Yearbook of Asian Affairs
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2021 Volume 2021 Pages 365-394

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2020年のインドネシア

概 況

インドネシアは,東南アジアのなかでも新型コロナウイルス対策にもっとも失敗した国という評価を受けている。年末までの累計感染者数は74万人以上となり,死者も2万人を超えた。政府の対策が遅れたうえに,経済優先の姿勢を政府が崩さなかったことが感染拡大を抑制できなかった理由のひとつである。にもかかわらず,ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の支持率はほとんど下がることはなかった。2人の現職閣僚が汚職容疑で逮捕されるという事態に直面しても,後任に国民的に人気のある政治家を登用するなどして政権の痛手にはならなかった。11月に反ジョコウィ勢力の急先鋒であるイスラーム防衛戦線(FPI)代表リズィク・シハブが3年ぶりに帰国すると,ジョコウィ政権とFPIの対立が先鋭化した。政府は,FPIを非合法化することでこれを押さえ込んだ。

経済は新型コロナの影響を受け,アジア通貨危機以来のマイナス成長を記録した。急激な資本流出によりルピアも記録的安値を付け,金利も歴史的低さとなった。感染拡大の影響をうけやすい低所得層に対しての生活必需品配給,失業者支援などの社会的保護や企業支援など,大規模な財政刺激策を実施した結果,財政赤字も拡大した。一方で,78本の法律を一括して改定するオムニバス法という形で雇用創出法を制定し,経済成長促進に必要な投資誘致のための法整備を行った。

ジョコウィ政権がコロナ対策としてもっとも力を入れたのがワクチンの調達だった。中国との間では南シナ海の排他的経済水域への侵犯やインドネシア労働者に対する虐待などの問題が発生したが,政府はワクチン調達元である中国との協力を強く押し進めた。成長戦略の柱として経済外交を重視するジョコウィ政権は,地域的な包括的経済連携(RCEP)と韓国との包括的経済連携協定(CEPA)という2つの貿易協定を締結することに成功した。

国内政治

新型コロナウイルス感染症の拡大を止められず

東南アジアでは1月中旬から下旬にかけて新型コロナウイルスの感染者が次々と確認されたが,インドネシアでは感染者がまったく出ないという状況が続いた。医療専門家からはウイルス侵入の可能性が指摘されていたが,担当閣僚であるテラワン・アグス・プトラント保健相が「インドネシア人はお祈りをしているから感染しない」と発言するなど,政府の危機意識は低かった。この時期の政府にとっては,中国武漢に住む自国民や,日本に寄港した際に集団感染が明らかになったクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号のインドネシア人乗組員をいかに保護するかが課題であった。また政府は,観光客の減少や世界経済の成長減速による経済的影響をどう緩和するかという点により関心を向けた。

3月2日に国内で初めての新型コロナウイルスの感染が確認されると,その後は感染者が急激に増えていった。3月11日には新型コロナウイルスによる初の死者が出た。しかし,そのような状況下でも,ジョコウィ政権の危機意識は低かった。閣僚からは「感染の拡大は起こらない」と相変わらず楽観的な意見が出され,ジョコウィ大統領も手洗いとマスク着用で感染拡大を防ぎ,都市封鎖(ロックダウン)は行わない考えを早い段階から示した。

一方で,政府の意向とは関係なく,集落レベルで部外者の立ち入りを自主的に制限する動きが各地で相次いだ。地域での感染拡大に直面した地方自治体も,中央政府の危機感のなさと対応の遅さに苛立った。とくに感染の中心地であった首都ジャカルタの州政府は,中央政府の対策に対する不満を露わにした。ジャカルタ州知事のアニス・バスウェダンは,3月の州内における新型コロナ死者数と埋葬数に大きな差があるとして保健省の発表する数値に疑義を示したり,ジャカルタの都市封鎖に言及したりするなど,中央政府の対策への不信を隠さなかった。

ジョコウィ政権は,3月末になってようやく国民の社会経済活動を制限せざるをえないと判断し,「公衆保健緊急事態」を宣言するとともに,地方政府からの提案にもとづいて「大規模社会制限」(PSBB)を実施する方針を決定した。ただし,この大規模社会制限は,欧米で実行された強制力を伴う都市封鎖ではなく,日本の「緊急事態宣言」に似た,国民や企業に自主的な活動制限を要請する措置である。ジャカルタ州はすぐに中央政府に対して大規模社会制限の実施を提案し,4月10日から実行に移した。感染が拡大している他の地域でも大規模社会制限が実施され,4月末までに西ジャワ,西スマトラなど4つの州と,ジャカルタ周辺などの12県・市に広がった。

しかし,大規模社会制限によって感染の波を抑えることはできなかった。にもかかわらず,6月5日,政府はジャカルタにおける大規模社会制限の一部を解除し,段階的に経済社会活動を再開していく方針を決定した。ジョコウィ大統領は,新型コロナウイルスとともに生きることは避けられないと,ニューノーマルの生活(新しい生活様式)への移行を徐々に進めるよう国民に呼びかけた。

7月20日には,3月に設置された「新型コロナウイルス緊急対策タスクフォース」が「新型コロナウイルス対策・国家経済復興委員会」に拡大改組され,感染症対策と経済対策に関する政策を立案していくとともに,政策の実施状況を監督していくことになった。委員長にはアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相が,委員長代理にジョコウィの信頼の厚いエリック・トヒル国営企業相が任命されたほか,海事・投資担当,政治・法務・治安担当,人間開発・文化担当の各調整相,財務相,内務相,保健相が加わっている。この他の事務局担当者も,新型コロナウイルス緊急対策タスクフォース代表である国家災害対策庁(BNPB)長官以外は経済関連の省庁出身者である。この委員会の構成からも,ジョコウィ政権の新型コロナ対策が経済優先であることがわかる。

その後も大都市を中心に感染拡大に歯止めがかからず,大規模社会制限の延長や強化が繰り返された。そのようななかでも,当初9月に実施予定だった統一地方首長選挙が12月9日に9つの州および260の県・市で行われた。選管である総選挙委員会(KPU)は,選挙戦のオンライン実施など防疫指針の順守を呼びかけたが,立候補の届け出から選挙キャンペーン,そして投票日まで密集状態を避けることはできず,ウイルスに感染したり死亡したりする候補者も出た。

結局,感染の波は年内に一度としてピークを迎えることなく続き,12月末までに国内の感染者数は累計74万5081人に,死者は2万2167人に達した。医療従事者の感染も相次いでおり,500人以上の医師・看護師らが死亡するなど,医療体制の逼迫も深刻化した。感染抑制に比較的成功している東南アジアのなかにあって,インドネシアの感染者数・死者数は最多で,人口あたりでみてもフィリピンと並び域内では最悪レベルの状況となった。

高い支持率の維持と内閣改造

新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えきれない政府に対して,一部メディアからは強い批判が出されたが,国民は政府の対策をそれほど問題視しなかった。有力世論調査会社インディカトールが実施した全国世論調査では,政府の新型コロナ対策に満足していると答えた人の割合が,大規模社会制限を実施していた5月時点では56.4%と国内感染が広がる前の2月の70.8%から大きく低下したが,7月になると60.2%に,9月には66.3%まで回復した。各種世論調査でも,ジョコウィ大統領自身の政権運営に満足していると答えた人の割合は,1年を通じて60~70%台で安定していた。

