2024 Volume 2024 Pages 369-398
2023年は翌年の大統領選挙と議会選挙を控え,政党や候補者間の激しい駆け引きが展開された。立候補が決定した大統領候補は,国防相のプラボウォ・スビアント,前中ジャワ州知事のガンジャル・プラノウォ,前ジャカルタ州知事のアニス・バスウェダンの3人である。副大統領選定に際して,ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)現大統領の長男であり,選挙法の立候補要件を満たさないギブラン・ラカブミンについて,憲法裁判所は立候補を可能にする異例の決定を行い,波紋を呼んだ。他にも,汚職撲滅委員会(KPK)委員長の収賄容疑やレンパン島土地収用に伴う住民との衝突など,ジョコウィ政権下での民主主義の後退や行き過ぎた開発主義を象徴する出来事が連続して発生した。
2023年の実質国内総生産(GDP)成長率は5.05%となった。国際商品価格の下落により輸出額が減少したが,堅調な民間消費が経済成長を支えた。適切な財政および金融政策により,財政赤字は予想を下回り,インフレ抑制にも成功した。しかし,食料価格安定化の一環でコメの輸入量が過去25年で最大に達した。さらに,ニッケル川下産業を育成し電気自動車産業を域内ハブに発展させるという政権の目玉政策においては,ニッケルの高付加価値化や電気自動車の普及が十分に進んでいないことなど多くの課題が存在している。一方で,東南アジア初の高速鉄道が開通するなど,ジョコウィ政権のレガシーとなる目玉インフラプロジェクトが完成した。
対外関係では,ASEAN議長国を務め,域内の経済統合と社会課題解決に向けた協力枠組みの構築で進展をみせたが,ミャンマー問題や南シナ海問題では打開策を見出せなかった。また,OECD加盟申請に向けた動きが話題となり,EUとの貿易紛争が新たな展開を迎えている。その他,日本との外交関係が65周年を迎え,天皇皇后の親善訪問が実施された。
2023年は翌年2月14日に実施される5年に一度の大統領・議会選挙を控え,正副大統領候補の選定に向けた政党や政治家同士の駆け引きがピークを迎えた。
10月19日から25日までの間に正副大統領立候補者の登録が行われ,最終的に決定された正副大統領候補のペアは3組となった。立候補登録番号の1番は前ジャカルタ州知事のアニス・バスウェダンと民族覚醒党党首ムハイミン・イスカンダルのペアで,ナスデム党,民族覚醒党,福祉正義党が擁立した。登録番号2番は国防相でグリンドラ党党首のプラボウォ・スビアントとソロ市長ギブラン・ラカブミンのペアで,グリンドラ党,ゴルカル党,国民信託党,民主主義者党,連帯党などが擁立した。登録番号3番は前中ジャワ州知事のガンジャル・プラノウォと政治・法務・治安担当調整相マフッド・MDのペアで,闘争民主党,開発統一党などが擁立した。
それぞれの候補の選定過程で国民の注目を集めたのはジョコウィ現大統領の実質的な支持の行方だった。ジョコウィ政権は70〜80%の支持率を維持し,極めて強い国民の支持を得ている。この支持率の高さは,安定した経済成長やインフレ抑制など経済的な成果を反映したものである。その一方で,有力な野党勢力が不在であるうえ連立与党が国会の8割を占め,政府も人権活動家などからの批判を押さえつけるような行動をとり続けている。政策に対する批判的意見が表出しにくい政治状況となっていることも,政権の支持率の高さに結びついている。
2021年から2022年初頭にかけて,ジョコウィは,新型コロナウイルス禍を理由とする選挙の延期や,憲法改正による大統領3選の実現を目指していた。しかし,そうした試みは政治エリートからも国民世論からも支持を得ることができず,断念せざるをえなかった。2期の任期満了で退任を余儀なくされるジョコウィは,首都移転や2045年までに5大経済大国入りを目指す「黄金のインドネシア2045」ビジョンをはじめとする野心的な政策を継承する候補を求めることに方向転換した。選挙法により,現職大統領は選挙プロセスにおいては中立であることが求められている。しかし,ジョコウィは建前上の中立を保ちつつも,実質的には特定の候補を支持していることを示唆する発言を2022年半ば以降繰り返していた。
ガンジャルとアニスの立候補をめぐる紆余曲折ジョコウィが当初期待を寄せたのは,同じ闘争民主党所属で,年初の世論調査で最も人気が高かったガンジャルと,2022年8月に出馬を表明した現職閣僚のプラボウォである。2人ともジョコウィと良好な関係を築いており,ジョコウィは両者が正副大統領のペアを組むよう水面下で働きかけていたとされる。
しかし,両者の間で大統領候補をめぐって折り合いが付くはずはなかった。プラボウォは過去2度,大統領候補として出馬しながら敗北しており,今回は「3度目の正直」での勝利を目指していた。一方,メガワティ・スカルノプトゥリ党首率いる闘争民主党は,過去2度の議会選挙で最大与党として勝利を収め,また大統領選でも擁立したジョコウィを勝利に導いた実績があることから,自党の候補が副大統領となることに満足するはずはなかった。そのため,両者が選挙で対決することは避けられなかった。年初の時点では,ジョコウィが実質的に支持する候補が誰になるかは明確ではなかった。
状況を一変させたのは,5月にインドネシアで実施される予定だったサッカーの20歳以下(U-20)男子ワールドカップへのイスラエル参加をめぐる事件である。国交を持たないイスラエル代表団の参加に対して,ガンジャルを含む闘争民主党の政治家がこぞって反対した。ジョコウィはスポーツと政治の分離を訴えたが,闘争民主党は「イスラエル拒否」の姿勢は建国の父スカルノの意志に沿った反植民地主義の立場に基づくものであるとして正当化した。この一件が引き金となり,国際サッカー連盟(FIFA)は3月29日にU-20ワールドカップのインドネシア開催を中止すると決定した。闘争民主党はジョコウィ政権が準備していた目玉イベントを頓挫させた形となり,これ以降,ジョコウィと闘争民主党,特にメガワティ党首との間の亀裂が深まった。
