Yearbook of Asian Affairs
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2021 Volume 2021 Pages 97-128

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2020年の中国

概 況

2020年の中国では,初動の遅れはあったものの,新型コロナウイルス感染症対策が徹底的に行われ,4月には経済活動が再開した。国内政治では,中国共産党第19期中央委員会第5回総会において,経済政策だけでなく2035年までの長期目標を検討したことから,習近平国家主席が長期政権を目指した準備に入ったという見方がなされている。習近平は,長期政権を目指すなかで,「法治」を重視しており,香港への管理を徹底するための「香港国家安全維持法」や,党軍関係の強化を目指した「人民武装警察法」および「海警法」を制定した。

経済面では米中貿易摩擦による国内経済へのダメージから回復する間もなく,新型コロナウイルス感染症による未曾有の事態に突入した。中国政府は経済政策を総動員して生産の回復に努めたが,それらの措置によってもともと拡大傾向にある財政赤字はさらに悪化することとなった。年初に低迷した経済は急速な回復をみせ,年末にはコロナ禍によるマイナスを回復したとみられる水準に達した。

対外関係では,習近平政権は「一帯一路」構想参加国や欧州連合(EU)の関係諸国に対して積極的に「マスク外交」を展開した。米中両国は米中第1段階経済貿易合意文書に署名したものの,サイバー空間やハイテク技術,人権といった分野でアメリカの対中強硬姿勢が顕著であった。一方,先鋭化する米中対立によって,中ロ関係は緊密になった。日本と中国および中国とASEANは海域問題で依然として対立しているものの,習近平政権は,米中対立の状況を見計らいながら,日本やASEANとの関係強化を目指している。

国内政治

新型コロナウイルス対策の政策決定

習近平政権の新型コロナウイルスへの初期対応は,1月20日から1週間の間に行われた。1月20日に習近平国家主席は新型コロナウイルスの感染拡大の阻止について重要指示を出し,「現在,春節期間であることから,広い範囲において,人が密集して移動することを避け,感染の予防,抑制に全力で取り組まなければならない」と強調した。23日には,新型コロナウイルスの感染拡大が深刻である武漢市において,武漢市新型コロナウイルス感染予防抑制指揮本部が第1号通告を発表し,市民の武漢から他地域への移動を禁止した。その後,25日には中国共産党中央政治局常務委員会が会議を開き,中央新型コロナウイルス感染対策領導小組(以下,領導小組)の発足を決定した。そして,領導小組の組長を担当する李克強首相が武漢の視察に赴いたのは,同月27日であった。

この初動に関して,2月15日発行の『求是』は1月7日の党中央政治局常務委員会で習近平が新型コロナウイルスによる肺炎の予防,抑制について要求を出したと発表した。ところが,党中央政治局委員会(7日)や習近平のミャンマーへの国事訪問(17,18日)および雲南省視察(19日)の報道において,新型コロナウイルスに関する指摘がないことから,『求是』の記事は後付け報道ではないかとみられている。習近平政権がいつ新型コロナウイルス感染症対策の議論を開始したかは依然として不明だが,その重要性を強く認識するまでに一定の時間を要したことはわかる。

実際,1月31日には,武漢市共産党委員会(党委)書記の馬国強が「早く厳格な管理・規制措置を取っていれば,結果は現在より良く,全国に対する影響は小さかったであろう」と述べ,初動の遅れを認めた。その結果,2月13日に湖北省党委副書記および武漢市党委書記であった馬国強は解任され,後任に済南市党委書記であった王忠林が就任した。また,湖北省党委書記の蒋超良も職を解かれ,代わりに上海市長であった応勇が任命された。

習近平が新型コロナウイルス対策に関する視察をはじめて実施したのは,2月10日の北京であった。この際,習近平は「6つの安定(雇用,金融,貿易,外資,投資,予想)」にしっかり取り組むこと,そして「とくに雇用の問題に高い関心を払い,大規模な人員削減を防がなければならない」と強調し,比較的早い段階で,新型コロナウイルスの感染拡大によって打撃を受けた経済への対策をとる必要性を指摘した。12日に開催された中央政治局常務委員会の会議では,習近平が重要演説を行い,新型コロナウイルス感染予防および抑制の取り組みを強化することを検討するとともに,経済政策についても言及した。

武漢市の公道管理制限が解除されたのは4月8日0時であった。新型コロナウイルスの震源地であった武漢市は,1月23日から4月8日まで76日間にわたってロックダウン(都市封鎖)が行われた。習近平政権の新型コロナウイルス対策は,初動の遅れが指摘されているものの,その後の政策決定と経済政策への着手は迅速であり,それらの宣伝工作は徹底していた。

3期目を見据える習近平政権

第3期習近平政権を見据えた動きが多くみられた。10月に開催された中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議(以下,第19期5中全会)において,「第14次国民経済・社会発展5カ年計画(以下,第14次5カ年計画)および2035年長期目標の裁定に関する党中央の提案」が採択された。習近平政権は,第14次5カ年計画のなかで経済社会発展の主要な目標を掲げ,米中対立の長期化を意識した経済システムの構築および社会秩序の維持を目指した貧困対策など,ボトムアップの実現を提起した。また,2035年までの長期目標を打ち立てたことに関して,第3期習近平政権の実現に向けた下準備ではないかとの見方が強い。

加えて,9月28日に開催された中国共産党中央政治局会議で中国共産党中央委員会工作条例(以下,「工作条例」)が審議されたことも,政権の長期化を目指すうえでの布石とみられている。「工作条例」は中国共産党の最高領導機関である中央委員会および中央政治局の構成員が遵守すべき規則をまとめたものである。この「工作条例」に,「二つの擁護(『習近平総書記の党中央の核心,全党の核心的地位を断固として擁護する』,『党中央の権威と集中的・統一的な領導を断固として擁護する』)」が加筆され,習近平の核心的地位の強化が目指された。その一方で,「工作条例」の採択や決定に関する報道がないまま各地域および各部門への印刷公布が行われたことから,内容の修正に関して党内で議論がまとまらなかったのではないかという憶測もあった。習近平政権が第3期目を実現するためには,依然として党内の同意形成に奔走しなければならないだろう。

そして,習近平は長期政権を見据えるなかで,公安部や司法部といった政法組織に対する命令的指導を強化している。4月19日に,中央紀律検査委員会および国家監察委員会は,公安部副部長の孫力軍を重大な規律違反と法律違反の疑いで調査していると発表した。同日に開催された公安部党委会議が,「孫力軍はこれまでに粛清されてきた周永康,孟宏偉らといった毒を流す人間と同列で,多くの方面に悪影響を与えてきた」と指摘していることから,孫力軍は周永康に近しい人物であることがわかる。また孫力軍は,上海市党委副書記,公安部部長を歴任した孟建柱の部下でもあったことから,江沢民元国家主席を中心とした党内派閥のひとつである上海閥に関係の深い人物と推測される。さらに,6月14日には重慶市副市長であり同市公安部部長であった鄧恢林が,8月18日には上海市副市長であり同市公安部部長である龔道安が相次いで重大な規律違反と法律違反の疑いで調査されていると発表された。鄧恢林は孫力軍と関係が近いとされ,龔道安は孟建柱の側近であった。公安部および上海閥に関係している幹部の多くが立て続けに汚職で摘発されていることがわかる。

一方で,4月29日には,公安部副部長を歴任し,司法部部長を担当していた傅政華がその職を解かれ,代わりに遼寧省長であった唐一軍が任命された。唐一軍は,習近平の浙江省時代の部下であったことから,公安部および上海閥関係の幹部らの汚職の摘発と唐一軍の任命という一連の動きは,政法組織に対する習近平の地盤固めだったのではないかという見方が強い。習近平政権は,政権発足から一貫して公安部に多くの予算を割き,社会秩序の維持に注視してきた。しかし,公安部の人的ネットワークは上海閥にあることから,重要任務を公安部に依拠し,そこに多くの予算を割くことは,権力闘争の観点から鑑みるとリスクが高い。そのリスクを軽減させながら,公安部重視の政策志向を維持するために,習近平は自らに近しい人物を登用する必要があった。習近平は長期政権を目指すなかで,地盤固めを目的とした人事を今後も続けるだろう。

