2021 Volume 2021 Pages 435-458
バングラデシュにとって2020年は,アワミ連盟(Awami League:AL)政権を率いるシェイク・ハシナ首相の実父であり,建国の父であるシェイク・ムジブル・ラフマン(以下ムジブ)の生誕100周年を記念した「ムジブ年」とされ,全国各地で盛大な記念行事が行われるはずだった。新型コロナウイルス感染症の流行によりこうした行事は中止されたが,政府はさまざまな形でムジブの業績を称えた。他方,収賄罪で収監中の主要野党バングラデシュ民族主義党(Bangladesh Nationalist Party:BNP)のカレダ・ジア総裁は,3月25日,体調悪化を理由とした刑の一時停止措置によって自宅に戻った。しかし野党の活動は低調に終わった。
国内初の新型コロナウイルス感染症陽性者は3月8日に確認され,18日には死者が出た。政府は3月26日から5月末まで全土を対象にロックダウン(都市封鎖)を行った。12月末現在の感染者数は51万3510人,死者数は7559人に上った。2つのピークを経て,12月には新規感染者数および陽性率は低下した。
政府は大規模な経済対策によってコロナ禍で落ち込んだ経済の立て直しを図った。感染拡大の影響が限定的だった2019/20年度(2019年7月~2020年6月)の経済は,前年度の8.2%よりは大幅に低下したものの,5.2%の成長率を維持した。2020/21年度(2020年7月~2021年6月)の前半も回復はほぼ順調とみられる。一方新型コロナウイルス感染症は経済社会的弱者に深刻な影響を及ぼした。
外交面では,米中,印中という2つの対立の影響が,バングラデシュへも波及していることを示唆する展開がみられた。
2020年最初の与野党対決の場は,2月1日に実施された南部ダカ(DSCC)および北部ダカ(DNCC)特別市市長・市議会議員選挙であった。2011年11月にダカ特別市が分割されて以来2度目の選挙である。前回選挙では共にALが市長ポストを獲得した。ALにとっては,2018年の第11次国民議会(国会)選挙で一方的勝利を収めて以来の正当性を示す機会であり,一方野党BNPは「民主主義を再興する」として選挙に参加した。2019年12月31日の立候補受付日から,選挙規則に反して両党支持者が大挙してデモ行進を行うなど,有権者の関心も高かった。
与野党の候補者は以下のとおりである。DNCC市長選のBNP候補タビト・アワルは有力財閥創業者の息子で,前回の選挙にも出馬したが,不正投票を批判して終盤で辞退していた。AL候補の現職DNCC市長アティクル・イスラムは,衣類製造業者・輸出業者協会(BGMEA)の元会頭である。DSCCのAL市長候補シェイク・フォズル・ヌール・タポシュは法廷弁護士出身で,ダカ10区選出国会議員を辞めて出馬した。ハシナ首相の親戚筋にあたる。DSCCのBNP市長候補イシュラク・ホセインは,2002年から2011年までダカ市長を務めたサデク・ホセイン・コカの息子である。上記4人を含む,市長・議員立候補者740人の宣誓供述書の分析によれば,候補者の出自はDNCCで73%,DSCCで74%がビジネスマンで,その割合は2015年選挙時の67%,71%よりも上昇していた。
選挙期間中,BNPタビト候補がAL支持者に襲撃される事件が起きた。DSCC地区でも両党が衝突し,BNPホセイン候補がAL支持者らを非難した。BNPは在ダカ外交団に対しても,与党による選挙規則違反や暴力行使の現状を訴えた。
今回の選挙は,電子投票機(EVM)を大々的に利用する初の選挙となった。EVMの使用には,BNPを含む35政党やガバナンス改善に取り組む市民団体などが,票の不正操作の可能性や有権者への教育が不十分との理由から反対していた。2018年総選挙では,EVMを利用した6選挙区の投票率は51.42%,それ以外が80.8%と大きな差があった。2020年1月30日には2468カ所すべての投票所でEVM投票のリハーサルが行われたが,参加者は少なかった。
結果はALが大差で勝利した。ALは両市長ポストを勝ち取り,市議会議員選挙では合計129の議席のうち98は公認候補,19は非公認のAL候補が獲得した。BNPは9議席であり,残りはその他野党候補が得た。女性留保議席43については,AL候補が31,BNPが7議席を得た。公式発表はなかったが,投票率は共に30%未満とみられている。報道によるとEVMに関しては,登録済みの指紋との不一致,投票ブースでの不完全なプライバシー保護,与党「ヘルパー」による投票介入といった,さまざまなトラブルが発生した。BNPは,「茶番劇である」として結果の受け入れを拒否し,投票日の翌2月2日に抗議のハルタル(ゼネスト)を実施したが,同日のBNPの行動は抑制的であった。多数の訴追に直面している指導者が多く,街頭での組織的な対応がとれないということが背景にある。
BNPによる抗議とカレダBNP総裁の一時釈放BNPがとった次の行動はカレダ総裁の釈放を求める運動の再活性化であった。32件の訴追を受け,すでに2件で実刑判決を受けたカレダ総裁は,2018年2月8日以来収監され,2019年4月1日以後は体調悪化のため,政府指定の病院(BSMMU)に入院していた。保釈請求は同年12月に最高裁上訴部で却下された。総裁は,糖尿病,高血圧,喘息,背中の痛みなどを併発しているといわれる。
2020年2月8日,カレダ総裁の逮捕2周年に合わせ,BNPは釈放を求めるデモを行った。10日には総裁の弟がBSMMU宛てに,よりよい治療を求める書簡を出し,11日には妹がメディアの前で人道的見地から釈放を訴えるなど,家族と党が協調して国民にアピールした。15日,BNPは再び総裁釈放を求めるデモを行った。これに対し与党は16日,アサドゥッザマン内務相やホク法務相ら幹部が,有罪を認め謝罪を行った後に特赦を求めれば政府は釈放を検討すると発言した。18日,カレダ総裁は,家族の勧めに従い高裁に対して再度保釈請求を行った。これまで保釈や特赦を求めてこなかったカレダ総裁自身による請求は,総裁が気力,体力ともに衰えつつあることをうかがわせた。27日,高裁はカレダ総裁の治療に関する情報をBSMMUから取得し,BSMMUに対してより高度な治療を行うよう指示したうえで再び保釈請求を却下した。
