Yearbook of Asian Affairs
Online ISSN : 2434-0847
Print ISSN : 0915-1109
[title in Japanese]
[in Japanese]
Author information
MAGAZINE FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2019 Volume 2019 Pages 591-612

Details

2018年のアフガニスタン

概 況

2018年のアフガニスタンでは,ターリバーンによる攻勢が全土に拡大し,軍の基地や各州州都などに迫る大規模な攻撃が相次ぎ,その勢力圏は拡大しつつある。一方,IS(「イスラーム国」)により多数の死傷者を出したテロ事件も首都や東部を中心に相次いだが,その影響力は限定的となっている。加えて,テロ事件をきっかけとした和平を求める人々の抗議活動が拡大するとともに,断食月明けに合わせて政府とターリバーンの間で3日間,史上初の停戦が実現した。ターリバーンとの和平協議の枠組みについても,関係各国の関与が拡充するとともに,ガニー大統領も2月のカーブル・プロセス会合以降,ターリバーンとの和平交渉に極めて積極的な姿勢を示した。これにより,政府とアメリカ,それにターリバーンと関係各国が同席しての協議が開始された。

また,2010年以降実施されてこなかった下院議員選挙が10月20日に,さまざまな困難を伴いながらも実施された。しかし,有権者登録における不正や,不安定な治安情勢により,選挙の正当性に疑問が呈されるとともに,カーブル州の全投票無効という事態なども生じたことで,最終結果発表が大幅に遅延し,2019年の大統領選挙実施も不安視される状況となっている。

大干ばつの発生により全土で深刻な被害が出た中で,中央アジアとの間での交通路の整備やパイプライン建設が進展するとともに,国内でも新たな経済発展の芽が育ちつつある。対外関係においては,パキスタンとの恒常的敵対関係は続いているものの,両国の首脳や情報機関の間での往来が積極的に展開された。8月に就任したイムラーン・ハーン・パキスタン新首相も年末になりターリバーンとの和平協議を仲介し,両国関係には改善の兆しも見られた。しかし,両国の国境線をめぐる諸問題をめぐる懸案事項も多い。イランとインドはチャーバハール港の開発を推進し,アフガニスタンに対する関与をさらに強めつつある。

国内政治

ターリバーンの大規模攻勢と和平協議の進展

2017年末までにターリバーンはアフガニスタン全土にその勢力を拡大させ,2018年には軍・警察に対する組織的な大規模攻勢が各地で確認された。もともとの地盤である南部・東部に加え,特に西部・北部でも州都に迫る組織的攻撃を実施し,その支配地域はさらに拡大しているといえる。年頭の1月には西部ファラーフ州で州都にまで肉薄する大規模攻勢を敢行し,1月20日にはカーブル中心部において,著名な高級ホテルであるインターコンチネンタルホテルを14時間以上占拠した。ターリバーンの攻勢はさらに拡大し,5月にはファラーフ州,8月にはガズニー州においてそれぞれ州都にまで侵攻し,ガズニー市では市街戦も展開されたため,市民を含む双方合わせて500人以上という多大の犠牲が出た。そのほかにも,北西部バードギース州やファーリヤーブ州でも軍事基地などを対象として大規模な攻撃が相次ぎ,もはや全土が内戦状態にあるといっても過言ではない状況に陥った。一方,ISも東部やカーブルで大規模なテロなどを多数引き起こし,特にカーブル西部シーア派住民多住地区であるダシュテ・バルチーにおいて自爆テロを複数回引き起こし,多数の死傷者を出したが,その影響力はターリバーンと比較すると限定的であるといえる。

他方,2月には政府関係者とターリバーンとの接触が報道されるとともに,同月14日にターリバーン報道官がアメリカ国民に対する「公開書簡」をインターネット上に公開し,戦争終結を求め,26日にはアメリカとの直接対話に言及する声明を発表した。その2日後にカーブルで開催されたカーブル・プロセス会合において,ガニー大統領はターリバーンに対し前提条件なしでの和平交渉参加を要請し,交渉に応じる場合には,政党として認めること,および国際的な制裁リストからの除外に努めることを発表した。この方針をアメリカや周辺諸国も後押ししたため,3月27日のウズベキスタン政府主催のタシュケント和平会合を皮切りに,5月11日にはインドネシア主催でアフガニスタン・パキスタン・インドネシアのウラマー(イスラームの学者)による和平協議が実施されるなど,ターリバーンとの和平交渉を開始するための多国間協議が頻繁に開催された。

和平交渉を求める動きは多国間協議にとどまらない。3月22日にヘルマンド州の州都ラシュカルガーフの運動場において,市民20人以上が死亡する爆弾テロ事件が発生した。このテロ事件に対する抗議活動は,その後ターリバーンとの和平交渉推進と戦争終結を主張する草の根運動,「ヘルマンド平和行進運動」へと発展した。「ヘルマンド平和行進運動」はその後40日以上をかけてカーブルに至り,政府や国際社会に対して和平と戦争終結を呼び掛ける要望書を直接手渡すとともに,集会を各所で実施した。ターリバーン内部においても,5月7日にターリバーンの「最高裁長官」が指導者アーホンドザーダに対し,市民の犠牲に配慮するよう求める要望書を送付したことを公表するなどの動きも見られた。

