Yearbook of Asian Affairs
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Trends in Countries and Regions
Cambodia in 2023: The Resignation of Prime Minister Hun Sen and the Formation of the Hereditary Cabinet
Hiroshi YamadaHaruno Shintani
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2024 Volume 2024 Pages 219-240

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2023年のカンボジア

概 況

2023年のカンボジアは,フン・センから長男のフン・マナエトへと首相職が世襲されるとともに,閣僚の世代交代が大幅に進んだ歴史的な1年であった。

国内政治では,最大野党・キャンドルライト党を排除する形で行われた7月の第7期国民議会議員選挙で,与党・カンボジア人民党が圧勝した。最大野党の排除は,国政レベルでは2018年総選挙から2回連続となり,実質的な政党間競争がない選挙が完全に定着した。安定的な世襲を実現する機が熟したと判断したフン・セン首相は辞任を決断し,フン・マナエト首相を筆頭に人民党高級幹部の子どもたちを中心とする「世襲内閣」が8月に発足した。閣僚ポストは子世代に移譲されたが,フン・センら親世代は党最高指導部にとどまり実権を維持している。

経済は,縫製部門以外の製造業と回復基調の観光業が成長に寄与し,実質国内総生産(GDP)成長率は前年から微増の5.5%であった。新型コロナウイルス禍以降伸び悩む投資では,国家計画に盛り込まれた運輸や電力に関わる大型事業が投資総額を下支えした。新内閣は最上位の開発戦略である第1次五角形戦略を発表し,前内閣から継承した2030年までに上位中所得国,2050年までに高所得国となる目標を掲げ,社会福祉・農業振興を志向する6つの優先政策を始動させた。

対外関係は,新内閣発足後も前内閣と同様,最大の経済パートナーである中国を重視する姿勢が続いた。9月にインドネシアでの第43回ASEAN首脳会議で首相として外交デビューを果たしたフン・マナエトは,初の二国間公式訪問先として中国を選び,10月には第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラム出席のため2カ月連続で訪中した。9月にタイの首相が来訪し,12月にはフン・マナエトがベトナムと日本を訪問するなど,両隣国および日本との関係強化という点においても,前内閣の外交路線が踏襲されている。

国内政治

安定的な世襲に向けた環境整備

これまで長男のフン・マナエト国軍副総司令官兼陸軍司令官への権限移譲に向けて着々と準備を進めてきたフン・セン首相は,2023年前半にその総仕上げに動いた。安定的な世襲の実現を最優先するフン・センは,首相職の世襲に批判的とされるソー・ケーン副首相兼内務大臣ら人民党内の潜在的な反対派を封じ込めるために,7月の総選挙に単に勝利するのではなく圧勝する必要があった。

その実現にとって唯一の障害物となるのは,旧救国党支持層の受け皿として2022年6月のコミューン評議会選挙で台頭したキャンドルライト党である。同年11月に5年間の政治活動禁止を解かれた旧救国党幹部の一部(少なくとも15人以上)の加入を機に,キャンドルライト党は2023年2月の臨時党大会で党指導部に当たる党中央委員会を41人から117人に拡大した。この時点で現地のジャーナリストや選挙監視NGOは,2023年総選挙における同党の獲得議席数を125議席中20~30議席と予測していた。

人民党政権は2023年初頭からキャンドルライト党に対する抑圧を強めた。1月10日,同党のコン・コアム最高顧問が1月7日の戦勝記念日(人民党がポル・ポト政権を打倒した日)を批判したとして,人民党は同最高顧問を扇動罪などで提訴し,50万ドルの損害賠償を求めた。コン・コアムは自身の訴追を回避するためフン・センに謝罪し,党最高顧問の辞任と離党を決断した。同月16日,タッチ・セター副党首が2019年に不渡り小切手を発行したとされる件で,2度にわたり裁判所の召喚に応じなかったことを理由に逮捕された。同副党首は2023年4月に扇動の容疑でも起訴され,同年9月に小切手不渡りの件で禁錮18カ月,さらに翌10月には扇動罪で禁錮3年の有罪判決を受けた。2月23日には,人民党が支配する最高裁判所が,2022年コミューン評議会選挙の結果を批判したソン・チャイ副党首に,名誉毀損の罪で人民党への損害賠償金40億リエル(約100万ドル)と,罰金2000万リエル(約5000ドル)の支払いを命じた2022年12月の控訴審判決を支持した。

キャンドルライト党への攻撃の決定打となったのが,提出書類の不備を理由に同党の政党・候補者登録が認められず,選挙から排除されたことである。5月15日に国家選挙委員会(NEC)がこの決定を下し,同月25日には,選挙争訟の最終決定機関である憲法評議会がNECの決定を支持した。両機関ともトップを含む構成員の過半数を人民党が占め,同党の強い影響下にある。

キャンドルライト党の排除に反発したサム・ランシーら野党指導者が,投票の棄権を海外から呼びかけると,フン・セン首相は6月12日,選挙法の改正を指示した。改正点は2つある。第1に,直接選挙で選挙権を行使していることを各種選挙の立候補要件に加えた点である。たとえば,国民議会議員に立候補する場合,直近の連続する直接選挙2回で投票していなければならない。つまり,次回2028年総選挙に立候補するには,今回の総選挙と2027年コミューン評議会選挙で投票する必要がある。第2に,違法行為に「投票の棄権や投票用紙の破損(白票を投じたり抗議を意味する×を記入したりして無効票にする)を促すこと」が追加された点である。罰則対象が個人だけでなく政党にも拡大され,罰則の内容に,個人の場合は被選挙権を,政党の場合は選挙参加権をそれぞれ最低5年間剥奪することが加わった。この改正法は7月4日に公布・施行された。