3月になり,総裁の妹は,呼吸障害など総裁の体調悪化が著しいと再び訴えた。8日には,家族が内務相宛てに「一時的」釈放を願う書簡を送ったことをBNP幹事長が明らかにした。それに対し3月24日,政府は刑事訴訟法第401条第1項に基づき,人道的見地からカレダ総裁の刑執行を6カ月停止し,ただし出国は認めないと発表した。翌25日,病院前には朝からBNP幹部や活動家が集まり出迎えたが,総裁は手を振ったり記者団に話をしたりすることなく,車上の人となり帰宅した。当日は党幹部らとも面会しなかった。党の中には,カレダ総裁による活発な政治活動を通じた党の活性化を望む声がある一方で,それにより政府の刑執行再開を招くのではないかと懸念する意見もある。カレダ総裁不在中の党の意思決定は,ロンドンに亡命中の総裁の長男タレク・ラフマン総裁代行が行ってきた。党幹部の多くは総裁の下での活動を望んでいるようだが,期待に反して年内に目立った政治活動はみられなかった。9月15日,政府はカレダ総裁の刑執行停止期間を半年延長した。新型コロナウイルス感染症拡大がその背景にあると思われる。
新型コロナウイルス感染症拡大下の政治状況新型コロナウイルス感染症拡大(後述)は政治日程に影響を及ぼした。3月21日,選挙管理委員会は,感染症拡大を理由に29日に予定されていたチョットグラム(チッタゴン)特別市市長・市議会議員選挙の延期を発表した。他方,国会補欠選挙は3月21日と4月14日に実施されたが,BNPは「パンデミックと洪水」を理由に参加しなかった。BNPは,3月末から始まった行動規制の緩和の見通しがたった8月下旬に選挙への参加を決めた。その後に行われる5選挙区の国会補欠選挙や,全国4571のユニオン(行政村)議会選挙に向けた方針転換であった。
9月から11月にかけて実施された国会補欠選挙は,5区(パブナ4区,ダカ5区,ノウガオン6区,ダカ18区,シラジゴンジ1区)すべての議席をALが獲得した。AL支持者による野党支持者への圧力や,そうした行為に対する治安当局による取り締まりの不徹底,感染症拡大による政治活動の制限,指導者の不在がBNPの主な敗因である。投票率は全体的に低調だったが,シラジゴンジ1区では51.75%と半数を上回った。
BNP以外の野党の中では内部紛争が生じた。たとえば人民フォーラム(Gono Forum)の内紛は9月に表面化した。同党はALの重鎮であったカマル・ホセインが離党し1993年に創設した。新旧幹事長を中心とする対立のなかで,9月26日に一方の勢力が中央委員会拡大会議を招集し,現幹事長ら数人の幹部を党の規律違反で「除名」する決定を行なった。他方,キブリア現幹事長は,その会議は党とは無関係とし前幹事長勢力の「除名」を発表した。12月になってカマル・ホセイン総裁が相互「除名」は無効であると表明して解決をはかった形となっている。
反ALで団結した野党連合のなかにも亀裂がみえ始めている。カマル・ホセイン人民フォーラム総裁が代表を務め,BNPも含む主要野党連合の国民統一戦線(Jatiya Oikya Front:JOF)は,2018年の国会選挙以後活動を停止している。また,同選挙結果の受け入れを議論した際,人民フォーラムがBNPとの協議なしに,自党当選議員の国会参加を決めたという経緯もあり(『アジア動向年報2020』参照),BNPにはJOFと関係を断ち独自の道を行くべきといった声も出始めている。
他方,主要野党に代わる政治勢力として注目されつつあるのが宗教政党・組織である。南北ダカ特別市市長選挙でAL,BNPについで第3位となったのは,従来第3勢力と位置付けられてきた国民党(Jatiya Party)ではなく,バングラデシュ・イスラーム運動(Islam Andolan Bangladesh:IAB)であった。1987年に設立された同政党は,イスラーム国家樹立を目指しつつも,非ムスリムの宗教的権利擁護も謳うなど穏健な性格を有する。ALはBNPに対する厳しい対応と対照的に,同党の集会開催には介入しないなどといった姿勢を示している。その理由として,セキュラリズム(バングラデシュの文脈では多宗教共生)を掲げるALが掌握しきれないイスラーム支持勢力の吸収先として,同党を位置づけているという見方がある。とりわけ,BNPと近い関係にあり,またバングラデシュ独立に際しパキスタンを支持して独立派弾圧に加担したとしてALが敵視するイスラーム協会(Jamaat-e-Islami)の支持基盤切り崩しの意図が推測される。
同じイスラーム勢力でも,ALが対応に苦慮したのが,へファージャテ・イスラーム(Hefajat-e-Islam:HI,「イスラーム擁護」の意)である。HIは宗教の名を借りた政治組織だとの指摘もあるが,非政府系のマドラサ(イスラーム学校)を母体に2010年に設立されたアドボカシー団体で,正式な政党ではない。HIは2013年頃から政治的注目を集め始め(『アジア動向年報2014』参照),2020年には,ムジブ年にちなんでダカ市内にムジブの銅像建立が発表されたことに対して,HIが偶像崇拝は反イスラーム的だと激しい抗議行動を展開したことで政府と対立した。HIの各種委員会には多くの宗教政党の幹部らが名を連ね,背後には全国のマドラサで学ぶ多数の若者がおり,無視できない勢力となっている。
女性に対する暴力への批判の高まり女性・子供に対する暴力は大きな社会問題のひとつである。地元の人権擁護団体アイン・オ・シャリシュ・ケンドロ(Ain O Salish Kendra,「法と仲裁センター」の意)の報告によれば1月から9月までに975人の女性,子供がレイプされ,そのうち208人は集団暴行を受けた。9月2日にノアカリ県で起きた集団暴行のビデオが,犯人によって10月4日にインターネットで流されたことから,それに対する抗議デモが翌日以降首都ダカを中心に各地で展開した。事態を深刻に受け止めた政府は12日,2000年女性・児童抑圧防止法が定めた強姦罪の最高刑を無期懲役から死刑に引き上げる改正案を閣議決定し,国会が休会中であったことから13日に大統領が政令として公布した。しかし専門家や活動家からは,死刑導入は問題解決にはつながらず,150年以上前に定められたレイプの法的定義見直しなど抜本的改革を伴わない場当たり的で拙速な対応であるとの批判が上がった。同月15日には,2012年におきた集団レイプ事件裁判で,被告5人に対して初めて死刑判決が下された。改正女性・児童抑圧防止法は11月17日に国会で可決されたが,国会では,フェミニストによる運動が女性の社会進出を促したためにレイプを煽ったという趣旨の発言もあった。国会外でも17日,ダカからノアカリ県までの反レイプ長征デモ参加者に対して,与党支持者や治安当局による暴力行為が行われるなど,依然として問題の根が深いことがうかがわれた。
新型コロナウイルス感染症の広がりと政府の対応新型コロナウイルス感染症の拡大は,人口稠密で医療インフラや衛生環境に多くの課題を抱えるバングラデシュの国家や社会の対応能力を試すものであった。
