Yearbook of Asian Affairs
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2021 Volume 2021 Pages 219-238

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2020年のカンボジア

概 況

2020年のカンボジアでは,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を封じ込めるべく,学校の閉鎖や正月連休の延期,また国境での隔離措置などを徹底し,その拡大を最小限にとどめた。一方,非常事態法を制定するなど強権的な体制の強化が粛々と進められた。

経済面では,人権状況悪化を理由とした欧州連合(EU)による特恵関税「武器以外すべて」(Everything But Arms:EBA)の一部適用取りやめ,新型コロナウイルス感染症の世界的拡大,そして10月の大規模洪水発生の影響などにより,大きな困難に直面した。EUとの貿易は大きく後退したが,一方でアメリカとの貿易は拡大した。また,経済低迷の影響を大きく受けた労働者や貧困層に対しては,現金支給などの支援プログラムが実施された。

対外関係においては,中国と連携して新型コロナウイルスに対処した。隣国タイとベトナムとは,国境での人の移動を制限しつつ物流は途絶えさせない努力が続けられた。

国内政治

新型コロナウイルス感染症拡大を阻止

1年を通じてカンボジアは新型コロナウイルス感染症の封じ込めに成功した。最初の感染者は,1月27日にプレアシハヌーク州で確認された。患者は武漢から訪れた中国人観光客であった。ただし,国内での感染拡大はみられなかったことから,初期の段階でフン・セン首相は「新型コロナウイルスを恐れない」という姿勢をとっていた。2月,感染疑いの乗客を含む2257人を乗せたクルーズ船ウエステルダム号は日本やフィリピンなどで入港を拒否されていたところ,フン・セン首相が人道上の必要性を認め,シハヌークビル港への寄港が決まった。13日に同クルーズ船が到着し,全員の陰性が確認されると,乗客たちは空路で帰国した。なお,1人のアメリカ人客が,乗り継ぎで立ち寄ったマレーシアにて陽性反応が出たとの報道もあったが,最終的に陰性であったことが確認されている。

3月になると,政府は予防的な措置を強化するようになった。8日,国内2例目の感染者がシアムリアプで確認されたことを受け,シアムリアプ州の学校を閉鎖した。また,国外での感染者増加を受けて,17日以降,欧米やイランからの入国を禁止した。その後,全面的に学校や映画館,カラオケバーなどが閉鎖された。学校閉鎖に伴ってオンライン授業への転換は早期に行われたが,それに対応できる環境が限られていることから,教育省は国営テレビに教育専門の放送を用意した。4月7日,感染拡大を防ぐためにフン・セン首相は9~16日のクメール正月の延期を決定し,プノンペンなどで働く労働者たちに同連休中に帰省しないよう求めた。やむを得ず帰省した労働者たちについては,居住地に戻った後に14日間の隔離措置が課せられた。延期されたクメール正月の連休は8月17~21日に実施されたが,10月31日~11月1日に開催予定だった水祭りは中止された。学校については,8月まで閉鎖されたのち,9月から9年生および12年生から限定的に再開(一部地域では全学年)したが,11月2日に予定されていた全面的な再開は,感染事例発生に伴って頓挫した。例年8月に行われている12年生修了試験は2021年1月に延期されていたが,12月15日,全員合格扱いとなった。

11月4日,ハンガリーの外務貿易大臣ら一行がカンボジア訪問後に,新型コロナウイルスへの感染が判明した。カンボジア側の対面者の検査が行われ,政府高官3人を含む合計4人が陽性となり,フン・セン首相も14日間自宅での隔離を行った。これを受けて,プノンペンおよびカンダール州では学校が再度閉鎖された。さらに,11月28日には国内での市中感染が発生し,41人の感染が確認され,再度全国的な学校閉鎖やイベントの制限が行われたが,1カ月で事態は収束した。

2020年12月末までに確認された366人の感染者のうち,283人(77%)が海外由来の事例であった。カンボジア人感染者の大半は,海外出稼ぎ労働者が帰国時の検査で陽性確認されるケースが中心で,国内での感染は最小限にとどまった。また,新型コロナウイルスによる死者は発生しなかった。

新型コロナウイルス対策とともに進む社会管理の強化

政府は新型コロナウイルス感染症の拡大を抑制するために人々の行動を制限する手法をとりつつ,社会をより厳格に管理する傾向を強めていった。4月,非常事態宣言を発出するための根拠となる非常事態における国家管理法(非常事態法)が制定された。同法案は4月10日に国民議会で可決され,17日に上院を通過し,27日までに憲法評議会が憲法上問題ないとの判断を下した。そして29日に国外滞在中のシハモニ国王に代わり,サイ・チュム上院議長が署名し発効した。同法は,報道規制を強化し,通信傍受などを国家に容易に認めるほか,「公共の秩序や国家の安全が激しく混乱に陥るとき」(第4条),首相が非常事態宣言を発出できるようになった。これは従来,憲法22条で国王のみに認められていた非常事態宣言発出の権限を首相にも付与するものであった。非常事態宣言発出の条件は為政者による恣意的な解釈が可能であり,容易に人権抑圧につながりうることから,このような法律の制定には市民社会から不安の声があがった。2020年中は非常事態宣言が発出されることなく,コロナ対策が進められたが,今後,同法がどのように使われるのかは注視していく必要がある。

