2019 Volume 2019 Pages 483-516
国内政治に関しては連邦下院選挙を2019年4~5月に控え,ナレンドラ・モディ国民民主連合(NDA)政権の経済政策の焦点は構造改革よりも,雇用や福祉など選挙民を強く意識した政策に重点がシフトしている。とりわけ大票田で,改革の恩恵をまだ十分に受けていない農民層への配慮が顕著である。また,社会的経済的に依然として底辺にある階層の不満にもモディ政権は敏感になっている。2018年の政局は政党間の連携・対立関係が流動化している。NDAからアーンドラ・プラデーシュ(AP)州の政権党であるテルグー・デーサム党(TDP)が脱退するなど,NDAも揺らいでいるが,野党の反インド人民党連合の形はまだはっきりしない。
経済に関しては,2018年8月頃までは堅実に成長軌道にあるように見え,証券市場も好況に沸いていたが,一転して後半には,ノンバンク系金融機関の破綻を契機にして株価指数が激しく落ち込み,良好な統計数値の陰になり見えにくくなっていた問題や亀裂が次々と露出した感のある一年となった。公式統計では経済成長率は7%余りの高い値を記録する見込みとなっているものの,公式統計への政治的関与が疑問視され,また製造業を世界のハブとし雇用創出するという政権の最も重要な政策の実現は困難な状況にある。また,貿易収支の赤字は拡大しており,そのため電子製品や繊維製品などの関税を引き上げるといった保護主義的な政策の採用も目立った。さらに銀行の不良債権問題では,解決への進め方について,政権とインド準備銀行(RBI)が対立する局面もあった。もちろん前年までに導入された物品・サービス税(GST)や破産法典などは動き出しており,ハードインフラの改善も進み,全体としてのビジネス環境は改善しているとの指標もある。しかし,組織部門の雇用は伸びておらず,とくに非組織部門にしわ寄せがきていると考えられ,経済面でも外部・内部ともに不確実性が広がる状況となった。
国際政治面では大きな構造変動はない。主要大国とは二国間関係では対立点を内包しつつも安定した関係を維持している。さらにインドは「自由で開かれたインド太平洋」という考えに同調しつつ,アメリカ,日本などと関係深化を進めているが,一方,上海協力機構やBRICSという枠組みで中国,ロシアなどとも,安定した関係を維持しており,バランスをとっている。最大の問題はパキスタンであるが,カシミール問題のため関係改善の機運は見いだせていない。
連邦下院選挙を2019年4~5月に控え,モディ政権の国内政治の焦点は経済改革よりも,選挙民を強く意識した政策に重点がシフトしているが,政府が掲げる目標と実績の乖離は大きく,どれほど大衆にアピールできているか明らかでない。
経済改革では外国直接投資の規制緩和や公企業の株式放出で一定の進展があったが,多数の雇用に影響する部門では改革に対する抵抗も大きい。モディ政権は1月10日には,従来は49%まで自動認可でそれ以上は政府認可の取得が必要であった単一商標小売業(SBRT)への外国直接投資を100%まで自動認可とし(「経済」参照),また,民間航空,建設開発,電力交換,調合薬および監査事務所を含む多数のセクターの外国直接投資を自由化した。しかし,SBRT自由化に対しては,全インド商業者連盟やインド人民党(BJP)と密接な関係をもつ国産品愛用覚醒フロント,そして野党などが多国籍企業の進出を利し地元の商工業者を苦境に追いやるとして反発した。民間航空分野についてターゲットとされたのはエア・インディアで,政府は49%までの外国航空会社の投資を認めた。野党はナショナル・キャリアを保護すべきとして批判したが,多額の負債を抱えたエア・インディアへ投資する者が見つからず,6月19日に政府は計画を棚上げした。
一方,2019年の選挙を見据えて農民,貧困大衆を強く意識した政策が目立ってきた。たとえばモディ首相は1月10日の閣僚会議で大臣に115の後進県の開発のため行動計画を策定するように求めた。2月の連邦の予算案では政府の農産物買い上げ最低支持価格(MSP)の大幅引き上げ,野心的な全国健康保全計画(NHPS)などが表明された(「経済」の項参照)。また,モディ首相は4月29日にはすべての村に電気がきたことを宣言し政府実績を強調した。
しかしながら,これらの事業には批判も多い。NHPSについてインドの医学協会は6月17日にNHPSの策定で政府のコスト計算が実態から乖離していると批判し再考を要求した。100%の村に電気がきたというモディ首相の主張に対しても,電気がきていない村が多くあること,コンセントがあっても電線につながっていない世帯が多数にのぼることが後で指摘されるなど,実態は100%電化にはほど遠いと指摘されている。
モディ政権下で農村部にどれだけの経済発展の成果が行き渡っているかについては議論は分かれるが,農村の不満は根強い。6月1日には7州の172の農民組織が農民負債の棒引き,最低限の所得補償,政府農産物買い上げ価格の引き上げなど農村の疲弊に対する救済策を求めて10日間の全インドレベルのストライキを行い,インドの北部,中部を中心に農産物供給に打撃を与えた。
7月6日にはモディ政権は117の後進県にエリート官僚であるインド行政職(IAS)を派遣し,8月15日の独立記念日までに社会福祉事業を監視しその実施を促すよう指令した。しかし中央政府の介入にどれだけ効果があるか疑念がもたれた。また,これらの事業は中央政府から補助金などが出ているとはいえ,州政府が実施主体であり,州政府を飛び越えての介入が批判された。
一方,ブラックマネー対策として2016年11月に突然実施された高額紙幣の新紙幣への切り替えの評価に関しては,切り替えが農民にダメージを与えたとする政府報告書が一旦11月20日に発表されたが,11月27日には一転して,農業大臣は影響はなかったと述べ不信感を招いた。11月29日には農民負債の棒引き,政府買い上げ農産物価格の適正化などを求める大規模な農民集会があり,国民会議派(=会議派)総裁ラーフル・ガンディーなど主要野党指導者が参加したが,農民の要求に対して中央政府からの回答はなかった。
モディ政権が対処に苦慮したのは,農村対策に加えて,歴史的に抑圧されてきた人々の権利主張運動への対応であった。
――1989年指定カースト・指定部族法改正問題3月20日に最高裁はマハーラーシュトラ州における1989年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)法(以下「1989年SC/ST残虐行為防止法」)(SC=指定カースト:歴史的に不可触民としてさまざまな差別を受けてきた階層,ST=指定部族:歴史的に疎外されてきた独自の文化をもつ後進的部族)の適用に関する事案の裁判において次のような判決を下した。すなわち,事実関係が不明確であったり,告訴に明らかに悪意があったりする場合がありうることを考慮すると,先行保釈が被告に絶対的に禁止されることはなく,また,逮捕される被告が公務員の場合その任命権者の許可,被告が一般人の場合は警察の許可を必要とするという判断である。このような判決は同法が濫用される場合があるとの認識に基づくものであった。
しかし,同法が制定されたのはSC/STが差別迫害され,暴力対象となる事件がやまないからである。今年も,11月12日にはウッタル・プラデーシュ(UP)州シャムリ県で25人のダリト(被抑圧階級:具体的にはSCを指すことが多いが,概念的にはSTなども含める場合がある)が差別と暴力行為の対象とされることに絶えかねて仏教徒に改宗している。このような社会の実態に対して最高裁の判決は,同法の有効性を減じることになりかねず,ダリトの反発を招いた。
4月2日にはダリトの諸組織は最高裁の判決に反対して北インドを中心に大規模なゼネストを繰り広げ,マディヤ・プラデーシュ(MP)州では軍が導入され5人が死亡し,UP州でも2人が死亡するなど混乱が広がった。
内務大臣ラージナート・シンは,中央政府はSC/STの福祉を重視しているとして事態の沈静化を求めた。また最高裁は翌3日には判決は無実の者を守るためであってSC/STの権利を侵すものではないと説明した。モディ首相も6日にはBJPの議員はダリトの村にいって現状を認識すべきと発言し,問題に取り組んでいる姿勢を示した。しかし,8日には4月2日のゼネストでダリトに残虐行為がなされたとして大衆社会党(BSP)や与党BJPのダリト議員から非難が高まった。
このような反発の高まりから,中央政府は8月1日に,1989年SC/ST残虐行為防止法の改正を行うことを決定した。6日には改正法案は連邦下院を,9日には上院を通過し,17日に成立した。改正法案では先行保釈の適用が除外され,また,容疑者の逮捕において許可は必要とされなくなった。しかし同法の強化は,今度はSC/ST以外の上位カーストから批判を招いている。
――少数民族,市民権問題への対応少数民族問題,市民権問題という関連する問題への対処についてもモディ政権の対応には批判が広がった。
