Yearbook of Asian Affairs
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2021 Volume 2021 Pages 411-434

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2020年のミャンマー

概 況

2020年のミャンマーは,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行と西部ヤカイン(ラカイン)州での紛争激化という特殊状況下で11月に総選挙が実施され,アウンサウンスーチー(以下,スーチー)国家顧問率いる国民民主連盟(NLD)がふたたび圧倒的な勝利を収めた。

国内政治では,NLD主導の憲法改正が予想通りに頓挫したものの,総選挙ではNLDが前回を超える396議席を獲得して圧勝し,国軍が後ろ盾につく連邦団結発展党(USDP)は33議席にとどまる惨敗を喫した。感染症流行と内戦激化のために,選挙プロセスに対するさまざまな異議申し立てがなされ,とりわけ国軍・USDPは選挙に不備・不正があったと強く主張した。停戦・和平プロセスでは,ヤカイン州とチン州で近年最大規模の内戦が激化する一方,全国停戦協定署名組織との和平会議の開催など一定の進展もみられた。また,総選挙後には各地で新局面が訪れ,ヤカイン州とチン州での内戦は急速に収束に向かった。

新型コロナウイルス感染症は,3月に国内最初の感染者が確認された。3月から4月をピークとする感染拡大の第1波は,各種の対策により比較的小規模に抑え込むことに成功した。しかし,8月半ばに始まり,総選挙をはさむ10月から12月をピークとする第2波は大規模なものとなり,経済にもより深刻な影響をもたらした。とくに影響が大きかったのは工業部門とサービス業部門である。2020/21年度の第1四半期(10~12月)には,投資認可額も貿易額も前年同期の数値を大幅に下回った。

対外関係では,国際司法裁判所(ICJ)がミャンマーにロヒンギャ迫害停止の命令を出した。人権問題で欧米諸国との関係が冷え込む一方で,中国,インド,ロシアなどとの関係強化が進んだ。また,国際的な非合法ビジネス・ネットワークが国内の紛争地に浸透していることを改めて示すいくつかの出来事が生じた。

国内政治

新型コロナウイルス感染症の流行

2020年に全世界を覆った新型コロナウイルスの感染拡大は,ミャンマーにも及んだ。ミャンマーにおける流行の経緯は以下のとおりである。

年初から中国に端を発する感染拡大が世界各地へと広まるなかで,ミャンマーでは感染者が確認されない時期が比較的長く続いた。この間,政府は2月28日に新型コロナウイルス感染症を法定感染症に指定した。3月11日に世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的な大流行)であるとの認識を示すと,13日には対策を主導するための「新型コロナウイルス感染症の予防・抑制・治療に関する国家レベルの中央委員会」(委員長:スーチー国家顧問)を設置して,感染の拡大している国からの入国制限措置などを講じた。

3月23日に国内で初めての新型コロナウイルス感染者が確認され,月末までに,すべての入国者への隔離検疫実施,外交官などを除くすべての外国人への入国ビザ発給停止,商用の国際旅客航空便の着陸禁止,と矢継ぎ早に水際対策が取られた。4月1日にはスーチー国家顧問がFacebookを通じて国民に直に状況を伝え始めた。こうした対策にもかかわらず,市中感染が広まると,政府はミャンマー暦の年越しにあたる4月半ばの水かけ祭りの連休で大規模イベントを中止し,連休中の16日には,5人以上の集会を禁止する通達を発した。その後も各地で夜間外出禁止令が出され,とくにヤンゴンでは,複数の地区で住民に自宅待機を義務づけるなどの厳しい措置が取られた。これらの施策が功を奏して,感染の第1波は比較的小規模にとどまり,7月末までに収束に向かった。8月1日までに確認された累積感染者数は353人(うち死亡者6人)であった。多くの感染防止措置は継続されたものの,ヤンゴンの自宅待機措置は7月初めまでにすべて解除され,禁止対象となる集会の規模は5人以上から15人以上へ(7月29日),さらには30人以上へ(8月14日)と緩和された。

しかし,8月半ばから紛争地ヤカイン州で,9月にはヤンゴンでも感染者が急増し,第1波を大きく上回る感染拡大の第2波がはじまった。国内旅客便は運航停止とされ(9月11日),ヤンゴン管区域では前回以上に厳しい自宅待機命令がほぼ全域にわたってしかれた(9月20日)。それにもかかわらず,検査数の増加とともに新規感染者数は爆発的に増加した。総選挙の投票日をはさむ10月初旬から12月半ばにかけては毎日1000人を超え,年末までの累積感染者数は12万3740人(うち死亡者2664人)となった。しかし,12月に入ってからは新規感染者数が減少傾向を示し,2021年1月末までに1日300人程度にまで下がった。この間,12月16日には国内旅客便の運航が再開され,年末からは一部の地域で自宅待機命令が解除されはじめた。

憲法改正法案の否決

前年から議会の内外で争点化していた憲法改正については,本年最初の数カ月のうちに,実質的な改正はなしという事前に予想されたとおりの結果に終わった。

前年に連邦議会内に設置されたNLD主導の憲法改正合同委員会は,2本の改憲法案を起草し,これらは1月23日に議員351人の署名を付して連邦議会に提出された。この2本の法案には,軍の政治関与を弱めることを目的とする改正など,114の具体的な改正案が含まれた。他方,国軍およびUSDPは前年のうちに,地方自治の強化などに関する21の改正案を盛り込んだ5本の改憲法案を独自に議会に提出していた。3月中旬,連邦議会で合計7本の法案に含まれる135の改正案について個別に採決がとられた。憲法改正には,連邦議会議員の4分の3を超える賛成が必要であり,たとえNLDが過半数を占めていても,議席の4分の1は国軍議員に割り当てられているため,NLDと国軍との合意がなければ改正は実現しない。結果的に,ほとんどの改正案は否決され,4案のみが通過した。いずれも非常に些細な文言の修正に関するものだったが,うち2つの改正については憲法規定上,国民投票が必要であった(特定の条項の改正には,変更内容の大小にかかわらず,連邦議会通過ののちに国民投票による過半数の賛成が必要となる)。国民投票の実施に伴う多大な費用を勘案して,連邦議会は5月21日,これら2つの修正案に関する国民投票を無期限で延期することを承認した。

