2022 Volume 2022 Pages 365-392
2021年はインドネシアにとって,新型コロナウイルスの感染拡大が多数の犠牲者を生んだ苦難の年となった。特に7月から8月にかけて,ウイルスの変異株による感染者数が急増し,アジアでは最悪レベルの感染爆発に見舞われた。政府はワクチンの配布に早期から取り組んできたが,供給体制の不備や根強い忌避が原因で接種率は伸び悩んだ。コロナ対策に対する国民の不満がくすぶるなか,ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権は市民社会に圧力をかけ,政府批判の取り締まりを強化した。政府批判が困難な状況下で,汚職撲滅委員会の多数の捜査官が試験不合格を理由に解雇され,汚職取り締まり体制の弱体化が進んだ。また,分離独立運動が続くパプアをめぐり,国会では中央政府の権限を強化する特別自治法改正案が十分な審議なく採決される一方で,現地では治安部隊と武装勢力との衝突が激化した。
新型コロナの影響から,経済をけん引する家計消費の伸びは勢いを欠いたものの,資源価格高騰を受けて輸出が大幅に拡大したことにより,国内総生産(GDP)成長率は通年で3.7%増とプラス成長に回復した。前年に制定された雇用創出法の実施細則が一斉に公布・施行され,最低賃金の算出方法の改定や国営企業の統合など具体的な政策が実施に移された。経済成長の原資をまかなう税基盤の強化を目的に,政府はオムニバス形式による租税調和法を制定し,炭素税など新たな制度も導入した。さらに,2060年のカーボンニュートラル達成を目指し,グリーン工業団地の建設や電気自動車用バッテリー生産のための準備が進んだ。
米中対立が激化するなか,インドネシアは両国から秋波を送られているが,いずれかの陣営に近づくことはなく,あくまで中立的な立場を貫いた。他方,ミャンマーのクーデタをめぐっては,対話の継続に向けてASEAN外交を主導するなど存在感を発揮した。
インドネシアでは1月から2月にかけて新型コロナウイルス感染者数の最初のピークが訪れた。政府は2020年に適用された緩やかな自粛要請措置である「大規模社会制限」(PSBB)に代わり,より厳格な移動制限措置である「社会活動制限措置」(PPKM)を導入した。2月下旬より感染者数は減少し,ジョコウィ大統領は「社会活動制限が功を奏した」と自賛した。
その後政府は経済再生に向けた取り組みを再開したが,人的移動の抑制が大きな懸念事項であり続けた。特に問題が指摘されたのは水際対策である。3月中旬には,海外からの渡航者や帰国者に対する隔離期間がワクチン接種者で3日,未接種者で5日と定められたが,これは他国と比較して短すぎるとして問題視された。また,感染力と重症化リスクが高まった変異株である「デルタ株」の感染が広がっていた諸外国からの入国制限を課すのが遅れた。特に感染爆発に見舞われていたインドからの入国が制限されたのは4月下旬であった。
政府は,5月半ばのイスラームの断食月明け大祭に向けた帰省を禁止したが,多くの地方政府は帰省の禁止措置を施行するうえでの十分な予算やマンパワーを保有していなかった。また,観光産業を維持するために,禁止措置の適用期間中も観光施設の営業が許可された。その結果,都市部から地方への人的移動は十分に抑制されなかった。ジャカルタ州政府の発表によると,帰省禁止措置の適用期間中も約260万人が封鎖をかいくぐって帰省した。
移動制限が十分に機能しなかったことに加え,後述する新型コロナウイルスワクチンの接種率の伸び悩みが問題化するなか,4月下旬にはデルタ株の感染が国内で初めて確認された。変異株による感染者数は帰省シーズンが一段落した6月中旬から急増しはじめた。感染の急拡大を受けて,7月3日には都市封鎖レベルの移動制限措置として「緊急社会活動制限措置」(PPKM Darurat)がジャワ島とバリ島にて発令された。12日には同様の措置がその他の一部地域にも適用された。
デルタ株による予想外の感染爆発に医療体制は対応できず,実質的な医療崩壊が起きた。政府のコロナ対策を監視する市民団体LaporCovid-19によると,6月から8月の3カ月で769人の医療従事者が死亡した。また,病床や救急車が慢性的に不足したことで,確認されているだけでも3015人の患者が自宅隔離中など病院外で死亡した。さらに,各地で医療用酸素不足が深刻化し,院内での酸素が底を突いたことにより患者が死亡したケースもあった。
7月中旬から下旬のピーク時には,政府発表で1日当たりの新規感染者数と死者数がそれぞれ5万6000人と2000人を超え,ブラジルやインドを抜き世界最多を記録した。検査率の低さや貧弱な接触追跡体制,そして地方政府による感染者数の改ざんが行われた事例などを考慮すると,実態としてはより多くの感染者・死者数が出ていたものと考えられる。ワクチン接種率が向上するにしたがって,感染爆発は9月下旬には収まりを見せたが,12月末までに,政府発表では累計426万2720人の感染者と14万4094人の死者が確認されている。
ワクチン接種率は伸び悩むデルタ株の感染爆発と同様に政府を悩ませたのがワクチン接種率である。政府はワクチンの普及をコロナ対策の切り札として捉え,早くからワクチンの調達に取り組んできた。1月13日には,ワクチンが安全であることを強調するためジョコウィ大統領が自ら接種第1号となり,国内でのワクチン接種が始まった。
しかし,ジャカルタなどの都市部や,パイロット地域として早くから接種が開始されたバリ島を除き,接種率は全国的に伸び悩んだ。離島や山岳部などインフラ未整備地域への流通不足に加えて,ワクチン・ギャップ(ワクチンの南北格差)による供給不足が深刻な問題となったためである。
元々政府は中国をワクチンの主要調達先として定めていたが,計約4.16億回分のワクチン需要を満たすには不十分であった。そのためジョコウィ大統領は,G20首脳会議などでワクチン・ギャップの是正を先進国首脳に対して呼びかけ,また国際的なワクチン調達・供給枠組みであるCOVAXファシリティを通して寄付されたワクチンの受領にも積極的に取り組んだ。12月末までに接種された約2.7億回分のワクチンのうち,6割をシノバック・バイオテック社などの中国製ワクチンが占め,20.15%がCOVAXから受領したものであった。
ワクチン接種率が伸び悩んだもうひとつの要因はワクチン忌避にある。ワクチン忌避は高齢者の間で根強く存在し続け,世界保健機関(WHO)の報告によると,12月15日の時点で13の州において高齢者の60%以上が未接種であった。また,厳格なイスラーム教義上の立場に基づくワクチン忌避も見られ,特にイスラーム法が適用されているアチェ州は接種率が最低レベルで推移した。
感染爆発が起きた7月末の段階では,2回目ワクチン接種者の割合は接種対象者の10%に満たなかった。危機感を募らせた政府は,8月から「1日200万人のワクチン接種」を目標として掲げ,警察や軍を動員してワクチン接種体制を整備した。また,公共交通機関の利用や施設への入館の際に接種証明書の提示を義務付けることでワクチン忌避に対抗した。これらの政策を受けて,2021年後半よりワクチン接種率は改善した。12月末の段階で,政府発表に基づく全国の接種対象者の接種率は1回目が77.34%,2回目が54.58%であった。