その亀裂の背後には,大統領選の「キングメーカー」をめぐる争いがあった。ジョコウィは闘争民主党に擁立されて2014年と2019年の大統領選挙に出馬したが,元々同党の党員ではなく政治的アウトサイダーだった。メガワティはジョコウィ政権の立役者として自負していたが,ジョコウィはメガワティのイエスマンとはならず,両者の間では政権人事をめぐり不和が生じたこともあった。退任後も政治的影響力を保持したいジョコウィと,国会第1党の党首として次期政権への影響力を行使したいメガワティの間で,2024年大統領選の候補者選定に関する主導権争いが再燃したのである。
4月21日に,闘争民主党はガンジャルを正式に大統領候補として擁立することを発表した。ガンジャルの擁立にはジョコウィはほとんど関与していなかったため,ガンジャルはジョコウィではなくメガワティに忠誠を誓った候補としてみられるようになった。同時に,ジョコウィの実質的な支持の行方は,自ら影響力を行使できる余地があるプラボウォになる可能性が高まった。
ガンジャルの副大統領候補は容易には決まらなかった。4月末,サンディアガ・ウノ観光・創造経済相を副大統領候補に推すイスラーム系の開発統一党がガンジャル陣営に参画した。結局,現政権の閣僚でありイスラーム系知識人としても知られるマフッドの副大統領候補選出をメガワティが発表したのは,10月の立候補者登録直前だった。
8月には,出馬を表明していたもう1人の候補であるアニスの陣営で波乱が起こった。アニスは,2017年のジャカルタ州知事選挙で,ジョコウィが支援する現職候補の華人キリスト教徒というアイデンティティを攻撃して選挙戦を展開し,イスラーム保守派の支持を集めて勝利した。それ以来,アニスとジョコウィは犬猿の仲とされた。アニスは今回,「変革」を掲げ,ジョコウィ政権に対する批判票を狙う立場を確立した。そのアニスを擁立したのは,与党でありながらジョコウィに反旗を翻したナスデム党と,副大統領候補の座を期待する野党2党,民主主義者党とイスラーム保守系の福祉正義党であった。
しかし,8月31日,ナスデム党がイスラーム中道派の民族覚醒党党首ムハイミンをアニスの副大統領候補にすることを,他の支持政党との協議なしに突然決定した。ムハイミンはもともと,プラボウォの副大統領候補として出馬する道を探っていた。しかし,それが困難だとみると,代わりにアニスの副大統領候補になることで「コートテール効果」により民族覚醒党の議席数を増やすことを狙ったのである。一方で,大票田の東ジャワ州での支持が弱いアニスは,同州を基盤とする民族覚醒党の支持層を取り込む可能性に期待した。
これに反発した民主主義者党はアニス陣営を離脱し,ジョコウィの後援が濃厚になりつつあったプラボウォを支持する方針に転換した。民主主義者党は,党の創設者で元大統領のスシロ・バンバン・ユドヨノが2004年の大統領選挙でメガワティと争った経緯から,闘争民主党とは水と油の関係となり,2014年以降10年間野党の立場にあった。同党は,プラボウォ陣営への参加を通じて与党に返り咲く可能性を見出したのである。一方,福祉正義党は支持基盤のイスラーム保守派がアニス支持に傾いていることからアニス陣営にとどまった。このようにして野党2党は分裂し,現政権与党である民族覚醒党がアニス陣営に加わった。そのため現政権反対派としてのアニス陣営は,統一性と一貫性に疑問を呈された状態で選挙戦を始めることになった。
異例の憲法裁判断により立候補可能となったプラボウォ・ギブランのペア8月上旬には,ジョコウィが支持する候補であることが濃厚になりつつあったプラボウォ陣営に,国会第2党のゴルカル党とイスラーム系の国民信託党が参加した。これにより,これら2党と開発統一党が2022年6月に結成した「統一インドネシア連合」(KIB)は自然消滅した。プラボウォの副大統領候補の座をめぐっては,ムハイミンが率いる民族覚醒党がアニス陣営へ去った後,アイルランガ・ハルタルト党首を推すゴルカル党や,エリック・トーヒル国営企業相を推す国民信託党など,各支持政党がしのぎを削っていた。
しかし5月頃から,ジョコウィの長男であり2021年2月からソロ市長を務めるギブランを副大統領候補に擁立する案が浮上した。候補者が確定する10月時点での年齢が36歳のギブランは,「40歳以上」という選挙法で定められた立候補の年齢要件を満たしていなかった。そこで,ギブランの立候補を可能にしようと,連帯党などから立候補年齢下限の引き下げを求める法令審査請求が憲法裁判所に対して提出された。
10月16日にはこれらの請求に関する憲法裁の判断が示された。連帯党の請求を含む3つの請求は却下されたが,立候補の要件を「40歳以上または地方首長の経験者」へ改正するよう求めるソロ在住の大学生によって提出された請求が,却下4人・承認3人・異見による承認2人という結果で可決された。
この憲法裁判決は波紋を呼んだ。その理由は,司法審査に参加して賛成票を投じた憲法裁長官アンワル・ウスマンが,2022年5月にジョコウィの妹と結婚し,ギブランの叔父として利益相反の問題を抱えていたからである。それもあってか,アンワル長官は利益相反を理由に却下された連帯党などによる3つの請求に対する司法審査には参加せず,結果的にこれらの請求は6対2で却下された。不可解な点は,その後実施されたソロの大学生による請求の審査にアンワルが突如参加し,賛成票を投じたことである。そして,長官の存在は他の一部の判事の判断にも影響を及ぼし,この請求が可決されたとみられている。なお,この請求の申請者であるソロ在住の大学生は,政治的な意図を否定している。また父親がジョコウィを支援するボランティア団体「プロジョ」の関係者であることが指摘されているものの,真相は明らかでない。
