Yearbook of Asian Affairs
Online ISSN : 2434-0847
Print ISSN : 0915-1109
Trends in Countries and Regions
The Philippines in 2023: Policy Shifts from the Duterte Administration under Marcos
Aya Watanabe
Author information
MAGAZINE FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2024 Volume 2024 Pages 291-318

Details

2023年のフィリピン

概 況

2023年のフィリピンでは,フェルディナンド・マルコスJr.大統領は高い支持率を維持し上下院議長との連携のもとで盤石な政権運営を展開するとともに,社会変革,経済発展のスローガン「Bagong Pilipinas」を公表した。ただし,2025年以降の選挙を見据えて,マルコス陣営とサラ・ドゥテルテ副大統領との間に亀裂が生じ始めた。くわえて,前政権時に政治・司法圧力にさらされ続けた,ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の反対派への保釈決定,無罪判決が相次ぎ,前政権からの方針転換がみられた。

経済面では,物価上昇や金融引き締めを背景に実質国内総生産(GDP)成長率は政府目標を達成しなかったものの,堅調に推移した。年初に発表された,『フィリピン開発計画2023~2028』では人的資本開発や雇用政策に力点が置かれている。さらに,マハリカ投資基金の設立により,マルコス政権が重視する経済発展の推進,財政基盤の拡充が期待されている。

対外関係では,対米接近が鮮明となり,それに警戒感を示す中国と南シナ海の係争海域で対立が深まった。アメリカのみならず,海洋安全保障面で西側諸国との連携が強化された。

国内政治

盤石な政権運営

1986年のエドサ政変以降「手続き的民主主義」が定着した時期において,最も高い得票率で当選したマルコス大統領とドゥテルテ副大統領は,政権2年目となる2023年も高い支持率をそれぞれ維持した(図1)。パルス・アジアが行った世論調査では2023年3月と6月にそれぞれ80%前後の支持率を得た。8~9月のインフレ率の上昇に対する不満を背景に,9月には大統領の支持率が15ポイント下落し,副大統領は2024年度予算審議における機密費問題が影響して11ポイント支持率を落とした(「経済」の項参照)。とはいえ,歴代大統領が政権発足初期には高い支持率を獲得してきたように,過去政権との比較においても多くの人々が現在の正副大統領を依然として支持している。

図1 マルコス大統領,ドゥテルテ副大統領の支持率(2023年)

(出所) Pulse Asia Research Inc.(https://pulseasia.ph/)資料より筆者作成。

高い支持率を背景に,政権運営は盤石といえる。上下院でマルコス陣営が過半数を占め,下院では大統領のいとこであるマルティン・ロムアルデス議長,上院では2022年選挙でマルコス大統領を支持して自らも再選したフアン・ミゲル・ズビリ議長のリーダーシップの下で優先法案の審議が進められた。優先法案は,政権中枢と議会リーダーが重要政策を審議・調整する立法行政開発諮問評議会(LEDAC)で議論かつ選定され,2023年12月末時点で57件あるうち6件が立法化された。残りの51件については下院で大半が可決され,一方上院での可決は半数に満たないが,政権と議会の関係性に揺るぎはない。下院では議長の意向が強く働くことで合意形成がなされるのに対し,上院では個々の議員の独立性が高く,かつ政策ごとに異なる選好を持つ傾向があり審議に時間を要している。2023年に立法化された主な優先法案としては「マハリカ投資基金」法がある(「経済」の項参照)。

また,長く空席となっていた政府要職ポストにその分野に精通した人物が任命され,政権の陣容が整った。マルコス大統領は6月,国防長官と保健長官にギルベルト・チョドロJr.とテオドロ・エルボサをそれぞれ任命した。チョドロはアロヨ政権時の2007~2009年にも国防長官を務め,2022年5月の選挙ではマルコス―ドゥテルテ陣営の「UniTeam」(ユニチーム)から上院選挙に出馬したが落選した。選挙に出馬した者はその後1年間政府要職に就くことが禁じられているため,この時期の任命になったと考えられる。保健長官となったエルボサは医師でベニグノ・アキノIII政権下の2010~2015年に保健省次官を務め,ドゥテルテ政権時の2020~2022年には「新興感染症に関する省庁間タスクフォース」のアドバイザーを務めた。また,農業長官を兼務してきたマルコス大統領は11月3日に長官職から退き,フランシスコ・ラウレルJr.を新長官に任命した。彼は大手水産会社を経営し,2022年大統領選挙時にマルコスを支援した人物として知られている。さらに,マルコス大統領が2023年末に大統領府内に設置した「投資・経済大統領特別補佐官室」のトップに不動産開発会社のフレデリック・ゴー社長兼CEOを長官待遇で任命した。同氏はすでに1月から投資・経済大統領顧問を務めており,今回の昇格によって投資活性化を中心とした経済政策全般の舵取りを任される。

新スローガンの設定

7月中旬,マルコス大統領は政権のスローガンおよびロゴ「Bagong Pilipinas」(新しいフィリピン)を発表した。このスローガンの下で,マルコス政権は原理原則に基づいた公正な政権運営をその使命とし,抜本的な社会変革を伴う大胆な政策改革と経済再生を目指す。新スローガンの趣旨は総花的で体系的な政策実施を伴うものではないが,「Bagong Pilipinas」の下でいくつかのプログラムが実施された。そのひとつが9月下旬から開始した「Bagong Pilipinas」サービス・フェア(BPSF)で,BPSF期間内に数日間のサービスセンターを各州にひとつ設置し行政サービスを提供する。その内容は法律・健康相談,奨学金・職業訓練の申し込み,給付金・パスポートの申請,農器具・苗の補助など広範囲にわたる。BPSFはマルコス大統領の地元であるイロコス・ノルテ州やロムアルデス下院議長の選出区レイテ州を含む4州を皮切りに順次全州で展開される予定である。

しかしこのスローガンは父フェルディナンド・マルコスSr.政権時に設定されたものに酷似していると批判の声が上がっている。父マルコスSr.元大統領は1972年に「Bagong Lipunan」(新しい社会)を掲げ,同年9月の戒厳令布告を正当化するイデオロギーに据えた。当時,経済情勢の悪化,学生・労働闘争やイスラム系勢力による分離独立運動が活発化するなかでマルコスSr.大統領は,武装・反対勢力から国家を守り,包括的な社会変革により新しい社会を目指すとして同スローガンを掲げたのである。時代背景は異なるものの「広範な社会変革」を標榜している点で,マルコス現大統領の「Bagong Pilipinas」と独裁政権を正当化したイデオロギー「Bagong Lipunan」は類似している。その裏には,父マルコスSr.政権時の「独裁」イメージを塗り替えたいとする大統領の意図が見え隠れする。

また,抜本的な社会変革を目指すというよりも,高い支持率を背景に国民意識に訴え,大統領自身のリーダーシップ像の構築も狙っていると考えられる。2024年初頭,マルコス大統領は「Bagong Pilipinas」キャンペーン集会を実施し,上述した行政サービスの無償提供を行うとともに,国民1人ひとりの自己変革をとおした政府と国民の協働による社会改革・経済発展を訴えた。ただし,同キャンペーンはパフォーマンス的要素が強く,BPSFを含めて行政サービスの提供は参加者に限定される点で場当たり的で行政の質やその問題を根本から改善するとは言い難い。