選挙法改正のねらいは,投票率を上げるとともに無効票を減らすこと,および,主にサム・ランシーら海外から人民党政権批判を展開する野党指導者を次回の総選挙に参加させないことにあると考えられる。そうなれば,人民党は今回のみならず次回の総選挙でも圧勝でき,安定的な世襲の実現が可能となる。

独立系メディアと旧救国党指導者もまた,人民党政権による抑圧の対象となった。2月12日,最後の独立系メディアとされるオンライン報道機関兼ラジオ局「民主主義の声」(VOD)が,フン・マナエトに対する批判的な報道をしたことをきっかけに事業免許を取り消された。3月3日には,旧救国党党首のクム・ソカー(外国との通謀の容疑で2017年9月に逮捕)が,禁錮27年および選挙権と被選挙権,政治活動の権利の永久的剥奪などの初審判決を受けた。

こうした抑圧の一方で,フン・セン首相は反対勢力に対して人民党への入党を繰り返し促し,政治ポストの提供を通じた取り込みを図った。たとえば,草の根民主党のサーム・イーン幹事長は4月に人民党に移籍して環境省長官に任命されたほか,アメリカ亡命中の政治評論家ソー・ナローや,腐敗・汚職防止に取り組む国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル・カンボジアのプリアプ・コル前代表ら,政権批判を行ってきた市民社会の著名人も人民党に入党し,両者とも5月に首相補佐特命大臣のポストを得た。

また,抑圧と懐柔を組み合わせた新たなパターンも目立った。反対勢力を逮捕したうえで,被逮捕者にフン・セン首相への謝罪と人民党入党を請願させ,釈放後に政治ポストを与えるという流れである。たとえば,国王に対する不敬と扇動の容疑で3月21日に逮捕された旧救国党活動家のユム・シノーンとフン・コソルは,首相への謝罪と人民党入党を果たしたのち,それぞれ労働・職業訓練省副長官と国土整備・都市化・建設省副長官に任命された。

第7期国民議会議員選挙

18政党が参加して7月23日に投開票が行われた第7期国民議会議員選挙(総選挙)は,与党・カンボジア人民党が125議席中120議席,王党派のフンシンペック党が5議席を獲得する結果となった(表1)。最大野党・キャンドルライト党の参加が認められなかったため,人民党の圧勝は確実視されていた。一方,フンシンペック党が総選挙で議席を獲得したのは,2008年以来15年ぶりである。

表1 第7期国民議会議員選挙の結果

(出所)2023年8月5日に国家選挙委員会(NEC)が発表した公式結果をもとに筆者作成。

フン・マナエトが初出馬した今回の総選挙には,首相職の世襲に対する事実上の信任投票という意味があり,投票率と無効票率が焦点のひとつとなった。キャンドルライト党の排除に対する抗議の意味であったとしても,投票率が低かったり無効票が多かったりすれば,国民は世襲に必ずしも賛成していないとして人民党内の世襲反対派を勢いづけ,世襲の正当性に傷がつくからである。

投票率は2018年総選挙の83.02%から1.57ポイント上昇し,2000年代以降の総選挙ではもっとも高い84.59%を記録した。一方,2018年総選挙で8.55%(59万4659票)に達した無効票率は,5.36%(44万154票)に低下した。それでもキャンドルライト党が参加した2022年コミューン評議会選挙の無効票率(2.13%)の2.5倍以上であり,今回の総選挙でも無効票が政権批判層の受け皿の一部となったと考えられる。

人民党は全議席を独占した2018年総選挙から5議席減らしたものの,その得票率は直接選挙で過去最高の82.30%に達した。2018年総選挙(76.85%)と2022年コミューン評議会選挙(74.32%)と比べて,それぞれ5.45ポイントと7.98ポイント増加し,すべての選挙区で2018年と2022年の選挙より得票率が伸びた。かつて野党の強固な支持基盤であったプノンペン都とコンポンチャーム州でさえも,人民党の得票率はそれぞれ82.26%と79.98%に達した。同党が首都で8割の票を得たのは今回が初めてである。経済成長に伴う中間層の拡大が人民党支持の増加につながったと断言はできないものの,2022年コミューン評議会選挙以降,プノンペン都やコンポンチャーム州における野党への支持は大きく後退した。

逆に,人民党の得票率がもっとも低かった選挙区はコンポントム州(74.11%)で,次にシアムリアプ州(75.29%)が続く。これら2州における人民党の得票率は,2018年総選挙と2022年コミューン評議会選挙でも相対的に低かった。コンポントム州とシアムリアプ州は,プノンペン都とコンポンチャーム州に替わる野党の強固な支持基盤となりつつある。

一方,フンシンペック党は大方の予想に反して5議席(得票率9.22%)を獲得する善戦をみせた。最大の要因は,キャンドルライト党が不在のなかで,反人民党票が知名度の高いフンシンペック党に流れたことである。2022年コミューン評議会選挙における同党の得票率は,わずか1.27%に過ぎなかった。もし今回の総選挙にキャンドルライト党が参加していれば,フンシンペック党は議席を獲得できなかったであろう。これに加えて,ノロドム・シハヌーク前国王の孫のノロドム・チャクラヴット党首を全面に出した選挙戦略が,一定の成功を収めたことも大きかった。端正な顔立ちのチャクラヴット党首の写真を大きく掲げた看板を地方にまで設置し,党首が参加する選挙運動を各地で精力的に展開したことで,フンシンペック党は選挙戦を通じて野党のなかでもっとも目立つ存在となっていた。また,一党制議会に対する国内外からの批判を回避するため,フンシンペック党が議席を得られるよう人民党が意図的に票を流したとの見方もある。