3月8日,イタリアからの帰国者とその家族3人の感染が,国内で初めて確認された。これが明らかになると,ダカでもマスクやハンドソープなどの買い占めが発生し価格が高騰した。人々の懸念は一気に高まったものの,陸路の国境や空港でのヘルスチェックは,訓練された人材や機材の不足から,依然緩やかであった。感染症の監視や調査を担う疫学・疾病管理研究所(IEDCR)の対応が遅く不十分などさまざまな批判が上がるなか,3月17日から全教育機関が閉鎖された。18日に最初の死者がでると,人々は外出を恐れて,コメや野菜,豆といった必需品の買い占めに走った。政府は翌19日,部分的ロックダウンを検討し始め,同日,政治,文化,宗教目的の集会が禁止された。
ロックダウンはダカよりも地方で先に実施された。3月20日には,海外出稼ぎからの帰国者が多く,感染が疑われる患者が出ていたマダリプル県シブチョール郡で警察が動員され,公共交通機関停止ならびに必需品以外の店舗閉鎖が命じられた。政府は低所得500世帯に対してコメ,豆,食用油などの必需品を配給した。首都では3月21日,ダカ市内ミルプール・トラルバーグ地区で2人目の死者が出た。クラスター発生が疑われた同地区では23日から,住民が2週間域外に出ることを禁ずる(食料品調達のため家族の1人のみ外出を許可)措置がとられた。
さらに同23日,国内での3人目の死者発生が報じられた直後に,政府は3月26日から4月4日まで,銀行(時間短縮でサービスも限定),病院,食料品マーケット,薬局などを除き,官民すべての事業所を閉鎖すると発表した。加えて地方自治体の感染拡大予防策を軍の支援により徹底して行うとした。政府は「ロックダウン」の代わりに「一般休日」という言葉を用いたが,かえって危機意識の醸成を損なうとの批判も出された。翌日24日には,26日より貨物輸送以外のすべての公共交通機関の運行停止が決定された。そのため,翌25日には,多数の国民が地方への移動を試み,地方への感染拡大につながったとみられる。
4月から5月にかけて,政府はロックダウン措置の延長を繰り返しつつ,一部の経済活動については限定的に再開を許可した。ロックダウン延長決定は,4月だけで4回に及び,その過程で夕方18時以降の外出禁止令も発出された。その一方で,23日には,これまで閉鎖していた製薬工場と輸出志向型工場(とくに衣類製造)について,一定条件の下で操業が許可された。また18の省庁は限定的に業務を行うとした。
4月末までには,感染はほぼ全県に拡大していた。5月4日,政府はロックダウンを5月16日まで延長したが,10日より商店,ショッピングモールなどは10時から16時までの営業を許可された。25日の断食明け祭に向けた商戦を見込んだ動きとみられる。一方,祭前後の人の移動を抑制するため,5月14日,政府は再度,ロックダウンを30日まで延長すると発表した。
5月末時点で1日の感染者数は,2000人を超えていた。政府は戸外でのマスク着用の義務付け,違反者への罰金刑(10万タカ)や禁錮刑(6カ月)を科すと発表し,政府機関の出勤率を25%以下に抑えたものの,7月に入っても感染増加は続いた。7月初めの段階で週当たりの新規感染者数は世界8位まで上昇した。さらに8月6日には,累積感染者数がイタリアを抜いて世界15位となった。しかし同日,公務員については体調不良の人や妊婦などを除き9日より出勤(9~17時)するよう指示が出された。31日,政府は人の移動と経済活動に関する規制を解除した。
感染状況は8月後半から徐々に改善し,それまで20%以上であった陽性率が9月11日には12.15%まで低下した。9月21日の専門家会議(国家技術諮問委員会)では,欧州や隣国の状況を鑑みて,第2波の到来を想定した対策を検討すべきとの声が上がった。9月22日には死者数が5000人を超えた。首相の呼びかけも含め,マスク着用については何度も政府指針が出されたが,遵守しない人は多かった。11月後半から12月初めに再度感染の山があったが,その後徐々に減り始め,12月17日,陽性率が8.6%とそれまでの8カ月で最低を記録した。なお,2020年中に学校は再開されなかった。
ワクチン獲得をめぐる動き世界各国でワクチン開発が進むと,バングラデシュでもその確保が目指されるようになる。十分なワクチン量確保には,20億ドルの資金が必要とみられており,政府は日本,世界銀行(世銀),アジア開発銀行(ADB),アジアインフラ投資銀行にアプローチしている。8月27日,政府は中国シノバック・バイオテック社製ワクチンの国内治験を許可した。当初治験は9月末には開始される予定だったが,9月24日にシノバック社が資金負担をバングラデシュ側にも求める書簡を発出し,10月13日にバングラデシュ側がそれを拒否したことで暗礁に乗り上げたと報じられている。また11月5日には,バングラデシュ政府,インドのシーラム・インスティテュート・オブ・インディア(SII),バングラデシュの大手製薬企業ベキシムコ(BEXIMCO)製薬との間で了解覚書が結ばれ,オックスフォード大学とアストラゼネカ社が開発しSIIが製造するワクチン3000万回分をベキシムコ製薬が買い上げ,政府に提供することで合意した。
バングラデシュの製薬部門は,後発開発途上国(LDC)のなかでは最大規模で,地場企業が国内市場をほぼ独占し,最近では規制の厳しい欧米市場に輸出する企業も複数現れている。新型コロナウイルス感染症治療薬に関しても,地場製薬企業の対応は迅速であった。LDCに認められている「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)に基づく医薬品特許免除措置を生かして,4月初めには,地場の製薬企業数社が富士フイルム富山化学のアビガン(一般名はファビピラビル)のジェネリック製品を製造開始し,同治療薬の国内調達を可能にした。5月には,レムデシビルのジェネリック版の生産許可を6社が取得した。8日にはエスケイエフ(Eskayef)社が生産開始を発表し,ベキシムコ製薬がそれに次いだ。
10月初めには,バングラデシュの製薬企業グローブ・バイオテック(Globe Biotech)がワクチンの前臨床試験に成功し,同月半ばには世界保健機関の前臨床段階リストに加えられた。さらに12月末には,医薬品行政総務局より治験のための製造許可を得た。この国産ワクチンについては,ネパール政府が関心を示し,治験で成功したら200万回分を購入すると同社に申し入れたと伝えられている。
2018/19年度に8.15%という過去最高の実質国内総生産(GDP)成長率を記録したバングラデシュ経済の伸び率は,2月以降の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により2019/20年度には5.2%に低下した。8.2%という目標には達しなかったものの,南アジア諸国のなかではもっとも高い。