3月11日,情報省の下に虚偽情報監視委員会が設置された。インターネットやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上の虚偽情報対策については,フン・セン首相のFacebookアカウントが乗っ取られた2019年初め頃から,対策の検討が本格化していた。委員会発足後,新型コロナウイルスに関する虚偽情報と同時に,政府への不公平な批判,国王への侮辱なども監視対象となった。年末までに合計1000件以上のウェブサイトや投稿が指摘され,場合によっては捜査の対象とされた。同委員会は監視対象のSNSを拡大するなどしており,言論統制のツールとなっている。

8月,政府は公共秩序法案を公表した。公共空間でのミニスカートの着用や喫煙,路上生活などを罰則付きで規制する内容であったため,市民社会からはさらなる不安の声があがった。同法案は新型コロナウイルス対策とは直接関係はないものの,政府が社会管理を強化しようとする動きのひとつと位置付けられる。

財閥企業や富裕層からの寄付金の政治的活用

政府は災害支援やコロナ対策に資金を提供する財界との関係を強化するとともに,その資金を利用し国民の支持獲得に努めた。10月,全国的に大規模な洪水被害が発生した際,フン・セン首相はFacebookを通じて救援活動への協力を求め,寄付金を募った。その結果,短期間で600万ドルもの資金が集まり,被災者のもとに支援が届けられた。また,新型コロナウイルスワクチンを確保するために,保健省や経済・財務省による予算確保とは別に,12月7日,首相は企業や富裕層に寄付を呼び掛けた。ロイヤルグループのキット・メン総裁,LYPグループのリー・ヨン・パット総裁など,カンボジアを代表する財閥企業や資産家らが多額の資金を提供し,12月中に4800万ドルが集まった。このなかには,2014年にカンボジア国籍を取得した中国出身で大型不動産開発を行っているプリンスグループのチェン・ツィー総裁も名を連ねた。

必要な支援のために資金に余裕がある人々が協力すること自体は否定されないが,支援は首相が被災地を訪問するときなどに大々的に提供され,政権の支持獲得のツールとなっている。首相や政権との関係を維持するために財界も要請に応じざるを得ず,まとまった金額を拠出することで忠誠心を示す構造がある。

旧救国党の無力化進む

2017年9月に逮捕されたクム・ソカー旧救国党党首の裁判が1月に始まった。逮捕理由となった2013年の動画での発言について審理が行われたが,新型コロナウイルス感染症が拡大した3月,裁判は一時休止された。クム・ソカーには移動の自由はないものの,自宅で過ごすことを許可されている。5月の首相義母の葬儀の際には弔問に訪れ,首相との面会が実現した。10月には,首相の呼びかけに応じて洪水被害への救援キャンペーンに参加したり,22日にパトリック・マーフィー米大使と会談するなど,比較的自由に国内移動が許されるようになった。

しかし,旧救国党への抑圧が緩まることはなかった。2019年11月にサム・ランシー前党首が帰国を試みた事案に関与した129人の党関係者らに逮捕状が出された裁判について,2020年11月26日,プノンペン裁判所は彼らの裁判を2021年1月と3月に分割して行うことを発表した。これを受けて,アメリカに滞在しているムー・ソクフオ旧救国党副党首は2021年1月4日の帰国を宣言したが,実現しなかった。サム・ランシー前党首も,2019年の帰国失敗以来,フランス滞在が続いている。

このようななか,2017年の解党時に政治活動を禁止された党所属政治家118人の一部は,このまま救国党が2022年の地方選挙,2023年の総選挙に参加できないことを恐れ,政治活動再開に向け動き出した。彼らは2019年1月以降,政治活動再開の要請を内務省に提出し,2020年末までに4政党が設立された。しかし小規模なままでは知名度があがらず,国政での議席獲得は不可能である。とはいえ,旧救国党の政治家が団結して目立った活動を行うことも難しい。政府・人民党は,表面的には旧救国党政治家たちの政治活動の自由を容認しているようにもみえるが,実際には,緩急をつけて彼らの活動を引き続き抑え,旧救国党はさらに無力化が進んでいる。