フン・マナエト内閣と第7期国民議会指導部の顔ぶれ

総選挙から3日後の7月26日,フン・セン首相は突如,翌月に辞任する意向を表明して国内外を驚かせた。投票率の上昇,無効票率の低下,過去最多得票率での人民党の圧勝,そしてフンシンペック党の議席獲得により,世襲を進めるうえで適切な環境が整ったと判断したと考えられる。さらに,選挙結果に対する欧米諸国からの風当たりが強くなかったことも(「対外関係」の項目を参照),フン・センに早期の権限移譲を決断させた要因のひとつといえる。

8月5日に選挙結果が確定すると,同月7日にフン・マナエトが国王から次期首相に指名され,22日に新内閣が発足した。フン・マナエト内閣は,いわば「世襲内閣」である。首相だけでなく内務大臣と国防大臣も世襲となり,各省庁をつかさどる大臣30人の過半数を人民党高級幹部の子どもや甥が占めている。

新内閣は首相,副首相10人(うち8人は各省の大臣を兼務),上級大臣21人,各省庁大臣30人の計54人で構成され,閣僚らは2つの世代に大別できる。ひとつは,首相と各省庁の大臣に就任した50歳代以下を中心とする世代である。内閣発足時の年齢は首相が45歳,各省庁の大臣は60歳代が4人(うち留任が3人),50歳代が10人(同2人),40歳代が最多の16人(同2人)で,世代交代が大幅に進んだ。40歳代の大臣16人中10人を,人民党の実質的な最高権力機関である党中央委員会常任委員(故人も含む)の子どもたちが占めている。

もうひとつは,上級大臣に就任した60歳代と70歳代を中心とする世代である(21人中6人が留任)。彼らの多くを,フン・センの右腕とされるコン・キームや首相官房長のホー・セティーらフン・センの側近,フン・マナエトの義父など,フン・セン親子に近い党幹部が占めている。また,内戦期の敵対勢力であったフンシンペック党や仏教自由民主党,ポル・ポト派から2000年代までに人民党に加わった幹部にも引き続きポストが付与された。

新内閣の特徴として特筆すべきは,フン・センが人民党の最高権力者として,内閣をコントロールできる布陣となった点である。12月9~10日の人民党第5期中央委員会第44回総会で,フン・マナエト内閣の主要閣僚13人などが党中央委員会常任委員に追加選出された。その結果,閣僚を兼務する常任委員18人の多くを,フン・センの息子2人を含む親族や側近など彼に近い人物が占めるようになった。フン・センは今後,副首相の筆頭に据えた姪の夫のネート・サヴアン前国家警察長官や三男のフン・マニー公務員大臣,側近の上級大臣らを通じて,フン・マナエトを援護するとともに各省庁の動きを監督・監視する可能性が高い。

国民議会の長にもフン・センに近い人物が就任した。新内閣と同日に発足した第7期国民議会指導部(常任委員会)は,人民党がポストを独占し,13人中9人が留任した。もっとも大きな変化は,ヘン・サムリン人民党名誉党首が2006年3月から務めてきた国民議会議長の職を退いたことである。後任の議長に就任したのは,第1副議長のチアム・ジアプ党中央委員会常任委員ではなく,第2副議長のクオン・ソダリー党中央委員会常任委員であった。初の女性議長となったクオン・ソダリーは選挙区がフン・センと同じで,彼の妻ブン・ラニー・カンボジア赤十字社総裁と長年にわたって親密な関係を築いてきた。フン・センよりも年長のヘン・サムリンが退き,クオン・ソダリーが議長に就任したことで,フン・センは国民議会にも影響力を行使しやすくなった。一方,ヘン・サムリンは娘婿のヴォーン・ソート前社会事業・退役軍人・青少年更生大臣を第2副議長に据えることに成功した。

以上の内閣と国民議会指導部の人事に加えて,フン・センが首相退任直後に国王の諮問機関である枢密院の議長に任命されたことから,彼は首相在任時以上の権力を手にしつつある。さらに,ねらいどおり2024年2月の上院議員選挙後に上院議長に就任すれば,国王を選出する王位継承評議会の議長を兼ねるだけでなく,国王不在時に国家元首代行として,高位の文官や武官などの人事に関する勅令および法律公布のための王令への署名権も手中に収めることになる。フン・セン「内閣」は終わったが,フン・セン「体制」はこれまでよりも強化された形で続くとみられる。

(山田)

※「国内政治」の記述は,山田裕史編『強化されるフン・セン体制―2023年カンボジア総選挙と世襲内閣の誕生』日本貿易振興機構アジア経済研究所,2024年の一部を加除修正したものである。

経 済

非縫製部門の製造業と観光業が寄与した成長

2023年の実質GDP成長率は5.5%(2024年1月のカンボジア国立銀行の推計値)で,前年の5.2%から微増した。産業別でみると,主要産業の製造業では,縫製部門(繊維,衣類,鞄,靴,革製品)以外の輸出向けの電気機器・部品や車両・車両部品の成長が寄与し,前年比7.4%の成長となった。もうひとつの主要産業である観光業も同19.8%増と順調に回復している。一方,建設・不動産業の回復は遅れており,同1.1%増と0.5%増であった。農業はコメの生産量が増加し,同1.1%増に回復した。

