Yearbook of Asian Affairs
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2019 Volume 2019 Pages 459-482

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2018年のバングラデシュ

概 況

2018年12月30日,第11次国民議会(国会)選挙(以下,総選挙)が実施され,アワミ連盟(Awami League:AL)率いる与党連合が300議席中288議席を獲得し,圧倒的多数派となった。ALは単独で259議席を獲得し,3期連続で政権を担うこととなる。バングラデシュ民族主義党(Bangladesh Nationalist Party:BNP)は野党連合として選挙に参加したが,連合全体で7議席を獲得するにとどまった。今回の選挙では,電子投票の一部導入や各党によるSNSでの選挙運動の活発化といった新しい動きがみられたものの,投票所の一時閉鎖や票の水増し,暴力による野党支持者の排除など,国内外のメディアで不正が報じられた。

経済分野では,2017/18年度のGDP成長率は7.86%となり,3年連続で7%台成長を達成した。一方で,インドや中国,日本による大型インフラプロジェクトによって資本財等の輸入が増加したことから貿易収支・経常収支の赤字幅が増大し,タカ安傾向が続いた。

また,12月から縫製業の最低賃金が月額5300タカから8000タカに引き上げられた。高い経済成長率の影で,インフレ率は前年度比5.78%増となっており,庶民とりわけ貧困層の生活を圧迫している。今回の賃上げはALによる選挙対策の一環であるとの見方は避けられないが,成長の果実の分配という意味では民意に沿うものであった。

治安に関しては,政府の掃討作戦によってイスラーム武装勢力内の指示系統が分断され,資金調達能力を低下させたことから,襲撃事件は減少した。2016年に発生したダカ襲撃テロ事件に関しては7月に起訴状が出され,裁判が開始された。

外交面では,中国が直接投資や武器装備品の輸出を通じてバングラデシュへの影響力を高めていることに対してインドが危機感を募らせた。中国による2017/18年度の直接投資額は総額の5分の1に達し,過去最大となった。

国内政治

クルナ,ガジプール,ラジシャヒ,シレット,ボリシャル市長選挙の実施

5月15日クルナ,6月26日ガジプール,7月30日ラジシャヒ,シレット,ボリシャルにおいて市長選挙が行われ,年末に予定されている総選挙を占う前哨戦として注目を浴びた( 表1参照)。クルナでは,過去4回の選挙でBNPが勝利していたが,ALの候補アブドル・カレックが勝利した。BNPは候補者の張り紙が破かれたり,党員が警察に逮捕・監禁されたりしたことから,再選挙を要求したが認められなかった。

表1  BNPとALの地方選挙における得票数

(出所) Daily Star 紙より筆者作成。

ガジプール市長選挙では,ALのジャハンギルが40万票を集め,前職のBNP候補ハサン・ウディンに勝利した。BNPはALが司法・行政・選挙委員会に働きかけ,選挙を自党に有利に進めたとして不正選挙を訴えた。

ラジシャヒ市長選挙においては4人の候補が争った。BNPの候補者ホセイン・ブルブルは不正選挙だとして投票を拒否。結果としてALのクハイルッザマン・リトンが勝利した。7人が争ったシレットにおいてもALによる投票用紙のすり替えや世論調査の排除などがあったとして,BNPのアリフル候補が不正選挙を訴えた。暴動も発生し,選挙が8月11日まで延期される事態となったが,僅差でBNPの候補者が勝利した。6人が争ったボリシャルでは,BNP,国民党(Jatiya Party:JP),バングラデシュ社会党(Socialist Party of Bangladesh:SPB)が選挙の中止を訴えるとともに,投票をボイコットしたことからALが圧勝した。

選挙結果を占うというよりも,ALによる年末の総選挙運営の判断材料という意味合いがあったといえる。

第11次国民議会選挙の実施

12月30日に実施された総選挙は,小選挙区300議席が争われ,ALを中心とした与党連合が有効とされた298議席中288議席を獲得し,圧倒的多数派となった( 表2参照)。残り2議席は選挙期間中および当選後にそれぞれ1人が死亡したことによるもので,再選挙が実施される。ALは単独で全議席の86%となる257議席を獲得し,ハシナ政権は連続3期目を迎えることとなった。女性留保枠となっている50議席は議席獲得数に応じて各党に比例配分されることから,議席数は最終的に計350となる。

表2  第11次国会総選挙結果

(出所)Bangladesh Parliament( http://www.parliament.gov.bd/)をもとに筆者作成。

選挙実施にあたっては,野党側が再三にわたり要求してきた中立的な選挙管理内閣制度が導入されることはなく,AL主導内閣のもと,選挙管理委員会の人事から日程の決定,新規投票形式である電子投票の導入,各党の立候補者登録などが行われた。

最大野党BNPは中立性が担保されていないとして5年前の前回総選挙同様に選挙をボイコットする姿勢をみせたが,国会に議席がないことによる党のさらなる弱体化を避けるため,野党連合として設立された国民統一戦線(Jotiya Oikya Front:JOF)から候補者を擁立した。しかしながら,JOFはわずか7議席を獲得するにとどまり,BNPの国政復帰は厳しい船出となった。

BNPは選挙を戦うにあたり,贈賄の疑いで逮捕されたカレダ・ジアBNP総裁の保釈要求を続けたが,選挙日程確定日の10月30日に禁錮刑10年を言い渡され,総裁不在のまま選挙戦を戦った。立候補者登録においては,ALの提出した候補者281人中,選挙委員会に受理されなかったものは3人であったのに対して,BNPは696人中141人が受理されないなど,ALによる強権的な選挙運営が印象づけられる結果となった。

電子投票の導入とSNSを使った選挙活動の活発化

選挙区の一部で導入された電子投票は,投開票の迅速化などのメリットが指摘される一方で,票数の操作が容易であることから野党は導入に反対した。今回の選挙では,小選挙区300に対し,3分の1に当たる100の選挙区の一部の投票場で電子投票を実施したが,投票に必要な指紋の照合ができない,機材が届かないなど,問題が頻発した。