言論統制による政府批判の抑え込み新型コロナウイルスの感染爆発とそれに伴う移動規制措置の適用は経済を圧迫し,インフォーマルセクターの従事者をはじめ国民の生活を困窮させたため,政府への不満が高まった。2期目の政権発足以来,ジョコウィ大統領は一貫して高い支持率を維持してきたが,有力世論調査機関インディカトールが実施した全国世論調査の結果では,2021年7月に支持率が初めて60%を下回った。ジョコウィ政権はこの支持率の低下を死活問題として捉え,政府批判が社会全般に飛び火しないよう,徹底的な封じ込めと取り締まりを行うことで対処した。
ジョコウィ政権の政府批判に対する過敏な体質を示したのは,コロナ対応の不満を表明した壁画に対する取り締まりである。8月に首都ジャカルタ近郊の路肩に現れた風刺画は物議を醸した。その壁にはジョコウィの似顔絵とともに,その目を覆う形で「404 not found」(インターネット上で存在しないページへアクセスした時に表示されるエラーメッセージ)という文言が書かれていた。これは,ジョコウィがコロナ対応において「不在」であるとのメッセージが込められたものであった。同様の壁画が複数発見されたことに対し,政府はこれを「公の秩序に反する行為」として捉える異例の対応を行い,壁画を直ちに除去していった。また,警察は捜査により創作者を特定すると,家宅捜索を行い,公的な場で謝罪を行うよう命じた。この対応は,感染爆発の最中にあっても政府批判の抑え込みが優先されているとして市民団体の強い批判を浴びた。
政府批判に対する圧力は,ジョコウィ政権下での「民主主義の後退」を示すものとして近年問題視されてきているが,2021年に特に目立ったのは主要閣僚自身による直接的な批判の抑え込みである。9月10日にはムルドコ大統領首席補佐官が,自身とイベルメクチン製造会社との利害関係を指摘したNGOの研究員を,名誉を毀損したとして電子情報取引法(ITE法)違反の容疑で告訴した。また,9月22日にはルフット・パンジャイタン海事・投資担当調整相が,自身が所有する企業による金鉱採掘事業とパプア州における軍部隊の増派との関連性を指摘した人権活動家2人を,同じくITE法に照らし合わせてフェイクニュースの発信と名誉毀損にあたるとして告訴した。
この2つのケースに共通するITE法には,インターネット上での名誉棄損を禁止する条文が存在し,解釈の曖昧さ故に濫用される可能性が懸念されてきた。これらの刑事告訴は,主要閣僚自身によるITE法の濫用だけでなく,政治批判を「中傷」と解釈して刑事罰の対象にすることで市民社会全体を萎縮させる狙いがあるとして,市民団体の非難を浴び,法改正への要求を高めた。しかし,ジョコウィ大統領自身も「ITE法の濫用があってはならない」と発言してはいるものの,2021年の国会の優先審議法案に同法は含まれておらず,改正に向けた進展は見られない。反対に,警察によるソーシャルメディアのモニタリングを行うための「バーチャル警察」が設置されるなど,言論統制に向けた体制の整備が進んだ。
汚職撲滅委員会の弱体化言論統制による抑圧的な政治情勢に加え,感染症拡大により抗議活動が自由に行えない状況のなかで,これまで政治エリートと頻繁に対立してきた汚職撲滅委員会(KPK)に対する封じ込めが進められた。汚職撲滅委員会は2003年に設立されて以来,「汚職撲滅委員会に関する法律」(KPK法)で定められた規定により,政府から独立した国家機関として汚職事件の捜査から公訴までを行う強力な権限を保持してきた。しかしその権限の強さゆえに,汚職捜査の対象とされる国会や国家警察をはじめとした政府機関,また政治エリートらからの度重なる圧力に晒され続けてきた。2019年10月には,実質的な審議がなされないまま国会が可決したKPK法の改正により,汚職撲滅委員会を行政機関として再編成し,汚職捜査に対する政府の監視を強めることで委員会の独立性と権限を弱める方策がとられた。
2021年に入り,改正法に基づく汚職撲滅委員会を行政機関に統合するプロセスが本格的に始動した。物議を醸したのは,5月上旬に発表された75人の汚職撲滅委員会職員の処遇である。これらの職員は,職員を公務員に移行するための政府審査として実施された「国民知識理解度テスト」(TWK)に通らなかったため,職員としての資格を喪失することとなった。75人のなかには,多くの巨大汚職事件の捜査に携わってきた著名な捜査官であるノフェル・バスウェダンなどの上級捜査官が多数含まれていた。
国民知識理解度テストは2019年の改正法では明示されていなかったが,2019年12月に就任したフィルリ・バフリ委員長が主導する形で,2021年1月に実施が決定された。そして政府は,3月から4月にかけて,人事院や国家情報庁(BIN),国軍などとの協力の下,職員1351人に対してテストを実施した。不可解なことに,一部の職員に対する面接では,イスラーム教徒の職員に対して「建国5原則パンチャシラか聖典クルアーンのどちらを選ぶか」といった個人的信条だけでなく,異性との交際方法や政治的態度を問うなど,汚職捜査とは無関係でかつ倫理的に問題のある質問が多くなされた。
一部の報道によれば,汚職撲滅委員会内部には「ターリバーン」と形容される反パンチャシラ的なイスラーム保守派の職員が存在しており,政府審査はそれらの危険因子を排除するために実施するとフィルリ委員長が述べていたとも言われている。しかし,試験で落とされた職員にはキリスト教徒など非イスラーム教徒も含まれており,この主張は口実にすぎないとの見方が強い。ノフェルらによれば,これらの職員には,重要な汚職案件に関わる捜査官や,改正法に反対した職員,さらには過去に汚職捜査の容疑者と密会するなどして倫理規定に抵触した疑惑がもたれているフィルリ委員長の就任に反対した者などが主に含まれていた。したがって政府審査は,汚職撲滅委員会を再編成する過程で政府に都合の悪い捜査官を排除する意図があったと見られている。
市民社会組織は,この試験が政府による汚職取り締まりへの干渉であり,かつスハルト時代の政治弾圧を連想させるようなパンチャシラの政治利用が行われたとして猛反発した。国家人権委員会(Komnas HAM)は試験の内容が職員に対する人権侵害にあたると問題視し,国家独立機関のオンブズマンは試験の実施に手続き的な瑕疵や権限の濫用があったとして法的な問題を指摘した。また,試験に合格した600人近くの委員会職員も試験結果に反対する署名運動を行い,ジョコウィ大統領に是正を求めた。ジョコウィは試験によって職員が不利益を被ってはならないと発言したものの,最終的には最高裁判所と憲法裁判所に判断を委ねた。最高裁と憲法裁の両方が,試験は合法かつ合憲であるとの判断を下したため,やがて批判は下火となった。また,2019年のKPK法改正の際には学生運動による大規模な抗議デモが発生したが,今回の場合は感染症の懸念や移動制限措置により,学生が大規模な動員を行うことはできなかった。
結果,政府審査に合格した職員は6月1日に公務員として正式に採用され,一方で不合格だった75人のうち再教育が可能であるとされた18人を除く57人が9月30日をもって解雇された。12月にはこのうち44人が国家警察に特段の手続きも経ないまま雇用され,国家警察長官直属の部署として新設される汚職犯罪特別捜査チームに配属されることとなったが,これまでのような独立した汚職捜査を行うのは難しいとの見方が強い。
パプア特別自治法改正案が成立,現地の治安は悪化パプア州と西パプア州(以下,パプア)では2019年から治安情勢が悪化しており,2021年にはパプア特別自治法をめぐって政策転換が行われた。2001年に制定された特別自治法は,1969年にインドネシアに編入された後も分離独立運動が続いていたパプア(当時はイリアン・ジャヤ州)に対して,パプア先住民の政治的権利と州政府の権限の拡大を約束し,他の州よりも多く石油・天然ガス収入を配分することや特別自治資金を国家予算から割り当てることを定めていた。これには,民主化後にパプアで分離独立運動が活発化したのを受けて,経済開発を通して国家統合を維持しようという中央政府の狙いがあった。この特別自治資金の施行が11月に期限を迎えることになっていたため,法律の更新が求められていた。