市民社会組織からは,アンワル長官が審査に参加したことに関する倫理違反の疑いと審査過程の不透明性が厳しく追及された。憲法裁判所は民主化とともに2003年に設立された機関であり,司法府の汚職が慢性的なインドネシアにおいて法の支配を守る砦としての役割を果たしてきた。しかし,2020年10月に成立した雇用創出法に対して違憲判断を下したアスワント副長官(当時)が2022年9月に国会により突然解任されたり,2023年1月にその解任をめぐる司法審査での決定書改ざんが発覚したりするなど,信頼を揺るがす事案が相次いでいた。今回の事件は憲法裁への信頼をいっそう失墜させるものだった。市民社会組織の告発を受けて,憲法裁はアンワル長官の倫理規定違反疑惑に関する調査を行う憲法裁名誉評議会を10月23日に設置した。ジムリ・アシディキ初代憲法裁長官が率いる同評議会の審議により,11月7日にアンワルは長官職から解任された。
この前代未聞の騒動にもかかわらず,プラボウォはギブランの出馬資格が法的に満たされたと判断し,10月25日に立候補登録を行った。11月13日には総選挙委員会によって立候補が正式に承認され,不可能とみられていたプラボウォ・ギブランのペアが誕生した。明言はされていないものの,彼らがジョコウィの支持候補であることは明らかだった。同ペアは,選挙公約においても,2014年にジョコウィが選挙戦で打ち出した「ナワ・チタ」(9つの希望)を踏襲し,「アスタ・チタ」(8つの希望)という目標を掲げるなど,ジョコウィ路線の継承者としてのイメージ作りに熱心に取り組んだ。
一方,市民社会組織や学者,対立候補などは,プラボウォ・ギブランのペアが単なる路線継承にとどまらず,「ジョコウィ王朝」を確立する候補であるとして,激しい世襲政治批判を展開した。ジョコウィに対しても,アンワル長官を通じて司法府の独立性を脅かす干渉を行ったとして批判が巻き起こった。メガワティ闘争民主党党首は,現政権の振る舞いが「まるで(スハルトの)新秩序時代のようだ」と憤りをみせた。しかし,この法令審査に対しては,政治に対する関心が低い社会一般の人々の認知度は高くなかった。また,政権支持率の高さに示されるように,ジョコウィの政策継承を求めている人々は多数おり,彼らは法令審査については問題視しない立場をとった。プラボウォ・ギブラン候補の支持率は上昇し,選挙戦が始動した11月28日の時点でプラボウォはガンジャルを抜いて支持率1位に立った。これはジョコウィの実質的な後援を受けた結果とみられている。
問われる選挙の公正性憲法裁に対する干渉は批判の的となっているが,その他にも,ジョコウィは現職大統領としての権限を利用し,選挙戦が支持候補に有利になるよう画策した疑いが市民団体によって指摘されている。例えば,軍や地方行政における人事である。ジョコウィは選挙を前に国軍幹部を自らの側近で固めた。特に注目されたのは,ジョコウィのソロ市長時代にソロ地区軍管区司令官を務め,10月25日に陸軍副参謀長から陸軍参謀長に昇格したアグス・スビヤントが,11月22日に異例の速さで国軍司令官に就任したことである。
また,地方政府のトップにもジョコウィに近い人物が次々と任命された。2024年11月に地方首長選挙が全国で同時実施される予定であるが,選挙前に任期が切れる200以上の地方自治体では,2022年から2023年にかけて,内務相によって首長代行が任命されている。その首長代行に,退役軍人や退役警察官を含むジョコウィ派の人物が登用されるケースが多数みられる。
治安当局のトップや首長代行らは選挙における中立性を約束しているが,その信憑性には疑問が投げかけられている。例えば,ガンジャルやアニスを支持しないよう圧力をかけるため,治安当局が村長や政治献金者に対して汚職捜査をちらつかせている事例が報道されている。また,首長代行が中立の原則を守らずプラボウォ支持を公言しても何ら制裁を受けていない事例もある。
その他にも,ジョコウィは低所得層向けのコメや食料の配布,現金給付などの社会扶助プログラムを,期限を延長して選挙期間中にも実施した。これも,ジョコウィの支持者がジョコウィ路線の継承を打ち出すプラボウォ・ギブラン組を支持するように仕向けるための意図的な政策展開だと指摘されている。市民団体などは,公正な選挙の実施が全国規模で脅かされたことは,民主化後の未曽有の事態だと神経を尖らせている。
汚職撲滅委員会委員長の収賄容疑憲法裁と同様に,民主化後の2003年に設立された汚職撲滅委員会についても政治的独立性が失われつつある。2019年10月には,多くの議員が汚職捜査の対象となってきたことに不満を抱く国会によって,その独立性と権限を弱める法改正が行われた。法改正後の2019年12月に委員長に就任したのが,フィルリ・バフリである。フィルリ委員長は,過去に汚職捜査の容疑者と密会して倫理違反の疑いをもたれるなど,頻繁に批判の対象となってきた。
選挙に先駆けて,フィルリ委員長の下で,選挙とのかかわりが疑われる汚職捜査が相次いで行われた。2022年9月には,ジョコウィ路線を批判するアニスに対して,ジャカルタ州知事時代に開催したフォーミュラE世界選手権をめぐる汚職疑惑で事情聴取が行われた。2023年10月12日には,アニスを擁立したナスデム党幹部のシャフルル・ヤシン・リンポ農業相が汚職撲滅委員会により収賄や資金洗浄の容疑で逮捕された。それ以前の2023年5月17日に,同じくナスデム党幹部のジョニー・G・プラテ通信・情報相が携帯電話4G無線基地局の建設予算をめぐる収賄容疑で検察庁により逮捕されていた。シャフルル農業相の逮捕はナスデム党に追い討ちをかける形となり,汚職捜査の政治利用が疑われた。
シャフルル農業相逮捕の直後,フィルリ委員長が同相と密会している様子を捉えたとされる2022年3月付の写真が出回り,フィルリがこれまで長期にわたり汚職捜査を恐喝の材料にして賄賂を受け取っていた疑惑が浮上した。ジャカルタ州警察は10月26日にフィルリの自宅に対する家宅捜査を開始し,11月22日にはフィルリを恐喝および収賄の容疑者に指定した。これをうけて汚職撲滅委員会の監督評議会はフィルリが重大な倫理規定違反を行ったと結論づけた。その決定が下された翌日の12月28日,ジョコウィはフィルリを解任した。このフィルリ解任騒動により,すでに悪化していた汚職撲滅委員会に対する社会の信頼は著しく失墜したといえる。
バタムのレンパン島土地収用をめぐる住民との衝突インフラ事業や開発プロジェクトに伴う土地収用をめぐる紛争はこれまでもたびたび発生してきたが,2023年にはリアウ群島州バタムのレンパン島で起きた工業団地開発をめぐる行政と地元住民との衝突が大きなニュースとなった。
