた100億ドルのスワップ協定が結ばれている。また,世界銀行は,ロンボクやスラウェシの被災地における救済・復興支援に最大10億ドルの資金と5億ドルの無償援助を供与することを約束した。アジア開発銀行も3億ドルの無償援助供与を表明した。

独自の「インド太平洋協力」を提唱

中国の台頭によってアジア太平洋地域での戦略バランスが大きく変わるなか,中国をどのように地域秩序に取り込むかは周辺国家にとって大きな外交課題である。これに対して日本やアメリカは,中国を抑止することを主眼として「自由で開かれたインド太平洋」戦略を2017年から提唱するようになった。日本の安倍首相は,2017年1月に来訪した際にこの戦略をジョコウィ大統領に提示し,インドネシアの積極的な関与を求めている。これに対してジョコウィ大統領は,インドネシアが議長を務める環インド洋連合(IORA)とも連携していきたいと述べるにとどまり,日米が主導するインド太平洋戦略に対しては一歩引いた立場を取っていた。2018年1月にマティス米国防相が来訪した際も,会談したレトノ・マルスディ外相は,インド太平洋というコンセプトに賛意を示しつつも,それが「オープンで,協力の精神と対話の慣行にもとづいたもの」であるべきと釘を刺した。

このような域外大国による,中国を意識したバランス・オブ・パワー外交に東南アジアが巻き込まれるのを避けるため,インドネシアは独自の地域秩序構想を提唱し始めた。それが1月のASEAN外相会議でレトノ外相から示された「インド太平洋協力」である。その後この構想は,ニューデリーで開催された1月のインドASEAN首脳会議,シンガポールで開催された4月のASEAN首脳会議,5月のインドのモディ首相との会談,そして11月の東アジアサミットと外交交渉の場でジョコウィ大統領からも繰り返し提案された。

インドネシアが「インド太平洋」という地域概念を提示したのはこれが初めてではない。ユドヨノ政権時代の2013年に,マルティ・ナタレガワ外相が地域の平和と安定を確立するための新たな概念としてインド太平洋協力をすでに提唱している。当時,インドネシアのこの提案は他国からはほとんど注目されることはなかった。しかし,インド太平洋地域が大国間の覇権争いの場に変化しつつあることを受け,インドネシアはこの地域の秩序構築を東南アジア自身の手に取り戻すため,再びこの概念を提唱することになったのである。

インドネシアが提唱する「インド太平洋協力」構想の特徴は,「オープン,包摂性,透明性,協力,友好を原則とする」という点にある。日米が主唱する中国封じ込めの戦略としてのインド太平洋戦略とは異なり,インドネシアの構想は中国やロシアも含めた国際協力の枠組みとして提唱されている。また,このインド太平洋協力では,ASEANが中心的な役割を果たすことが強調されている。その点で,これまでASEANが中心になって形成してきた東アジア地域秩序構想を拡大するものとして位置付けられているといえる。

インドネシアの提唱するインド太平洋協力は単なる抽象的な概念にとどまっていない。インド洋と太平洋の結節点にあるという地政学的位置を活かすべく,政府は,インド洋周辺地域との外交にも積極的に取り組んだ。3月には,環インド洋連合議長国として,20年前の発足以来初めてとなる首脳会議の開催を実現させた。また,上述のように,アフリカ諸国との経済協力を強く推し進めたのも2018年の外交の特徴であった。

(川村・濱田)

2019年の課題

2019年は5年に1度の国政選挙の年である。4月に,史上初めて大統領選と議会選が同時に実施される。現職のジョコウィが勝つのか,プラボウォが前回の雪辱を果たすのか,その結果も重要ではあるが,分断政治の流れが強まるなか,大統領選が社会の亀裂をさらに深めることにならないかという点が長期的には重要な意味を持つだろう。選挙が平穏に終わり,選挙結果を両陣営が受け入れれば,10月には新政権が発足する。新しく成立する政権がどのような陣容になるのか,どのような政策を提示するのかも,今後のインドネシアを短中期的に考えるうえでは重要である。