「独裁」イメージの払拭を狙う動き

新スローガンの提示以外でも,マルコス家を「独裁」イメージから切り離すような動きがあった。9月に教育省は小学校6年生の社会の授業で使われる「マルコス独裁政権」(“Diktadurang Marcos”)という用語を,2026学年度から「独裁政権」に変更する省令を発出した。教員の利益を代弁する市民団体などは,このような変更はマルコスSr.独裁政権時の不正や弾圧をマルコス家から切り離す試みであり,歴史教育を歪めるとして批判の声を上げている。

10月中旬,フィリピン政府は2024年の祝祭日を発表し,例年祝日に設定されていた2月25日の「エドサ革命記念日」を除外した。1986年のこの日にマニラ首都圏エドサ通りに人々が押し寄せ父マルコスSr.独裁政権を追放した。それ以来,独裁政権時の被害者などを中心に記念日を祝ってきた。マルコス現政権はこの日が日曜日にあたるために祝日から除外したと説明したが,歴代の政権は「エドサ革命記念日」が日曜日に重なっても祝日に指定してきた。マルコス政権の一連の動きは,「独裁者」という負のイメージを払拭しマルコス一族のイメージの再構築を狙ったものだと指摘されている。

国軍の人事/年金制度改革

人事と年金制度の両面における国軍の制度改革の動きがあった。人事制度については,2023年5月に国軍統合参謀本部議長の任期を最長3年,陸海空の三軍総司令官とフィリピン士官学校の学校長などの任期を最長2年に改める法律(共和国法11939号)が成立した。2022年,ドゥテルテ前政権は国軍幹部(国軍統合参謀本部議長と上記の三軍総司令官にくわえて国軍統合参謀本部副部長)の任期を固定で3年と定めた(共和国法11709号)。しかし,前政権での国軍幹部の任期固定は人事の上方流動性を停滞させ,昇進の遅れが下級将校らの士気喪失を生み出すとして国軍内部で不満の声が上がった。それを緩和するために今回の法律制定に至ったと考えられる。また,本年の法律改正では,中将から准将までの将官の定年が共和国法11709号で定められた59歳から原則57歳に引き下げられる。

また,政府は軍人/制服組の年金制度改革を本格化させている。フィリピンでいう制服組とは国家警察,フィリピン沿岸警備隊,矯正局や消防局などの職員が含まれる。現行の年金制度は受給対象者が保険料を負担せず,国庫負担により賄われている。さらに,現役兵士の給与水準に応じて年金支給額が調整されるため,2018年にドゥテルテ前大統領が国軍の給与を倍増したことで年金支出額も増大し,大きな財政負担となってきた。現状では,年金給付額が国軍やその他対象となる組織の活動維持費や設備投資費の合計を上回っている。このような状況のなか,ジョクノ財務長官は,持続可能な財政運営のために以下の変更を提案した。(1)現役および新入の隊員・職員から保険料を徴収すること,(2)現役兵士の給与水準に応じた支給額調整の廃止,(3)保険料を公務員と同水準となる標準報酬月額の21%(被保険者9%,政府12%)にすることである。一方で,チョドロ国防長官は年金制度改革の必要性に一定の理解を示しつつも,2016年に停止したフィリピン国軍退職金制度(RSBS)の資産売却益や旧米軍基地の土地開発を主たる業務とする基地転換開発公社(BCDA)の収益を原資とすることで,年金支出を賄えるとの見解を示した。

2023年9月26日に下院は軍人/制服組の年金制度法案(下院法案8969号)を可決した。同法案では,現役兵士・制服組職員からの保険料の徴収を免除とし,徴収対象を新たに入隊する兵士や新規職員に限定すること,標準報酬月額の9%を保険料として徴収し,残りの12%を政府が負担して公務員と同水準とすることなどが記された。また,国軍と制服組に分けて2つの信託基金の創設を定め,保険料や政府貯蓄などをその運用原資とすること,そして国軍信託基金の運用原資にはRSBSの残余資産や国軍が所有する資産(土地や元米軍基地など)の売却益を充てることも記された。同法案では財務省が提案した現役隊員・職員からの徴収は取り入れられず,チョドロ国防長官の意向が多分に盛り込まれた。なお,上院では11月末に関連委員会における法案審議が終了し,12月末時点で本会議での審議待ちとなっている。

次期選挙をめぐる主導権争い

政権運営は盤石だが,2025年以降の選挙を見据えてすでに主導権争いが始まった。その対立の舞台となったのが下院で,アロヨ下院議員とドゥテルテ副大統領が,ロムアルデス下院議長の陣営からけん制を受けた。前者2人は父ドゥテルテ政権時に接近し,それ以来,共闘関係にある。

5月,元大統領であるアロヨ議員を議長に次ぐ職位である「上席副議長」から「副議長」に降格する決議が下院で成立した。アロヨがロムアルデス下院議長のリーダーシップに背くような動きを画策したとみられ,決議成立に至った。アロヨ降格の数日後にドゥテルテ副大統領は所属政党「ラカス」(Lakas-CMD)を離党し,その3週間弱後に「副大統領選挙への出馬にロムアルデスはまったく関与していない」と下院議長から距離を置く発言をした。2022年の選挙の際にアロヨが名誉会長,ロムアルデスが総裁を務める「ラカス」はドゥテルテの選挙キャンペーンを支援し,それをきっかけに彼女は同党のメンバーとなり議長を務めていた。また,ドゥテルテとアロヨが昼食を共にした写真が公開され,両者の親密ぶりを印象付けた。

教育長官を兼任する副大統領が予算案に組み込んだ副大統領府と教育省の機密費,それぞれ5億ペソと1億5000万ペソも下院での予算審議で問題視され,ロムアルデスとドゥテルテ―アロヨ陣営との確執が深まるきっかけとなった。副大統領はこれらの機密費を要求する理由として,社会格差の是正を目的として武装勢力やテロ活動対策を行う必要があり,教育活動は治安維持と切り離せず国軍や国家警察との連携が求められると説明した。学校,とりわけ大学などで市民団体や左派系グループの活動が活発であることがこの発言の背景にあると考えられるが,野党議員らは副大統領府や教育省が治安維持に関わるのはその職権の範疇を逸脱すると批判した。

さらに,副大統領府が大統領府から機密費として1億2500万ペソを2022年12月中旬に受け取り2週間弱で使い果たしていたことが明らかとなり,その使途を追及する動きが大きくなった。財務省が「副大統領府や関連事務所の運営費などの充当のために予算が支出された」と説明したのに対し,ドゥテルテ副大統領は「国家の治安対策のための予算であった」とし,両者の説明が食い違うなか,一部の国民からも批判の声が上がった。また,下院の一部で副大統領の弾劾動議を提出する動きが模索されたが,下院上層部はそのような話はないとして否定した。2023年11月中旬,副大統領は合計6億5000万ペソの機密費要求を取り下げ,予算審議の最終段階で同機密費は海洋安全保障関連の国防費に組み替えられた。