シンガポールに隣接するバタムのレンパン島では,「レンパン・エコシティー・プロジェクト」と呼ばれる大規模な工業団地が計画されている。同地では,国家戦略事業の一環として,ジョコウィが7月に中国を訪問した際に投資約束を取り付けた,ガラス製造世界大手のシンイー・ガラス・ホールディングスによる世界最大規模の太陽光パネル製造工場が建設される予定である。太陽光パネルはインドネシアで生産される珪砂を原材料として製造される計画であり,資源の高付加価値化による輸出産業促進というジョコウィの経済政策に適合するものであった。
しかし,レンパン島には17世紀から居住する先住民がいる。彼らは,正式な土地証明を保有していないものの,先祖代々の由緒ある土地に住んでいると主張している。バタム自由貿易区および自由港管理局(BPバタム)は,工業団地を開発するにあたって,これらの地元住民7500人を9月28日までに隣のガラン島へ移住させる予定であった。しかし,この移住計画に住民は反発し,9月7日の抗議集会では警察との衝突が発生した。この衝突では警察の機動隊が催涙弾や放水砲で強制的に住民を排除し,7人を逮捕した。9月11日には1000人規模の抗議デモ隊がBPバタムの本部付近で警察と衝突し,43人が逮捕された。
ジョコウィは意思疎通の失敗が衝突の原因であると釈明し,バフリル・ラハダリア投資相も移住先で新しい住宅と土地証明が提供され,移住期間中の生活費も補償されることを再度説明した。しかし,人権NGOのインドネシア法律扶助協会財団(YLBHI)の調査によれば,ほとんどの住民はそもそも移住に同意しておらず,それにもかかわらず,同意書への署名を強いるよう地元警察が圧力をかけていることが報告されている。バフリル投資相はその後,移住期限を延期し,移住先をガラン島ではなくレンパン島の別の地域に変更する計画を示したが,移住を進める方針に変わりはないため,今後強制的な移住が進められるのではないかと懸念されている。
パイロット誘拐拘束事件で混迷するパプア問題分離独立運動による武力攻撃が激化しているパプアでは,2023年2月に起きたパイロット誘拐事件により情勢が混迷を深めた。2月7日,山岳パプア州ンドゥガ県の飛行場に着陸した民間航空会社スシ航空の小型機を武装勢力が襲撃し,パプア人住民の乗客5人を解放したうえで,ニュージーランド人の操縦士フィリップ・メヘルテンスを人質として拘束した。犯行声明を出したのは,西パプア独立運動を担ってきた自由パプア運動(OPM)の武力組織である西パプア民族解放軍(TPN-PB)である。TPN-PBは1996年にも外国人の誘拐事件を起こしており,今回はパプア問題の歴史において2度目の人質事件となった。
政府はこの事件に対して有効な対応を取れていない。ンドゥガ県がある山岳地帯は国軍および警察による治安維持が最も機能しておらず,操縦士の安全はビデオメッセージを通じて確認されているものの,具体的な居場所は12月末現在まで特定されていない。
警察によれば,2023年にはパプア全土で199件の武装勢力による襲撃事件が起きており,64人が死亡している。市民社会組織やメディアは暴力の連鎖を止めるため,武力ではなく対話に基づいたアプローチをとるよう要請している。これに対して新しい国軍司令官アグスは,「スマートパワー」と称して,現地社会の信頼を得るソフトなアプローチと武装勢力の鎮圧や新たな軍管区設置といった軍事的アプローチを組み合わせる必要があると唱えている。ニュージーランド政府もインドネシア政府の方針に従う意向のようで,TPN-PBはニュージーランド政府との非公式な対話を試みているが失敗している。
2023年の実質GDP成長率は5.05%であった。国際商品価格の高騰が収まったことで輸出額が減少したものの,堅調な民間消費が支えとなり,5%台のGDP成長率を維持した。四半期ベースでみると,第1四半期は5.03%,第2四半期は5.17%,第3四半期は利上げの影響などで4.94%と2年ぶりに5%台を下回ったが,第4四半期は5.04%と回復した。名目GDPは2京892兆ルピアであった。家計消費が名目GDPに占める割合は53.18%で,前年比9.32%増,寄与度は2.55%であった。総固定資本形成の割合は29.33%で,前年比7.56%増,寄与度は1.38%であった。政府支出の割合は7.45%で,前年比3.36%増,寄与度は0.22%であった。財・サービスの輸出と輸入の割合はそれぞれ21.75%と19.57%で,それぞれ前年比5.34%減と0.43%減となった。純輸出のGDP寄与度は0.66%となった。
国際収支では,経常収支がマイナス15億6727万ドルとなり,2020年以来の経常赤字を記録した。財輸出は2595億ドル(前年比11.3%減),財輸入は2131億ドル(同7.3%減)で,貿易収支は463億4660万ドル(前年は626億7220万ドル)となり,2020年以降4年連続で黒字を達成したものの,前年比26.0%の減少となった。非石油・ガス輸出は2419億ドル(財輸出全体の約93.5%,前年比11.9%減),輸入は1743億ドル(同82.7%,同5.6%減)であった。品目別にみると,主要輸出資源である石炭(非石油・ガス輸出の約17.6%)は前年比21.4%減,パーム油(同9.3%)は18.2%減であった。また,ニッケル加工品を含む非鉄金属製品(同16.7%)も前年比で3.4%減少した。輸出額が特に増加したのは,前年比10.0%増の四輪自動車(同2.7%)と,前年比47.1%増となった金製品(同2.2%)であった。輸入額が特に増加した品目は,四輪自動車(非石油・ガス輸入の約3.2%)で25.2%増となった。石油・ガス輸出は166億8714万ドル(財輸出全体の約6.5%,前年比2.1%減),輸入は363億4511万ドル(同17.2%,同13.1%減)であった。金融収支は87億262万ドルの純流入を記録した。