また,今回の選挙ではSNSを活用した選挙活動が活発化した。バングラデシュ電気通信規制委員会(BTRC)が2017年11月に出した報告書によると,バングラデシュのFacebookユーザーは2500万~3000万人で,そのうち72%が男性,28%が女性となっている。また,ユーザーの多くが18~24歳の若年層である。今回の選挙は有権者の約7割が35歳以下で,若年層に効果的にアピールすることが選挙戦を勝ち抜くうえで不可欠であったことから,各党がSNSで積極的に政策をアピールした。

こうした選挙におけるデジタル化の波といった新たな動きが見られる一方で,過去の選挙同様,与野党支持者の衝突や野党候補者に対する襲撃事件が相次いだ。BNPは12月1~26日までに同党支持者に対して2800件の襲撃事件が発生し,負傷者は1万3000人近くに上ると発表した。選挙当日にも与野党双方の支持者による衝突が発生し,少なくとも17人が死亡した。選挙当日は,FacebookやTwitterへのアクセスができなくなり,報道番組を扱うケーブルテレビも遮断されたことから,国民は選挙で何が起きているのかを知ることができなかった。

大連立による選挙戦

ALは過去の選挙戦において世俗主義を前面に出す傾向がみられたが,今回の選挙ではイスラーム政治団体15団体からなるイスラーム民主同盟(Islamic Democratic Alliance)の設立を画策し,ALを含む与党連合に対する支持を取り付けた。これはイスラーム主義政党と共闘関係にあり,イスラーム保守層を票田に抱えるBNPに対する対抗措置であったと考えられる。ハシナ首相は選挙戦を通じて,宗教色の強い非正規イスラーム教育機関であるコウミ・マドラサの教育委員会による大規模集会に参加するなど,イスラーム主義層の票を積極的に集めにいく姿勢をみせた。

一方で,野党の側はムジブル・ラフマン政権下で法務相および憲法制定委員会委員長を務め,「憲法の父」として知られるカマル・ホセインの呼びかけのもと大野党連合JOFを結成し,BNP率いる野党連合もそこに合流した。JOFは「公正な政治の実現」を前面に押し出すものの,反ALということ以外に政策的共通性はみられず,また独立戦争時の戦争犯罪に加担したイスラーム主義政党ジャマアテ・イスラーミー(イスラーム協会:JI)と共闘するBNPの加入を否定的にとらえる政党も少なくなかったことから,最後まで足並みがそろわず,惨敗を喫した。BNPは大野党連合に参加することで,最後の段階で選挙をボイコットし,選挙の非民主性を訴えるという従来の手法がとれず,野党も参加して行われた公正な選挙というお墨付きを与党に与える結果となった。

選挙後の組閣と周辺国の反応

選挙での圧勝を受けて組閣された新内閣では,47人中31人が入れ替わり,閣僚が刷新された形だ。国父ムジブル・ラフマン時代からの古参幹部が離れ,党内若手が抜擢された。1947年生まれで71歳となったハシナ首相は,将来を見据えて若手に経験を積ませるための改革であるとしているが,ハシナ首相が自分自身の主張に対して疑問を呈するような人物を周りから排除し,権力の集中を図っているとする批判もある。ハシナ首相の長男で後継者候補のショジブ・ワジェッドはアメリカ生活が長く,ALの政治家や支持者と十分な関係が築けていないことから今回の選挙への参加を見送ったが,組閣人事は次期総選挙でスムーズに世代交代ができるよう,ハシナ首相の意に沿った人材で固めたとの指摘もある。

選挙結果を受け,アメリカやイギリスは,野党がボイコットした2014年の選挙からは大きな進展があったことを認めつつも,多数の暴力事件が報告された点について言及し,今後の改善を求めていくという声明を発表した。

インドをはじめとする南アジア諸国,中国,ロシア,サウジアラビアなどは,選挙結果を歓迎するとともに,ハシナ首相に対して勝利を祝う書簡を送った(日本については 「対外関係」の項参照)。

麻薬密売人の一斉摘発と超法規的殺害

政府は5月初頭,ミャンマーからの麻薬ヤバ(Yaba)の密売人の一斉摘発に乗り出し,26日までに62人が特殊部隊(RAB)によって殺害された。しかし,度重なる超法規的殺人によって,世論の批判の矛先は政府に向かうこととなった。特にRABによってコックスバザール・テクナフのユニオン(バングラデシュの最小行政単位)評議会議員のエクラム・ハックが殺害され,死ぬ直前の録音がメディアで報道されて以降,政府による掃討作戦は収まりをみせた。一方で麻薬王の異名を持つテクナフの有力政治家は国外に身を隠した。同氏はALの議員で,その資金力はALにとって重要であることから,摘発を免れたとされる。そのため,ヤバ撲滅作戦は選挙前に野党をけん制するためのものであるとの批判もなされた。実際,麻薬関係者であったとして野党関係者が多数拘束,殺害されている。

公務員特別枠に抗議する学生デモ

3月から4月にかけて,38の公立大学と96の私立大学の学生約5万人が公務員試験における特別枠制度(クォータ制度)の改革を求め,抗議活動を行った。4月9日には学生がダカのシャハバーグ交差点を占領したことから,警察が催涙ガスとゴム弾で応酬,100人以上が負傷した。全国に拡大した学生の抗議運動を受け,もともとクォータ制度改革に前向きだったハシナ首相は4月11日,現行の特別枠制度を見直す声明を出した。しかしながら,学生側が期限とした5月8日にムハマド・シャフィル・アロム内閣官房長官が「クォータ制度の改革は進んでいない」と改革に否定的なコメントを述べたことから,抗議運動が再燃した。ダカ大学では1000人以上の学生によって人間の鎖がつくられ,全国の大学で講義が中止となった。