内閣改造の実施

2018年総選挙後,フン・セン首相は実績に応じた大臣交代を2020年に行うと予告していた。3月30日,1省の名称変更と4人の大臣交代を伴う内閣改造案が国民議会で承認された。工業・手工芸省が工業・科学技術・イノベーション省へと変更され,科学技術・イノベーション総局および国立科学技術・イノベーション研究所が新しく省内に設置された。大臣は2018年から工業・手工芸大臣を務めているチャン・プラシットがそのまま留任した。

アン・ヴォン・ヴァッタナー司法大臣,トラム・イウテック郵便・電信大臣,ヒム・チェム宗教・祭典大臣,ピッチ・ブンティン公務員大臣が,特命事項担当上級大臣に昇格した。代わって,司法省のクット・リット長官が司法大臣,国民議会のチア・ヴァンデット計画・投資・農業・地方開発・環境・水資源委員長が郵便・電信大臣,閣僚評議会のチット・ソコン長官が宗教・祭典大臣,そして内務省のプルム・ソカー長官が公務員大臣に就任した。

首相は,交代した4大臣とも有能ではあるが年齢を考慮する必要があったと説明したうえで,行政・司法・財政の改革やデジタル化への対応を進める方針を表明した。近年,一部の閣僚の交代が2年おきに行われ,若返りが進む一方で,高齢の元各省担当大臣が特命事項担当の副首相や上級大臣として閣内に残ることが多く,閣僚数は徐々に増加している。長年培った貴重な知見が生かされる可能性はあるが,こうした人事がどこまで効率的な政権運営に資するかは疑問である。

経 済

経済概況

経済は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて,大きく後退した1年であった。IMFは2020年の実質国内総生産(GDP)成長率をマイナス3.5%と推計している。とりわけ,観光業と縫製・製靴業への影響が大きかったと考えられる。ただし,物価については,新型コロナウイルスや洪水の影響で食料品価格などが上昇した一方で,国際的な石油価格の下落もあり,インフレ率は2.9%で安定した。為替レートも1ドル当たり4093リエル(年平均)で安定的に推移している。

12月29日の首相発表によれば,2020年の輸出総額は160億ドル(前年比14%増)と見込まれる。ただし,カンボジア縫製業協会(GMAC)によれば,主要な輸出品である衣料品の輸出額は11月までに前年比10%近く減少したという。衣料品輸出の伸びが低迷した分,農産品(後述)や自転車など他の品目が一定程度補ったものと推察される。

最大の衣料品輸出先であるEUは,カンボジアの人権状況悪化を理由として,8月から低付加価値の衣料品,靴を含む40品目へのEBA適用を停止した。EBAの適用がなくなり,衣料品には12%,靴には17%の関税が課せられるようになった。さらに新型コロナウイルスの感染拡大にともなう需要の低迷もあり,EU統計局(Eurostat)によれば,2020年のEUのカンボジアからの輸入額は前年から20%減少の41億7612万ドルであった。衣料品(HSコード61および62の合計)が28億758万ドル(前年比24%減),靴(HS64)が6億3230万ドル(同14%減)と大きく減少した一方,EUのセーフガード発動により0%から段階的に税率が引き上げられているコメ(HS1006)は1億5880万ドル(同3%減),新型コロナウイルス対策で公共交通機関を避けた人々による需要が増えた自転車(HS8712)は3億1631万ドル(同6%増)であった。

一方,アメリカへの輸出は拡大した。アメリカ国勢調査局(US Census Bureau)によると,カンボジアからの輸入総額は65億7770万ドル(前年比23%増)に増加した。衣料品は29億5467万ドル(同25%増),特恵関税の適用により近年輸出が伸びている旅行用品(HS4202)は9億1932万ドル(同4%増),需要が増えた自転車は1億3625万ドル(同202%増)で,EU向け輸出の停滞を一定程度補った。

観光業は,海外からの渡航者が激減し,年間の到着者数は130万6143人(前年比80%減)であった。なかでも,1~3月の中国からの訪問者数は約26万人であったが,4月には3031人まで落ち込んで年内は回復することはなかった。国際的な観光地アンコールワットの外国人観光客数は年間40万人で,前年から8割以上減少した。6月の時点で,約3000ものホテル・宿泊施設が閉鎖に追い込まれ,4万5000人もの失業者が発生したと報道されている。8月のクメール正月連休以降は,国内の旅行者による需要が観光業を支えたが,海外からの観光客が戻るには数年かかると考えられ,影響が長引くことが懸念される。

大規模洪水被害の発生も好調な農業セクター

10月中旬から相次いだ豪雨は,ベトナムとともにカンボジア国内全体に甚大な被害を与えた。コンポンスプー州のプレック・トナウト川やバッドンボーン州のカンポンプオイ貯水池などが氾濫し,影響は19州・都に及んだ。11月4日までに死者42人,80万人が直接的な被害に直面し,200万人が影響を受けた。被害を受けた人たちのなかで38万8000人はぜい弱な立場に置かれる貧困層の人々で,政府や国際社会,そして民間からの寄付による支援(既述)を受けた。