投資調整庁(BKPM)によれば,投資実施額は1418.9兆ルピアに達し,前年比で17.5%の増加を記録した。海外直接投資(FDI)の実施総額は503億ドルで,前年比10.2%増となった。投資が最も多かった国はシンガポールで,次いで中国,香港,日本,マレーシアの順である。部門別では,金属製品・非機械・設備が118億ドル(23.4%),運輸・倉庫・通信が56億ドル(11.1%),化学・医薬品が48億ドル(9.5%)で上位にランクインした。国内投資は674兆9234億ルピアで,前年比22.1%増となった。国内投資で上位の部門は鉱業が87兆ルピア(12.8%),住宅・工業団地・オフィスビルが77兆ルピア(11.4%),運輸・倉庫・通信が77兆ルピア(11.4%)であった。
失業率は8月時点で5.32%と,前年の5.86%から0.54ポイント低下し,コロナ禍前であった2019年の5.23%の水準に回復しつつある。貧困人口比率も3月時点で9.36%と,前年9月の9.57%から0.21ポイント改善し,2019年9月の9.22%の水準に戻りつつある。地域別にみると,ニッケル資源の高付加価値化を実現するために製錬所の建設が進む地域では貧困が増加している。製錬所の建設に伴う土地収容や環境破壊が近隣住民の経済活動に悪影響を与えている可能性が指摘されている。2022年9月から2023年3月にかけて,東南スラウェシ州では11.27%から11.43%へ,中スラウェシ州では12.30%から12.41%へ,北マルク州では6.37%から6.43%へと貧困率が上昇した。また,ジニ係数は3月時点で0.388となり,コロナ禍が始まった2020年3月の0.381から上昇した。農村部のジニ係数は0.317から0.313に低下したが,都市部では0.393から0.409へと上昇する傾向にある。
財政赤字はジョコウィ政権時代最小水準に2023年度(1月から12月)の財政赤字は348兆ルピア(暫定値,以下の予算関連数値も同様)で,GDP比で1.65%となり,当初の2.84%および11月の補正予算(大統領令2023年第75号)の2.27%から大幅に削減された。ジョコウィ政権下で財政赤字のGDP比が最も小さかったのは,2018年の1.76%であったが,2023年はそれを下回った。
歳入は2774兆ルピアで,前年比5.25%の増加となり,当初予算を12%上回る結果となった。当初予算では減少が予測されていた税収は,前年比5.95%増加した。輸出額の低下により関税収入は9.94%減少したが,歳入の38%(2022年)を占める所得税と26%(2022年)を占める付加価値税および奢侈品販売税が,それぞれ前年比6.37%増,11.16%増となったことで過去最高の歳入規模となった。
歳出は3122兆ルピアとなり,前年比0.83%の微増で,当初予算の101.99%が執行された。官公庁・機関向け予算は6.34%増加し,特に資本支出が27.74%と大幅増となった。この増加は,治安当局の装備や機材購入,公共事業・国民住宅省および運輸省によるインフラ開発と維持管理,新首都ヌサンタラでの官公庁施設やインフラの建設によるものである。2022年の食用油不足および燃料価格の引き上げに対する給付金が2023年には廃止され,社会扶助支出は2.86%減少した。
インフレ抑制と食料価格安定化策2023年の消費者物価上昇率は通年で2.61%となり,中央銀行のインフレ目標である2〜4%の範囲に収まった。コロナ禍の2020年および2021年を除けば,この数値は過去20年で最も低い水準である。
2023年初頭までは,2022年から続く輸入インフレに対応するための利上げが続いた。1月には政策金利が0.25ポイント引き上げられて5.75%となった。消費者物価上昇率は2月まで中央銀行の目標を上回る5%台で推移したが,3月以降は低下し続け,9月以降の上昇率は2%台で推移した。中央銀行はその後,米国との金利差を背景にルピア安が続いていることに対処するため,10月に10カ月ぶりに0.25ポイントの利上げを実施し,政策金利は6.00%となった。
一方で,食品・飲料・タバコの消費者物価上昇率は,2月の前年同月比7.23%から7月の1.90%まで低下したが,その後,年末にかけての需要の高まりもあり,11月以降は6%台まで再上昇した。特にコメ価格は,エルニーニョ現象に伴う干ばつによりコメ生産量が2022年の3154万トンから3090万トンへ減少したうえ,7月以降にインドが一部のコメ輸出を禁止したことで国際コメ価格が引き上げられ,2023年をとおして上昇し続けた。国内のコメ卸価格は2022年8月からすでに上昇傾向にあり,2023年9月以降は平均値がキログラムあたり1万3000ルピア台に達して2010年以来の最高値となった。
コメ備蓄と供給量を維持しつつ,コメ価格上昇によるインフレ圧力を緩和するために,食糧調達公社(Perum BULOG)は,1998年以来最大となる306万トンのコメ輸入を実施した(図1)。これは前年比で約7倍の量であり,インドネシアはフィリピンと中国に次ぐ世界3番目のコメ輸入国となった。これまでの主要調達先であったインドに代わり,調達先上位国はタイ(45.12%),ベトナム(37.47%),パキスタン(10.10%)となった。コメの供給不足は2024年も課題となる見通しで,政府は食糧調達公社に対して,200万トンのコメ輸入を行うよう指示している。
(出所) 中央統計庁(BPS)ウェブサイト(https://www.bps.go.id/)。
課題の多いニッケル川下産業と電気自動車生産
ジョコウィ政権が掲げる,建国100周年にあたる2045年までに5大経済大国入りを目指すビジョン「黄金のインドネシア2045」に基づき,6月に国家開発企画庁(Bappenas)は「2025~2045年国家長期開発計画(RPJPN)」の最終案を発表した。スハルソ・モノアルファ国家開発企画相/国家開発企画庁長官によると,この開発計画は8つの開発アジェンダと17の開発方針に基づいて策定され,全体を45の主要な開発指標およびそれに付随する数百の指標で測定する。2045年までに中進国の罠を脱して先進国入りを達成するには,2025年から2045年までの期間に平均GDP成長率6〜7%を達成しなければならない。しかし,経済成長の基盤である製造業のGDPに占める比率は,2005年の27.4%から2022年には18.3%へと低下している。同庁は,2045年の目標として製造業の同比率を28%に設定しており,そのためにはV字回復を目指す構造的改革が必要である。