習近平政権下の法による軍統治の推進

習近平政権は強軍路線を推し進めている。5月22日に開催された第13期全国人民代表大会第3回会議において,2020年の国防費予算が前年実績比で6.6%増加することがわかった。2019年度は前年度比7.5%増であったことから伸び率は鈍化しているものの,経済成長が低調のなかで高い水準にある。人民解放軍報道官は,中国の現状や課せられた責務と現在の国防費予算を比べると,依然としてその差は大きいと言及しており,今後も国防費は増額すると予想される。

習近平政権は,政権発足から一貫して「法治」を重視しており,党軍関係に関しても「法による厳しい軍統治を推進する必要がある」と強調してきた。この政策志向に則り,6月20日に開催された第13期全国人民代表大会常務委員会(以下,全人代常務委)第19回会議では,「人民武装警察法」の改正案が可決された。同法は,平時には地域ごとに区分された軍事組織である戦区から,戦時には中央軍事委員会または戦区からの指揮を受けると規定し,人民武装警察部隊の指導指揮体制を明確化した。また,人民武装警察部隊の任務範囲に海上権の維持に係る法律執行も追加されたことから,海警局は東シナ海あるいは南シナ海において,人民解放軍と行動を共にする可能性が出てきた。

10月13日に開催された第13期全人代常務委第22回会議で「海警法(草案)」の全文が公表された。そのいくつかの条項によると,中国当局の承認がない外国船が,中国の管轄する海域で違法に活動し,海警局の停船命令などに従わない場合,武器を使用することが可能となっていることがわかる。この法案は,2021年1月22日に開催された第13期全人代常務委第25回会議において採択され,2月1日から施行された。「海警法」の施行は,尖閣諸島沖や南シナ海などでの海警の行動に法的根拠を付与することから,中国の当該地域への対応はより強硬になると予想される。これに関し,国際社会の懸念も高まっている。

さらに,12月26日に開催された第13期全人代常務委第24回会議では,「国防法」の改正が採択され,2021年1月1日より施行された。同法には,重大な安全保障分野として宇宙や電磁気,サイバー空間が加えられた。また,全国的あるいは部分的な軍事力の動員を進める対象として,「中国の主権,統一,領土,安全に対する脅威」に加えて「発展の利益」に対する脅威も盛り込まれた。「発展の利益」の定義は依然として不明瞭ではあるが,米中貿易摩擦の悪化やアメリカの対中姿勢の強硬化を想定した法案であると考えられる。

全国人民代表大会による香港国家安全維持法の制定

香港での反政府デモの激化や今後の選挙日程を踏まえ,中央政府は香港政治への介入を確実に強めている。第13期全国人民代表大会第3回会議は,新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け,2カ月半遅れの5月22日から28日にかけて開催された。香港基本法第23条は,香港特別行政区が香港の国家安全法を制定しなければならないと規定しているが,22日に全人代常務委副委員長の王晨は「香港特別行政区における国家安全保障の法律制度とその執行を導入・整備することに関する全人代の決定(草案)」(以下,「決定」)について説明し,全人代常務委による立法は中華人民共和国憲法ならびに香港基本法に則していると指摘した。また,中国共産党中央政治局常務委員である韓正は今回の全人代常務委による立法について,「中央が香港の情勢に基づいて慎重に下した政策決定であり,国家の分裂,政権転覆,組織的なテロ活動など国家安全に深刻な危害をもたらす行為と香港問題に干渉する外部勢力を対象としたものである」と説明した。今回の立法は,香港で激化している反政府デモへの対応としてだけでなく,アメリカなどの諸外国を意識したものであったことを示唆した。全人代の最終日である28日には,香港の国家安全法の制定を目指す「決定」が圧倒的多数で採択された。

6月18日から20日にかけて開催された第13期全人代常務委第19回会議では,その初日に「香港国家安全維持法(草案)」を審議した。全人代常務委法制工作委員会の責任者が行った同法(草案)の説明のなかで,香港特別行政区政府は香港特別行政区に国家安全維持委員会を,また中央政府は香港特別行政区に国家安全維持公署を設置することを明らかにした。

6月30日に第13期全人代常務委第20回会議が開かれ,「香港国家安全維持法」は満票で可決され,即日施行された。同日に,中央政府は国家安全維持公署を,香港特別行政区政府は国家安全維持委員会を設立した。国家安全維持公署署長には広東省党委員会常務委員の鄧雁雄が任命された。また,国家安全維持委員会の国家安全事務顧問には中央政府駐香港特別行政区連絡事務弁公室(以下,中聯弁)主任の駱恵寧が任命された。香港を監督する中央政府の組織である中聯弁の主任が,香港特別行政区政府が組織する国家安全維持委員会の顧問に就任したことは,香港の治安維持に関して党中央の影響力が強まったことを示している。

同法の施行によって,9月5日に香港で予定されていた立法会選挙で民主派の多くが排除される可能性が出てきた。民主派は7月11,12日に予備選挙を実施し,立法会選挙に向けて候補者の調整を実施したが,中聯弁報道官は予備選挙が違法であると非難した。同月31日には,香港特別行政区政府行政長官の林鄭月娥(キャリー・ラム)が,新型コロナウイルスの感染拡大を受け,立法会選挙を1年延期することを発表した。また,林鄭月娥は,現職の議員の任期延長や次期議員の任期について全人代常務委の判断に委ねると言及した。

11月11日に開催された第13期全人代常務委第23回会議で,「香港特別行政区立法会議員資格問題についての決定に関する国務院の議案」(以下,「議案」)が審議され,採択された。「議案」によると,立法会議員が国家の安全を脅かすなどの行為を行った場合,立法会議員としての議員資格を喪失するという。その結果,4人の立法会議員が議員資格を失うと発表された。香港の反政府デモが活発であるかぎり,中央政府は香港に対する強硬姿勢を崩すことはないものとみられる。

体制内知識人の政権批判に対する取り締まり強化

習近平政権は,政権あるいは中国共産党を批判する人物の取り締まりを強化している。7月6日に,清華大学の許章潤は,四川省成都市で売春に関わった容疑で警察に身柄を拘束され,清華大学からも免職を言い渡された。許章潤は体制内の知識人でありながらも習近平政権に対する批判や中央と地方の軋轢など現政権の脆弱性を指摘してきた人物であった。したがって,許章潤の拘束理由は捏造で,実際は政権批判をする人物への取り締まり強化との見方が強い。

許章潤が注目された理由のひとつが,新型コロナウイルスの感染拡大に対する党中央の対応を批判したことである。昨年12月30日に,武漢市中心病院の李文亮医師は新型コロナウイルスの存在を確認しており,感染拡大の初期段階で警鐘を鳴らしていた。しかし,1月3日に武漢市公安局武昌分局は,社会秩序を乱す発言をしたとして李文亮を訓戒処分にした。そして,新型コロナウイルスの深刻度が増すなかで,李文亮も2月7日に感染症を患い,死去した。当初,李文亮の指摘はデマであると公表していた国営メディアが一転,追悼記事を掲載し,「彼のプロフェッショナルな警戒心は敬意に値する」と評した。党中央が李文亮に対する評価を一変させたことについて,許章潤は北京大学の張千帆教授とともに全人代常務委に対して言論の自由を求める公開書簡を発表した。現在,許章潤はハーバード大学フェアバンクセンターに研究員として在籍しながら,9月には違法経営罪の嫌疑で逮捕されたフリージャーナリストの耿瀟男夫妻の解放を求めるなど,政権に対する批判的な意見を発信し続けている。

許章潤を強く支援した中共中央党校の教授であった蔡霞も党籍剥奪および退職後の待遇の取り消し処分を受けた。中国共産党の幹部教育機関である中央党校は8月17日の通告で,「蔡霞は,重大な政治問題があり,国家の名誉を損なう言論を発表した」「政治問題の性質は極めて悪辣で,言論の内容は極めて深刻である」と公表した。蔡霞は典型的な革命一家に生まれ,現体制の既得権益者であり体制内知識人とみられていた。しかし,政治体制改革に対する考えや,党批判を行った不動産会社経営の任志強に対する意見を表明した際に,中央党校から度重なる言論統制を受けたことを契機として,蔡霞は言論の自由を求め党員を退く考えをもつようになったという。そして,「香港国家安全維持法」に対する意見および中国共産党と習近平に対する痛烈な批判を行ったことから,党籍剥奪処分を受けるに至った。蔡霞も許章潤と同様にアメリカに生活の拠点を移している。

(内藤)