唯一この割合が落ち込んだのは,雇用創出法(「経済」の項を参照)が強行採決された直後だけであった。産業界からの強い後押しで成立した同法に対しては,労働者の権利を奪うことになるとして労働組合から強い反対が示されていた。また,規制緩和による環境破壊を懸念する声や地方分権化に逆行するとの批判も,NGOなどの市民団体から出されていた。そのような批判や懸念を無視して法案は強引に審議にかけられ,可決された。政府が法案を国会に提出したのは2月上旬だったが,新型コロナ対策に集中すべき時期に審議が強行されたことに労働組合や学生団体は強く反発した。政府は4月下旬に労働関連条項の審議延長を一旦は決めたものの,国会休会中も審議が続けられ,最終的な意見の調整は国会外の密室で行われた。それだけでなく,本会議での法案可決後に条文が修正された疑いも浮上した。法案可決後に全国で行われたデモに対しても政府は強硬な姿勢で臨み,暴動を扇動したり偽情報を拡散したりしたとして反政府的な言動を行ったグループを厳しく取り締まった。市民社会団体は一連の過程が民主的でなかったと強く非難したが,一時的に落ち込んだジョコウィの支持率はすぐに回復した。

ジョコウィ大統領の支持率が低下しない理由のひとつは,批判の矛先をうまく逸らすことに成功している点があげられる。ジョコウィは,インドネシアの感染状況は欧米諸国やインド,ブラジルなど感染が爆発した国々に比べればずっと少ないと述べ,政府の対策が失敗ではないことをアピールした。また,ワクチン調達・開発への積極的な関与がアピールされたことで,感染抑制を楽観する雰囲気が醸成された(ワクチン調達については「対外関係」の項を参照)。

もうひとつの理由は,市民の批判の矛先が大統領本人ではなく閣僚に向けられたことである。とくに,担当閣僚であるにもかかわらず当初から新型コロナウイルスに対する危機意識が低く,感染が広がってからも影の薄いテラワン保健相は批判の的になった。経済対策の予算執行の遅れや不適切な実施などの問題が指摘された時も,ジョコウィ大統領が担当閣僚を閣議で強く叱責したことで,その責任は大臣にあるという認識が広がり,内閣改造の考えに支持が集まった。

12月23日,海洋・漁業相と社会相が相次いで汚職容疑で逮捕されたのを契機に(次項参照),新型コロナ対応で批判の多かった保健相を含め,あわせて6大臣ポストと5副大臣ポストを交代する内閣改造が実施された。汚職事件で大臣ポストを失ったグリンドラ党と闘争民主党に対しては,サンディアガ・ウノ(通称サンディ)を観光・創造経済相に,トゥリ・リスマハリニ(通称リスマ)を社会相に任命することで埋め合わせが図られた。サンディは,若手企業家として人気のある人物であるが,2019年の大統領選挙では副大統領候補としてジョコウィと戦った相手である。サンディと組んだ大統領候補のプラボウォ・スビアントも第2期政権発足時に国防相として入閣しており,選挙の対抗馬が2人とも入閣したことに対しては健全な政治的競争を阻害し民主主義の質を下げるとして批判もあがっている。一方,リスマはインドネシア第2の都市スラバヤの市長として市政改革を推し進め,国民的な人気も高い女性政治家である。また,政権発足時に軍出身者を任命したことで批判を浴びた宗教相には,インドネシア最大のイスラーム組織ナフダトゥル・ウラマー出身のヤクット・ホリル・コウマスを充てるなど,連立与党や世論に配慮した人事となった。

汚職容疑で現職閣僚が逮捕

2020年は新型コロナ対策のために政府予算が膨張したうえ,統一地方首長選が実施されることもあって,公的資金をめぐる汚職が増加するのではないかと懸念された。一方で,2003年に設立されて以来汚職事件の摘発を続けてきた汚職撲滅委員会(KPK)の中立性と権限を弱体化させる法律が2019年9月に成立していたため,汚職取締りへの取り組みが弱まるのではないかと憂慮する声もあった。2020年に汚職撲滅委員会が検挙した事件は109件と過去4年では最低となったが,現職の大臣が2人逮捕されるなど,大きな汚職事件の摘発もみられた。

1月に摘発されたのは,総選挙委員会のワフユ・スティアワン委員が関与した汚職事件であった。ワフユは,死去した闘争民主党の国会議員の後任に比例名簿を繰り上げて自らが任命されるように画策していたハルン・マシクから金銭を受け取っていた容疑がかけられている。他方,贈賄側のハルンは,捜査情報を事前に得て逃亡した。6月には,裁判手続きで恣意的な取扱いをする見返りとして巨額の金銭などを受け取っていたとして2019年12月6日に汚職事件の容疑者に指定されながら逃亡していた最高裁判所の元事務総長ヌルハディが逮捕された。

11月から12月にかけては,現職の閣僚が相次いで汚職撲滅委員会によって逮捕された。11月25日,国会第3党のグリンドラ党から入閣したエディ・プラボウォ海洋・漁業相がロブスター幼生の輸出許可にかかわる収賄容疑で逮捕された。ロブスター幼生の輸出は,ジョコウィ第1期政権で違法漁業の取り締まりに辣腕を振るったスシ・プジアストゥティの下で禁止されたが,第2期政権で大臣が交代してすぐに政策転換が図られたばかりだった。エディは,輸出許可を与える企業から金銭を受け取ったり,自らやグリンドラ党幹部と関係のある企業に便宜を図ったりした疑いがもたれている。

12月6日には,新型コロナウイルスの経済対策としてジャカルタとその周辺自治体に居住する貧困家庭に生活必需品を支給する社会扶助(Bansos)プログラムの実施において横領・収賄があったとして,ジュリアリ・バトゥバラ社会相が逮捕された。ジュリアリは,生活必需品の配布を請け負う企業を選定する過程で国会第1党の闘争民主党幹部議員が関係する企業に便宜を図り,その見返りとして金銭を受け取っていた疑いがもたれている。

最高検察庁が担当した事件でも,大きな動きがあった。ひとつは,2019年12月に顧客1万7000人に対する満期保険金12兆4000億ルピアの未払い問題が発覚した国営生命保険会社ジワスラヤ社のヘンドリスマン・ラヒム元社長ら元経営陣5人の逮捕である。同社は過去に高利回りをうたう保険商品を違法に販売したうえ,不正な証券投資を繰り返して多額の損失を出し,それを隠蔽するために不正会計を行っていたとされる。また,元経営陣が取引を通じて不正に利益を得ていた疑いもあり,国家に与えた損害の総額は17兆ルピアにのぼるとの監査結果も公表されている。この事件の一審の裁判では被告全員に終身刑が下っている。

もうひとつの事件は,2009年にバンク・バリ債権譲渡事件で禁錮2年の実刑判決を受けた後11年間にわたり海外に逃亡していたムリア・グループ創業家のジョコ・チャンドラの逮捕である。逮捕のきっかけとなったのは,国際手配中だったはずのジョコ・チャンドラが密かに一時帰国し,しかも南ジャカルタ地裁に11年前の裁判の再審を請求したことが明らかになったことだった。この一時帰国は,金銭を受け取った最高検検事,国家警察庁高官,法務・人権省入管職員らの協力によって可能となったものだった。国民の強い批判を浴びた警察・検察当局もこの逃亡を放置しておくことはできず,マレーシアの現地警察当局と協力してクアラルンプールに滞在していたジョコ・チャンドラをようやく逮捕したのであった。しかし,過去に汚職事件の容疑者に指定されたり,有罪判決を受けたりしながら逃亡したままとなっているケースはこれ以外にも数多く残されている。

イスラーム防衛戦線を強引に押さえ込み

イスラーム防衛戦線(FPI)は,民主化期の1998年頃に国軍が関与して設立された保守派自警組織であった。その主な活動といえば,断食期間中に営業している酒場や遊興施設を襲撃したり,宗教的少数派や性的少数派を攻撃したりすることで,イスラームの名を冠した暴力組織にすぎなかった。しかし,FPIは次第にイスラーム保守派の主導する反政府運動のなかで中心的な役割を果たすようになる。2016年12月2日のイスラーム保守派による大規模デモをFPIが主導し,2017年4月にはジャカルタ州知事選で中国系キリスト教徒の現職候補バスキ・チャハヤ・プルナマを落選に追い込んだのである。これに対してジョコウィ政権は,FPIを押さえ込むため,代表のリズィク・シハブにさまざまな犯罪容疑をかけた。リズィクは,捜査の手が迫るなか2017年4月下旬にメッカ巡礼を理由にサウジアラビアに出国したが,帰国すれば逮捕される危険があるためメッカにそのまま留まらざるをえなかった。