以上の過程において,副大統領サラの父であるドゥテルテ前大統領は下院を攻撃する発言を繰り返した。機密費を追及した野党議員フランス・カストロを「共産主義者」呼ばわりし「死に値する」と放言した。さらに,下院を「最も腐敗した政府機関」だと非難し,ロムアルデス下院議長が次期大統領を狙って共産主義勢力と手を組んでいると攻撃した。父ドゥテルテ前大統領による一連の発言を受けて,下院は10月に前大統領に対して「下院および議員の威信を貶める発言を慎むよう要求する声明」を採択するとともに,11月に「下院としての一体性を確認し,議会指導部への支持を確認する」決議を可決した。なお,アロヨは同決議に署名しなかったとしてついに副議長職までをも解かれたが,署名を拒否した理由は明らかにされていない。

一連の動きは,2025年の議会選挙とその先の大統領選挙を見据えたロムアルデス下院議長とドゥテルテ―アロヨの主導権争いだとみられる。マルコス大統領は静観していたが,一部の専門家はマルコス―ドゥテルテ連合「UniTeam」に亀裂が生じ始めたとみている。正副大統領は「連携は強固である」との声明をそれぞれに出しているが,2024年は次期選挙をめぐる駆け引きがさらに活発になると思われる。

ドゥテルテ前大統領の反対派への圧力の軽減

ドゥテルテ前大統領の反対派だった人物の保釈決定,無罪判決が相次いだ。その1人がドゥテルテ前政権による「麻薬撲滅戦争」に対する批判の急先鋒であったデリマ元上院議員であり,11月に釈放された。2017年2月,彼女は司法長官時代(2010~2015年)に麻薬密売を主導した容疑で逮捕され,度重なる保釈申請が却下され約6年9カ月勾留され続けた。もともと審理を担当したモンテンルパ地方裁判所裁判官ロメオ・ブエナベントゥラとデリマの麻薬密売容疑事件を「でっち上げ」たとみられるレイナルド・ウマリ元下院議員との親密な関係が指摘されており,判決の公平性が疑問視されていた。ドゥテルテ政権末期の2022年4月にデリマの麻薬密売を供述した重要証人達がその証言を覆すなか,彼女にかけられた容疑3件のうち1件が無罪判決となっていた(『アジア動向年報2023』参照)。もう1件についてもデリマの麻薬密売関与には「合理的な疑い」の余地が大きいとして2023年5月に無罪判決が言い渡された。最後の1件の審理が残るなかデリマの勾留は続いていたが,10月にデリマの麻薬密売への関与を供述した元警察官のロドルフォ・マグレオとノニロ・アリレはデリマに手紙を送り,供述を撤回する意思を伝えた。モンテンルパ地裁は,デリマと彼女とともに起訴された他の4人が麻薬密売を共謀したことを立証できないとして,彼女の保釈を認めた。なお,5月と11月の判決はそれぞれ別の裁判官が審理を担当し,この裁判官交代が保釈決定に大きく寄与したと考えられる。

インターネット・メディア「ラップラー」と同社のレッサCEOもまたドゥテルテ前政権による攻撃にさらされ続けたが,1月に税控訴裁判所は同社が資金調達のために外国投資機関に向けて発行したフィリピン預託証券(PDRs)について脱税があったとする嫌疑4件に無罪判決を下した。PDRsはフィリピンで発行した株式を裏付けとして海外からの資金調達を可能にする金融派生商品である。資金調達の際の所得を申告しなかったとして,2018年に司法省がレッサとラップラーを脱税容疑で起訴した。税控訴裁判所は一連の取引は所得収入ではないため付加価値税の課税対象にならず,検察が脱税を示す「合理的な疑いを超える証拠」を提示していないとして,司法省の訴えを棄却した。さらに9月,パシグ地裁が残る1件の脱税容疑について無罪判決を下し,レッサとラップラーはすべての脱税容疑について無罪判決を勝ち取った。

デリマやレッサは,ドゥテルテ前政権時に「麻薬撲滅戦争」の人権侵害を鋭く追及しドゥテルテ大統領の非難の的となってきた。そのため,彼女らの逮捕・起訴には政治圧力が働いたとみる向きもある。さらに,2018年にドゥテルテ前大統領に批判的であった最高裁判所長官が弾劾裁判を経ずに任期途中で解任されるなど,司法府もまた前政権によるけん制の対象となった。政権交代により,当時の批判勢力や司法判断への「政治圧力」が軽減されたことがデリマの保釈,レッサの無罪判決につながったと考えられる。

経 済

堅調な経済成長

2023年の実質GDP成長率は,政府目標の6~7%に届かず5.6%であった。前年より2ポイント低下し,新型コロナウイルス感染症拡大と行動制限による経済的打撃が大きかった2020年を除くと,2011年以来の低い水準である。アルセニオ・バリサカン国家経済開発長官はGDP成長率が伸び悩んだ背景として,食料品価格の高騰に起因した物価上昇やその抑制のための政策金利の引き上げを指摘した。海外就労者の送金が反映される海外純要素所得の伸び率は96.6%と大きく増加し,実質国民総所得(GNI)の成長率は10.5%であった。

支出別では,GDPの約7割を占める個人消費が5.6%増で前年より2.7ポイント減速した。前年はコロナ対応のための行動制限が撤廃されたことにより高い成長率となったが,2023年は個人消費の成長率が例年並みに戻ったといえる。その他は,政府消費が0.4%増,固定資本形成が8.1%増,輸出が1.3%増となり,すべての項目において成長率が鈍化した。

産業別では,すべての分野で成長率がプラスであったものの,前年と比べてやや鈍化した。農林水産業が1.2%増となり,鉱工業は3.6%増(うち製造業が1.3%増),サービス業が7.2%増であった。とりわけ,運輸・倉庫業と宿泊・飲食業の実質付加価値額がそれぞれ7677億ペソ(前年比13.1%増)と4051億ペソ(同23.4%増)でコロナ禍以前の水準に戻り,個人消費が鈍化したとはいえ,物流,サービス業の堅調さが際立った。

財貿易は,欧米での金融引き締めなどにより世界経済が減速し,重要な貿易パートナーである香港,アメリカ,日本,中国との貿易額がおおむね減少したことで輸出入総額が前年を下回った。輸入額が前年比8%減の1259億ドル,輸出額が同8%減の735億ドルであった。貿易赤字は縮小し,9%減の524億ドルとなった。経常収支の赤字額は112億600万ドルとなった。

失業率は年初4.8%であったが,その後,徐々に低下して11月に3.6%,12月には3.1%となり,年後半にかけて雇用状況が好転した。通年の完全失業率は4.3%となった。就業しているものの労働時間や仕事の追加を求める人々の割合を示す不完全就業率は12.3%であり,完全失業率,不完全就業率ともにフィリピン統計庁が「失業者」の定義を改定した2005年4月以降で最も低い水準となった。雇用者数の増加が大きかった分野は建設業(前年末比77万人増),農業・林業(同72万人増),宿泊・飲食業(同50万人増)であった。

2023年度予算の中央政府財政収支(現金ベース)は,収入が3兆8241億ペソ,支出が5兆3362億ペソで1兆5121億ペソの赤字であった(対GDP比6.2%)。近年の財政赤字拡大により,政府の債務残高は2022年度末比で8%増加し,14兆9657億ペソとなった。