このような和平を望む人々の考えを受け,6月にカーブルで終戦に向けた和解案協議のためのウラマー集会が開催された。同集会を標的としたテロ事件が発生したものの,協議においては和平交渉推進派が大勢を占めた。これを受けて,ガニー大統領は6月7日に国民向けのテレビ演説を行い,イスラームの断食月明け前後に当たる6月12日から19日までターリバーンと停戦すると発表した。政府の停戦発表に対し,ターリバーン側も6月9日に断食月明けに合わせ3日間に限定して停戦に合意することを発表した。これは17年間続く戦闘の歴史のなかで初となる画期的な停戦であったが,停戦終了後には再び全土でターリバーンによる攻勢が再開された。停戦実施直前の6月12日にはターリバーンの指導者アーホンドザーダがあくまでアメリカとの直接交渉を求める声明を発した一方,ガニー大統領は『ニューヨーク・タイムズ』紙にターリバーン指導者との直接対話を要望する記事を寄稿し,双方の立場の違いは平行線をたどるかに思われた。

このようななか,アリス・ウェルズ米国務次官補が7月26日にカタールのドーハにおいて,ターリバーンと直接会談を行ったと『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が報じ,ターリバーン側も接触を認めるコメントを発した。さらに,9月4日にアメリカはザルマイ・ハリルザード元大使をアフガニスタン和平担当特使に任命した。10月上旬には再びドーハでハリルザード特使とターリバーンが初の直接協議を実施し,今後の協議継続で一致した。11月には16日から3日間,ドーハでハリルザード米特使がターリバーンと交渉を行ったことで,直接交渉が定期的に実施されるようになった。アフガニスタン側も,11月28日にガニー大統領が和平交渉担当者12人を任命するとともに,12月11日には和平推進のための高等諮問委員会設置を発表するなど,政府内の体勢を整えつつある。

また,2017年からモスクワ和平協議を主催したロシアも積極的に関与する姿勢を示している。8月20日にロシア外務省は,ターリバーンが参加してのモスクワ和平協議を9月4日に開催すると発表した。しかし,翌21日にアメリカ・アフガニスタン両国が相次いで欠席を表明したため,8月27日ラブロフ・ロシア外相とガニー大統領が電話会談を実施したうえで延期が発表された。その後,11月9日に開催されたモスクワ和平協議は,ターリバーンが出席する初協議となり,和平協議にとっての転換点となった。ただ,アフガニスタン政府は協議の主導権をめぐる政府内の対立やアメリカとの関係への配慮などの理由から大統領や外交担当者などの政府首脳は派遣せず,和平交渉を担当する高等和平評議会(HPC)のメンバーを派遣した。一方同協議には,和平交渉の主導権をめぐる国内の政治対立を反映する形で,ガニー大統領と対立するイスラーム協会のメンバーや,カルザイ前大統領など有力政治家が多数出席した。

モスクワ和平協議。右からターリバーン代表団長・スターネクザイ対外事務局長,ラヴロフ・ロシア外相,ハーッジー・ディーン・モハンマドHPC副委員長(11月9日,ロイター/アフロ)

年の瀬も迫る12月17日には,パキスタンの仲介によりアブダビにてアメリカ・パキスタン・サウジアラビア・アフガニスタンとホスト国であるアラブ首長国連邦,さらにはターリバーンが参加しての和平協議が開催された。この協議にはアフガニスタン政府が和平交渉担当官を派遣したため,ターリバーン・アフガニスタン政府が直接協議の場に同席する初の会合となった。

このように,ターリバーンとの和平交渉実施については,当事者であるターリバーンが参加しての実質的協議が開始されるとともに,国際的協議枠組みの多様化がさらに拡大している。しかし,年末12月30日にもターリバーン報道官が明言したとおり,ターリバーンはアメリカとの直接交渉実施と外国駐留部隊の早期撤退を求める姿勢を一貫して崩していない。アメリカをはじめとする関係国は,アフガニスタン政府とターリバーンとの間でなんらかの妥協点を見い出すために和平協議を実施しているが,この点はまったくの平行線のままである。

加えて,4月9日にアメリカ国防総省はイラクやシリアとあわせてアフガニスタンの駐留部隊数の公表を停止すると発表した。12月20日には駐留米軍の半数に相当する7000人の撤退計画が報道され,2019年に入り駐留部隊の撤退についてトランプ大統領をはじめとするアメリカ政府高官が公式に言及し始めている。ターリバーンとの和平交渉とあわせ,米軍撤退がいつ,どのような形で実施されるのか,今後の情勢に多大な影響を与える政策判断であり,注視しなければならない。

深まる政府内の対立と「民族対立」拡大

ガニー大統領と政府要人との対立は2018年も継続した。大統領による知事職交代命令を拒否する形で地位に留まり続けたバルフ州のヌール知事は,3月17日になり自身が所属する政治組織イスラーム協会と大統領側が合意し,イスラーム協会メンバーに閣僚ポスト2つを分配することを条件として,知事交代を受け入れ一応の決着をみた。ただ,2月17日に大統領府が5州の州知事交代を発表した際にも,サマンガン州のホッダーム知事が当初異議を唱えるという事態も生じている。この問題は,2月20日に政府とイスラーム協会が協議を行いホッダーム知事の交代で合意したが,大統領の州知事任命権限の侵害が連続したことで,大統領の権力基盤そのものが揺らいでいることを改めて示す結果となった。

もうひとつの懸念として,トルコに自主亡命中であったドスタム第一副大統領をめぐる問題が挙げられる。2017年に結成された反ガニー大統領連合ともいえる「アフガニスタン救済連合」(以下,「救済連合」)は,大統領府にドスタムの早期帰国を要求し続けた。5月4日にはアンカラのドスタムのもとにヌール前バルフ州知事などの有力政治家が集結し,選挙における相互協力を誓約した。さらに,7月2日にドスタムに近いとされる北西部ファーリヤーブ州カイサル郡警察長官ニザームッディーン・カイサリーが大統領側によって拘束されたことは,両派の対立に拍車をかけた。翌日ドスタムが懸念を表明すると,ファーリヤーブ州州都マイマナ市で数日間カイサリーの解放を求める大規模なデモが発生し,中央アジア諸国との国境につながる道路を封鎖するなどしたうえ,死者を出す結果に至った。政府側の対応を「救済連合」はパシュトゥーンの大統領側による少数民族に対する「民族浄化」であると批判を強めた。7月16日にはカーブル市内中心部において,ドスタム支持派が反政府デモを実施するとともに,選挙ボイコットと自治政府設立にも言及するなど,対立はさらに先鋭化の一途をたどった。