そのリズィクが11月10日に3年ぶりに帰国した。治安当局は,リズィクが政治活動を行わないことを条件に帰国を許したとされている。また,リズィクの大衆動員力はかつてほどのものではないと楽観視していたともいわれる。しかし,その考えは誤りだったことがすぐに判明する。リズィクの帰国を出迎えるためにジャカルタ郊外のスカルノ・ハッタ国際空港に集まった支持者は5万人を超えた。11月14日にジャカルタの自宅で開かれたイスラームの祈祷と娘の結婚式を兼ねた集会にも大人数の支持者が参加した。感染症流行下にもかかわらず,これらの集会に参加した人の多くがマスクを着用せず,社会的距離をとっていなかった。ジャカルタ市内には帰国を祝うとしてリズィクの顔写真入りの看板や横断幕が掲げられた。これに対して,警察と国軍はそれらを違法だとして強制的に撤去するなど,政府との間で緊張が高まった。警察が新型コロナ禍のもとでの集会開催を理由としてリズィクの逮捕に向けて動き出すなか,12月7日には,リズィクの警護を担当していたFPIメンバー6人が警官によって射殺されるという事件が発生した。そして12月13日,ついに警察は11月14日の集会が新型コロナ対策として定められた防疫指針に違反していたとしてリズィクを逮捕した。

さらに12月30日,政府はFPIの活動,シンボル・標章の使用などを全面的に禁止する処分を下し,実質的に組織を解散に追い込んだ。政府はこの処分を下した理由として,2019年7月20日までが有効期限だった大衆団体登録の延長手続きがなされていないため実際には法的地位を喪失していたこと,そのうえ暴力,不法な行為,煽動などに関与してきた構成員が少なくとも206人いること,そして,リズィクがイスラーム国への支持を表明しており,実際にテロ活動に関与した構成員が少なくとも35人いること,などをあげた。

こうしてリズィクの帰国によって再び高まったジョコウィ政権とFPIの対立は,FPIを非合法化することでイスラーム保守派の動きを押さえ込むという結末に至った。しかし,こうした処分に対しては,イスラーム組織以外の市民社会団体からも結社の自由を侵害するものであるとの批判が出されている。ジョコウィ政権は処分の理由を新型コロナ防疫指針違反や手続き的な瑕疵と説明しているが,きわめて恣意的な判断にもとづいているといわざるをえないからである。

(川村)

経 済

新型コロナ禍で経済が悪化

新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて2020年の実質国内総生産(GDP)成長率は2.07%のマイナス成長であった。感染拡大の影響が少なかった第1四半期の成長率は2.83%だったが,第2四半期はマイナス5.52%と経済が大きく減速した。その後も,第3四半期がマイナス4.05%,第4四半期がマイナス3.61%と3期連続でマイナス成長を記録した。

名目GDPは1京5434兆ルピアであり,新型コロナ禍で輸出入など経済活動が鈍化するなか,家計消費の重要性が増した。家計消費が名目GDPに占める割合は57.7%と前年から1.1ポイント増加し,伸び率は前年比2.6%減少した。経済成長への寄与度は1.4%減であった。政府支出の割合は9.3%と前年より0.5ポイント増加した。新型コロナ対策として大型の支援策を実施した結果,伸び率は1.94%と高く,寄与度は0.2%であった。投資(総固定資本形成)の割合は31.7%と0.6ポイント減少し,伸び率は5.0%減,寄与度もマイナス1.6%と低かった。特に輸送機器,機械・設備投資が前年比それぞれ13.0%減,11.6%減と大幅に減少した。財・サービス輸出がGDPに占める割合は17.2%であり,伸び率は前年比7.7%減と世界経済の落ち込みを受けて減少した。一方,財・サービス輸入の割合は16.0%であり,前年比14.7%減と激しく落ち込んだ。

州別のGDP成長率では,観光業を主要産業とするバリ州が前年比9.3%減の大幅なマイナスとなった。ほとんどの州がマイナス成長となるなか,北マルク州と中スラウェシ州がそれぞれ4.9%,パプア州が2.3%のプラス成長を記録した。北マルク州ではオーストラリアからのニッケル川下産業への投資が増加した結果,外国直接投資(FDI)が前年比143.5%増となり,また中スラウェシ州とパプア州ではそれぞれニッケルと銅の輸出が拡大したことが高い成長率をもたらした。

国際収支では,経常収支赤字が47億3800万ドルで,GDP比0.45%と前年の2.7%から大幅に改善した。これは輸入減少により貿易黒字が拡大したことによる。財輸出は1633億ドル,財輸入は1351億ドルであり,非石油・ガスの輸出は1493億ドル,輸入は1195億ドルとどちらも前年から減少したが,輸入の減少が大きく,非石油・ガス財貿易の黒字額は倍増し299億ドルになった。石油・ガス輸出は85億ドル,輸入は139億ドルといずれも減少し,貿易赤字は54億ドルと前年の半分になった。

品目別の輸出は財輸出の10.6%を占めるパーム油が前年比17.5%増,卑金属製品はフェロニッケルの輸出増により前年比24.9%の伸びとなり,全体での割合も前年の7.9%から10.2%に拡大した。その他に銅鉱石の伸びが大きく,全体に占める割合は1.5%にすぎないが,前年比88.4%増と急増した。ボーキサイトも前年比18.8%増であった。一方,10.1%を占める石炭は前年比24.2%減と大幅に縮小し,石油も17.1%減,天然ガスも31.9%減となった。輸出(石油・ガスを含む)先の上位3か国は,中国,アメリカ,日本と前年と変わりなかったものの,伸び率はそれぞれ13.1%増,4.4%増,11.8%減となり,日本への輸出が前年に引き続き大幅に低下した。第4位のシンガポールへの輸出も16.2%減少した。

金融収支は78億ドル(前年366億ドル)の純流入であった。FDI(ネット)は前年から60億ドル減の141億ドルであったが,インドネシアへの外国からの投資は新型コロナ禍による世界経済の落ち込みのなかでも比較的安定していた。証券投資は,年前半の急激な資本流出を受けて(後述),前年の220億ドルの純流入から大幅に減少し39億ドルの純流入となった。

FDI案件の実績では,投資調整庁(BKPM)によると,インドネシアへの投資がもっとも多かったのはシンガポールで98億ドル,次いで中国48億ドル,3位は香港が日本を抜いて35億ドル,日本は4位の26億ドルであった。前年に引き続き中国および香港からの投資が急拡大した。FDI実施総額は287億ドル(5万6726案件)と新型コロナ禍のなかにあっても前年の282億ドルとほぼ同じ水準であった。主な投資分野は卑金属製品に60億ドル(FDI全体の20.8%),電気・ガス・水道に46億ドル(同16.1%),運輸・倉庫・通信に36億ドル(同12.5%)であった。一方,国内投資実施額は414兆ルピア(9万6623案件)と金額は前年比7%増で,件数は3倍強増加した。前年同様,運輸・倉庫・通信がもっとも多く93兆ルピア(国内投資全体の22.6%)であり,建設が68兆ルピア(同16.5%),住宅・工業団地・オフィスビルが45兆ルピア(同10.8%)であった。

消費者物価上昇率は,年前半は2.19~2.89%と2%超であったものの年後半は1.5%前後に低下した。失業率は2月時点では4.94%と前年8月の5.23%から低下したものの,新型コロナウイルス感染症拡大の影響で,8月には7.07%と急激に悪化した。また貧困も深刻化した。3月の都市・農村の平均貧困率は9.78%であったが9月には10.19%に上昇した。都市部での上昇が目立ち,前年同期の6.56%から1.32ポイント上昇し7.88%となった。貧困率は農村部の方が高いが,増加率は12.6%から13.2%の0.6ポイントと都市部よりは低かった。州別でみると西カリマンタン州と中スラウェシ州の2州が前年同期比で改善したものの,残りの州はすべて悪化した。特にジャワ島ではすべての州で1ポイント以上悪化した。貧困率の上昇に伴い,所得格差を示すジニ係数も都市部で前年同期の0.391から0.399へ,農村部でも0.315から0.319へと上昇し,格差が拡大した。