インフレ率とコメ価格の上昇

消費者物価指数の上昇率(インフレ率)は,1月に8.7%で14年ぶりの高水準となった。2月も同水準であったが,徐々に落ち着き7月は4.7%となった。9月には再び6.1%まで上昇したが,10月に4.9%,12月には3.9%と落ち着き,年平均で6.0%となった。

インフレ率上昇の主要因は燃料費および食料品価格の高騰にある。年初にたまねぎ1キロあたりの小売価格が前年の3~5倍に,9月にはコメ価格が高騰した。フィリピン人の主食はコメだが,フィリピン統計庁の発表によると2022年時点でその自給率は80%程度で不足分は輸入に依存している。そのため,エルニーニョ現象による国内収穫高の減少や,7月末に実施された世界最大のコメ輸出国であるインドの一部輸出制限といった国内・国際要因の双方により,8月のコメ価格は前年同月比8.7%増で2018年11月以来の高水準となり,インフレ率を押し上げた。

9月5日,政府はコメ価格抑制のために精米(milled rice)と精白米(well-milled rice)の小売価格上限をそれぞれ1キロあたり41ペソと45ペソとする行政命令(EO39)を発出した。EO39発出時にバリサカン国家経済開発長官とともに政府間会議のために日本に滞在中であったベンハミン・ジョクノ財務長官は,事前の協議がなかったとして驚きを公にした。その後,ジョクノ財務長官やバリサカン国家経済開発長官は短期間のうちに適切に価格統制が行われれば,狙いどおりの政策効果が期待できるとした。しかし,財務省次官が価格統制の効果はないと批判して辞任に追い込まれるなど,政府内でも見解が統一されていなかったことが明らかになった。こうした経済閣僚の反応から,その経済効果について関係各所と事前協議せずに価格統制が拙速に決められたと考えられる。

10月4日,政府はコメの需給動向が落ち着いたとして上限価格規制を解除した。農業省の価格調査によるとマニラ首都圏での精米の小売価格は,8月下旬に1キロあたり42~55ペソであったが,規制解除後の約1カ月はおおむね41~45ペソで推移した。ただし,年末にかけてコメ価格が上昇し,12月はおおむね38~54ペソとなった。

マルコス政権の経済政策アジェンダ

1月末,マルコス政権の施政方針を示した『フィリピン開発計画2023~2028』が公表され,2028年の政権終了までに達成すべき経済の数値目標が示された。2024~2028年の経済成長率目標を年間平均でそれぞれ6.5~8.0%とし,2028年までに失業率を4~5%に,貧困率を9%台に引き下げることを目指す。インフレ目標は2~4%に定めている。財政面では,2022年第1四半期に6.5%であった財政赤字の対GDP比を2028年に3%に引き下げ,また,2022年9月時点で63.7%であった対GDP比債務残高を2028年末までに51.1%とする目標を掲げた。

「開発計画」の内容は経済分野にとどまらず社会やガバナンスのあり方まで含んでおり,主眼は「包摂的で柔軟かつ豊かな社会創出のための経済成長と社会変革」に置かれている。そのために(1)デジタル化の推進,(2)サービス化の促進,(3)質の高い雇用と革新的なエコシステムの創出,(4)連結性の強化,(5)中央・地方政府の連携強化,(6)民間との連携,の6つが重点分野に据えられた。

歴代政権においても同様の開発計画が策定されているが,マルコス政権のそれが過去の政権と異なるのは,数章を割いて人的資本開発や雇用対策が強調されている点にある。過去の政権においても経済成長や教育の拡充を通じた人的資本開発,貧困削減を重要課題とみなしてきたが,開発計画の1章分で論じるに過ぎなかった。マルコス政権では3章分を割いて,保健衛生環境,健康・栄養状態の改善をとおした社会的脆弱性の軽減を目指すとともに,教育,職業訓練の強化による人的資本開発や雇用創出に取り組む姿勢が打ち出された。

くわえて,マルコス政権が重要視するのがインフラ整備で,島嶼間の連結性を高めることで経済効率性が増し,経済発展の原動力になるという立場をとる。インフラ整備を同様に重視したドゥテルテ前政権下では,ODAなど公的資金が主な財源であった。マルコス政権下では新型コロナ対策のための財政出動により財政状況が厳しさを増すなか,官民連携(PPP)方式を活用したい方針である。国家経済開発庁のデータによると,2023年末時点で公表された198件のインフラ旗艦事業のうち,PPP方式またはハイブリッド方式(ODAや一般歳出とPPPを組み合わせたもの)で実施されたのは41件で全体の26%である。一方で,全体のうちODA案件が75件,公共投資が62件で合わせて過半数を占める。マルコス政権が発足当初からPPP方式を活用する方針を示してきたことに鑑みるとその割合が少ないように思われる。しかし,政府はGDPにおけるインフラ支出の割合を5~6%にする意向も示しており,公的資金とPPP方式の両輪でインフラ整備を加速させる計画である。また,マハリカ投資基金の運用が今後始まれば資金面でインフラ整備に資することになり,事業数が増加する可能性もある。

マハリカ投資基金の設立

7月中旬,マハリカ投資基金の設立を定める法律(共和国法11954号)が成立した。政府は『フィリピン開発計画』などの経済政策実施のための資金拠出を目的として同基金を設立し,経済発展の推進力と位置付ける。とりわけ,大型インフラ事業などの資金を同基金から賄うことで,ODAなどからの借入依存を軽減し,財政基盤の強化に役立つとする。

授権資本金は5000億ペソで,その内訳は3750億ペソ分を普通株式,1250億ペソ分を優先株式として発行し,政府が主な出資者となる。普通株式については,基金設立時にフィリピン土地銀行と政府(中央銀行の利息収入,カジノ事業を監督するフィリピン娯楽賭博公社の収益など)がそれぞれ500億ペソ分を,フィリピン開発銀行(DBP)が250億ペソ分を引き受ける。さらに,2000億ペソ分をフィリピン土地銀行とDBPが,残りの500億ペソ分を政府および政府系機関が順次引き受ける。優先株式については,政府,もしくは政府系企業,政府系金融機関などともに,民間金融機関も引き受けることができる。

基金の運用を担うのは新たに設立されるマハリカ投資会社(MIC)で,その業務執行に関わる意思決定機関として9人から構成される取締役会が設置された。構成メンバーは,会長に財務長官,副会長にMIC社長兼最高経営責任者(CEO),その他フィリピン土地銀行総裁,DBP総裁,さらに5人の取締役(2人が常勤,3人が社外)の合計9人である。MICのCEOと5人の取締役は大統領により任命される。くわえて,予算行政管理長官,国家経済開発長官,財務省財務局長をメンバーとする諮問機関も別途設置された。

法案の提出から成立まで約6カ月と比較的短期間で進展したマハリカ投資基金であるが,マルコス大統領がその設立を一時差し止めた。投資基金の設立を定める法律の実施規則・細則(IRR)が9月12日に発効される予定であったが,大統領が「資産運用の透明性を確保し,国の経済発展に寄与するという設立目的を遵守する措置が十分にとられているかを精査する必要がある」としてIRRの発効を一時差し止めたため,その発効が11月にずれ込んだ。その後,MICのCEOと取締役が大統領により任命され,CEOには2022年末に新設された「投資・経済大統領顧問室」の室長(Executive Director)ラファエル・コンシングJr.が就任した。そして12月20日,マルコス大統領により他の4人の取締役が任命され,それぞれ開発金融,企業訴訟法,会計監査などの分野で経験を積んだ人物が選ばれた。12月末時点で残り1つの取締役ポストがまだ空席となっている。