NLDにとってこの憲法改正の動きは,いかに実現の見込みが低くとも,総選挙前に公約の実現に向けて行動を起こしたという実績を作る意味があった。また,国軍・USDPを民主化の阻害要因として際立たせることで選挙戦を自らに有利に進めようという意図もあったと思われる。しかし,こうした行動がNLDと国軍・USDPとの関係をいっそう冷え込ませることになった。

総選挙で国民民主連盟が再度圧勝

11月8日,5年ぶりの総選挙がパンデミックと紛争激化という特殊状況下にありながら実施され,NLDがふたたび圧勝を収めた。

今回の総選挙では,紛争を主な理由としてヤカイン州,シャン州などの一部地域で選挙が実施されなかった。そのため,国政選挙で実際に選挙が行われたのは上院で全168選挙区のうち161選挙区,下院で全330選挙区のうち315選挙区のみであり,現行憲法下で行われた過去3回の総選挙のなかで争われた議席数はもっとも少ない。

合計476議席の政党別内訳は次のとおりである。NLDは,選挙議席の総数が減ったにもかかわらず,前回を超える396議席(選挙実施議席の83.2%,以下同じ)を獲得した。全国的な勝利を収めたが,とくに管区域(ネーピードーを含む)では圧倒的な強さをみせ,上院の84議席全部と下院の207議席中204議席を獲得した。第2党は前回同様,USDPであったが,議席数は33議席(6.9%)にとどまり,管区域ではわずかに下院の3議席しか獲得できないという惨敗だった。

NLD圧勝の最大の要因は,スーチーの絶大なカリスマである。ロヒンギャ問題を契機に,国際社会のスーチーに対する評価は失墜したが,国内においてはむしろ,外部の批判から身を挺して国家と国民を守る「母」なる存在として人気を確固たるものにした。また,選挙直前に国軍が政治への介入を強めるかのような発言をしたことも(次項参照),軍政回帰を恐れる国民のNLDへの投票を促した。ほかには,NLDが過去4年半のあいだに与党として党勢を強めていたこと,国民に別の選択肢を示せるような強力な野党が現れなかったこと,感染症対策による選挙活動への制限が既存の大政党に有利に働いたこと,なども勝因となった。

第3党以下はすべて少数民族政党となり,それぞれが拠点を置く州のみで議席を獲得した。第3党のシャン民族民主連盟(SNLD)と第4党のヤカイン民族党(ANP)はそれぞれ15議席(3.2%)と8議席(1.7%)を獲得した。SNLDが前回と同じ議席数を維持した一方で,ANPは同党への支持が厚いヤカイン州北部の9郡(上院の7選挙区,下院の9選挙区の合計16選挙区に相当)で選挙が中止されたために前回の22議席から大幅に後退した。

タアン(パラウン)民族党とパオ民族機構は,それぞれ前回と同じく5議席(1.1%)と4議席(0.8%)を,シャン州にある自らの地盤で確実に獲得した。躍進が大きかったのは,5議席(1.1%)ずつを獲得したカヤー州民主党とモン統一党である。両者は,2020年総選挙に先立って同一民族名を冠する複数の政党が合併して誕生した新党で,合併戦略が奏功したといえよう。同様に,合併によってできたカチン州人民党とワ民族党は,前回総選挙で合併前の前身政党が獲得したのと同じ1議席(0.2%)にとどまった。そのほか,ANP旧党首が離党して結成したヤカイン前衛党と,カチン州北部の武装勢力が後ろ盾となる新民主党(カチン)という2つの新党が,それぞれ1議席(0.2%)を獲得した。

選挙プロセスへの異議申し立て

投票当日に選挙監視に当たった国内外の諸組織は選挙結果の正当性を認め,多くの国民もこれを受け入れた。しかし,感染症流行と紛争激化という特殊状況にあったこともあり,投票日の前後にわたって,選挙プロセスに対するさまざまな異議申し立てがなされた。

まず問題となったのは有権者名簿であった。有権者名簿の不正確さはこれまでの総選挙でも指摘されてきたが,今回,選挙管理委員会(以下,選管)は500万人の新規有権者を加え,死亡者を削除して前回の名簿を更新する必要があった。そのうえ,移動制限や国内・国際航空便の運航停止,重症化しやすい60歳以上の高齢者全員に期日前投票を認めることなどの感染症対策によって増加した投票場所の変更や期日前投票の申請にも対応せねばならなかった。選管は7~8月と10月の2度にわたって有権者名簿をオンラインで公開し,修正を加えていったが,野党などから名簿の不備への指摘が相次いだ。結局,最終版の有権者名簿は全体が公開されることのないまま,投票当日に各投票所の前に関係箇所だけが貼りだされた。

また,投票日のタイミングにも疑問が呈された。投票日2カ月前の9月8日に選挙活動が始まるのとほぼ同じくして,感染症流行の第2波が到来したためである。9月15日,USDPはほかの23政党とともに選挙延期を要請する公開書簡を選管に提出した。その後も感染の拡大がやまず,移動制限や集会禁止などの感染症対策が各政党の選挙活動に大きな制約を加えるなかで,野党から選挙延期を求める声が繰り返しあがったが,選管およびNLD政権は期日どおりに実施するという姿勢を崩さなかった。

国外からも懸念が示された。9月22日,国連のトマス・アンドリュース人権状況特別報告者は,ロヒンギャへの選挙権付与が検討されていないことなどを理由として,総選挙は国際標準を満たさないだろうと指摘した。ロヒンギャはヤカイン北部を故郷とするムスリムで,正式な国籍を認められておらず,人口は100万人以上にもなる。2010年総選挙では選挙権を認められていたにもかかわらず,2015年総選挙の前に選挙権を否定され,今回の有権者名簿にも載せられなかった。しかも,2017年の国軍の苛烈な作戦行動によって,バングラデシュに逃げ込んだ90万人もの難民が帰国できないままになっているという状況にあった。

そのほか,国際人権団体は,憲法自体が民主的でないこと,内戦による国内避難民が数十万人という規模で存在すること,感染症対策で民間メディア関係者に移動制限が課されて報道の自由が不十分なこと,国営放送へのアクセスが与党に有利で不平等なこと,そして紛争地ヤカインでインターネット接続が長期にわたって制限されていること,なども問題点として指摘した(Human Rights Watch,10月5日)。パンデミックと国際航空便の運航停止によって,国外からの選挙監視団の規模が大幅に縮小する懸念もあった。

