2020 Volume 2020 Pages 497-520
2019年のネパールは,ネパール共産党(NCP)の下部組織の統合の遅れという懸念材料は残ったものの,マデシ活動家の政治のメインストリームへの参加という点で,国内政治の安定への兆しが見えた1年だった。マデシの要求する憲法改正については,具体的な進展こそなかったものの,分離独立を掲げて活動を展開していたマデシ活動家のラウトが政治のメインストリームに合流し,状況は前進した。他方,共産主義革命の完遂を目指すチャンド派マオイストのテロ事件が相次ぎ世間を騒がせた。前年度から継続的な課題になっていたNCPの下部組織の統合については,年内に決着をみることができなかった。
経済では,持続的で安定的な経済成長の鍵を握るとされる輸出が伸び悩む一方で輸入は増え,貿易赤字は2017/18年度と比較して13.55%増加し,悪化した。しかし,政府予算案では,過去最高額が計上され,経済成長率は前年度比0.5ポイント増の6.8%となった。
外交では,インドとの関係においては,両国を結ぶ石油パイプラインの開通など経済的な結びつきが強くなる一方で,国境問題で対立が生じた。国境問題は解決をみることはなく,翌年に持ち越された。他方,中国との関係においては一帯一路政策下でのプロジェクトの絞り込みと実現可能性に注目が集まった。また与党NCPと中国共産党との間で兄弟関係が結ばれ,両国関係はより緊密になった。
政権与党と,インド国境沿いのタライ地域に居住するインド系ネパール人であるマデシとの関係について,大きく2つの動きがあった。1つは,2015年よりタライ地域の分離独立を掲げて独立マデシ同盟(AIM)を率いてきた活動家のラウトと政府が協定を結んだこと,もう1つは,ウペンドラ・ヤダブ副首相兼保健・人口大臣率いるマデシ系の連邦社会主義フォーラム(SSF-N)と前首相のバブラム・バッタライ率いるナヤシャクティ・ネパール(新しい力ネパール)が,社会主義党ネパール(Samajwadi[Socialist]Party Nepal:SPN)を結成したことである。2016年1月23日の第1次憲法改正後,マデシ系政党は,要件にネパール市民権を規定し,マデシ系が国家の要職に就くことを難しくしている憲法289条の修正や,タライ地域にある州の区画変更などを求めていた。
分離主義的な発言をした国家反逆の罪で2018年10月7日に逮捕・収監されていたマデシ活動家のラウトが,最高裁判所の命令により釈放された翌日の2019年3月8日にタパ内務大臣との協定に署名し,分離独立運動の放棄を表明した。両者の歩み寄りには,ラウトの兄でネパール科学技術アカデミーの科学者ジェイ・カントの貢献があったといわれる。その際交わされた11項目の協定では,国の主権と領土を尊重すること,民主的な方法を用いてマデシの課題を解決すること,逮捕収監されているAIM幹部を釈放すること,AIM幹部とリーダーは政党設立を含む憲法上すべての権利を享受できることなどが定められた。3月18日にラウトは合法的にマデシの権利保障の活動を行うためにネパール国民投票党(Janamat Party of Nepal)を設立し,同党は5月20日に選挙管理委員会に登録された。
一方,5月6日にはSPNが結成され,現在のネパールで3番目に大きな政党となった。バッタライ元首相が党の連邦評議会の長に,ヤダブ副首相兼保健・人口大臣が党の中央委員会委員長に就任することが決まった。政党統合の目的は,過去に政権を担ったネパール国民会議派(NC)が志向する資本主義路線とも,現政権のNCPが志向する共産主義とも一線を画す「繁栄した連邦社会主義」という第3の道を提案し,連邦民主主義共和国の制度を確立することにある。SPNは9月9日に,現行憲法への抗議を込めて9月20日の憲法記念日を「暗黒の日」としているマデシに配慮し,祝賀行事から距離をおくことを表明していたが,16日には,「祝うことも抗議することもともに行わない」という姿勢に転じた。他方,17日にSSF-Nと連携していたマデシ系の国家国民党ネパール(RJP-N)は,憲法記念日への抗議の意思を込めて「暗黒の日」とすることを表明し,マデシ系政党において対応の違いがみられた。
憲法改正を条件に2018年5月28日に入閣したヤダブ副首相兼保健・人口大臣(11月20日の内閣改造で副首相兼法務・司法・国会大臣に就任)は,2019年12月23日にオリ首相に憲法改正を提案したが拒否され,翌24日にモハンマド・イスティヤク・ライ都市開発大臣とともに辞職し抗議した。両大臣辞職の影響について,政治評論家のCKラルは,12月25日付のThe Kathmandu Postで「NCPが,連邦議会で3分の2近い議席を確保していること,両大臣の辞職直前の20日にRJP-Nと2020年の国民議会議員選挙での選挙協力協定を締結していることを鑑みるとその影響は小さい」と分析している。
チャンド派マオイストの反政府的な動き近年,チャンド派マオイストの反政府活動が活発化している。1996~2006年の内戦を率いたネパール共産党毛沢東主義派(マオイスト)(UCPN-M)から,2012年にモハン・バイディヤ率いるバイディヤ派が分離した。チャンド派マオイストは,バイディヤ派から2014年に分離したネトラ・ビクラム・チャンド率いるグループである。チャンド派は,現憲法に反対の立場をとり,農村小作農と都市労働者階級の支援による「新たな民衆の抵抗」(New People's Revolt:NPR)を戦術として「人々の議会」の設立を目指すとし,これまでに数々のテロ行為に関与してきた。彼らは,内戦時にマオイストの野営地から持ち出した武器を所持しているといわれる。当然武装解除にも応じていない。
2017年10月23日に国家安全保障会議は,11月26日と12月7日に予定された下院議会選挙に反対していた同派を安全上の脅威と位置付けた。11月25日の選挙前日には同派が関与したと思われる爆弾事件がタープレジュンで起きた。2018年には,2月24日のチトワンやダンクタ地区などにおけるネパールの通信会社Ncellの電波塔付近での爆弾事件,4月17日のビラトナガルのインドのフィールドオフィス(2018年8月1日に閉鎖)での爆弾事件,そして4月29日のアルンⅢ水力発電プロジェクト事務所付近での爆弾事件に関与したとされる。
2018年8月25日に政府は,チャンド派との話し合いのためにNCPのソム・プラサド・パンデイ議員をリーダーとするハイレベルの対話チームを結成し会談を試みたが,収監中のチャンド派幹部らの釈放を求める要求をのむことができずに失敗に終わった。2018年12月27日に対話チームは,「過激論者の違法行為に対して政府が行動を取るべき」という趣旨の報告書をオリ首相に提出した。