現行のクォータ制度では毎年2400人から3000人の公務員が採用されるが,そのうち56%(独立戦争功労者[フリーダムファイター]親族枠30%,女性枠10%,少数民族枠5%,低開発県・管区枠10%,障害者枠1%)に対して特別枠が設けられている。

学生の改革要求の背景には,高学歴保持者の高い失業率がある。統計局の数値を基にした政策対話センター (CPD)の研究では,高卒の失業率は2013年の調査で7.9%だったのが,2017年の調査では14.9%まで上昇した。また,大卒の失業率も同期間に6.7%から11.2%に上昇している。

高学歴層の失業率が悪化する一方で,クォータ制のもとで適切な候補者を見つけられないため,官庁のポジションが空いたままになるといった事態がたびたび報道されており,批判の的となっていた。特に,独立戦争を戦ったフリーダムファイターの子どもや孫に30%の割り当てがあることへの批判が高まりをみせていた。2012年は同割り当ての63%,2013年は37%,2014年は84%が空いたままとなっている。また,フリーダムファイターの親族の定義が独立以降6回変更されており,政治的に利用されているのではないかという疑義もある。厳しい試験の準備をしても,自由競争で採用されるのは採用枠全体の半分以下のため,公務員になることを躊躇する学生もいることから,学生たちは現在の56%を少数民族などの5%を含む10%程度に縮小することを求めた。

道路の安全を求める学生デモ

7月29日にエアポートロードで発生したバスの事故によって学生2人が死亡,10数人が重軽傷を負ったことに抗議して,翌30日に学生数千人が空港前の道路で抗議運動を開始した。バングラデシュでは無免許ドライバーなどによる無謀運転の横行で,交通事故が多発していた。

事故発生後に,海運相で道路交通労働者連盟代表でもあるシャジャハン・カーンが「インドのマハーラーシュトラでは33人が事故で死亡したが,このような事態にはなっていない」と笑顔で会見したことが反発を呼び,運動は全土に広がった。学生は道路を封鎖し,交通安全の徹底および大臣の謝罪を求める抗議デモを行ったため,ダカ中心部は交通マヒに陥った。デモの参加者の大部分は中高校生で,「私たちは正義を求める」という合言葉のもと,道路で交通整理と通行する車の車検証や運転手の免許証の確認を行った。これに対して,ALの学生組織であるチャットロリーグ(Bangladesh Chhatra League:BCL)のメンバーや治安部隊が,暴力的な手段を用いてデモ参加者やメディア関係者を弾圧した。また,政府が学校に行かずにデモに参加している学生に対して留年等の厳しい措置で臨むよう教育機関に指示したことから,運動は次第に収束していった。

デジタル・セキュリティ法の可決

著名なフォトジャーナリスト,シャヒドゥル・アロムが8月3日,上記の学生による抗議デモを治安部隊が武力で押さえつける様子を撮影し,ウェブ上で公開したことが暴動を煽動した罪にあたるとして,情報通信技術(ICT)法第57条に基づき逮捕された。同法第57条では,虚偽やわいせつ,軽蔑的な情報を故意にウェブサイトやその他の電子的形式で発行または送信した場合,7年から14年の懲役と,最高1000万タカの罰金が科せられる。

同氏は,抗議デモに対する政府の抑圧的な対応を批判したライブビデオをFacebook上にあげた直後に自宅から秘密裏に連れ去られ,拷問を受けたと主張している。またFacebookやTwitter,ニュース速報配信サイトのAndolonews やZoombanglaが誤った情報を発信することで学生を煽動しているとして,一時アクセスが遮断された。

アムネスティ・インターナショナルやジャーナリストの保護を訴える団体がアロムを解放するようバングラデシュ政府に訴えかけた結果,11月20日に同氏は刑務所から保釈された。ICT法は2006年にBNP政権下に制定されたが,解釈の仕方によっては報道の自由を規制し,言論の自由を抑圧するおそれがあることから,民主主義の否定につながるとして市民団体や報道関係者によって批判されてきた。現地報道によると,2017年には同法第57条に基づき76人の報道関係者が,2018年には90人を超える活動家,報道関係者が起訴された。

政府は,ICT法に対する批判の高まりを受け,第57条を廃止する意向を示す一方で,同様の法規を含むデジタル・セキュリティ法を提案し,9月19日国会で可決した。しかし,同法では,デジタルデバイスを使用して独立戦争やハシナ首相の父である「国家の父」ムジブル・ラフマンに対して否定的な情報を広めた場合や,個人や国家を脅した場合には14年の禁錮刑もしくは最大1000万タカの罰則を設けている。また,社会の混乱を引き起こす情報を掲載した場合には最大10年の刑が科される。さらに,本法に基づく犯罪の可能性があると治安当局が判断した場合には,裁判所からの令状なしに捜索または逮捕する権限を治安当局に認める内容であることから,EUおよびノルウェー,スイスなどは,表現の自由とメディアの活動を過度に制限するものであるとして批判した。

ダカ襲撃テロ事件の裁判開始

ダカの高級住宅街のレストランで2016年7月に日本人7人を含む民間人20人が殺害されたダカ襲撃テロ事件以降,治安当局による掃討作戦によって906人が逮捕され,約100人の過激派が殺害された。これによりイスラーム武装勢力内および組織間の指示系統は分断され,資金調達能力を低下させたことから,武装勢力による襲撃事件は減少した( 図1参照)。

図1  イスラーム武装勢力によるテロ関連死者数

(出所)South Asia Terrorism Portal( https://www.satp.org/)より作成。

しかし,1月12日ダカ市テジガオン地区テクニパラで,過激派が潜伏する住宅ビルへの掃討作戦が行われ,抵抗したバングラデシュ・ムスリム戦士団(JMB)のメンバー3人が殺害される事件が起きた。また,6月11日にはバングラデシュ共産党ムンシゴンジ支部の元書記長で,リベラルな主張で知られるシャジャハン・バチチュがJMBの司令官を名乗る男に殺害された。現地報道によると事件はJMBと無神論者の殺害で知られる武装勢力アンサール・イスラームによって共同で計画・実行された。