これらの問題に対する政府と選管の施策は限定的であり,ほとんどの点が是正されなかった。とくに内戦については,施策が新たな問題すら生み出した。10月半ば,選管は紛争を理由に一部地域での選挙中止を発表した。ヤカイン州北部9郡とシャン州北東部6郡では選挙区全域(連邦議会22議席分に相当)で,そのほか全国600以上の村落区でも選挙が中止され,100万人以上もの人々が投票する権利を失った。一部地域での選挙中止は2010年と2015年の総選挙でもみられたが,前回までは選挙区全域の選挙中止はシャン州に限られていたのに対して,今回は内戦が激化するヤカイン州にも適用された。選管の意思決定過程が不透明なこともあり,ヤカイン州民や同州北部を地盤とするANPは不満を募らせた。

こうしたなか,選挙直前に国軍が選挙に介入するかのような態度をみせたことで社会に衝撃が走った。11月2日付の通知で,国軍は選管の能力不足を指摘し,NLD政府の責任を問うたのである。すでに8月半ばに,USDPなどの政党代表者がミンアウンフライン国軍最高司令官と会談し,選管が選挙不正を試みた際には介入してほしいと嘆願したとの報道(Myanmar Now,8月20日)があったが,国軍が選挙プロセスに関して政府を公然と批判したのはこれが最初だった。

上記のさまざまな問題を抱えたまま投票日を迎えた後も,異議申し立ては続いた。惨敗したUSDPは,選挙直後から選挙に不備・不正があったとの主張を繰り返した。国軍は,最高司令官が投票日に選挙結果を受け入れる旨の発言をしたものの,11月末に選管に対して情報開示を求め,これが拒否されると年末から有権者名簿の不備・不正を主張する独自の調査結果を次々に公表しはじめた。国軍による調査結果の発表は2021年1月末までに29回を数え,1000万票分以上もの不備・不正の可能性が主張されるに至った。NLD政府と国軍との緊張が高まるなかで,同年2月1日,国軍によるクーデターが発生した。

選挙前の内戦状況:2年ぶりの和平会議開催も,ヤカインでは内戦加熱

停戦・和平プロセスでは,ヤカイン州で近年最大規模の内戦が激化する一方で,全国停戦協定署名組織との和平会議の開催など一定の進展もみられた。

前年に停戦・和平プロセスへの参加を一時中止していたカレン民族同盟(KNU)やシャン州復興評議会(RCSS)も含む10の全署名組織と,政府および国軍の代表者が出席するかたちで,2つのハイレベル会議が開催された。まず,1月8日,8回目の停戦協定実現調整会議(JICM)が約2年ぶりに開催された。これは重要な議題が生じたときのみに開催される会議で,今回は停戦・和平プロセスを加速させることが合意された。さらに,8月19日から21日にかけて,やはり2年ぶりに「21世紀のパンロン」会議が開かれた。この会議は政府,国軍,政党,全署名組織の政治対話の場であり,4回目の開催となる今回は,全国停戦協定履行のための枠組み協定15項目や,民主的な連邦制国家樹立のための根本原則5項目などが合意に至った。

非署名の武装組織との関係では,国軍は数年来いくつかの組織と戦闘を繰り返してきており,本年も全国停戦協定への新規署名はみられなかった。とくに西部のヤカイン州やチン州における国軍とアラカン軍(AA)との紛争は,2018年末から激化して過去数十年間でも最大規模の内戦となっていた。3月23日には,政府もAAをテロリスト組織と指定して対決姿勢を強めた。奇しくも同日,パンデミックの状況下で国連事務総長は全世界の武装組織に停戦を呼びかけた。これを受けて国軍は5月9日,翌日から8月31日までの期間について,全土での一方的停戦を宣言したが,テロリスト組織の活動領域は対象外とした。国軍側からの一方的停戦は,北部と北東部のみを対象とした前回の宣言が2019年9月に失効してから約半年ぶりだった。停戦の対象となった地方でも依然として戦闘が散発したものの,停戦宣言は失効が近づくごとに期間が1カ月ずつ延長され,本稿執筆時の2021年2月中旬現在で同月末まで効力を有している。

ヤカイン州とチン州では,激しい戦闘や誘拐・逮捕の応酬が続く一方,AAと政府・国軍との板挟みにあった地方行政官の辞職が相次いで行政が機能不全を起こし,8月半ばからは新型コロナウイルス感染症が拡大するなど,いっそう混迷が深まった。前年6月からの携帯電話のインターネット接続遮断もおおむね継続した。こうしたなか,10月14日にAAが11月総選挙に立候補していたNLDの候補者3人を誘拐すると,同月中に選管はヤカイン州の北部9郡全域およびその他の郡の145村落区,チン州の94村落区での選挙中止を発表した。この決定により,戦火のもとにある人々から投票による意思表明の機会が失われた。

選挙後の内戦状況:ヤカイン内戦収束へ,カイン州では緊張高まる

選挙に勝利したNLDは11月12日,48の少数民族政党に民主的な連邦制国家樹立に向けて協力を依頼する公開書簡を送付し,国軍も同月9日に高級将校5人からなる国軍和平協議委員会を設置するなど,選挙直後からNLDと国軍はそれぞれ停戦・和平に積極的に取り組んでいく姿勢を示した。この後,年末にかけて,内戦は地方ごとに新しい局面を迎えた。

ヤカイン州では,選挙中止地域での補欠選挙早期実現を目指すことで国軍とAAが一致し,内戦が急速に収束に向かった。両者の合意には,日本の笹川陽平・政府代表(ミャンマー国民和解担当)が仲介的役割を果たした。11月12日,AAが年末までの選挙実施を要請する声明を発出すると,国軍はすぐに同意を示して事実上の停戦が成立した。その後,両者の協議が繰り返され,2021年1月1日には拉致されていたNLD候補者3人が解放された。しかし,NLD政府は補欠選挙を1~2カ月以内に実施することには難色を示し続け,事態は膠着した。