政府は,2019年3月29,30日の第2回投資サミット開催目前の3月12日に海外の投資家の安全保障上の懸念を払拭するために同派の活動を非合法とした。これに対して同派は報復の意思を表明した。3月25日にオリ首相は,チャンドに対し話し合いの席につき平和的に政治参加するよう促したが,彼らはそれに応じず,オリ首相は3月27日に同派に対し厳しい態度で臨むことを表明した。しかし,彼らの活動は終息をみせず,5月26日には首都カトマンドゥで4人が死亡し7人が負傷した爆発事件を起こした。本事件で死亡したのは同派のメンバーで,5月27日のゼネスト時に使用するための時限爆弾製作中に誤爆させてしまったとされる。5月27日のゼネストは,5月22日にボジプールの森林内で警備中の警察官を襲い,その際の銃撃戦で死亡したとされる23歳のティルタ・ラジ・ギミレの死に抗議するために企画されたものだった。同派は,ギミレは警察にとらえられた後に拷問を受け死亡したと主張していた。ゼネストは敢行され,複数の車が燃やされた。また,カトマンドゥ盆地外のマクワンプル,カスキ,ラウタハト,タナフン,カイラリ,バイタディで爆弾が回収されるなど,人々を恐怖に陥れた。5月27日にオリ首相は議会で「爆発に関与した犯人を連行するためにあらゆる手段を尽くす」と宣言し,強い姿勢をみせた。しかしながら,チャンド派の組織体制は中央,東部,中西部,西部地区の司令官のもとで構成されていること,カリコット,ロルパ,そして,チャンドの出身地であるカピルバストゥを拠点に拡大していること以外,詳細は知られておらず,政府の情報機関である全国情報部もチャンドの捕捉に苦労している。
9月11日にチャンドの息子のプラカシュが自身の出身校であるチトワン医療カレッジで学生の抗議活動を煽り,病院業務を妨害した罪で逮捕された。10月16日にはダンでチャンドの兄を含む21人のリーダーが逮捕されている。12月25日には,チャンド派の活動家がウダヤプルの住民から活動資金を脅し取っているというニュースが報じられた。
政府にとってはチャンド派との平和的な解決を果たし,暴力による秩序の混乱を避けることが引き続き課題となっている。
派閥争いによりネパール共産党下部組織の統合ならず2018年5月17日にネパール共産党統一マルクス・レーニン主義(CPN-UML)とネパール共産党毛沢東主義センター(CPN-MC)との統合によって誕生したNCPは,2018年中に実現できなかった両派下部組織の統合を2019年1月半ばまでに行うことを目標としていた。しかし,2019年に入っても下部組織の統合は2月,4月,7月,8月と幾度となく延期された。当初より,統合は選挙で勝利し国会で最大勢力を保持するための打算的なものであり,両党のイデオロギーの違いを埋めるものではないという指摘があった。それが顕著になったのが,ネパール暦の2月中旬から3月中旬にあたるファーグン(Falgun)1日(2019年は2月13日)に毎年CPN-MCが開催している人民戦争(People's War)記念日プログラムにオリ首相はじめCPN-UMLのリーダーが欠席したことであった。プスパ・カマル・ダハールNCP共同議長は,党として一致した見解があったとしているが,CPN-UMLにおいては反対意見もあり,両派の間の溝が浮き彫りになった。また,それは外交姿勢にも表れている。1月25日にダハールNCP共同議長がアメリカのベネズエラ介入を非難する声明を発表したことに対し,オリ首相は「うっかり口をすべらせてしまったこと」と退け,27日に外務省がアメリカを支持するプレスリリースを発表し,事態の収拾を図った。
さらに,CPN-UML出身者間の派閥争いも統合を遅らせる要因になった。4月21日,NCPは,ネパールにおける共産党誕生70周年を迎える4月22日にあわせて統合の終了を発表することを決定した。しかし,CPN-UML出身で,NCP常任委員会のメンバーであるガナシャム・ブサルを含む主要メンバーが,地区委員会のリーダー選定を含む重要な決定が適切な手続きを経ていなかったとし,統合宣言をボイコットした。党内でイデオロギー信奉者として知られるブサルは当初よりオリ,ダハールの2人を共同議長におくことに反対していた。また,地区レベルで,同じくCPN-UML出身で2009~2011年に首相を務めたマダブ・クマール・ネパールの派閥とオリ首相率いる派閥が主導権争いをしていることも統合遅延の一因とされている。同氏は統合により,オリ首相,ダハールNCP共同議長に次いで序列3位となり,その後,他の幹部の昇進に伴いさらに序列5位に降格した。8月21日,年功を無視するかたちで一部の人が複数のポストを独占する状況に不満を抱いていた同氏は,7項目の反対意見を党の最高機関に提出した。そのなかで強調された点は,「1人につき1つのポスト」であった。同氏は,オリ首相もNCP共同議長と首相のいずれかのポストを選択すべきであるとした。
12月13日から22日にかけて開催された4回目の常任委員会では,両NCP共同議長によって提出されたCPN-UMLとCPN-MCの下部組織の統合,補欠選挙の評価,党事務局による審議事項の承認,党の将来の行動計画のアセスメントを含む報告が議論された。下部組織の統合については,翌年1月8日に開催予定の中央委員会の会合で行うことが決まった。また,それに先駆けて,当局と各部門が統合に向けた作業を行うことについて合意された。
しかしながら,下部組織統合の遅れは,NCPの支持率には影響していないようだ。NCPは,11月30日に実施された国会,州議会,区議会(ward)の計52議席を争った補欠選挙で6割近くの議席を獲得している。
内閣改造2019年11月20日に内閣が再編され,翌21日に新大臣の宣誓式が行われた。オリ首相主導のもと,10省で11大臣の入れ替えが実施された。具体的には,ウペンドラ・ヤダブ副首相兼保健・人口大臣が副首相兼法務・司法・国会大臣に,バヌ・バクタ・ダカルが保健・人口大臣に,リデシュ・トリパティが連邦制度・総務大臣に,レク・ラジ・バッタが産業・商業・供給大臣に,ラメシュワール・ライ・ヤダブが労働・雇用・社会保障大臣に,パルバト・グルンが女性・子供・高齢者大臣に,ガナシャム・ブサルが農業・畜産開発大臣に,バサンタ・クマール・ネンバンが公共事業・交通大臣に新しく任命された。同様に,国務大臣として,モティラル・ドゥガートが産業・商業・供給大臣,ナワラジ・ラワトが保健・人口大臣,ランビール・マナンダールが都市開発大臣に任命された。