また,選挙の結果いかんにかかわらず,インドネシア経済が抱える問題は変わらない。アメリカの金利引き上げの見通しは一服したものの,米中貿易摩擦による世界経済の不透明感が続くなか,輸出の拡大などが課題となる。インフラの整備が進み,経済のデジタル化が急速に拡大するなかで,人々の生活様式も急速に変化している。大統領が誰になったとしてもこの変化の勢いに変わりはないと思われる。この勢いを滞らせることなく,投資の促進を進め,人材への投資を高めることが重要である。

(川村:学術情報センター)

(濱田:開発研究センター)

重要日誌 インドネシア 2018年
   1月
11日 憲法裁,大統領候補の擁立を前回総選挙で議席を獲得した政党に限定する総選挙法の規定を合憲と判断。
15日 ゴルカル党のバンバン・スサストヨが,2017年12月に汚職容疑で辞任したセトヤ・ノファントの後任として国会議長に就任。
15日 政府,底引き網漁を全面禁止とする方針を発表。しかし,漁業組織の反対をうけ,17日に猶予期間を設定することを決定。
17日 大統領,ゴルカル党幹事長のイドルス・マルハムを社会相に,ムルドコ元国軍司令官を大統領首席補佐官に,アグム・グムラル元国防相を大統領諮問会議委員に,ユユ・スティスナを空軍参謀長に任命。
18日 ハヌラ党,臨時党大会を開催し,ウスマン・サプタ・オダン党首の解任を決定。
20日 日本インドネシア国交樹立60周年の記念式典,ジャカルタで開催。
22日 アメリカのマティス国防長官,来訪。
24日 大統領,南アジア5カ国歴訪に出発。29日までにスリランカ,インド,パキスタン,バングラデシュ,アフガニスタンを訪問。25日にはニューデリーで開催されたインド・ASEAN首脳会議に出席。
   2月
3日 汚職撲滅委員会,東ジャワ州ジョンバン県知事ニョノ・スハルリ・ウィハンドコを汚職容疑で現行犯逮捕。
9日 憲法裁,汚職撲滅委員会は執政府に属するとの判断。
11日 ジョグジャカルタ州スレマン県の教会で襲撃事件が発生,5人がけが。
11日 汚職撲滅委員会,東ヌサ・トゥンガラ州ンガダ県知事マリアヌス・サエを収賄の現行犯で逮捕。
11日 スハルト時代に中銀総裁,商業相などを務めたラフマット・サレが死去。
12日 改正議会法,国会で可決成立。
13日 汚職撲滅委員会,西ジャワ州スバン県知事イマス・アルムユニンシを収賄容疑で逮捕。
15日 汚職撲滅委員会,中ランプン県知事ムスタファを贈収賄容疑で逮捕。
25日 闘争民主党のメガワティ党首が,2019年の大統領選で現職のジョコ・ウィドドの再選を支持することを表明。
28日 大統領,パンチャシラ・イデオロギー育成大統領作業ユニットを庁(BPIP)に格上げする決定。
   3月
8日 環インド洋連合(IORA)初の首脳会議,ジャカルタで開催。ジャカルタ協定を採択。
13日 アジアインフラ投資銀行の代表団,来訪。大統領と会談。
17日 大統領,オーストラリアとニュージーランド歴訪に出発。シドニーで開催されたオーストラリアASEAN首脳会議に出席。
26日 改正議会法の成立をうけ,国民協議会副議長ポストが増員され,闘争民主党,グリンドラ党,民族覚醒党から各1人が就任。
26日 スハルト元大統領の異父弟プロボステジョが死去。
26日 オンライン配車サービス会社グラブがウーバーの東南アジアにおける運輸・食品配送事業を買収すると発表。