また,バングラデシュでの活動が制限されるなか,JMBの一部はインドの西ベンガル州やアッサム州などで活動を継続している。1月19日には,ダライ・ラマ14世のブッダガヤ(ビハール州)訪問中に爆発が起き,2人のネオJMBメンバーが逮捕された。2人は,襲撃の理由をミャンマーにおけるロヒンギャ迫害への抗議だとしている。

こうしたなか,7月23日にダカ襲撃テロ事件の起訴状が提出され,12月3日に裁判が開始された。警察は容疑者を21人と断定したが,そのうち13人は容疑者死亡で起訴見送りとなった。起訴状によると,事件はイスラーム武装勢力JMBの分派,ネオJMBによって実行された。ネオJMBは6カ月間かけてダカ襲撃テロ事件を計画したとされる。テロの目的は,バングラデシュを不安定なテロ国家にすることだった。裁判では,逃亡中の2人を除き,起訴時点で逮捕・勾留されていた6人全員が無罪を主張した。

経 済

GDP3年連続7%台成長を達成

2017/18年度のGDP成長率は7.86%となり,当初の政府による暫定値7.65%を上回る結果となった。AHMムスタファ・カマル計画相は,農業と工業の高い伸び率が寄与したと指摘した。農業部門は前年比4.19%増,工業部門は12.06%増,サービス業6.39%増となった。GDPの内訳は農業部門が14.23%,工業部門が33.66%,サービス部門が52.11%を占めている。

一方で,大型インフラプロジェクトの増加によって資本財等の輸入が増加し,貿易収支並びに経常収支の赤字幅が増大したことでタカ安が進行した。これによって1人当たり国民総所得(GNI)は政府の予想を下回り1751ドルとなったが,それでも前年度の1610ドルから141ドル増加した。

また,2017/18年の貧困率は21.8%,極度の貧困率は11.3%で,2017年のそれぞれ23.1%と12.1%から改善傾向を示した。ALは選挙マニュフェストにおいて,経済成長を加速させ2040年までに極度の貧困率をゼロにすると明言した。

インフレ率は2013/14年度の7.4%を頂点に徐々に低下し,2017/18年度は5.78%となった。2017年6月から9月に起きた洪水被害がアウス米やボロ米の生産量に影響したことから,2018年4月の食料価格は7.3%の上昇となり,2017年4月の5.5%より大幅に上昇した。しかし,国際価格の低下から非食料価格の上昇を抑えられたことから,全体としての大幅なインフレは抑えられ,中央銀行のインフレ率目標6%を下回る結果となった。

後発開発途上国脱却へ

バングラデシュは2015年7月に世界銀行の区分において低所得国から脱却し,下位中所得国となった。2018年3月16日には,国連の基準において後発開発途上国(LDC)から卒業する要件を2つ満たしていることが認められた。2021年までに継続して2つ以上の条件を満たし続け,かつ3年おきに行われる審査を経ることで,順調にいけば2024年に正式にLDCを卒業することとなる。政府は,1億6000万人の人口を有するバングラデシュがLDCから脱却することの経済的・地政学的なインパクトを国内外で強調している。中所得国入りとLDC脱却によって国際的なマーケットでの信用を高め,さらなる投資を呼び込み,同国の経済発展を推し進めたい思惑があると思われる。

一方でバングラデシュの税収は現在GDPの10.4%となっており,この値は天然資源に依存していない低開発国の平均約15%を下回っている。インフラ投資と社会支出をまかなうためにより一層の税収向上の必要性が指摘されている。

縫製業の最低賃金の引き上げ

9月13日,政府主導による縫製業の最低賃金委員会において,労働者と雇用者の代表は最低賃金を月額5300タカから8000タカにすることで最終合意した。内訳は,基本給が4100タカ,住宅手当が2050タカ,医療手当が600タカ,通勤手当が350タカ,食事手当が900タカとなっている。最低賃金の変更は国会審議を経て,2018年12月から適用された。

バングラデシュでは41の産業分野で個別に最低賃金が定められている。その一分野である縫製業は現在約400万人が従事し,同国の基幹産業となっている。しかし,2013年のラナ・プラザ崩落事故などによって劣悪な労働環境や低賃金労働の実態が明らかとなり,2014年1月に3000タカから5300タカに引き上げられた。今回の交渉で衣料労働者連盟は当初,5300タカから3倍増となる1万6000タカを要求したのに対して,雇用者側は6350タカを提示したことから交渉は難航した。

結果として最終会合において7000タカで妥結したものの,ハシナ首相の指示で雇用者側が1000タカ上乗せした8000タカを再提示し,労働者側もそれを受け入れた。基幹輸出産業である縫製業の最低賃金の増加は,12月末の総選挙の結果を左右する重要事項のひとつとされていたことから,ALによる労働者票の取り込みであると考えられる。一方で政府は,9月6日に輸出時にかかる「源泉税」の税率を1.0%から0.6%へと減税しており,経営者側へ配慮する姿勢もみせた。輸出振興局によると,2017/18年度の輸出総額は前年度よりも5.8%増加して366億6000万ドルとなった。既製衣料品(RMG)の輸出額は前年度比8.76%増の306億1000万ドルで,輸出総額の83%を占めている。