その後,ファーリヤーブ州のデモはさらに激化したため,事態収拾を図るため大統領側はドスタムの帰国を認め,7月22日にドスタムはカーブルへと帰国した。帰国直後のドスタムを標的とした爆弾テロが空港入り口付近で発生したものの,ドスタム自身は難を逃れた。帰国したドスタムが自らの支持者たちにデモ中止を呼び掛けると,国境付近の道路封鎖は解除されデモも沈静化したため,ドスタムの北部諸州における影響力の強さを改めて印象付ける結果となった。この直後の7月26日には,「救済連合」が発展・拡大する形で「アフガニスタン国家大連合」(以下,「国家大連合」)の結成が発表された。また,ターリバーンとの和平交渉をめぐっても,大統領側と反大統領側が主導権争いを繰り広げるなど,パシュトゥーンと非パシュトゥーンの対立という国内の政治的「民族対立」はさまざまな負の影響を及ぼしつつある。

議会選挙をめぐる問題と混乱

直接選挙により選出される下院議員選挙は,2010年9月を最後に実施されず,議員の任期切れに伴う立法府の正当性に大きな疑義が呈される状況が続いてきた。そのようななか,独立選挙委員会(IEC)は2017年6月,2018年6月22日に下院議員選挙,および郡議会選挙を実施すると発表した。その後,ガニー大統領によりIEC委員長が解任されるなどの混乱も生じたが,2018年1月31日にアブドゥル・バーディー・サイイドが新委員長に選出された。ただ,4月1日には選挙日程が10月20日へ延期されるとともに,治安悪化に起因する有権者登録者数の伸び悩みから登録期間も延長され,選挙実施が不安視されることとなった。

今回の選挙については当初,電子IDカードを有権者登録・投票時に用いることで,二重投票を含む不正を防止する計画であった。しかし,電子IDカード発行についてはアブドゥッラー行政長官をはじめとする政府幹部からも批判が出るなどしたため,発行自体が大幅に遅延し,今回の選挙では従来型の紙による身分証明書を用いた有権者登録が行われる決定が下された。実際に4月14日から有権者登録が開始され,これに合わせてガニー大統領はターリバーンを政党として認めるとともに,選挙への参加を呼び掛けた。しかしターリバーン側は,16日にこの申し出を拒否するとともに,選挙を通じた政治プロセス自体が外国の不当な介入に基づくものであるとし,選挙ボイコットを通告した。

このようななか,4月22日にIECは候補者登録期間を含む,選挙実施に関わる具体的日程を発表した(表1)。同日,カーブル市内西部のダシュテ・バルチー地区の有権者登録所に対しISによる自爆テロ事件が発生し,60人以上が死亡,120人以上が負傷した。このように,治安悪化が選挙実施に与える状況が大いに不安視されるなかで,5月13日に同一人物が複数の登録所で有権者登録できることを実証実験したレポートを現地メディアが報じた。さらに,「正規の有権者登録済み証明書」が大量に出回ったことから,選挙における不正対策の不十分さが露呈することとなり,IECは事務局長が5月31日付で責任を取る形で辞任するとともに,公正な選挙実施のための効果的な対応を迫られることとなった。

表1 2018年下院議員選挙日程

(出所)独立選挙委員会(IEC)の発表を参考に筆者作成。

さらに,治安への不安から有権者登録者数も伸び悩んだため,IECは5月10日に登録期間を1カ月延長する発表を行った。この間も,選挙における不正対策に対する不満は拡大し,14日にはカーブルで開催された有力政治家たちによる会合にて,「国家大連合」の幹部を中心とした政治家たちが投票時の生体認証システム導入を要求した。加えて,独立選挙不服申立委員会(IECC)は8月6日に立候補者の中から不適格とされた104人を候補者リストから削除する決定を行い,11日にも35人を追加削除したことで,立候補不適格とされたことに強い不満を表明する候補者も現れた。

9月に入ると,「国家大連合」を中心として選挙不正対策への不満から,各地のIEC事務所を閉鎖に追い込むことで選挙実施そのものを妨害する動きも見られた。投票時に生体認証システムを活用するという「国家大連合」などの要求に応じる形で,9月22日になりIECは投票日に生体認証システムを活用することを正式に発表した。27日にはガニー大統領がテレビ演説を通じて生体認証システムの導入によって,選挙の透明性が完全に確保されたと発表するに至り,翌日28日から選挙活動が開始された。しかし,選挙活動期間中には各地で候補者や集会などを標的にしたテロが相次ぎ,投票日2日前の10月18日には絶大な権限を有していたカンダハール州警察長官アブドゥル・ラーズィクが殺害された。

10月20日に投票が実施されたものの,当初の予定より投票所の数は減らされ,カンダハール州では一週間,ガズニー州では無期限でそれぞれ投票が延期された。投票日にもカーブルで自爆テロが発生するなどしたため,治安情勢の悪化から翌日21日まで投票期間が延長された。開票作業においても混乱が見られ,治安の問題に加え,投票日における有権者登録リストの未着による問題など技術的問題や,不正防止のために導入された生体認証システムそのものが投票後に複数紛失する事例が報告されるなどしたため,IECは暫定結果発表を遅らせることとなった。さらに,12月6日にはIECCはカーブル州の全投票を無効とする発表を行うとともに,12月17日には同州の票集計作業を再度実施することを発表した。