経 済

マクロ経済の概況

新型コロナウイルスの感染拡大により,世界的に甚大な影響を受けた2020年,中国政府は史上初めて5月の全国人民代表大会において年間の実質国内総生産(GDP)成長率目標を設定しなかった。李克強首相は,新型コロナウイルスの世界的流行による経済低迷が内外の経済環境を不透明にしており,中国経済の発展が予測不可能な要因に直面しているからだと説明している。実質GDP成長率の目標値を示すことで量的目標の達成にとらわれることなく,政府の各部門が「6つの維持」(六保)に重点的に取り組むことを求めたものとみられる。

「6つの維持」は,5月22日に公開された第13期全国人民代表大会第3回会議の政府活動報告の中で示された。それは,前年に提唱された経済運営方針としての「6つの安定」(「国内政治」の項参照)を実現するために新たに設けられた具体的任務との位置づけで,(1)雇用,(2)民生,(3)市場主体,(4)食糧・エネルギーの安全,(5)サプライチェーン,バリューチェーンなどを含む産業チェーン,(6)基層社会組織の運営の6分野をしっかりと維持することが経済の質の良い発展に必要だとされた。政府は「6つの維持」を実行することにより,前年来のサプライサイド構造改革を進め,雇用と民生を守り,小康社会を実現することができるとしている。

2020年の実質GDP成長率は,国家統計局が2021年1月に発表した速報値によれば通年で2.3%であり,1992年以来の最低水準となった。四半期ごとの動き(図1)をみると,中国経済は新型コロナウイルスの感染拡大の国内的ピークであった第1四半期(1~3月)には,実質GDP成長率マイナス6.8%(前年同期比)を経験した。四半期ごとの成長率がマイナスとなるのは,同データの公表を始めた1992年以来初めてのことである。新型コロナウイルス感染症対策のための厳しい都市封鎖による経済的ダメージの大きさをうかがわせた。しかし,第2四半期には3.2%と早くもプラスに転じ,第3四半期に4.9%,第4四半期に6.5%と急速な回復をみせた。とくに,第4四半期の成長率6.5%は前年同期の成長率6.0%を上回っており,中国経済は2020年末までに新型コロナウイルスの影響から基本的に脱却したとみられている。

図1  中国のGDP成長率

(出所)『中国統計年鑑2020』。

なお,2020年の実質GDPは101兆6000億元であり,初めて100兆元の大台を突破した。2020年は2012年以来中国政府が目標に掲げていたGDP倍増計画の最終年度に当たり,目標達成には5.6%以上の成長率が必要だったが,それには遠く及ばない結果となった。政府は12月に開催された中央経済工作会議における2020年経済の総括において,世界的に困難な時期にあって中国経済が世界の主要国のなかで唯一プラス成長を実現したとするOECD,IMFなど国際機関の評価に言及し,2021年の経済成長正常化に向けた自信と期待を示した。

新型コロナウイルス禍のなかの財政・金融政策

2020年の全国一般公共予算は,収入は前年比5.3%減の18兆300億元で,2019年の当初予算と執行予算をそれぞれ5%,3.8%下回るものとなった。そのうち,中央一般公共予算収入は8兆2800億元で前年執行額に比べて7.3%減,地方一般公共予算収入は9兆7500億元で同3.5%の減である。

支出は前年比3.8%増の24兆7800億元であり,収支は3兆7600億元の赤字が見込まれた。この財政赤字規模は2019年の2兆7600億元(GDP比2.8%)よりさらに1兆元増え,GDP比3.7%となった。拡大された財政赤字部分は,財政収支の補填,地方政府への財政移転などに充当された。

以上の3兆7600億元の財政赤字分に加えて,1兆元の中央財政新型コロナウイルス感染症対策特別国債,3兆7500億元の地方政府新規発行特別債の合計8兆5000億元余りが新型コロナ対策の緩和財政に投じられた。地方特別債は前年の執行額(2兆1500億元)より拡大して,消費促進,内需拡大など住民生活を支える施策に利用された。

5月の政府活動報告において李克強首相は,2020年は前年度に引き続き穏健な貨幣政策を「より柔軟で適度」に運用すること,また企業への金融サポートを強化することを明らかにした。中国人民銀行は新型コロナウイルス感染症対策として1月31日付で貸出を必要とする重点企業を対象に3000億元の専用再貸出枠を設定し,対象となる銀行の貸出金利には財政から50%の補填が行われた。さらに2月26日には,その他企業の生産体制回復を支援する銀行に向けた再貸出・再割引枠を5000億元に設定した。また,4月20日にも,新型コロナウイルス感染症の影響が大きい中小零細企業,農業,貿易分野の企業向けに,1兆元の優遇金利による再貸出・再割引枠が設けられた。再貸出に適用される金利は,中小零細企業と農業分野向けについて2月26日付で0.25%の引き下げが行われ,1年物で2.5%となった。さらに7月1日には2.25%に引き下げられた。貿易分野の企業向けには,ローン返還時期の延期措置をとることとした。

預金準備率は1月6日に0.5%の引き下げが行われた。さらに3月16日,農業生産,貧困層,教育分野,中小零細企業などに対する貸出基準を満たした銀行については0.5~1%引き下げられたほか,銀行別の段階的な対応が実施された。その結果,5月15日時点で大型商業銀行の預金準備率は11%,全金融機関平均の同率は9.4%となった。

「双循環」発展戦略の提起

米中貿易摩擦と感染症の世界的な拡大は,中国に改革開放政策以来の大きな戦略転換を選択させた。中国は1987年に提起した「国際大循環」戦略,つまり国際的な加工貿易体制の「川中」にあたる加工や組み立てなど労働集約的工程を担う大量生産を基本とする経済戦略をとってきた。この体制では,サプライチェーンの「川上」にあたる研究開発や主要部品の生産と,「川下」にあたる販売,アフターサービスは先進国に依存してきた。

しかし,中国はすでに2004年来労働力が過剰から不足に転じ,産業の高度化を模索してきている。さらに米中貿易摩擦と新型コロナウイルス感染症による国際貿易への影響は「国際大循環」戦略に抜本的な見直しを迫ることとなった。

5月14日に行われた中共中央政治局常務委員会で初めて提起された「双循環」戦略は,こうした未曾有の国際経済の転換期に対応した新たな発展戦略とみられている。「双循環」とは,国内循環を主体とし,国内と国際の2つの経済循環を相互に促進する政策のことである。これまで,グローバル化経済の下で加工貿易は中国に急速な発展をもたらした。しかし,現在のように保護主義が台頭し,世界経済が低迷,グローバル市場が委縮した外部環境の下では,中国は国内の巨大市場という優位性を十分にいかすべきだとの考えを政府は示し,10月26~29日に開催された第19期5中全会でも提起した。「双循環」戦略は,2021年から始まる第14次5カ年計画のなかでも重要な概念となる。「双循環」戦略の実施にあたっては,生産・分配・流通・消費に重点をおきつつ,供給サイドの構造改革と内需拡大方針を堅持し,需要と供給の拡大均衡を目指すことが求められる。また,生産面ではサプライチェーンのレベルアップを図り,イノベーションを推進し,コアとなる技術の開発に力を入れて従来の低賃金に代わる新たな優位性を作り出すことが今後の中国経済には必要になろう。

新型コロナウイルス禍による消費と生産への影響

武漢市がロックダウンを開始した1月23日以降,中国の他の省市も交通遮断のほか,村や街区単位の封鎖や隔離措置をとり,企業にも2月10日まで生産停止を求めた。こうした感染拡大防止措置は,経済には大きなダメージを与えた。

短期的には人々が自宅待機して外出や消費活動を行わないことにより,第三次産業のサービス業消費が減少する。とくに,感染拡大期が春節休みに重なったことで飲食,旅行などのサービス消費には大きなマイナスとなった。その一方で,「宅経済」(巣ごもり経済)といわれる在宅消費形態が新たに生まれ,利用を伸ばしている。これはオンラインとオフラインを組み合わせた小売モデルで,「O2O(オーツーオー)モデル」と呼ばれる。オンラインで予約して店舗へピックアップに行く,またはオンラインで注文して自宅へ配送するなどの新しい流通形態である。感染拡大期にスーパーやコンビニが従業員を減らし接触を避けると同時に供給と物流コストを削減する目的で考案した。また,これまで中国ではあまり普及が進まなかったスーパーやコンビニでの無人販売,生鮮食品のオンラインショッピングなども,これを機に今後普及する可能性が指摘されている。