特に,複雑なエスニック問題を抱える北東部ではエスニック集団の大規模な流入は社会的緊張を引き起こし大きな問題となる。インドに流入するミャンマーのロヒンギャも大きな問題となった。人道的対応が求められるなか,州政府,中央政府ともロヒンギャ難民の移入に対しては厳しい対応をとっている。たとえば2月14日にはミャンマーに隣接するミゾラム州のラール・タンハウラ州首相は,ロヒンギャ難民を阻止するため国境の治安強化を中央政府に要求した。3月30日に中央政府内務省は不法移民の取り締まり強化を州政府に要求した。中央政府は2017年9月に提出したロヒンギャ難民からの訴えを審議する最高裁への供述書でロヒンギャ難民とテロ集団との関わりを示唆し,難民は国家の安全保障への脅威と述べた。中央政府はミャンマー政府との関係を重視しロヒンギャの帰還を促すことを基本政策としている。
しかし,中央政府の難民・市民権政策でBJPのイデオロギーが色濃く反映しているとして最も懸念が表明されているのは市民権法の改正問題である。インドの市民権法では宗教の違いで市民権が決まることはない。しかし,2016年市民権(改正)法案は,宗教的迫害のためにインドの保護を求める人々に対して市民権を与えるとしたものの,その対象をアフガニスタン,パキスタンおよびバングラデシュからのヒンドゥー,シク教徒,ジャイナ教徒,仏教徒,パールシーおよびクリスチャンに限定し,ムスリムを除外した。ひとつの問題点は,ムスリムは除外されるもののそれ以外の難民は市民権を得る可能性が拡大することである。それは少数民族が複雑なモザイクをなし,避難民や移民の流入が大きな問題を引き起こしてきた北東部で広範な反発を招いた。5月にはメガラヤ州政府,アッサム州ではアソム人民会議が反対を表明し,その後も北東部諸州で反対運動が続いた。他の問題点はムスリムに対して差別を行っている点であり,野党から厳しく非難された。反対運動の拡大から改正法案は議会を通過する可能性は低い。
――2019年連邦下院選挙と政党の動き2019年4~5月に予定されている連邦下院選挙に向けて与野党の動きが活発になった。与党BJPに関しては,2014年の選挙での得票率は31.3%であり,選挙で勝つためにはNDAの枠組みを維持することが重要である。しかし,NDAには亀裂が目立っている。それはAP州で顕在化した。AP州は2014年に新しいAP州とテーランガーナー州に分離したが,ハイデラバードがテーランガーナー州に属することになったこともあり,新AP州の財政基盤は弱体化した。そのため当時のマンモーハン・シン首相(会議派)は新AP州のTDP政権に特別カテゴリーの地位を5年間認めることを約束し,BJPも選挙中に約束を守ることを表明した。特別カテゴリーの下,州は中央政府からの財政支援で貸与より贈与の比重が大きくなるなど有利な支援を受けることができるのである。
しかし,従来,特別カテゴリーを決めるのは国家開発評議会(NDC)であったが,機構改革でNDCは2015年に消滅した。また2015年に第14次財政委員会が,中央政府から州政府への財政分与は後進性を基準として配分し,財政赤字州には歳入不足贈与を与えるよう勧告したこともあり,政府は,これまでの特別カテゴリー州の地位は実際上引き続き認めるが,特別カテゴリーの地位は新たに与えられないとの方針を説明した。しかし,TDPのN・C・ナイドゥ州首相は納得せず,あくまでも約束の履行を求めた。中央政府は2月の予算案でAP州に手厚い予算配分を行ったが,AP州政府の不満は解消されなかった。結局,3月8日には中央政府閣僚からTDP閣僚2人が辞任し,AP州政権閣僚からBJPの大臣が辞任し両者の関係は決裂した。TDPは7月20日にモディ政権に対する不信任動議を提出したが,翌日に否決された。TDPは9月10日には12月に予定されるテーランガーナー州議会選挙で会議派,インド共産党と共闘することを決断した。
一方,連邦下院選挙にむけて反BJP連合をつくる試みには2つの動きがある。一つは最大野党の会議派を中心とする動きであり,他方は会議派抜きの野党連合を作ろうとする動きである。会議派は3月13日に反BJP戦線を作り上げる試みとして,前会議派総裁ソニア・ガンディーが夕食会を催し会議派を含めて20余りの政党の指導者が参加した。しかし,UP州の有力政党である社会主義党(SP)のアキレーシュ・ヤーダヴやBSPのマヤワティの姿はなかった。9月10日には石油価格の高騰,政府施策に対する抗議のために会議派が主導してインド・ゼネストが行われ21政党が参加したが,SPとBSPは同調しなかった。
SPとBSPは3月11日に行われたUP州の連邦下院議席の補欠選挙で選挙協力を行いBJPに勝利した。これをきっかけに両党は会議派抜きで選挙協力を組む方針を明らかにしている。また西ベンガル州草の根会議派政権のママター・バネルジー州首相も反BJPの野党共闘を模索している。
このような反BJPの流れを受けて,NDA中央政府対野党の対決という構図が明確になってきた。たとえばAP州ナイドゥ政権は11月8日に,西ベンガル州バネルジー政権は11月16日に中央政府の捜査機関である中央捜査局(CBI)の捜査を州において認める「一般同意」を取り消し,捜査は事件ごとに州政府の同意をとらなければならなくなった。CBIの捜査が,対立する州政権に対して政治的になされているのではないかという懸念からである。これに対して翌17日に中央政府財務大臣ジャイトレーは「腐敗に関しては自治権はない」と発言し両州を批判した。また,中央政府内務省は12月20日に10の中央情報関連機関に任意のコンピューターの情報にアクセスし解読することを認めたが,これに対して,翌日の連邦上院の審議で野党は警察国家化であると批判し,議場は混乱した。中央政府は極左組織などの取り締まりの過程で労働運動家,市民団体も対象としてたびたび強引な捜査を行ってきた。そのような前例から野党の反発は強い。
BJPに対する反発は主要野党に共通しているがそれがどのような反BJP連合の形になるか,模索が続いている。
州政治――アッサムの国民市民登録アッサム州は長年にわたり不法移民が大きな政治問題となってきた。そのため住民の市民権(国籍)を確定することが重要な問題であった。アッサム州は1951年に州では唯一,国民市民登録(NRC)を実施し市民権の確定を行った。しかし未登録の不法移民が多数いることが大きな問題で,なかでもベンガル人移入者に対する不満は1980年代の暴力的な「外国人」排斥運動であるアッサム運動が起こる要因となった。アッサム運動は1985年に中央政府,州政府,全アッサム学生連盟の間で合意がなった。その合意を受けて1951年のNRC名簿や1971年3月24日までの選挙人名簿に名前がある者やその子孫,1971年3月24日以降にアッサムに移入してきたインド市民権を持つ者は,新たにNRCに登録されうることとなった。しかし,登録は満足に実施されない状況が続いていた。そのため2005年に中央政府,アッサム州政府,全アッサム学生連盟のあいだでNRCを更新することが合意され2013年から作業が始まった。更新されたNRCの第1次ドラフトが公表されたのが2017年12月31日であった。
第1次ドラフト公表後,NRCに名前がない者は申請を受け付けるなど更新作業が続いた。その結果7月30日にはNRCの最終ドラフトが公開されたが,NRC登録申請者3300万人の内,約400万人がNRCに登録されないことが明らかになった。アッサム州首相S・ソノワルは登録に漏れた人も再申請により登録チャンスがあると説明し平静な対応を求め,また最高裁は登録から漏れた人々に対して当面はいかなる措置もしないように政府に求めた。登録漏れの400万人に対しては再申請期間が延長され,12月31日までに約300万人が再申請を行った。
NRCの影響はアッサム州だけにとどまらなかった。7月30日以降アルナーチャル・プラデーシュ州やマニプル州など隣接州はNRCに登録されなかった者が州内に移入してくることに備え警戒体制を敷いた。一方,登録漏れの400万人の多くがベンガル人であることから草の根会議派のママター・バネルジー西ベンガル州首相は最終ドラフトの発表後,NRCはベンガル人を排斥するものとして批判した。西ベンガル州の草の根会議派代表団はNRC発表後の状況を把握するため8月2日南アッサム州に空路で入ろうとしたが空港でアッサム州警察に拘束された。
NRCに最終的に登録されない者は「非インド市民」であるとされることになり,大きな社会問題を引き起こすことになりかねない。
――北東部3州の州議会選挙北東部のトリプラ,メガラヤ,ナガランドの各州で2月後半に州議会選挙が行われ,3月3日に開票された(表1)。北東部諸州は従来から中央で政権についた政党の影響が強くなる傾向があるが,今回もBJPが躍進し,その傾向が顕著であった。
(注) 政党獲得議席の後のカッコ内は得票率(%)。
(出所)インド選挙委員会データ(https://eci.gov.in/)より。
メガラヤでは,会議派が第1党となった。しかし,過半数に満たなかったため,民族人民党,統一民主党,人民民主戦線,丘陵州人民民主党,およびBJPからなるメガラヤ民主連合政権が成立した。会議派は10年間維持した政権を,反会議派をスローガンとする野党に奪われた。州首相には民族人民党のコンラド・サングマが6日に就任し,12日に信任投票で信任を得た。
ナガランドではBJPが前回の1議席から今回の12議席へと躍進し,反対に会議派は8議席から無議席となった。与党ナガ人民戦線(NPF)は第1党となったものの他の政党の支持を得られず,NPFから選挙直前に分かれたナショナリスト民主進歩党(NDPP)とBJPの連合が他2議員の支持を得て政権を発足させた。NDPPのネイヒィウ・リオが8日に州首相に就任し,13日に信任投票を乗り切った。