海外出稼ぎからの送金額が過去2番目

2017/18年度の海外出稼ぎ労働者からの送金は,前年度比17.3%増の149億7886万ドルとなった。これまでの最大送金額は2014/15年度の153億ドルで,それに次ぐ額となる。中央銀行は,この増加は原油価格の上昇により主な出稼ぎ先である中東諸国における雇用状況が好転したことや,先進国の経済が好調だったことなど,外部要因によるものだと指摘している。また,近年送金額が減少傾向にあった背景には,手数料の安い非合法な形での送金が増加したことがあるとして,政府が取り締まりに乗り出したことも影響したとみられる。中央銀行は,国境を越えた違法な資金移転プロセスに対する監視を強化するとともに,インターネットバンキングなど利便性が高く,安全性を担保した送金システムの利用を推奨した。ヌルル・イスラム在外居住者福利厚生・在外雇用相は,今後120万人を新たに海外に派遣する計画を発表し,民間銀行に対して送金のための支店展開を推奨するなど,積極的な姿勢をみせている。

天然ガスの輸入開始

バングラデシュの主なエネルギー供給源の6割を天然ガスが占めている。バングラデシュではこれまで国営のペトロバングラが陸上および海上鉱区の試掘を進めてきたが,2017年をピークに生産能力が減少に転じた。そのため,同国は,国産石炭などの代替エネルギーの開発・利用を模索すると同時に,2018年5月から液化天然ガス(LNG)の輸入を開始した。

政府は前年9月,カタールガスと長期契約を締結し,最初の5年は年間180万トン,その後は250万トンを調達する計画を発表した。バングラデシュに運ばれたガスは,南東部のモヘシュカリ島付近に建設された浮遊式のLNGターミナルからパイプラインを通じてチタゴンの工業地区に供給される計画だったが,工事は難航し,ガスの供給が不安定になった。また,石油に加え天然ガスの輸入が増加することで経常収支がさらに悪化し,タカ安の進行や外貨準備高の減少が懸念されている。

対外関係

対印関係

7月30日,インド政府は北東部アッサム州における国民登録簿(NRC)の暫定改訂版を公表した。今回の改訂は1月7日にインド人民党(BJP)率いる国民民主連合(NDA)が過半数を占めるアッサム州議会で可決された市民権改正法に基づく。国民登録簿には,1971年3月24日以前からアッサム州に居住していたことが証明できる住民とその子孫の名前のみが掲載された。アッサム州に住むベンガル語を母語とするムスリムの大半は,1971年3月25日に西パキスタンの政府軍が東パキスタン(現バングラデシュ)住民の大量虐殺を開始した後に逃げてきた人びととその子孫であったとみられ,国民登録簿から除かれた。これにより,アッサム州の人口3290万人のうちベンガル系住民を中心として約400万人が同登録簿のリストから除外された。

インドのモディ首相は,国民登録簿はアッサム州の先住民族を守り,バングラデシュからの「不法移民」を取り締まるためのものであると述べ,これによりバングラデシュ政府との関係が悪化することはないとしている。問題が顕在化した直後の8月30日,ネパールで開催された第4回ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC)首脳会議の際に行われた印バ首脳会談において,この問題が議題に上がることはなく,一貫して両国の経済協力の重要性と成果がアピールされた。外交関係者によると,100万人ものロヒンギャ難民を抱えるバングラデシュとしては,インドとの間でも同様の問題が発生することは絶対に避ける必要があるが,12月の総選挙で問題への対応が争点化されることを避けるために,あえてこの問題に触れなかった。

モディ首相が率いる国政与党のBJPは,2016年のアッサム州議会選挙でバングラデシュからのムスリム不法移民の追放と先住民の権利保護を公約として,当時州政府与党だった国民会議派を破り,同州で初めて勝利している。今回の国民登録簿の改定は,2019年の総選挙を前にしたBJPによる政治的なアピールであるとの見方も強い。

対中関係

中央銀行によると2017/18年度の中国からの海外直接投資(ネット)は5億613万ドルで,バングラデシュにとって最大の投資国となった。同年度の直接投資総額は25億8044万ドルで,その約5分の1を中国が占める。

2016年10月14日,中国の国家主席として約30年ぶりに同国を訪れた習近平国家主席は,バングラデシュとの関係を「緊密な包括的協力パートナーシップ」から「戦略的協力パートナーシップ」に格上げしたうえで,200億ドルの融資を約束した。その際に署名されたインフラ整備を中心とした27項目の合意文章にそった形で融資が実行された。

また,ダカのバングラデシュ空軍本部で6月20日,ジェット練習機23機を中国から購入する契約が結ばれた。購入額は明らかになっていないが,現地報道は2億ドル以上と推算している。練習機として購入されたが実戦でも運用可能であることから,隣国インドは安全保障上の懸念を抱いている。バングラデシュはBNP政権下にあった2002年に中国と軍のトレーニングと軍装備品調達に関する協定を結んでおり,過去10年間で軍装備品の8割以上を中国から購入している。2016年には2億300万ドルで潜水艦2隻を購入し,2017年から運用を開始している。

ALは,隣国インドとのバランスをとりながら中国との関係を深め,閣僚や軍人などハイレベルでの人的交流を活発に行ってきた。しかし,こうした中国のバングラデシュへの経済的,軍事的影響力拡大に対して,インドは警戒心を強めている。5月25~26日にハシナ首相がインドの西ベンガル州を訪問した際には,中国との関係はあくまでビジネスにおける関係であり,インドとの関係は揺るぎないものである旨の発言をするなど,インドに配慮する姿勢をみせている。

対日関係

12月30日に実施された総選挙の結果を受け,日本政府は翌月1月4日に外務報道官談話を発表した。その中で「主要野党の参加を得て実施されたことを歓迎」と選挙結果を受け入れる意向を示す一方で,「政党関係者に多くの死傷者が発生したこと等,この選挙プロセスにおいて発生したさまざまな点(various matters of concerns arose in the election process)について残念(regrettable)に思います」と述べ,多くの問題があったことを暗に示す表現で苦言を呈した。インドや中国が手放しで選挙結果を受け入れたのとは対照的であった。