とはいえ,生産現場へのダメージは大きい。製造業企業が多く所在する広東省の多くの企業では,2月10日の生産再開を前に,3日にソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のWeChat経由で全従業員に生産再開指南を通知し,5日に就業地到着情報の登録を求め,10日に生産を再開した。それでも,ある電器製品メーカーでは2月14日までに職場に復帰した従業員は60%ほどであった。農村出身の移住労働者に頼る沿海部企業では,多くの従業員が飛行機や鉄道の切符を手配できず,生産再開時に春節期間中の帰省先から職場に戻ることができなかった。コロナ禍による交通網の寸断が生産再開を遅らせた。

3月下旬頃には,広東省東莞の衣料品工場の倒産に始まり,電子部品のOEM工場の多くで海外企業からの受注キャンセルが相次いだ。さらに4月上旬にはその影響が川下の企業にも及んだ。主な取引先である日韓や欧米での感染症拡大による工場の稼働停止,消費の減退のあおりを受けた形である。

製造業は元来,サービス業などと比べて物流や資金繰りが断絶するリスクに弱い。新型コロナウイルス禍の直接・間接的な影響により,中小企業の倒産,すでに数年来縮小している投資のさらなる減退,そして,多国籍企業によるサプライチェーンの中国国外への移転などの動きが加速する懸念が強まっている。

米中貿易摩擦から技術覇権争いへ

アメリカのトランプ大統領(以下,トランプ)が2018年以降推進してきた自国保護主義的な貿易政策による中国との制裁関税の応酬は,2020年1月に第1段階の合意に両国が正式に署名したことで,問題解決への前向きな変化がみられた。

合意の柱は米中貿易の大幅拡大で,中国はアメリカからモノとサービスの輸入を2年で2000億ドル増やすとしている。その内訳は,工業品777億ドル,液化天然ガス(LNG)などエネルギー524億ドル,農畜産品320億ドルなどで,アメリカのモノとサービスの対中輸出額は1860億ドルほどになると見込まれた。

この米中の第1段階の合意は2月14日に約束どおり発効し,トランプ政権は2019年9月に発動した中国製品に対する制裁関税を従来の15%から7.5%に引き下げた。対象は衣料品,家電など約3200品目,1200億ドル分の製品である。中国も同時に750億ドル分のアメリカ製品に対する報復関税を一部縮小し,原油や大豆,化学製品など約1700品目を対象に10%を5%,5%を2.5%にそれぞれ引き下げた。

制裁関税が改善する一方で,トランプ政権は5月と8月に華為技術(ファーウェイ)に対する半導体の供給規制強化策を発表した。2度にわたる規制強化によりアメリカは,アメリカ製の半導体製造装置や設計ソフトウェアを使ってつくる半導体の華為への輸出を委託製造や汎用品の輸出も含めて全面的に禁止した。高性能半導体はスマートフォンや第5世代移動通信システム(5G)通信網などで幅広く使われており,人工知能(AI)など最先端技術の開発でも鍵を握る。アメリカは中国軍に利用されることを防ぐ名目の下に,経済・軍事両面の競争力の決め手となる中核部品で米中のデカップリング(切り離し)を進めている。

トランプ政権は動画投稿アプリTikTok(ティックトック)についても,安全保障上の懸念があるとして運営会社北京字節跳動科技(バイトダンス)に対し,アメリカにおけるTikTok事業の米企業への売却を求めた。9月に米IT大手のオラクルがウォルマートと共同でTikTok米国事業への2割出資を決め,連携に合意した。

米商務省の発表によると,2020年のアメリカの貿易統計(通関ベース)は貿易赤字が前年比5.9%増えて過去最大を記録した。新型コロナウイルスによる巣ごもり消費などで年後半の輸入が活発だったとみられている。バイデン政権は中国からの輸入増を警戒しており,米中間は今後もハイテク技術覇権争いとともに通商面でのせめぎ合いも予断を許さないものになりそうである。

食糧自給率への懸念

2020年,中国では20数年ぶりに食糧自給率に注目が集まった。4月に開催された中央政治局会議において,政府がエネルギーとともに食糧の安全確保に言及したのは,1998年に中央政府が中国の食糧問題は量的問題を基本的に解決したと宣言して以来のことであった。さらに8月,中国社会科学院が第14次5カ年計画(2021~2025年)の終わりには1億3000万トンの食糧不足が発生すると発表して注目された。

中国の食糧問題研究の第一人者,中国農業大学中国食糧と食物安全研究センター主任の王宏広教授によれば,2014年以降6年間の中国の食糧生産高は毎年約6億6000万トン前後であり,これは中国の食糧生産の潜在力相応だという。他方で,中国の人口増や都市化の加速により,近年の食糧輸入量は上昇中で,毎年1億トン以上の食糧を輸入に頼っている。2020年1~10月の中国の食糧輸入量は1億1514万トンで前年比28.5%増であった。

小麦,コメ,トウモロコシの三大主食食糧の自給率は98.75%と堅調な一方で,大豆の輸入量は急激に増加しており,国内で消費する大豆の85~90%(8851万~1億1000万トン)を輸入に頼っている。中国の大豆消費は大半が家畜飼料としての用途であり,国内の肉類価格に直結する。近年,中国ではアフリカ豚熱などの家畜伝染病により豚肉価格が高騰している。また,米中貿易摩擦の枠組みでは大豆も制裁関税の対象に入っており,その影響も大きい。大豆が輸入頼みであることは中国にとって大きな不安材料である。

「新型インフラ建設」への大規模投資

新型コロナウイルスによる経済へのダメージの一方で,5月の政府活動報告のなかで李克強が具体的な重点投資項目として挙げたのが「新基建」つまり,新型インフラ建設である。これに先立ち,4月20日には新型インフラ建設を管轄する国家発展改革委員会が記者会見を行い,新型インフラ建設の概念や範囲について政府見解を示した。新型インフラ建設とは具体的には,5G,AI,産業インターネット,モノのインターネット(Internet of Things:IoT),データセンターなどの情報デジタル化のためのインフラ建設を指す。デジタルエコノミー化を進め,中国経済の発展と高度化のけん引力となることが期待されている。

2020年,中国の31の省市が計画的に始動した重大プロジェクトのうち新型インフラ建設がその15%ほどを占めた。国有企業の新型インフラ建設への投資は積極的で,例えば国家電網公司の2020年UHV(超高電圧)送電プロジェクトへの投資規模は1811億元,これに関連した社会投資は3600億元ほどで合計5411億元の投資規模となった。3大電信キャリアである中国移動通信集団公司,中国連合網路通信株式有限会社,中国電信集団有限公司は中国鉄塔株式有限公司と共に2020年に5G基地局を60万カ所余り建設し,投資総額は約2000億元であった。

2020年の中国の新型インフラへの投資規模は,興行銀行の研究チームの予測によれば,都市間高速鉄道への投資額が1兆3000億元以上,5G基地局建設に2925億元,データセンター建設に2684億元,産業インターネットに840億元,AIに1122億元,衛星インターネットに117億元など総額2兆1800億元となることが予想されている。新型インフラは核心技術をアメリカに頼るケースも多く,2021年1月に発足したバイデン政権との関係改善が期待される。

(山口)

対外関係

習近平政権の「マスク外交」

習近平政権は,中国の感染症対策に関する国際社会からの批判をかわしつつ,その有効性を主張し,諸外国への医療支援を戦略的に行うことで,対外関係の構築を進めている。新型コロナウイルスに関する重要指示が出されて間もない1月22日に,習近平は,フランスのマクロン大統領およびドイツのメルケル首相とそれぞれ電話会談を実施した。習近平は両氏に対して,世界保健機関(WHO)を含む国際社会との協力を強化したいと強調するとともに,中国は感染予防治療に関する情報を迅速に発表しているとし,情報の公開性を主張した。同月28日にWHOのテドロス事務局長と会見した際にも,習近平は同様の主張を行った。中国が新型コロナウイルスに関する情報を統制しているのではないかという疑惑に対して,情報の公開性や国際社会との協力を積極的に主張することで,諸外国からの対中批判をかわそうというねらいがあったとみられる。