トリプラでは,BJPはトリプラ先住民族戦線(IPFT)と選挙協力を行い,25年にわたり政権を担当したインド共産党(マルクス主義)(CPI[M])率いる左翼戦線から政権を奪った。最大の原因は会議派支持層がBJPに鞍替えしたことにある。会議派は2013年には36.5%の得票率であったが,今回はわずか1.8%であった。逆にBJPは前回1.5%から今回は43.6%となった。多くの地域で会議派組織自体がBJPへ鞍替えし,かつ,IPFTとの協力によって先住民の支持を得たことがBJPの勝利につながった。CPI(M)の得票率は前回が48.1%で今回が42.2%と減少したが,減少割合は小さく,従来のベンガル人を中心とした支持基盤はそれほど弱体化していない。9日にBJPのビプラブ・クマール・デーブが州首相に就任した。
――カルナータカ州の州議会選挙州議会選挙は5月前半に行われ15日に開票された(表2)。2013年選挙ではBJP州首相イェッデュラッパがスキャンダルから辞任し2012年に独自政党を立てたため主要な支持基盤のリンガーヤト・コミュニティの支持も分裂し,与党のBJPが弱体化した。そのため会議派は36.6%の得票率で122議席を確保し単独政権を確立できた。しかし,今回の選挙では,イェッデュラッパは2014年1月にBJPに復帰しBJPの勢力挽回の可能性が高まった。一方シッダラマイアー州首相率いる会議派政権は貧困線以下の世帯に無償で7キロのコメ,補助価格でその他穀物を毎月供給する政策,ムスリム女性への婚資の贈与など,後進諸階級,ダリト,少数派など弱者層を重視する政策の実績を強調した。また,リンガーヤトの一部のコミュニティに宗教的少数派の地位を認める決定を行いその分断を策した。
(注・出所)(表1)に同じ。
15日の開票結果は,BJPが104議席を確保し第1党となったが過半数に届かなかった。会議派の得票率は38.0%と前回から微増したにもかかわらず78議席にとどまった。ヴォッカリガを有力な支持基盤とするジャナター・ダル(世俗主義)(JD[S])は前回40議席から今回は37議席となった。このような状況から会議派,BJPともJD(S)を取り込むことが重要となったが,JD(S)は州首相を出すことを条件に会議派と協力することを決定した。知事はまず第1党のBJPに組閣を要求し5月17日にBJP政権が一旦は誕生したが,議会で信任を得る見込みがたたず2日後に辞任した。23日にはJD(S)のH・D・クマラスワミーが州首相,副首相に会議派のG・パラメシュワラが就任し政権を樹立し,25日には州議会の信任投票で信任を得た。新政権は弱者層への分配を重視し,前会議派政権の福祉政策の継続,農業負債の取り消しなどの政策を実施することを明らかにした。
――マハーラーシュトラ州政権の政治マハーラーシュトラ州政府に対する人々の不満から,BJPとシヴ・セーナーの連合政権には不安定性が目立ってきた。1月1日には,プネーで開かれていたダリトの記念行事で,ダリトとヒンドゥー右翼団体が衝突し死者がでた。これは1818年にビーマ・コーレガオンで東インド会社のマハール(ダリトに属する)軍がマラーター王国宰相の軍隊と戦い勝利したことを記念する行事であった。ダリトの反発は近隣地域に伝わり,たとえば4日にはMP州ブルハンプルでダリト組織が事件に反発してゼネストを組織した。州首相のD・ファドナヴィス(BJP)は事件に対して司法調査を命じ事態の沈静化を図ったがダリトの反発は広がった。
農民運動への対処にも苦慮した。州政府は,左翼系組織が中心になり組織されたナーシクからムンバイへの農民大行進に圧されて3月22日に農民負債の救済,正当な土地権利の保証,慎重な土地収用などに同意した。困窮した部族民や農民の要求を野党だけでなく,州政権与党のシヴ・セーナーも支持し,ファドナヴィス州首相は孤立した。11月21日にも干害被害の救済,部族民への森林利用権の付与を掲げて部族民・農民によるターネーからムンバイへの大行進が行われたが,これに対してもファドナヴィス州首相は,要求に対応することを約束した。
一方,政治的に有力なマラーター・カーストによる公的機関の採用などにおいて留保枠を求める運動にも州政府は譲歩せざるをえなかった。7月25日にはマラーター組織は留保制度適用を求めムンバイで示威運動を行い,8月9日には留保を求めるゼネストを行い,一部で暴徒化した。州政府は妥協せざるをえず,「社会的教育的後進階級」というカテゴリーを新たに設定しマラーターに留保制度を適用することを11月18日に承認した。しかし,新たな留保枠の設置は公的機関への採用などで競合するほかの後進階級の反発を強めた。
――ヒンディー語地域4州とミゾラムの州議会選挙11月中旬から12月初めにかけてヒンディー語地域4州とミゾラムの州議会選挙が行われ12月11日にまとめて開票された(表3)。長らく退潮が続いていた会議派は北東部のミゾラムでは敗北したものの,チャッティースガル,MP,ラージャスターン各州で勝利を収めBJPから州政権を奪った。この3州では会議派はラーフル・ガンディー総裁を前面に立ててキャンペーンを行い農民負債の削減などを訴え多くの人の関心を集めた。
(注) (表1)に同じ。投票率は暫定値。
(出所)(表1)に同じ。投票率は新聞報道より。
チャッティースガル州では2003年以来ラーマン・シン率いるBJPが政権を担当していた。前回の2013年選挙から今回の選挙にかけて,得票率はBJPは41.0%から33.0%へと減少し,会議派は40.3%から43.0%へと増加した。BJPの得票が低下したことが会議派が68議席を獲得して勝利することにつながった。
BJP州政権への支持低下の背景には貧困に取り残された農村がある。公共配給サービスなどによる貧困層への食糧配給事業などさまざまな福祉政策が実施されているにもかかわらず貧困の実態は依然として厳しい。たとえば,2011/12年度の調査では貧困線以下人口はチャッティースガル州とインドではそれぞれ農村部では44.6%,25.7%,都市部では24.8%,13.7%であった。農民,特に州人口の30.1%を占める部族民の困窮は明らかである。マオイストと呼ばれる極左武装勢力のインド共産党(毛沢東主義者)による武装闘争が止まないのも,農村の貧困に基本的原因がある。2018年も,たとえば3月13日にスクマ県でマオイストの地雷攻撃で中央予備警察隊9人が死亡した事件,8月6日に治安部隊によりスクマ県でマオイスト15人が殺害される事件など,暴力事件が頻繁に起こっている。
会議派が勝利した背景には以上のような要因がある。12月17日に会議派のブーペーシュ・バゲールが州首相に就任した。
MP州ではBJPが2003年から州政権を維持してきたが,今回は会議派が得票率40.9%で114議席,BJPは41.0%で109議席という結果となり,会議派が僅差の勝利を収めた。2013年選挙では会議派は36.8%,BJPが45.2%であったから約4%の票の増減が勝敗を決めた。
シヴラージ・シン・チョーハン州首相(2005~2018年)の選挙戦略は基本的支持層である高カーストなどの離反を抑えつつST/SCなど社会的弱者層の支持をつなぎ止めることであった。たとえば7月4日には州政府は,貧困者や労働者の電気料金滞納分の帳消しを発表するなど,福祉事業の強化をアピールし貧困層の歓心を買おうとした。しかし,ダリトなど多様な階層の支持を同時につなぎ止めることは難しかった。4月29日にはダール県で巡査志望者が胸に「SC」「ST」「G」(一般)と書かれて健康診断を受けさせられている写真が報じられ,あからさまな差別として大きな反発を引き起こした。また,上述の中央政府による1989年SC/ST残虐行為防止法の改正は高カーストの反発を招き9月6日にはストライキが行われた。9月21日にはチョーハン州首相が,上位カーストの不安を和らげるため捜査は適切に運用されると説明した。一方,10月4日にはSTや農民などは土地・森林利用権の問題解決を要求してグワリオールからデリーに示威行進を行い,不満を顕示した。
一方,会議派はBSPや地方政党と選挙協力を模索したが,議席配分で折り合わず,単独で選挙戦を戦った。結局,BJP州政権に対する不満は,僅差であるが,会議派に勝利をもたらした。開票日12月11日にはBSPが会議派支持を明らかにしたことによって会議派は政権を組織し17日にカマル・ナートが州首相に就任した。
ラージャスターン州ではBJP州政権への不満から,会議派が勝利した。V・ラージェー州首相率いるBJP州政権はダリトや農民の不満に適切に対処できなかった。1989年SC/ST残虐行為防止法の運用に対する3月20日の最高裁判決に反対して4月2日に北インドを中心に行われたダリトの反対運動に対して,州内では高カーストなどから反発が起こり暴力事件に発展した。このような展開に州政府は適切な対応がとれず,4月中旬まで散発的に暴力事件が起こった。農民の不満に対しては,州政府は2月の州予算で農民負債の帳消しなどを発表したが,大きな効果はなかった。9月30日にラージサマンド県で行われた会議派の農民集会では農民負債軽減が不充分なこと,経済困窮による農民自殺などについて州政権が非難され,会議派は農民の支持を得た。