一方で経済協力分野では多くの進展がみられた。5月14日,アリ外相が東京を訪れ,河野太郎外相と会談した。会談ではマタバリの港開発計画と超々臨界圧石炭火力発電所建設,ジャムナ鉄道専用橋建設計画,ダカの都市高速鉄道建設などを含む第39次バングラデシュ円借款に関する協議が行われた。これを受け,6月14日に泉裕泰駐バングラデシュ大使とアゾム財務省経済関係局次官との間で,総額2003億7100万円を限度とする円借款に関する書簡の交換が行われた。また,8月27日には,ベンガル湾および内陸水域において人命救助を担う沿岸警備隊に対し,救助艇を供与する無償資金協力に関する書簡の交換が行われた。

民間セクターでは,日本たばこ産業(JT)が8月6日,バングラデシュのたばこ市場シェア2位のアキジュグループのたばこ事業を買収することを発表した。買収額は1243億タカ(約1645億円)で,バングラデシュにおける日系企業による海外直接投資としては最大となる。

2019年の課題

野党への弾圧や不透明な選挙プロセスなど,強権的な手段を講じて単独で6分の5以上の議席を獲得したALは,インドや中国,日本,アメリカなどの主要関係国からの支持を早急に得ることに成功し,今後5年間の政権運営を任されることとなった。しかしBNPの支持層は実際には少なくなく,今回の強権的なALの選挙運営に対する批判は国全体で高まりつつある。ALとしては国民の不満を抑えるためにも経済成長を維持し,生活が豊かになっていることを国民に実感させつづける必要があるが,選挙後の1月には,2018年12月に行われた最低賃金引き上げを不服とする労働者らによるストライキや抗議運動が起こるなど,第3次ハシナ政権の抱える課題は山積している。

また,選挙の争点にはならなかったが,ミャンマーから越境してきた100万人のロヒンギャ難民問題に対して今後どのように対処していくのか,国際社会はその動向に注目している。2018年11月15日に難民2260人をミャンマーに送還しようとしたが,リストに載せられた者の多くが送還を拒否したことから,実現には至らなかった。国内の貧困層からロヒンギャ支援を優先することへの不満も高まりつつあることから,中長期的なロードマップの提示が安定政権を目指すうえで不可欠となる。

一方で大敗したBNPは,一定の国民の支持を背景に今後も抗議運動を断続的に実施していくことが予想されるが,ジア総裁をはじめとする党のリーダーが拘束されているなかで,党勢の巻き返しを図ることは難しい。ロンドンにいるジア総裁の息子,タリクBNP副総裁がどのように国内に影響力を行使できるのかが,焦点となる。また,野党連合として選挙に立候補したものの一議席もとれなかったJIは,戦争犯罪裁判をめぐり党内が分裂している。独立戦争時の犯罪を謝罪すべきであるとする改革派のアブドゥル・ラザック幹事長補佐が辞任するなど,党の方向性をめぐって溝が深まりつつある。JIの動向はイスラーム武装勢力の動きと密接に関わることから,党内人事と幹部の発言を注視する必要がある。

また,10月10日に特別裁判所が2004年8月21日に起きたAL要人殺害事件の容疑者19人に死刑,19人に終身刑判決を下した。容疑者は当時の政権与党であったBNPやイスラーム武装勢力ハルカトゥル・ジハーディ・イスラミ・バングラデシュ(HUJI-B)の幹部で占められていることから,治安情勢が悪化する可能性は否定できない。

(東京外国語大学)