メディアはこの内閣改造の背景について,2点あると報じている。第1に,オリ首相の健康問題に起因して党内部の求心力が低下したこと,第2に,2年間で大きな成果を上げることができなかったことである。オリ首相は2007年の腎臓移植後,健康管理のためしばしば海外渡航を余儀なくされていた。先述のようにNCP内の権力構造が不安定な状況にあって,オリ首相は側近を配置したという見方もある。また,2018年5月17日の統合前に結ばれた5項目の紳士協定(2019年5月31日にリークされマスコミが公表)によって首相の在任期間をダハールNCP共同議長と折半することになっていたが,今回の内閣改造を機にダハールNCP共同議長は党の特別議長(Excutive chairman)に就任することになり,本人もそれを了承している。
今回の内閣改造については批判的な意見が多い。とくに,ゴカルナ・ビスタ労働・雇用・社会保障省大臣の退任については,その妥当性が疑問視されている。ビスタ大臣は,任期中の2018年5月7日に海外雇用関連の需要に係る催告問い合わせ令(2018)(Foreign Employment Related Demand Letter Enquiry Directive[2018])を国会で通過させ,海外に労働者を派遣する業者による中間搾取を減らすために在外公館が管理にかかわるよう制度を整備した。また,2019年2月11日に海外雇用法の改正を行い,人材派遣業者の現金預金と銀行保証額をそれぞれ29倍と17倍に設定し不正業者の取り締まりを強化した。結果として,ネパールの人材派遣業者は約1200社から850社に減少した。また,同大臣は,両政府関係者や人材派遣業者が労働者に法外な手数料を課していたネパール・マレーシア間の労働派遣を2018年5月に中止し,2018年10月29日に同一労働同一賃金,労働者の渡航費用のゼロコスト化を担保した両国間の労働協定締結に尽力した。海外出稼ぎ労働者の待遇改善に尽力したことで評価を得ていた同大臣の交代については,利益を奪われた人材派遣業界の圧力にオリ首相が屈したとの批判が出ている。
政府がネパール歴2076年ジェト(2019年5/6月)に発表した経済白書(2018/19)によれば,2018/19年度の経済成長率(基本価格ベース)は推計で6.8%とされている。2017/18年度の6.3%に対し0.5ポイント上昇した。これは,良好な天候,灌漑設備の向上,種子や化学肥料の入手改善による農業セクターの生産増大,電力の安定供給,インフラストラクチャーの整備による非農業部門での生産性の向上,観光客の増加,建築材料の輸入増加による国内の建築資材の増産によるものだと分析されている。
当該年度の第一次産業がGDPに占める割合は27.6%(前年度比1.1ポイント減),第二次産業が14.6%(前年度比0.3ポイント増),第三次産業が57.8%(前年度比0.8ポイント増)と見積もられている。
対外貿易収支については,貿易赤字を縮小させるためにネパール政府が採用した輸入を抑え輸出を増やす「両刀の戦略」が功を奏し,当初8カ月の貿易状況は改善をみせた。しかし最終的には,貿易に占める輸出の割合は2008/09年度の19.2%に対し6.1%になり,10年前の3分の1にまで減少した。輸出額を輸入額で除した輸出入比率は,2008/09年度の23.8%に対し2017/18年度には6.6%まで減少した。最近5年間の輸入の平均増加率は18.0%となったが,輸出のそれはわずか2.1%であった。税関事務所の国際貿易統計によれば,2018年7月中旬から2019年7月中旬の貿易赤字は前年度と比較し13.55%増の1兆3214億2000万ルピーに上った。産業・商業・供給省は,増え続ける貿易赤字を少しでも減らすため,輸入品項目のチェックに着手した。
2018/19年度より,連邦主義の完全な実施を目的として財政構造が変更となり,連邦,州,地方自治体の各レベルで予算が公式化されることになった。しかし,初年度ということもあり,州ならびに地方自治体の歳入と歳出の詳細を組み込んだシステムは完成していない。2018/19年度において,3月半ばまでの連邦政府の総支出は前年度同期に比べて2.2%増大し,支出は連邦政府の収入4546億1000万ルピーを上回る5409億ルピーに達した。連邦政府の財政赤字は12.1%増大し,前年度同期の769億5000万ルピーを上回る862億9000万ルピーとなった。
政府が2019年5月29日に公表した政府予算案(Budget Speech of Fiscal Year 2019/20)によれば,2019/20年度予算として1兆5329億ルピーが計上された。これは,前年度当初予算比16.5%増で過去最高になる。ユブラジ・カティワダ財務大臣は,本予算を8.5%の経済成長につなげるとしている。財源の内訳は,64.0%が税・税外収入であり,23.3%は外国からの援助資金(3.8%が贈与,19.5%が貸付),12.7%は国内借入である。歳出は経済関係が最も多く35.3%,一般公共サービスが29.9%,教育10.7%,国防・治安関係8.4%である。
日本のネパール人労働者受け入れの動き2018年12月8日,日本では,外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法が成立し2019年4月1日に施行された。改正出入国管理法によって,政府が指定した業種で一定の能力が認められる外国人労働者に対し,新たな在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」が付与されることになった。ネパールでは,2018年4月4日にビスタ大臣が小川正史駐ネパール大使と会談し韓国の雇用許可システム(EPS)を参考にしたネパール人労働者の受け入れの検討を要請するなど,かねてより日本のネパール人労働者受け入れに関心を寄せていた。
2019年1月3日に政府は,外国人労働者雇用の提案を日本側から受け取った。1月9日にプラディープ・クマール・ギャワリ外務大臣はインド経由で来訪した河野太郎外務大臣と会談を行い,労働協定ならびに関連する諸問題への対応について意見を交わした。1月16日には,外務省および法務省からの各2人で構成された日本政府代表団が労働協定について広く協議するために来訪した。会合では,ネパール人労働者の割り当て数,労働者の監督を政府が行うのか民間企業が行うのかなどについて意見を交わしたのではないかと報じられている。