急激な資本流出と歴史的な通貨安・低金利

世界的な感染拡大が確認され始めた3月3日にアメリカが緊急利下げを実施したことをきっかけに,新興国から一斉に資金が流出した。その後,世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言したことで資本流出に拍車がかかり,インドネシアからも資本が大量に流出した。第1四半期の金融収支は31億ドルの純流出(前年同期は99億ドルの純流入)となった。国債からの流出が主な要因であり,第1四半期には79億ドルが流出した。近年,国債への投資は安定して流入しており,資本が流出したのは2011年第3四半期以来である。2011年は,当時の急激な資本流入を回避するために中央銀行(中銀)証書(SBI)の種類や保有期間が変更されたことによる資本流出であった。この時は半年間で31億ドル流出したが,今回は3月のほぼ1カ月間で2倍以上の資本が流出するという激しさであった。

急激な資本流出にともないルピアも急落した。2月20日に中銀が国内経済支援の予防的政策として政策金利(7日物レポ金利)を0.25ポイント引き下げて4.75%にすると,ルピアは下落し始めた。アメリカの利下げを引き金とする激しい資本流出によってさらにルピア安の圧力がかかり,3月23日には1ドル1万6575ルピアとアジア通貨危機以来の安値を記録した。通常,資本流出を止めるためには金利は引き上げられるが,2020年はインフレが落ち着いていることも手伝い,中銀は通年5回(2月,3月,6月,7月,11月),合計1.25ポイントの金利引き下げを実施した。これは,新型コロナウイルス感染症が拡大するなかで経済成長の下支えを優先したためである。その結果,政策金利は過去最低の3.75%となった。

このように3月上旬から中旬にかけて急激な資本流出と通貨安が起こったが,3月15日のアメリカの追加利下げでアメリカの実質的な金利がゼロになったため,新興国市場へ資本が戻り始めた。比較的金利が高く,為替市場の自由度も高いインドネシアは他の新興国市場に先んじて資本流入に転じた。第2四半期の金融収支は前期の31億ドルの流出から一転して109億ドルの純流入となった。しかし第3四半期の金融収支は9億ドルの純流入,第4四半期は9億ドルの純流出と,流入の拡大は続かなかった。

一方,株価指数は3月に年初の6283.5から3989.5まで急落したものの,4月以降順調に上昇して年末には6000台を回復した。為替相場も,証券投資からの資本流出がおさまり,株式市場が堅調に回復するにともない前年の水準(1ドル=1万4000ルピア前後)に落ち着きを取り戻した。

新型コロナウイルス感染症拡大への経済対策

国内で初めて感染者が確認されたのが3月2日であったこともあり,1月,2月は,インドネシアでは新型コロナ問題はまだ対岸の火事の出来事だった。しかし,2月に欧米を中心に移動制限が強化されたことで,インドネシアでも航空業や観光業に影響が表れ始めた。そこで政府は,2月25日に航空業,ホテルなどの観光業への支援を中心とした10兆2000億ルピア規模の第1弾パッケージ支援策を発表した。その内容は,外国人観光客誘致にむけた促進費に2985億ルピア,国内旅行促進費に4433億ルピア,ホテルやレストランに対する6カ月間の税免除(3兆3000億ルピア)などであった。さらに,2019年の大統領選におけるジョコウィ大統領の公約のなかで2020年開始予定とされていた1520万世帯の低所得層を対象としたコメや食用油,砂糖などの生活必需品の受給カード(Kartu Sembako)の支給額が,予定していた1世帯当たり月15万ルピアから20万ルピア(3月から6カ月間)に引き上げられた。また,同様に公約に含まれていた失業者や解雇された人の職業訓練を提供する就業準備カード(Kartu Prakerja)の開始を早めるなど,社会的保護として4兆5600億ルピアが支援策に盛り込まれた。

3月13日には22兆9000億ルピア規模の財政刺激策が第2弾パッケージとして発表された。その内容は,税インセンティブとして製造業および輸出目的の輸入関税免除スキーム(KITE)対象企業に対して従業員の所得税を政府が半年間負担する(DTP)ことや,19の特定分野について輸入時の前払い所得税の免除などであった。「公衆保健緊急事態」を宣言した3月31日には,新型コロナウイルス対策における国家財政政策・金融システム安定に関する法律代行政令2020年第1号が制定され(5月12日に法律2020年第2号として法律化),生活必需品受給カード支給対象世帯数の拡大,条件付き現金給付策である「希望の家族プログラム」(PKH)の1000万世帯までの拡大や就業準備カードの追加など405兆1000億ルピア規模の経済政策が発表された。

5月11日には国家経済復興プログラム(PEN)の実施に関する政令2020年第23号が公布され,社会的保護,中小零細企業支援,法人税の減免などのこれまで発表した支援を総括した総額641兆1700億ルピア規模の復興支援策が発表された。新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらないことからPENの予算はその後2度増額され,最終的に695兆2000億ルピアとなった。内訳は,医療分野に87兆5500億ルピア,社会的保護に203兆9000億ルピア,各省庁・地方政府への配分として106兆1100億ルピア,中小零細企業支援に123兆4600億ルピア,協同組合支援に53兆5700億ルピア,減税などの事業インセンティブに120兆6100億ルピアであった。その結果,2020年の財政赤字の想定額はGDPの6.34%に達した。

中銀による財政ファイナンス

国家財政政策・金融システム安定に関する法律2020年第2号によって,PENの支出負担を政府と中銀で分担(Burden Sharing)することが定められた。加えて2003年財政法によってGDPの3%と定められている財政赤字の上限が,2020年度から3年間に限り撤廃された。さらに中銀が国債を購入することも3年間に限り認められた。これは非伝統的金融政策と呼ばれるものであるが,インドネシアの場合その目的は流動性の供給政策ではなく,PENの支出をまかなうための財政ファイナンスであった。

PENの支出総額695兆2000億ルピアは,公共財支出397兆6000億ルピアと非公共財支出(中小零細企業・協同組合へのインセンティブなど)297兆6000億ルピアに分けられる。このうち公共財支出はすべて中銀の国債直接購入によってまかなわれることになった。中銀は,4月16日の財務省・中銀共同決定にしたがいグリーンシューオプション(追加的な発行の直接引受)で75兆8600億ルピアの国債を引受けたのにつづき,7月7日の共同決定にしたがって397兆5600億ルピアの国債を発行市場から購入するなど,合計473兆4200億ルピアの国債を購入した。しかも,政府に財政的な負担をかけないよう,その国債は実質的にはゼロクーポン債とするような措置がとられた。つまり,政府は国債の償還日に一旦中銀に利子を振り込むが,中銀は即日利子を政府に返済するという変則的な手法が採用されたのである。さらに中銀は,中小零細企業向けおよび協同組合向けインセンティブに対してそれぞれ114兆8100億ルピア,62兆2200億ルピアを負担することになり,非公共財支出297兆6000億ルピアの約6割が中銀の負担となった。したがって,2020年度の財政赤字1039兆ルピアの67%を占めるPEN支出のうち,94%は中銀財政ファイナンスによってまかなわれたことになる。

雇用創出法の制定と投資環境の整備

ジョコウィ大統領は第2期政権発足時の就任演説で,投資許認可の多さや行政手続きの煩雑さなど,インドネシアへの投資の障害の解消に向けて法整備を急ぐ考えを表明していた。経済成長には投資,特に海外からの投資が不可欠である。FDI流入がGDPの6%台と高い水準を維持するベトナムは,グローバル企業が米中貿易摩擦や新型コロナ禍でサプライチェーンの一部を中国から移転する際の最大の受け皿となっている。一方,インドネシアのFDI流入は2%程度で伸び悩んでおり,大統領はこうした外国投資の流れに危機感を抱いていた。