製造業を活性化させるための鍵として政府が期待を寄せているのは,ニッケル川下産業およびそれを核とする電気自動車産業における域内ハブの構築である。2020年から実行されている未加工ニッケル鉱石の輸出禁止措置により,2015年時点で約10億ドルだったニッケル加工品の輸出額は2022年には約300億ドルまで大幅に増加した。ニッケル製錬所の数は2014年の2カ所から2023年6月時点で34カ所まで増加した。ニッケルの生産量は2021年の100万トンから2022年には160万トンへと拡大し,国際ニッケル生産に占めるシェアは48.5%に達した。
しかし,輸出されているニッケル加工品の大部分は,ステンレス鋼の原材料となる低品位で低付加価値のニッケル金属(ニッケル銑鉄またはフェロニッケル)である。フェロニッケルの2022年の輸出額は136億ドルに上り,ニッケル加工品の総輸出額の45%を占めている。一方,電気自動車のバッテリー生産に不可欠な高純度ニッケルを製造する高圧硫酸浸出(HPAL)技術を有する製錬所は,2023年時点でわずか4カ所に過ぎない。
また,2023年末にかけて,国際市場において電気自動車の需要が減少していること,主要なニッケル加工品の輸出先である中国の経済成長が鈍化していること,ニッケルを使用しない電気自動車バッテリーの普及が進んでいることなどから,国際的なニッケル需要の伸びは緩やかである。このため,近年のニッケル生産量の急増は,国際市場での供給過剰につながっている。年始にはトンあたり2万7000〜2万8000ドルで推移していた国際ニッケル価格は,年末には1万6000ドル台まで約5割近く下落した。
電気自動車の普及に関しては,4月に財務省令2023年第6号が公布され,生産過程における現地調達率40%以上の電気自動車の購入に際して付加価値税の10%減免が定められた。この対象となったのは韓国の現代自動車および中国の上汽通用五菱汽車(ウーリン)が製造するバッテリー式電気自動車(BEV)である。インドネシア自動車工業会(ガイキンド)によると,自動車販売台数が利上げなどにより前年比4.2%減の100万5802台にとどまるなか,電気自動車の販売台数は前年比39.5%増の1万7057台と2022年から継続して増加している。
電気自動車の購入層が高所得層にとどまっていることから,3月には工業省令2023年第6号が公布され,中小零細事業者などの低所得者を対象に,電動バイク購入に対する補助金が1台あたり700万ルピア,2年間にわたり支給されることが定められた。2023年の補助金の支給目標は20万台の新型電動バイクと5万台の電動用に改造されたバイクである。この目標は,2024年にはそれぞれ60万台と15万台に拡大される予定である。
しかし,補助金申請専用サイト「Sisapira」によると,2023年をとおして支給された補助金はわずか1万1532台分にとどまっており,政府目標の20万台に遠く及ばない。2023年のバイク販売台数は前年の522万台から624万台に19%増加しているが,電動バイク産業協会は電動バイク販売台数を1万2000台前後と見積もっており,電動バイクの普及率は極めて低いのが現状である。政府は,電動バイクやその補助金制度に関する認知度の低さ,市場に出回っている電動バイクが充電に時間を要すること,充電インフラの未整備などを問題点として挙げている。
政府は12月に,バッテリー式電気自動車プログラム促進に関する大統領令2019年第55号を改正した大統領令2023年第79号を公布した。これにより完成車輸入の増加を通じて電気自動車の国内普及率と価格競争力を向上させつつ,自動二輪を含む電気自動車生産を促進することが目指されている。具体的には,BEV生産設備の建設や投資および新規生産能力の拡張などを行う企業に対して,一定の完成車輸入に対する税の減免措置を適用するとともに,税優遇を受ける条件である現地調達率の引き上げ時期を延期することを定めた。
8月には,中国の新興メーカー合衆新能源汽車の哪吒汽車(NETA)が年産3万台のノックダウン生産をインドネシアで2024年に開始する予定であることが発表された。一方,米テスラ社の東南アジアにおける販売拠点が7月にマレーシアで始動したことは,ジョコウィ大統領自身が2022年から同社の工場誘致に向けて積極的にロビー活動を行っていただけに,政府に衝撃を与えた。上述の大統領令2023年第79号は,このテスラ社の動きに対する政府の焦りを反映したものだと思われる。
その後2024年1月には,中国の電気自動車最大手BYD社がインドネシア市場への参入および年産15万台の工場建設計画を発表した。ただし,BYD社の新規販売モデルはニッケルを使用しないリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFPバッテリー)を搭載しており,ニッケル産業の振興を目指す政府との間に思惑の違いがあると指摘されている。
目玉インフラプロジェクトの完成ジョコウィ政権の目玉インフラプロジェクトのひとつであるジャカルタ首都圏軽量高架鉄道(LRTジャボデベック)が8月28日に開業した。2015年9月に建設が開始されてから8年後の運行開始となった。
10月2日には中国が受注したジャカルタ=バンドン高速鉄道が開業した。全長142kmに及ぶ東南アジア初の高速鉄道は,「Waktu Hemat(時間短縮),Operasi Optimal(効率的運行),Sistem Hebat(素晴らしいシステム)」の単語の頭文字を取って「Whoosh」(ウーシュ,「ビュン」という擬音語)と命名された。当初は2019年開業が目標であったが,土地収用の難航やコロナ禍での建設遅延などの影響で開業時期は繰り返し延期され,10月17日に北京で開催された「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムに間に合わせる形でようやく開業にこぎ着けた。事業の総工費は72.7億ドルに達し,当初予定から12億ドル超過した。その超過分は,大統領令2021年第93号により国家予算から補填されることとなった。政府は高速鉄道をスラバヤまで延伸する可能性について中国側と協議を始めている。