運営体制は整ったものの,マハリカ投資基金のガバナンスの透明性確保が危惧されている。マレーシアでは政府系独立ファンド「1MDB」を悪用した大規模な汚職事件が2015年に明らかとなり,同ファンドは債務超過と債務不履行に陥った。フィリピンでも政治的圧力を排除し,経済原則に基づいた運用を担保できるのかという疑念が生じている。また「マハリカ」という名称が,大統領の父マルコスSr.が第二次世界大戦時に率いたと主張する抗日ゲリラ部隊「マハリカ」に由来していると考えられるため,その名称から「マルコス一族色」が感じられ政治的中立性を欠いていると懸念の声が上がっている。政府はこれらの懸念に対し,取締役会を通じた意思決定により,資産運用の透明性と効率性が担保されること,さらに,マハリカ投資基金が会計検査委員会および議会監視委員会(Congressional Oversight Committee)の監査対象になることを説明している。

対外関係

アメリカとの連携強化

2022年の政権発足当初,マルコス政権がアメリカもしくは中国のどちらと歩調を合わせるのかに注目が集まったが,2023年にはとりわけ安全保障面で同盟国アメリカとの連携強化の姿勢が鮮明となり,対外関係においても対中接近を進めたドゥテルテ前政権からの転換が図られた。

フィリピン政府は1月末,防衛協力強化協定(EDCA)に基づきアメリカ軍が使用できる基地を5カ所から9カ所に拡大した。2014年に締結されたEDCAは,巡回ベースでアメリカ軍がフィリピン国軍基地の施設を使用することを定めている。アメリカ軍が使用可能な既存の5カ所の軍事基地は,ルソン島に2カ所,ビサヤ諸島に2カ所,ミンダナオ島に1カ所と地理的に分散しているのに対し,新たに追加された基地は北に台湾を臨むルソン島北部に3基地が集中し,残りひとつのバラバク島は中国との領有権問題を抱えるスプラトリー(南沙)諸島を臨むパラワン島先端に位置する(図2)。その地政学的条件から中国の動きを念頭に置いた基地の選定といえるだろう。比米両政府は,軍事基地の対象拡大は共同訓練や人道支援,災害対応の強化を目的とするもので,攻撃力のある兵器を配置しないと説明しているが,フィリピン政府はEDCAの対象となる軍事施設の増加は防衛力の強化に役立つとしている。

図2 EDCAにより新たに米軍使用の対象となる4つの軍事施設

(出所) Philippine Information Agency(https://pia.gov.ph/news/2023/04/04/govt-names-4-edca-locations)の資料より筆者作成。

4月,定例の比米合同軍事演習「バリカタン」が過去最大となる約1万8000人(フィリピン軍5500人,アメリカ軍1万2000人)規模で実施された。12年ぶりとなる大統領視察の下,敵の軍艦に見立てた船舶を撃沈するなど,初の実弾射撃訓練が行われた。なお,フィリピン軍やアメリカ軍にくわえて,オーストラリアからも100人超が加わり,日本やインド,東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国もオブザーバーとして参加した。

5月,5日間の日程でマルコス大統領がアメリカを訪問した。ジョセフ・バイデン米大統領やロイド・オースティン米国防長官との会談では,経済・安全保障面でいくつかの合意が成立した。経済面では,米国貿易開発庁(USTDA)から鉄道などの公共交通機関の敷設や港湾の建設を主な対象とした30億ドルの支援の約束,また民間企業からクリーン・エネルギー技術開発や小型原発建設への13億ドルの投資の約束を取り付けた。安全保障面で両国は「比米二国間防衛指針」を締結し,アメリカがフィリピン軍の近代化を支援するとともに,相互運用可能な軍事プラットフォームの構築を推進する。特筆すべきは,南シナ海でフィリピンの船舶が攻撃を受ければ,比米相互防衛条約の適用対象になると明記された点である。フィリピンはアメリカの同盟国であるものの,有事の際にアメリカが守ってくれるのかという疑念が国内ではくすぶり続けている。さらにアメリカによる経済協力についても,ODA供与額の大半を占める日本やアジア開発銀行(ADB)に比べて,その規模は微細であり続けた。軍事連携の強化,大統領による訪米をとおして,マルコス政権は経済・軍事面での支援をアメリカから引き出すことに成功したといえる。

中国との緊張の高まり

アメリカとの連携の深化に反比例するように,中国とは南シナ海での係争海域において緊張が高まり,外交を通じた対話が模索された。1月,マルコス大統領は国賓として中国を訪問し,習近平国家主席などと会談した。その際に,農業,観光,エネルギー,海洋安全保障などの分野で14の合意を締結し,中国政府から228億ドルの投資・経済協力の約束があったと報じられている。その金額は莫大であるものの,ドゥテルテ前政権初期にも中国による約束された大型の経済協力の大半が前政権終了までに実行されなかったため,マルコス政権においてもどの程度実行されるかは不確かといえる。また,係争海域で「事件」が起こった際の実務窓口として外交当局間を直接繋ぐホットラインの設立が合意された。

対話を通じた南シナ海領有権問題への対応が比中政府の基本姿勢ではあるものの,フィリピンとアメリカの接近に警戒感を示す中国は圧力を強めている。その矛先となったのが,フィリピン政府が主権主張のために1999年にアユンギン礁に座礁させた艦船シエラマドレ号とそれに対する補給活動である。シエラマドレ号には海兵隊員が交代で駐留を続けているため,定期的に乗組員に物資が補給されているが,2023年には中国により補給活動が相次いで妨害された。

2月には中国海警局の船がフィリピン沿岸警備隊の船舶に「軍事用」レーザーを照射する事件が発生し,隊員が一時失明したと報じられた。これを契機にフィリピン政府は「トランスペアレンシー・イニシアティブ」のもとで,係争海域での中国の行動を積極的に公開する方針に転換し,中国船によるフィリピン船舶への放水銃による威嚇や航行の妨害,妨害行為に誘発される形での両国船舶の衝突に関する映像が国内外でたびたび共有されることとなった。放水銃の使用については,8月,11月と12月には2回被害を受けた。8月にフィリピン船舶に対して放水銃が使用された2日後に,中国政府はフィリピン政府がシエラマドレ号の撤去を過去に約束したにもかかわらず,それを果たしていないとしてフィリピン側を非難した。マルコス大統領はそのような合意は存在せず,万が一そのような合意があったとしても今すぐ破棄すると応じた。12月は,9日に船舶3隻が中国海警局船より合計8回,放水銃を発射され,10日にもシエラマドレ号への物資補給船に対して放水銃による同様の事件があった。また,比船舶と中国公船との衝突事件が10月22日と12月10日に発生した。中国による示威行為が10月以降に集中していることから,とりわけ年後半にかけて南シナ海の係争海域で緊張が高まったことが分かる。なお,フィリピン政府は2月,8月,12月に黄渓連・駐比中国大使を召喚し,中国海警局船によるレーザー照射や放水銃の使用を抗議した。