他方で,東部のカイン州では,国軍の州内での存在感が強まり状況が緊迫した。数年来,自らの支配領域内に国軍が道路建設を進めてきたことなどに不満を募らせてきたKNUは,12月1日,国軍による全国停戦協定違反を非難する声明を発出し,その後,両者間の戦闘が続発した。また,国軍は年末に傘下の国境警備隊への圧力も強めた。カイン州国境警備隊は,反政府武装組織であった民主カレン仏教徒軍(DKBA)の大部分が前軍政末期に国軍と停戦して国軍組織に組み込まれたものであり,国軍の指揮下にありながら一定の自律性を有している。この国境警備隊がミャワディー近郊の拠点地シュエコッコーで進める非合法的な経済開発を問題視する機運が国内外で高まる(「対外関係」の項目で後述)なかで,国軍は年末に周辺地域にほかの部隊を展開して国境警備隊へのけん制を強めた。

また,北東部のシャン州では,総選挙で前回同様に票が割れ,NLD,USDP,少数民族政党が議席を分け合った。しかし,複数の武装勢力が割拠し,社会が軍事化され,深い亀裂を抱えたシャン州では,選挙への異議申し立てが他地域にも増して多発した。11月21日,上院の選挙区で接戦を制して当選していたNLDのタイッゾー候補が,チャウッメーの自宅で何者かに殺害される事件が起きた。いくつかの武装勢力の関与が疑われたが,年が明けても真相解明に至らなかった。

経 済

感染症流行の経済への打撃

パンデミック下で世界経済が失速するなか,ミャンマーでも感染症対策が経済活動を抑制し,とくに工業部門とサービス業部門に甚大な影響が生じた。3月から4月にピークがあった感染拡大の第1波は,各種の対策が奏功したこともあって,ほかのASEAN諸国と比べると経済失速の度合いも小さくてすんだが,8月半ばからの第2波の影響はより深刻なものとなった。

12月の報告で世界銀行(世銀)の調査チームは,2018/19年度(2018年10月から2019年9月まで)に6.8%だった実質国内総生産(GDP)成長率が,2019/20年度には1.7%,2020/21年度は2.0%に落ち込むと予測した。同時期の国際通貨基金(IMF)調査チームの予測では,2019/20年度が3.2%,2020/21年度が0.5%とされた。いずれの予測も,リスクを指摘しつつ,2021/22年度には8%近い経済成長が戻るという展望を示していたが,感染拡大の第2波が収束するかと思われた矢先の2021年2月,軍によるクーデターが発生した。2020/21年度以降の見通しには大幅な下方修正が必要になるだろう。

順調な外国投資が年末にかけて退潮

投資企業管理局(DICA)によると,2019/20年度の対内直接投資は認可ベースで55億2597万ドル(前年度比32.9%増)であった。会計年度後半の感染拡大第1波にもかかわらず,外資の流入は順調だったといえる。業種別では,電力が16億7189万ドル(前年度比17.9倍),製造業が11億2822万ドル(同16.3%減),不動産開発が11億1596万ドル(同5.3倍)であり,国・地域別では,シンガポールが18億5921万ドル(前年度比22.8%減),香港が14億2234万ドル(同3.1倍),日本が7億6847万ドル(同18倍),中国が5億5331万ドル(同12.8%減)であった。なお,上記の数値はいずれも外国投資法に基づく認可額であり,経済特区法に基づくティラワ経済特区への投資は含まれていない。2019/20年度のティラワ経済特区への認可ベースでの投資額は1億6328万ドルであった。

しかし,感染拡大第2波と重なる2020/21年度の第1四半期(2020年10~12月)の対内直接投資の認可額は3億4883万ドルにとどまり,前年同期比で70%減と大きな落ち込みをみせた。

貿易はパンデミックの影響で減退

商業省によると,2019/20年度の輸出総額は176億8109万ドル(前年度比3.6%増),輸入総額は190億5086万ドル(同5.3%増)であり,年間を通じた貿易額は輸出入ともに前年度を上回った。しかし,これはパンデミック以前の貿易額の伸びによるところが大きく,とくに工業製品の輸出は感染拡大の第1波によって大きなブレーキがかかった。そのため,近年減少傾向にあった貿易赤字幅は増加に転じて13億6977万ドル(同33.5%増)となった。

第5位までの国別の内訳をみると,輸出では,中国30.7%,タイ17.5%,日本7.7%,アメリカ5.1%,シンガポール4.3%となり,輸入では,中国35.3%,シンガポール16.0%,タイ10.6%,マレーシア5.7%,インドネシア5.5%となった。依然として中国が輸出入の3割強を占める最大の貿易相手国であり,近隣の東南アジア諸国との貿易関係も大きな比重を占めている。他方で,近年の欧米向けの縫製品輸出増加による貿易関係の多角化という傾向も,引き続き確認できた。欧州連合(EU)加盟国とイギリスへの輸出額を合計するとシェアは18.6%に上り,第2位のタイを抜いた。

感染拡大の第2波があった2020/21年度の第1四半期の貿易額は,輸出が40億2470万ドル(前年同期比15.5%減),輸入が39億975万ドル(前年同期比21.7%減)であり,貿易収支は黒字ではあるものの輸出入ともに前年同期と比べて大幅に減額した。

チャット高の進行とインフレ率の低下

為替レートは,2020年を通じて米ドルに対するチャット高が進行する傾向にあった。2019年末に1ドル=1500チャット前後で推移していた中央銀行の基準為替レートは,2020年9月~11月には1ドル=約1300チャットとなった。

他方で,インフレ率は低下傾向にあった。世銀調査チームによると,1月に9.1%だったインフレ率(前年比)は,徐々に低下して8月には1.8%になった。ただし,この間,主要貿易相手国よりも相対的に高いインフレ率が,チャット高の実質的な効果を高め,輸出競争力が弱まったことに留意したい。

政府の経済救済計画

NLD政府は,感染拡大の第1波を受けて,4月27日に「COVID-19経済救済計画」(CERP)を発表し,経済の立て直しを図った。CERPは7つの目標,10の戦略,36の行動計画,76の行動から構成される。そのうちの第1の目標には,金融刺激策によるマクロ経済環境の改善が掲げられており,CERP発表前の3月から5月にかけて,中央銀行は3度にわたり政策金利の引き下げを行った。政策金利の変更は8年ぶりであり,合計で3.0ポイント引き下げられて7.0%になった。そのほか,CERPに含まれて実行された政策には,さまざまな基金を用いた緊急低利融資による民間企業支援,納税の免除や猶予,諸種ライセンス料の減免,電気料金の一部免除などがある。