それだけでなく,習近平は戦略的な医療支援も行った。前年に「一帯一路」構想への本格的な参加を決めたイタリアに対して,習近平は3月11,19日に引き続き,26日に第3陣目となる医療専門家チームの派遣と医療物資の援助を行うと表明した。その後も,「一帯一路」構想への参加を表明しているカンボジア,セルビアに医療専門家チームを派遣し,ブラジルには医療物資の援助を行った。また,中東および欧州の参加国に対しても,医療物資調達輸送に便宜を図る用意があると伝えた。習近平は,新型コロナウイルス対策に関して国際協力を推し進めるなかで,かねてから重視してきた「一帯一路」構想の参加国とのネットワークを強めている。

習近平政権は諸外国へのマスク外交を展開するなかで,先鋭化する米中関係の状況を見計らいながら,対EU外交を積極的に推し進めている。6月22日に,習近平はEUのミシェル欧州理事会議長とフォンデアライエン欧州委員会委員長とビデオ方式での会見を行った。EU側は,「香港国家安全維持法」の制定や新型コロナウイルスに関する情報操作について疑義を呈したものの,「中国と戦略対話を発展させ,共通認識を拡大することを期待する」と言及した。習近平もEUとの協力関係の構築に積極的な姿勢であることを示し,双方は「中国・EU包括的投資協定」の年内合意で一致した。

9月14日には,EU議長国であるドイツのメルケル首相を含めたEU首脳陣と習近平のビデオ会議が行われた。習近平は会議において,新型コロナウイルス感染症が収束した後の世界経済の回復を後押しするために,オープンな貿易や投資環境を守るべきであると強調し,EUとの関係強化を訴えた。EU首脳陣も中国が重要な戦略協力パートナーであると認め,「中国・EU包括的投資協定」への年内合意だけでなく,「中国・EUグリーン(環境配慮型)パートナー」「デジタル協力パートナー」を構築することで一致しながらも,香港や新疆の人権問題に関しては双方の見解に違いが表れた。また,メルケル首相は「EUはアメリカとのバランスをとるために利用されることはない」と指摘し,習近平政権の対EU外交はその思惑ほど成果を収めるには至っていない。

国交正常化以降最悪の米中関係

2018年末以降の米中貿易摩擦は,米中関係の悪化を招き,「米中新冷戦」とも呼ばれるようになった。2020年1月15日に米中第1段階経済貿易合意文書に両国が署名し,米中両国とも世界経済の安定を目指すことで合意した一方で,サイバー空間やハイテク技術,人権といった分野での米中対立は先鋭化している。

2月10日に米司法省長官が中国人民解放軍54研究所に所属するハッカー4人を米信用情報機関に対するハッキングの疑いで起訴したことを発表した。これに対して中国国防部報道官は,「事実に基づく根拠のまったくないもので,完全な覇権主義行為」であり,「中国は国際サイバーセキュリティーの堅固な擁護者である」と主張し,起訴の撤回を要求した。同月13日には,米司法省は中国のファーウェイを米企業からの機密情報窃取に関与したとして起訴したことを明らかにした。そして5月15日に,米商務省はファーウェイに対する輸出規制を強化すると発表した。加えて,米政府は国防授権法で定められた規則を8月13日から施行し,その規則に基づいて,ファーウェイを含む中国のハイテク企業5社の製品を使用する企業と米政府との取引を禁止した。

米中のサイバーセキュリティーにおける対立は,双方の領事館の閉鎖にまで発展した。米政府は,ヒューストンにある中国総領事館が産業スパイ行為や知的財産の窃取を扇動した疑いが強いと判断し,7月21日に中国政府に対して24日までに当該領事館を閉鎖するよう要求した。これに対し,中国外交部報道官は,アメリカに対して強硬な姿勢をとり,「アメリカが誤った決定を撤回しなければ,中国は必ず正当かつ必要な反応を示す」と述べた。そして,24日に中国外交部は,成都にある米国総領事館の設置および運営許可の取り消しを決定した。

新疆ウイグル自治区や香港をめぐる人権問題においても,米中対立が顕在化した。7月9日に米財務省は,新疆ウイグル自治区党委員会書記である陳全国のほか,同自治区公安部の幹部ら3人に対し,人権侵害に関与したとして資産凍結およびビザの発給拒否といった制裁を決めた。また,20日には新疆ウイグル自治区の人権侵害に関わった中国企業11社を制裁対象に加えることを発表した。中国は,米連邦議会議員など4人に同等の制裁を行うとし,アメリカの対応に強硬な姿勢を示した。

「香港国家安全維持法」の制定が決定した際にも,トランプはアメリカが香港に認めてきた関税や投資などの優遇政策を見直すと述べた。7月14日にトランプは金融機関への制裁を可能にする「香港自治法」と,香港への優遇措置を廃止する大統領令に署名した。中国が香港への関与を強める一方で,アメリカも中国に対して強硬な姿勢をとった。中国外交部は,アメリカの措置を内政干渉であると強烈に非難した。

サイバー空間やハイテク技術,人権といった分野において示されたアメリカの強硬な対中姿勢は,米政府高官の声明にも表れた。ポンペオ国務長官は,7月23日に「共産主義の中国と自由世界の未来」と題した演説において,習近平を名指しで非難しただけでなく,中国共産党政権そのものを痛烈に批判した。この声明をうけ,王毅外交部部長は,28日に行われたフランスとイギリスの外相との電話会談で,「横暴理不尽に暴れまわるアメリカに対し,中国は断固かつ理性的に対応している」と説明した。このことからも,中国は,EUを中心とする諸外国にアピールする形で,アメリカの対中強硬姿勢に応対していることがうかがえる。8月5日に王毅は米中関係の現状に関する新華社のインタビューを受け,対米対話路線を継続する意向と,現在の米中関係に必要な4点[(1)最低ラインを明確にし,対立を回避する,(2)チャンネルを円滑にし,素直に対話する,(3)デカップリングを拒否し協力を維持する,(4)ゼロサム思考を捨て,互いに責任を負う]を提示した。中国の外交政策の最高責任者である楊潔篪も,7日の『人民日報』に「歴史を尊重して未来志向で,中米関係を断固として揺るぎなく守り,安定化させよう」と題する署名論文を発表した。

11月にはアメリカ大統領選挙が行われ,対中強硬姿勢が顕著であった共和党のトランプは僅差で敗北し,12月9日に民主党のバイデンの勝利が確定となった。これにより,アメリカの対中強硬路線の緩和が予想される。

インドとの国境対立

中印国境地区で,1962年以来45年ぶりの武力衝突が起こった。5月5日から中印両軍のにらみ合いが続き,6月15日夜に中国とインドの国境地区であるガルワン渓谷で,国境警備部隊要員の衝突が発生した。中国国防部報道官は,「インド軍は約束に違反し,実効支配ラインを再び越えて違法な活動を行い,下心をもって挑発攻撃に出て,中国側と激しくつかみ合う衝突を起こし,国境警備部隊要員が死傷した」と説明した。インド側の死者も20人にのぼるとみられている。

6月17日に,王毅はインドのジャイシャンカル外相と電話会談を行った。王毅はインド側に強い抗議を表明した一方で,中印両国が既存のチャネルを通じて事態の適切な処理について意思疎通と協調を強めなければならないと指摘した。22日には軍長級会議が行われ,中印双方が対話と協議を通じて情勢の緩和を図ることを希望した。7月1日の『環球時報』(電子版)によると,中印双方は第一線部隊の「接触回避」を段階的に進め,強い措置をとり,国境地区情勢の沈静化を図ることで一致,合意したという。

しかし,人民解放軍西部戦区報道官は,8月31日にインド軍が班公湖南岸,熱欽峠付近で再び不法に越境,占拠し,国境情勢の緊張を招いたと発表した。さらに,9月7日にはインド軍が中国国境警備部隊に対して発砲したという。10日にモスクワで開催された上海協力機構(SCO)外相会議で,王毅はジャイシャンカルと再び会見し,建設的な話し合いの結果,事態の緩和を含む5つの共通認識に達したと発表した。これにより事態の鎮静化は図られたが,中印双方の見解が依然対立しており,不安定な国境地区の情勢は長期化すると考えられる。