また,IECは7月31日に大統領選挙を2019年4月20日に実施すると発表し,12月22日には立候補者登録が開始された。しかし,その直後の12月30日には大統領選挙を7月20日へと延期する発表を行った。

経 済

2018年は年間を通じて降雨量が少なく,約20年ぶりの大干ばつに直面した。特に西部では深刻な影響が出ている。低迷する経済と治安情勢の悪化も加わり,雇用状況も深刻な状況が続いており,5月1日にファイズッラー・ザキー労働・社会問題・殉教者・障害者相が200万人以上が失業者であると発表している。これに伴う貧困率も上昇しており,EUと中央統計局の共同調査での「生活状況調査」によると,2016/17年度の貧困率は55%となり,2011/12年度の38%から急激に悪化している。

2月24日には,中央アジアと南アジアを結ぶガスパイプライン建設プロジェクトであるTAPIパイプライン計画において,アフガニスタン側での建設作業開始式典が,ガニー大統領とパキスタン・トルクメニスタン両国首脳とインド外相が参加する形で挙行された。同日,ターリバーンの主要各派がパイプラインの保全を約束する声明を発したことは,ターリバーンも今後の発展に期待を抱いているためであることは疑いない。また,トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領は9月8日にアフガニスタン・パキスタン向け電力供給のため,マリーの発電施設を一新することを発表した。

中央アジアとの交易路の拡充という点では,交通路開発で大きな進展が見られた。6月30日にウズベキスタンは国境沿いに輸送のためのハブ拠点建設を開始し,12月13日にはファーリヤーブ州・アキナとヘラート州・トゥルグンディーの2つの国境地点から発し,トルクメニスタン,アゼルバイジャン,ジョージア,トルコ経由でヨーロッパへと向かう「ラピス・ラズリ回廊」が開通した。これは,2017年7月に5カ国合意が締結されていたルートが実現したものであるが,今後の輸送・流通拡大がどのように推移するか注目される。

国内でも経済分野での変化と発展が見られた。まず,4月23日に中央銀行がアフガニスタン・イスラーム銀行(IBA)に対してイスラーム金融に基づく無利子銀行としての認可を出したことが挙げられ,今後の金融機関や投資部門への影響が期待される。また,カーブルで隔月刊雑誌として英文ビジネス雑誌 Business DNA が創刊されたことは,厳しさを増す経済状況のなかで新たに創出されつつある今後の投資・経済についての明るい展望を示すものであり注目される。さらに,インターネットを通じた技術革新の波はアフガニスタンにも大きな変化をもたらしつつある。治安悪化によりカーブルでは外出を控える傾向が強まり,オンラインショッピングが活況を呈するとともに,タクシー配車アプリ「ボバル」(ダリー語で「連れて行け」の意)の利用も広がりを見せつつある。これは,カーブルに限定された状況であるが,地方でもすでにSNSは爆発的な広がりを見せており,今後の経済活動の変化が予測される。

対外関係

対パキスタン関係

アメリカは2017年8月の「南アジア新戦略」発表以降,パキスタンのテロ対策強化に強い圧力をかけ続けた。2018年年頭,トランプ大統領はTwitter上に新年のメッセージを掲載したが,そのなかにもパキスタンを強く非難する内容が含まれていた。また,アフガニスタンにおけるテロ事件やターリバーン勢力の背後にパキスタンがいるとの考えは,アフガニスタンの政府・市民の間に広く浸透しており,さまざまな抗議行動が展開されている。

その一方で,両国関係改善を図るため2017年に策定された「アフガニスタン・パキスタン平和と団結のための行動計画」(APAPPS)に基づき,2月3日にカーブルで事前会合が,10日から2日間イスラマバードでAPAPPS会合が開催された。3月17日にはアバーシー首相とジャンジュワー国家安全保障担当首相補佐官がカーブルを訪問したうえで,ガニー大統領と,両国関係改善とターリバーンとの和平交渉について会談を実施した。さらに,4月6日にもアバーシー首相がカーブルで大統領と会談しており,4月30日には2014年7月以来閉鎖していた北ワジリスタンとホースト州を結ぶ国境を開放した。

このように,APAPPSに基づく両国首脳,あるいは情報機関である国家安全保障局(NDS)とパキスタン三軍統合情報局(ISI)や国家安全保障担当補佐官など,両国関係者の頻繁な相互交流が実施されたことは,両国の関係緊密化にとって極めて有益であったといえる。7月5日にはパキスタン外務省報道官がターリバーンとの和平交渉に向け,あらゆる支援を惜しまないとする声明を発表するとともに,同月11日にはアフガニスタンのIS対策を主題とする中国・ロシア・イラン・パキスタンの情報機関による会合を主催し,アフガニスタン和平に積極的に関与しようとする姿勢が見られた。

その最中の7月25日に実施されたパキスタン総選挙において,パキスタン正義運動党が勝利し,8月には党首の元クリケット選手であるイムラン・ハーンが首相に就任した。同時期,アメリカは8月9日のパキスタン将校の軍事教育プログラムの中止や,9月1日にアメリカ国防総省が発表した3億ドルの軍事支援の停止など,パキスタンの対テロ作戦への取り組みの不十分さを理由とした圧力をさらに強化した。そこで,クレーシー・パキスタン外相がアメリカを訪問し,ポンペオ国務長官と会談を行い軍事交流と両国関係改善を図った。このように,悪化の一途と思われたパキスタン・アメリカ関係は,12月に急展開をみせた。これは,トランプ米大統領がハーン首相にアフガニスタン和平プロセスに関してパキスタンの協力を要請する書簡を送付したことに端を発している。この要請に基づき,パキスタンはアメリカ・ターリバーン間の直接交渉を仲介し,12月14日に直接交渉がアブダビで開催されることが発表され,前述の通り17日に協議が実施された。これは,アメリカ・パキスタン間の関係改善の兆しといえよう。