一方,党の求心力も弱体化した。6月25日には元州政権閣僚のガンシャーム・ティワーリーがBJPから脱党し,選挙前には元中央政府閣僚ジャスワント・シンの息子でラージプート・コミュニティの有力者マンヴェンドラ・シンが10月17日に,ムスリムのハビブル・ラーフマンが11月14日に会議派に鞍替えした。
2013年から今回2018年にかけてBJPの得票率は45.2%から38.8%に,会議派は33.1%から39.3%となり,会議派が99議席,BJPが73議席を獲得し会議派が勝利した。12月17日にアショク・ゲーロートが州首相に就任した。
テーランガーナー州では州議会の任期は本来2019年5月までであるが,テーランガーナー民族会議(TRS)のチャンドラセーカル・ラーオ州首相は9月6日に知事に州議会の解散,総選挙を要求し12月に選挙が行われることとなった。野党の選挙体制が整っていないこと,2019年4~5月の連邦下院選挙と同時に行えば,中央の政治に影響されTRSの強みが発揮できないとの計算があった。会議派はTDPなどと選挙協力を行うことを決め,11月1日には会議派95議席,TDP14議席,テーランガーナー人民会議やインド共産党などに10議席という配分が決まった。
ラーオ州首相率いるTRS政権は2014年に政権に就いてから農民負債の取り消し,農家の家畜購入に対する補助金など多数のポピュリスト的事業を行ってきた。10月16日に発表されたTRSの選挙マニフェストでも,負債の棒引き,福祉給付の増額などを掲げた。一方,ラーオ州首相の家族支配,灌漑事業における腐敗の嫌疑など批判もあった。
選挙結果はTRSが得票率46.9%で88 議席を獲得し圧勝した。12月13日にラーオが引き続き州首相に就いた。
ミゾラム州では,2013年選挙は会議派が44.6%の得票率で34議席,ミゾ国民戦線(MNF)が28.7%の得票率で5議席と会議派の圧勝であった。今回の選挙では会議派は失業青年のための起業支援,道路建設,高校卒業学生にノートパソコンの支給などを掲げた。これに対して,ミゾ国民戦線は州政権の実績の乏しさ,政権に就いた場合に禁酒政策を実施することなどを掲げた。開票結果はミゾ国民戦線の圧勝となった。会議派のラール・タンハウラ元州首相はミゾ国民戦線に負けたというより,7政党が連合したミゾラム人民運動に票が取られたと分析した。12月15日にMNFのゾラムタンガ党首が州首相に就任し,10年間の会議派政権を終わらせた。
(近藤)
各種の統計に基づき2018年のインド経済の概況を説明する前に,2018年には,公的統計の値について政治的な操作が疑われて広く議論となったことに簡単に触れておくべきであろう。実際,GDP統計をはじめとして各種の指標を留保なく用いることができない状況にある。
具体的には,第一に,現モディ政権下でGDP統計の基準年等が変更されて2013/14年度以前の旧シリーズのGDP値とそれ以降の新シリーズの値の連続性がない状況が続いていた。変更後の算出方法に基づくGDPデータのバックデートの数値が11月にようやく公表されたが,8月に専門家委員会が政府に報告した値を政府が変更しており,この数値が前UPA(統一進歩連合)政権時代の経済成長率を意図的に低く,現政権下でのそれを高くしたのではないかとの疑惑が広く議論された。第二に,非組織部門の経済動向がどこまで公式統計に正確に反映されているかという問題がある。高額紙幣切り替え(2016年11月)やGSTの導入(2017年7月)による商慣行の変更が非組織部門の不利益になる方向で社会の奥深いところで進行していることが報告されはじめている。非組織部門の統計は毎年収集されているわけではなく,前回の調査は2015年であり,翌年以降のマクロ指標に含まれる非公式部門の数値は推計であることがその背景にある。つまり,公表されているGDPの値は高い方向にバイアスがかかっているのではないかという問題である。第三に,モディ政権は,定期的に公表されるべき,失業率などを示す労働関連の統計や農民の自殺率の統計など,いくつか公表を延期・保留し,あるいはそもそも統計を放棄してしまったものもある。
いずれの問題も,連邦下院選挙を目前に,現政権下での負の影響を隠し,かつ政権の成果を強調したいという政治的意図が公的統計に対して働いているのではないかという疑念を生じさせ,統計の客観性に疑問を呼ぶ結果となっている。
こうした留保をふまえた上で,マクロ経済指標を確認しておく。2018/19年度(2018年4月~2019年3月)の実質GDP成長率の第二次予測値(2019年2月28日付プレス・ノート)は7.0%である。また,2019年1月31日のプレス・ノートで,前年度の経済成長率が6.7%から7.2%に改訂された(さらに2016/17年度は7.1%から8.2%に,2015/16年度は8.2%から8.0%に改訂)。前年度は,2016年11月に実施された高額紙幣の切り替えと2017年7月より施行されたGSTによる混乱があったために,経済成長が抑制されたと考えられているが,それでも7%を超えていたことになる。
産業部門別では,建設業が8.9%の成長率,次いで公務・防衛・その他サービスが8.5%,製造業が8.1%,電力・ガス・水道が8.0%であり,インフラ関係の部門において成長率が高くなっていることがうかがえる。政府による活発な投資や支出がその背景にあると考えられる。次に,支出別の統計を確認すると,成長率では,輸入の伸びが15.7%と高く,次いで輸出が13.4%,総固定資本形成が10.0%である。シェアでは,依然として民間最終消費支出がおよそ6割を占めて重要であり,また政府最終消費支出が11.2%とモディ政権登場以降もっとも高い水準にある。低調だった総固定資本形成は前年度(28.6%)とほぼ変わらない28.9%であり,最高水準であった2010年度頃の30%台後半の数値には戻っていない。
物価については,原油価格の上昇に影響され,2018年には燃料・電力物価指数の伸び率が高く推移し,卸売物価指数も上昇基調であったが,年末にかけて一段落している(図1)。消費者物価指数(CPI)の増加率は年初には5%を超えていたものの,その後下降し,2018年後半は3%台で推移している。原油価格の高騰にもかかわらずこのような状況となっている背景には,食料品の物価が下落気味であることがあり,そのことは農民には打撃となっている。また,インフレ・ターゲットを中期的には4%としているRBIは,年初高めに推移したインフレ率を懸念し,2014年1月に8%とされて以来段階的に引き下げられてきていた政策金利(レポ・レート)を2018年6月に6.00%から6.25%に引き上げ,8月にはさらに6.50%とし,その後その水準で据え置いている。
(注) 前年同月比。2018年12月は暫定値。
(出所)CPIはMinistry of Statistics and Programme Implementation。卸売物価指数(WPI)はOffice of Economic Adviser, Ministry of Commerce & Industryのウェブサイト・データより作成。
為替レートについては,2017年半ばから1ドル64~66ルピーで推移し年初には63ルピー台の高値を記録していたが,2018年5月頃からルピー安が進行し,8月には1ドル70ルピーを記録して史上最安値を更新し,さらに10月には74ルピーにまで達した。その後70~72ルピーほどで推移している(図2)。ルピー安は,一般には,アメリカの利上げ(2018年中に4回実施)や新興国の政情不安,アメリカを震源とする貿易摩擦などで,新興国から資金を引き揚げる動きを反映しているものと考えられ,2018年後半については後述する金融不安などインド特有の事情も加わったと考えられる。
(出所)Reserve Bank of Indiaのウェブサイト・データより作成。
国際収支は2018/19年度上半期では総合収支が赤字となっている(章末の表参照)。経常収支をみると,貿易収支と所得収支の赤字をサービス収支と移転収支が補う構造に変化はない。今年は貿易赤字が拡大する見込みであり,これはとくに原油・石油製品や電気電子製品の輸入額が伸びているからである。とりわけ中国からの輸入が増えており,東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に対するインドの消極的な姿勢もこうした貿易赤字に対する警戒感があると考えられる。金融収支については,直接投資の流入の伸びが鈍っており,また間接投資についても,上述したように8月頃までは新興国からの資金引き揚げ,とくに債券市場からの資金引き揚げがみられた。さらに8月末に起きたノンバンク系の金融機関の破綻が外資勢による株式市場での売り越しにつながったとみられている。実際,インドの代表的な株価指数であるSENSEXをみると,年初から上昇基調にあり,1月中旬に35000をはじめて突破し,8月には39000近くにまで到達したものの夏を境に潮目が変わっており,11月まで大幅に下落した(図3)。
(出所)Bombay Stock Exchangeのウェブサイト・データより作成。