27日 オンライン・バイク配車サービスの運転手らが運賃の下限を設定するよう要求してデモ。これをうけて政府は28日に配車サービス会社の代表と会談。運転手の労働条件引き上げと規制強化の延期で合意。
28日 汚職撲滅委員会,国会第1委員会のファヤクン・アンドリアディ議員を収賄容疑で逮捕。
28日 ジャカルタ汚職裁,東南スラウェシ州知事ヌル・アラムに禁錮12年の実刑判決。ベンクル高裁では,ベンクル州知事リドワン・ムクティに禁錮9年の実刑判決。
31日 東カリマンタン州バリクパパン湾沖で海底のパイプラインが破損して原油が流出,火災が発生して5人が死亡。
   4月
2日 憲法裁,アリフ・ヒダヤット長官が倫理規定違反で辞任したことにともない,新長官にアンワル・ウスマンを選出。
9日 汚職撲滅委員会,ジャンビ州知事ズミ・ゾラを収賄容疑で逮捕。
10日 インドネシアとアフリカ諸国の経済協力促進を目的とする国際会議インドネシア・アフリカ・フォーラム,バリで開催。
11日 ジャカルタ行政裁,インドネシア公正統一党の総選挙参加資格を認める判決。
12日 海事担当調整相,中国を訪問し,「一帯一路」構想に基づく協力協定に調印。
18日 Facebookからインドネシアのアカウント109万6666人分のデータが漏洩していたことが発覚。
24日 ジャカルタ汚職裁,元国会議長セトヤ・ノファントに対して収賄罪で禁錮15年の実刑判決。
28日 大統領,シンガポールでのASEAN首脳会議に出席。インド太平洋協力でASEANが主要な役割を果たすよう呼びかけ。
30日 汚職撲滅委員会,モジョクルト県知事ムストファを収賄の容疑者に指定。
30日 大統領,韓国大使,北朝鮮大使と会談後,トランプ大統領と金正恩委員長の米朝首脳会談の開催地に名乗りを上げたと発表。
   5月
3日 ブルネイのスルタン・ボルキア国王夫妻が公式訪問。
8日 西ジャワ州デポックにある国家警察機動隊本部拘置所でテロ犯の収監者155人による暴動が発生。拘置所が一時占拠され,警官5人と収監者1人が死亡。11日には警備にあたっていた警官1人が刺殺される。
11日 在イスラエル・アメリカ大使館のエルサレム移転に反対するデモがジャカルタで行われ,3万人以上が参加。
13日 スラバヤ市でキリスト教会を狙った同時多発爆弾テロ事件が発生。同日夜には,シドアルジョの住宅で製造中の爆弾が誤って爆発,夫婦2人と子供1人が死亡。
14日 スラバヤ市警察本部で爆弾テロ事件が発生,実行犯4人が死亡。
16日 リアウ州警察本部を5人の男が刀で襲撃する事件が発生。
17日 中銀,政策金利(7日物リバースレポ金利)を25ベーシスポイント引き上げ4.5%へ。
24日 中銀新総裁にペリ・ワルジヨが就任。
30日 インドのモディ首相,来訪。
30日 中銀,政策金利を25ベーシスポイント引き上げ4.75%へ。
   6月
8日 インドネシアが2019~2020年の国連安保理非常任理事国に選出される。
18日 北スマトラ州のトバ湖で渡船が沈没,200人以上が行方不明に。
22日 南ジャカルタ地裁,ジュマー・アンシャルド・ダウラー創立者のアマン・アブドゥルラフマンに対して4つのテロ事件に関与したとして反テロ法違反で死刑とする判決。
25日 日本の河野太郎外相,来訪。南シナ海などの離島開発支援で合意。
27日 17州,154県・市で統一地方首長選の投票日。