農地は大規模な被害を受けたが,農業全体では洪水や新型コロナウイルスによる経済への負の影響を最小化するうえで大きな役割を担った。コメの生産高は1093万トンで,精米の輸出は前年から11.4%増え69万トンとなった。中国に28万9439トン,EUに20万3791トン,ASEANに8万6899トン,その他29カ国に11万700トンが輸出された。精米以外にも,天然ゴム関連で4億8276万ドル,キャッサバ,カシューナッツなどの作物が21億7000万ドル分輸出されるなど,農業分野での輸出は好調だった。コンポート州の名産で地理的表示(Geographical Indication:GI)を取得している胡椒も60トン以上が輸出された。

縫製・製靴業への打撃

縫製・製靴業は,EBAの適用取りやめと新型コロナウイルスによって大きな打撃を受けた。2~3月にかけて中国からの原材料の輸入が滞り,工場の操業が困難になったことで労働者の一時帰休が相次いだ。3月半ばごろには物流が復旧し,中国からの原材料が届くようになったことで生産は回復した。しかし,新型コロナウイルス感染症拡大にともなう主要市場における需要の減少は,国内での生産縮小をもたらした。国内の縫製・製靴などの工場は,2020年初に1069社が登録されており,約92万3000人が働いていたが(そのうち輸出企業は550~600社で労働者は約65万人),最も深刻だった6月には最大で19万3924人の労働者が影響を受けた。年末までに129社が閉鎖され7万人近い人々が失業もしくは一時帰休した。ただし,2020年末までに112社が新たに操業を開始しており,2021年以降の回復に望みをつないでいる。

2020年初から新型コロナウイルスの感染拡大がEUとの貿易にも影響を与えはじめたため,EBAの適用停止そのものの影響はみえづらくなったが,負の影響を及ぼしていることは確実である。GMACはEUに対し縫製品へのEBAの再適用を求めているが,今後の見通しは不透明である。政府はEBA適用停止の影響を軽減するための外交努力を行っており,2021年1月にEUを離脱するイギリスからは,縫製品を含む後発途上国向け特恵関税の適用を認められた。

このような状況下にあって,2021年1月から適用される縫製・製靴業で働く労働者の月額最低賃金について,例年どおり9月に政労使による交渉が行われた。雇用者から引き下げを主張する声もあったが,前年から2ドル引き上げとなる192ドルに決定された。これは2013年以降で最も低い水準の上げ幅である。

労働者への支援と貧困層への現金支給プログラム実施

2月以降,コロナ禍により労働者は厳しい状況に置かれた。先述のように海外からの観光客の大幅な減少のため,観光業に従事する人々は苦境に陥り,縫製業でも失業もしくは収入が大幅に減少する人たちが発生した。また,貧困層もより厳しい状況に追い込まれたことから,政府は現金支給による支援を行った。

2月28日,政府は労働契約が停止される労働者に対し,雇用主が給料の40%,政府が最低賃金(190ドル)の20%を支払い,そのかわりに労働者は職業技術訓練研修に参加する義務を負うという指導を発出した。しかし,経営状況が悪化した雇用主側の負担を減らすため,4月17日,縫製・製靴業および観光業の企業が労働契約を停止する際には月額30ドルを支払うこと,観光業の場合は企業の支払い能力に応じて労働者に一定額を支払い,政府が労働者に対して月額40ドルを支払うこと,国家社会保障基金(National Social Security Fund:NSSF)への保険料支払いは免除することが定められた。なお,4月以降,労働者の研修参加は義務ではなくなった。また,6月1日,雇用者の負担を減らすため,2020年の年功手当(1年働くと賃金15日分相当額が年2回受け取れる仕組み)の支払いを翌年まで延期することも発表された。

全国貧困世帯識別プログラムによって支援を受ける貧困世帯に対しては,1人あたり都市部で30ドル,農村部で20ドルの現金を支給する新たなプログラムが実施された。同プログラムは6月25日に始まり,第1回は53万8380世帯が230万ドルを受け取るなど,11月までに1億6500万ドルが支出された。7月には,貧困世帯認定を受けるための虚偽申告事例が多く発覚したため,計画省は検査体制を強化しこのプログラムを継続した。