しかし,特別自治法が制定されて20年が経過した現在も,パプアは国内最貧困地域であり,また独立を要求する武力組織による治安当局に対する攻撃も激化している。ジョコウィ政権は,開発予算の多くが州政府による横領やずさんな政策運営で失われていると主張し,予算の使途や執行に対する中央政府の権限強化などを求める特別自治法改正案を国会に対して提出した。同時に政府は,パプアと西パプアの両州政府やパプア先住民の利害を代表する立場にあるパプア人民評議会(MRP)を審議過程から排除する姿勢で臨んだ。改正案は2020年12月に審議が開始され,2021年7月15日には国会により可決された。
法改正により,特別自治資金の大部分は州政府ではなくその下位に位置する市政府や県政府に直接支給されることが決定された。また,予算の半分以上は中央政府が策定するマスタープランに基づいて,実績ベースで配分されることとなった。その他にも,中央政府は州政府の許可なしに自治体を新設することが可能になるなど,パプアの自治に対する監督権限を大きく強化し,それまで多大な権限を付与されてきた州政府は脇に追いやられる結果となった。パプア人民評議会は,法改正の審議過程で現地政府・住民との十分な協議がなかったとして憲法裁判所に違憲審査請求を行い,改正法を無効にするよう求めた。また,パプア現地でも市民による抗議デモが発生したが,治安当局が多数の参加者を逮捕したほか,感染症の防疫指針を理由に強制的にデモを解散させた。
特別自治法に関して方向転換が行われた一方で,政府は武装勢力に対する軍事圧力をさらに強めた。4月25日に国家情報庁パプア州本部長が武装勢力により殺害されると,政府は29日に独立運動を担ってきた自由パプア運動(OPM)の武力組織である西パプア民族解放軍(TPN-PB)などに対して,これまで「武装犯罪集団」(KKB)と呼称してきたものを「テロ組織」として公式に認定したと発表した。市民団体からは,これにより独立運動を担う組織の人員をテロ犯罪撲滅法により取り締まることができるだけでなく,「対テロ」の名目で兵力のさらなる増派が可能となるため,暴力の連鎖を止められなくなると非難の声が上がった。10月上旬,パプアにおける経済開発と統合プロセスの進展を誇示すべく,第20回国民体育大会(PON)がジャヤプラ,ミミカとムラウケの1市・3県にて開催された際,政府は警察機動隊,国軍,対テロ部隊を含む1万人以上の治安部隊を投入した。
このような治安維持体制の強化は,分離独立運動との武力衝突を激化させたと見られている。国際NGOであるパプアのための国際連合(International Coalition for Papua: ICP)によると,2021年には85件の武力衝突が発生し,民間人を含む70人近くの死者が出るなど,過去5年で最悪の治安状況となった。11月には,過去にパプアでの活動家の暗殺に関わった疑いがもたれているアンディカ・プルカサ陸軍大将が新しい国軍司令官に就任した。アンディカはパプア問題を人道的に解決すると約束したが,どこまで実際の政策に反映されるかは不透明である。
(水野)
新型コロナウイルスの感染者が急増したことによる経済への打撃が懸念されたが,資源価格高騰の恩恵を受け,実質GDP成長率は通年で3.7%のプラス成長となった。前年の影響が残った第1四半期の成長率は0.7%のマイナスであったものの,第2四半期は7.1%と大きく伸びた。第3四半期は新型コロナ感染第2波の影響を受けながらも3.5%のプラス成長を維持し,第4四半期は5.0%と回復基調に戻した。名目GDPは1京6971兆ルピアであった。家計消費が名目GDPに占める割合は54.4%で,伸び率は前年比2.0%増,寄与度1.1%であった。政府支出の割合は9.1%で,前年から引き続き新型コロナ対策が実施された結果,伸び率は4.2%,寄与度は0.3%であった。投資(総固定資本形成)の割合は30.8%,伸び率は3.8%増,寄与度は1.2%と大きかった。財・サービス輸出と財・サービス輸入がGDPに占める割合はそれぞれ21.6%と18.9%であり,前年比24.0%増,23.3%増と輸出・輸入とも大幅に伸びた。
国際収支では,2012年から赤字が続いていた経常収支が33億2591万ドルと9年ぶりに黒字になり,黒字幅はGDP比0.28%となった。財輸出は2328億ドル,財輸入は1890億ドルであり,貿易黒字も438億602万ドル(前年283億ドル)に増加した。非石油・ガスの輸出は2181億ドル,輸入は1603億ドルとどちらも新型コロナ以前の2019年よりも大幅に伸びた。ボーキサイト,石炭,銅などの鉱物資源の輸出増によって非石油・ガスの黒字額は578億ドルと倍増した。石油・ガスの輸出は132億ドル,輸入は262億ドルで赤字は130億ドルと倍に増えた。品目別輸出で最も多い石炭(財輸出に占める割合14.3%)は前年比18.9%増,卑金属製品(同13.9%)は17.1%増,パーム油(同12.1%)は10.9%増であった。金融収支は116億6986万ドル(前年78億ドル)の純流入であった。海外直接投資(FDI,ネット)は164億8573万ドルと前年の141億ドルを上回り,安定していた。
投資調整庁(BKPM)によると,海外直接投資(FDI)実施総額は前年から24億ドル増加し311億ドル(2万7271案件)であった。主な投資分野は卑金属製品,鉱業,運輸・倉庫・通信であった。国内投資は447兆ルピア(10万6000案件)と前年より金額,件数とも増加し,住宅・工業団地・オフィスビルへの投資が多かった。消費者物価指数は1.3%程度で推移していたが,後半にかけて1%台後半に上昇した。また失業率は6.5%とわずかながら改善した。2桁であった貧困率は,9月には9.7%に低下し,ほとんどの州で改善したが,パプア州,西パプア州では悪化して27.4%,21.8%と高い水準にとどまっている。
続く新型コロナ対策2020年に新型コロナウイルス対策として総額695兆ルピアを投入した国家経済復興プログラム(PEN)は,2021年も引き続き実施された。保健,社会的保護優先プログラム,協同組合・零細小中企業,ビジネスへのインセンティブの分野に744兆7700億ルピアの予算が割り当てられ,執行率は88.4%であった。
ビジネスへのインセンティブには,内需底上げのための付加価値税や関税の政府負担便宜,奢侈税の免除などが含まれ,特に効果が認められたのが新車購入の奢侈税の免除であった。2月26日に財務大臣令(2021年第20号)が施行され,現地調達率70%以上を要件とした1500cc以下の乗用車を対象に100%の減税が適用された。当初は12月までに段階的に軽減率が引き下げられる予定だったが100%のまま年末まで延長された。その結果,新車の販売台数は88万7202台と,2019年の103万台には及ばなかったものの,前年からは大きく回復した。住宅購入の際の付加価値税も3月から8月の間,20億ルピアまでは100%,20億~50億ルピアまでは50%の軽減措置が設けられた。その後軽減率はそれぞれ50%,25%に縮小され,期間は2022年6月まで延長された。減税に加えて3月には中央銀行も自動車ローンと住宅ローンの頭金をゼロにする優遇措置を講じた。