他方,アフガニスタン・パキスタン関係に影を落とす事例も多数確認できる。パキスタンでは上下両院において憲法改正案が承認され,5月31日には,2年間の移行期間を設けつつ,連邦直轄部族地域(FATA)のハイバル・パフトゥーンフワー州への併合が開始された。これに対し,アフガニスタン大統領府は併合を認めないとする声明を発表し,国境線に沿ってパキスタン軍が継続しているフェンス建設の問題とあわせ,両国国境をめぐる新たな火種となりつつある。また,ターリバーンをパキスタン軍,特にISIが支援しているとの疑惑はアフガニスタンにおいて「常識」として市民の間に流布しているため,前述の「ヘルマンド平和行進運動」もパキスタンによる国内情勢への関与を非難する声明を発している。8月のガズニー市へのターリバーンによる大攻勢後に同市を慰問したガニー大統領は,8月16日の演説でパキスタンの関与を強く批判している。このほかにも,ターリバーンによるテロや襲撃事件が生じた際には,市民がパキスタンを非難するデモを実施するとともに,政府も公式に「外国」の関与を批判するなど,根強いパキスタンへの敵意がうかがわれる。

両国関係の悪化と治安悪化により,両国間の貿易取引も減少の一途をたどり,アフガニスタン・パキスタン共同商工会議所の3月4日の発表によると,2年間で貿易取引額が半減している。パキスタン側で治安悪化の要因となっており,両国国境地帯で活動するパキスタン・ターリバーン運動の指導者,ファズルッラーは6月13日米軍無人偵察機の爆撃で殺害された。

また,国境地帯を中心にパキスタン国内に居住するパシュトゥーンによる自民族の権利擁護を求める大衆抗議運動,パシュトゥーン擁護運動(PTM)が各地で抗議デモなどを展開した。もともとは南ワジリスタン出身のマンズール・パシュティーンという20代の青年が,故郷での状況改善を求めてSNSなどを通じて活動を展開したPTMによる抗議活動は全国規模に拡大することとなった。

対イラン関係

イランはアフガニスタンにとって最大の輸入相手国であり,チャーバハール港が位置することから経済的に極めて重要である。また,2018年はターリバーンによる攻勢がイランとの国境付近の西部で相次いだことから,安全保障を含む政治的観点からも両国関係は重要性を増している。2018年はアメリカの対イラン制裁発動をめぐり,両国間の貿易,およびチャーバハール港の開発に与える影響が危惧された年となった。5月20日にアフガニスタン商工会議所がイラン制裁の影響に懸念を表明しており,アフガニスタン政府からもアメリカにチャーバハール港を制裁対象から除外するよう求める発言が繰り返し発せられた。これを受けて,対イラン制裁発動直後の11月6日にポンペオ国務長官がチャーバハール港を制裁対象外とする発表を行った。

12月26日にはイランの国家安全評議会幹部がアフガニスタンに来訪し,モヒッブ安全保障担当補佐官と会談したが,この際にアフガニスタン政府の支援を受けつつターリバーンと接触することを発表した。これを受けて,12月30日にはターリバーン代表団がテヘランを訪問し,アラグチー外務副大臣らと会談するなど,もともとは激しい敵対関係にあったターリバーンとの和平交渉にイランも積極的ともいえる姿勢を見せている。

対インド関係

インドはアフガニスタンにおけるさまざまなインフラ整備を推進している。4月2日にはカンダハールにおいてインドの無償援助で建設されたクリケットスタジアムが開設した。また,世界銀行とともに12カ所でダム建設事業を進めているが,特にエネルギー・水問題省が7月24日に発表したカーブル川流域のラランダールダム建設は,カーブルと周辺地域の住民200万人の生活・灌漑用水として用いられることが想定されており,地下水量減少と干ばつによる水不足が広がるなかで期待を集めている。ただ,一連のダム建設による河川水量減少をパキスタン側から懸念する声も上がっている。

また,アフガニスタンにとってパキスタンを経由しない貿易路として期待を集める,イラン・チャーバハール港について,インドは6月22日に2019年までに完全稼動を目指す計画を発表した。これに関連して,2月15日から17日までインドを訪問したイランのロウハニ大統領とモディ首相が会談した。この会談による合意に基づき,インドの国営企業であるIndia Ports Global Limited社が,2つの港から構成されるチャーバハール港内の港の1つであるシャヒード・ベヘシュティー港の管理を行うリース契約(18カ月間)を交わした。さらに,モディ首相はチャーバハール港からアフガニスタン国境に隣接するイラン・ザーヘダーンを結ぶ鉄道敷設事業に積極的支援を行うことを表明した。12月25日にはこのリース契約が実行に移されたことで,インド・イラン・アフガニスタンを結ぶ交易路のハブとして,チャーバハール港が今後拡大・発展していくことが期待される。