その後,総選挙と感染拡大の第2波を経て,NLD政府は2期目の経済政策のパッケージとしてCERPを改訂した「ミャンマー経済復興改革計画」(MERRP)の発表準備を進めていたが,クーデター前に発表には至らなかった。

対外関係

国際司法裁判所がロヒンギャ迫害停止を命令

ミャンマーがジェノサイド条約の規定に反してロヒンギャに対するジェノサイドを行ったとして,アフリカ西部の国家ガンビアが前年にミャンマーを相手取り国際司法裁判所(ICJ)に提訴していた裁判で,ICJは1月23日,ミャンマーに対してロヒンギャ迫害を止めるための「あらゆる措置」を取るよう求める仮保全措置命令を出した。これは同訴訟でICJが下した初めての判断であり,迫害がジェノサイドに当たるかどうかの審理は数年にわたって続くとみられる。ミャンマー政府は,仮保全措置命令の履行状況をICJに定期的に報告しつつも,一貫してジェノサイドであるとの見方は否定し続けた。また,本年も,バングラデシュ側に存在する90万人もの難民の帰還事業は進展をみなかった。

中国との経済関係緊密化,インドおよびロシアとの軍事協力進展

ロヒンギャ問題で欧米諸国との関係が冷え込んでいたことに加え,パンデミックのために年間を通じて外国との要人往来は低調であり,各種国際会議もオンラインで開催されることが多かった。しかし,中国,インド,ロシア,日本などとのあいだではハイレベルの来訪ないし往訪があった。なかでも,中国との関係は,2020年が国交樹立70周年の節目に当たることもあり,緊密さが目立った。

1月17日から18日の2日間にわたって,中国の習近平国家主席が来訪した。中国国家主席の来訪は2001年以来,およそ20年ぶりのことであり,今回の来訪中に経済協力などに関する33の文書に調印がなされた。中国は,「一帯一路」構想のもとにミャンマーを位置づけ,「ミャンマー・中国経済回廊」(CMEC)の建設を提唱してきたが,今回調印された文書にも,ヤカイン州チャウッピューでの経済特区および深海港建設に関するものなどが含まれ,両国が協力してCMEC関連事業を推進していくことが確認された。その後,ミャンマーが新型コロナウイルス感染症の拡大に苦しむなか,中国は官民を挙げてミャンマーに医療・経済援助を提供する一方,CMEC関連事業を遅滞なく進めるようにとのメッセージをミャンマー側に送り続けた。こうしたメッセージは,5月のウィンミン大統領と習近平国家主席との電話会談,9月の楊潔篪・中国共産党中央政治局委員の来訪,11月総選挙後に習近平が中国共産党総書記としてスーチー国家顧問へ送った祝電,そして2021年1月の王毅・国務委員兼外交部長の来訪でも繰り返された。他方でミャンマー側では,これらCMEC関連事業が過重債務や環境負荷をもたらす可能性が以前から懸念されており,NLD政府は,入札過程の監視や実行可能性調査の精査を第三者であるヨーロッパのコンサルティング会社に委託するなど,事業の透明性と妥当性を高める方策をとった。

インドおよびロシアとは,軍事面での関係強化が進んだ。国軍にとって,こうした動きは武器供給などでの中国への過度の依存をさけるという意味がある。インドについては,NLD政府が2月のウィンミン大統領訪問などで経済協力を進める一方,国軍も前年来,ミャンマー領内に拠点をもつ反インド政府武装勢力に攻勢をかけ,その見返りに対AA戦でインド軍から協力をとりつけるなどして関係を深めてきた。10月には,インドのハルシュ・V・シュリングラ外務次官とマノジ・M・ナラバニ陸軍参謀長がそろって来訪し,スーチー国家顧問に抗ウイルス薬を提供する一方で,ミンアウンフライン国軍最高司令官とも会談した。インド軍はミャンマーに877EKM型潜水艦(旧ソ連製)を供与し,国軍は上記のインド外交団来訪直後の海上軍事演習で,このミャンマー初の潜水艦を披露した。

ロシアとの関係はより軍事色が濃い。ミンアウンフライン国軍最高司令官は2017年から毎年,同国を訪問しており,本年6月の訪問時には,アレクサンドル・フォーミン国防次官と会談したほか,同地でインドのラジナート・シン国防大臣とも会談した。クーデター直前の2021年1月下旬には,ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣が3年ぶりに来訪し,ミンアウンフライン国軍最高司令官との会談で対空防御システムやドローンなどのミャンマーへの供与が合意された。

日本からも,感染症対策への支援がなされるなかで,8月に茂木敏充外務大臣が来訪し,国家顧問,国軍最高司令官とそれぞれ会談した。また,11月総選挙で日本からの選挙監視団を率いた笹川陽平・日本政府代表(ミャンマー国民和解担当)は,間を置かずに同月末から翌月初めにかけても来訪し,2度の滞在期間中に国軍とAAとの事実上の停戦合意を仲介することで存在感を示した。

越境的な非合法ビジネス・ネットワークによる経済の浸食

2020年には,国際的な犯罪組織や非合法ビジネス・ネットワークがミャンマーの紛争地に深く入り込み,国家の経済を蝕んでいることが改めて明らかとなった。ミャンマーでは政府統計に計上されない越境的経済活動が非常に大規模に行われており,たとえば年間に生産される翡翠(推定額100億~300億ドル)のほとんどが隣国へ密輸されているといわれる。また,ヘロインの世界有数の密造地でもあり,国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると,2020年に国内の犯罪組織が近隣諸国へのヘロイン輸出から得た利益は12億ドルにも上る可能性がある。こうした非合法ビジネスは,現地でさまざまな武装勢力の資金源となるのみならず,国際犯罪組織と結びついている場合も多い。各国のマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与への対策を評価する政府間会合の「金融活動作業部会」(FATF)は,2016年にミャンマーを監視強化の対象となる「グレーリスト」から外していたが,本年2月に政府の対策に不備があるとしてリストに戻した。これを受けてEUも,10月にミャンマーを同問題に関するハイリスク国に指定した。