雇用創出法のその後前年に施行された雇用創出法が具体的に動き出した。施行細則は同法の施行から3カ月以内の制定が義務付けられており,2020年12月に投資管理機関(LPI,英名INA)に関する政令が2本公布されたのに続き,期限直前の2月3日と4日には45本の政令と4本の大統領令が公表(公布・施行は2月2日)されて,51本の施行細則がすべて揃った。その後4月29日に土地銀行庁に関する政令が加わった(表1)。施行細目は,(1)事業許認可・事業活動,(2)零細小中企業・協同組合および村営企業,(3)投資,(4)雇用,(5)税制措置,(6)空間計画,(7)土地の権利,(8)環境,(9)建設と住宅,(10)経済特区,(11)政府の物品とサービスの11分野にわたる。
(出所)各資料より筆者作成。
最低賃金の算出式も大幅に変更された(賃金に関する政令2021年第36号)。従来は各州の経済成長率とインフレ率の合計が伸び率となったが,新方式は家計の1人当たり消費額や家族人数,勤労者数から上限額と下限額を算出したものを用いて,前年の最低賃金への上乗せ分を算出するという非常に複雑なものとなった。
\[最低賃金_{2021} = 最低賃金_{2020} +{ ( 州\mathrm{GDP}成長率_{2020}かインフレ率_{2020}のどちらか大きい方 ) \] |
\[× \frac{上限額_{2020} - 最低賃金_{2020}}{上限額_{2020} - 下限額_{2020}} × 最低賃金_{2020} }\] |
新方式が適用される2022年の最低賃金の伸び率は全国平均で1.09%にとどまった。ジャカルタ特別州の最低賃金は445万3935ルピアと,前年の最低賃金の伸び率3.27%よりも大幅に低い0.85%増でしかなかったため,労働組合からの不満が噴出した。そのため,ジャカルタ州知事のアニス・バスウェダンは,一旦は伸び率0.85%を承認したものの,購買力の低下を懸念して年末に5.1%増に修正した。
一方,雇用創出法は制定過程において国民参加の手続きがなかったことで労働者が損失を被ったとしてインドネシア労働組合連合(KSPI)と全インドネシア労働組合総連合(KSPSI)などから違憲審査が請求されており,その判決が11月25日に憲法裁判所によって下された。オムニバス法という形式や条文のミス,審議過程の公開性など法律の制定過程に問題があったことは認められて違憲と判断されたものの,政府と国会には2年以内に適切な手続きに則って法案をあらためて審議する猶予が与えられ,その間は現行法が有効であるとした「条件付き違憲」との判決であった。
政府主導の経済開発アジア通貨危機後に経済自由化と国営企業の民営化が進んだが,2010年代に入ると,経済開発の実行主体として国営企業が再び重視されるようになった。しかし,コロナ禍による経済の低迷で国営企業の業績が悪化したことから,政府は経営のてこ入れをする必要に迫られた。2021年には,前年の2倍以上の71兆ルピアが17の国営企業と機関に資本注入された。不振の続く観光業界のなかでも国営航空会社ガルーダ・インドネシアのダメージは大きく,搭乗者数は2019年の2割に満たず,同社の債務は98億ドルに上り,債権者との厳しい債務削減交渉が続けられている。
観光業およびホテル業界の国営企業も厳しい経営状態が続いているため,政府は2020年12月に国営ホテル会社4社を統合し,22のホテルを運営するホテル国営持株会社を,2021年1月には観光業にかかわる国営企業6社をまとめる観光国営持株会社を設立した。10月にジョコウィ大統領は問題のある国営企業を特定して廃止することを指示し,これを受けて11月には2008年以来操業していない70の国営企業の閉鎖が明らかにされた。さらに,複数の国営企業を存続会社に吸収合併させる統合や国営持株会社の設立も相次いだ(「参考資料④」)。
2月には国営イスラーム銀行部門(Bank Syariah Mandiri,Bank BNI Syariah,BRI Syariah)を統合して新たな国営インドネシア・シャリーア銀行(BSI)と,雇用創出法で規定されていた国家資産を運用する新しい投資管理機関(LPI)が設立された。外貨準備金など国の金融資産を積極的に運用する一般的な政府系ファンドとは異なり,LPIはインフラ整備を目的とした機関である。政府は,初期の資本金75兆ルピアを出資し,それ以外は外国からの拠出を募り,150億ドルを集めることを計画している。12月には,国家開発や農地改革などの公共目的のための土地利用の計画,承認,取得,価格決定,分配などの権限を有する土地銀行庁が設立された。同庁は国から委任された管理権(HPL)によって土地に関する建設権(HGB),事業権(HGU)および使用権(HP)を当事者との合意に基づいて他者に付与することができる。既存の農地・空間計画省は規制当局として,土地銀行庁は「土地管理者」として機能する。
税基盤強化に向けた租税規則調和法の制定2020年2月5日,「経済強化のための租税規則および税優遇措置に関する法案」が国会に提出された。この法案は同時期に提出された雇用創出法と同様のオムニバス形式が採用され,ビジネス環境を税制面から改善することを目的としたが,雇用創出法に一部組み込まれる形で廃案となった。しかし,税体系のすべてを雇用創出法でカバーすることはできないため,政府は税に関する法律7本をまとめた租税規則の調和に関する法案をあらためて国会に提出した。同法案は2021年10月7日に国会で可決され,29日に公布・施行された(法律2021年第7号,租税規則調和法)。同法では,雇用創出法で改定された(1)租税通則法(法律1983年第6号),(2)所得税法(法律1983年第7号),(3)付加価値税法(法律1983年第8号),(4)物品税法(法律2007年第39号),(5)租税特赦(タックス・アムネスティ)法(法律2016年第11号),(6)新型コロナウイルス対策における国家財政政策・金融システム安定法(法律2020年第2号),および(7)雇用創出法(法律2020年第11号)のなかの諸規定が改定された。
所得税に関しては,前年に新型コロナ対策として制定された法律2020年第2号で定められていた法人税率の引き下げをやめ,2022年以降も22%に据え置く。個人所得税は,最低税率5%の対象所得額の上限が5000万ルピアから6000万ルピアに引き上げられる一方,50億ルピアを超える所得に対する税率35%を新設し,富裕層への増税が図られた。付加価値税は,2022年4月1日以降10%から11%へ引き上げられ,2025年1月1日までに12%にすることになった。炭素税の導入も規定された(後述)。納税者の自主開示プログラムとして2016年に実施したタックス・アムネスティに似た制度が,未申告の資産を所有する納税者を対象に,2022年1月1日から6月30日まで実施されることになった。租税通則法の変更点として,人口統計と税務管理システムを統合することを目的に,個人登録番号(NIK)が納税者識別番号(NPWP)として使用されることになるなど,租税規則調和法により税基盤の強化に向けて大幅な変更が加えられた。
グリーン経済の始動:EV電池生産とグリーン工業団地インドネシアは石炭火力発電の割合が高く,熱帯雨林の破壊の問題をかかえているため,気候変動問題に積極的に取り組んではこなかった。しかし,2021年になって政府は,気候変動対策に積極的に取り組む姿勢を世界的にアピールすることで投資を誘致して,国内の資源を活用した産業の高度化を推進する政策に転換を図った。