3月25日,西郷正道駐ネパール大使は,ラム・プラサド・ギミレ労働・雇用・社会保障省次官代理と会談し,在留資格「特定技能」を有する外国人材に関する制度の適正な運用に向けて情報連携を進めていくことで合意し,協力覚書を締結した。この覚書は,両国が特定技能外国人の円滑かつ適正な送り出しや受け入れを行うことを目指し,現在問題となっている悪質な仲介業者などを排除し,技能を有する外国人の日本での就労を可能にすることを目的とする。ネパール政府側からは,詐欺まがいの機関を排除するために,両国政府間の求人メカニズムの改善に関する提案も行われた。
5月には,労働者の受け入れに関心をもつ日本の農業部門,清掃関連部門の企業数社から政府に問い合わせがあったが,語学や技能試験の実施方法や労働者の募集,就職までのプロセスに係る受け入れ体制についての最終的な協議が残っている。なおネパールの新聞は「日本が,労働力不足を補うために特定のスキルと専門知識をもつブルーカラー外国人労働者に就労ビザを発給する」と「ブルーカラー労働者」という表現を用いて報じている点が興味深い(The Kathmandu Post,2018年12月26日)。また,外国人技能実習制度と異なることや採用には14業種のいずれかの技能のほかに日本語熟練度テスト(JLPT)の「N4」程度の語学力が求められるとも報じており(The Kathmandu Post,2019年3月25日),従来の主要出稼ぎ先である湾岸諸国やマレーシアとどのように競合するのか注目される。
災害,疾病:鳥インフルエンザ,デング熱2018/19年度の経済白書によれば,2015年4月25日に発生した震災の復興は,住宅,公共施設,歴史的遺産を中心に順調に進展している。住宅復興補助金については,2019年3月半ばまでに対象として認定された被災者の92%が補助金の受け取り手続きを行った。これら復興の間接的な経済効果として,建設機材の需要喚起,雇用機会の増加が挙げられるという。
疾病・伝染病では,2019年には鳥インフルエンザ(H5N1)による死者の発生,デング熱の流行などがみられた。5月には,鳥インフルエンザに感染した20代の男性が死亡し,ネパールで最初の鳥インフルエンザによる死者となった。また保健・人口省の疫学・疾病制御部の発表によれば,8月時点で過去3カ月間にデング熱に感染した人の数は1537人に上った。感染はカルナリを除く全土でみられたが,およそ5分の1に当たる感染者を出したのはスンサリであった。
インドとの関係は,両国を結ぶ石油パイプラインの開通など,経済協力において良好な関係を維持する一方で,政治面では,領土をめぐる対立を抱えた。
9月10日にネパールのアマレクガンジとインドのバラウニ石油精製所を結ぶ石油パイプラインの運用が開始された。これは南アジア初の越境パイプラインとなる。運用開始前に,オリ首相とモディ印首相はテレビ会議を行い,同時にスイッチを押した。同事業は,1995年にインド石油公社によって提案され,2015年8月に両国間の合意がなされた。直径10インチ,全長約69キロメートル(インド側32.7キロメートル,ネパール側37.2キロメートル)のパイプラインは年間200万トンの輸送能力をもち,1日15時間の操業で1日4000キロリットルの石油を送ることができる。総事業費35億インド・ルピーのうち7億5000万ルピーはネパール石油公社が負担し,残りはインドの無償資金援助による。これによりネパールの石油輸送コストを減らすことが期待できるほか,環境にもやさしいと期待されている。オリ首相は「パイプラインの開通によりガソリンとディーゼルオイルの価格を1リットル当たり2ルピー下げることができる」と発表した。パイプラインの開通により経済面でのインドへの依存は強まることになるが,オリ首相は「両国の貿易とインフラストラクチャーの接続性の向上の好例になる」と肯定的に評価している。
一方,政治面では,インドが発表した新政治地図が波紋を呼び,政治家,メディア関係者,学生など多方面からの抗議を引き起こした(図1)。11月6日ネパール政府は,11月2日にインド政府が公表した新政治地図のカラパニの境界線をめぐり「カラパニはネパールの領土である」というプレスリリースを発表した。オリ首相は,11月17日に開催されたNCPの姉妹団体の会議で「一歩も譲歩しない」としながらも,両国の対話を通して解決を目指す姿勢を示した。ネパール政府は,11月21日に外交文書でインドに対し「双方の合意に基づき境界が確認される必要がある。未解決の問題に対し一方的な決定は容認されない」と抗議した。
カラパニは,カイラシュ・マーナサローワル・ルートの高度3600メートルに位置し,インドのウッタラーカンド州とネパールのスドゥールパシュチム州に接し,1962年の印中戦争以来,同地区はインドのインド・チベット国境警備隊によって管理されている。しかし,ネパールは,領土の西部はカーリー川で占められており同河川はネパール領に属すと主張する。一方インドは,同地域東部の分水線を強調し同国の領土と主張している。1816年にネパールとイギリス東インド会社の間で締結されたスガウリ条約では,カーリー川は,インドとネパールの西の境界に位置付けられていたものの,分水線については言及されていなかった。また,イギリスの測量士が地図上でカーリー川の源流を異なる場所に描画していたという歴史的経緯もあった。1981年に両国は領土問題をめぐるハイレベルの技術委員会を結成したが,解決をまたず2007年に委員会の任期は終了した。2014年に大臣レベルのネパール・インド合同委員会の第3回会合が開催され,国境紛争解決のために共同のパネルを形成することに合意したが進捗はなかった。
ネパール政府は,11月21日の外交文書のなかで協議の場を設けるようインド側に提案をした。しかし,インドが12月19日に反応を示した際には,ネパール側の提案した会合日程をすでに過ぎており,年内に会合が開催されることはなかった。とはいえ,インドは外交ルートを通して問題の解決をはかる準備があることを示しており,両国の協議は翌年に持ち越されることになった。
一帯一路イニシアティブ下で強まる中国との関係中国との関係は,NCPと中国共産党との「兄弟関係」の締結に象徴されるように良好であった。9月24日にオリ,ダハールNCP共同議長の立ち合いのもと,マダブ・クマール・ネパールNCP外務部門チーフと中国共産党中央対外連絡部宋濤部長が「兄弟関係」に関する了解覚書に署名した。