28日 憲法裁,正副大統領の任期を2期までと定めた総選挙法条文に対する違憲審査請求を不受理とする判断。
29日 マレーシアのマハティール首相,来訪。出稼ぎ労働者の保護や国民車開発に合意。
29日 中銀,政策金利を50ベーシスポイント引き上げ5.25%へ。
30日 総選挙委員会,国会と法務・人権省の反対を押し切って,汚職,薬物,児童性犯罪の前科者の選挙立候補を禁じる規制を制定。
   7月
4日 汚職撲滅委員会,アチェ州知事イルワンディ・ユスフを公金横領容疑で逮捕。
9日 事業許認可をインターネット上で一元的に行うオンライン・シングル・サブミッション(OSS)によるサービス開始。
13日 汚職撲滅委員会,ゴルカル党国会議員エニ・マウラニ・サラギを収賄容疑で逮捕。
16日 警察対テロ部隊,ジョグジャカルタ州で3人のテロ容疑者を射殺。
23日 憲法裁,政党幹部は地方代表議会議員選挙には立候補できないとする判決。
30日 民主主義者党のスシロ・バンバン・ユドヨノ党首,2019年大統領選でプラボウォ・スビアントを支持することを決定。
   8月
5日 ロンボク島北部を震源とするマグニチュード7規模の地震が発生。
5日 大統領,大統領官邸でアメリカのポンペオ国務長官と会談。
6日 バリで人身売買問題を討議する第7回バリ・プロセス大臣級会合,開催。
9日 ジョコ・ウィドド,連立9党の党首・幹事長とともに2019年大統領選の副大統領候補をインドネシア・ウラマー評議会議長のマアルフ・アミンとすることを発表。プラボウォ・スビアントは,ジャカルタ州副知事のサンディアガ・ウノとの立候補を発表。両候補ともに翌日に立候補を届け出。
15日 ジャカルタのライトレールトランジット(LRT)がアジア競技大会期間中のみの試験運行を開始。
15日 中銀,政策金利を25ベーシスポイント引き上げ5.50%へ。
17日 大統領,独立記念日演説を行うとともに,2019年度予算案を国会に提出。
18日 ジャカルタとパレンバンを会場とする第18回アジア競技大会が開幕。
20日 インドネシア・ウラマー評議会,麻しん・風しんのワクチンはイスラームの教義に反するとする法的見解(ファトワ)を発出。
22日 メダン地裁,モスクから流れる祈祷の音量に文句を付けた仏教徒住民に対して宗教侮辱罪を適用,禁錮18カ月の実刑判決。
24日 イドゥルス・マルハム社会相,汚職事件の容疑者に指定されたことを受けて辞任。大統領は後任に同じゴルカル党のアグス・グミワン・カルタサスミタを任命。
30日 アジアインフラ投資銀行総裁,来訪。100億ドル規模の投資計画を表明。
31日 汚職撲滅委員会,イドルス・マルハム前社会相を火力発電所プロジェクトに関わる収賄容疑で逮捕。
   9月
1日 政府,公共交通機関以外の車両・船舶などにもバイオ燃料を20%含むディーゼル燃料の使用を義務づけ。
2日 アジア競技大会が閉幕。大統領,メダル獲得の選手・関係者にボーナスを支給することを決定。
9日 大統領,韓国,ベトナムの歴訪に出発。
13日 最高裁,汚職犯罪の経歴がある人物が議会選に立候補することを禁じた総選挙委員会決定は総選挙法の内容に反するとして,同決定を無効とする判断。
13日 政府,汚職罪の確定している公務員を12月末までに解職処分とする決定を発出。
23日 2019年大統領選・議会選に向けた選挙戦が始まる。