その一環として政府は,温室効果ガス削減の国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution: NDC)目標達成を促すための方策として,炭素税の導入を租税規制調和法のなかで規定した。2022年4月1日から二酸化炭素排出量1キログラム当たり30ルピアが段階的に課税されることになった。同法の実施細則である「国家開発におけるNDC目標達成と温室効果ガス排出抑制のための炭素の経済価値の実施に関する大統領令2021年第98号」で,炭素に価格を付けて温室効果ガス排出の削減を促すカーボンプライシング制度が導入された。NDCでは,2030年までに温室効果ガス排出を自国の努力により29%削減することと,国際的な支援を利用して41%削減するという目標が設定されている。政府は,29%の削減を達成するためには3650億ドルの資金が必要と試算しており,資金調達の一環として,2021年6月にグローバルイスラーム国債3億ドルを発行した。
電気自動車(EV)向け電池を生産する動きも始まった。政府は,推定2100万トンと世界最大のニッケルの埋蔵量を活かして,鉱石の採掘から精製,バッテリー生産,リサイクルまで一貫した体制を構築し,インドネシアをEV用リチウムイオン電池の世界的な生産拠点とすることを目指している。3月16日には,国営企業4社(石油会社プルタミナ,電力会社PLN,鉱山持株会社MIND ID,鉱山会社アネカ・タンバン)が25%ずつ保有する持株会社インドネシア・バッテリー社(IBC)の設立が発表された。9月には韓国の現代自動車とLGエナジー・ソリューションが総額11億ドルを折半で投資し,西ジャワ州カラワン県でEV向け電池セル生産工場の建設を開始した。世界最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)もEV用電池工場の建設を計画し,2024年の稼働を予定している。
グリーン工業団地の建設も,12月21日に北カリマンタン州ブルンガン県で始まった。太陽光や水力などグリーン電力による発電とアルミニウム,ニッケル加工,太陽光パネル,鉄鋼などの生産を予定するグリーン工業団地は,現時点で広さ1万6400ヘクタール,いずれは3万ヘクタールまで拡張される予定である。開発の主体は,石炭大手アダロ・エナジー社のガリバルディ・トヒル社長兼最高経営責任者(CEO)が率いるKIPI社を中心とした国内外の民間企業からなるコンソーシアムである。12月23日にはアダロ・エナジー社がアルミニウム製錬所を建設し,川下産業の強化を支援すると発表した。2022年初頭にはインドネシア最大となる総発電容量9000メガワットのカヤン水力発電所が中国電力建設社も参加して着工される。同発電所の電力は,グリーン工業団地に供給される予定である。
さらなるデジタル化の進展コロナ禍の影響による在宅勤務や移動制限でTokopediaやBukalapak,シンガポールのShopeeなど電子商取引(EC)が急拡大したことに伴い,金融のデジタル化も加速した。2020年12月には配車アプリ大手Gojek社が,電子決済サービスGoPayを提供する子会社を通じて地場銀行の株式を取得し,デジタル銀行Bank Jagoを設立した。2021年2月には,Shopeeを運営するSeaグループが地場銀行を買収してデジタル銀行Sea Bankを設立した。10月には金融サービス庁(OJK)がデジタル銀行設立に関する規則を施行し,普通銀行からデジタル銀行への転換を後押しした。また,フィンテック企業数も急増している。当初は決済サービスが主だったが,ウェブ上で借り手・貸し手をつなぎ融資を行うP2P(Peer to Peer)貸出の方が多くなった。金融サービス庁には107社が登録されており,2021年の同貸出残高は13兆ルピアとなった。
2018年にインドネシア初のユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)となったGojekは,同じくユニコーンのEC企業Tokopediaと2021年5月に事業統合し,GoToグループを設立した。同グループのGDPへの貢献は2%に上るとされ,政府も経済のデジタル化の強力な後押しになると期待している。同じくEC企業のBukalapakは8月,スタートアップ初の新規株式公開(IPO)を果たし,初日には公開価格の25%を上回る値をつけ関心を呼んだ。
(濱田)
米中間でアジア太平洋地域をめぐる覇権争いが激化するなか,ジョコウィ政権は,バランスオブパワー外交に巻き込まれずに中立的な立場を維持する外交姿勢を崩すことなく,硬軟取り混ぜる独自外交を各国に対し展開した。
最大の貿易相手国かつ重要な投資国でもある中国との関係は重要性を増し続けており,政府は新型コロナワクチンの6割を中国から調達するなど,経済だけでなく感染症対策においても協力関係を深めている。その反面,石油や天然ガスの大規模な埋蔵量が期待されている南シナ海の北ナトゥナ海域の管轄をめぐって,中国の行動は政府を悩ませ続けた。インドネシアが6月末に北ナトゥナ海の排他的経済水域内にて探掘井の試掘を行った際には,中国海警局が直ちに艦船を近海に派遣し,インドネシア海上保安庁のパトロール船とのにらみ合いに発展した。12月には,国防問題を担当する国会第1委員会の議員に暴露される形で,中国がインドネシア外務省に対し試掘を直ちに停止するよう抗議文書を送っていたことが判明した。ジョコウィ政権は,経済協力の重要パートナーである中国との摩擦を避けたい意向のため抗議文書を公開しなかった。これに対しプアン・マハラニ国会議長は,国家主権に関わる問題であるとし,中国に対して抗議した。
一方で,2021年に進展が見られたのが対米関係である。年初に就任したバイデン大統領は,対中包囲網に東南アジアを組み入れるべく各国へ接近を図るなかで,対インドネシア関係の再強化も進めている。アメリカは,7月にはインドネシア政府と共同でナトゥナ諸島に近いバタム島に海上保安庁の人材育成・能力向上のための海事訓練センター(総工費350万ドル)の建設を始めた。8月には両国陸軍による年次合同演習「ガルーダ・シールド」が過去最大規模の兵力を動員して実施された。12月13日にはブリンケン米国務長官がバイデン政権初の主要閣僚として来訪した。
しかし,ジョコウィ大統領は同日にロシアのニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記とも会合を行っており,あくまでもすべての大国と友好関係を維持する姿勢を崩していない。また,9月に米英豪の安全保障枠組みであるAUKUSが発表された際には,「地域の軍拡競争を助長する」として,レトノ・マルスディ外相が強い懸念を表明した。加えて,アメリカはジョコウィ政権の経済重視政策にどのような便益を提供できるかを明確にしておらず,今後の関係強化に向けた課題も残されている。
ミャンマーのクーデタ問題でASEAN外交を主導2月1日にミャンマーで起きたクーデタに対して,インドネシアは明確に懸念を表明した。米中対立が激化するなかで,ASEAN主導の地域秩序の形成を主唱してきたインドネシアにとって,ミャンマー問題は域内の政治危機に対するASEANの対応力が試されるものであった。そのためジョコウィ政権は,ASEANを「困難に直面するミャンマーを支援するうえで最も有効なメカニズム」(レトノ外相)と位置づけ,積極的なASEAN外交を主導した。