急ピッチで建設が進む新首都ヌサンタラについては,10月3日にヌサンタラ首都法2022年第3号が改正され,ヌサンタラ首都庁の予算確保および執行に関する権限を強化した。これは土地問題の解決や建設をスピードアップさせるための措置と考えられている。2023年度の国家予算からは26.7兆ルピアが新首都建設に割り当てられ,初期予算(27.4兆ルピア)の97.6%を執行した。このうち23.8兆ルピアは中央行政地区(KIPP)の開発,公務員居住施設の建設,高速道路およびダムの建設に充てられた。一方,2023年度に民間から集められた投資額は41.4兆ルピアで,目標の45兆ルピアには届かなかった。
世界経済が低迷し,域内では米中覇権競争が激しさを増すだけでなく,ミャンマー問題の混迷が深まる厳しい時期に,インドネシアは2011年以来となるASEAN議長国を務めた。前年,ロシア・ウクライナ戦争が勃発するという逆境のなかで議長国として主要20カ国・地域(G20)首脳会議を成功に導いたという経験もあったことから,ASEAN議長国としてインドネシアが果たす役割にも大きな期待が寄せられていた。
政府が議長国として重点を置いたのは経済分野である。スローガンを「ASEANは重要:成長の震源地(ASEAN Matters: Epicentrum of Growth)」と定め,東南アジアが大国間の抗争の場とならず,世界経済の停滞期でも高成長を続ける唯一の地域であることを強調した。
また,経済統合を進めるための枠組みや,国境を越える社会課題の解決に向けた協力枠組みの構築が合意された。5月と9月に開催された2回のASEAN首脳会議では,経済および社会分野における成果として,電気自動車エコシステム開発に向けた宣言,デジタル経済枠組みの合意,ブルー・エコノミー(海洋および淡水域開発)枠組みの合意,情報技術の悪用による人身売買の撲滅に向けた宣言,危機下での移民労働者の保護に関する宣言など,多岐にわたる成果があがった。
インドネシアは域外パートナー国との関係拡大および深化にも注力し,地域共同体間の協力関係も進展した。10月には湾岸協力理事会(GCC)との首脳会議が開催され,GCC加盟国が東南アジア友好協力条約(TAC)に加入した。また,インドネシアが2019年に提唱した「インド太平洋構想」(AOIP)についても,9月に開催されたASEANインド太平洋フォーラムで,インフラ,金融,デジタル関連分野などで合計93のAOIPプロジェクト(380億米ドル相当)が承認された。
一方,政治安全保障分野では,議長国として国際的な期待に十分に応えることができなかった。ミャンマー問題に関しては,激化する暴力に対処するために2021年4月に合意された5項目の実施に進展がみられなかった。また,6月にはタイ政府が中国外相や一部のASEAN加盟国の外相を招いてミャンマー軍事政権と非公式会談を実施したり,7月にタイの外相がミャンマーを訪問したりするなど,ASEAN内の統一を乱す国々の動きを止められなかった。インドネシア外務省は,ミャンマーの各派と265回の対話を行い,市民への支援物資の搬送を可能にしたことを主要な成果として挙げているが,悪化するミャンマー情勢に対して具体的な解決策を提示したとはいえない。
また,インドネシアが6月にASEAN諸国限定で初めて実施した陸海空軍合同演習(ASEX-01N)は,中国を主とする域外の地政学的脅威に対するけん制の意味合いが見え隠れする。中国と南シナ海での紛争を防ぐための行動規範(COC)策定に関しては,3年以内に合意形成を目指して交渉を加速化させるとするガイドラインが7月に採択された。しかし,9月のASEAN首脳会議直前に中国が南シナ海のほぼ全域にわたる管轄権を主張する「標準地図」を発表したにもかかわらず,これを会議の議題にすることができなかった。これは,行動規範策定に向けた障壁が依然として高いことを示している。
さらに,9月のASEAN首脳会合とあわせて開催された東アジアサミットをバイデン米国大統領が欠席し,G20会議参加後にインドのニューデリーから関係を強化するベトナムへ直接向かったことが外交関係者に衝撃を与えた。これは,米国へのアプローチが不足していることに対する懸念を引き起こした。その後,米国の招待によりジョコウィは11月にホワイトハウスを訪れ,米国との二国間関係を「包括的戦略パートナーシップ」へと格上げした。しかし両国関係の強化は,ベトナムの例と比べて高付加価値の投資誘致へ直接結びついているわけではなく,現状では象徴的な意味合いが強い。
グローバルサウス外交を展開米中対立やロシア・ウクライナ戦争の勃発する世界情勢のなかで中立的な立場を維持しているグローバルサウスの国々の存在が注目されている。ジョコウィ大統領は,それらの国々との協力関係の強化を目指し,8月に就任後初めてのアフリカ歴訪を行った。訪問先は,ケニア,タンザニア,モザンビーク,南アフリカであり,ケニアとモザンビークへはインドネシアの現職大統領として初めての訪問となった。
8月22日には,南アフリカで開催されたBRICS首脳会議に出席した。中東やアフリカなどから6カ国が新規加盟で合意するなか,人口および経済規模からみて有力な候補であったインドネシアは加盟しなかった。その理由は,BRICSが欧米主導の国際経済金融秩序に挑戦する枠組みとして捉えられていることにある。大国間競争において中立を保とうとする外交方針に合わず,また,中国を含む国々とすでに強固な経済関係を築いているインドネシアにとって,加盟によって得られるメリットが大きくないと判断したようだ。