モディ政権は就任以来,外部状況では原油安と先進国の低利子率という強力な追い風を受けていた。それらの追い風が2018年にははっきりと失われた。産油諸国の政情不安定や,またイランからの原油輸入をアメリカの要請で抑制せざるをえないなど,原油価格は上昇基調であり,2018年後半には上昇は一服したとはいえ,予断を許さない状況にある。また,米中の貿易摩擦は,貿易への影響はもちろん,インドから国外の安全資産への国際資金の移動を促すことになる。
メイク・イン・インディアと保護主義的な貿易政策の復権?周知のとおり,メイク・イン・インディアはモディ政権の経済政策の核となる政策である。そのねらいはインドを製造業の世界的なハブとし,かつ雇用を創出することである。しかし,製造業のGDPに占めるシェアは約15~16%ほどで推移しており,2022年までに25%程度に引き上げるという目標には遠く及ばないことが明白になりつつある。そこで,政権は2018年に入り,2月に電子機器や食品加工,自動車部品などで関税率の引き上げを実施し,国内での生産を促す政策を採用した。さらに7月に繊維製品,9月にエアコンなど,10月に通信機器などについても輸入関税の引き上げを行っている。太陽光パネルについては輸入急増という理由でセーフガード措置をとくに中国およびマレーシアからの輸入をターゲットとして発動した。また,2月には輸入関税に追加して課される社会福祉課徴金(social welfare surcharge)を導入した(関税に対して10%)。従前の教育目的税を代替するものである(関税に対して3%)。
米中の貿易摩擦に隠れている形だが,WTOとの関連でも問題となりうるこうした保護主義的貿易政策は注意しておくべきであろう。関税強化の結果,実際に直接投資している企業の間で,インド国内での生産の動きを増やす流れがある。たとえば,携帯電話などの完成品輸入は減少傾向が今年はみられる。そもそもモディ政権になって締結された自由貿易協定は今のところなく,秋に行われたRCEPの会議においても,インドの消極的な姿勢が目立った。産業界も中国からの輸入増を警戒しており,これまで締結した自由貿易協定はインドの貿易赤字の解消や輸出の増加につながっていないという認識があることもその背景にあるだろう。
なお,「国内政治」の冒頭でも触れているとおり,直接投資の規制緩和についてはまた進んでおり,1月にはSBRTについてはすべての直接投資について自動認可ルートとされた(それまでは49%以下のみ自動認可ルート)。そのほか,不動産仲介サービスなどいくつかの業種で100%自動認可ルートとされた。
ビジネス環境このようにインドを世界の製造業のハブとする政策を推し進めるために政府は直接投資の誘致に熱心であり,その点,政府は,世銀の「ビジネス環境ランキング」で2018年には前年の100位から77位にまで上昇したことを内外に喧伝している。GSTの導入,破産法典の施行,外資規制の緩和などのほか,腐敗対策や各種行政手続きの効率化,法人税の引き下げなどを行っており,その影響が2018年に現れてきたという側面があるだろう。
2017年7月に導入されたGSTについては,品目ごとの税率の調整・変更がまだ続いており,また現場での手続き的な対応におけるフリクションなどの混乱もみられるが,インドを真の意味で一つの市場とする法的インフラが整ったとして評価されている。ただし,インフォーマル・セクターの中小企業がこの制度変化に対応できず取引先を失うなどの苦境が報道されている。
また,2016年12月に施行された破産法典の導入も市場には好意的に受け取られ,この仕組みも2018年には動き出し,さらに破産・再建ビジネスについても外資参入のハードルが下げられている。後述する銀行の不良債権問題と相まって,2018/19年度の上半期だけで,鉄鋼・電力関係の案件など6000億ルピー余りの破産・再建手続きが同法によって設置された全国会社法審判所において進められている。
ハードインフラでは,陸海空のインフラ整備は大型案件が多々進められている。ただし,たとえばムンバイ・アーメダバード高速鉄道事業など土地収用でもめているケースも少なくない。インフラ関係で重要な問題としては,州電力庁の赤字,とりわけ配電部門の負債問題があり,これは2018年にも解消されていない。農業用電力料金が選挙対策から低い料金の定額制となっており,これを大票田である農民層の支持を失う危険を冒して抜本的な改革を行うことはきわめて難しい。電力料金体系の改革は製造業の成長という観点からも重要な課題である。
農業ローンの取消し策などの人気取り政策2018年は選挙をにらんだ動きも活発であった。たとえば,2018/19年度予算において全国健康保全計画(NHPS)という保険制度が発表された。貧困層およそ1億世帯を対象に年1000ルピーの保険料で医療保険を提供する仕組みである。モディ・ケアと称して目玉となった政策である。また同じく2018/19年度の予算では,農産物の最低支持価格(MSP)を,生産コストの1.5倍とするという方針が示され,9月に内閣で承認された。
実際,選挙対策として,農民に対する救済政策が活発化している。農民の借金の帳消しやモラトリアムがカルナータカ州などいくつかの州で実施され,また選挙で各党も公約に掲げる趨勢である。もちろん,こうした施策には批判もある。財政規律という観点からの批判はもちろん,MSPの受益者はいわゆる貧困層の農民ではないこと,また債務帳消しやモラトリアムも公的な債務だけであり,インフォーマルな金融機関からの借金は対象とならないこと,またすでに傷んでいる銀行部門の信用をさらに害することなどである。
銀行の不良債権問題に関連したRBIと政府の対立銀行部門の不良債権問題も2018年には改善が進むというよりも混迷を深めた感がある。不良債権額は2017年末には8兆8000億ルピーほどであったものが,2018年9月には10兆ルピーに増えている。また,11の国有銀行がRBIの早期是正措置(PCA)プランの対象となっている。これは2017年に導入され,この対象となると貸し出しの抑制措置などが課される。PCAは2018年2月に強化されて,不良債権の認定基準が厳格化され,一定期間内に再建案の合意ができない場合には全国会社法審判所での清算手続が開始されることとなった。
不良債権化した貸し出しには電力業などに対するものが多い。電力事業は早期に費用を回収することも難しく,またRBIによる不良債権の認定基準の厳格化にはそぐわないビジネス慣行もあった。そこで,PCAの厳格化を緩和するよう政府や業界からRBIへの要請がなされ,また会社法審判所での手続を開始しないよう訴える訴訟もアラハバード高等裁判所などに係属し,清算手続の開始を停止して関係当事者で話し合うべきであるとの決定を同高裁は出している。
そのほか,2018年には銀行関係の不正融資疑惑あるいは汚職事件も相次ぎ,この点からも銀行システムの信用が揺らいだ年となった。とくに,ノンバンクのインフラ金融大手のインフラストラクチャー・リーシング・金融サービス(IL&FS)が債務不履行を8月に起こした。その影響は大きく,投資家が資金を引き揚げる動きをみせ,影響を受けた他のノンバンク系金融機関,さらにそこから貸し出しを受けていた中小企業がクレジット・クランチに苦しむ状況となり,政府がRBIに積極的な対応を求める事態になった。
このように,PCAが対象とされた銀行や債務企業にとって厳しすぎないかという問題やIL&FS問題への対応に加え,二度にわたる政策金利の引き上げに対する不満,RBI余剰金政府納付の政府による増額要求などをめぐって政府とRBIは対立した。結局,RBI総裁のパテルは12月に辞任した。後任に官僚出身のシャクティカンタ・ダスを政府は任命した。不良債権問題と金融包摂政策などの銀行部門の改革や変化は2019年も依然として重要な論点であろう。
懸念される失業問題失業率は2012年度の4%から横ばいか上昇基調であったものが,悪化しており,2017年7月から2018年6月についてのリークされた数値は6.1%であったと報じられている。また,2018年の3月には国営鉄道の9万人の採用公募に2500万人の応募があったという。
高額紙幣の切り替えとGSTの導入がインド経済の成長率を押し下げたと広く考えられており,とくにいずれも非組織部門により大きな影響があったと考えられている。非組織部門のほうがキャッシュによる支払いにより依存していたこと,また,GSTへの対応は非組織部門は免除されているとはいえ,免除されていない部門が非組織部門と取引することを抑制するケースが頻発していると報告されているからである。それゆえ,これまで雇用を吸収してきた非組織部門での雇用の伸びが停滞しているのではないかと考えられている。実際,マハトマ・ガンディー全国農村雇用保証事業(MGNREGS)を利用する人数も2018/19年度には相当に増える見込みである。予算も当初に5500億ルピーと積み増して割り当てただけでなく(前年度は4800億ルピー),年度途中で600億ルピーが積み増された。
(佐藤)
インドの国際関係で最大の懸案は引き続きパキスタンであるが,カシミール問題のため関係改善は難しい。中国との関係は対立点を内包しつつも安定した関係が維持され,対アメリカ関係も安定している。日本との関係も良好で年次円借款調整会議のためスシマ・スワラージ外相が3月29日に,年次首脳会議のためモディ首相が10月27日に来日しいずれもインド太平洋地域の重要性を確認している。ロシアとも良好な関係が継続され5月21日にはモディ首相がロシアのソチを訪問しプーチン大統領と会談し,また10月4日にはデリーで両者の年次首脳会議が始まり対空防御ミサイル・システムS-400(後述)導入が決まった(5日)。