対中国関係

2017年12月に北京で開催されたアフガニスタン・パキスタン・中国の3カ国外相会談において,中国はAPAPPSというアフガニスタン・パキスタンの対話枠組みを仲介した一方で,「一帯一路」の一環としての中国・パキスタン経済回廊(CPEC)をアフガニスタンまで延長する計画を報告した。このことにみられるように,経済関係の緊密化が図られ,4月28日にインドのモディ首相と中国の習近平国家主席が非公式会談を行った際には,アフガニスタンにおける両国共同経済プロジェクトの実施で合意した。また,11月5日には中国との空輸による貿易が開始され,開始式典にはガニー大統領も出席した。加えて,治安対策への協力という観点からは,前述の北京での外相会談の際,中国が対テロ対策の一環としてアフガニスタン国内のワハン回廊に軍事拠点を建設する計画について協議がなされたと国防省が2月2日に発表した。中国外務省はこれを否定したものの,今後の中国の治安部門への関与は注目すべきであろう。治安部門での協力に関連し,12月15日にはほぼ1年ぶりにカーブルでアフガニスタン・パキスタン・中国の3カ国外相会談が開催され,対テロ・治安対策での協定書に署名がなされた。

2019年の課題

ターリバーンを含めた国際的和平協議枠組みの進展がどのように展開するのかについて,今後を見通すことは難しく紆余曲折が予想される。さらに,年末から浮上し2019年になって現実味を帯びつつある駐留米軍の撤退計画については,アフガニスタンの将来に極めて大きな影響を与えるだろう。アメリカのアフガニスタン復興特別監察局(SIGAR)が2018年10月に発表した調査によると,政府支配領域は全土の約56%にとどまっている。従って,政府とターリバーンなどの反政府勢力の力が拮抗しつつあるなかでの外国部隊撤退は,政府の存続そのものを脅かす可能性もある。他方,さまざまな問題を抱えながらも議会選挙が実施されたが,2019年2月時点で最終結果が明らかにされているのは全34州中18州にすぎず,全議席が確定し最終結果発表に至るまでの期間も見通せない状況である。2019年9月28日(IECが3月20日に7月20日からの延期を発表)に実施される予定の大統領選挙についても,実施と最終結果確定までにはさらなる困難が予想される。

国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)が2019年2月24日に公表した2018年の年次報告書によると,民間人死者数は3804人と2009年以降で最悪の数字を記録し,過去10年間で3万2114人が犠牲となっている。このような戦争状態を終結させるためにも,ターリバーンとの和平交渉が適切な形で進められ,あわせて統治機構維持に向けた選挙の着実な実施によって,治安の回復と統治の正当性を確保する必要がある。これにより,すでに始動しつつある周辺諸国との間のさまざまな開発プロジェクトが進展し,経済の発展にも寄与するであろう。しかし,現状では厳しい局面が今後も続くことが予想される。

(上智大学)