24日 ジャカルタ汚職裁,シャフルディン・トゥムングン銀行再建庁長官に対して禁錮13年の実刑判決。
24日 最高検,プルタミナ元社長カレン・アグスティアワンを汚職容疑で逮捕。
26日 ジャカルタ州知事,ジャカルタ湾の埋立事業について未着工の13島の事業中止と着工済み4島の原状復帰を決定。
26日 最高裁,男性校長によるセクシャルハラスメントの様子を携帯電話で録音した女性中学教師に対して,録音内容を拡散させた罪で禁錮6カ月の有罪判決を下す。
27日 副大統領,国連総会の演説で,貿易戦争と保護主義の克服を呼びかけ。
27日 中銀,政策金利を25ベーシスポイント引き上げ5.75%へ。
28日 中スラウェシ州パルでマグニチュード7.4規模の地震が発生。それに伴って発生した津波と地滑りで大きな被害。
   10月
6日 アジアパラ競技大会がジャカルタで開幕(~13日まで)。
8日 国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会がバリ島で開催(~14日まで)。
15日 汚職撲滅委員会,不動産開発事業の許認可に関する贈賄容疑でリッポ・グループの運営担当理事ビリー・シンドロを逮捕。16日には収賄容疑でブカシ県知事ネネン・ハサナー・ヤシンを逮捕。
25日 最高裁,政党幹部の地方代表議会議員選挙の立候補を認めないとする総選挙委員会令について,憲法裁と同様の判断を示すが,その適用は次回総選挙から有効とする判断。
29日 格安航空会社ライオンエアのジャカルタ発パンカル・ピナン行きボーイング機がジャワ島沖で墜落。189人が犠牲に。
29日 バリで第5回アワオーシャン会合,開催。
   11月
2日 汚職撲滅委員会,国民信託党のタウフィック・クルニアワン国会副議長を収賄容疑で逮捕。
14日 大統領,シンガポールで開催されたASEAN首脳会議に出席。翌15日には東アジアサミットに出席。
14日 ジャカルタ行政裁,ハヌラ党党首ウスマン・サプタ・オダンの地方代表議会議員選挙への立候補を認めるよう総選挙委員会に求める判決。
15日 中銀,政策金利を25ベーシスポイント引き上げ6.0%へ。
16日 政府,タックスホリデーの対象拡大,ネガティブ・リストの緩和に関する第16弾経済政策パッケージを発表。
   12月
1日 パプア州ンドゥガ県のパプア横断道路建設工事現場をパプア独立を要求する武装集団が襲撃し,建設労働者29人が死亡。4日には同集団が国軍駐屯地を襲撃。
2日 当時のジャカルタ州知事アホックによるイスラーム聖典侮辱発言を批判した2016年の「12月2日イスラーム防衛行動」を記念する集会がジャカルタの独立記念塔広場で開催される。
6日 ジャカルタ汚職裁,ジャンビ州知事ズミ・ゾラに対して禁錮6年の実刑判決。
6日 第11回バリ民主主義フォーラムが開幕。92カ国・7国際機関が参加。
12日 汚職撲滅委員会,チアンジュール県知事イルファン・リファノ・ムフタルを公金流用容疑で逮捕。
15日 総選挙委員会,確定選挙人名簿を公表。有権者総数は1億9282万8520人。
21日 フリーポート・インドネシア社の株式のインドネシアへの譲渡完了。インドネシア側の持ち株は9.4%から51.2%へ。
22日 スンダ海峡にあるアナック・クラカタウ火山が噴火,山体崩壊による津波が発生して,ジャワ・スマトラ沿岸に大きな被害。