パキスタンパキスタン関係は大きな変化はなく膠着状態である。最大の問題はカシミール問題である。2003年の停戦合意にもかかわらず,2016年以降,カシミール地域では両国間の実効支配線(LoC)を挟んでの銃撃戦や砲撃戦,武装勢力の攻撃が頻繁に起こりインドの不信感は高いレベルにとどまっている。2月4日にLoCでパキスタン側からの発砲により兵士4人が死亡する事件が起こると,ラージナート・シン内務大臣は銃撃を受けた場合,無制限に報復するようインド軍には指示がでていると述べた。23,24日にはパキスタンからの大規模な砲撃でLoCに近いバラムッラ県などの住民1000人以上が避難した。
しかし,信頼醸成の試みも一方で続いている。銃撃戦や砲撃戦を防止するため5月29日には両国の軍作戦司令官は2003年の停戦を遵守すると声明を発表し,6月4日にはLoCおよび国境の平安遵守に同意した。また6月10日には中国山東省青島市で行われた上海協力機構(SCO)の首脳会議でモディ首相とパキスタン大統領マムヌーン・フサインが接触した。8月22~29日にロシアで行われたSCOメンバー国による共同軍事演習に両国の軍は初めて同時に参加し,交流を深めた。また11月22日には両国はパキスタンのカルタールプルにあるシク教寺院へのシク教徒の巡礼のために必要な措置を講じることに同意した。
このような信頼醸成の動きにもかかわらず,LoC付近での銃撃戦や砲撃戦,ゲリラ勢力の攻撃は多数の死傷者を出し関係改善を阻んでいる。8月にはパキスタンでイムラン・ハーン首相が就任し関係改善が期待されたが改善の方向に進んでいない。9月21日にはインドは国連でのパキスタンとの外務大臣会議の予定をカシミール地域でのテロ発生を理由としてキャンセルした。また12月10日にはパキスタンで開かれた南アジア地域協力連合の会合にパキスタン側カシミール政府の大臣が出席していることに抗議してインド外交団は退席した。
中国対中国関係は2017年6月のドークラーム高地での領土をめぐる緊張にもかかわらず,おおむね順調に推移した。同地に対する両国の主張には変化はないが,両国とも対立より緊張緩和で一致している。外務省は2018年2月8日には中国が,シッキムとチベットを結ぶナトゥ・ラ峠を通じて中国にあるカイラーシュ山・マンサロヴァル湖への巡礼を許可することを確認した。3月28日には中国はブラマプトラとサトレジ河の水量データをインドと共有することも確認している。
両国の関係強化には首脳会談が大きな役割を果たしている。2018年には4月27,28日にモディ首相は中国の武漢を訪問し習近平国家主席と会談した。両首脳は国境問題の解決,両国の関係強化で一致した。またアメリカのトランプ大統領などに代表される保護主義に反対し,互いに連携を強化することを確認した。両者は中国山東省青島で開催されたSCOの首脳会議(6月9日),南アフリカのヨハネスブルグで開かれたBRICS首脳会議(7月25~27日),そしてブエノスアイレスでのG20首脳会議(11月30日)でも会談を行っている。
以上のような関係強化の流れのなかでも両国関係には対立・競合の要素も根深い。国境画定問題は落ち着いているが,首脳会談のたびに信頼醸成が強調されるのは問題が基本的に解決されていないことを示す。中国の「一帯一路」構想が新疆ウイグル自治区のカシュガルから,パキスタンでインドが領有を主張するカシミール地域を縦断してパキスタンのグワーダル港に続くことにもインドは異議を表明している。中国の影響力拡大に対しては警戒を解いていない。
7月23日から27日までモディ首相はルワンダ,ウガンダ,南アフリカを訪問したが,それはアフリカでの中国の影響力拡大への対抗という意味も持つ。モディ首相の日本訪問中10月27日には,インドと日本は,中国に極度に負債があるアフリカの国々へ代案を提示する試みとして,アフリカにおける多くの合同事業に同意した。また上述のブエノスアイレスでのG20首脳会議では日米印3カ国の首脳会議は,中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」を強調し,協力の深化で一致した姿勢を見せた。
アメリカインド外交は基本的に全方位外交であるといわれるが,そのなかでもアメリカとの関係は重要である。利害関係の齟齬もあるが,モディ政権は近年はアメリカ,日本の説くインド太平洋構想にも重点を置きつつある。4月4日にはインド,日本,アメリカの外務大臣による3者協議で経済的連携,テロ問題に加えて,自由で包摂的なインド太平洋の重要性が強調された。シンガポールでのASEAN会合中の6月7日にもオーストラリア,日本,アメリカ,インド4カ国の上級官僚は現状変更を目指す中国に対抗してインド太平洋地域の重要性を強調した。
軍事・戦略面でも基本的に関係緊密化が進んでいる。8月25日には防衛装備調達委員会がアメリカから多目的ヘリコプター24機の購入を承認し,また9月5日には2プラス2協議のためポンペオ国務長官,マティス国防長官が来訪し翌6日には両国は安全な軍事通信や軍事協力を可能にする「コミュニケーション互換性およびセキュリティ合意」(COMCASA)を締結した。
ただし,ロシアの対空防御ミサイル・システムS-400導入にはアメリカは神経をとがらせた。アメリカ国務省は6月8日にはインドによる同システム導入を牽制し,ロシアのプーチン大統領が年次首脳会議で来訪する直前の10月3日にも導入の見送りを求めた。しかし,プーチン大統領の来訪中10月5日にはS-400導入契約に署名がなされた。ただし近年アメリカ製兵器の導入も増えており,S-400の契約が大きな影響を及ぼすことは考えられない。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が3月に出した報告書によるとアメリカのインドへの武器輸出は,2013~2017年間に前5年間と比較して,550%以上の成長を記録し,インドの武器輸入でロシアに次いで2位を占める。
アメリカとの関係は対周辺国関係でも重要である。インドは4月3日,パキスタンを拠点としてインドを攻撃する武装組織ラシュカル・イ・トイバ(「純粋なものの軍隊」)の政治フロント組織であるミリー・ムスリム連盟をアメリカがテロ組織として認定したことを歓迎した。ただし,アメリカのイラン制裁措置に関してはイランに原油輸入の多くを依存していることもあり対応に苦慮した。しかし11月2日にはインドがアメリカによる制裁の例外となり石油輸入が継続されることが明らかになった。
(近藤)
国内政治では4~5月に予定されている連邦下院選挙で安定した政権が成立するかどうかが重要なポイントである。2018年の情勢から,モディ首相率いるBJPは苦戦を強いられる可能性があり,予断を許さない。またモディ政権下では宗教的少数派,ダリトの疎外感が高まったが,選挙で新しく成立する政権がそれにどのように対応するかも注目される。さらに都市部の急速な成長に比べて農村部の疲弊と農民の不満が顕在化しているが,構造的問題で短期間には決定的政策はないにしても,福祉政策の拡大だけでなく,より抜本的政策対応が望まれる。
経済面では2019年は選挙がありその影響が注目される年となるだろう。ただし,選挙の有無にかかわりなく,インドの経済面での中長期的な課題に変化はない。なかんずく重要な課題は雇用創出である。そのためにはある程度高い経済成長率を達成することが望ましい。また依然として解決ができていない銀行の不良債権問題,電力部門の歪んだ価格体系の問題,組織部門と非組織部門の税制や福利厚生上の格差問題などと,どこまで向き合えるかも重要である。製造業の成長を後押しするために,直接投資規制の緩和姿勢は一貫しているものの,輸入関税の強化という保護貿易主義的な施策も採用されており,2019年にはRCEPへの対応も迫られると考えられ,この点でも政権がどのような判断を下すか注目される。どの政党が政権に就くにしても,おそらくは過去5年ほどモディ政権が享受してきた原油安や先進国における低利子率などの好条件は失われつつあり,そうした外部状況のなかでの経済の舵取りとなると考えられる。
国際政治では対中国関係は国境問題など対立要素もあるが全体的には安定している。最大の課題はパキスタンとの関係改善である。両国間に横たわるカシミール問題は武力紛争がエスカレートする危険がつきまとう。領有権・民族問題が関わるだけに選挙後の新政権も抜本的な政策変更はないであろうが,信頼醸成の強化は最低限求められる。
(近藤:地域研究センター)
(佐藤:南山大学総合政策学部)
1月 | |
1日 | アッサム州で公表された国民市民登録(NRC)のドラフトが1971年以降入ってきたバングラデシュ人を確認していないとしてアソム人民会議が反発。インド人民党(BJP)に不満を表明。 |
1日 | マハーラーシュトラ州プネーで1818年にマハール兵士がマラーター王国軍隊と戦った戦闘記念日にダリト(被抑圧民)とヒンドゥー右翼団体衝突。 |