緊密化する中ロ関係

米中関係が悪化するなかで,ひき続き中国はロシアとの関係を緊密化させている。新型コロナウイルスの感染拡大に関し,アメリカは中国に対して情報の隠蔽があったのではないかと非難を強める一方,ロシアのプーチン大統領は習近平と電話会談を実施し,中国の対応は適切であり,国内外に十分に貢献していると評価した。ロシアの大祖国戦争勝利75周年を祝し,両国首脳の電話会談が行われた際にも,プーチンは「ごく少数の勢力が新型コロナウイルスの感染をめぐって中国を非難することに反対し,断固として中国と共にある」と強調した。習近平は,「ロシアを揺るぎなく支持する」と主張するとともに,「中国はロシアと国連など多国間の枠組みのなかで協調・連携を緊密にする」とした。この発言には,多国間関係の枠組みを尊重しつつも,アメリカに対するけん制を念頭に置いて,中ロ関係を発展させていこうとする習近平政権の意図がみうけられる。

このような中国側の姿勢は,外相会談においても確認できる。7月18日に王毅はロシアのラブロフ外相と電話会談を実施し,「アメリカは自国優先の政策をあからさまに実行し,利己主義,一国主義,いじめ行為を極限まで推し進めており,大国としてのしかるべき姿などどこにもみられない」と痛烈に批判した。一方で,中ロ関係については,「中ロは責任ある大国であり,二国間関係を引き続きより高い水準へ押し上げ」ると表明し,感染症対策と実務面での協力を深め,重大な国際・地域問題での戦略的協力を強化することを確認した。

また,このような王毅の主張は,中ロ両国が参加する多国間枠組みでも展開された。9月10日にモスクワで開催された上海協力機構(SCO)外相会議において,「今日のアメリカは現代国際秩序の最大の破壊者になりつつある」と痛烈に批判した。そして,翌日に開催された中ロ外相会談の結果として発表された共同声明では,中ロ両政府が「各国の発信するニュースや言論は事実に基づくべきで,他国の内政に干渉すべきではないし,他国の政治制度と発展の道を理もなく攻撃すべきでない」と呼びかけた。また,ロシアは中国が提起した「グローバル・データセキュリティー・イニシアティブ」という,データセキュリティー分野の国際ルール制定を進める取り組みに賛同した。

さらに,11月18日に行われた中ロ外相電話会談では,王毅が,「来年の『中ロ善隣友好協力条約』調印20周年祝賀を軸に,新時代の中ロ関係の戦略的内容を充実させ,両国の全面的戦略協力をより高いレベルに進めることを願っている」と発言した。10月22日に行われた世界の有識者と意見交換を行うプラットフォームであるバルダイ会議において,プーチンが中ロの軍事同盟について「理論的に十分に想像することができる」と発言したこともあり,2021年の中ロ関係はより強固なものになることが予想される。そして,12月22日には中ロ国防省が,アジア太平洋地域で2回目となる中ロ空軍による合同空中戦略パトロールが実施されたと発表した。これは,「両国の新時代の全面的戦略協力パートナーシップを一段と発展させ,両軍の戦略協力レベルと協同行動能力を高め,世界の戦略的安定を共に守ることを目的としている」という。中ロ関係がいまだかつてないほど良好であることは,28日に行われた両国の首脳電話会談でも確認された。

関係改善を目指しながらも海域問題を抱える日本と中国

習近平の訪日は,友好な日中関係を示す良い好機になると考えられていた。2019年6月に開催されたG20首脳会議で安倍総理は「来年(2020年)の桜が咲くころに国賓としてお迎えし,日中関係を次の高みに引き上げたい」と言及し,2020年春に習近平の来日が実現できるよう計画をすすめた。しかし,2月28日に楊潔篪が来日し,安倍総理を表敬した際に,新型コロナウイルスの感染拡大防止を最優先にしなければならず,また,習近平の国賓訪日を十分な成果があるものとするためには,日中両国がしっかりと準備を行う必要がある,との認識が共有されたことから,習近平の訪日は延期となった。延期後の具体的な時期については,両国間の外交ルートを通じて改めて調整するとしているが,9月25日の加藤官房長官の記者会見で,「具体的な日程を調整する段階ではない」との見解が示された。

習近平政権は,米中関係が悪化するなかで,対日姿勢を穏健に保ち,日中関係の改善を目指している。9月3日に開催された中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利75周年を記念する座談会において,習近平は「中日の長期平和友好関係を維持することは両国人民の根本的利益に合致している」「日本軍国主義の侵略の歴史に正しく向き合い,深く反省することは中日関係の樹立,発展の重要な政治的基礎である」と言及し,日本を批判する内容は限定的であった。9月16日に菅内閣が発足し,同月26日に行われた日中首脳電話会談においても,日中の安定した関係は両国のみならず地域および国際社会のために極めて重要であることを確認した。

一方で尖閣諸島をめぐる日中関係は依然として緊張している。中国海警局の公船2隻が7月2日から5日にわたり尖閣周辺の日本の領海に侵入した。また,10月にも中国公船が日本の領海に侵入し,領海内の連続滞在時間は約57時間となり,2012年の尖閣諸島国有化以降最長となった。日本政府は外交ルートを通じて中国政府に複数回抗議したが,効果はなかった。中国公船の日本領海への侵入に対して,中国外交部報道官は「釣魚島と付属の島嶼は中国固有の領土で,釣魚島海域におけるパトロールおよび法執行は中国固有の権利であることを日本は確実に尊重すべきだ」と強調した。さらに,中国は2021年1月に海警法を制定し,尖閣諸島沖における中国公船の行動に合法的根拠を付与したことから,その活動はより活発化すると予想される。外務省幹部は,このような中国公船の度重なる日本領海への侵入に対して,「既成事実を積み上げて現状変更を狙っている」と分析している。

南シナ海問題を中心に外交戦略を変化させる対ASEAN外交

対ASEAN外交では,南シナ海に面する国々とそれ以外の国々とで,中国は異なる外交戦略をとっている。4月18日に民政部は,国務院が「海南省三沙市に南沙区と西沙区の設置を承認した」と発表した。南沙区政府はファイアリー・クロス礁(永暑礁)に置かれ,スプラトリー諸島(南沙諸島)の島嶼とその海域を管轄するとした。西沙区政府はウッディー島(永興島)に置かれ,パラセル諸島(西沙諸島)の島嶼とその海域を管轄するほか,中沙諸島の島嶼とその海域の管理も代行するという。2つの行政区を設けたことで,中国の南シナ海海域に対する支配の既成事実化が進んだ。

中国とASEAN加盟国は,南シナ海をめぐる争いを防止する強制力を伴ったルールとして,「南シナ海行動規範」(COC)の制定を目指している。中国は規範の制定に意欲的で,7月30日に行われたインドネシアのマルスディ外相とのビデオ会談においても,王毅は,「COCを全面的かつ効果的に実行し,その協議を急ぎたい」と言及した。そして,9月9日に開催された第10回東アジアサミット外相会議において,王毅は,南シナ海問題に対する中国の立場を明確にするため,3つの基本的な事実を挙げた。それは,第1に南シナ海諸島に対する中国の主権とそれに基づく権利には十分な歴史的,法理的根拠があるということ,第2に中国は善隣友好の周辺政策を堅持し,常に南シナ海問題で建設的役割を果たしているということ,第3に中国は常に国連海洋法条約を含む国際法の順守に尽力しているということである。これを受けて発表されたASEAN外相会議の共同声明では,南シナ海については,「緊張を高め,地域の安定を損ねかねない活動や深刻な事案に対して,複数の外相が懸念を示した」と指摘されており,規範の制定には程遠い状況であることがわかった。

このような状況のなか,中国は南シナ海に接していないASEAN加盟国に対して積極的な関係づくりを進めている。1月6日に習近平と李克強がそれぞれラオスのトーンルン首相と会見した。その際に李克強は「ラオスを含むASEAN加盟国とともに地域経済統合を推進し,予定どおりに地域的な包括的経済連携(RCEP)の署名を行う」意向を表明した(RCEPの旧日本語訳は,東アジア地域包括的経済連携協定)。17日には,習近平がミャンマーを国事訪問し,ウィンミン大統領およびアウンサンスーチー国家顧問とそれぞれ会談を行った。翌日には,中国とミャンマーの共同声明が発表され,「双方は引き続き多国間メカニズムの枠組み内の協調と連携を強化し,互いの核心の利益と重大な懸念に関わる問題で相互に支持」することを確認するとともに,「『一帯一路』共同建設の協力を強化」することについても合意した。中国の一部のASEAN加盟国に対する積極的な姿勢は,「一帯一路」構想の一環としても位置付けられていることがわかる。「一帯一路」構想への参加を表明しているカンボジアも中国との自由貿易協定を結び,両国関係が緊密化している。また,中国は,新型コロナウイルス感染症対策の支援として,ラオス,ミャンマー,カンボジアの3カ国へ医療チームを派遣している。タイとの間においても「一帯一路」共同建設の旗艦事業として鉄道協力事業の第1期区間の契約が行われた。