対外関係

中国との緊密な連携

フン・セン首相は新型コロナウイルス感染症が最初に深刻化した中国に対して,寄り添う姿勢を貫いた。1月末,武漢に滞在しているカンボジア人留学生に対し「カンボジア人は中国から去らない」と述べ,緊急帰国を支援しなかった。2月5日には,新型コロナウイルスへの感染が拡大していた中国を訪問し,習近平国家主席と会談を行った。また,3月15日から2週間,中国軍との合同演習「金龍」は予定どおりに実行され,両軍合計3000人が参加した。一方で,フランス人観光客の集団感染発生後の3月23日には,中国から医療専門家7人の派遣やマスクなどの衛生用品の寄贈を受けるなど,コロナ対策でも緊密に連携した。

中国人観光客・投資家の訪問が途絶えたことは,経済に深刻な影響を及ぼした。とりわけ,観光業や不動産業で中国マネーを集めていたプレアシハヌーク州への影響は大きかった。しかし,プレアシハヌーク州に対する中国の開発協力は止まることはなく,同州は2020年中に中国の16省・都市と投資や環境についての協力を推進する覚書を締結した。プノンペン=シハヌークビル間の高速道路化計画は中国の支援によって建設が続けられ,プレアシハヌーク州のインフラ改善への取り組みも継続的に行われた。

さらに,1月に始まった中国との自由貿易協定(FTA)交渉は早期に合意に達し,10月12日,中国の王毅外相が来訪して署名が行われた。今後,農産品を中心として中国への輸出が拡大していくことが期待されている。

アメリカからの疑惑の目と新型コロナ対策支援の進展

アメリカもEU同様にカンボジアの人権状況に鑑み一部の政府高官のビザ発給停止や資産凍結を行っていたが,2019年後半からは首脳間の書簡の交換などで関係改善に向けた前向きな取り組みがみられた。その一方で,カンボジア政府の中国との関係には常に疑いの目を向けてきた。

9月,コッコン州で港や空港,リゾート・コンプレックスの大規模観光開発を行ってきたユニオン・デベロップメント社が中国政府の軍事的資産に資する活動を行っているとして,アメリカ政府は同社に対して制裁を課した。10月には,2019年にアメリカの『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が報道したプレアシハヌーク州のリアム空軍基地を中国軍に使わせる密約の噂が再燃した。しかしカンボジア政府は密約の存在を再び否定した。

コロナ対策については,アメリカも支援に積極的に関与した。12月,カンボジアの人権状況や中国関連の問題がクリアされれば供与されるという新型コロナ対策および付随する経済協力のための8550万ドルもの支援を含む予算が,アメリカの下院で承認された。

タイとのコロナ対策協力とタイ人活動家行方不明事件

タイとは,政府間協力によりコロナ対策が進められた。タイで働く100万人以上のカンボジア人労働者に対し,タイ政府はビザの延長を容認した。一方で,3月,陸路国境を封鎖したため,カンボジア人労働者たちは封鎖前に国境に殺到し,約8万人が帰国した。また,12月にタイ国内の移民労働者コミュニティーで集団感染が起き,153人のカンボジア人労働者の感染も確認された。この時にタイから約8000人が帰国したが,国境での検査および隔離措置の際に80人以上の陽性者が発見された。人の移動制限とは別に,物流は可能なかぎり途絶えないように配慮されたが,タイ商務省によると,カンボジアによるタイへの輸出は11億4800万ドル(前年比50%減),輸入は60億8900万ドル(同15%減)と低調だった。

政府間の良好な関係ゆえに,背後では市民の権利が脅かされる事案が発生した。6月4日,2014年以降カンボジアで生活をしているタイ人反政府活動家のワンチャルームが何者かに拉致されて行方不明になった。同氏は,SNSを通じてタイ政府批判を行っており,2018年にタイ国内でコンピューター犯罪法違反容疑での逮捕状がでていた。カンボジア政府は公式に事件の発生を認めていないが,拉致当時通話中だった姉の証言から,暴力的なかたちで連れ去られた可能性が高いとみられている。

ベトナムとのコロナ対策と国境画定問題

ベトナムとのあいだでも,3月15日に国境が閉鎖され,一時的に人・物流ともに止められたが,20日以降は,国境でのトラック運転手の交代などの感染対策を条件に,物流は再開された。6月には,十分な感染対策のもとにビジネスマンや学生の往来も認められるようになった。

ベトナムとの国境画定については,2019年10月,カンボジアとベトナムのあいだで,「1985年の国境画定条約と2005年の補足条約を補足する条約」および「国境標石の設置に関する国境画定議定書」が署名されていたが,2020年も国境問題解決への取り組みが続いた。この問題は二国間の問題であると同時に,国内政治のイシューでもあった。野党勢力は政府がベトナムに有利な国境画定を容認していると疑いの目でみており,長年この問題を政府批判の材料としている。4月26日,カンダール州の国境地域にベトナム軍が31個ものテントを設置したことに対して,カンボジアの外務・国際協力省はベトナム政府に抗議し,撤去を申し入れた。また,7月には,カンボジア労働組合連合のロン・チュン会長が,トゥボーンクモム州の国境でベトナム側がカンボジア側の住民の権利を侵しており,カンボジア政府の対応が不十分であると批判を繰り返した。その後,同会長は7月31日に逮捕され,人々を扇動したとして起訴された。フン・セン首相は,8月25日に国境問題を担当するヴァ・キムホン副首相に国境地域の視察を命じ,政府のやり方に誤りがないことをアピールした。