カンボジア開発評議会によると,2023年の投資総額(承認ベース,経済特区内外かつ適格投資案件[租税・関税上の優遇措置対象]以外も含む)は,高速道路建設事業や発電所建設事業が底上げに寄与し,49億2000万ドル(前年比22%増)であった。最大の投資国は投資総額の66%を占める中国で,次いで国内の投資が総額の24%を占めた。セクター別では,工業セクターへの投資が案件数,金額ともに最大で,それぞれ全体の92%と46%を占めた。このうち,件数が多かったのは依然として縫製関連であったが,金額でみると縫製以外の分野への大型投資が目立った。その代表的なものは,中国の国有企業青島双星による投資額1億3800万ドルのタイヤ製造事業案件であった。2022年の中国の江蘇通用科技によるタイヤ製造事業(投資額3億ドル,2023年3月操業開始)に続き,政府が重点分野とする自動車組み立て・部品製造分野への大型投資である。次いで案件数は7件と少ないながらも,「インフラセクターとその他」(その他は農業・農業加工,工業,観光以外のセクター)が金額では全体の44%を占めた。インフラセクターでは,プノンペン=バヴェット間の高速道路建設事業(投資額13億7600万ドル)が承認されたほか,水力発電所(投資額4億4700万ドル)や太陽光発電所など電力事業への大型投資が目立った(後述)。

関税消費税総局によると,財輸出は総額226.4億ドルで前年比1.8%増であった。主要輸出品目の縫製品(61・62類),旅行用品(42類),靴(64類)が欧米での需要減によりそれぞれ78.7億ドル(前年比12.9%減),17.1億ドル(同8.2%減),13.7億ドル(同21.4%減)と減少するなか,電気機器・部品(85類)と穀類(10類)が31.3億ドル(同56.6%増),17.5億ドル(同45.1%増)と大幅に増加した。電気機器・部品の輸出増の要因は,2022年6月にアメリカがカンボジアなどからの太陽光発電関連製品に対して一時的な関税免除措置を講じたことで,太陽光パネルなどの輸出が急増したためである。国別では引き続きアメリカが最大の輸出相手国で,輸出額は89.0億ドル(同0.8%減)であった。欧米への輸出は一部を除いて軒並み減少したが,それを補ったのが第2位のベトナムと第3位の中国で,それぞれ輸出額は29.7億ドル(同37.1%増),14.8億ドル(同19.2%増)となった。財輸入は燃料,縫製関連の原材料の輸入減,内需低迷による車両・車両関連部品の大幅輸入減の影響で,総額241.8億ドル(同5.0%減)であった。

経常収支は,7億8700万ドルの黒字であった。黒字の要因として,観光業の回復により,コロナ禍以降赤字が続いていたサービス収支が2022年第4四半期以降黒字を計上していることに加え,財輸入減によって財貿易収支の赤字が抑制されたことがある。観光業の回復という点では,5月にカンボジアで初めて東南アジア競技大会が開催されたこともあり,年間の外国人訪問者数が政府目標の500万人を超える約550万人(前年比139%増)に達し,観光収入も,前年の14億1500万ドルから30億8300万ドルへと飛躍した。コロナ禍前のピークであった2019年の外国人訪問者数(660万人)と観光収入(47億7300万ドル)には及ばないが,順調に回復している。

2022年6月,原油価格の高騰に伴う輸送費の上昇と食糧価格の高騰により,消費者物価指数は前年比7.85%増を記録した。しかし,その後これらの価格が下落したことで緩和され,2023年は平均2.1%とおおむね低く抑えられた。

投資を下支えする大型運輸・電力事業

2019年をピークとしてコロナ禍以降落ち込んだ投資を,大型運輸・電力事業が下支えする傾向が続いている。2023年に承認された事業は,前年以来策定されたセクター別の国家計画に盛り込まれており,運輸コストの削減や安定的で安価な電力供給を通して投資促進のけん引役となることが期待されている。

運輸面では,持続的な経済発展における輸送・物流上の需要拡大に応えるため「包括的インターモーダル運輸・物流基本計画2023~2033年」が8月に策定された。同計画に盛り込まれた主要経済回廊での運輸インフラ事業として,プノンペン=バヴェット間の高速道路建設事業が承認され,6月に着工した。2022年に開通したプノンペン=プレアシハヌーク間に引き続き,カンボジアで2番目の高速道路となる。同高速道路は,投資総額13億7600万ドルで,中国路橋工程と中国とカンボジアの合弁会社がBOT方式で受託し,2027年に完成予定である。

将来的に大型投資が期待される運輸事業も進展した。第3の高速道路となるプノンペン=シアムリアプ=ポイペト間の建設計画では,6月に公共事業・運輸省と中国路橋工程が枠組み協定を締結し,実行可能性調査が進められている。また,水運でも,カンボジア初となる国内河川と海を直接つなぐ全長180キロメートルの「扶南テーチョー運河」建設計画(総工費17億ドル)が5月に閣議決定され,2024年に着工予定である。高速道路と同様に同運河も10月に公共事業・運輸省と中国路橋工程が枠組み協定を締結した。従来,建設資材・縫製品原材料の輸入やコメの輸出などで内陸水運を活用する場合には,ベトナムの港湾を利用する必要があったが(JICA,「カンボジア国国際物流機能強化のための情報収集・確認調査」,2016年8月),同運河が完成すれば,主要河川港のプノンペン港・新港からカンボジア唯一の深水港シハヌークヴィル港へ直接接続することができる。これにより,物流コストが引き下げられるだけでなく,水運上のベトナムへの依存度が下がるとして,政府は同運河を歴史的な国家事業と位置づけて推進している。