3月末からのロックダウンは,同会計年度第4四半期の経済活動に甚大な影響を及ぼした。4月に主要国際機関が発表したバングラデシュのGDP成長率の予測値は,ADBが7.8%,世銀は2~3%,国際通貨基金(IMF)は2%と,ADBを除く2機関は前年度よりも5~6%前後低下するとみていた。その後,6月になって,IMFは3.8%と上方修正したが,世銀は1.6%,ADBは4.5%と下方修正した。国内の有力シンクタンク,政策対話センター(Centre for Policy Dialogue)も同時期2.5%以下と予測していた。他方,政府の推計はこれらの数値より高く,6月15日に5.2%と発表され,8月11日に統計局が示した最終値としてそれが確定した。カマル蔵相はコロナ禍の下でも比較的高い成長率を達成できたのは,感染症発生前7カ月のパフォーマンスがよかったためと説明している。国内外機関の推計との乖離については,政府の数値はデータに基づくものと反論した。
部門別には,農業部門(GDP構成比で13.35%)の成長率が3.92%から3.11%への低下にとどまった一方,工業部門(同35.36%)は12.67%から6.48%と大幅な減速となった。とりわけ製造業が14.20%から5.84%へと大きく減速した。生産量指数でみると,大中規模製造業全体の伸びは0.3%とほぼ横ばいであった。製品別では,製薬・医薬化学品(GDP構成比8.23%)が前年度比31.72%増,繊維(同14.0%)が13.69%増,コンピューター・電子光学製品(同0.15%)が12.82%増,また食品(同10.84%)が6.86%増と伸びた半面,衣類(同34.84%)は16.77%減,皮・皮革製品(同4.4%)は0.54%減となり,輸出製品の生産量減少がみられた。
GDP構成比で51.30%を占めるサービス部門のGDP成長率は,前年度の6.78%から5.32%とやや減速した。同部門のなかでもっとも高い成長率を示したのは,保健・社会福祉の9.96%(前年度11.79%)で,その他金融業が9.48%(同11.55%)でそれに次いだ。サービス部門のなかでもっともGDP寄与率の高い卸・小売・修理業(GDPの13.87%)の成長率は5.02%と,前年度の8.14%を下回った。
感染症の世界的広がりは,需要縮小,供給の断絶などを通じてバングラデシュの対外部門にも大きな影響を及ぼした。2019/20年度の輸出は前年度比17.1%減(前年度9.1%増)の328億3000万ドル,他方輸入も前年度比8.6%減の506億9000万ドル(同1.8%増)と減少し,貿易収支の赤字幅は前年度の158億3500万ドルから178億6100万ドルへ,12.8%増加した。
輸出の減少は,輸出収入の83%を占める衣類輸出が,341億ドルから279億ドルと大幅減となったことに起因している。衣類のうち布帛は18.6%,ニットは17.6%と共に2桁の減少となった。また,近年有力な輸出品目として注目されている皮・皮革製品も,前年度比22.6%と大きく減少した。これらの輸出については,感染症拡大前の上半期ですでに前年同期比5%減となっていた。過剰生産能力を背景とするバイヤーからの価格引き下げ圧力,消費者の皮革製品への嗜好減退,環境コンプライアンスを遵守できない工場の存在といった理由が業界関係者から指摘されている。原ジュートとジュート加工品に関しては,ジュート糸の主たる輸出先であるトルコ,エジプト,イランなど中東での需要減少や,インドによる反ダンピング関税などの理由から,過去数年,輸出量の変動が大きかったが,2019/20年度には天然素材への需要増を反映し,唯一輸出増となった。
輸入に関しては,小麦を中心とする食用穀類やその他の食品がそれぞれ前年度比7.8%,13.3%増加したものの,消費財・中間財および資本財の輸入は,パンデミックの影響でそれぞれ6.6%,19.5%減少した。
衣類輸出と並ぶ外貨獲得手段である海外労働者の出稼ぎ送金は,2019/20年度,前年度比10.9%増の182億ドルと過去最高を記録した。世界で感染症拡大が顕著となった3月の1カ月間の送金額は前年度比12%減となったが,通年では,送金者に対する2%の現金給付などのインセンティブ付与,送金手続きの簡素化,違法送金対策強化が,公式チャンネルを通じた送金の増加に寄与した。
政府は2020/21年度のGDP成長率目標を当初8.2%としていたが12月末に7.4%に引き下げた。感染症の状況改善と次に述べる大規模経済刺激策のタイムリーな実施によって,達成可能としている。しかし,対外部門の状況をみると,7月の輸出は衣類に牽引され前月比44.4%の大幅な増加を示したが,7~11月の輸出は前年同期比0.93%増の159億2000万ドルとほぼ横ばいで,完全な回復基調にあるとはいえない。他方,厳しい移動制限が課されたことで出稼ぎ送金を手持ちで持ち込むといった非公式手段が不可能となり,公式ルートでの送金が増加した。7月から11月までの送金額は,前年同期比43.42%増と好調であった。
経済対策の内容と実施状況新型コロナウイルス感染症が及ぼした経済的影響に対し,政府は主として低利融資からなる経済刺激策を実施した。その規模は徐々に引き上げられGDPの4%を超える規模に達したが,反面,融資実施の遅れが問題となっている。
政府による最初の経済対策は,輸出志向型産業に対する500億タカの刺激策として,独立記念日前日の3月25日の首相演説で発表された。この刺激策の中心は賃金支払いのための2年間無利子(手数料2%)ローンである。また,ホームレスや土地なし層に対しては,無料の住居および半年間の食糧と現金の給付を行い,加えて都市の貧困層向けに低級米を1キロ当たり10タカで販売するとした。4月5日には,中小企業および衣類製造企業の運転資金に対する融資の金利の一部を政府が負担するとして6775億タカの経済対策を発表した。内容は3000億タカの運転資金ローン(金利9%の半分を政府が負担),2000億タカの中小企業向け運転資金ローン(金利9%のうち5%を政府負担),原料輸入のための輸出開発基金の1275億タカ増額,新たに出荷前クレジットリファイナンス・スキームと名付けられた500億タカのローンの4本からなる。当初,金利の一部免除のみと予想していた財界からは驚きとともに歓迎の意が示された。
4月12日には,中小規模の農民に対し金利5%の融資を行う500億タカの支援策が発表された。政府は収穫の機械化,種子・苗の配布についても別途支援策を用意した。20日には中央銀行が,小農や零細企業に対して300億タカの金融支援策を発表した。銀行へのアクセスがない場合には,マイクロ・ファイナンス機関より,通常の25%でなく9%の金利で借り入れできるとした。対象には脆弱な状況にある女性,低所得者も含まれる。その後,経済対策はさらに拡大され,11月までに総額1兆2135億タカ,GDPの4.3%の規模に達した。