政府はクーデタ後すぐに,ASEAN各国に対し外相の非公式会議と緊急首脳会議の開催を呼びかけた。2月24日にはバンコクにて,ミャンマー軍政にとってクーデタ後初となる外国政府との会談が実施され,レトノ外相がタイの外相とともにミャンマー国軍代表と3者会合を行った。3月2日のASEAN非公式外相会議にはミャンマー国軍代表も招待され,事態の沈静化に向けて各国外相により働きかけが行われた。4月24日にジャカルタで開催されたASEAN緊急首脳会議は,インドネシアやシンガポール,マレーシアの強い後押しのもとで,暴力の即時停止,国軍と民主派の対話の継続,ASEAN特使の派遣と特使による民主派を含む各関係者との面会の実施などを定めた5項目について合意した。この他にも,レトノ外相はアメリカのブリンケン国務長官や,中国,日本,インドの外相ともミャンマー問題について協議を行った。
しかしミャンマー国軍は,ASEAN特使の入国を拒絶するなどして5項目を無視する対応をとった。そのためミャンマー国軍最高司令官は,インドネシア政府の強い意向もあり,10月26日に開催された第38回ASEAN首脳会議に招待されなかった。同会議では,ミャンマー国軍の対応についてジョコウィが遺憾の意を表明し,民主主義や基本的人権の尊重,法の支配などの原則を定めたASEAN憲章の順守を求めた。
包括的経済連携協定とCOP26首脳会議5月7日,政府は欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国4カ国(アイスランド,リヒテンシュタイン,ノルウェー,スイス)との包括的経済連携協定(CEPA)を批准した。4カ国への輸出は全体の0.6%程度だが,ヨーロッパの国と初めて結ぶ経済連携協定である。
11月1日に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の首脳会議に出席したジョコウィ大統領は,過去20年間で森林破壊が大幅に低下し,2020年には森林火災も82%減少したと成果をアピールした。さらに大統領は,EVエコシステムの開発や,東南アジア最大の太陽光発電所の建設,再生可能エネルギーを利用したグリーン工業団地の建設,世界最大のマングローブ林の再生など今後の気候変動対策を説明し,それらの対策を実行に移すためには先進国からの投資が重要であることを訴えた。
一方で,表向きのアピールと国内の開発政策との齟齬も露呈した。COP26では,2030年までに森林消失を食い止めることを約束する「森林と土地利用に関するグラスゴー首脳宣言」にインドネシア政府も署名した。しかし,会議後にシティ・ヌルバヤ・バカール環境・林業相が森林破壊をゼロにするという名目でジョコウィ政権の開発をストップさせることはできないと同宣言を批判した。
(水野・濱田)
感染症の脅威が依然として存在しているなか,政権2期目の目玉政策でありながらもコロナ禍の勃発で頓挫していた首都移転計画が再始動した。変異株などによる感染の周期的な拡大にいかに対処しながら,首都移転という巨大プロジェクトを遂行していくかが課題となる。また,首都移転に伴う汚職や環境破壊などさまざまな懸念点が市民社会組織により示されているが,これらの問題を議論する言論空間を政府が保てるのか,それとも言論や表現の自由に対するさらなる締め付けが行われ,「民主主義の後退」の傾向が強まるのか,注視していく必要がある。
2022年,インドネシアは20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の議長国を務める。政府は「Recover Together, Recover Stronger」(ともに回復,より強く回復)のテーマのもとで包括的医療,デジタル変革,持続可能なエネルギー転換の3つの優先課題を提起し,2022年10月にバリ島で開催されるG20サミットの成功に向けて国を挙げて力を入れている。COP26に続き国際舞台での投資誘致の場を得て,政府主導の投資環境の整備もますます勢いづく。しかし,経済の実態はコロナ禍の影響から完全に抜け出せておらず,資源輸出に依存した経済成長の構図も依然として変わらない。まだ全容は見えていないものの,2020年に制定された雇用創出法による制度の変更が経済にもたらす影響は大きく,今後はそれに対処するとともに,法律の規定を実行に移すことが重要となる。2022年は国際情勢の変化とアメリカの金融政策の変更が,再びマクロ経済に大きな影響を与える可能性があり,外貨準備の積み増しなどの備えが求められる。
米中対立が激化し,またロシアのウクライナ侵攻で国際情勢が目まぐるしく変化するなかで,独自外交をどれだけ維持できるかも引き続き課題となる。国防相が率先する形で国軍の装備近代化が進められており,中立外交を維持する目的でも,多様な調達先からの防衛装備の購入が継続して行われるだろう。
(水野:地域研究センター)
(濱田:開発研究センター)
1月 | |
9日 | スリウィジャヤ航空182便がジャワ海に墜落,乗客乗員62人全員死亡。 |
11日 | ジャワ・バリ地域で社会活動制限措置(PPKM)が2週間の予定で始まる。 |
12日 | 中国・王毅外相が来訪。海事・投資担当調整相,外相と会談。 |
13日 | 大統領が1回目の新型コロナウイルスワクチンを接種。14日からは医療従事者向けのワクチン接種開始。 |
15日 | 西スラウェシ州マジャネ県でマグニチュード6.2の地震発生。死者100人以上。 |
21日 | 西スマトラ州の公立学校が非ムスリム女子生徒にスカーフ着用を強制,社会的批判を浴びる。 |
26日 | ジャワ・バリ地域のPPKMが2週間延長される。 |
27日 | 新しい国家警察長官にリスティオ・シギット・プラボウォが就任。 |
2月 | |
1日 | 国営イスラーム銀行3行の合併により国営インドネシア・シャリーア銀行誕生。 |
3日 | 政府,3~4日に雇用創出法の施行細則として政令・大統領令計49本を公布。 |
3日 | 教育・文化相,内務相,宗教相が公立学校での宗教的服装の強制を禁止する共同大臣令を制定する。 |
4日 | マレーシアのムヒディン首相来訪。 |
9日 | より限定的な移動制限措置,小規模社会活動制限措置(PPKM Mikro)が始まる。 |
16日 | 政府系ファンド,投資管理機関(LPI,英名INA)が新設される。 |
18日 | 中銀,政策レートを25ベーシスポイント引き下げ3.7%へ。 |
19日 | 警察長官,電子情報取引(ITE)法の運用に関するガイドラインを策定。「バーチャル警察」が設置される。 |
24日 | 外相,バンコクでタイ外相とともにミャンマー国軍が任命したワナ外相と初会談。 |
26日 | 汚職撲滅委員会(KPK),南スラウェシ州知事ヌルディン・アブドゥッラーを収賄容疑で逮捕。 |
3月 | |
5日 | 民主主義者党の臨時党大会でムルドコ大統領主席補佐官が新党首に選出されるも,月末には法務・人権省により無効に。 |
16日 | 鉱業・エネルギー部門の国営企業4社が株式を25%ずつ所有する持株会社インドネシア・バッテリー社(IBC)が新設される。 |
19日 | インドネシア・ウラマー評議会(MUI),アストラゼネカ製ワクチンが豚由来成分を内包しているとの監査報告を発表。アストラゼネカ社は否定。 |
23日 | PPKM Mikroが2週間延長され,適用範囲が15地域に拡大。 |
26日 | 政府,断食月明け大祭に向けた帰省を5月6日から17日まで禁止することを決定。 |