陸路国境画定は84%が終了した。11月,カンボジアの国民議会はこれまでの画定内容を承認し,12月の外相会談では批准書が交換された。同時に,両国外相は今後のコロナ対策の協力と経済の活性化を約束し,友好関係を確認した。国境画定により,国境地域の経済開発や地域全体の協力がさらに進むことが期待されるが,完了するまで国境地域では局所的に両国の兵士や警備関係者が対峙したり,カンボジア国内の政治問題としても火種となり続けるだろう。

2021年の課題

国内政治では,2023年総選挙に向けたせめぎあいが本格化していく。とくに野党勢力は,旧救国党指導者たちが政治活動に復帰できるかが注目される。一方で,コロナ対策を楯に,政府の社会管理・監視強化がさらに進められる可能性がある。

経済面ではGDP成長率は4%程度への回復が見込まれているが,難しい状況が続く。新型コロナウイルス感染症が収束し,中国人投資家や観光客が戻ってくることへの期待は高いが,2021年に入ってから再度感染が拡大しており,死者も発生するなど先行きは不透明である。EUのEBAの再適用が難しいなか,中国とのFTA締結,地域的な包括的経済連携(RCEP)協定署名に続き,政府はより多くの国とのFTA交渉を進めている。市場を多角化させつつ,国内産業の育成がより重要となる。

政府はコロナ対策では中国に大きく依存し,2021年2月に中国製ワクチンの接種を開始した。一方で,3年連続で行われてきた中国との合同軍事訓練を2021年は実施しないことが発表された。これが一時的なものなのか,米中やその他の国々とのバランスを取り直す一歩となるのか,慎重に見極める必要がある。

(地域研究センター)