11月12日に行われた第23回中国・ASEAN首脳ビデオ会議に李克強が出席し,とりわけASEANとの経済や貿易での連携強化を強調した。李克強は,「ASEANが中国の最大の貿易パートナーとなっている」ことを指摘し,新型コロナウイルスの感染拡大によって落ち込んだ地域経済の回復を促進するため,RCEPの調印を歓迎するとした。そして,11月15日に第4回RCEP首脳会議が開催され,15カ国の参加国首脳は,協定に正式署名した。

(内藤)

2021年の課題

国内政治では,習近平政権が体制内外の勢力に対する統制を一層強めるだろう。2021年9月には,延期された香港の立法会選挙が控えており,中央政府は香港への政治的介入をさらに進めると思われる。また,2022年秋に開催される第20期中国共産党全国代表大会では,「党主席制」の復活や第3期習近平政権の実現が注目される。2021年の習近平政権は,次期党大会に向けて,習近平の核心的な地位の確保をさらに推し進めるだろう。その一方で,集権化の進展に伴って体制内の権力闘争も先鋭化するものと予想される。

経済面では,未曾有の新型コロナウイルス禍を抜け世界の主要国に先駆けて経済成長を回復させた中国は,第14次5カ年計画の初年度となる2021年,強気な経済運営を行っていくものと思われる。実質GDP成長率は例年並みを上回る8~9%に達する可能性が高い。ただし,米中貿易摩擦と新型コロナウイルスの感染拡大による深刻なダメージを受けた製造現場と消費者の消費行動が順調に回復するかどうかが鍵となる。新型コロナウイルスワクチンの普及など,世界の感染症拡大抑制状況にも左右されるだろう。

対外関係では,バイデン政権の発足により,アメリカの対中強硬路線の緩和が予想されるが,依然として楽観視はできない。一方で,バイデン政権が国際協調路線であることから,米中対立のなかで中国が戦略的に展開してきたEUとの関係強化をそのまま継続することは難しくなるだろう。東シナ海や南シナ海をめぐっては,中国は依然として強硬姿勢を維持し,中国に有利な規範の制定を積極的に推し進めることが予想される。また,「海警法」の施行によって海警の行動に法的根拠が付与されたことから,海警公船の動きがより活発化し周辺地域との摩擦が生じる可能性が高い。法施行後の尖閣諸島沖や南シナ海に対する中国側の動向が注目される。

(内藤:地域研究センター)(山口:新領域研究センター)