参考資料 インドネシア 2018年
①  国家機構図(2018年12月末現在)

(注)1)国家行政院(LAN),国家公文書館(ANRI),国家人事院(BKN),国立図書館,中央統計庁(BPS),国家標準化庁(BSN),原子力監視庁(Bapeten),国家原子力庁(Batan),国家情報庁(BIN),国家コード院,国家家族計画調整庁(BKKBN),国家宇宙航空庁(LAPAN),国土地理院,財政開発監督庁(BPKP),国家科学院(LIPI),技術評価応用庁(BPPT),食品・薬品監視庁(BPOM),国家情報院(LIN),国家防衛研修所(Lemhanas),文化観光振興庁(Budpar)などを含む。

   2)ジョコ・ウィドド政権の発足に伴い,省庁の再編が行われた。新設されたのが,海事担当調整大臣府,農地・空間計画省である。他省と分離・統合されて再編されたのは,観光省(創造経済省が分離し省として発足),公共事業・国民住宅省(2つの省が統合),環境・林業省(2つの省が統合),文化・初中等教育省(高等教育部門が分離),研究・技術・高等教育省(研究・技術国務大臣府と教育・文化省の高等教育部門が統合),村落・後進地域開発・移住省(後進地域開発国務大臣府と労働力・移住省の移住部門が統合)である。

②  「働く内閣」(Kabinet Kerja)閣僚名簿(2018年12月末現在)

(注)1)出身組織の略称は以下のとおり。PDIP:闘争民主党,PKB:民族覚醒党,NasDem:ナスデム党,Hanura:ハヌラ党,PPP:開発統一党,PAN:国民信託党,Golkar:ゴルカル党。 2)2016年7月27日の内閣改造で新しく就任した閣僚。 3)2016年7月27日の内閣改造で他のポストから異動した閣僚。 4)2016年7月27日の内閣改造では,民間出身のArchandra Taharが任命されたが,就任直後にアメリカとの二重国籍問題が発覚したことをうけ,同年8月15日に更迭された。後任には,内閣改造で運輸大臣を更迭されたIgnasius Jonanが指名され,同年10月14日に就任した。なお,Archandraは,その後インドネシア国籍を回復し,同省副大臣に就任した。 5)2018年8月15日,2019年大統領選で国民信託党が現職大統領の対抗馬プラボウォ・スビアントの支持に回ることを決定したため,同党が与党入りした後の2016年7月27日に就任した同党出身のAsman Aburが更迭された。 6)Khofifah Indar Parawansaが2018年6月の東ジャワ州知事選に出馬するため辞任したことをうけ,1月17日にゴルカル党幹事長だったIdrus Marhamが後任として任命された。しかし,Idrusは汚職疑惑が発覚したことをうけて8月24日に辞任した。

③  国家機構主要名簿

④  2019年総選挙参加政党一覧

(注)1)登録番号15~18の政党は,アチェ州内の地方議会議員選挙のみに参加するアチェ地方政党。

   2)登録番号19の月星党と20の公正統一党は,総選挙委員会の審査では選挙参加資格なしと判断されたが,月星党については総選挙監視庁が,公正統一党についてはジャカルタ行政裁判所が参加資格を認める決定を下したため,あとから総選挙参加政党に追加された。

   3)2018年3月に,ブルカルヤ党の党首はHutomo Mandala Putraに,アチェ地方党の党首はMuhibussabri A. Wahabに交代している。

主要統計 インドネシア 2018年
1  基礎統計

(注)1)人口は中央統計庁(BPS)による推計値。

   2)労働力人口は,15歳以上の労働可能人口を指す。労働力人口と失業率は8月時点の調査結果。

   3)消費者物価上昇率は12月時点での前年比。

(出所)BPSのウェブ資料,Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, ウェブ版。

2  国・地域別貿易

(注)ASEANは10カ国の合計。輸出額・輸入額とも本船渡条件(FOB)価格での表示。

(出所)Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, ウェブ版。

3  国際収支

(注)デットサービス比率(債務償還比率[DSR])は,対外債務返済額を財サービス輸出額で除した比率。

(出所)Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, Statistik Utang Luar Negri Indonesia, ウェブ版。

4  支出別国内総生産(名目価格)

(注)小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。 2010年から2008SNA適用。1)暫定値。2)速報値。

(出所)BPSのウェブ資料。

5  産業別国内総生産(実質:2010年価格)

(注)小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。

(出所)表4に同じ。

 
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