重要日誌 アフガニスタン 2018年
   1月
4日カーブルでIS(「イスラーム国」)による爆弾テロ発生。11人以上死亡。
18日ファラー州州都近郊までターリバーン勢力が侵攻し,激しい戦闘。
20日カーブルのインターコンチネンタルホテルをターリバーンが襲撃・占拠。外国人14人を含む18人以上死亡。
27日カーブル中心部の内務省近くでターリバーンによる自爆テロ事件発生。死者100人以上,負傷者200人以上。
28日カーブルの軍士官学校に対する攻撃で国軍兵士11人死亡。
31日独立選挙委員会(IEC)新委員長にアブドゥル・バーディー・サイイドが選出される。
31日スターネクザイ国家安全保障局(NDS)長官とバルマク内相がパキスタンを電撃訪問。
   2月
1日カーブルのパキスタン大使館前で反パキスタン・デモ。
3日カーブルで「アフガニスタン・パキスタン平和と団結のための行動計画」(APAPPS)事前会合が開催。
9日イスラマバードでAPAPPS会合が2日間の日程で開催。
17日ロウハニ・イラン大統領がインドを訪問し,チャーバハール港のリース権をインドに付与することで合意。
22日国防省が治安対策のための民兵組織設立を発表。
24日TAPIガスパイプライン,アフガニスタン側敷設開始式典開催。ターリバーンもパイプラインの保全確保に努める声明発表。
28日第2回カーブル・プロセス会合がカーブルで開催。
   3月
12日マティス米国防長官がカーブルを電撃訪問。
17日パキスタンのアバーシー首相,ジャンジュワー国家安全保障担当補佐官がカーブル来訪。
17日ヌール・バルフ州知事の交代に関し,大統領側とイスラーム協会側が合意。
18日バルフ州知事辞任をヌール前知事が受け入れ。
21日カーブル西部シーア派住民の多い地区で自爆テロ。33人以上死亡。
22日ヘルマンド州ラシュカルガーフのスポーツスタジアムにて自爆テロ事件発生。市民20人以上が死亡し,抗議活動拡大。
27日タシュケントでウズベキスタン主催アフガニスタン和平に関する初会合開催。
27日ラシュカルガーフでの抗議活動に女性・子供が加わり,ハンガーストライキも実施。
29日アリス・ウェルズ米国務次官補がイスラマバードを訪問しアフガニスタン和平について協議。
   4月
1日IECが下院・郡議会選挙を10月20日に実施延期と発表。
1日ラシュカルガーフでの抗議活動をウラマー評議会メンバーが訪問・説得。
6日パキスタンのアバーシー首相がカーブル来訪,ガニー大統領と会談。
9日米国防総省がイラク・シリア・アフガニスタン駐留部隊数公表を停止と発表。
14日下院議員選挙有権者登録開始。
14日ガニー大統領,ターリバーンを政党と認めたうえで選挙参加を呼び掛け。
16日ターリバーン,選挙参加拒否を発表。
22日IECが選挙実施の具体的日程発表。
22日カーブルのハザーラ人の多い地区においてISによる自爆テロ発生。60人以上死亡,120人以上負傷。
25日ターリバーンが「春の攻勢」を宣言。
28日ターリバーンがクンドゥズ州,ヘルマンド州で大規模攻勢。
28日中印首脳非公式会合で,アフガニスタンにおける共同経済プロジェクト実施で合意。
30日カーブルのNDS事務所付近で自爆テロ発生,26人以上死亡。
30日パキスタンが北ワジリスタンとアフガニスタンを結ぶ国境を4年ぶりに開放。
   5月
3日ガニー大統領夫妻が出席し,電子IDカード発行式典開催。
9日カーブルで3件の爆弾テロ事件発生。
10日IECが選挙有権者登録者数の伸び悩みにより,登録期間延長を発表。
11日インドネシアでアフガニスタン・パキスタン・インドネシアのウラマーによる和平会合開催。
12日ファラーフ州,ザーブル州でのターリバーン攻勢により,兵士65人以上が死亡。
15日ファラーフ州州都ファラーフ市にターリバーンが侵攻。
15日ヘルマンド州の抗議活動が首都への平和行進へと発展しカンダハール到着。
17日アフガニスタン国際赤新月社が干ばつにより200万人が影響と発表。
20日ガズニー州でターリバーンが攻勢。
24日パキスタン議会上下両院において,連邦直轄部族地域(FATA)のハイバル・パフトゥーンフワー州(KP州)への併合を可能とする憲法改正案が承認。
25日大統領府がパキスタンによるFATAのKP州への併合を拒否する声明発表。
26日議会選挙立候補者の登録開始。
26日アトマル国家安全保障担当補佐官,スターネクザイNDS長官らがパキスタン訪問。
28日アメリカ国防総省がアフガニスタン駐留軍司令官にミラーを任命と発表。
31日IEC事務局長が辞任。
31日パキスタンでFATAのKP州への併合が開始。
   6月
4日カーブルで終戦のための和解案を協議するウラマー集会に自爆テロ攻撃。
7日ガニー大統領が断食月明けに合わせて1週間の停戦をターリバーンに提案。
9日ターリバーンが断食明けに合わせて3日間の停戦に同意。
12日パキスタンのバジュワ陸軍参謀長がカーブル来訪,ガニー大統領と会談。
12日ターリバーン指導者のアーホンドザーダがアメリカとの直接対話を要求する声明発表。
13日パキスタン・ターリバーン運動の指導者ファズルッラーが米軍無人機攻撃で殺害される。
15日ターリバーンが3日間の停戦。
16日ナンガルハール州で政府軍・ターリバーンよる停戦を祝う集いに対するISの爆弾テロ発生。36人以上死亡。
16日ガニー大統領が停戦の10日間延長を呼び掛け。
17日ターリバーン報道官が戦闘再開と停戦延長に応じない声明発表。
18日ラシュカルガーフから「ヘルマンド平和行進団」がカーブル到着。
19日アトマル国家安全保障担当補佐官らがイスラマバードを訪問し三軍統合情報局(ISI)長官と協議。
21日「ヘルマンド平和行進団」がガニー大統領と面会。
27日ハーキミー財務相が辞任し,国際関係担当上級大統領顧問に就任。
30日ガニー大統領,ターリバーンとの停戦終了を発表。
30日IECが議会選挙候補者暫定リスト公表。
   7月
1日アリス・ウェルズ米国務次官補がカーブルでガニー大統領と会談。
2日ファーリヤーブ州カイサル郡のカイサリー警察長官がNDSにより拘束される。
2日アリス・ウェルズ米国務次官補がイスラマバードを訪問し,外相・軍参謀長と会談。
9日ポンペオ米国務長官がカーブルを電撃訪問。
9日ダーネシュ第二副大統領がアンカラのドスタム第一副大統領のもとを訪問。
10日サウジアラビアでアフガニスタン和平に関する宗教者会合開催。
14日有力政治家たちが選挙の投票時に生体認証システムを導入するよう要求。
15日トランプ米大統領がターリバーンとの直接対話を指示との報道。
22日ドスタム第一副大統領がカーブルに帰国も,空港入口付近で爆弾テロ発生。
22日カーブルでAPAPPSに基づく協議開催。
23日ドスタム第一副大統領の指示により,北部ファーリヤーブ州,バルフ州のデモ隊による交通路封鎖が解除される。
25日パキスタンで総選挙実施。
26日「アフガニスタン国家大連合」結成。
26日アリス・ウェルズ米国務次官補がドーハでターリバーン幹部と直接会談との報道。ターリバーン側も接触を認める。
31日IEC,大統領選挙を2019年4月20日に実施と発表。
   8月
6日独立選挙不服申立委員会(IECC)が104人の議会選挙立候補者をリストから除外。
7日外務省,チャーバハール港開発協定をイラン制裁対象外とするようアメリカに要請。
9日ターリバーンがガズニー市に対する大規模攻勢を実施し,市街戦に発展。市民を含め500人以上が死亡。
9日ドーハのターリバーン対外事務局長がウズベキスタン高官との会談実施について発表。
15日カーブルのシーア派住民地区においてISの爆弾テロ発生。48人以上死亡。
15日ターリバーンが国際赤新月社スタッフの安全を保障する合意を破棄する声明発表。
16日ガニー大統領がガズニー市を訪問し,ターリバーン攻撃時におけるパキスタンの関与を批判。
18日ターリバーン指導者アーホンドザーダが,犠牲祭に合わせ外国部隊撤退とアメリカとの直接対話を要求する声明発表。
25日アトマル国家安全保障担当補佐官が辞任。
25日IS「ホラーサーン州」司令官オーラクザイが米軍無人機攻撃で殺害される。
   9月
2日ニコルソン駐留米軍司令官が退任し,ミラー司令官着任。
4日アメリカのアフガニスタン和平担当特使にハリルザード元大使が任命される。
4日ターリバーンがハッカーニー・ネットワーク創設者のジャラールッディーン・ハッカーニー死去を発表。
5日カーブル西部シーア派住民地区で連続自爆テロ発生。26人以上死亡。
7日マティス米国防長官がカーブル来訪。
11日ナンガルハール州の自爆テロで68人以上死亡,165人以上が負傷。
15日クレーシー・パキスタン外相がカーブルに来訪しガニー大統領と会談。
16日IEC委員長が「国家大連合」による各地でのIEC事務所閉鎖行動を非難。
22日IECが投票時の生体認証システム導入を発表。
28日議会選挙活動開始。
   10月
2日ナンガルハール州の選挙集会で自爆テロ。13人以上死亡,30人以上負傷。
8日ターリバーンが選挙実施に関わる人員・兵員に対する攻撃を命じる声明発表。
9日ハリルザード米特使がパキスタン訪問。
12日ドーハでアメリカ・ターリバーン間での初めての直接交渉。交渉継続で一致。
18日カンダハール州警察長官のアブドゥル・ラーズィクが州知事公邸内におけるターリバーンによる攻撃で殺害される。
20日下院議員選挙投票日。
24日ターリバーン創設メンバーの一人であるムッラー・バラーダルがパキスタンの刑務所から釈放される。
27日カンダハール州で投票実施。
   11月
1日ガニー大統領が2019年大統領選挙への立候補の意思を表明。
2日「ターリバーンの父」と呼ばれたモウラーナー・サミウル・ハクがパキスタンで殺害される。
5日IECが議会選挙の暫定結果発表日の延期を発表。
5日中国との空輸貿易開始式典挙行。
6日ポンペオ米国務長官がチャーバハール港をイラン制裁対象外とすることを承認。
9日モスクワでターリバーンが参加しての初めての和平協議が開催。アフガニスタンは代表団を派遣せず高等和平評議会 (HPC)メンバーが派遣。
12日カーブルでハザーラ人による治安対策に対する抗議デモ。デモ隊にISが自爆テロを敢行し,6人以上が死亡。
16日ハリルザード米特使がドーハでターリバーン対外事務局関係者と3日間の直接交渉を実施。
18日ハリルザード米特使カーブル来訪。
20日カーブルでの預言者生誕祭を祝う会合にて自爆テロ。55人以上死亡,60人以上負傷。ターリバーン報道官は犯行を否定。
23日IECが5州議会選挙暫定結果発表。
28日ガニー大統領がターリバーンとの和平交渉担当者12人を任命。
   12月
4日ハリルザード米特使がイスラマバードを訪問。
5日NATO事務総長がNATOのアフガニスタンへの派兵継続方針に言及。
6日IECC,カーブル州における投票の全集計結果が無効と発表。
11日政府が和平のための高等諮問委員会設置を発表。
13日アフガニスタン北部からヨーロッパへの交易路「ラピス・ラズリ回廊」開設。
15日カーブルでアフガニスタン・パキスタン・中国外相会談実施。
17日アブダビでパキスタン仲介によるターリバーンとアメリカの和平協議が開催。
18日ローガル州・ヘラート州のIEC事務所での集票作業不正に関する文書が流出。
20日ターリバーン報道官が1TVの生放送においてアブダビでの会合について応答。
20日アメリカ政府高官がアフガニスタンから駐留部隊の半数に相当する7000人を撤退させる計画について言及。
22日IECが大統領選挙候補者登録開始。
24日カーブルの公共事業省などの省庁区画でテロ発生。43人以上死亡。
25日インドがチャーバハール港のリース権を正式に獲得。
27日ミラー駐留米軍司令官がイスラマバードでバジュワ参謀長と会談。
28日ファーリヤーブ州のカイサリー警察長官が解放される。
30日IECが大統領選挙実施日を2019年7月20日に延期と発表。
30日ターリバーン報道官が2019年1月にサウジアラビア・ジェッダで開催の和平協議でアフガニスタン政府と交渉しないことを明言。
30日ターリバーン代表団がテヘランを訪問し,アラグチー外務副大臣らと会談。