重要日誌 カンボジア 2020年
   1月
2日 旧救国党元国民議会議員チウ・カターなどが国を愛する党(CNLP)結成を発表。
3日 カエップ州にて建設中の7階建てビル倒壊。36人死亡。
6日 政府,交通・物流暫定マスタープランを承認。
15日 プノンペン裁判所,クム・ソカー旧救国党党首の裁判開始。
20日 中国との1回目の自由貿易協定(FTA)交渉開始(~23日)。
27日 プレアシハヌーク州の中国人観光客から国内初の新型コロナウイルス感染確認。
   2月
1日 第42回人民党中央委員会総会(~2日)。
3日 フン・セン首相,韓国訪問(~5日)。
5日 首相,中国・北京訪問。習近平国家主席と会談。
9日 ラオスのブンニャン・ウォラチット国家首席公式訪問(~10日)。
12日 EU,8月からの特恵関税制度「武器以外すべて」(EBA)適用一部停止を発表。
13日 新型コロナ感染疑いの乗客を乗せたクルーズ船ウエステルダム号がシハヌークビル港に寄港。19日までに全員の陰性確認。
17日 鳥インフルエンザ対策のため,ベトナムからの鶏輸入を禁止。
   3月
6日 諮問勧告高等評議会,モンドルキリ州知事らが不正な土地売買にかかわっているのではないかと指摘。
8日 シアムリアプ州にて国内2例目の新型コロナ感染者確認。カンボジア人としては初。政府はシアムリアプ州の学校を閉鎖。
11日 情報省,虚偽情報監視委員会設置。
13日 国民議会,工業・手工業省の名称を工業・科学技術・イノベーション省に変更する法案可決。
14日 政府,プノンペンの学校を4月19日まで閉鎖。16日には全国の学校を閉鎖。
14日 17日以降フランス,ドイツ,イタリア,アメリカ,スペイン,18日以降イランから到着する外国人入国禁止を発表。
15日 中国軍との合同演習実施(~31日)。
15日 ベトナム,カンボジア国境を閉鎖。カンボジアも20日に閉鎖。
22日 フランス人観光客29人を含む84人の新型コロナウイルス感染を確認。
23日 新型コロナウイルス対策のために中国から専門家チーム7人が到着。
27日 外務・国際協力省,すべての外国人に対し,ビザ発行停止や新型コロナウイルスへの非感染証明提出などの入国制限を発表。
30日 国民議会,司法大臣,郵便・電信大臣,宗教・祭典大臣,公務員大臣の交代などの内閣改造案を承認。
   4月
1日 保健省,オンラインでの衛生用品販売を禁止。
3日 内務省,新型コロナウイルス対策のため大規模集会を制限。
7日 政府,4月9~16日に予定されていたクメール正月の連休延期を発表。
8日 首相,ポンペオ米国務長官と電話会談。
9日 勅令にて,プノンペンおよびカンダール州との往来,州境を越える移動を禁止(~16日)。労働・職業訓練省は事業者に対して,同期間中の通常通りの操業と帰省する労働者の隔離措置を求める通達を発表。
10日 国民議会,非常事態法案可決。17日に上院可決,29日にサイ・チュム上院議長の署名により成立。
14日 首相,新型コロナウイルスに関するASEAN特別首脳会議にオンラインで出席。
17日 政府,契約停止された縫製・製靴労働者や観光業従事者に月額40ドル支給を発表。
20日 EU,新型コロナウイルス対策に6670万ドルの支援を表明。
26日 カンダール州ベトナム国境にて,ベトナム軍兵士によるテント設置が判明。
   5月
1日 交通違反の罰則厳格化開始。
4日 首相義母,ブン・シアンリー氏死去。享年96歳。
4日 土地問題の調査をしていたクメール勃興党(KRP)のソック・ソヴァン・ヴァッタナ・サブン党首が諮問勧告高等評議会員を解任。
8日 国王,北京の私邸で王毅外相と会談。
13日 外務・国際協力省,ベトナム政府にカンダール州国境地域のテント撤去を要請。
15日 閣僚評議会,諮問勧告高等評議会の管轄範囲を規定する文書発表。
20日 保健省,フランス,ドイツ,イタリア,アメリカ,スペイン,イランからの入国禁止を解除。
21日 アメリカ,新型コロナウイルス対策として750万ドルの支援発表。
25日 ACLEDA銀行,民間銀行として初めて株式公開。
27日 タイ,新型コロナウイルス対策として200万バーツの支援発表。
   6月
1日 労働・職業訓練省,2020年分の縫製工場労働者への年功手当支払いの延期発表。
4日 国民議会,マネー・ローンダリング法案可決。
5日 タイ,隣国出身労働者へのビザを7月末まで延長。
5日 日本,シアムリアプ州病院支援や人材育成など,無償資金協力45億100万円供与を約束。
9日 プレアシハヌーク州知事交代。同州は中国の16省・都市と投資や環境などについての協力覚書を締結。
9日 中国へのマンゴー輸出に合意。年間50万トンの輸出を予定。
10日 首相,インドのモディ首相と電話会談。
19日 ベトナム国境の閉鎖を解除し,投資家や学生の往来再開。
21日 首相,全国貧困世帯識別プログラムで認定される貧困世帯に1人当たり月額30ドルの現金支給を発表。25日開始。
23日 プラック・ソコン外相と中国の王文天大使,メコン-ランツァン協力特別基金2020の722万ドル分のプロジェクトに署名。
   7月
4日 11月にプノンペンで開催予定だったアジア欧州会議(ASEM)延期決定。
8日 バッドンボーン州副知事ら,土地取引での汚職で訴追。
9日 韓国,カンボジアとのFTA交渉開始を宣言。
21日 ポイペトにてチクングニア熱発生。9月までに全国で6000人以上が感染。
31日 カンボジア労働組合連合ロン・チュン会長をベトナム国境地域住民の土地問題で人々を扇動したとして逮捕。
   8月
1日 インドネシアとマレーシアからの発着便一時停止。
4日 首相,第3回メコン-ランツァン協力首脳会議に参加。
11日 政府,水祭り(10月30日~11月1日)の中止決定。
12日 EU,EBAの一部適用取りやめ実施。
13日 フィリピンからの発着便一時停止。
14日 閣僚評議会,「産業開発計画2015」の進捗報告書承認。
17日 クメール正月の連休振替(~21日)。
21日 茂木外相,プノンペン訪問(~22日)。22日に首相と会談。
30日 バッドンボーン州の中央市場建物(1937年設立)で大規模火災発生。
   9月
2日 クメールルージュ時代のS21刑務所所長で終身刑服役中のカン・ケック・イウが死去。享年78歳。
10日 労働・職業訓練省,2021年の縫製・製靴労働者の月額最低賃金を192ドルとする省令を発表。
  10月
1日 国家選挙管理委員会,2020年度投票人登録実施(~19日)。25万6545人が新規登録,14万1178人を名簿から削除。
2日 ごみ収集を担うCINTRI社の労働者300人がストライキ開始。8日に一部は復帰。
5日 国民議会,統合型リゾート・商業ギャンブル管理法案可決。
6日 国民議会,国有財産法案可決。
7日 イオン3号店,起工式。
11日 中国の王毅外相,公式訪問(~12日)。
12日 中国とFTA署名。
23日 閣僚評議会2021年予算法案承認。歳出32兆97億リエル(約80億ドル),歳入27兆7687億リエル(約69億ドル)の見込み。
26日 プノンペンのチャオムチャオ地区国道4号線・ロシア通りにアンダーパス完成。
28日 中央銀行のデジタル通貨「バコン」システム,運用開始。
  11月
2日 すべての学校再開。
2日 国民議会,ベトナム国境標石の設置に関する国境画定議定書批准法案を可決。
3日 ハンガリーのシーヤールトー・ペーテル外務貿易相来訪。翌日,同大臣の新型コロナウイルス感染が判明。首相や関係者17人が隔離措置。4人の陽性が確認。
6日 日本,新型コロナウイルス対策に円借款250億円,テロ対策強化などの無償資金協力3億円供与を約束。
8日 プノンペンおよびカンダール州での学校再閉鎖。集会禁止。
15日 地域的な包括的経済連携(RCEP)協定署名。
16日 クメール統一党(KUP),クメール国家統一党(KNUP),蜂の巣社会民主党(BSDP)の3党がクメール民主連盟を結成。
28日 国内初の市中での新型コロナウイルス集団感染発生。41人が感染。
30日 パキスタンの動物園から象カーバンがシアムリアプ到着。保護区に移送。
  12月
15日 政府,12年生の修了試験について,全員合格とみなすと発表。
15日 政府,貧困層への現金支給について翌年1月から第4ラウンドを実施することを発表。
16日 政府,2021年1月1日から輸入関税と特別税の減免を発表。免税対象は96品目,減税対象は76品目。
17日 プラック・ソコン外相,イギリスのティナ・レッドショウ大使と会談。イギリスが2021年1月1日以降カンボジアからの輸入に特恵関税の適用を表明。
21日 タイでの新型コロナウイルス感染症再拡大に伴い,国境での隔離を再び厳格化。
21日 パイリン州,バン・スレイモン新知事就任。2人目の女性知事。
22日 ベトナムのファム・ビン・ミン外相とプラック・ソコン外務・国際協力大臣,オンラインで会談。
23日 憲法評議会,民主連盟党(LDP)が訴えていた国家選挙管理委員会の投票人登録結果に関する不服を却下。
28日 クリス・エネルギー(Kris Energy)社,シハヌークビル沖ブロックAでカンボジア初の原油採掘開始。
31日 司法省,3月末に開始した裁判未処理案件の処理を加速化するキャンペーンにて,3万5100件(89%)を終了したことを発表。