そこで政府は2月に投資環境改善のための法案を国会に上程し,10月5日に可決成立させた。そして11月2日の大統領の署名をもって,雇用創出に関する法律2020年第11号(雇用創出法)が,公布,施行されるに至った。労働組合や市民団体などから強い反対が表明されていながら政府・与党が強引な国会運営で法案の成立を急いだ背景には(策定のプロセスに関する問題については「国内政治」の項参照),労働法,投資法,会社法など改正を必要とする投資関連法制度の整備にこれ以上時間をかけることはできないという大統領の焦りがあった。

雇用創出法の特徴は,複数の法令を一括して改正し,ひとつの法律のもとに収めるオムニバス法と呼ばれる手法が採用された点である(表1)。その理由は,多岐にわたる関連法令をオムニバス法として1本にまとめることで,投資に関する多くの規定を一度の審議で改正することができるうえ,審議に必要な期間を一気に短縮することができるからであった。今回改正の対象となったのは78の法律と1237の条文で,これまでの規定を大幅に見直した。その結果,雇用創出法は全15章,186条からなる大部の法律になった。

表1  雇用創出法の構成と改正の対象となった法律

(出所)雇用創出に関する法律2020年第11号より筆者作成。

同法のポイントは,投資・事業の促進,労働法の改定,中小企業育成の3つに分けられる。そのうち投資・事業の促進の比重が大きく,条文の大半は第3章「投資環境およびビジネス活動の改善」(第6~79条)に割かれている。これに加えて,第6章「事業の円滑化」(第105~118条)および第8章「用地の確保」(第122~147条)など,投資・事業の簡素化・円滑化が条文の大部分をしめている。

第3章では新たな制度として,事業のリスクに基づいた(リスクベース)許認可制度(第3章第2部)が導入された。リスクベースとは,事業のリスクの度合いを(1)事業の健全性,(2)安全性,(3)環境,(4)資源の活用と管理の4つの視点と,(a)事業活動の種類,(b)事業活動の判断基準,(c)事業活動の場所,(d)資源の制限,(e)変動リスクという5つの要素に基づいて判断し,事業の許認可を管理する仕組みである。事業はリスクの度合いとリスクの蓋然性(ほぼ無い,低い,高い,ほぼ確実)に基づいて,低リスク,中リスク,高リスクに分類され,中リスクはさらに低リスク,高リスクに分けられる。事業内容はリスクに応じた許認可によって審査され,低リスク事業では事業基礎番号(NIB)の取得のみ,中の低リスク事業はNIBの取得と事業者が事業活動を行う際に事業基準を充たすという声明であるスタンダード証書を提出するだけでよくなった。中の高リスク事業ではNIBの取得の他,事業者が事業基準を充たすことを中央または地方政府が認証したうえでスタンダード証書を発行することよって事業が開始される。高リスク事業ではNIBの取得後,中央または地方政府が事業許可を発行する。

リスクはインドネシア標準産業分類(KBLI)番号ごとに判断され,18の事業分野(KBLI分類1531業種)のなかには2280のリスクのレベルがある。リスク別の分布は低リスク707(31.0%),中の低リスク458(20.1%),中の高リスク670(29.4%),高リスク445(19.5%)となっており,約半分の事業はリスクが低いと評価され,登録や申請のみで事業が開始できるようになる。

雇用創出法の施行にあたっては,細則などを定める施行令が公布日から3カ月以内に制定されることになっていた。その期日であった2021年2月2日,雇用創出法の施行細則として45本の政令と4本の大統領令が制定された。そのなかには,雇用創出法第77条で変更された投資法(法律2007年第25号)の施行令である投資事業分野に関する大統領令2021年第10号(2021年3月4日施行)が含まれている。その中身は,投資ネガティブリストの改訂である。投資要件を簡素化することで競争力を高め投資を呼び込むことを目的に,大統領令2016年第44号によって投資が禁止されていた20分野が,今回の改定により麻薬の栽培やギャンブル,化学兵器製造など6分野に削減された。つまり,残りの14分野については投資が解禁されたことになる。その一方で,政府が投資を優先する分野を定めたプライオリティリストが新設された。そこにはKBLIで183の業種が優先リストにあげられ,タックスホリデーやタックスアローワンスなどの優遇措置を与えられることが決められた。

雇用創出法による労働法の改定

雇用創出法のもうひとつの焦点は,労働者保護に手厚く,企業側にとっては負担が大きかった労働法(法律2003年第13号)の見直し(雇用創出法第4章第80~84条)であった。大きな変更点として,雇用関係終了(PHK)に関する規制の緩和がある。2003年労働法では,労働者を解雇する際に労使間の協議がまとまらなかった場合,原則労働裁判所の決定を得なければならなかったが,今回の改正で不要となった。さらに,旧労働法では企業が赤字の場合でも閉鎖・廃業しなければ労働者を解雇できなかったが,今回の改正で閉鎖・廃業をともなわない経営合理化も解雇事由となった。また,債務者に対する一定期間の債務支払猶予(PKPU)の申請が裁判所により承認されれば解雇可能になるなど,解雇事由が拡大された。

そのほかの大きな変更点としては以下のものがある。(1)外国人労働者の雇用に関する規制が緩和され,外国人を雇用する際に労働力省に提出する必要のある外国人雇用計画書(RPTKA)作成の免除対象が拡大された(第81条4項)。(2)有期雇用契約の規制が緩和され,原則として上限2年,延長・更新しても最大5年とさていた雇用期間の制限が撤廃された(第81条15項)。(3)アウトソーシングの規制が緩和された(第81条19項)。(4)残業規制が緩和され,残業の上限が1日3時間以内かつ週14時間以内から1日4時間以内かつ18時間以内に変更された(第81条22項)。(5)長期有給休暇の下限が撤廃された(第81条23項)。(6)最低賃金の計算方法が変更された(第81条24項)。(7)解雇規制が緩和された(第81条37項)。(8)退職金の計算方法が変更された(第81条44項)。(9)刑事罰の対象が変更された(第81条62~67項)。(10)失業保険が導入された(第83条)。

以上のように,労働関連に関する規定も非常に多岐にわたって変更や規制緩和が実施された。

雇用創出法による中小零細企業支援

中小零細企業に関する第5章「協同組合・零細小中企業の事業の円滑化と保護および強化」(第85~104条)の改定も雇用創出法の重点である(インドネシア語の法律では「零細小中企業」と表記される)。第87条で中小零細企業を区分する基準が変更された。2021年2月2日に制定された協同組合・零細小中企業の事業の円滑化と保護および強化に関する政令2021年第7号で中小零細企業の規模の基準が引き上げられた。零細小中企業法(法律2008年第20号)で定められた純資産額と売上高の基準は以下のように変更されたが,両基準とも中企業の上限に変更はない(表2)。

表2  法改正後の中小零細企業の基準

(出所)各種法律に基づき筆者作成。

ここでの改正の主眼は,オンラインを利用した会議や組織化により事業の円滑化を進め,中小零細企業・協同組合の発展を政府が後押しをすることにある。前述の政令2021年第7号によって,中央政府・地方政府は財・サービス支出の40%を中小零細企業・協同組合から調達することを義務付けられた。さらに,省庁や国営・地方政府企業のみならず,民間企業もショッピングセンターや空港などの公共インフラの30%を中小零細企業・協同組合の販促および事業開発スペースに割り当てること,そしてその賃貸料を商業価格の30%に制限することなど,支援策が数値をもって定められた。2008年の零細小中企業法では中小零細企業政策が保護ではなく手続きの簡素化などでインセンティブを与える方向に転換された経緯を踏まえると,今回の改正では再び保護色の強い支援策が加わったことになる。