麻薬については,近年,世界の市場でヘロインから合成麻薬へのシフトが起きており,これを反映してミャンマーではヘロインの原料であるケシの栽培面積が減少する一方,合成麻薬の生産が増加しているとみられる。2月から4月にかけて,国軍と警察はシャン州クッカイ郡で麻薬取り締まり作戦を実行し,麻薬取引に従事していた疑いで地元の民兵組織を武装解除するとともに,合成麻薬の製造施設を摘発し,メタンフェタミン2億錠やメチルフェンタニル約3750リットルを含む合計約18トン(国内価格で約3億ドル相当)もの非合法薬物を押収した。これは東アジア・東南アジアでは過去最大規模の押収であり,製造施設には国際的な麻薬シンジケートから大量の資金が流れ込んでいた可能性が強い。また,北米でオピオイド危機を引き起こしたメチルフェンタニルが大量にみつかったことが耳目を集めた。

東部のカイン州では,非合法ビジネスとの関係が疑われる3つの経済開発プロジェクトの存在が国際的に注目された。国境警備隊(「国内政治」の項目参照)が拠点地シュエコッコーで展開する「亜太(Yatai)新都市計画」,同じく国境警備隊が進める「賽西港(Saixigang)産業区計画」,そして,KNU幹部が絡む「環亜(Huanya)国際都市計画」で,それぞれ別の中国系企業(中国国籍をもたない華人が経営する企業も含む)が巨額の投資をする。4月の米国平和研究所の分析によると,これら3企業は,経営陣と国際犯罪組織との関係が疑われており,仮想通貨やカジノを扱う企業を前身とし,カンボジアのシハヌークビルでオンラインカジノ取り締まりが強化された2019年8月以降にミャンマーでの活動を加速させ,自らの活動を「一帯一路」構想と関連づけて宣伝するという共通点があった。このうち,シュエコッコーの計画については,政府の認可を得ずに巨大な開発に着手しているとして,NLD政府が6月に調査チームを発足させた。在ミャンマー中国大使館は8月,同計画は「第三国投資であり,一帯一路構想とは関係がない」との声明を出し,NLD政府による調査を支持した。

越境的な犯罪ネットワークの取り締まりには,国家間の協力が必要であり,前述のシャン州での麻薬取り締まり作戦も近隣諸国,アメリカ,オーストラリアなどとの協力のもとで進められた。アメリカ財務省は12月,カイン州賽西港計画に投資する尹国駒(Wan Kuok-koi)を,悪名高い三合会系犯罪組織「14K」の幹部として制裁対象に加えた。また,2021年1月には,オーストラリア連邦警察の長年の捜査が結実し,アジア最大の麻薬シンジケートの幹部である謝志楽(Tse Chi Lop)が逮捕された。しかし,麻薬の大量押収や重要人物の逮捕によっても,ミャンマーをとりまく非合法ビジネス・ネットワークの全貌が明らかになったわけではなく,かえって闇の深さが認識されることになった。

2021年の課題

2021年2月1日,第3次連邦議会が招集される予定だった日の未明に,国軍がクーデターを実行した。ウィンミン大統領,スーチー国家顧問をはじめNLD政権の要人が多数拘束され,ミンアウンフライン国軍最高司令官が全権を掌握した。軍は一連の過程を合法的なものだと主張するが,国民はそれを認めず,職務放棄による「市民的不服従運動」(CDM)や街頭でのデモを含む大規模な抗議運動を展開した。本稿執筆時では,政治的混乱の出口はみえず,先行きはきわめて不透明である。パンデミックと感染症対策で疲弊した経済への影響ははかりしれない。また,国軍による政権奪取の正統性をめぐって,諸外国の対応も割れるだろう。

(地域研究センター)