一帯一路イニシアティブ(BRI)下でのインフラストラクチャー整備の進展もみられた。2017年5月12日に署名されたBRI下での協力に関する了解覚書の有効期限を2020年5月12日に迎えることを前に政府は実施に向けて動き始めた。両者の合意は第5.3条に基づき自動的に3年更新される。2018年6月19~24日のオリ首相の訪中後,中国側はBRIに関連してネパール側がリスト化した35のプロジェクトに対し,優先順位をつけ絞り込むよう助言した。それを受け,ネパール側で協議が続けられた結果,2019年1月にリストを改訂し,9つに絞りこまれた。具体的には,4つの道路(ラスワガディ=カトマンドゥ道路,キマタンタ=ヒレ道路,トカ=ビドゥール道路,ディパヤルから中国国境までの道路),2つの水力発電所(タモール水力発電所[762MW],プコット・カルナリ水力発電所[426MW]),吉隆=カトマンドゥ越境鉄道,ガルッチ=ラスワガディ=吉隆400kV越境送電線,故マダン・バンダリ(かつての共産党リーダーの名)技術研究所の建設である。
費用は総額110億ドルに上る。これらの提案は中国側に伝えられ,第2回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラム(2019年4月25~27日)参加のために訪中していたバンダリ大統領の滞在期間中(4月24日から9日間)に中国側の合意が得られると期待された。しかし,実際に合意には至らなかった。ネパール側はインド依存を脱し欧州市場への接続を可能にする越境鉄道の整備を要求する一方,中国はブディガンダキとタモールの2つの水力発電プロジェクトを重視し,両国の思惑が一致していない。
中国側からプロジェクトや資金の拠出方式についての具体的な説明はなされていなかったが,2019年5月23日にカトマンドゥで開催された特別なメディアブリーフィングにおける侯艶琪・駐ネパール大使の発言でその一端が明らかにされた。侯大使は,越境鉄道は地形,技術的側面において高コストであり容易な事業ではないこと,BRIプロジェクトは,借款事業であり,ネパール側が要求している政府開発援助やソフト・ローンによって実施することはできず,両国の対等なパートナーシップに基づき実施されるものという中国側の認識を伝えた。
BRIにネパールが参加することに対し,アメリカのジョー・フェルター南アジアおよび東南アジア担当国防次官補代理,デイビッド・J・ランツ国防省南・中央アジア局次官補代理はそれぞれ2月25日と5月14日に「BRIは中国のためではなく,ネパールのために計画されるべきだ」という発言をしていた。一方オリ首相は,借款ではなく,外国からの直接投資を模索するようになったといわれる。
9月8日,ギャワリ外務大臣の招待により,中国の王毅外務大臣がパキスタンへの外遊の帰路に来訪した。3日間の滞在中に,バンダリ大統領,オリ首相,ギャワリ外務大臣,ダハールNCP共同議長,シェール・バハドゥール・デウバNC党首とそれぞれ会談した。そして,両国は相互協力とパートナーシップに関する3つの協定に署名した。9月9日の会合時に,ネパール側は越境鉄道について触れ,中国の補助のもとに吉隆=カトマンドゥ越境鉄道の実現可能性調査を実施するように改めて要望した。王外務大臣は,「ネパール政府の優先順位については十分に理解しており,地理的困難さにひるむことなく越境鉄道に関与したい」と述べたという。なお予備的な実現可能性調査については2018年11~12月に実施され,報告書が中国の国家鉄路局からネパール政府に提出されている。しかし,これまで4回実施された会合では,今回の実現可能性調査費用の負担について合意がなされていない。
10月12~13日,バンダリ大統領の招待により習近平国家主席が来訪した。両首脳は,越境鉄道を含むさまざまな領域における二国間協力を強化し支援することを改めて確認した。バンダリ大統領は,晩餐会で「ネパールの人々が吉隆=カトマンドゥ鉄道の操業を楽しみにしている」と述べた。そして,滞在2日目となる13日に全長75キロメートルに及ぶ吉隆=カトマンドゥ越境鉄道プロジェクトの実現可能性調査に関する了解覚書が,バンダリ大統領と習国家主席立ちあいのもと公共事業・交通省と中国の交通運輸部との間で取り交わされた。
そして11月25日,10月13日の習主席による「鉄道敷設を促進させる」という決定を受け,23人の中国代表団が来訪した。翌26日にネパールの公共事業・交通省と中国の国家鉄路局は,それぞれ役割を決め,中国側が航空マッピングと地理的研究を,ネパール側が環境アセスメントリポートの作成と中国チームの安全確保を担当することになった。上記に加え,中国代表団は,カトマンドゥ=ポカラ=ルンビニ鉄道の実現可能性調査の実施方法についても,ディベンドラ・カルキ公共事業・交通省秘書官と協議した。同鉄道敷設は,BRI下でのヒマラヤ越境交通網整備の一環として位置付けられる。6月の第3週に開催された第4回ネパール・中国鉄道技術交換・交渉の場で中国側役員が実現可能性調査に関心を示し,中国のコンサルタント会社2社が作成した技術報告書が共有された。実現可能性調査は2020年より順次開始される予定である。これらの動きによりネパールでは越境鉄道敷設の夢が再燃している。
中国への配慮:ダライ・ラマ報道の規制バンダリ大統領が中国公式訪問期間の4月27日,退院してダラムシャラに戻ったダライ・ラマについての電子ニュースを翻訳し,記事にしようとしたNational News Agency Nepal(RSS)に所属する記者3人が捜査された。ゴクル・プラサド・バスコタ通信・情報・技術省大臣は捜査を命じた理由について,「チベットは中国にとってデリケートな問題であり,大統領の訪中時にメディアがそれを報じることは,一つの中国を支持するネパールの方針に反する」と述べた。5月12日付The Kathmandu Postによれば,朝刊の紙面が決定した27日の夜に編集デスクの目にとまり記事は直ちに削除されることになったが,内通者によりバスコタ大臣の耳に入ることになったという。中国側の圧力もあったようだ。「鋭い記者」として知られていたジャーナリスト出身のバスコタ大臣が,メディアを規制する側に立つのは皮肉なことである。
アメリカとの関係アメリカとの関係については,良好とは言いがたい。こうした動きは,中国に配慮したものという見方がある。