同時に,中小零細企業は事業基本番号(NIB)を取得することが義務化された。ただし,事業のリスクに応じて大企業と同様の許認可手続きをとるものの,零細および小企業の多くはリスクの低い事業に相当すると考えられるため,事業許可,スタンダード証書およびハラル保証証明の3つを統一した電子媒体で許可することで,事業実施の簡易化が進められる。

株式会社法の条文の改定でも中小零細企業の事業の簡素化が進められた。雇用創出法第6章「事業の円滑化」第5部第109条で,株式会社に関する法律2007年第40号が改正され,5000万ルピアと定められていた授権資本金(株式会社が発行することのできる株式総数)下限を撤廃し,零細・小企業に関しては最低株主数を2人から1人に緩和するなど,同企業の設立手続・運営方法が簡素化された。

雇用創出法によって懸念される環境問題

雇用創出法による規制緩和で懸念すべき点もある。ビジネス環境の改善を掲げて自由化・規制緩和に軸足を移すあまりに,本来は安易な投資が進まないように抑制力をもつべき環境に関する規則が廃止された。条文から「環境への配慮」という言葉は消え,森林保護のために島の総面積の少なくとも30%は森林であることを定めていた規制が削除された。また,環境保護団体が参加していた環境影響評価は政府単独による実施に置き換えられた。さらに,これまでは事業実施に必要な環境許可には環境影響評価が義務付けられていたが,評価義務は廃止され,承認ベースに変更されるなど,環境破壊につながると懸念される大幅な規制緩和が盛り込まれた。世界が地球環境に配慮した持続可能な発展を目指すグリーン経済・グリーン成長に舵を切るなかで,世界の流れに逆行して環境への配慮に欠けた雇用創出法の制定には国際社会から厳しい視線が注がれている。

(濱田)

対外関係

新型コロナ対策で中国との協力を強化

2020年前半には中国との間でさまざまな問題が発生した。2019年12月下旬から2020年1月初頭にかけては,中国海警局の巡視船に護衛された約60隻の中国漁船が,インドネシアの排他的経済水域内である北ナトゥナ海域で2週間にわたって断続的に操業するという事象が発生した。これに対して装備の劣るインドネシアの海上保安庁は何の手出しもできず,1月8日にジョコウィ大統領が現地入りするまで中国漁船は操業を続けた。3月から4月にかけては,東南スラウェシ州コナウェに中国が建設しているニッケル精製工場の現場に中国からの労働者が入ってきている事例がソーシャルメディアでの投稿をきっかけに報告され,新型コロナ感染症の拡大を懸念する地元政府や住民から反発の声があがった。さらに,5月から6月にかけては,中国漁船で働いていたインドネシア人労働者が非人道的な扱いをうけ,船上で死亡した船員が海上で投棄された事例が複数あることも明らかになった。いずれの事件についても国内からは中国を批判する声があがった。しかし,政府は中国政府との関係を悪化させない方針を一貫して堅持し,あくまで話し合いによって問題の解決を図るとして強い批判などを控えた。

一方で,新型コロナ対策の切り札としてワクチンの早期調達を目指したジョコウィ政権は,中国との協力を最も重視した。8月20日にはレトノ・マルスディ外相とエリック・トヒル国営企業相が中国を直接訪問して王毅外相や製薬会社代表と会談し,2021年3月までに4000万回分のワクチンの供給をシノバック・バイオテック社からうけることで合意した。また,シノバック社とインドネシアの国営製薬会社ビオ・ファルマが協力して第3相臨床試験をバンドンで実施するとともに,シノバック社からの技術協力の下,ビオ・ファルマ社が国内で1億2500万回分のワクチンを生産することも決まった。インドネシアは,東南アジアのなかで中国製ワクチンの最大の調達国となった。

12月には,ワクチン調達の第1陣としてシノバック製のワクチン約300万回分が到着した。ルフット・パンジャイタン海事・投資担当調整相は,「インドネシアを新型コロナワクチン生産のハブにする」との方針を明らかにしている。

経済連携協定の締結

11月15日,ASEAN10カ国,日本,中国,韓国,オーストラリア,ニュージーランドの計15カ国が地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名した。2012年11月の交渉開始以来,8年にわたる交渉が完了し,世界のGDP,貿易総額および人口のおよそ3割を占める広域な経済連携協定が成立した。RCEPは2011年11月のインドネシアが議長を務めた第6回東アジア首脳会議(EAS)において,日本が提唱する東アジア包括的経済連携(CEPEA,ASEAN+6カ国)と中国が提唱する東アジア自由貿易圏(EAFTA,ASEAN+3カ国)の両構想をふまえて,EAS参加国における貿易・投資の自由化を促進し,かつ強化するための共同作業部会の設置が決定され,議論が始まった。インドネシアはRCEPの貿易交渉委員会(TNC)の議長国として調整役を果たした。

また政府は12月18日に韓国政府と包括的経済連携協定(CEPA)に署名した。前年のオーストラリアとのCEPA締結に続き,二国間協定としては2件目となった。2012年から韓国との間で交渉を続けた結果,インドネシアは92%,韓国は96%の物品で関税を撤廃することで合意し,RCEPよりも高い水準となった。2020年の韓国への非石油ガスの輸出は56億ドル(第8位),韓国からの同輸入は65億ドル(第5位),FDIは第5位の18億ドルとなっているように,韓国はインドネシアと経済的関係の深い国である。インドネシアは,CEPAの締結によって韓国からの投資が増加することを期待している。

(川村・濱田)

2021年の課題

まずは,いかに新型コロナウイルスの感染抑制を図るかが最大の課題である。ジョコウィ政権は2022年3月までに国民の7割のワクチン接種を完了するとの計画を立てているが,ワクチンが計画どおりに調達できるのか,またワクチン接種を順調に実施できるのかはわからない。ただし,新型コロナ感染対策の成否がジョコウィの政治基盤に大きな影響を与えることはなさそうである。一方で,政治的安定と引き換えに,市民的自由や権力の抑制などが犠牲になりつつあり,民主主義がこのまま後退していくのか注視される。

政府は2021年のGDP成長見通しを4.5%~5.3%の間としている。世界経済では電子機器部品を中心に製造業製品の輸出が活発化しているなかで,インドネシアの経済成長は依然として国内消費と天然資源輸出に依存している。国際的な生産ネットワークに組み込まれないままでは世界経済の回復に乗り遅れる懸念は大きく,政府が目指す5%成長もままならない。他方,経済成長の実現を目指して制定された雇用創出法は,今後のビジネス環境に大きな影響を与えると思われるが,雇用創出法施行のための政令が公布されたことをうけ,2021年は具体的な運用に向けて各法令間の整合性の検証や,雇用主と労働者間の技術的な問題への対処など多くの作業や調整が必要となる。雇用創出法が目指した経済活動の円滑化を実現するための重要な1年となる。

対外関係では,ジョコウィ政権は引き続き経済外交の推進を重視していくだろう。対中関係においても,ワクチン調達や経済的影響を考慮すると,南シナ海問題による関係悪化は避けたいところである。一方,ミャンマーのクーデターに対しては,ASEANによる問題解決に積極的に関与しようとしている。「民主主義の後退」という政権に対する批判を逸らしたいという思惑も垣間見えるが,実効性のある解決策を主導できるかが注目される。

(川村:地域研究センター)

(濱田:開発研究センター)