重要日誌 中国 2020年
   1月
6日 習近平国家主席と李克強首相がそれぞれラオスのトーンルン首相と会見。
7日 中国共産党中央政治局常務委員会,開催。
15日 米中,第1段階の経済貿易合意文書に署名。
17日 習国家主席,ミャンマーを国事訪問(~18日)。
17日 第19期党中央紀律検査委員会第4回全体会議開催。
18日 中国,ミャンマーとの共同声明発表。
19日 習国家主席,雲南省視察。
20日 習国家主席,新型コロナウイルス感染症に対する重要指示を出す。
22日 習国家主席,フランスのマクロン大統領,ドイツのメルケル首相と電話会談。
23日 武漢市新型コロナウイルス感染予防抑制指揮本部,第1号通告発表。武漢市のロックダウン(都市封鎖)開始。
25日 党中央政治局常務委員会会議において,中央新型コロナウイルス感染対策領導小組発足。
26日 中央新型コロナウイルス対策工作領導小組,第1回会議開催。
27日 李首相,武漢市視察。
28日 習国家主席,テドロス世界保健機関(WHO)事務局長と会見。中国政府は感染情報を迅速に発表しているとし,情報の公開性を主張。
31日 武漢市党委書記の馬国強,新型コロナウイルス感染症対策の初動の遅れを認める。
   2月
2日 蘇州市,全国に先駆けて新型コロナウイルス禍の中小企業をサポートするため,10項目の政策を発表。
5日 李首相,国務院常務会議を開催し,前年12月以来の一連の感染拡大防止のための地方財政措置に加え.財政,財務,金融政策を再度提起。
7日 新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く指摘した李文亮医師,死去。
7日 習国家主席,アメリカのトランプ大統領と電話会談。
8日 許章潤清華大学教授(当時),張千帆北京大学教授,全国人民代表大会常務委員会に対して言論の自由を求める公開書簡を発表。
9日 上海市,「企業の生産再生に関する通知」で全市企業に就業再開を指示。
10日 北京市,広東省各市など多くの省市でロックダウン後初の就業再開。
10日 習国家主席,新型コロナウイルス感染症の予防・抑制の取り組みに関して北京市視察。経済への対策をとる必要性を指摘。
10日 米司法省,中国人民解放軍54研究所所属のハッカーを米信用情報機関に対するハッキングの疑いで起訴。
11日 国務院常務会議が開催され,新型コロナウイルス感染症対策と経済運営の手配について指示。
12日 交通運輸部,全国の鉄道,道路,水路,航空路線の利用旅客数はのべ1230万人で前年同期比マイナス84.8%と公表。
13日 湖北省党委副書記および武漢市党委書記の馬国強が解任,王忠林が新たに就任。
13日 米司法省,華為技術(ファーウェイ)を米企業から機密情報窃取に関与したとして起訴。
13日 湖北省党委書記の蒋超良解任,応勇が新たに就任。
23日 習国家主席,「新型コロナウイルス感染症の予防・抑制と経済社会発展を統一的に進める」と重要演説。
24日 第13期全人代常務委第16回会議,開催。第13期全人代第3回会議の延期を決定。
28日 楊潔篪中国共産党中央政治局委員,日本の安倍首相を表敬訪問(~29日),習国家主席の訪日延期を決定。
   3月
4日 党中央政治局常務委員会会議開催,新型コロナウイルスの予防および経済社会の安定に関する重点業務を検討。
10日 習国家主席,武漢市視察。
16日 習国家主席,イタリアのコンテ首相と電話会談。
19日 習国家主席,ロシアのプーチン大統領と電話会談。
21日 習国家主席,新型コロナウイルスの感染が拡大していることについて,ドイツのメルケル首相,フランスのマクロン大統領,スペイン国王フェリペ6世,セルビアのヴチッチ大統領に慰問電話。
26日 習国家主席,G20の新型コロナウイルスに関する特別サミットに出席し,重要講話。
27日 習国家主席,アメリカのトランプ大統領と電話会談。
   4月
4日 習国家主席,全国各地域,各民族の新型コロナウイルスで犠牲となった同胞の哀悼活動に出席。
8日 武漢市のロックダウン,解除。
14日 李首相,新型コロナウイルスに関するASEAN+3特別首脳テレビ会議に出席。
16日 習国家主席,プーチン大統領と電話会談。
17日 中共中央政治局会議,開催。「六穏(6つの維持)」任務を初めて提起。
18日 国務院,海南省三沙市に南沙区と西沙区の設置を承認。
19日 中央紀律検査委員会および国家監察委員会,公安部副部長の孫力軍を重大な規律違反と法律違反の疑いで調査と発表。
27日 第13期全人代常務委第17回会議,開催。
29日 傳政華を司法部部長の職から解き,遼寧省長の唐一軍を同部長に任命。
   5月
8日 習国家主席,プーチン大統領と電話会談。
15日 米商務省,ファーウェイに対する輸出規制強化。
18日 第13期全人代常務委第18回会議,開催。
22日 第13期全国人民代表第3回大会開幕(~28日),民法典および香港特別行政区の国家安全と法律制度の健全化について聴取。国防費予算が前年度実績比6.6%増加と公表。
28日 全人代,香港の国家安全法の制定を目指す「決定」を圧倒的多数で採択。
29日 中央政治局第10回集団学習開催。習国家主席,民法典の重要意義を認識することと人々の合法的な権益の補償を法に基づいて行うことを強調。
   6月
14日 党中央規律検査委員会と国家監察委員会は,重慶市副市長であり,同市公安部部長の鄧恢林を重大な規律や法律違反の疑いで調査と発表。
15日 中国とインドの国境地区ガルワン渓谷で両国国境警備部隊要員の衝突発生。
17日 王毅外交部部長,インド外相と電話会談。
18日 第13期全人代常務委第19回会議(~20日),「香港国家安全維持法(草案)」審議。
20日 第13期全人代常務委第19回会議において,「人民武装警察法」の改正案可決。
22日 習国家主席,欧州連合(EU)のミシェル欧州理事会議長,フォンデアライエン欧州委員会委員長とビデオ方式で会見。双方は「中国・EU包括的投資協定」の年内合意で一致。
22日 中印軍長級会議,開催。
30日 第13期全人代常務委第20回会議,「香港国家安全維持法」可決。即日施行。
30日 香港に国家安全維持公署および国家安全維持委員会設立。国家安全維持公署署長に鄧雁雄,国家安全維持委員会国家安全事務顧問に駱恵寧就任。
   7月
1日 『環球時報』(電子版),中印双方は第一戦部隊の「接触回避」を段階的に進め,強い措置をとり,国境地区情勢の沈静化を図ることで一致したと報道。
6日 許章潤,売春に関わった容疑で身柄を拘束。清華大学から免職。
8日 習国家主席,ロシアのプーチン大統領と電話会談。
9日 米財務省,新疆ウイグル自治区党書記である陳全国のほか,同自治区公安部の幹部ら3人に対し,人権侵害に関与したとして資産凍結およびビザの発給拒否を決定。
11日 香港の民主派,予備選挙を実施し立法会選挙に向けて候補者の調整を実施(~12日)。
14日 トランプ米大統領,「香港自治法」に署名。
18日 王外交部部長,ロシア外相と電話会談,アメリカの自国優先政策に対して一国主義反対で一致。
21日 米国務省,ヒューストンにある中国総領事館を閉鎖するよう要求。
23日 米国務長官,「共産主義の中国と自由世界の未来」と題する演説で,習近平および中国共産党を批判。
24日 中国外交部,成都にある米総領事館の設置および運営許可の取り消し決定。
28日 王外交部部長,フランス外相と電話会談,「横暴なアメリカに中国は理性的に対応している」と伝える。
28日 王外交部部長,イギリス外相と電話会談,「中国は脅威ではない」と主張。
30日 王外交部部長,インドネシア外相とビデオ会談。
31日 林鄭月娥香港特別行政区政府行政長官,香港の立法会選挙を1年延期することを発表。現職の議員の任期延長や次期議員の任期については全人代常務委の判断に委ねると言及。
   8月
5日 王外交部部長,新華社のインタビューを受け,対米対話路線を継続する意向を提示。
7日 楊中国共産党中央政治局委員,『人民日報』に米中関係に関する署名論文発表。
10日 第13期全人代常務委第21回会議開催。
13日 米政府,ファーウェイを含む中国のハイテク企業5社の製品を使用する企業との取引禁止。
17日 中央党校,蔡霞の党籍剥奪および退職後の待遇取り消し処分について通告。
18日 中央紀律検査委員会および国家監察委員会,上海市副市長であり同市公安部部長である龔道安を重大な規律違反と法律違反の疑いで調査していると発表。
31日 人民解放軍西部戦区報道官,インド軍が班公湖南岸,熱欽峠付近で再び不法に越境,占拠し,国境情勢の緊張を招いていると発表。
   9月
3日 中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利75周年を記念する座談会,開催。
7日 インド軍,中国国境警備部隊に対して発砲。
9日 第10回東アジアサミット外相会議,開催。
10日 上海協力機構外相会議,ロシアのモスクワで開催。
10日 王外交部部長,インド外相と会見。
11日 王外交部部長,ロシア外相と会談。中ロ外相共同声明を発表。
14日 習国家主席,ドイツのメルケル首相を含めたEU首脳陣とビデオ方式で共同会談。「中国・EU包括的投資協定」への年内合意だけでなく,「中国・EUグリーン〈環境配慮型〉パートナー」「デジタル協力パートナー」を構築することでも一致。
25日 加藤勝信官房長官,習国家主席の訪日日程について,「具体的な日程を調整する段階ではない」との見解を示す。
26日 日中首脳電話会談,日中の安定した関係は日中両国のみならず地域および国際社会のために極めて重要であることを確認。
28日 中国共産党中央政治局会議,「中国共産党中央委員会工作条例」を審議。
  10月
3日 習国家主席,新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領に見舞電。
12日 習国家主席,広東省視察(~13日)。広東香港マカオ大ベイエリア建設推進を強調。
13日 第13期全人代常務委第22回会議,「海警法(草案)」の全文を公表し,制定の必要性について説明。
13日 IMF,最新の展望報告で中国経済のGDP成長率予測をプラス1.9%と予測。
15日 王外交部部長,タイ副首相兼外相と会談,鉄道建設加速強調。
23日 習国家主席,抗米援朝戦争70周年記念大会で演説。
26日 中国共産党第19期中央委員会第5回総会,開催(~29日)。第14次国民経済・社会発展5カ年計画および2035年までの長期目標の策定に関する提案を審議し採択。
  11月
4日 アントグループ,香港と上海での上場が一時延期。
11日 第13期全人代常務委第23回会議,「香港特別行政区立法会議員資格問題についての決定に関する国務院の議案」を採択。その結果,4人の立法会議員が議員資格を失うと発表される。
12日 第23回中国・ASEAN首脳ビデオ会議,開催。
15日 第4回地域的な包括的経済連携(RCEP,旧日本語訳は東アジア地域包括的経済連携)首脳会議開催,協定に調印。
18日 中ロ外相電話会談。
18日 李首相,国務院常務会議開催,RCEP協定の実施に向けて国内作業にしっかり取り組むことを要求。
  12月
1日 OECD,最新の世界経済展望報告で中国が2020年,世界の主要国中で唯一プラスのGDP成長率を実現したと発表。
2日 李首相,ロシアのミシュスチン首相と共同議長を務め,中ロ首相第25回定期会合実施。中ロの協力推進を強調。
11日 王外交部部長,「2020年国際情勢と中国外交」の開幕式に参加し,基調講演。
16日 16日付新華社報道,先ごろ,国家発展改革委員会主任とアフリカ連合委員長が「一帯一路」建設共同推進に関する協力計画に調印。
18日 中央経済工作会議閉幕,2021年の経済工作の重点となる8大任務を指摘。
22日 中ロ両空軍,アジア太平洋地域で第2回合同空中戦略パトロールを実施。
23日 李首相,オランダのルッテ首相と電話会談。EUとの投資協定早期妥結を願う。
26日 第13期全人代常務委第24回会議,「国防法」の改正が採択。
28日 中ロ首脳電話会談。
30日 中EU首脳会談をビデオ方式で開催,「中国・EU包括的投資協定」の大筋合意を発表。

参考資料 中国 2020年
①  国家機構図(2020年12月末現在)
②  中国共産党・国家指導者名簿(2020年末現在)
②  中国共産党・国家指導者名簿(2020年末現在)(続き)
③  各省,自治区,直轄市首脳名簿(2020年末現在)

主要統計 中国 2020年
1  基礎統計

(注)1)2020年のデータはすべて速報値。2)都市部失業率は,各地の就業サービス機関に失業登録を行った人数に基づく数値である。3)2020年は第7次全国人口センサスがあったため,人口と就業人口データは2021年4月のセンサスデータの公表まで発表なし。

(出所)『中国統計年鑑 2020』,国家統計局「中華人民共和国2020年国民経済和社会発展統計公報」,為替レートは中国人民銀行ウェブサイト(http://www.pbc.gov.cn/rmyh/107046/107165/index.html)。

2  国内総支出(名目価格)

(出所)『中国統計年鑑 2020』。

3  産業別国内総生産(名目価格)

(注)1)2020年のデータはすべて速報値。

(出所)表1に同じ。

4  産業別国内総生産成長率(実質価格)

(注)1)2020年のデータはすべて速報値。

(出所)表1に同じ。

5  国・地域別貿易

(出所)海関(税関)総署『各年12月輸出入商品主要国別(地域)総額表』,海関総署ウェブサイト。

6  国際収支

(注)IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。資本・金融収支の符号は(+)は資本流出,(-)は資本流入を意味する。1)その他投資には,金融デリバティブを含まない。

(出所)『中国統計年鑑』(各年版)。

7  国家財政

(出所)『中国統計年鑑 2020』,中国財政部「2020年財政収支情況」(http://gks.mof.gov.cn/tongjishuju/202101/t20210128_3650522.htm)。

 
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