28日 | マカッサルのキリスト教会で自爆テロ事件発生,20人負傷。警察は,テロ組織ジユマー・アンシャルト・ダウラー(JAD)構成員による犯行と断定。 |
28日 | 国防相が来日。岸信夫防衛相と初会談。 |
29日 | 外相が来日。茂木敏充外相と会談。 |
30日 | 5年ぶりの日・インドネシア外務・防衛閣僚会合開催。防衛装備品輸出,ミャンマー情勢,インフラ協力などについて協議。 |
31日 | 国家警察本部で銃撃事件発生,負傷者なし。警察はイスラーム国(IS)に共鳴する者による犯行と発表。 |
4月 | |
4日 | 東ヌサ・トゥンガラ州で地すべり発生。死者160人以上,行方不明者40人以上。 |
5日 | 海軍,ナトゥナ島にて海兵隊司令部の建設を開始。 |
13日 | 食品・薬品監視庁(BPOM),国産の新型コロナワクチン「ヌサンタラ・ワクチン」の臨床試験の失敗を発表。 |
21日 | 海軍潜水艦ナンガラ号がバリ海で沈没,乗組員全員死亡。 |
21日 | 東ジャカルタ地裁,2018年に起きた警察機動隊本部でのテロ事件に関与した6人に死刑判決。 |
24日 | インドネシアの呼びかけによりジャカルタでASEAN緊急首脳会議開催。ミャンマー問題を協議し,暴力の即時停止,特使の派遣など5項目に合意。 |
25日 | 国家情報庁(BIN)パプア州本部長が「武装犯罪集団」(KKB)との戦闘で死亡。 |
25日 | 入国管理局,新型コロナ感染症が拡大するインドからの来訪者32人の入国を差止め。 |
27日 | 警察対テロ部隊,イスラーム防衛戦線のムナルマン元書記の身柄を拘束。 |
28日 | 教育・文化省と研究・技術省を統合し教育・文化・研究・技術省が新設。ナディーム・マカリム教育・文化相が新大臣に。 |
28日 | 投資調整庁(BKPM)が投資省に格上げされ,バフリル・ラハダリアが大臣に就任。 |
28日 | 政府,4つの政府系研究機関を統合し,国家研究イノベーション庁(BRIN)を設立すると決定。 |
29日 | 政府,パプア州の独立を求める「武装犯罪集団」をテロ組織として認定。 |
30日 | パプア州ジャヤプラ市と周辺地域でインターネット通信が停止。政府は海底ケーブルの切断が原因と発表。 |
5月 | |
5日 | KPK職員75人が国民知識理解度テストに不合格となる。 |
7日 | 欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国4カ国との包括的経済連携協定(CEPA)が国会で批准。 |
7日 | 最高裁判所,宗教的服装の強制を禁止する共同大臣令を無効とする判決を下す。 |
8日 | 海軍,中国海軍とジャカルタ沖で軍事演習を実施。 |
9日 | パプアの代表的な独立運動活動家ヴィクトル・イェイモが反逆罪で逮捕される。 |
16日 | 政府,マレーシア,ブルネイと共に,イスラエルによるパレスチナ自治区での軍事作戦を非難する共同声明を発表。 |
17日 | Gojek社とTokopedia社が事業統合しGoToグループを設立。 |
18日 | 外相,国連総会で「保護する責任」(R2P)の決議に反対を表明。 |
20日 | 2.79億人分の住民登録証(KTP)を含む社会保障データがネットで漏洩。 |
6月 | |
1日 | 汚職撲滅委員会の職員が公務員に移管。 |
3日 | 宗教相,メッカ巡礼中止を発表。 |
5日 | 海兵隊,米海兵隊と市街戦の軍事演習を実施。 |
11日 | 国防相,イタリアに6隻のフリゲート艦を発注。 |
17日 | 政府,ロブスター幼生の輸出を禁止。 |
24日 | 東ジャカルタ地裁,新型コロナウイルスに関して嘘の情報を拡散させた罪でイスラーム防衛戦線のリズィク・シハブ元代表に禁錮4年の実刑判決。 |
24日 | 海上保安庁,アメリカ国防総省などとバタム島にて海上訓練基地の建設を開始。 |
27日 | インドネシア大学学生委員会(BEM UI)が大統領批判の風刺画を投稿したところ,大学理事に召喚され,削除を求められる。 |
30日 | 北ナトゥナ海域で深掘井の試掘開始。7月3日に近海に派遣された中国海警局艦艇と海上保安庁パトロール船がにらみ合い。 |
7月 | |
1日 | 世銀,インドネシアを下位中所得国に格下げ。 |
3日 | ジャワ・バリ地域にて緊急社会活動制限措置(PPKM Darurat)を18日間の予定で発令。 |
4日 | ハルモコ元情報相死去。 |
12日 | 政府,PPKM Daruratをジャワ・バリ外の地域にも適用。 |
15日 | 1日当たりの新型コロナ新規感染者数が5万6757人を記録,過去最多かつ世界最多となる。 |
15日 | 国会,パプア特別自治法改正案を可決。 |
15日 | ジャカルタ汚職裁,ロブスター幼生の輸出許可汚職事件の裁判でエディ・プラボウォ元海洋・漁業相に禁錮5年の実刑判決。 |
16日 | 大統領,アジア太平洋経済協力(APEC)会議に参加,ワクチン・ギャップを問題提起。 |
16日 | 医療従事者への新型コロナウイルス感染症ワクチン追加(3回目)接種が始まる。 |
20日 | 政府,段階制の社会活動制限措置を導入。ジャワ・バリ地域の社会活動制限措置レベル4を25日まで延長。同措置は8月9日まで2度延長され,以後も一部地域で継続。 |
20日 | 政府,55兆ルピアの追加社会扶助予算を発表。 |
21日 | 在留邦人の特別便による退避開始。 |
27日 | 1日当たりの新型コロナ死者数が2069人を記録,過去最多かつ世界最多となる。 |
29日 | 政府,国家食料庁の設立を決定。 |
29日 | 韓国現代自動車とLGエナジー・ソリューション,合弁会社を設立し,カラワン地区に電気自動車(EV)用の電池工場を建設する基本合意書(MOU)を締結。 |
8月 | |
3日 | 外相が訪米。ブリンケン米国務長官と戦略的パートナーシップについて会談。 |
4日 | アメリカ陸軍との年次合同演習「ガルーダ・シールド」実施。過去最大規模に。 |
6日 | eコマース大手Bukalapak社,15億ドル規模の新規株式公開(IPO)を実施。 |
10日 | 国軍,採用過程における処女検査の廃止を発表。 |
12日 | 大統領,東ティモールの元併合派民兵エウリコ・グテーレスに功労賞を授与。 |
20日 | ターリバーンのカーブル掌握を受けて,空軍がアフガニスタンから26人のインドネシア人を退避させる。 |
23日 | ジャカルタ汚職裁,社会扶助プログラム汚職事件の裁判でジュリアリ・バトゥバラ元社会相に禁錮12年の実刑判決。 |
25日 | 国民信託党(PAN),与党連立政権への参加を表明。 |
30日 | KPK,プロボリンゴ県知事ププット・タントリアナ・サリを収賄容疑で現行犯逮捕。 |
31日 | 大学などでの女子学生に対する性暴力事件が次々と明るみに出たことを受け,教育・文化・研究・技術相が高等教育機関での性暴力の防止と撲滅に関する大臣令を制定。 |
9月 | |
3日 | 西カリマンタン州シンタン県でアフマディヤ教団のモスクが暴徒に襲撃される。 |
9日 | 最高裁,KPKが実施した国民知識理解度テストの法令審査を求める訴訟を却下。 |
10日 | ムルドコ大統領首席補佐官がNGOのメンバーを名誉毀損容疑で刑事告訴。 |
17日 | 外相,AUKUS安全保障枠組みの発表を受けて,「地域の軍拡競争を助長する」として懸念を表明。 |
18日 | 国軍特殊部隊,ポソのイスラーム過激派組織東インドネシア・ムジャヒディンの指導者アリ・カロラを殺害。 |