10日 | 政府,直接投資規制の緩和を発表(単一商標小売業の100%までの自動認可,エア・インディアの49%までの認可など)。 |
15日 | イスラエルのネタニヤフ首相来訪。モディ首相と会談。 |
17日 | 株式指数SENSEXが35000を史上はじめて突破。 |
18日 | 最高裁判所は,映画パドゥマーヴァティを治安上の理由から上映禁止とする州の告知を停止。北グジャラートでラージプート,映画上映に抗議(21日)。 |
25日 | カルナータカ州の農民,関連団体,マハダイ河の水利用でゴア州と対立し全州ゼネスト。 |
25日 | ASEAN・インド記念首脳会議でモディ首相,航行の自由を強調。 |
2月 | |
1日 | 2018/19年度予算発表。農産物最低支持価格引き上げ,法人税低減,携帯電話など46品目の関税率引き上げなどを含む。 |
2日 | スシマ・スワラージ外相,ネパール訪問。新首相シャルマ・オリと会談。 |
4日 | カシミール地域の印パを分ける実効支配線(LoC)でパキスタンからの銃撃で兵士4人が死亡。内務大臣ラージナート・シン,断固たる態度を強調。 |
8日 | 外務省,中国がナトゥ・ラ峠を通るカイラーシュ山・マンサロヴァル湖巡礼再開を許可したことを下院に報告。 |
9日 | モディ首相,ヨルダン,パレスチナ,UAE,オマーンの中東歴訪(~12日)。 |
9日 | 2001年の国会議事堂襲撃事件の首謀者の一人とされるアフザル・グル被告処刑を記念しカシミール地域でゼネスト。 |
12日 | インド準備銀行(RBI)は早期是正措置(PCA)下の不良債権認定を強化する措置を発表。同時に,認定から180日以内に整理案が承認されない場合,倒産手続を開始することをルール化。 |
14日 | パンジャーブ・ナショナル銀行の違法貸し出し疑惑で中央捜査局(CBI)が調査。 |
17日 | イラン大統領ハッサン・ローハニー師来訪。両国の結びつき強化に合意。 |
22日 | ジャンムー・カシミール(JK)州で,BJPの関係するヒンドゥー団体が1月にジャンムー地方カトゥアで起きた少女レイプ事件の被疑者を擁護しているとして,市民の反対運動が広がる。 |
23日 | パキスタンからの砲撃でカシミール地域バラムッラ,クプワラ県のLoC付近の住民1000人以上が避難(~24日)。 |
28日 | 会議派のP. チダンバラン前財務大臣の息子をCBIが逮捕。会議派は政治的迫害と非難。 |
3月 | |
2日 | インド,ロシア,およびバングラデシュ,バングラデシュのルーップル原子力発電所建設で覚書に署名。 |
3日 | 北東部3州の州議会選挙開票。メガラヤ州では民族人民党のコンラド・サングマ(6日),ナガランド州ではナショナリスト民主進歩党のネイヒィウ・リオ(8日)が州首相に就任。トリプラ州ではBJPのビプラブ・クマール・デーブが州首相に就任(9日)。 |
8日 | アーンドラ・プラデーシュ(AP)州への特別カテゴリーの地位承認をめぐってテルグー・デーサム党(TDP)とBJPの関係悪化。連邦政府閣僚からTDP閣僚2人が辞任。AP州TDP政権閣僚からBJP辞任。 |
12日 | マハーラーシュトラ州政府,農民・部族民の運動の要求に応じる声明。 |
16日 | AP州首相N.C. ナイドゥ,国民民主連合(NDA)からの離脱を宣言,NDA政権の不信任決議を提出も不成立。 |
20日 | 最高裁,1989年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)法運用で手続き厳格化の判決。 |
29日 | スシマ・スワラージ外相,年次円借款調整会議のため訪日。 |
31日 | ICICI銀行によるVideoconに対する不正融資疑惑でCBI,国税庁が調査。 |
4月 | |
1日 | カシミール地域アナントナグ県の治安部隊による掃討作戦でゲリラ12人を含む19人が死亡。 |
2日 | 1989年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)法の運用を見直す最高裁判所判決に対してダリト,北インドで大規模な反対運動。9人死亡。 |
2日 | カメラなどの携帯電話部品についても輸入関税の引き上げを政府決定。 |
5日 | ネパール新首相オリ来訪。 |
13日 | ウッタル・プラデーシュ(UP)州警察,ウンナーオ県の少女レイプ事件でBJPの州議会議員を逮捕。 |
18日 | モディ首相訪英。EU離脱後でもイギリスの重要性は変わりないことを強調。貿易障害除去の重要性を強調。 |
27日 | モディ首相,中国の武漢訪問,習近平国家主席と会談(~28日)。 |
5月 | |
3日 | 暴風によって,UP州,ラージャスターン州などで100人以上の死者。 |
7日 | 南部6州の州首相・財務大臣会議,第15次財政委員会の諮問事項に反対。州への税交付計算の基礎として1971年センサス使用を要求。 |
15日 | カルナータカ州議会選挙開票。BJP過半数に届かず。ジャナター・ダル(世俗主義)(JD[S])と会議派の連合政権が成立,JD(S)のH.D. クマラスワミーが州首相就任(23日)。 |
20日 | 石油価格,1リットル当たり76.24ルピーとなり最高額を更新。 |
21日 | モディ首相,ロシア訪問。ソチでプーチン大統領と会談。 |
6月 | |
1日 | 7州の農民,ストライキ。農産物供給に打撃。 |
1日 | アラハバード高裁は電力部門について2月12日のRBIのルール厳格化に基づく措置を一時的に停止。 |
3日 | ジャールカンド州の医療研究所で医師,看護師のストのため患者14人死亡。 |
6日 | RBIはインフレを懸念しレポ・レートを6.25%に引き上げ。引き上げは現政権下では初めて。 |
7日 | AP州,新州都アマラヴァティ建設に関してシンガポールと覚書に署名。 |
8日 | 10年物国債利回りが8%を超える。8%を超えるのは2015年5月以来。 |
9日 | モディ首相,中国山東省青島市で開催された上海協力機構(SCO)の年次首脳会議に出席(~10日)。 |
19日 | JK州首相メーブーバ・ムフティ辞任。知事統治に(20日)。 |
21日 | 政府はアメリカとの交渉の行方次第でアーモンドなどおもにアメリカから輸入されている29品目の関税を報復として引き上げることを決定。 |
27日 | 政府は輸出信用保証公社(ECGC)に200億ルピーの資本注入を決定。中小企業の輸出保証をカバーし,輸出促進するため。 |
7月 | |
4日 | 政府,カリフ(夏)作物のために最低支持価格を大幅引き上げ。 |
4日 | マディヤ・プラデーシュ(MP)州政府,貧困層の電気料金未納帳消しを発表。 |
10日 | 韓国の文在寅大統領来訪,首脳会談。 |
17日 | 政府はジャケットやスーツなど50の繊維品目の関税を20%に引き上げ。 |
21日 | 物品・サービス税(GST)評議会は化粧品や冷蔵庫などの消費財88品目の税率引き下げを決定。 |
23日 | ビハール州警察発表によるとムザッファルプル県の少女保護施設で多数の少女に売春強制。 |
23日 | モディ首相,アフリカのルワンダ,ウガンダ,南アフリカ訪問(~27日)。南アでBRICS首脳会議に出席(25~27日)。 |
30日 | 太陽光セルの輸入急増に対して政府は中国とマレーシアからの輸入に25%の関税を上乗せするセーフガード措置を決定。 |
8月 | |
1日 | RBIはレポ・レートを6.50%に6月に続いて引き上げ。 |
7日 | タミル・ナードゥ州のドラヴィダ進歩連盟党首,M・カルナニディ死去。 |
7日 | 政府は328の繊維品目について輸入関税を20%に引き上げ。 |
16日 | 元首相,BJPのA・B・ヴァジペーイー死去。 |
17日 | 1989年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)法の改正案成立。 |
19日 | ケーララの洪水被害拡大,200人以上死亡。 |
22日 | ロシアで8カ国によるSCOの共同軍事演習(~29日)。インドとパキスタン,初めて同時に軍事演習に参加。 |
28日 | SENSEX,史上最高値38896.63。 |
30日 | ルピー史上最安値を更新,1ドル=70.90ルピー。 |
9月 | |
4日 | ノンバンク,インフラ金融大手のインフラストラクチャー・リーシング・金融サービス(IL&FS)が100億ルピーの短期ローンの債務不履行。 |
6日 | インドとアメリカ,高度の軍事協力を可能とするコミュニケーション互換性および安全保障合意(COMCASA)を締結。 |
9日 | ダージリンのゴルカ人民解放戦線,デリーで座り込み。 |
10日 | NDA政権に抗議して会議派主導のインド・ゼネスト。21政党が参加するも,社会主義党,大衆社会党は同調せず。 |
10日 | SENSEXが一日の下げ幅467.65を記録。 |
12日 | 生産コストの150%を保障する農産物の最低支持価格スキームを政府承認。 |
21日 | インドはカシミール地域ショーピアン県でのテロを理由として国連でパキスタンとの外務大臣会議をキャンセル。 |
21日 | フランスからの戦闘機輸入の契約にモディ政権が不正介入したという報道にフランス元大統領が肯定的な発言をして疑惑再燃。 |