重要日誌 インドネシア 2020年
   1月
1日ジャカルタ中心部で2013年以来の大規模な洪水が発生。死者80人以上。
7日汚職撲滅委員会,シドアルジョ県知事サイフル・イラーを収賄容疑で逮捕。
8日北ナトゥナ海域の排他的経済水域における中国漁船の違法操業をうけ,大統領がナトゥナ島を訪問。中国漁船と中国海警局巡視船は同海域を退出。
8日汚職撲滅委員会,補欠議員任命の便宜と引き換えにハルン・マシク国会議員からの収賄容疑で総選挙委員会委員ワフユ・スティアワンを逮捕。ハルン議員は翌9日に贈賄の容疑者に指定されたが逃亡して行方不明に。
10日日本の茂木敏充外相が来訪。大統領,外相らと会談し,経済協力などに合意。
14日最高検,不正取引による巨額損失事件で国営生命保険会社ジワスラヤ社のヘンドリスマン・ラヒム元社長ら5人を逮捕。
17日大統領,首都移転の諮問会議委員にアラブ首長国連邦アブダビ首長国ムハンマド皇太子,孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長,トニー・ブレア元イギリス首相を任命。
   2月
2日中国湖北省に住むインドネシア人237人が政府チャーター機で帰国。リアウ群島州ナトゥナで2週間の隔離に。
5日運輸省の指示により,全航空会社が中国便を停止。
6日スマルリン元大蔵相が死去。
9日大統領,オーストラリアを訪問。10日には議会で演説。
12日国民信託党の全国大会で党首選が行われ,現職のズルキフリ・ハサンが再選。
12日政府,IS(「イスラーム国」)に参加していたインドネシア人の帰国を拒否する決定。
12日リアウ群島州カリムンでカトリック教会の建設が周辺住民による反対で中止に。
15日7回目となる国勢調査(センサス)が始まる。オンラインでの調査を一部導入。
18日日本に寄港しているクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号のインドネシア人乗組員78人のうち4人が新型コロナウイルスに感染していることが判明。
19日西ジャワ州スカブミでアフマディヤのモスク工事が周辺住民の反対で中止に。
20日インドネシア銀行(中銀),政策金利を0.25ポイント引き下げ4.75%に。
21日海上保安庁など政府13機関,ナトゥナ海域でのパトロール強化などに合意。
25日政府,観光業支援を中心とした10.2兆ルピア規模の経済政策パッケージを発表。
   3月
2日国内で初めて新型コロナ感染者が確認される。
7日パプア州ミミカ県で,警察や軍と武装集団の衝突により治安が悪化,住民950人以上が避難。
9日最高裁,カレン・アグスティアワン国営石油会社プルタミナ元社長に対する汚職事件の裁判で逆転無罪の判決。
10日オランダのウィレム・アレクサンダー国王夫妻が来訪。独立戦争期の行き過ぎた暴力を謝罪。
11日国内で初めて新型コロナ感染による死者。
13日政府,新型コロナウイルス緊急対策タスクフォースを設置。
13日政府,製造業を中心に所得税の減税を含む22.9兆ルピア規模の第2弾経済政策パッケージを発表。
13日運輸相の新型コロナ感染が判明。
15日民主主義者党,スシロ・バンバン・ユドヨノ元大統領の長男アグス・ハリムルティ・ユドヨノを新党首に選出。
17日インドネシア・ウラマー評議会(MUI),新型コロナ感染症拡大地域のモスクでの金曜礼拝禁止,自宅での礼拝を推奨。
19日中銀,政策金利を0.25ポイント引き下げ4.50%に。
20日政府,入国時のビザ免除措置を中止,新型コロナ感染症拡大地域からの入国を制限。
22日中国から医療物資12トンが到着。
23日為替相場で1998年以来のルピア安を記録。1ドル=1万6575ルピアまで下落。
24日教育・文化相,卒業認定のための全国共通試験の中止を発表。
26日大統領,外相,財務相とともにG20のビデオ会議に出席。
31日大統領,「公衆保健緊急事態」を宣言。国家財政政策・金融システム安定に関する法律代行政令2020年第1号を制定し,405.1兆ルピアの低所得層・失業者支援,特別減税等を発表。
   4月
2日外国人の入国禁止措置が始まる。
4日国家警察長官,新型コロナ対策についての訓令で,ソーシャルメディアで政府に関する偽情報が拡散するのを予防するためサイバーパトロールを実施することを指示。
6日新しい最高裁長官にムハマッド・シャリフディンが選出される。
10日ジャカルタ首都特別州での大規模社会制限(PSBB)が14日間の予定で始まる。
13日大統領,新型コロナ感染拡大を「国家的災害」に指定。
15日ジャカルタ周辺8県・市自治体とリアウ州プカンバル市で大規模社会制限開始。
20日ジャカルタおよび周辺地域の貧困層支援として生活必需品の配布が始まる。
22日西スマトラ州,西ジャワ州などで大規模社会制限が始まる。
22日警察,ソーシャルメディアで政府批判をしていた活動家ラフィオ・パトラを暴力煽動・差別的言動の容疑で逮捕。
24日ジャカルタでの大規模社会制限,28日間延長されることに。
24日政府,断食明け大祭に向けた帰省を禁止する措置を開始。
24日政府と国会,雇用創出法案のなかの労働関連条項の審議延期に合意。
24日新型コロナ対策での利益相反が指摘されていたミレニアル世代の企業家アンディ・タウファン・ガルーダ・プトラ,大統領特別スタッフを辞任。
27日政府,企業向け減税・支援策を拡大。
28日東ジャワ州スラバヤ市などで大規模社会制限開始。
28日政府,農業に従事する貧困層に対する現金直接給付を発表。
   5月
4日大統領,9月に予定されていた統一地方首長選の延期を決定。
5日海洋・漁業省,ロブスター幼生の輸出再開のための大臣令を制定。
6日西ジャワ州,5県・市に限られていた大規模社会制限を全州に拡大。
8日ジャカルタ汚職裁,ガルーダ航空元社長エミルシャー・サタルに対して収賄罪・資金洗浄罪で禁錮8年の実刑判決。
10日中国漁船で虐待を受けていたインドネシア人船員14人が帰国。
11日政府,641.2兆ルピア規模の国家経済復興(PEN)プログラムを策定。最終的には695.2兆ルピアまで予算規模が拡大。
12日国会,法律代行政令2020年第1号を法律化。鉱物・石炭鉱業法改正案を可決。
20日大統領,新しい海軍参謀長にユド・マルゴノを,空軍参謀長にファジャール・プラセトヨを任命。
26日政府,国連事務総長に南シナ海の領有権問題に関する口上書を提出。
   6月
1日西ジャワ州15県・市で大規模社会制限の一部を解除
1日汚職撲滅委員会,汚職容疑者に指定していたヌルハディ最高裁元事務総長を逮捕。
2日宗教相,2020年のメッカ巡礼をすべて中止すると発表。
3日ジャカルタ行政裁,2019年8月と9月に政府がパプアでのインターネット接続を制限・遮断した措置を違法とする判決。
5日ジャカルタ州で大規模社会制限の一部を解除。
8日バンク・バリ債権譲渡事件で禁錮2年の実刑判決をうけた後2009年から国外逃亡していたムリア・グループ創業家のジョコ・チャンドラが密かに一時帰国し,南ジャカルタ地裁に再審を請求。
12日汚職撲滅委員会,国営航空機製造会社ディルガンタラ・インドネシア元社長ブディ・サントソを収賄容疑で逮捕。
17日最高裁,汚職幇助の容疑で起訴されていた国営電力会社PLN元社長ソフヤン・バシルに対して無罪の判決。
18日中銀,政策金利を0.25ポイント引き下げ4.25%に。
29日ジャカルタ汚職裁,イマム・ナフラウィ元青年スポーツ相に対して収賄罪で禁錮7年の実刑判決。
   7月
1日世界銀行が1人あたり国民総所得(GNI)基準を改定したことでインドネシアが初めて上位中所得国入り。
2日汚職撲滅委員会,東クタイ県知事イスムナンダールとその妻で同県議会議長のエンチェック・フィルガシーを収賄容疑で逮捕。
14日国会,統一地方首長選延期に関する法律代行政令2020年第2号を法律化。
16日中銀,政策金利を0.25ポイント引き下げ4.0%に。
17日闘争民主党,ジョコ・ウィドド大統領の長男ギブラン・ラカブミン・ラカをスラカルタ市長選の候補者に公認。
20日政府,「新型コロナウイルス緊急対策タスクフォース」を「新型コロナウイルス対策・国家経済復興委員会」に拡大改組。
30日ジョコ・チャンドラ,逃亡先のマレーシアで逮捕される。
   8月
3日大統領,防疫指針の順守・監督を国軍の任務とする大統領訓令を制定。
8日グリンドラ党,党大会でプラボウォ・スビアントを党首兼諮問会議議長に再選。
11日最高検,ジョコ・チャンドラの逃亡幇助および収賄の容疑で検察官のピナンキ・シルナ・マラサリを逮捕。
11日西ジャワ州バンドン市でシノバック製新型コロナワクチン第3相臨床試験が始まる。
14日大統領,国民協議会で独立記念日演説。国会に2021年度国家予算案を提出。
18日政府を監視することを目的に,ムハマディヤ元議長ディン・シャムスディンらがインドネシア救済運動同盟(KAMI)を設立。
20日外相と国営企業相が訪中,海南省で王毅外相や製薬会社代表と会談。新型コロナワクチンの調達で合意。22日にはアラブ首長国連邦を訪問,ワクチンの調達に合意。
22日最高検察庁の本館で火事が発生。
   9月
1日大統領,ジョグジャカルタ国際空港の開港式に出席。
1日国会,判事の年齢制限引き上げや任期延長を定めた憲法裁判所法改正案を可決。
9日大手新聞『コンパス』紙を創業したヤコブ・ウタマが死去。
14日ジャカルタ州で再び2週間の大規模社会制限が始まる。大統領,新型コロナ感染者の多いジャワ島などの9州における対策を海事・投資担当調整相に指示。
19日パプア州インタン・ジャヤでイェレミア・ザナンバニ牧師が国軍に殺害される。
29日国会,2021年度国家予算案を可決。
  10月
5日国会,雇用創出法案を可決。
5日福祉正義党,新党首にアフマド・シャイクを選出。
8日ジャカルタでの雇用創出法反対デモで一部参加者が暴徒化し,治安部隊と衝突。
12日ジャカルタ州政府,大規模社会制限の一部を解除。
13日警察,雇用創出法への反対意見をソーシャルメディアで流布させたとしてインドネシア救済運動同盟のメンバーらを逮捕。
14日外相と国営企業相がイギリスを訪問,アストラゼネカ社との間で新型コロナワクチンの供給に合意。
14日国防相,訪米。
21日日本の菅義偉首相が来訪。
29日アメリカのポンペオ国務長官,来訪。
  11月
1日ジャカルタ州政府,2021年の州最低賃金を3.27%引き上げ442万ルピアにすることを決定。ただし,新型コロナ禍の影響を受けた企業には適用せず。
2日大統領,雇用創出法に署名,即日公布・施行。
10日イスラーム防衛戦線(FPI)リズィク・シハブ代表がサウジアラビアから帰国。
15日政府,地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名。
18日ジャカルタと西ジャワの両州警察本部長,14日にリズィク・シハブが自宅で開催した集会への対応の責任を問われ更迭。
19日中銀,政策金利を0.25ポイント引き下げ,史上最低の3.75%に。
21日大統領,外相,財務相,国家官房長官らとオンラインでG20首脳会議に参加。
25日汚職撲滅委員会,ロブスター幼生の輸出許可をめぐる収賄容疑でエディ・プラボウォ海洋・漁業相を逮捕。これをうけ海洋・漁業省はロブスター幼生の輸出を停止。
27日汚職撲滅委員会,チマヒ市長アジャイ・プリアトゥナを収賄容疑で逮捕。
27日インドネシア・ウラマー評議会,新議長にミフタフル・アヒヤルを選出。
27日中スラウェシ州シギ県で,イスラーム過激派東インドネシア・ムジャヒディンのメンバーがキリスト教徒の家族4人を殺害,6件の家屋に放火する事件。
  12月
1日ジャカルタ州知事とリアウ州知事の新型コロナ感染が判明。
3日汚職撲滅委員会,バンガイ・ラウト県知事ウェニー・ブカモを収賄容疑で逮捕。
6日汚職撲滅委員会,新型コロナ対策の社会扶助プログラムをめぐる横領・収賄容疑でジュリアリ・バトゥバラ社会相を逮捕。
6日中国からシノバック製新型コロナワクチンの第1陣120万回分が到着。
7日警察がイスラーム防衛戦線リズィク・シハブ代表の護衛者6人を射殺する事件。
9日9月から延期されていた統一地方首長選が269の州・県・市で実施される。
13日警察,新型コロナ防疫指針に違反して大規模集会を開催したとしてイスラーム防衛戦線リズィク・シハブ代表を逮捕。
18日政府,韓国と包括的経済連携協定(CEPA)に署名。
20日ジャカルタ東方145kmで建設していたパティンバン港で第1期開港式典開催。
23日大統領,内閣改造を実施。
30日政府,イスラーム防衛戦線の活動を全面的に禁止する処分。
31日中国からシノバック製新型コロナワクチン180万回分が到着。