22日 | 汚職撲滅委員会,東コラカ県知事アンディ・メリヤ・ヌルを収賄容疑で現行犯逮捕。 |
22日 | ルフット海事・投資担当調整相が人権活動家2人を名誉毀損容疑で刑事告訴。 |
25日 | KPK,ゴルカル党議員のアジス・シャムスディン国会副議長をKPK捜査官への贈賄容疑で逮捕。 |
28日 | 国会,2022年度国家予算案を可決。 |
30日 | 国民知識理解度テストで不合格となった57人のKPK職員が解雇される。 |
10月 | |
2日 | 第20回国民体育大会がパプアで開幕。 |
4日 | 世界の隠し資産を暴露したパンドラ文書で,海事・投資担当調整相,経済担当調整相ら複数の政治家や実業家の名前が挙がる。 |
6日 | 大統領,ジャカルタ=バンドン高速鉄道建設への国家予算の投入を決定。 |
7日 | 国会,租税規則調和法案を可決。 |
13日 | 国家研究イノベーション庁運営委員会委員長にメガワティ元大統領が就任。 |
13日 | Grab社,Emtek社,Bukalapak社が共同で中小企業支援プログラムを開始。 |
16日 | 汚職撲滅委員会,バニュアシン県知事ドディ・レザを収賄容疑で現行犯逮捕。 |
25日 | 軽量高架鉄道「LRTジャボデベック」が試運転中に衝突事故を起こす。 |
26日 | 第38回ASEAN首脳会議開催。インドネシア政府などの要求でミャンマー国軍最高司令官は出席を認められず。パンデミック後の経済回復に向けて合意。 |
31日 | 大統領,G20首脳会議にてワクチン・ギャップの解決を求める。 |
11月 | |
1日 | 大統領,アメリカのジョー・バイデン大統領と会談。気候変動やミャンマー問題について意見交換。 |
1日 | 大統領,国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)首脳会議に出席し,気候変動に対するインドネシアの取り組みを強調。 |
4日 | 大統領,アラブ首長国連邦を訪問し,446億ドル規模の投資を確保する覚書に調印。 |
9日 | マレーシアのイスマイル・サブリ首相が来訪。 |
11日 | ジャカルタ高裁,エディ・プラボウォ元海洋・漁業相に1審の判決より重い禁錮9年の実刑判決。 |
12日 | 大統領,ロンボク島に建設されたマンダリカ・サーキットの竣工式に参加。 |
16日 | 最高裁,バンク・バリ債権譲渡事件の収監逃れのため検察官らに贈賄を行ったムリア・グループ創業家ジョコ・チャンドラに禁固4年半の実刑判決。 |
16日 | 警察対テロ部隊,インドネシア・ウラマー評議会メンバーを含む3人をテロ組織関与の容疑で逮捕。同評議会は同メンバーを解職。 |
17日 | 国軍司令官にアンディカ・プルカサ陸軍大将が就任。後任の陸軍参謀長にドゥドゥン・アブドゥラフマン陸軍戦略予備軍司令官が就任。 |
22日 | 大統領,オンラインで開催されたASEAN・中国特別首脳会議に出席。 |
25日 | 憲法裁,雇用創出法に対し条件付きの違憲判決。 |
12月 | |
1日 | インドネシア,G20議長国をイタリアから引き継ぐ。 |
1日 | 中国政府がインドネシア政府に対して北ナトゥナ海域での試掘を直ちに停止するよう抗議していたことが発覚。 |
4日 | スメル山噴火。死者少なくとも43人。 |
9日 | 解雇された44人の元汚職撲滅委員会職員,国家警察に採用される。 |
13日 | アメリカのブリンケン国務長官が来訪。ロシアの安全保障会議書記も来訪。 |
14日 | 6~11歳の児童向けワクチン接種が始まる。 |
22日 | 国内最大のイスラーム団体,ナフダトゥル・ウラマー(NU)の第34回全国大会開催。宗教相の実兄であるヤフヤ・コリル・スタクフが議長に選出される。 |
27日 | 政府,土地銀行庁を設立。 |
(注)1)国家行政院(LAN),国家公文書館(ANRI),国家人事院(BKN),国立図書館,中央統計庁(BPS),国家標準化庁(BSN),原子力監視庁(Bapeten),国家情報庁(BIN),国家コード院,国家家族計画調整庁(BKKBN),国土地理院,財政開発監督庁(BPKP),食品・薬品監視庁(BPOM),国家情報院(LIN),国家防衛研修所(Lemhannas),文化観光振興庁(Budpar),国家研究革新庁(BRIN)などを含む。
2) 2019年の第2期ジョコ・ウィドド政権の発足に伴い,省庁の再編が行われた。文化・初中等教育省が教育・文化省に,研究・技術・高等教育省が研究・技術省に,観光省が観光・創造経済省に再編された。また,所管する調整大臣府が変更された省庁もある。2021年に再度省庁の再編が行われた。投資省が新設され,教育・文化省と研究・技術省が統合し教育・文化・研究・技術省が設立され,国家原子力庁(Batan),国家宇宙航空庁(LAPAN),インドネシア科学院(LIPI),技術評価応用庁(BPPT)が統合し国家研究革新庁(BRIN)が設立された。
(注)1)出身組織の略称は以下のとおり。PDIP:闘争民主党,Golkar:ゴルカル党,PKB:民族覚醒党,NasDem:ナスデム党,PPP:開発統一党,Gerindra:クリンドラ党,PAN:国民信託党,PKS:福祉正義党,PD:民主主義者党。2)2021年4月28日の省庁再編により新設された役職。3)2021年4月28日の省庁再編により新設された役職に任命された大臣。
(注)1)人口は2020年は人口センサス結果。それ以外は中央統計庁(BPS)による推計値。2)労働力人口は,15歳以上の労働可能人口を指す。労働力人口と失業率は8月時点の調査結果。3)消費者物価上昇率は12月時点での前年比。
(出所)BPSのウェブ資料(https://www.bps.go.id/),Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, ウェブ版(https://www.bi.go.id/id/statistik/ekonomi-keuangan/seki/Default.aspx)。
(注)小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。
(出所)BPSのウェブ資料(https://www.bps.go.id/)。
(注)小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。
(出所)表2に同じ。
(注)IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。ただし,金融収支の符号は(+)は資本流入,(-)は資本流出。
(出所)Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, Statistik Utang Luar Negri Indonesia(https://www.bi.go.id/id/statistik/ekonomi-keuangan/sulni/Default.aspx),ウェブ版。
(注)ASEANは9カ国の合計。輸出額・輸入額とも本船渡条件(FOB)価格での表示。
(出所)Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, ウェブ版。
(注)2018~2021年は執行分。2022年は予算。
(出所)財務省,APBN KITA 2022 Januari,Nota Keuangan Anggaran tahun 2022(https://www.kemenkeu.go.id/apbnkita)。