経済対策の中身は大別して(1)雇用維持,需要回復,サプライチェーン維持,(2)雇用創出と農村経済の再活性化,(3)社会保障と食料供給強化の3つに分けられる。課題はその迅速な実行である。そのうち(1)に含まれる衣類製造工場への貸付はもっとも早く実施されたが,それ以外については,将来の不良債権化を懸念する銀行の貸し渋りによって,融資実施が進まなかった。そのため中央銀行は,7月23日に中小企業に対する信用保証スキームを導入した。これは貸付によって損失が発生した場合,その8割を第三者機関が銀行に保証するものである。しかし11月26日付の財務省報告によれば,10月末までに実施された融資は39.23%にとどまった。農業経営者に対する融資についても,当初9月30日までに実行するとされていたが,実施期間が3カ月延長された12月15日時点でも全体の55.86%の実施にとどまった。その12月末には,さらに3カ月の延長が発表された。
他方,低所得層への現金給付については受給者リストの作成などで少なからぬ不正が行われているとの報告がある。また,これらの刺激策が労働者支援や雇用の創出に結びついていないとも指摘されている。与党支持者の関与が疑われる救援物資の不正流用も発生し,政府によるガバナンスの問題を浮き彫りにした。
なお,国内民間製造業も新型コロナ対策に貢献した。たとえば衣類製造部門では,複数の企業が協力して余剰の布を用いて貧困層向けにマスクを製造し,政府を通じて全国で配布した。また家電製造で近年に急成長したウォルトン(Walton)社は,世界有数の医療機器メーカー,メドトロニックの支援を受け,国内で不足していた人工呼吸器の生産に着手した。すでに述べた製薬部門の対応も含め,バングラデシュ製造業部門の潜在力の一端が,感染症対策を通じて示された。
全方位外交を掲げるバングラデシュにとって,現時点でもっとも重要な外交パートナーは,インド,中国,アメリカの3カ国である。国境を接するインドとの関係は,独立後のさまざまな局面を経て懸案事項を抱えつつも,現ハシナ政権下で史上もっとも良好な状態にある。中国はバングラデシュにとって最大の輸入元国であるばかりか,二国間援助を通じて必要とするメガインフラ開発に深く関与している。そしてアメリカは,衣類を中心に最大の輸出先国であり,また主要な外国直接投資国である。これら3カ国を重視するバングラデシュの外交に対し,米中,印中の対立激化は影響を及ぼし始めている。
2020年,米中,印中の対立の文脈のなかで,アメリカとパキスタンからバングラデシュへの働きかけがあった。対米関係では9月11日,ハシナ首相とエスパー米国防長官との間で電話会談が行われた。エスパー国防長官からは,二国間の防衛協力やロヒンギャ問題解決への継続的支援に関する言及があった。また,10月14日には,ビーガン米国務副長官がインド経由で来訪した。同副長官は,モメン外相との会談後の記者会見で,バングラデシュの持続的成長を称賛しつつ,アメリカはバングラデシュをインド太平洋地域における主要パートナーとみなしていると述べた。また同副長官は,印中間の実効支配線地域での対立,尖閣諸島問題,台湾をめぐる緊張,香港,チベットでの弾圧など,中国に起因する問題をインド太平洋地域の課題と位置付けた。今回の訪問についてバングラデシュの戦略アナリストは,バングラデシュを日米豪印(Quad)の側に引き入れようとするアメリカのインド太平洋戦略の一環と分析している。バングラデシュ側は,アメリカからの投資拡大,ポストコロナの支援,ロヒンギャ難民帰還への支援を求めた。
対パキスタン関係でみられた改善もインド・パキスタンの緊張が背景にある。パキスタンとの関係は,1971年の独立戦争当時にパキスタン側に加担したバングラデシュ人を2016年に有罪とし処刑したことに対し,パキスタンが非難声明を出したことから悪化していた。その象徴的出来事として大使承認問題がある。2018年2月に当時のパキスタン大使離任後,バングラデシュ側は後任大使の承認を行わず,同ポストは2年近く空席となっていた。バングラデシュ側はようやく2019年10月になって新しい大使の任命をパキスタンに要請し,翌年1月に新任大使が着任した。2020年7月1日,同大使がモメン外相に面会し,このことがインドのメディアで注目された。22日には,パキスタンのイムラン・ハーン首相とハシナ首相が15分間の電話会談を行った。2019年10月にハシナ首相がインド訪問を行う前日にもハーン首相がハシナ首相に電話を寄越すというアプローチがあった。印パ関係ならびに印中関係がかつてないほど低調という状況下で,パキスタンはバングラデシュとの関係改善を進めているとインドはみているようである。ただし,バングラデシュにとっては,インドが最優先パートナー国であることに変わりはない。
印中対立を背景に進んだバ印関係対印関係では,2019年12月にインドが制定した市民権改正法により,バングラデシュとの間でも軋みが生じていた(『アジア動向年報2020』参照)。しかし2020年1月19日,ハシナ首相が訪問中のアブダビで地元メディアのインタビューに答え,目的が理解できず不要な法であるとしつつも,インド国内の問題であると述べて一定の決着をつけた。
3月2日,シュリングラ印外務次官が来訪した。ムジブ年式典参加のため3月17日に予定されていたモディ首相のバングラデシュ訪問の地ならしのためである。しかし,バングラデシュ国内で新型コロナウイルスによる最初の死者が発生した3月8日の翌9日に,来訪延期が発表された。
8月18日,シュリングラ印外務次官が日帰りで来訪した。当日に公表されたこの突然の訪問は,バングラデシュ・中国関係の緊密化に歯止めをかけ,バ印関係を固める狙いがあったとされる。その直前,バ印間の懸案事項として焦点となっているティスタ川の管理プロジェクトに対して,バングラデシュ政府が約10億ドルの援助を中国に求める案を検討していることがバ印両国で報じられていた。ハシナ首相とシュリングラ外務次官の会談の内容は明らかにされていないが,深く緊密な二国間関係を前進させるというモディ首相のメッセージがバングラデシュ側に伝えられたと報じられている。