電力面でも,2022年に策定された「電力開発計画2022~2040年」に基づき,再生可能エネルギーの利用拡大として,水力発電所1件と太陽光発電所4件の建設計画が4月に閣議決定され,前述のとおり一部は年内に投資案が承認された。一方で,再生可能エネルギーへの転換を推進するために,承認済みの大型投資プロジェクトの見直しも行われ,コッコン州のボトゥム・サコー石炭火力発電所(700MW,投資額15億ドル)の建設計画の中止と,カンボジア初となる液化天然ガス火力発電所(800MW)への転換が11月に発表された。

第1次五角形戦略

8月に発足した新内閣は,最上位の開発戦略である「第1次五角形戦略:成長,雇用,公平性,効率性,持続可能性のためのカンボジア・ヴィジョン2050の実現に向けた基盤構築」を発表した。2018年発表の第4次四角形戦略でも掲げられた「カンボジア・ヴィジョン2050」(2030年までに上位中所得国,2050年までに高所得国入りするという目標)を継承しており,政策面でも連続性がみられる。中核目標を「ガバナンス改革と強化」とし,戦略目標には前戦略同様に「危機に強い経済成長」,「雇用創出」,「貧困削減」,「公共サービスの効率性向上」が位置づけられるとともに,「持続可能な社会経済開発」が新たに加わった。「角」と表現される主要優先事項も同様で,前戦略から「人的資源開発」,「経済の多様化」,「民間部門・雇用開発」,「強靭で持続可能で包括的な発展」が継承されたほか,新たに「デジタル経済・社会の促進」が追加された。追加された項目は新たな課題・機会への対応・活用という特徴を持つ。「持続可能な社会経済開発」は,主要産業の農業や主な電力供給源の水力発電に影響を及ぼしてきた気候変動,サプライチェーンにおける温室効果ガス排出削減の要請など,前戦略発表以降,カンボジアが直面した新たな課題に対応するものである。「デジタル経済・社会の促進」は,コロナ禍を契機として発展したデジタル技術を活用して,生産性の向上,行政の効率化,新たな産業育成と雇用創出を促進することを謳う。

同戦略では人民党が総選挙の公約に掲げた社会福祉・農業振興志向の6つの政策を優先政策と位置づけ,年内に順次具体策を発表し,始動させた。貧困・貧困予備世帯向けには,若者への就労支援として,「貧困・貧困予備世帯の若者のための専門知識・技術訓練分野の社会的支援国家プログラム実施に関する政令第349号」が公布されたほか,平時と緊急時双方の現金給付型支援として「貧困・貧困予備世帯向けの平時・緊急時の国家社会保護プログラム」が示された。また,インフォーマルセクターをフォーマルセクターへ移行させることで,経済発展の一翼となることを目指すとともに,インフォーマルセクターの労働者への社会保障の適用を可能にする「インフォーマル経済発展のための国家戦略2023~2028年」が発表された。農業振興関係では,「第7期王国政府の第5・第6優先政策プログラム」において農作物の価格安定や資金調達,技術指導支援の具体的方針が示され,12月中に技術指導を担うコミューン農業官の選抜が実施された。これまで政府は貧困・貧困予備世帯に対して経済危機や災害などが生じた際の現金給付で対応してきたが,新政策では,それらの世帯に加え労働力人口の9割近くを占めるインフォーマルセクターの労働者や農民が抱える諸課題に対し,現金給付も継続しつつ,平常時も含め多角的観点から取り組む方針を示した。

(新谷)

対外関係

新内閣発足後も続く親中路線

2010年代以降のカンボジアの経済成長は中国からの投資と援助によって支えられてきたことに加えて,2010年代後半から軍事面でも中国への依存が顕著となっており,現在の人民党政権にとって中国はもっとも重要な国である。

フン・セン首相は7月25日,在カンボジア中国大使を自宅に招き,首相辞任の意向をあらかじめ伝えたとされる。公に発表する前日のことであった。フン・マナエトの首相指名後の8月13日には来訪中の中国の王毅外交部長が,フン・センとフン・マナエトと個別に会談して両国の結束を確認した。フン・マナエトは首相就任後の初の二国間訪問先として,9月14~16日に中国を公式に訪れた。さらに10月16~19日には,第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに出席するため再び訪中し,投資や農業,インフラ,国防,エネルギーなどの分野における協力に関する覚書を交わした。対中関係を重視するカンボジアの外交政策は,フン・マナエト内閣発足後も現時点で変化はみられない。

態度を軟化させる欧米

欧米との関係は,2017年の救国党の党首逮捕と解党に端を発した人民党政権の強権化以降,不安定化していた。重要な輸出先であるアメリカとEUは,2018年総選挙の前後に援助の一部を停止したり,経済制裁を科したりしたが,そうした対応はカンボジアと中国をさらに接近させるだけであった。そこで欧米諸国は,アメリカとイギリスで高等教育を受けたフン・マナエトの首相就任を機に,カンボジアとの関係改善に向けて態度を軟化させつつあるようにみえる。