5月19日にランディ・ベリー駐ネパールアメリカ大使が,「外交の中心的な機能は,人々とコネクションをつくることだ」とし,20日より大使館の公式TwitterとFacebookで「『大使とのおしゃべり』(Guff Gaff)というビデオシリーズで意見交換を開始する」と発表した。これは,400万人近いネパールのフォロワーから毎週出された質問に大使が応答するシリーズである。この発表に対し,各方面から「外交官の規律を逸脱している」「本件を認めれば,デリケートな外交問題についての大使の自由な発言を許し,社会を混乱させる」など,懸念が出された。ギャワリ外務大臣も「大使がソーシャルメディア上で市民と対話するような前例はなく,不要な議論を引き起こすおそれがある」と自制を求めた。また,マドゥ・ラマン・アチャリャ前外相は,「政府が十分に関与しなければ,大使によるネパールでの外交活動は肥大化する」とTwitterで反応した。
9月11日にダハールNCP共同議長が来訪中の王毅外務大臣との会談において「アメリカ主導の『自由で開かれたインド太平洋戦略』が中国をターゲットとするものならば,ネパールは容認しない」という趣旨の発言をしたと中国で報じられた。これを受け,9月12日,ベリー駐ネパールアメリカ大使は,ネパール側の真意を探るためにシャンカール・ダス・バイラギ外務秘書官と面会したが,非公開の会合のため,詳報されていない。ネパールは2017年9月14日にアメリカのミレニアム挑戦公社から「ネパールの経済成長を促進し,貧困を減らす5億ドルのコンパクト」補助金を受けとることに署名している。5億ドルは,これまでネパールが受け取った補助金の最高額である。ネパールがこれに1億3000万ドルを追加し,ヘタウダ=ダマウリ=ブトワル間の400kVAの送電線ならびにイタハリ=カーカルビッタ間とポカラ=ブトワル間350キロメートルの高速道路を整備することが計画され,議会の承認を待っていた。しかし,補助金の受領によりネパールが「自由で開かれたインド太平洋戦略」に参加したとみなされ,中国との関係を悪化させるという懸念から,NCP内では承認に反対する声がある。他方,オリ首相や野党NCは早急に承認されることを求めている。中国との結びつきが増すなかで,今後のアメリカとの関係進展が注目される。
内政においては,2020年1月23日には任期満了を迎える19人の国民議会議員選挙が控えており,NCP下部組織の統合による与党の基盤強化が課題になる。11月の補欠選挙の結果をみるかぎり,統合の遅れによるNCPへの支持率の低下はみられない。しかし,2020年2月15日に就任2年目を迎えるオリ内閣が目にみえる成果を問われることは必至であり,与党内部の安定は欠かせない。また,マデシ活動家のラウトが政治のメインストリームに合流し反政府活動が沈静化した現在だからこそ,憲法改正の着地点をみつけることが課題となる。
経済においては,過去最高額に達した2019年度予算が政府のねらいどおりに経済成長を後押しするものになるのかが注目される。貿易赤字の縮小については,世界銀行が指摘するように復興事業やインフラストラクチャー整備などで使用する建築資材の輸入代替工業化が鍵を握るだろう。
外交においては,インドとの領土問題を抱えるなかで,中国との関係はより強化されると予想できる。しかし中国との関係強化は同時に,アメリカとの距離を広げるものになる。世界市場への接続性を高めるという点では,中国一国への依存はリスクが高いため,インド,アメリカ両国との良好な関係をいかに維持するかが重要な課題となる。また,BRI事業下での鉄道敷設の駆け引きがネパールの思惑どおりに運ぶのかも注目に値する。
(福岡県立大学准教授)
1月 | |
4日 | ネパール政府,2016年のインドの高額紙幣廃止に伴い使用不可になった紙幣の両替について協議を開始。ネパールではインドルピーが広く使用され,現在もかなりの額に上る廃止紙幣が未交換のまま国内に残る。 |
9日 | プラディープ・クマール・ギャワリ外務大臣,インド経由で来訪した河野太郎外務大臣と会談。労働協定ならびに関連する諸問題の対応について意見を交換。 |
10日 | オリ首相,河野外務大臣の表敬訪問を受ける。 |
16日 | 外務省および法務省からの各2人で構成された日本政府代表団が労働協定について広く協議するために来訪。 |
16日 | 調査報道のためのセンター(Centre for Investigative Journalism[CIJ]Nepal),国際調査報道ジャーナリスト連合との共同作業で作成した『Nepal Leaks 2019: Illegal Wealth Watch』報告書を発表。50人以上のネパール人が秘密裏にオフショアカンパニーに投資していたことが判明。政治家,事業家,海外在住のネパール人,医師,ホテルオーナーが含まれる。過去20年間のネパールへの海外直接投資の約45%がタックスヘイブン経由だったことも判明。 |
20日 | 中央銀行,ネパールの金融機関,旅行者,銀行によるインドの200,500,2000ルピーの3紙幣の所持,持ち出し,売買を禁止する通達を出す。 |
22日 | 野党の強い反対により,全国医学教育法案が否決。前年から抗議活動が発生していた。 |
25日 | 与党,全国医学法案を強行に承認。反対した医師会が27日より順次ストライキを実施。 |
25日 | プスパ・カマル・ダハール・ネパール共産党(NCP)共同議長,アメリカのベネズエラ共和国への干渉を批判。 |
28日 | 中国政府,2013年6月にリングロード拡張工事の第1フェーズとして建設が開始され,完成した10.5kmのカルナリ=コテスワール拡張道路をネパール側に引き渡す。支援総額は51億3000万ルピー。 |
29日 | 国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル,腐敗指数を発表。ネパールは順位を2つ落とし124位に。 |
2月 | |
4日 | 権力濫用調査委員会,3億1521万7675ルピー相当の横領事件の関係者としてバドリ・プラサド・ニュウパネ前女性・子供・社会福祉大臣を含む14人を告発。 |
6日 | 最高裁判所,国内第2位の規模をもつ通信会社Ncellおよび親会社のAxiataにキャピタルゲイン税220億ルピーの支払を命令。 |
8日 | ネトラ・ビクラム・チャンド率いるチャンド派マオイスト,アルンIII水力発電所建設現場近くで3つの即席爆破装置を爆発させる。同派の呼びかけたゼネストにより教育機関が封鎖,数百万人の学生に影響。 |
22日 | チャンド派マオイスト,Ncellの脱税行為に抗議しラリトプールのナックにある本社のゲート近くで爆弾を爆発させ1人が死亡,2人が負傷。 |
25日 | 来訪中のアメリカのジョー・フェルター南アジアおよび東南アジア担当米国防次官補代理,ネパールでの中国による一帯一路の推進について「中国の投資は,中国ではなくネパールのためになるように計画されるべき」と発言。 |