21日 | ノンバンクの債務不履行の連鎖の懸念からSENSEXが一日で1127の下げ幅。 |
23日 | 全国健康保護スキーム(PMJAY)開始。 |
23日 | アッサム州でボードーランド州設立要求。 |
26日 | エアコン,冷蔵庫など電機製品を中心に19品目の輸入関税を引き上げ。 |
28日 | 最高裁判所はケーララ州サバリマラ寺院に月経年齢の女性が入ることを禁じた伝統を違法と判決。 |
10月 | |
1日 | 政府はIL&FSの取締役をすべて交代。債務総額はおよそ130億ドル。 |
4日 | 政府,ガソリンおよび軽油の価格を1リットル当たり2.5ルピー引き下げ。 |
4日 | インド・ロシア年次首脳会議でプーチン大統領来訪。翌5日にロシアの地対空ミサイルシステムS-400の購入契約に署名。ほか5分野でも協力を決定。 |
7日 | グジャラート州北部でビハール州などからの労働者への暴力拡大。多数が避難。 |
11日 | ルピー最安値を記録。1ドル=74.3875ルピー。 |
11日 | 政府,通信機器を中心に15品目の輸入関税を20%に引き上げ。 |
23日 | 落ち続けていたSENSEX,34000を割り込む。 |
25日 | 内務省,チャッティースガル,グジャラート,MP,マハーラーシュトラ,ラージャスターン,UP州の県長官にパキスタン,アフガニスタン,バングラデシュからの迫害された少数派(ムスリム以外)の市民権申請を受け付けるように指示。 |
27日 | 年次首脳会議でモディ首相訪日,安倍首相と会談(28日)。 |
11月 | |
1日 | 会議派のラーフル・ガンディー総裁とTDPのナイドゥ党首,翌年の選挙に向けて反BJPで同意。 |
1日 | 対米報復関税の実施3度目の延期決定。他方でアメリカはインドからの50品目に関する一般特恵関税に基づく譲許を撤廃。 |
4日 | 薬物使用がマニプル州の若者の間で拡大。大きな社会問題に。 |
12日 | UP州シャムリ県で差別されてきたダリト25人が仏教徒に改宗。 |
12日 | インドの綿花産業に対する補助金をアメリカがWTOに提訴。 |
16日 | インドの砂糖産業に対する補助金をオーストラリアがWTOに提訴。 |
17日 | CBIの捜査を認める「一般同意」を取り消したAP州(8日)および西ベンガル州(16日)の決定に対して,財務大臣ジャイトレー「腐敗に関しては自治権はない」と反発。 |
18日 | マハーラーシュトラ州政府は,マラーター・カーストに「社会的教育的後進階級」として留保制度適用を承認。 |
19日 | RBIは政府からの要請を受け,PCAを緩和しスキーム下の銀行が中小企業に貸し出すことを容認。 |
22日 | マハーラーシュトラ州政府,部族民や農民の要求に対応を約束。抗議運動収束。 |
29日 | デリーで大規模農民集会。借金棒引きなどを求める。 |
30日 | モディ首相,ブエノスアイレスのG20首脳会議出席(~12月1日)。 |
12月 | |
10日 | インドの外交団,パキスタンでの南アジア地域協力連合の会合にパキスタン側のカシミール政府の大臣が出席していることに抗議して退席。 |
10日 | RBI総裁パテル辞任。 |
11日 | RBI総裁にシャクティカンタ・ダス就任。 |
11日 | 5州の州議会選挙開票。テーランガーナー州ではテーランガーナー国民会議のチャンドラセーカル・ラーオが州首相就任(13日),ミゾラムではミゾ国民戦線のゾラムタンガが州首相就任(15日)。MP,ラージャスターン,チャッティースガル州で会議派が勝利し,カマル・ナート,アショク・ゲーロート,ブーペーシュ・バゲールが州首相就任(17日)。 |
20日 | 内務省は,10の中央情報関連機関にコンピューターの情報を傍受することを裁可。野党は警察国家化であるとして批判。 |
20日 | 政府は国有銀行に計8300億ルピーを年度末までに注入することを決定。 |
22日 | GST評議会は23の財サービスについて税率を引き下げることを決定。 |
29日 | 2018年の外国短期投資は2008年以来の売り越しが確定。 |
31日 | アッサム州で最新のNRCに未登録の400万人のうち,約300万人が再申請期間中に登録を申請。 |
(注) カッコ内政党名略号。BJP:インド人民党,SS:シヴ・セーナー,SAD:アカリー・ダル,LJP:人民の力党,RPI(A):インド共和党(アトヴァレ派),AD:我が党。
(出所)政府発表の閣僚名簿(https://www.india.gov.in/my-government/whos-who/council-ministers)およびその他各省庁のウェブサイトなどから筆者作成。
(注) 1)年度平均値。 2)暫定値。 3)4~12月の平均に対する値。
(出所) 出生率はMinistry of Finance, Economic Survey 2016-17, 2017-18, 人口はMinistry of Statistics and Programme Implementation(MOSPI), National Accounts Statistics 2018, およびPress Note on First Advance Estimates of National Income 2018-19, 食糧穀物生産はMinistry of Agriculture and Farmers Welfare, Second Advance Estimate of Production of Foodgrain for 2018-19, 消費者物価上昇率はReserve Bank of India(RBI)のHandbook of Statistics on Indian Economy 2017-18, およびMOSPIのウェブサイト・データ,為替はRBIのウェブサイト・データより作成。
(注) 1)産業労働者についての総合指数。 2)都市部と農村部の統合指数。3)4~12月の平均値。なお12月は暫定値。 4)暫定値。 5)4~12月の値。 6)4~11月の値。公表値新基準年(2012=100)採用につき算出。7)4~12月の平均値。
(出所)鉱工業生産指数はMOSPI, Press Note on Quick Estimates of Index of Industrial Production and Usebased Index for the Month of November, 2018, 農業生産指数はMinistry of Finance, Economic Survey 2017-18, およびRBI, Handbook of Statistics on Indian Economy 2017-18, 卸売物価指数はOffice of Economic Adviser, Ministry of Commerce and Industryのウェブサイト・データ,消費者物価指数(産業労働者)はLabor Bureauのウェブサイト・データ、消費者物価指数(総合指数)はRBI, Database on Indian Economy, およびMOSPIのウェブサイト・データより作成。
(注) 1)3次改定値。2)2次改定値。3)1次改定値。4)2次予測値。
(出所)MOSPI, National Accounts Statistics 2018, Press Note on First Revised Estimates of National Income,Consumption Expenditure, Saving and Capital Formation for 2017-18, およびPress Note on Second Advance Estimates of National Income 2018-19より作成。
(注)1)3次改定値。2)2次改定値。3)1次改定値。4)2次予測値。5)基本価格表示の粗付加価値(GVA)。
(出所) MOSPI, National Accounts Statistics 2018, Press Note on First Revised Estimates of National Income,Consumption Expenditure, Saving and Capital Formation for 2017-18, およびPress Note on Second Advance Estimates of National Income 2018-19より作成。
(注)1)部分改定値。2)暫定値。3)4~9月の予測値。
(出所) RBI, Handbook of Statistics on Indian Economy 2017-18,およびPress Note(31/Dec/2018)より作成。
(注)1)アイスランド,ノルウェー,スイス,リヒテンシュタイン。 2)非特定地域(unspecified region)を含む。
(出所) Ministry of Commerce and Industryのウェブサイト・データより作成。
(出所) Ministry of Finance, Union Budget 2017-18, 2018-19, および2019-20より作成。