参考資料 カンボジア 2020年
①  国家機構図(2020年12月末現在)

(注)1)2020年版まで「最高諮問勧告評議会」「最高国防評議会」と表記していたが,訳語を整理し直し今年度版より「諮問勧告高等評議会」「国防高等評議会」とする。なお,「諮問勧告高等評議会」は2018年第6期国民議会議員選挙に参加した政党の代表者により構成され,議会外から政府の法・政策の執行を監視したり,法案や政策を提案するなどの役割を担う機関である。

②  大臣会議名簿(2020年12月末現在)

(注)は副首相,**は上級大臣。

②  大臣会議名簿(2020年12月末現在)(続き)

(注)は副首相,**は上級大臣。

③  立法府
④  司法府

主要統計 カンボジア 2020年
1  基礎統計

(注)インフレ率は2018年以降,籾米生産の2020年については予測値。為替レートは市場レートの中間値を参照。

(出所)人口は計画省統計局 “General Population Census of the Kingdom of Cambodia 2019: National Report on Final Census Results”(https://www.nis.gov.kh/index.php/en/15-gpc/79-press-release-of-the-2019-cambodia-general-population-census),籾米生産はFAO “Country Briefs: Cambodia”(http://www.fao.org/giews/country-analysis/country-briefs/country.jsp?code=KHM),インフレ率はIMF “World Economic Outlook Database”(2021年4月版)(https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2021/April),為替レートは中央銀行 “Monthly Average Exchange Rate” (https://www.nbc.org.kh/english/economic_research/monetary_and_financial_statistics_data.php)。

2  支出別国内総生産(名目価格)

(出所)ADB, Key Indicators 2020(https://www.adb.org/publications/key-indicators-asia-and-pacific-2020).

3  産業別国内総生産(実質:2000年価格)

(出所)表2に同じ。

4  国・地域別貿易

(出所)IMF, Direction of Trade Statistics(https://data.imf.org/?sk=9D6028D4-F14A-464C-A2F2-59B2CD424B85).

5  国際収支

(注)1)予測値。IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。金融収支の符号は(+)は資本流出,(-)は資本流入を意味する。

(出所)表2に同じ。

6  中央政府財政

(注)1)暫定値。

(出所)表2に同じ。

7  中央政府財政支出

(注)1)暫定値。

(出所)表2に同じ。

 
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