中国との対立が深まるなか,比中政府間の非難の応酬が激化した。中国政府は,南シナ海での係争の原因は中国の主権を侵害するフィリピンにあり,同海域での出来事に関する事実を捻じ曲げたり誇張したりするのを止めるように警告した。アメリカ政府に対しては,南シナ海問題の部外者であり中国の主権や利害を侵害するような動きを慎むよう釘をさした。それに対してフィリピン政府は,中国による一連の行動は不当で乗組員を危険にさらすものであり,中国政府が緊張緩和に向けた対話,外交手段を軽視していると応戦した。

係争海域での状況打開を模索し,11月のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議でマルコス大統領は習国家主席に南シナ海問題の現状に関する懸念を伝えたが,習主席から反応がなかったと報道されている。12月中旬,エンリケ・マナロ外務長官は王毅共産党政治局員兼外相と電話会談した際,「中比関係は重大な局面に差しかかっており,行動を慎重に選択すべきだ」との警告を受けたとされる。同時に,緊張緩和に向けた対話実施が呼びかけられ,早期の実現を目指すことで合意した。

緊張緩和の糸口が見いだせないなか,12月にマルコス大統領は中国との対話の継続が重要だとしながら,伝統的な外交手段には限界があるとして南シナ海での状況の打開に向けた「新しいパラダイム」への転換が必要だとの見解を示した。その具体的な内容には言及しなかったが,周辺海域の平和と安定を追求する「同志国」との協力を重視する立場から,アメリカをはじめとする西側諸国との連携深化が政権の基本路線として維持されると考えられる。

日本とは安全保障面でも協力関係を拡大

日本はフィリピンにとって最大のODA供与国だが,2023年には経済面にとどまらず防衛面でも協力関係が拡大された。2月,マルコス大統領は実務訪問賓客として日本を訪れ,日本政府から43億ドル(6000億円)の支援が表明された。農業・通信技術分野に関する協力覚書を締結するとともに,パンパンガ州クラーク国際空港からラグナ州カランバを結ぶ,マニラ首都圏の南北通勤鉄道計画への支援(3770億円)が約束された。4月には初めてとなる外務・防衛担当閣僚協議(2+2)が実施され,「円滑化協定」(RAA)および「物品役務相互提供協定」(ACSA)の締結に向けた準備を開始することが確認された。RAAは共同訓練や災害支援のためにフィリピン国軍や自衛隊が相手国で活動する際の出入国手続きや法的地位を定めるものであり,ACSAは締結国間で役務や物資を融通しあう取り決めで,2つの協定により防衛協力をより円滑に進めることが期待される。

11月,2日間の日程で岸田首相が来訪し,マルコス大統領と会談した。首脳会談では,日本政府が今年度に創設した「同志国」の安全保障能力の向上を後押しする「政府安全保障能力強化支援」(OSA)を通じて沿岸監視レーダーの無償供与を受けることで一致した。また,RAAの正式交渉を開始することが合意された。

12月中旬,OSAの枠組みのもとで日本製の警戒管制レーダーがルソン島西部のワレス空軍基地に設置された。さらに3基のレーダーが日本の支援により設置される見通しである。また,フィリピン沿岸警備隊は日本の海上保安庁と海洋警備でのさらなる連携強化を目指す覚書を締結した。日本から大型巡視船などの供与や訓練などへの支援が行われる見通しである。

海洋安全保障における多国間連携体制の構築を推進

日米との二国間関係の深化とともに,フィリピンは西側諸国との関係強化を通じた海上防衛の能力強化を目指す方針である。その一例が海洋安全保障のための多国間連携の枠組みとして始動した「海事協力活動」(Maritime Corporation Activities)で,インド太平洋の秩序維持と安定を目指す「同志国」との間で海洋訓練を行うものである。この枠組みのもとで,11月にアメリカ軍とオーストラリア軍との初の合同海洋訓練をそれぞれ実施した。さらに,2024年1月初旬にも2日間の日程でアメリカ軍と合同海洋パトロールを行った。アメリカをはじめとする西側諸国は南シナ海係争海域での中国の示威活動に対する非難を強めている。12月に放水銃発射事件や船舶衝突事件が発生したあと,アメリカ,日本,オーストラリア,フランスなどの14カ国がフィリピンへの支持を表明した。さらに,バイデン米大統領は比米の軍事連携は鉄壁であり,フィリピンへの攻撃があった場合,アメリカは相互防衛条約に基づいて行動を起こすと明言した。「トランスペアレンシー・イニシアティブ」により係争海域での中国の示威活動が国内外に広く知られることとなり,西側諸国からの支持が得られやすくなったといえる。

2024年の課題

2024年は,中間選挙と位置付けられる2025年の国政・地方統一選挙に向けた勢力争いがより活発になると考えられる。通常,大統領陣営と対抗勢力は自派閥を形成して中間選挙を闘い,その結果が次期大統領選挙の試金石となるため,マルコス-ロムアルデスとドゥテルテ-アロヨの競合関係がより先鋭化すると考えられる。パルス・アジアの調査によると,ドゥテルテ副大統領は次期大統領候補として最も人気が高く,彼女がどのような動きをみせるのかが注目される。

また,2024年の年明けから,下院主導による「憲法改正」に向けた動きが顕在化した。憲法改正の発議のために必要な全人口12%の人々の署名を集める「近代化と改革のための人々によるイニシアティブ」(PIRMA)運動が展開され,住民からの支持獲得のためにロムアルデス下院議長の事務所が資金提供を行ったことが問題視されている。マルコス大統領は今日の経済環境に適合させるために経済関連条項に限り憲法修正を支持する立場をとっている。過去の政権においても憲法修正が議題として取り上げられたが,そのどれもが頓挫した。現政権においても,その行方が注目される。

経済は好調を維持すると思われる。2023年9月から低下傾向にあるインフレ率は2024年1月には2.8%となり2020年10月以来の低水準となった。物価が安定し政策金利が引き下げられれば,個人消費とともに企業活動のさらなる活性化が見込まれる。ただし,政府はエルニーニョ現象の長期化や世界経済の減速などにより経済成長の大幅な伸びには慎重な見方を示す。

対外関係では,引き続き南シナ海問題への対応が安全保障上の懸案事項となる。これまでどおり,アメリカ,その他の西側諸国と歩調を合せた対応が基本路線となろう。中国からの強い反発が予想されるが,マルコス政権が中国とどのように向き合うのかが注目される。

(地域研究センター)