27日 | ヘリコプター事故でラビンドラ・アディカリ文化・観光・民間航空大臣を含む7人が死亡。 |
3月 | |
7日 | チャンド派マオイスト,収監中の幹部の無条件釈放を求めロルパ,ダン,ルクム,ピュータン,サリャーンの5郡でゼネストを実施。 |
8日 | チャンド派マオイスト,カトマンドゥ・バスンダラのネパール外国職業紹介斡旋協会会長宅にIED爆弾を仕掛ける。車と建物に破損が生じたものの死傷者なし。 |
17日 | トリブバン空港関係者,議会の特別監査委員会にテナント料を支払っていない約200の航空会社,売店,レストランなどのリストを提出。未払いは総額24億710万ルピーに上る。 |
25日 | 西郷正道駐ネパール大使,ラム・プラサド・ギミレ労働・雇用・社会保障省次官代理と会談。「在留資格『特定技能』を有する外国人材に関する制度の適正な実施に向けた情報連携に関する協力覚書」に署名。 |
29日 | 政府主催の投資サミット開催(~30日)。39カ国から700人を超える使節団や投資家が参加(中国人265人,インド人120人)。 |
4月 | |
2日 | ネパール警察,自殺,麻薬,銀行詐欺,交通事故,レイプが増加傾向にあると発表。 |
3日 | アジア開発銀行,ネパールの2019年度の経済成長率を6.2%に修正。 |
8日 | 世界銀行リポート,2018年のネパール人移民労働者から家族への送金額は81億ドルに上ったと報告。送金は出発数の減少にもかかわらず1年前と比べて16.39%増加。 |
24日 | 早朝にダディンを震源とするマグニチュード5.2と4.3の2つの連続した地震発生。ネパール地震研究センター(Nepal Seismological Centre)は2015年4月25日に発生した大地震の余震と発表。 |
24日 | ビディヤ・デビ・バンダリ大統領,第2回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラム参加のため,9日間の日程で訪中。 |
27日 | ダライ・ラマの近況を記事にしようとしたNational News Agency Nepal(RSS)所属の記者3人が捜査される。 |
29日 | バンダリ大統領,習主席と会談。輸送と交通に関する議定書のほかに6つの文書を締結。ネパールから中国の7つの港へのアクセスを許可。 |
5月 | |
2日 | 紛争被害者が移行期正義法(Transitional Justice Act)を改正するように政府に圧力。 |
6日 | バブラム・バッタライ元首相とウペンドラ・ヤダブ副首相兼保健・人口大臣,新党社会主義党ネパール(SPN)を結成。 |
21日 | 国連人権委員会,レイプと性的暴行に係る法律を適用し,紛争時性暴力の被害者の公正を実現し補償を行う際の障害を取り除くこと,10年に及ぶ紛争下での戦時性犯罪を調査することをネパールに勧告。 |
26日 | チャンド派マオイスト,簡易爆弾を起爆させ,27日のゼネストを強行。全国的に教育機関,交通機関に影響を及ぼす。死傷者はなし。 |
29日 | 政府予算案発表。2019/20年度予算として1兆5329億ルピーを計上。 |
6月 | |
1日 | SPN,憲法改正を政府に要求。 |
16日 | 7つの州が新年度予算を発表。総額約2700億ルピーの予算を計上。各州ともインフラストラクチャーと農業の開発を重視した予算配分。 |
17日 | 産業・商業・供給省,エナジー・ドリンクの輸入を禁止。 |
19日 | グティ法案に反対する市民数千人が,抗議集会を実施。2006年以降では最大規模となる。同法案は,相互扶助組織が管理する寺院や共有地(グティ)を国の管理下におくことを定めたもの。前日に国会で否決されたが,グティを有するネワール民族の反感は収まらず。 |
20日 | 金の価格が1トラ(12.5g)当たり6万4000ルピーに高騰。 |
7月 | |
1日 | 警察とチャンド派マオイストのグループ,サンクワサバ郡で交戦。死傷者なし。 |
15日 | 7月11日から降り続いた大雨による洪水被害が発生。全国で64人が死亡,31人が行方不明,32人が負傷。 |
16日 | アメリカと合意した5億ドルの補助金協定(2017年9月14日に署名)について,連邦議会での批准手続きを開始。アメリカが2004年に設立した二国間援助機関ミレニアム挑戦公社による「コンパクトプログラム」(総額6億3000万ドル)に充当される予定。投資誘致を目的として,エネルギー設備や輸送ネットワークを整備する。 |
17日 | NCPを構成する旧ネパール共産党統一マルクス・レーニン主義(CPN-UML)と旧ネパール共産党毛沢東主義センター(CPN-MC)の幹部,党の指導的地位を分割することに合意。 |
19日 | オリ首相,日本の京都アニメーションの放火事件に対し,お見舞いのメッセージを安倍晋三首相に伝達。 |
22日 | 国営企業ネパールテレコミュニケーション,インターネット・ユーザーが過去11年間で440万人増加し,総人口の約63%に達したと発表。 |
22日 | 日本政府,教育開発資金総額9億4560万ルピーをネパールに供与。 |
31日 | 2月27日にヘリコプター事故で死去したラビンドラ・アディカリ観光旅行民間航空大臣に代わり,ヨゲシュ・クマール・バッタライ(NCP)が新大臣に就任。 |
8月 | |
3日 | オリ首相,健康管理のためシンガポールを訪問(~12日)。 |
6日 | 警察,3人のチャンド派マオイストの活動家を逮捕。 |
13日 | 金銀ディーラーの協会連合によると,金の価格が1トラ(12.5g)当たり7万1000ルピーに急騰。 |
22日 | オリ首相,血漿分離治療のためシンガポールを訪問(~9月6日)。 |
29日 | ネパール航空,関西空港=カトマンドゥ間の直行便運航を再開。2007年より運休していた。 |
9月 | |
2日 | 駐日ネパール大使館とネパール航空およびネパール観光局,関西空港=カトマンドゥ直行便再開記念セミナーを東京都内で開催。鈴木憲和外務大臣政務官が出席。 |
8日 | 中国の王毅外務大臣来訪(~10日)。バンダリ大統領,オリ首相,ギャワリ外務大臣,ダハールNCP共同議長,シェール・バハドゥール・デウバ・ネパール会議派(NC)党首と会談。中国によるマナン郡での病院建設のための費用3億5000万ルピーの支援,緊急時用防水布5000セットの提供,ボランティアの教員派遣の3つの二国間協定に署名。 |
10日 | ネパール=インド間の石油パイプラインが開通。両国の首相がテレビ会議を行ったのちに,同時に開通のスイッチを押した。 |