参考資料 アフガニスタン 2018年
①  国家機構図(2019年2月末現在)

(注)2004年1月4日採択のアフガニスタン憲法に基づき作成,その後の推移により修正。

②  内閣閣僚(2019年2月13日現在)

(注)閣僚で「代理」となっている人物が多いが,これは議会による承認を得られない状況のため。

(出所)各省庁のウェブサイトを参考に筆者作成。

③  州知事(2019年1月28日現在)

(注)はこの1年間に新たに着任した州知事である。この1年間にも13州で知事が交代した。

(出所)Afghanistan Onlineのウェブサイトを参考に筆者作成。

主要統計 アフガニスタン 2018年
1  基礎統計

(注)1)為替レートはカーブル自由市場の年平均値。

(出所)Central Statistics Organization, Afghanistan Statistical Yearbook 2017-18; CSOウェブサイト。

2  支出別国内総生産(名目価格)

(注)在庫変動と統計誤差(いずれも推定値)を除く。

(出所)表1に同じ。

3  産業別国内総生産(実質価格)1)

(注)1)2002/03年度を基準とした実質価格。ケシ(Poppy)栽培を除く。輸入品に課される税を除く。

(出所)表1に同じ。

4  国家財政

(出所)表1に同じ。

5  国別貿易

(注)輸出の「その他」にはカザフスタン・ウズベキスタンが,輸入の「その他」にはイラクがそれぞれ含まれる。

(出所)表1に同じ。

 
© 2019 Institute of Developing Economies JETRO
feedback
Top