重要日誌 ミャンマー 2020年
   1月
1日政府,5カ国(チェコ,ルクセンブルク,ハンガリー,ニュージーランド,オーストリア)に到着ビザでの入国認める。
1日ベトナムとのあいだで30日以内のビザなし相互訪問開始。
8日第8回停戦協定実現調整会議(JICM),開催。
14日カンボジアのヴォン・ピセン王国軍総司令官,来訪(~16日)。カンボジア軍トップの来訪は初。
17日中国の習近平国家主席,来訪(~18日)。33の文書に調印。
17日中国の孫国祥アジア担当特使,カチン州ライザでカチン独立軍(KIA)やアラカン軍(AA)などと会合。
20日ヤカイン州人権侵害問題についての独立調査委員会,大統領に最終報告書提出。
21日AAに拉致されていたフェティン上院議員,解放される。
23日国際司法裁判所(ICJ),ミャンマーに対してロヒンギャ迫害停止を要請する仮保全措置命令を出す。
23日憲法改正合同委員会の起草した2本の憲法改正法案,連邦議会へ提出される。
   2月
1日政府,感染症対策で中国人渡航者への到着ビザ発行を停止。
2日ヘンリーヴァンティウ副大統領,韓国訪問(~7日)。
3日政府,ヤカイン州とチン州の5郡で一時回復していた携帯電話・インターネット接続をふたたび遮断。遮断地域は合計9郡に。
4日チョースェ内務大臣,軍務復帰。
4日ソーウィン国軍副司令官,インド訪問(~7日)。
10日ソートゥッ内務大臣,就任。
17日インドのカランビル・シン海軍参謀長,来訪(~20日)。
20日チョーティン国際協力大臣,ラオスの首都ヴィエンチャンで中国・ASEAN特別外相会議および第5回メコン-ランツァン(瀾滄江)協力外相会議に出席。
21日政府間機関の「金融活動作業部会」(FATF),マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与への対策に不備があるとしてミャンマーを「グレーリスト」に追加。
25日AA指導者トゥンミャッナインの妻子,拘留中のタイから国連難民高等弁務官の仲介によりスイスへ亡命。
25日モルディブ,人権派弁護士アマル・クルーニーを代理人として,ICJ裁判に参加の意向を示す。
26日ウィンミン大統領,インド訪問(~29日)。
28日政府,新型コロナウイルス感染症を法定感染症に指定。
   3月
5日チョーティン国際協力大臣,ラオス訪問(~6日)。
10日連邦議会,7本の憲法改正法案に含まれる135項目について採決(~20日)。4項目のみが通過。
11日世界保健機関(WHO),新型コロナウイルス感染症がパンデミック(世界的な大流行)に至っているとの認識を示す。
12日政府,感染症対策でイタリア,韓国,イランからの渡航者への入国制限強化。
13日政府,「新型コロナウイルス感染症の予防・抑制・治療に関する国家レベルの中央委員会」を設置。
15日政府,感染症対策で過去14日間に中国湖北省および韓国大邱広域市・慶尚北道に滞在していた外国人の入国禁止。
16日中央銀行(中銀),政策金利を0.5ポイント引き下げて9.5%に。政策金利の変更は8年ぶり。
20日政府,感染症対策で欧米9カ国を対象に追加的入国制限措置の発表。
23日政府,AAをテロリスト組織と指定。
23日国内で最初の新型コロナウイルス感染者が確認される。
23日国連のアントニオ・グテーレス事務総長,全世界の武装組織への停戦呼びかけ。
24日政府,すべての入国者に14日間の隔離検疫を義務づけ。
29日政府,外交官などを除くすべての外国人へのビザ発給停止。
30日Voice of Myanmarのネーミョーリン編集長,AAに取材したことが反テロリズム法違反に当たるとして逮捕。4月9日に釈放。
30日政府,商用の国際旅客航空便の着陸禁止。
   4月
1日中銀,政策金利を1.0ポイント引き下げて8.5%に。
1日アウンサンスーチー(以下,スーチー)国家顧問,Facebookアカウントの利用開始。
7日国軍,シャン州クッカイ郡で過去40日間に押収した非合法薬物が4120億チャット(約3億ドル)相当にのぼると報告。
8日中国武漢からの医療団,感染症対策支援のために来訪。
10日水かけ祭り連休,開始(~19日)。感染症対策のため大規模の集会は禁止。
14日スーチー国家顧問,感染症対策に関するASEAN関連首脳会議にオンライン出席。
16日政府,感染症対策として5人以上の集会を禁止。
17日ヤンゴンで夜間外出禁止令発出。
18日政府,ヤンゴン管区域7郡区で自宅待機義務化。24日に3郡区追加。
20日全国のすべての工場,感染症対策の視察検査のために一時閉鎖(5月15日まで)。
20日ヤカイン州ミンビャ郡でWHOの車両が襲撃を受ける。運転手が負傷して翌日死亡。
20日米国平和研究所,シュエコッコー計画などカイン州の3つの開発計画の問題性指摘。
24日中国人民解放軍の医療団,来訪。2週間にわたって国軍の医療チームと協働。
27日政府,「COVID-19経済救済計画」(CERP)を発表。
29日政府,ヤカイン州でのWHO車両襲撃事件に関する調査委員会を設置。
   5月
1日中銀,政策金利を1.5ポイント引き下げて7.0%に。
3日ヤカイン州マウンドー郡でインターネット接続復旧。残り8郡では遮断継続。
9日国軍,一方的停戦宣言発出(西部を除く全土で)。翌日から発効。
15日ミャンマー国内で逮捕された北東インドの反インド政府武装組織活動家22人が特別航空便でインドへ送還される。
20日ウィンミン大統領,中国の習近平国家主席と電話会談。
21日連邦議会,議会を通過した4項目の憲法改正案のうち2項目に関する国民投票を無期延期することを承認。
22日前タニンダーリー管区域首相レーレーモーに収賄罪で収監30年の判決。
23日政府,ICJに初めての報告書提出。
   6月
15日政府,シュエコッコー計画に関する調査チームを組織したと発表。
22日ミンアウンフライン国軍最高司令官,ロシア訪問(~25日)。24日にはインドのラジナート・シン国防大臣と会談。
29日スーチー外務大臣,日本の茂木敏充外務大臣と電話会談。
   7月
1日欧州連合(EU)加盟6カ国,ミャンマーの債務返済を延期。
2日カチン州パカン郡の翡翠採掘場で大規模な地滑り。200人以上が生き埋めに。
6日イギリス,国軍最高司令官および副司令官に制裁。
25日選挙管理委員会(選管),有権者名簿をオンライン掲示(~8月14日)。
29日政府,感染症対策としての集会禁止を5人以上から15人以上へと緩和。
   8月
1日政府,ヤカイン州・チン州の8郡でのインターネット接続に関して2Gサービスのみ再開。3Gと4Gは規制継続。
14日政府,感染症対策としての集会禁止を15人以上から30人以上へと緩和。
16日ヤカイン州で1カ月ぶりの国内感染が確認される。この後,1週間で200人以上の感染確認。
17日ロシア訪問中のミャトゥンウー国軍統合参謀総長,アレクサンドル・フォーミン国防次官と会談。
19日第4回「21世紀のパンロン」会議,開催(~21日)。
20日Myanmar Now,連邦団結発展党(USDP)などの政党代表者が国軍最高司令官と会談し,選管が選挙不正を試みた際には介入してほしいと嘆願したと報道。
24日ウィンミン大統領,メコン-ランツァン協力首脳会議にオンライン出席。
24日日本の茂木敏充外務大臣,来訪(~25日)。
25日在ミャンマー中国大使館,シュエコッコー計画は「一帯一路」とは無関係と表明。
   9月
1日中国の楊潔篪・中国共産党中央政治局委員,来訪(~2日)。
1日カヤー州議会,州首相弾劾を決議。
3日大統領,エルパウンショー・カヤー州首相を罷免。
8日選挙キャンペーン開始。
11日感染症対策で国内旅客便運航停止。
15日USDPなど24政党,選管に選挙延期を要請する公開書簡を提出。
20日ヤンゴン全域での自宅待機命令発出。翌21日より発効。
22日国連のトマス・アンドリュース人権状況特別報告者,11月総選挙は国際標準を満たさないと発言。
30日政府,統一民主党(UDP)のチョーミン党首を逮捕したと発表。
  10月
1日選管,2度目の有権者名簿オンライン掲示(~14日)。
1日EU,マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策の分野で戦略的な不備を有する国にミャンマーを追加。
4日インドのマノジ・M・ナラバニ陸軍参謀長とハルシュ・V・シュリングラ外務次官,来訪(~5日)。
5日国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ,11月総選挙は「根本的に欠陥がある」と指摘。
10日選管,60歳以上の有権者の期日前投票を行う方針を発表。
14日AA,11月総選挙に立候補していた国民民主連盟(NLD)の候補者3人を拉致。
14日ユニセフ,国軍とAAとの戦闘で子どもが死亡したことに重大な懸念を表明。
15日国軍,海上軍事演習でインドから供与された潜水艦を披露。
16日選管,選挙を実施しない地域を発表。ヤカイン州9郡とシャン州6郡は選挙区全体,その他全国で581村落区が対象。
17日選管,UDPの政党登録を取り消し。
27日選管,チン州パレッワ郡の94村落区で選挙を実施しないと発表。また,16日発表の非実施村落区から10村落区を除外。
27日チン州で初の空港となるファラム空港でテストラン。
29日日本の笹川陽平・政府代表(ミャンマー国民和解担当),選挙監視団の団長として来訪(~11月11日)。
  11月
2日国軍,選挙プロセスについて選管とNLD政府を批判する声明を発出。
2日逃亡していた仏僧のウィラトゥー師,ヤンゴンの警察署に自首。
3日ミンアウンフライン国軍最高司令官,ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣と電話会談。
5日スーチー国家顧問,タイのプラユット・チャンオーチャー首相と電話会談。
8日総選挙投票日。ミンアウンフライン国軍最高司令官,選挙結果受け入れる旨発言。
9日国軍,和平協議委員会を発足。
12日スーチー国家顧問,第37回ASEAN首脳会議にオンライン出席。
12日NLD,48の少数民族政党に協力を依頼する公開書簡送付。
12日AA,選挙非実施地域での選挙を年末までに実施することを求める声明を発出。国軍も同日中に同意を示す。
14日スーチー国家顧問,第23回ASEAN+3首脳会議および第15回東アジア首脳会議にオンライン出席。
15日スーチー国家顧問,第4回地域的な包括的経済連携(RCEP)首脳会議にオンライン出席。RCEP協定署名。
17日中国の習近平・中国共産党総書記,スーチー国家顧問に祝電。
21日シャン州第1選挙区から上院議員に選出されたNLDのタイッゾー候補が,チャウッメーの自宅で殺害される。
23日政府,ICJに2度目の報告書提出。
24日韓国の金健(キム・ゴン)外交部次官補,来訪(~27日)。
25日日本の笹川陽平・政府代表(ミャンマー国民和解担当),再来訪(~12月4日)。ヤカイン州視察。ミャンマー政府に投票の早期実現を要請。
25日国軍,AAとのオンライン協議を実施。
30日国軍,選管に対して情報開示要求。
  12月
1日カレン民族同盟(KNU),自領からの国軍の撤退を求める声明を発出。
1日反腐敗委員会のアウンチー委員長,辞任。
9日国軍とAA,ワ州連合軍(UWSA)の拠点パンカン(パンサン)で対面協議。
9日ウィンミン大統領,第9回エーヤーワディー・チャオプラヤー・メコン経済協力戦略会議(ACMECS)首脳会議および第10回カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム(CLMV)首脳会議にオンライン出席。
9日米財務省,尹国駒に制裁。尹国駒はカイン州で問題視される経済開発にも関与。
10日市民活動家ノーオウンフラ,Civil Rights Defender of the Year Award受賞。
10日国軍,ふたたび選管に情報開示の要求。
16日国内航空便の発着再開。
17日チョーティン国際協力大臣,アメリカのスティーブン・ビーガン国務副長官と電話会談。
23日国軍,有権者名簿の一部の独自調査結果を公表。
24日ヤンゴン管区域フレーグー郡区で韓国・ミャンマー工業団地(KMIC),起工式。
24日国軍,海軍73周年記念式典開催。ロシア,インドから来賓。
26日国軍,有権者名簿の一部の独自調査結果を公表(2回目)。
27日一部の地域で自宅待機命令緩和。
29日国軍,有権者名簿の一部の独自調査結果を公表(3回目)。
31日国軍,有権者名簿の一部の独自調査結果を公表(4回目)。