重要日誌 バングラデシュ 2018年
   1月
4日 第10回国民議会選挙(総選挙)4周年を迎え,アワミ連盟(AL)が「民主主義勝利の日」として祝賀行事を開催。
5日 バングラデシュ民族主義党(BNP)による第10回総選挙への抗議集会「民主主義が死んだ日」が予定されていたが,スラワルディ公園での開催許可が得られず中止。
6日 BNP,第10回総選挙への抗議集会をダカ全域で実施。
10日 ダカ東部のアライハジャールにある土地が日本専用の経済特区(SEZ)に内定。
12日 ダカ市テジガオン地区テクニパラにて,治安部隊が過激派の掃討作戦を実施。
16日 バングラデシュ,ミャンマー両政府はロヒンギャの帰還について2年間で完了する旨を合意。
17日 バングラデシュ軍が難民キャンプに暮らすロヒンギャの登録者数が100万を超えたと発表。
19日 ロヒンギャ難民数百人がミャンマーとバングラデシュ政府の難民帰還に関する合意に対して抗議デモを実施。
19日 ダライ・ラマ14世のブッダガヤ(インド・ビハール州)訪問中に爆発が起き,イスラーム武装勢力バングラデシュ・ムスリム戦士団(JMB)の分派ネオJMBメンバー2人が逮捕される。
27日 薗浦健太郎内閣総理大臣補佐官,ダカを訪問。ダカ襲撃テロ事件の現場で献花を行う。
28日 薗浦健太郎内閣総理大臣補佐官,マタバリ超々臨界圧石炭火力発電所の起工式に出席。同補佐官はハシナ首相およびゴーホウル・リズヴィ国際問題担当首相顧問との間で協議を行う。
29日 宮野厚生労働審議官がバングラデシュ在外居住者福利厚生・在外雇用省ハルダー次官と「日本国法務省・外務省・厚生労働省とバングラデシュ在外居住者福利厚生・在外雇用省との間の技能実習に関する協力覚書」の署名を行う。
   2月
8日 汚職の罪でジアBNP総裁に懲役5年,息子のタリク・ラフマンBNP上級副総裁に懲役10年の実刑判決。同日ジア総裁が刑務所に収監されたことから,ダカでBNP支持者による大規模な抗議デモが行われる。
17日 BNP支持者,ジア総裁の解放要求のために全国で署名活動を実施。
18日 BNP,ジア総裁の解放要求のため全国の県行政官事務所に覚書提出。
19日 BNP,ジア総裁の解放要求のためダカを除く全国で抗議デモを実施。
20日 ジアBNP総裁の解放を求める全国規模の抗議デモが行われ,各地で警察とデモ隊が衝突。
   3月
6日 BNPはジア総裁の解放を求める示威運動(人間の鎖)を行い,その後同党学生グループの幹部ジャキール・ホセイン・ミロンが警察に拘束される。
8日 BNP,ジア総裁の解放を求める座り込み運動を実施。
8日 公務員試験における特別枠制度(クォータ制度)の改革を求める学生デモがダカ大学で行われる。
9日 クォータ制度の改革を求める学生たちが,全国の教育機関で学生に対して抗議活動への参加を呼び掛ける。
11日 6日の示威運動において逮捕されたBNP学生グループの幹部ジャキール・ホセイン・ミロンが刑務所に送還され,その後死亡。
12日 BNP,ジア総裁の解放を求める集会をスラワルディ公園で実施。
16日 国連の開発政策委員会,バングラデシュが後発開発途上国(LDC)から脱却するための必要要件を2つ満たしたと発表。
18日 BNP,ジャキール・ホセイン・ミロンが治安当局に拘束された後に死亡したことに抗議する全国デモを実施。
21日 堀井巌外務大臣政務官がバングラデシュを訪問し,アリ外相を表敬訪問。リズヴィ首相顧問とロヒンギャ難民問題について会談。
25日 ハシナ首相,インドの西ベンガル州を訪問。インドのモディ首相とママタ・バネルジー西ベンガル州首相と会談を行う。
   4月
9日 クォータ制度の改革を求める学生たちがシャハバーグ交差点を占拠。
11日 ハシナ首相,現行のクォータ制度を見直すと言明。
15日 バングラデシュ中央銀行が,現金準備率(CRR)を1.0ポイント引き下げて5.50%とした。
   5月
4日 特殊部隊(RAB)による麻薬密売人掃討作戦が開始。26日までに62人が殺害される。
8日 ムハマド・シャフィル・アロム内閣官房長官が「クォータ制度の改革は進んでいない」と発言。
9日 8日のアロム内閣官房長官の発言を受け,クォータ制度の改革を求める学生が全国の大学で抗議活動を実施。
13日 アリ外相訪日。
14日 アリ外相が河野太郎外相と会談し,円借款の事前通告を行う。
15日 クルナで市長選挙が行われ,ALの候補者が勝利。
24日 中国の深圳証券取引所および上海証券取引所がダカ証券取引所と株式購入に関する取り決めに調印。
25日 ハシナ首相,インドの西ベンガル州を訪問。
   6月
7日 国土交通省で,バングラデシュPPP(Public-Private Partnerships)庁との共催により「第2回日バングラデシュ・ジョイントPPPプラットフォーム会合」を開催。
11日 バングラデシュ共産党ムンシゴンジ支部の元書記長シャジャハン・バチチュがJMBの司令官を名乗る男に殺害される。
14日 泉裕泰駐バングラデシュ大使とアゾム財務省経済関係局次官との間で,6事業,総額2003億7100万円を限度とする円借款6件に関する書簡の交換が行われる。
20日 泉裕泰駐バングラデシュ大使とアゾム財務省経済関係局次官との間で,総額4億3300万円を供与限度額とする無償資金協力「人材育成奨学計画」に関する書簡の交換が行われる。
20日 バングラデシュ空軍本部でジェット練習機23機を中国から購入する契約が結ばれる。
24日 日系企業数社を含む共同企業体が,クロスボーダー道路網整備事業(カルナ橋)を128億円で受注。
26日 ガジプールで市長選挙が行われ,ALの候補者が勝利。
   7月
5日 BNP,ジア総裁保釈を求める抗議活動を実施。
6日 ADBによるバングラデシュのロヒンギャ難民支援1億ドルが承認される。
9日 BNP,ジア総裁保釈を求める抗議活動を実施。
14日 ダカの北西160キロに位置するルプール原子力発電所で,2号機着工。
23日 2016年7月に起きたダカ襲撃テロ事件の起訴状が出される。
23日 トファエル・アハメド商業相訪日。堀井巌外務大臣政務官と意見交換を行う。
29日 ダカ市内エアポートロードでバスが停留所に追突し,学生2人が死亡。
30日 バス事故への対応を不服とする学生数千人が空港前の道路で抗議活動を開始。
30日 インドのアッサム州において約400万人がバングラデシュからの不法移民であるとして国民登録簿から抹消される。
30日 ラジシャヒ,シレット,ボリシャルで市長選挙を実施。ラジシャヒ,ボリシャルでALの候補者が,シレットでBNPの候補者が勝利。
   8月
2日 BNPが,7月30日に行われたボリシャルおよびラジシャヒ市長選挙結果の無効および再選挙を求め,抗議活動を実施。
2日 ダカ北部のウットラ地区アザンプールで学生によるバス会社等への厳罰を求める抗議活動が行われ,空港につながる道路が封鎖。
3日 フォトジャーナリスト,シャヒドゥル・アロムが,交通の安全を求める学生の抗議デモの様子を撮影し,ウェブ上で公開したことが暴動を煽動した罪にあたるとして,情報通信技術(ICT)法第57条に基づき逮捕される。
6日 日本たばこ産業(JT)が,バングラデシュのたばこ市場シェア2位のアキジュグループのたばこ事業を買収。
7日 河野太郎外相がバングラデシュを訪問し,ダカ襲撃テロ事件の現場となったレストランで献花。ハシナ首相を表敬訪問し,アリ外相と日・バ外相会談を行う。
27日 泉裕泰駐バングラデシュ大使とカジ・ショフィクル・アゾム財務省経済関係局次官との間で,総額27億2900万円を供与限度額とする無償資金協力「沿岸部及び内陸水域における救助能力強化計画」に関する書簡の交換が行われる。
27日 7月29日にダカ国際空港前の幹線道路にて交通事故で学生2人が死亡したことへの抗議として,数百人規模の学生が同幹線道路を封鎖。バス等を襲撃し,警察と衝突。
30日 ハシナ首相,ネパールで開催された第4回ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC)首脳会議に出席。
31日 学生による交通の安全を求める抗議行動がダカ中心部にまで拡大。
   9月
6日 バングラデシュ国家歳入庁,輸出時にかかる源泉税の税率を1.0%から0.6%に引き下げる通達を出す。
10日 ハシナ首相,インドのモディ首相とテレビ会談。バングラデシュにおける3つのインフラプロジェクトの連携強化を確認。
12日 ビーマン航空,ボンバルディアQ400型機を3機発注。
13日 縫製業の最低賃金委員会において,最低賃金を月額5300タカから8000タカにすることで最終合意。12月より実施。
14日 バングラデシュ労働組合,縫製業の最低賃金委員会の決定を不服とする抗議集会を開催。
16日 イスラーム政治団体15団体が「イスラーム民主同盟」(Islamic Democratic Alliance)を設立。ALを含む与党連合への支持を表明。
19日 ハシナ首相,インドのモディ首相とテレビ会談。バングラデシュとインドとの間に130kmの石油パイプラインを引くことに同意。
25日 河野太郎外相とアリ外相がニューヨークで日・バ外相会談を実施。
25日 河野太郎外相,アメリカの『ワシントン・ポスト』紙に「世界はミャンマーとバングラデシュを支援すべき」と寄稿。
30日 BNP,大規模抗議集会を実施。
   10月
10日 特別裁判所が2004年8月21日のAL要人殺害事件の容疑者19人に死刑,19人に終身刑判決。
29日 ジアBNP総裁にかけられている慈善信託基金着服容疑に関する裁判で,特別法廷が7年の懲役および罰金100万タカの実刑判決。
30日 ジアBNP総裁にかけられている慈善信託基金着服容疑に関して,最高裁高裁部が懲役10年の実刑判決。
30日 シャヒドゥル・ホック外務上級次官,ミャンマーのミン・トゥ外相と会談。ロヒンギャ難民の送還事業に合意。
   11月
4日 コウミ・マドラサ教育委員会が大規模集会を開催。ハシナ首相が参列。
9日 ラジシャヒにおいて野党連合が大規模集会を実施。
9日 選挙管理委員会,12月23日に統一選挙を行うと発表。
11日 ミャンマー政府が1日につき150人の難民を2週間かけて帰還させる計画を発表。ミャンマー,バングラデシュ両政府から難民と認定された8032人のうち2260人を対象に,15日から送還を開始すると言明。
11日 BNPをはじめとする野党の幹部が総選挙への参加を表明。
11日 バングラデシュで二輪車の生産・販売を手掛けるホンダの現地法人バングラデシュホンダがムンシゴンジ県アブドルモネムSEZで新工場の竣工式を行う。
12日 選挙管理委員会は第11次総選挙の投票日を12月30日に変更すると発表。
13日 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はバングラデシュ政府に対し,ロヒンギャ難民の送還中止を要請。アメリカ国務省も声明を支持。
13日 シンガポールで開催されたASEAN首脳会議の議長声明において,ミャンマーのロヒンギャに対する迫害は「懸念事案」と指摘。
14日 ナヤパルタンでBNP支持者と治安当局の間で武力衝突が発生。
15日 ロヒンギャ難民2260人をバスに乗せ送還を強引に始めようとしたが,難民が拒否。
19日 バングラデシュ政府のカラム難民支援帰還長官が,ロヒンギャの送還は総選挙後に対処することになると発言。
20日 交通の安全を求める学生の抗議デモの様子を撮影・公表し,逮捕されたフォトジャーナリスト,シャヒドゥル・アロムが保釈される。
30日 浮体式貯蔵再気化ガス装置で不具合が続いたことにより,政府は輸入基地に関する政策を転換。洋上の受入基地は新たに建設せず,陸上のLNG受入基地を重点的に整備すると発表。
   12月
3日 ダカ襲撃テロ事件の裁判が開始。
7日 ハシナ首相,SEZ100カ所の新規建設と,外資誘致の推進を言明。
10日 ダカにおいて,泉裕泰駐バングラデシュ大使とモノワール・アハメド・バングラデシュ財務省経済関係局次官との間で,供与額5億円の無償資金協力「第4次初等教育開発計画」に関する書簡の交換が行われる。
17日 東京で第2回日・バ外務次官級協議を開催。山﨑和之外務審議官とシャヒドゥル・ホック外務上級次官が参加。
30日 第11次総選挙の投票が行われ,ALが議席数の86%を獲得し圧勝。
31日 インドのモディ首相,ALの勝利に対し,外国の指導者の中で最も早く祝辞を贈る。