11日 | ランディ・ベリー駐ネパール・アメリカ大使が,ダハールNCP共同議長が王毅外務大臣との会談で「アメリカ主導の自由で開かれたインド洋・西太平洋に反対する」旨発言したことに関し,外務省に真意を明らかにするよう要請。 |
12日 | ベリー駐ネパール・アメリカ大使,ネパール側の真意を探るためにシャンカール・ダス・バイラギ外務秘書官と面会。 |
16日 | ネパール政府,国連安全保障理事会決議第2397号に基づき北朝鮮籍企業に対し,10月中に退去するよう命令。 |
24日 | NCPと中国共産党,「兄弟関係」を結ぶことで合意。マダブ・クマール・ネパールNCP外務部門チーフと中国共産党中央対外連絡部部長宋濤が了解覚書に署名。 |
10月 | |
12日 | 中国の習国家主席,来訪(~13日)。吉隆=カトマンドゥ越境鉄道プロジェクトの実現可能性調査に関する了解覚書など,20の協定を締結。 |
16日 | ダンでチャンドの兄を含む21人のチャンド派マオイストの幹部らが逮捕される。 |
21日 | 訪日中のバンダリ大統領,安倍晋三首相と会談。ラム・バハドゥル・タパ内務大臣,西村明宏内閣官房副長官らが同席。 |
11月 | |
6日 | 政府,11月2日にインド政府により発表された新政治地図に対し,ネパールが主権を主張するカラパニが直轄領として含まれているとして抗議。 |
7日 | 駐ネパール・インド大使館前で学生らが抗議活動を実施。同日,会見を行ったインド政府のスポークスマンは,地図に変更はなく,カラパニはインド国境内にあったと主張。 |
17日 | 駐ネパール・インド大使館前で新地図に対し抗議活動を行っていたNC系のネパール学生組合の幹部を,警察が逮捕。 |
20日 | オリ首相,内閣を改造。翌21日,内閣の新メンバーが宣誓式に参加。 |
21日 | ネパール政府,カラパニの境界線問題でインド政府に外交文書を送付。「双方の合意に基づき境界が確認される必要があり,未解決の問題に対し一方的な決定は容認されない」と抗議。 |
25日 | 中国政府は「チベット・ネパール見本市2019」をカトマンドゥで開催(~28日)。ネパールとの貿易と経済関係の促進を目的とする。 |
25日 | 中国政府代表団,来訪。吉隆=カトマンドゥ越境鉄道敷設に関する習国家主席の10月13日の決定について調整を開始。 |
26日 | 吉隆=カトマンドゥ越境鉄道敷設の実現可能性調査に関する協定を締結。 |
26日 | 中国代表団,カトマンドゥ=ポカラ=ルンビニ鉄道敷設の実現可能性調査の方法について,ディベンドラ・カルキ公共事業・交通省秘書官と協議。 |
30日 | 37郡で代表議会,州議会,市長,村議会の議長・副議長,区議会の全52の空席を埋めるための補欠選挙を実施。NCPは計30の議席を獲得。2月のアディカリ文化・観光・民間航空大臣の死去にともなう代表議会の空席には,同大臣の妻でNCP所属のビディヤ・バッタライが当選。 |
12月 | |
2日 | 中国とネパール警察,両国国境の吉隆出入国検査場で合同パトロールを実施。同検査場は,両国間の陸路における最大規模の出入国検査場でチベット自治区内では唯一年間を通じて開放されている国境貿易ルートである。 |
5日 | 2005年に法的に禁止され,違反者には3カ月間の拘留と罰金3000ルピーが科せられることになっていたチャウパディ(穢れを理由に生理中の女性を隔離する慣習)を強制した罪で,初の逮捕者。逮捕者の義理の妹は,煙が充満した隔離小屋で死亡。 |
12日 | 政府は,国民議会18議席に関する選挙を2020年1月23日に実施すると発表。現行法では全59議席中19議席が任期満了を迎える2020年3月3日の35日前までに選挙を実施しなければならない。残り1議席は閣議の推薦により任命される。 |
19日 | ネパール政府,カラパニの境界線問題に係る外交文書の返信をインド政府より受領。 |
(注)*は女性。氏名の後のカッコ内は所属政党。NCP: ネパール共産党,TMDP:タライ・マデシ民主党 Tarai Madhes Democratic Party。1)2020年2月20日に汚職疑惑を報じられ辞任。
(出所)ネパール政府ウェブサイト(2020年1月26日取得。 https://www.opmcm.gov.np/en/cabinet/),The Rising Nepal(https://risingnepaldaily.com/mustread/pm-realignscabinet-of-ministers)参照。
(注)1)推計値。
(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2018/19, Macroeconomic Indicators, 同 Annex 4.2 National Consumer Price Inflation.
(注)1)在庫変動が残留して引き出されるので統計上の誤差/エラーが含まれる。2018/19年度の推計による。
(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2018/19, Annex 1.6: GDP by Expenditure Method.
(注)1)推計値。
(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2018/19, Annex 1.5: Gross Value Added by Industrial Classification(At base year prices of 2000/01).
(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2018/19, Annex 6.1: Status of Foreign Trade(Rs in ten Million).
(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2018/19, Table 6.11: Balance of Payment Summary(Rs in ten Million).
(注)1)実際の予算額。2)修正した推計値。3)推計値。
(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, 29 May 2019, Budget Speech of Fiscal Year 2019/20, Budget Summary Annex-1.