その兆候が現れているのが,2023年総選挙に対するアメリカとEUの対応である。アメリカは7月23日付の国務省の声明で「選挙は自由でも公正でもなかった」として対外援助プログラムの一部停止などの措置をとったが,フン・マナエト内閣成立にあたり,複数政党制に基づく民主主義の回復や独立系メディアの再開などへの期待を示した。そして第78回国連総会出席のため9月に訪米したフン・マナエトがビクトリア・ヌーランド国務省副長官代行と会談した後,バイデン政権は停止していたカンボジアの保健・教育分野に対する1800万ドルの開発援助の再開を表明した。また,2018年総選挙時に経済制裁を科したEUは,2023年総選挙に対しては,7月24日付の欧州対外行動局の声明で,選挙や政治状況に対する憂慮を表明するにとどめた。

日本および両隣国との関係強化

カンボジアと日本の関係は,外交関係樹立70周年に当たる2023年に「包括的戦略的パートナーシップ」へと格上げされた。12月15~19日,日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議に出席するため来日したフン・マナエトは,岸田文雄首相との首脳会談で安全保障やデジタル,エネルギーの分野での協力強化に合意したほか,投資を誘致するために投資セミナーでの基調講演や企業経営者らとの会談を精力的にこなした。これらは,第1次五角形戦略で掲げた重点分野への投資促進を図る動きと位置づけられる。

タイとベトナムという両隣国との安定的な関係は,領土保全の観点からのみならず,貿易や投資,観光の拡大を通じた高度経済成長を実現するためにも非常に重要である。9月28日にタイのセーター首相が来訪した際は,貿易・投資の促進や,タイで雇用されているカンボジア人出稼ぎ労働者が直面する問題などが話し合われた。2024年2月に予定されているフン・マナエトのタイ公式訪問では,両国間関係の格上げが模索されている。また,フン・マナエトは人民党副党首に選出された直後の12月11~12日,同党にとって歴史的に関係の深いベトナムを公式訪問し,前内閣時と変わらぬ両国の友好関係を確認した。ベトナム首脳らとの会談では,教育,貿易,投資,観光,文化,安全保障,国境問題など幅広い協力分野に関する話し合いが行われた。

(山田)

2024年の課題

国内政治では,一部省内での新旧幹部の対立を指摘する報道があるなか,若手閣僚たちが省庁をいかに舵取りし,具体的な改革の成果を生み出せるかが課題となる。2月の第5期上院議員選挙では人民党が圧勝し,鞍替え出馬したフン・セン前首相が上院議長に就任した。野党勢力の分裂状態は続いており,5月の第3期首都・州評議会選挙と市・郡・区評議会選挙でも人民党の圧勝が確実視される。

経済では,政府は2024年の実質GDP成長率を6.4%と予想しているが,欧米での需要低迷によって縫製業が伸び悩むなか,非縫製部門の製造業と観光業が引き続き成長をけん引できるかが注視される。ただし,アメリカ向けの太陽光パネルへの関税免除措置が2024年6月で終了する予定であり,特定の製品に過度に依存した現在の製造業の構造を是正することが課題である。

対外関係では,アメリカとEUとの関係改善が課題となる。1月のフン・マナエト首相のフランス公式訪問時には,両国関係を「戦略的パートナーシップ」へと格上げすることが合意され,EUとの政治的・経済的な結びつきの強化に弾みをつけた。中国の援助で進められているリアム海軍基地の拡張は2024年中に完工予定であり,アメリカとの関係改善にどのような影響を与えるかが注目される。

(山田:新潟国際情報大学国際学部教授)

(新谷:地域研究センター)