参考資料 バングラデシュ 2018年
①  国家機構図(2018年12月末現在)

②  行政単位(2018年12月現在)

(出所)Bangladesh Bureau of Statistics, Statistical Yearbook of Bangladesh 2017, May. 2018.

③  要人名簿(2019年1月7日現在)

(注) 女性閣僚

主要統計 バングラデシュ 2018年
1  基礎統計

(注)1)消費者物価上昇率は年平均値。新基準(2005/06=100)と,旧基準年(1995/96=100)との併記。2)暫定値。

(出所)Bangladesh Bank, Monthly Economic Trends, 2018/19年度版より作成。

2  支出別国民総所得(名目価格)

(注)統計誤差を除く。

(出所)Bangladesh Bureau of Statistics, National Accounts Statistics より作成。

3  産業別国内総生産(新基準年2005/06年度価格)

(注)1)生産者価格。2)市場価格。3)暫定値。

(出所)表1に同じ。

4  国・地域別貿易

(出所)Bangladesh Bank, Major country/commodity-wise export receipts および Major country/commodity-wise import payments を参考に作成。

5  国際収支

(出所)Bangladesh Bank, Bangladesh Bank Quarterly, July-September, 2018年, p.39 Table V.1 より作成。

6  政府財政

(出所)Ministry of Finance, Budget in Brief 2018/19より作成。

 
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