中国のワクチン外交の進展もインド側の懸念材料のひとつだったとみられる。7月19日には,バングラデシュ医学研究協議会が中国ワクチンの第3段階の治験の実施を承認し,在バングラデシュ中国大使が治験対象第1号になると発表された。ところがその2日後,保健省次官の言葉として,その決定が撤回されたことが報じられた。8月18日,来訪中のシュリングラ印外務次官は,モメン外相との会見後メディアに対し,インドで新型コロナウイルスワクチンの製造が始まればバングラデシュは優先的に提供を受けると述べた。28日にベキシムコ製薬がインドのSIIよりワクチンの提供を受ける旨を発表した。なおその前日に,政府が再度方針を変更し,中国製ワクチンの治験を承認したことを発表しており,その際インドを含む他の国が製造したワクチンの治験にも前向きであると述べていた。中国製ワクチンの治験が実際には実施されなかったことは前述のとおりで,結果的にワクチン外交はインド側に軍配が上がった。とはいえ10月1日の中国の建国71周年の記念日に寄せた祝辞のなかで,ハシナ首相は中国を「バングラデシュの社会経済開発にとってもっとも重要なパートナーのひとつ」と言及するなど,バングラデシュは印中双方への配慮を慎重に行っている。
10月19日,外務省は,モディ首相が2021年3月26日の独立50周年の式典出席のため来訪すると明らかにした。12月17日には,ハシナ首相とモディ首相の間でオンライン首脳会談が実施され,両首相は7つの了解覚書に調印した。共同声明では,ティスタ川の問題解決にインドが継続して真摯に取り組むことが引き続き明記された。
その他の国との関係その他の首脳外交では,新型コロナウイルス感染症拡大前の1月にアラブ首長国連邦,2月にイタリアをハシナ首相が訪問した。イタリアでは,コンテ首相やフランシスコ教皇と面会した。イタリアは重要な貿易相手国であるとともに,バングラデシュ人14万人が同国に在住している。コンテ首相との会見では,ロヒンギャ難民帰還へのEUの継続的支援,二国間の経済関係強化などが話し合われた。その後の外交活動は電話やオンラインを通じて行われ,日本とは8月5日に安倍晋三首相と電話で25分会談している。12月7日には,ブータンと特恵貿易協定(PTA)を調印した。バングラデシュにとってはこれが初めての二国間PTA・自由貿易協定である。
政権にとって最大の課題は新型コロナウイルスの封じ込めと経済復興である。インドとの良好な関係によってワクチンの獲得に目途を付けた政府は,後者の課題に注力することになる。経済刺激策の実行には,中小零細企業への融資の実施などにさらなる政府のテコ入れが必要とみられる。またそれ以上に重要なのが,低所得層への支援である。ADBによると,バングラデシュの定義に基づく貧困者は国民の21.8%であり,また国際貧困線(購買力平価で1日当たり所得が1.90ドル)以下の労働者の割合は9.2%に上る(2019年)。新型コロナウイルスはとりわけインフォーマル経済で働く低所得層の生活を直撃した。とくに,ダカにおいては近年経験のなかった飢えの問題が浮上した。ロックダウンによる一時休業が主な原因である。現地のシンクタンク,経済モデル南アジアネットワーク(SANEM)が全国5577世帯を対象に行った調査によれば,2018年には21.6%だった貧困率が,2020年11~12月の時点では42%に増えていた。3月から続いている教育機関閉鎖がもたらす次世代の教育・経済格差の問題など,中長期的な取り組みも必要になる。
マクロ経済のパフォーマンスが予想を上回ったことで2024年にLDC卒業の可能性は高まった。LDCに付与されている貿易などでの優遇措置が失われることに備えて,政府は二国間協定の締結を積極的に行っている。現在ネパール,インドネシア,タイとも協議が始まっている。ビーガン米国務副長官がアメリカとの協定締結も提案しており,インドとの包括的経済パートナーシップ協定(CEPA)協議と合わせ進展が注目される。
内政関係では,カレダ総裁の健康不安も含め求心力のある指導者不在の影響は大きく,BNPをはじめとする野党の党勢回復の兆しはみえない。他方,政府による言論弾圧が一層激しくなっており,市民社会を中心に内外からの批判は高まっている。またAL支持者による汚職の横行についても,ハシナ首相はその撲滅に断固たる姿勢をみせているが,解決には至っていない。バングラデシュの経済力向上によって,対印,対中関係も含め国際社会における同国の立ち位置は強化されているが,国内の人権問題や汚職問題が政権にとってのアキレス腱ともなりうる。
(日本貿易振興機構アジア経済研究所理事)
1月 | |
2日 | 選挙管理委員会(選管),北ダカ特別市市長の国民党(JP)候補の名前が有権者名簿にないとして立候補を認めず。 |
3日 | ハシナ首相,アワミ連盟(AL)中央運営委員会と顧問評議会の合同会議で,途上国では強い党が政府の強い力になると演説。 |
4日 | 首相,AL学生連盟創立72年式典で,正しい価値と理想に基づく組織育成を強調。 |
5日 | ダカ大学の女学生,市内でレイプされ,抗議行動広がる。 |
7日 | 首相,就任1周年のテレビ演説。汚職撲滅,反テロ,セキュラー(多宗教共生)な「黄金のベンガル」樹立を強調。 |
8日 | 最高裁高裁部,2009年のバングラデシュ・ライフルズ反乱事件の全判決文を公開。 |
8日 | タイの報道によれば,バングラデシュと自由貿易協定(FTA)締結に原則合意。 |
12日 | 首相,アラブ首長国連邦訪問(~14日)。アブダビ持続可能週間等の行事に参加。 |
13日 | チョットグラム8区で国会補欠選挙。AL候補がバングラデシュ民族主義党(BNP)候補を大差で破って当選。 |
13日 | パイラ石炭火力発電所,試験運転開始。 |
18日 | ボグラ1区マンナンAL議員死去。 |
18日 | 選管,ヒンドゥー教徒の祝祭に配慮し南北ダカ特別市市長・市議会議員選挙を1月30日から2月1日に延期。 |
21日 | 行政管理国務相を務めたジョソール6区選出イスマット・アラAL議員死去。 |
2月 | |
1日 | 南北ダカ特別市市長・市議会議員選挙実施。両市長ともAL候補が当選。 |
2日 | BNPによるハルタル(ゼネスト)実施。 |
4日 | 首相,イタリア公式訪問(~8日)。 |
5日 | 政府,ソマリアに対しIMFを通じて8210万タカの債務救済支援を決定と発表。 |
8日 | BNP,カレダ総裁釈放を求めデモ。 |
12日 | ダカでサウジアラビアとの合同経済委員会(~13日)。 |
13日 | 現政権3度目の内閣改造。大臣1人,国務大臣2人の所管を変更。 |
15日 | BNP,カレダ総裁釈放を求めデモ。 |
16日 | 選管,チョットグラム特別市市長・市議会議員選挙を3月29日に実施と発表。 |
17日 | 商務相,訪バ中のギャワリ・ネパール外相との会談後,FTA締結間近と表明。 |