重要日誌 カンボジア 2023年

   1月
10日 人民党,1月7日の戦勝記念日を批判したとして,コン・コアム・キャンドルライト党(CLP)最高顧問を扇動罪などで提訴するとともに,50万ドルの損害賠償を請求。
15日 フン・セン首相,モルディブ訪問(~17日)。
16日 タッチ・セターCLP副党首,2019年に不渡り小切手を発行した件で2度にわたり裁判所の召喚に応じなかったとして逮捕。
28日 人民党,臨時党大会開催(~29日)。
31日 コン・コアムCLP最高顧問,首相への謝罪文で最高顧問の辞任と離党を表明。
   2月
2日 フン・マナエト国軍副総司令官兼陸軍司令官,インド訪問(~4日)。
9日 首相,中国訪問(~11日)。
11日 CLP,シアムリアプ州で臨時党大会開催。
12日 独立系メディアの「民主主義の声」(VOD),事業免許取り消し。
13日 首相,ラオス訪問(~14日)。
13日 ドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー連邦大統領,来訪(~16日)。
23日 最高裁判所,ソン・チャイCLP副党首に対し名誉毀損で人民党と国家選挙委員会(NEC)へそれぞれ1000万リエル(約2500ドル)の罰金,人民党へ40億リエル(約100万ドル)の損害賠償の支払いを命令。
   3月
3日 プノンペン都始審裁判所,旧救国党のクム・ソカー党首に対し,外国との通謀罪で禁錮27年および選挙権,被選挙権,政治活動の権利を永久的に剥奪する有罪判決。
15日 ロイヤル・グループとシンガポールのケッペル・エナジー,1GWの低炭素電力の長期購入とシンガポールへの輸出契約を締結。
17日 フン・マナエト国軍副総司令官兼陸軍司令官,大将へ昇格。
17日 フン・マヌット国防省諜報局長,陸軍副司令官に任命。
20日 中国との合同軍事演習「ゴールデン・ドラゴン」実施(~4月8日)。
21日 旧救国党の若手指導者ユム・シノ‌ー‌ンとフン・コソル,扇動と不敬の容疑で逮捕。
27日 マレーシアのアンワル・イブラヒム首相,来訪。
   4月
4日 草の根民主党のサーム・イーン幹事長,人民党へ移籍後,環境省長官に任命。
7日 イオンモール3号店,正式開業。
8日 マエン・ソムオーン副首相兼議会関係・監査大臣へ「ソムダチ」の称号授与。女性としてブン・ラニー首相夫人に次ぐ2人目。
9日 カンダール州,コンポンスプー州,クロチェ州に新設された3市・2郡の評議会選挙,投開票。
22日 首相へ謝罪し,釈放後に人民党に入党したユム・シノーン,労働・職業訓練省副長官に任命。同様にフン・コソルも国土整備・都市化・建設省副長官に任命(24日)。
28日 収監中のタッチ・セターCLP副党首,1月の韓国訪問時の演説が扇動だとして起訴。
   5月
4日 ラオスのトーンルン・シースリット国家主席,来訪(~6日)。
5日 第32回東南アジア競技大会,カンボジアで初開催(~17日)。
9日 首相,ASEANサミット・関連会合出席のためインドネシア訪問(~11日)。
11日 人民党を批判していた政治評論家ソー・ナロー,人民党入党後,首相補佐特命大臣に任命。
13日 トランスペアレンシー・インターナショナル・カンボジア前代表のプリアプ・コル,人民党入党後,首相補佐特命大臣に任命。
15日 NEC,提出書類の不備で,第7期国民議会議員選挙(総選挙)でのCLPの政党・候補者登録を認めない決定。
16日 新税法公布・施行。
19日 全長180キロメートルの「扶南テーチョー運河」の建設計画を閣議決定。
25日 憲法評議会,総選挙におけるCLPの政党・候補者登録を認めないというNECの決定を支持。総選挙へのCLPの不参加が確定。
   6月
7日 カンボジア第2の高速道路プノンペン=バヴェット間の建設着工。
8日 カンボジア・アラブ首長国連邦包括的経済連携協定締結。
26日 「投資法の施行に関する政令第139号」公布。
   7月
4日 改正選挙法公布・施行。
12日 電気通信規制局,カンボジア・デイリー(The Cambodia Daily),ラジオ・フリー・アジア(Radio Free Asia),コムノットトラー(Kamnotra)が運営する各種サイトへの通信遮断を命令。
14日 改正選挙法違反の容疑でCLP幹部2人逮捕。17日にも同容疑でさらに2人逮捕。
23日 総選挙,投開票。
26日 フン・セン首相,翌月に首相を辞任する意向を表明。
29日 チア・チャントー国立銀行総裁,名誉総裁に任命。後任は娘のチア・セライ国立銀行副総裁。
   8月
5日 NEC,総選挙の確定結果を発表。
7日 国王,フン・マナエトを次期首相に指名。
11日 国王,ドゥット・モンティー最高裁判所長官の引退を承認。
12日 中国の王毅外交部長,来訪(~13日)。
21日 第7期国民議会招集・開会。
22日 第7期国民議会議長にクオン・ソダリー,第1副議長にチアム・ジアプ,第2副議長にヴォーン・ソートを選出。
22日 フン・マナエト新首相就任。新内閣発足。
22日 フン・センを枢密院議長,ヘン・サムリンを同名誉議長,ソー・ケーン,ティア・バニュ,マエン・ソムオーンを同副議長に任命。
23日 ソー・ソカー副首相兼内務大臣とティア・サイハー副首相兼国防大臣,大将へ昇格。
24日 フン・マナエト内閣,初閣議。「政治綱領」と「第1次五角形戦略」を発表。
25日 マウ・ソパン,フン・マナエトの後任として国軍副総司令官兼陸軍司令官に任命。
31日 クメール民族統一党のヤエム・ポニャルット,ニュク・ブンチャイ党首との諮問勧告高等評議会への参加をめぐる対立で離党。
   9月
2日 首相,国民議会議長,上院議長に「ソムダチ」の称号を付与する勅令公布。フン・マナエト首相の称号は「ソムダチ・モハーボヴォーテパダイ」。
4日 首相,第43回ASEAN首脳会議出席のため,インドネシア訪問(~7日)。
14日 首相,中国訪問(~16日)。
17日 国連教育科学文化機関(UNESCO),10世紀に建立されたコッケー遺跡の世界遺産登録を決定。
21日 プノンペン都始審裁判所,タッチ・セターCLP副党首に対し,「手形および決済取引に関する法」違反で禁錮18カ月と罰金300万リエル(約750ドル)に加え,原告に対し500万リエル(約1250ドル)の賠償金と未払いの債務3万3400ドルの支払いを命令。
21日 首相,第78回国連総会出席のためアメリカ訪問(~25日)。
28日 タイのセーター・タウィーシン首相,来訪。
28日 環境保護団体のマザー・ネイチャー・カンボジア,ノーベル平和賞の前哨戦といわれる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞。
28日 繊維・衣類・靴・旅行用​​​品・​​鞄製造労働者を対象とした2024年の最低賃金,首相が2ドル追加し,月額204ドルに決定。
  10月
5日 監査省設立(議会関係・監査省から改称)に関する王令公布・施行。
5日 国境問題庁設立に関する王令公布・施行。
10日 チーウ・ケーン最高裁判所副長官兼長官代行,同長官に任命。
10日 「インフォーマル経済発展のための国家戦略2023~2028年」発表。
11日 CLP,クメール意志党,草の根民主党,カンボジア改革党が「未来への同盟」を結成。
11日 国王から授与される称号「オクニャー」の管理に関する勅令公布・施行。
12日 内務省,元CLP副幹事長兼コンポントム州支部長スン・チャンティーが創設した国民の力党の政党登録を承認。
16日 首相,第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラム出席のため,就任後2度目となる訪中(~19日)。
18日 プノンペン都始審裁判所,タッチ・セターCLP副党首に対し扇動罪で禁錮3年と罰金400万リエル(約1000ドル)の有罪判決。
25日 人民党,27政党と「カンボジアにおける政党間の協力・同盟協定」締結。
  11月
2日 民間航空庁設立の王令公布・施行。
9日 ロン・チュンCLP副党首,国民の力党への移籍を発表。
12日 国民の力党,党大会開催。創設者のスン・チャンティーを党首に選出。
14日 「貧困・貧困予備世帯の若者のための専門知識・技術訓練分野の社会的支援国家プログラム実施に関する政令第349号」公布・施行。
15日 カンプチア祖国開発団結戦線第6回大会,マエン・ソムオーンを議長に選出。
16日 シアムリアプ・アンコール国際空港,正式開港。
20日 農業分野での優先政策「第7期王国政府の第5・第6優先政策プログラム」発表。
30日 政府,ボトゥム・サコー石炭火力発電所(コッコン州,700MW)の建設計画の中止と,カンボジア初となる液化天然ガス火力発電所(800MW)への転換を発表。
  12月
1日 1993年創刊のクメール語紙「ラスマイ・カンプチア」,経営難で廃刊。
5日 「貧困・貧困予備世帯向けの平時・緊急時の国家社会保護プログラム」発表。
6日 諮問勧告高等評議会,今期初会合。
7日 2024年財務管理法公布。
8日 イギリス,アメリカ,およびカナダ,人権侵害に関与するカンボジア国籍の個人と団体に対して資産凍結と渡航禁止の制裁発表。
9日 人民党,臨時党大会(~10日)と第5期中央委員会第44回総会を開催。フン・マナエトを副党首に,中央委員会常任委員に23人を追加選出。
11日 首相,ベトナム訪問(~12日)。
13日 国王,NECの新委員9人を任命。
13日 NEC,2024年2月の第5期上院議員選挙の政党・候補者登録で4党(人民党,フンシンペック党,クメール意志党,国民の力党)が登録したと発表。
15日 首相,日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議出席のため訪日(~19日)。
22日 シハヌークヴィル港新コンテナターミナル整備事業,着工。
24日 コミューン農業官の第1回選抜試験で250人が合格。
25日 首相,第4回メコン-ランツァン(瀾滄江)協力首脳会議にオンライン参加。