重要日誌 フィリピン 2023年

   1月
2日 ミンダナオ島北部などで発生した洪水と地滑りによる犠牲者合計数が少なくとも52人に。
4日 マルコス大統領,国賓として訪中(~5日)。
6日 マルコス大統領,国軍統合参謀本部議長に同職を以前務めたアンドレス・センティノを任命。
9日 ホセ・ファウスティノJr.国防長官代行,辞任。
9日 マルコス大統領,国防長官代行に和平・和解・融和のための大統領顧問のカルリト・ガルベスJr.を任命。
10日 マルコス大統領,チェロイ・ガラフィル大統領コミュニケーション長官代行を同長官に正式任命。
18日 税控訴裁判所,ラップラー社とレッサCEOの脱税容疑4件について無罪判決。
25日 サンディガンバヤン(公務員特別裁判所),大統領行政規律委員会が差し押さえた2000億ペソの資産に対するイメルダ・マルコス元大統領夫人と娘アイリーンによる返還請求を棄却。
26日 国際刑事裁判所(ICC)予審裁判部,ドゥテルテ前政権下の「麻薬撲滅戦争」の人権侵害に関する捜査再開を決定。
27日 大統領,「フィリピン開発計画2023~2028」(EO 14)に署名。
31日 ロイド・オースティン米国防長官,来訪。
31日 マルコス大統領,社会福祉開発長官にレクソロン・ガチャリアン元下院議員を任命。
   2月
3日 メナルド・ゲバラ司法長官,ICC予審裁判部の捜査再開決定の取り消しを求める審判請求書をICCに提出。予審裁判部,8日に請求書を棄却。
7日 司法省,特殊詐欺グループの主犯格とみられる日本人容疑者2人を日本に送還。8日夜,さらに容疑者2人を送還。
8日 マルコス大統領,訪日(~12日)。
13日 マルコス大統領,ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談。
14日 政府,2月6日の中国海警局船舶によるフィリピン沿岸警備隊(PCG)への「軍事用」レーザー照射に対して外交ルートを通じて抗議。大統領,黄渓連・駐比中国大使を召喚。
16日 金融委員会,政策金利の0.5ポイント引き上げ,翌日物借入金利を6%に。
21日 上院,地域的な包括的経済連携(RCEP)協定,批准。6月2日に発効。
   3月
1日 マレーシアのアンワル・イブラヒム首相,来訪(~2日)。大統領と会談。
13日 政府,ICC予審裁判部に1月26日の決定の差し止め,取り消しを求める審判請求書を再提出。予審裁判部,27日に請求書を棄却。
22日 第23回比中外務省会合,マニラで開催(~24日)。
23日 金融委員会,政策金利の0.25ポイント引き上げ,翌日物借入金利を6.25%に。
29日 バシラン島付近でフェリーが火災により沈没。少なくとも28人死亡。
   4月
3日 上院議員団,訪日(~5日)。5日に岸田首相を表敬訪問。
10日 ガルベス国防長官代行,マナロ外務長官,2+2会合のために訪米。
11日 比米両軍による共同演習「バリカタン」開始(~28日)。
16日 チェコ共和国のペトル・フィアラ首相,来訪(~18日)。マルコス大統領と会談。
21日 中国の秦剛国務委員兼外相(当時),来訪。マナロ外務長官と大統領と個別に会談。
24日 マルコス大統領,国家警察長官にベンハミン・アコルダJr.諜報局長を任命。
27日 マルコス大統領,「水資源管理室」の設置を定める行政命令(EO22)に署名。
29日 自民党の萩生田光一政調会長,来訪。ドゥテルテ副大統領などと会談。
30日 マルコス大統領,訪米(~5月5日)。
   5月
5日 マルコス大統領,訪英(~7日)。チャールズ3世国王の戴冠式に出席,リシ・スナク英首相と会談。
10日 マルコス大統領,インドネシアでの第42回ASEAN首脳会議に参加(~11日)。ベトナムのファム・ミン・チン首相と個別に会談。
10日 エドゥアルド・アニョ国家安全保障顧問,ドゥテルテ副大統領が「共産党系反政府勢力の反乱を鎮圧するための国家タスクフォース」(NTF-ELCAC)共同副議長に任命されたと発表。
12日 ASEAN加盟国(ミャンマー以外),比領海で海軍による合同訓練実施(~13日)。
12日 モンテンルパ地方裁判所,デリマ元上院議員の違法麻薬取引1件の容疑について無罪判決。
14日 PCG,10~12日に南沙(スプラトリー)諸島海域に浮標5基設置と発表。
17日 大統領,国軍統合参謀本部議長の任期を最長3年,それ以外の国軍幹部の任期を最長2年に改める法律(RA11939)に署名。
24日 フィリピン入国管理局,特殊詐欺に関わった日本人容疑者4人を日本に強制送還。
   6月
1日 比米日の沿岸警備隊などによる海洋合同演習をバターン州沖合で初めて実施。
2日 ガルベス国防長官代行,アジア安全保障会議に出席(~4日)。浜田靖一防衛大臣(当時),オースティン米国防長官,リチャード・マールズ豪副首相兼国防大臣と会談。
4日 エリ・コーヘン・イスラエル外相,来訪(~5日)。大統領を表敬訪問。
5日 マルコス大統領,国防長官にギルベルト・チョドロJr.元国防長官,保健長官に新興感染症に関する省庁間タスクフォース元アドバイザーのテオドロ・エルボサを任命。
7日 モンテンルパ地裁,デリマの保釈請求を却下。
8日 金融委員会,預金準備率の引き下げ決定。商業銀行とユニバーサル銀行(拡大商業銀行)の預金準備率をそれぞれ2.5ポイントずつ引き下げ,9.5%に。
16日 アニョ国家安全保障顧問,訪日。比米日3カ国の安全保障担当高官会議に参加。
26日 マルコス大統領,国防長官代行だったカルリト・ガルベスJr.を和平・和解・融和のための大統領顧問に再任命。
26日 国家警察,外国籍犯罪者を含むオフショアゲーム事業(POGO)の従業員2700人以上を取り押さえ・保護。
27日 観光省,新しい観光スローガン「ラブ・フィリピン」を公表。
30日 座礁船シエラマドレ号への物資補給船が中国海警局船により進路を妨害される。
   7月
2日 比米空軍によるコープ・サンダー演習実施(~21日)。
3日 マルコス大統領,中央銀行総裁に金融委員会委員のエリ・レモロナを任命。
4日 マルコス大統領,金融活動作業部会(FATF)の監視強化対象国(グレイリスト)指定からの除外を目指す,反資金洗浄・反テロ資金供与,拡散防止のための国家金融戦略(NACS)を立ち上げる行政命令(EO33)に署名。
5日 チョドロ国防長官,黄中国大使と会談。
6日 チョドロ国防長官,オースティン米国防長官と電話会談。
7日 マルコス大統領,包括的農地改革プログラム下で配分された農地代の未納費用の償還を免責する「新農地受益者解放法」(RA11953)に署名。
17日 ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領,習近平国家主席と中国・北京で会談。
18日 マルコス大統領,マハリカ投資基金法(RA11954)に署名。
18日 最高裁判所,大統領行政規律委員会が申し立てた,フェルディナンド・マルコスSr.元大統領と妻イメルダが不正取得したと考えられる10億ペソの資産の返還請求を証拠不十分で棄却。
21日 マルコス大統領,ロメオ・ブラウナーJr.陸軍総司令官を国軍統合参謀本部議長に任命。
21日 国軍,アメリカとオーストラリアが主導する多国間軍事演習にオブザーバーとして初めて参加(~8月4日)。
24日 第19議会第2会期開会。上下両院議長は留任。
24日 マルコス大統領による施政方針演説。
25日 マルコス大統領,マレーシア訪問(~27日)。アブドゥラ国王に謁見,アンワル・イブラヒム首相と会談。
25日 台風5号(フィリピン名:エガイ),上陸。イロコス・スル州,ルソン島南部で少なくとも死者36人,1万2000人以上が避難。
31日 ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長,来訪(~8月1日)。大統領と会談。
   8月
5日 PCG,シエラマドレ号に物資を輸送していた船舶が中国海警局の船から放水銃を発射され,補給活動が妨害されたと公表。外務省,黄中国大使を召喚。
10日 マルコス大統領,「国家安全保障政策2023~2028」(EO37)に署名。
14日 国軍,オーストラリア軍と合同軍事演習「アロン」実施。
16日 公明党の山口那津男代表,来訪(~17日)。大統領と会談。
22日 スーザン・オプレ移住労働者長官,乳がんにより死去。
29日 ジェームス・クレバリー英外相,来訪。大統領やマナロ外務長官と個別に会談。
   9月
4日 マルコス大統領,インドネシアを訪問し第43回ASEAN首脳会議に参加(~7日)。韓国と自由貿易協定を締結。岸田首相やハリス米副大統領と個別に会談。
4日 海軍,パラワン島の沖合で米海軍と共同訓練を実施。
6日 教育省,社会の授業で使用される用語「マルコス独裁政権」を2026学年度から「独裁政権」に変更する省令発出。
6日 大統領,移住労働者長官代行にハンス・レオ・カクダク次官を任命。
7日 オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相,来訪(~8日)。大統領と8日に会談し,「戦略的パートナーシップ」に調印。
12日 パシグ地裁,ラップラー社とレッサCEOの脱税容疑について無罪判決。
13日 マルコス大統領,シンガポール訪問(~17日)。アジア・サミットに出席。F1レースを観戦,リー・シェンロン首相と立ち話。
18日 マナロ外務長官,大統領に代わり第78回国連総会に出席。23日に演説を代読。
19日 国軍,ASEAN加盟国による合同演習に参加(~24日)。
22日 PCG,中国により設置されたと思われる全長300メートルの浮遊障害物をスカボロー礁で発見。大統領の命令により25日に撤去。
  10月
2日 国軍,米海軍と合同演習を実施(~13日)。
16日 オーストラリア軍と小規模の二国間軍事演習を実施(~27日)。
19日 マルコス大統領,サウジアラビアでのASEAN・湾岸協力会議(GCC)首脳会議に出席(~21日)。
22日 シエラマドレ号への補給船が中国漁船と衝突。
23日 アニョ国家安全保障顧問,ジェイク・サリバン米国家安全保障担当大統領補佐官と電話会談。
26日 金融委員会,政策金利の0.25ポイント引き上げ,翌日物借入金利を6.5%に。
26日 マルコス大統領,政府補助金の基準となる地方自治体の収入水準別分類を改定する法律(RA11964)に署名。
27日 チョドロ国防長官,オースティン米国防長官と電話会談,声明を公表。
30日 バランガイ議会・青年評議会選挙,実施。
  11月
3日 岸田首相,来訪(~4日)。3日に大統領と会談。
10日 PCG,中国海警局船舶が放水銃を使用しシエラマドレ号への補給活動の妨害があったと公表。
14日 マルコス大統領,サンフランシスコでのAPEC首脳会議(15~17日)に参加。その後ハワイ州に移動し,米インド太平洋軍の司令部を訪問(~19日)。
15日 チョドロ国防長官,インドネシアで行われた第17回ASEAN国防相会議に参加(~16日)。オースティン米国防長官と会談。
21日 国軍,米軍と台湾に近い海域を含む南シナ海で合同パトロールを実施(~23日)。
23日 政府,ノルウェーにてフィリピン共産党=民族民主戦線と和平交渉再開に関する合意文書を締結。
25日 国軍,オーストラリア軍と初の合同海洋パトロールを実施(~27日)。
  12月
3日 マラウィ市でマウテ・グループのメンバーによる爆破事件が発生し,4人死亡。
5日 マルコス大統領,インフラ整備事業における官民連携(PPP)方式の制度枠組みを規定したPPP法(RA11966)に署名。
5日 マルコス大統領,eコマースの環境整備を促進するインターネット取引法(RA11967)に署名。
5日 マルコス大統領,新型コロナウイルス感染症に罹患し隔離(~10日)。
9日 PCG,中国海警局船舶によるフィリピン船3隻への合計8回の放水銃の使用に対して攻撃的だとして非難。
10日 シエラマドレ号への補給船が中国公船より最大級の出力で放水銃を発射され2隻のエンジンとマストがそれぞれ損傷,両国船舶が衝突。外務省,11日に黄中国大使を召喚。
15日 マルコス大統領,「投資・経済大統領特別補佐官室」(OSAPIEA)を新設する行政命令(EO49)に署名。同補佐官に不動産開発ロビンソンズ・ランドのフレデリック・ゴー社長兼CEOを任命。
16日 マルコス大統領,日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議のため訪日(~18日)。岸田首相と会談。
17日 PCG,日本の海上保安庁と海洋警備でのさらなる連携強化を目指す覚書締結。
20日 マルコス大統領,2024年度一般歳出法(RA11975)に署名。予算規模は5兆7680億ペソ。
20日 マナロ外務長官,中国の王毅共産党政治局員兼外相と電話会談。