参考資料 インドネシア 2020年
①  国家機構図(2020年12月末現在)

(注) 1)国家行政院(LAN),国家公文書館(ANRI),国家人事院(BKN),国立図書館,中央統計庁(BPS),国家標準化庁(BSN),原子力監視庁(Bapeten),国家原子力庁(Batan),国家情報庁(BIN),国家コード院,国家家族計画調整庁(BKKBN),国家宇宙航空庁(LAPAN),国土地理院,財政開発監督庁(BPKP),インドネシア科学院(LIPI),技術評価応用庁(BPPT),食品・薬品監視庁(BPOM),国家情報院(LIN),国家防衛研修所(Lemhanas),文化観光振興庁(Budpar)などを含む。

  2)第2期ジョコ・ウィドド政権の発足に伴い,省庁の再編が行われた。文化・初中等教育省が教育・文化省に,研究・技術・高等教育省が研究・技術省に,観光省が観光・創造経済省に再編された。また,所管する調整大臣府が変更された省庁もある。

②  「先進インドネシア内閣」(Kabinet Indonesia Maju)閣僚名簿(2020年12月末現在)

(注) 1)出身組織の略称は以下のとおり。PDIP:闘争民主党,Golkar:ゴルカル党,PKB:民族覚醒党,NasDem:ナスデム党,PPP:開発統一党,Gerindra:クリンドラ党。2)2020年12月23日の内閣改造で任命された大臣。

③  国家機構主要名簿
④  主要政党名簿

主要統計 インドネシア 2020年
1  基礎統計

(注) 1)人口は2020年は人口センサス結果。それ以外は中央統計庁(BPS)による推計値。2)労働力人口は,15歳以上の労働可能人口を指す。労働力人口と失業率は8月時点の調査結果。3)消費者物価上昇率は12月時点での前年比。

(出所) BPSのウェブ資料(https://www.bps.go.id/),Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, ウェブ版(https://www.bi.go.id/id/statistik/ekonomi-keuangan/seki/Default.aspx)。

2  支出別国内総生産(名目価格)

(注) 小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。

(出所) BPSのウェブ資料(https://www.bps.go.id/)。

3  産業別国内総生産(実質:2010年価格)

(注) 小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。

(出所) 表2に同じ。

4  国際収支

(注) IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。ただし,金融収支の符号は(+)は資本流入,(-)は資本流出。

(出所) Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, Statistik Utang Luar Negri Indonesia.

5  国・地域別貿易

(注) ASEANは9カ国の合計。輸出額・輸入額とも本船渡条件(FOB)価格での表示。

(出所) Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia.

6  政府財政

(注) 2017~2020年は執行分。2021年は予算。

(出所) 財務省,APBN KITA各号,Nota Keuangan Anggaran tahun 2021(https://www.kemenkeu.go.id/apbnkita).

 
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