参考資料 カンボジア 2023年

① 国家機構図(2023年12月末現在)

(注)今年度から国家機構図を詳細に記すとともに,一部機関の名称をクメール語により忠実に訳すようにした。

② 大臣会議名簿(2023年12月末現在)

(注)*は副首相。

③ 立法府(2023年12月末現在)

④ 司法府(2023年12月末現在)

⑤ 国家選挙委員会(2023年12月末現在)

⑥ 人民党第5期中央委員会常任委員会(2023年12月末現在)

主要統計 カンボジア 2023年

1 基礎統計

(注) 人口は2019年は同年人口センサスに基づく確定値,2020年以降は同センサスに基づく推計値。籾米生産の2022年については予測値。為替レートは市場レートの中間値を参照。

(出所) 人口は計画省統計局(2019年はGeneral Population Census of the Kingdom of Cambodia 2019: National Report on Final Census Results[https://www.nis.gov.kh/index.php/en/15-gpc/79-press-release-of-the-2019-cambodia-general-population-census],2020年以降はPopulation Projection 2020-2033[https://nis.gov.kh/nis/Population%20Projection/Cambodia_Population_Projection_2020-2033.pdf]),籾米生産はFAO “Country Briefs: Cambodia” (https://www.fao.org/giews/country-analysis/country-briefs/country.jsp?code=KHM),インフレ率と為替レートはカンボジア国立銀行 “Monthly Average Exchange Rate”,“Consumer Price Index and Inflation Rate” (https://www.gov.org.kh/english/economic_research/monetary_and_financial_statistics_data.php)。

2 支出別国内総生産(名目価格)

(出所) ADB, Key Indicators 2023(https://www.adb.org/publications/key-indicators-asia-and-pacific-2023).

3 産業別国内総生産(実質:2000年価格)

(出所) 表2に同じ。

4 国・地域別貿易

(出所) IMF, Direction of Trade Statistics (https://data.imf.org/?sk=9D6028D4-F14A-464C-A2F2-59B2CD424B85). 輸出はFOB価格,輸入はCIF価格表示。

5 国際収支

(注) IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。したがって,金融収支の符号は(+)は資本流出,(-)は資本流入を意味する。

(出所) 表2に同じ。

6 中央政府財政1)

(注) 1)中央政府の超過予算を除く。2)暫定値。

(出所) 表2に同じ。

7 中央政府財政支出1)

(注) 1)中央政府の超過予算を除く。2)暫定値。

(出所) 表2に同じ。

 
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