27日 | 第43回国連人権理事会でバチェレ国連人権高等弁務官,バングラデシュについて超法規的殺害,恣意的逮捕,拷問等の問題に言及。ロヒンギャ難民への対応は称賛。 |
3月 | |
2日 | シュリングラ印外務次官来訪。 |
3日 | 米国務省のウェブサイト,バングラデシュを含む24カ国を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が大きい優先国とし,3700万ドルの支援を発表。 |
4日 | 人民フォーラムのカマル・ホセイン総裁,党の内部対立を受け中央委員会解散。 |
4日 | クミッラ県で新しい天然ガス田発見。 |
8日 | 国内で最初のコロナ陽性者発生。 |
10日 | AL中央執行委員会,3月17日以後のムジブ生誕100年祭の全行事延期を決定。 |
12日 | 政府,全国で予定されていた独立記念日のパレードや集会を中止。 |
12日 | 2016年に着工した最初の高速道路開通。ダカ=フォリドプール間,55km。 |
13日 | マハムード情報相,米国務省が公表した人権状況に関する2019年版カントリーレポートで,2018年国会総選挙が著しく偏向した選挙と言及されたことを強く批判。 |
14日 | 8日に続いて,イタリアおよびドイツからの帰国者2人が新規感染。 |
14日 | 全世界に対してアライバル・ビザの発行を停止。15日から適用。 |
15日 | 外相,16日より新型コロナウイルス感染国からのフライト禁止と発表。ただし16日にイタリアからの旅客を乗せたカタール航空便が,「人道的見地」を理由に到着。 |
15日 | モディ印首相の呼びかけで,南アジア地域協力連合(SAARC)首脳らオンライン会議。新型コロナウイルス感染症拡大防止にむけて協力を確認。モディ首相は,緊急対策基金の設置を提案。ハシナ首相も集団的戦略と資源動員を呼びかけ。パキスタンは首相特別補佐官が出席。 |
15日 | インドへの旅客列車の運行を停止。貨物列車は継続。 |
15日 | 政府,全教育機関を17日から月末まで閉鎖すると発表。 |
16日 | モメン外相,外交団を集め,それぞれの国内にいるバングラデシュ人の安全を守るよう支援を要請。バングラデシュ国内の外国人へも同様の措置を取る旨約束。 |
17日 | ムジブ生誕100周年,正式に開始。 |
18日 | コロナによる初の死者。 |
18日 | コックス・バザール等の観光地で,人が集まることを禁止。 |
19日 | 政治,文化,宗教目的の集会禁止。 |
19日 | コロナ検査に軍の動員開始。 |
21日 | ダカ10区,ガイバンダ3区,バゲルハット4区国会補欠選挙。すべてAL候補が勝利。ダカ10区の投票率は5.28%。 |
21日 | 選管,コロナを理由にチョットグラム特別市市長・市議会議員選挙,ボグラ1区,ジョソール6区の補欠選挙の延期を発表。 |
21日 | コロナによる2人目の死者発生。 |
21日 | 独立記念日のプログラム中止を発表。 |
21日 | 政府,インド,シンガポール,中東諸国を含む10カ国間との航空機の運航中止。 |
21日 | バングラデシュの仏教界最高位指導者ダルマセン・マハテロ死去。92歳。 |
21日 | 政労使会談で,衣類工場の操業継続決定。 |
22日 | 国税庁,個人防護具,手洗い消毒液原料,コロナ検査キット等の関税撤廃。 |
22日 | 業界団体,食料品市場や日用品販売店を除く全商店の25日から1週間の閉鎖を決定。 |
22日 | インドからの陸路入国を停止。 |
23日 | 政府,26日から4月4日まで,銀行,病院,食料品マーケット,薬局等を除き全政府,民間事業所を閉鎖する旨発表。 |
24日 | 政府,人道的見地からカレダ総裁の刑を半年停止すると発表。翌25日に釈放。 |
24日 | 政府,貨物輸送以外すべての公共交通機関の運行停止を決定。 |
25日 | ハシナ首相,テレビ,ラジオで国民に向け演説。コロナに対する戦いを戦争と呼び,ステイホームの責任を呼びかけ。500億タカの経済対策を発表。 |
26日 | 衣類製造業者・輸出業者協会(BGMEA),4月4日までの工場閉鎖を工場主に呼びかけ。 |
31日 | 首相,ロックダウンを4月9日まで延長すると発表。ただし一部の人の移動を認める。教育機関は同日まで閉鎖。 |
4月 | |
1日 | 4月11日までロックダウン延長。 |
3日 | ハシナ首相,国民に対して31項目のコロナ対策指針を発表。 |
4日 | 公共交通機関の運行停止を4月11日まで延長。 |
5日 | 首相,新たに4本の経済対策を発表。合計6775億タカ。 |
5日 | 4月14日までロックダウン延長。 |
6日 | 政府,家での礼拝を指示。 |
10日 | 4月25日までロックダウン延長。夕方18時以降の外出禁止。 |
12日 | ムジブ暗殺犯の1人,アブドゥル・マジェド元陸軍大尉の死刑執行。23年間コルカタに潜伏し帰国後4月7日に逮捕された。 |
18日 | 国会第7次会期,1時間で終了。憲法の規定順守のため開会。 |
18日 | 17人から構成されるコロナ対策に関する国家技術諮問委員会を設置。 |
23日 | 5月5日までロックダウン延長。 |
24日 | 断食月開始。 |
29日 | モディ印首相,ハシナ首相に電話。 |
5月 | |
4日 | ロックダウン,5月16日まで延長。ただし10日より商店は10時から16時まで再開。断食明け休日の移動は禁止。 |
5日 | eコマースによる非必需品の配達と持ち帰りに限ってレストラン営業を許可。 |
6日 | モスクでの礼拝禁止を解除。 |
6日 | ダカ5区選出のAL国会議員ハビブル・ラフマン死去。 |
7日 | ダカ警察,断食明け祭の買物は自宅から2km以内,住所証明書類持参と指示。 |
14日 | 政府,現状のロックダウンを30日まで延長すると発表。 |
18日 | 断食明け祭のためにダカから地方への帰省者が急増。 |
20日 | サイクロン「アンファン」到来。100万人に影響。被害総額110億タカに上る。 |
22日 | 首相,ママタ印西ベンガル州首相にアンファンの被害について電話で哀悼伝える。 |
25日 | 断食明け祭。 |
25日 | ロヒンギャ難民キャンプで,初のコロナ感染者。6月2日に最初の死者が発生。 |
28日 | 教育機関閉鎖を6月15日まで延長。 |
6月 | |
1日 | 2カ月ぶりにバス運行再開。鉄道,フェリーは前日再開。 |
1日 | 政府,公務員出勤率を25%以下にと指示。 |
4日 | 衣類製造労働者専用のコロナ検査ラボ,業界団体が設置。 |
7日 | 人身取引関与の疑いでロッキプール2区のパプル議員,クウェートで逮捕される。 |