参考資料 フィリピン 2023年

① 国家機構図(2023年12月末現在)

(注) 各省には主要部局のみを記す。

② 国家機関要人名簿(2023年12月末現在)

③ 地方政府制度(2023年12月末日現在)

(注) フィリピンは全部で82州,149市,1485町,4万2001バランガイにより構成される。

1) マニラ首都圏の各市町は独立しており,マニラ首都圏開発庁は各地方政府首長が参加する中央政府の機関。

主要統計 フィリピン 2023年

1 基礎統計

(注) 1)2015年人口センサスを基にした年央の推計値。 2)2024年3月中旬次点で2023年の年間データが未公表のため,2023年労働力人口は月次の平均値(暫定値)を使用。2018~2020年については,就業者数と失業者数を足し合わせた数値を使用。 3)2023年は暫定値。 4)基準年は2018年。

(出所) 人口,労働力人口,失業率,消費者物価上昇率:Philippine Statistics Authority(PSA)のウェブ版統計データ(https://psa.gov.ph)。為替レート:Bangko Sentral ng Pilipinas (BSP)のウェブ版統計データ(https://www.bsp.gov.ph/SitePages/Default.aspx)。

2 支出別国民総所得(名目価格)

(注) 統計誤差を除く。

(出所) PSAのウェブ版統計データ(https://psa.gov.ph)。

3 産業別国内総生産(実質:2018年価格)

(出所) 表2に同じ。

4 国際収支

(注) IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。したがって,金融勘定と資本移転等収支の符号は(+)は資本流出,(-)は資本流入を意味する。2022年は修正値,2023年は暫定値。

(出所) BSP,Statistics, External Accounts, Balance of Payments,ウェブ版。

5 国・地域別貿易

(注) 2022年は修正値,2023年は暫定値。東南アジアはASEANのデータ。ASEANは4カ国以外にブルネイ,カンボジア,ラオス,ミャンマー,ベトナムを含む。

(出所) BSP,Statistics, External Accounts, External Trade,ウェブ版。

 
© 2024 Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization
feedback
Top