参考資料 ミャンマー 2020年
①  国家機構図(2020年12月末現在)
②  2020年に制定された主な法律

(出所)連邦法務長官府Myanmar Law Information Serviceウェブサイト

https://www.mlis.gov.mm/)より作成。

③  連邦政府閣僚

(注)政党はNLD:国民民主連盟,USDP:連邦団結発展党,MNP:モン民族党。

(出所)各種報道より作成。

④  管区域・州首相

(注)1)カヤー州では,前州首相の罷免により,同州農業・畜産・灌漑大臣が州首相代行。

(出所)資料③に同じ。

主要統計 ミャンマー 2020年
1  基礎統計

(注)2018年に会計年度の変更があったため,2017/18年度までは4月~3月。2018年度は4月~9月の半年間。2018/19年度からは10月~9月。2018年度まではすべて出所①の数値。2018/19年度以降の人口は出所②の数値。2018/19年度の籾米生産高と消費者物価指数は出所③の数値。為替レートは,2019/20年度までは出所④の数値,2020/21年度は出所⑤の11月26日の数値。

(出所)①Central Statistical Organization, Statistical Yearbook 2019; ②Asian Development Bank, Key Indicators for Asia and the Pacific, 2020; ③Myanmar Statistical Information Service Website (http://mmsis.gov.mm); ④Central Bank of Myanmar, Reference Exchange Rate History Website (http://forex.cbm.gov.mm/index.php/fxrate/history); ⑤Myanmar Statistical Data Dashboard Website (http://www.mmsdd.org).

2  産業別国内総生産(実質価格,2015/16年価格)

(注)2015/16年度生産者価格に基づく。会計年度はすべて10月~9月として算出し直したもの。

…データなし。

(出所)Asian Development Bank, Key Indicators for Asia and the Pacific, 2020.

3  国家財政

(注)会計年度変更のため2018年度は4月~9月の半年間。

(出所)Central Statistical Organization, Statistical Yearbook 2019.

4  国際収支

(注)…データなし。IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。金融収支の符号の(-)は資本流入,(+)は資本流出。

(出所)Asian Development Bank, Key Indicators for Asia and the Pacific, 2020.

5  国別貿易

(注)国境貿易を含む。…データなし。1)2018年度は会計年度変更による移行年度のため4月~9月の6カ月間。2)2020/21年度の数値は10月~12月の3カ月間のみ。

(出所)Ministry of Commerce Website(http://www.commerce.gov.mm/).

6  品目別貿易

(注)国境貿易を含む。1)2018年度は会計年度変更による移行年度のため4月~9月の6カ月間。

2)2020/21年度の数値は10月~12月の3カ月間のみ。

(出所)Ministry of Commerce Website(http://www.commerce.gov.mm/).

 
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