11日 | 2020/21年度予算案国会上程。 |
13日 | シェイク・ムハンマド・アブドゥッラー宗教問題担当国務大臣死去。 |
13日 | シラジゴンジ1区選出AL議員で内相,保健相等を務めたムハンマド・ナシム死去。 |
15日 | 教育機関閉鎖を8月6日まで延長。 |
21日 | 国営航空,3月30日以来ほぼ3カ月ぶりに国際線運航再開。ロンドン行き。 |
21日 | ダカでマグニチュード5.1の地震発生。震源地はインド=ミャンマー国境地域。 |
25日 | 北部地域を中心に1998年以来の長期間の洪水発生。8月末まで続く。33県に拡大し死者251人。9月末にも再度発生。 |
28日 | 政府,国営ジュート工場全22社を閉鎖し,従業員約2万5000人の解雇を発表。 |
7月 | |
9日 | 法務相,郵政相等を務めたダカ18区選出AL議員サハラ・カトゥン死去。 |
14日 | ボグラ1区,ジョソール6区の国会補欠選挙。ともにAL候補が勝利。 |
21日 | 外出の際のマスク着用を義務化。 |
22日 | パキスタンのイムラン・ハーン首相,ハシナ首相と電話会談。 |
26日 | JP,政府に批判的とみられたランガ党幹事長を更迭。 |
27日 | ノウガオン6区のイスラフィル・アラムAL議員,コロナ感染症により死去。 |
29日 | 教育機関閉鎖を8月31日まで延長。 |
31日 | シンハ陸軍退役少佐,コックス・バザール道路の警察監視所で警官に射殺され,警察に対する批判高まる。 |
8月 | |
1日 | 犠牲祭。 |
5日 | 首相,電話で安倍首相と25分会談。 |
6日 | 政府,体調不良者,妊婦などを除き,公務員は9日より9時から17時まで出勤するよう指示。 |
18日 | 行政管理省,各省次官あてに公務員が前もって承認がない限りメディアに話したり,書いたりすることを禁止する書簡を発出。 |
18日 | シュリングラ印外務次官来訪。 |
23日 | 選管,パブナ4区(9月26日),ノウガオン6区とダカ5区(10月17日)国会補欠選挙実施を発表。 |
25日 | 今年度の初等教育修了統一試験および同格の公認宗教教育統一試験中止を決定。 |
27日 | 教育機関閉鎖を10月3日まで延長。 |
27日 | 政府,中国製ワクチンの治験を許可。 |
28日 | カレダ総裁,刑執行停止の延長請求。 |
31日 | 政府,行動規制を解除。 |
31日 | 国家オンラインメディア政策2017(2020年改訂)を閣議決定。新聞等のメディアは紙とオンラインで別々に政府の登録が必要。政府による管理強化との懸念広がる。 |
9月 | |
3日 | 政府,9月24日に終了予定のカレダ総裁の刑一時停止の半年延長を決定。 |
4日 | ナラヨンゴンジ県のモスクでガス漏れによる爆発。死者34人,4人が重体。 |
9日 | 2013年拷問・収監中死亡(防止)法に基づき,初めて警察官が有罪に。2014年2月に拷問死した男性の事件。被告の元警官3人に終身刑(同法下の最高刑)判決。 |
11日 | ハシナ首相,エスパー米国防長官と電話会談。 |
15日 | 内務省,カレダ総裁の刑停止をさらに半年続行する旨官報で公示。 |
18日 | ヘファージャテ・イスラーム(Hefajat-e-Islam:HI)代表シャー・アーマド・シャフィ死去。 |
19日 | ダカでバ印国境警備隊隊長会談。 |
26日 | パブナ4区補欠選挙。AL候補当選。 |
10月 | |
1日 | 教育機関閉鎖,10月末まで延長。 |
4日 | モメン外相,クウェート訪問。 |
5日 | 9月2日にノアカリ県で起きた集団レイプのビデオが10月4日,犯人によってインターネットで流され,事件への抗議デモ。11日まで全国各地にデモが拡大。 |
14日 | 10月28日より,インドへの航空機運航再開を決定。印大使館は9日からオンライン査証発行サービスを再開。 |
14日 | ビーガン米国務副長官来訪。 |
17日 | ダカ5区,ノウガオン6区国会補欠選挙。共にAL候補が大差でBNP候補に勝利。 |
11月 | |
2日 | HI,フランスにおける預言者ムハンマドの風刺画とマクロン大統領の「われわれの自由」発言について,抗議の大集会。 |
5日 | 政府,ベキシムコ製薬とインドのシーラム・インスティチュートの3者間でMOU締結。3000万回分のワクチン提供を受けることで合意。 |
7日 | ムジブ年の国会特別会期開会。 |
12日 | ダカ18区,シラジゴンジ1区補欠選挙。共にALがBNPを大差で破って当選。 |
17日 | 国会,改正女性・児童抑圧防止法を可決。強姦罪の最高刑を死刑に引き上げ。 |
24日 | 宗教問題担当国務相にジャマルプール2区選出のフォリドゥル・ホク・カーン議員就任。 |
12月 | |
2日 | トルコの首都アンカラにムジブの銅像,ダカにケマル・アタテュルクの銅像を建立する旨在ダカ・トルコ大使が発言。 |
3日 | バシャン・チョールへのロヒンギャ難民の移住措置開始。約600世帯が移動。 |
5日 | 11県で抗原検査(迅速検査)開始。 |
6日 | ブータンと特恵貿易協定調印。両国首相はオンラインで式典に参加。 |
13日 | 保健相,アストラゼネカ社のワクチンは1月に到着すると発表。 |
17日 | ハシナ首相,モディ印首相とオンライン会談。7つの了解覚書に調印。 |
18日 | 教育機関閉鎖,1月16日まで延長。 |
22日 | チャヴシュオール・トルコ外相来訪。 |
28日 | 24の市で市長・市議会選挙実施。ALは18,BNPは2つの市長ポスト獲得。 |
(出所)Statistical Yearbook of Bangladesh 2019(May 2020発行)より作成。
(注)*女性閣僚。
(注)1)消費者物価上昇率,為替レートは年平均値。
(出所)Bangladesh Bank, Monthly Economic Trends, February 2021より作成。
(出所)Bangladesh Bureau of Statistics, Gross Domestic Product(GDP)2019-20(p)より作成。
(注)1)固定生産者価格。2)固定市場価格。
(出所)表1に同じ。
(出所)表1に同じ。
(注)1)2019/20年度は暫定値。
(出所)Bangladesh Bank, Bangladesh Bank Quarterly, April-June 2020およびJuly-September 2020などより作成。
(出所)Ministry of Finance,Budget in Brief 2020/21などより作成。