一方,7月には,アイルランガ経済担当調整相が経済協力開発機構(OECD)への加盟申請を行うことを公表した。8月上旬にはOECD事務総長マティアス・コーマンをジャカルタに招待し,加盟申請に向けた動きが加速した。OECD加盟を目指す背景には,加盟に必要な制度改革を通じて投資先としての魅力を向上させることがある。加盟プロセスは長期に及ぶ見通しだが,成功すればインドネシアは東南アジアで初めて,アジアでは日本,韓国に続く3番目のOECD加盟国となる。OECD側もインドネシアの加盟によって組織のグローバルサウスにおける存在感を高められることを期待しており,米国やイギリスはインドネシアの加盟申請に肯定的な反応を示している。
10月のイスラエルによるガザ侵攻を受けて,政府は同月に開催されたASEAN・GCCの首脳会議,および11月に開催されたイスラーム協力機構の臨時首脳会議において,イスラエルを非難する共同声明を発表した。レトノ外相は国連会合においても停戦の必要性を積極的に訴え,ガザ侵攻に対する西側諸国の沈黙を疑問視するグローバルサウスの立場を代表して声を上げた。
65周年を迎えた対日関係2023年は日本とインドネシアの二国間関係が65周年を迎える節目の年であった。この節目の6月,天皇皇后は即位後初の国際親善訪問としてインドネシアを訪れた。
また,岸田首相は,4月の東南アジア歴訪と9月のジャカルタでのASEAN+3サミットにあわせて,2度インドネシアを訪問した。一方でジョコウィ大統領も2度訪日している。5月に実施されたG7広島サミットでのアウトリーチ会合ではASEAN議長国首脳として招待され,12月に実施された日ASEAN友好協力50周年を記念する特別首脳会議では岸田首相と共同議長を務めた。
首脳会談は4度にわたって行われ,9月の会談では両国関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げすることが合意された。また,12月の会談では経済連携協定(EPA)改正交渉が大筋合意に至り,2024年第1四半期に署名および施行される予定である。加えて,日本が建造する大型巡視船1隻が海上保安庁(BAKAMLA)へ無償供与されることが決定した。
EUとの貿易紛争2023年に入りEUとの貿易紛争は新たな展開をみせた。前年にはインドネシアが導入したニッケルの輸出禁止策に対して,WTO紛争解決機関小委員会(パネル)がEUの訴えを認め,インドネシアにWTO規定違反があるとする判定を下しており,インドネシアは上級委員会に上訴していた。
2023年に入ると,今度は1月にインドネシアが,EUによって導入されたステンレス鋼への相殺関税と反ダンピング関税について,GATT(関税および貿易に関する一般協定)条項違反であるとして協議を要請した。さらに8月には,EUがインドネシア産バイオディーゼルに課した輸入関税についても同様に協議を要請し,それぞれについてパネルが設置されることになった。
一方,5月には,EUで炭素国境調整メカニズム(CBAM)を設立する規則が施行され,2026年以降は,温室効果ガス排出規制の緩い国からの輸入品に対して課徴金が課されるようになった。インドネシアにとっては,EUへの輸出品のうち,鉄鋼やスチール鋼をはじめとした20%近くがこの課徴金の対象になるとみられている。また6月には,EU森林破壊防止規則(EUDR)が施行され,パーム油,ココア,ゴム,木材などの多くの製品が森林破壊防止の名目でデューディリジェンス(適正評価)の対象になった。パーム油の生産量が世界総生産の85%を占めるインドネシアとマレーシアは,共同でEUDRタスクフォースを結成し,特に小農家などに同規制がどのような影響を与えるか分析と対策を進めている。
EUとインドネシアの間の貿易額は過去10年で15%ほど増加しており,両者間では,2016年から包括的経済連携協定の批准に向けて協議が続いている。しかし,EUDRの施行によって交渉はさらに長期化する可能性がある。一方で政府は,アフリカやロシアなどパーム油輸出先となる新たな市場を開拓する道を探っている。
2024年2月14日に実施された大統領選挙の公式結果によると,プラボウォ・ギブランのペアが58.6%の投票率を獲得し,決戦投票に持ち込まれることなく1回の選挙で勝利した。また,議会選挙の公式結果では,闘争民主党が第1党の座を維持し,ゴルカル党が得票数を伸ばした一方で,グリンドラ党は伸び悩み,さらに,アニス陣営の民族覚醒党やナスデム党が勢力を維持した。今後は,ジョコウィ路線の継承を掲げたプラボウォ新大統領がどのような閣僚人事を行うのか,与党連合に新たに加わる政党があるのかといった点が新政権の行方を考えるうえで重要になる。また,ジョコウィが退任後も新政権に対して影響力を行使することになるかどうかも注目すべき点であろう。
中銀は2024年のGDP成長率の見通しを4.7~5.5%としている。国際商品価格は低迷することが予想されており,民間消費が経済成長の原動力となる状態がこの先も続くとみられている。しかし,賃金の上昇率が停滞するなかで,家計消費の成長にも陰りがみえてきている。また,ニッケル価格の下落が続き,ニッケルを使用しない電気自動車が普及すれば,ニッケル川下化戦略も見直しが迫られるだろう。プラボウォは,貧困家庭の児童や妊産婦に無料の昼食を提供するといった多額の予算配分を必要とする政策を公約として掲げていることから,ジョコウィ政権の強みであった財政規律を維持できるのかが課題となる。
対外関係に関しては,プラボウォ新政権がどのような外交スタンスをとるかによるが,EUとの貿易紛争を打開し,OECD加盟に向けて本格的な協議を進めることが求められる。また,ジョコウィ政権時代の実利主義的な経済重視外交に対して,国軍出身で国防相を務めたプラボウォが安全保障面の外交にも力を入れることも考えられる。覇権競争を続ける米中それぞれに対してどのような姿勢で臨むのか,新大統領の手腕が問われることになる。
(地域研究センター)
1月 | |
8日 | マレーシアのアンワル・イブラヒム首相,来訪(〜9日)。 |
10日 | 闘争民主党の50周年記念式典。 |
10日 | 汚職撲滅委員会,パプア州知事ルカス・エネンベを収賄容疑で逮捕。 |
11日 | 政府,1965年の共産党虐殺を含む12の事件を重大人権侵害として正式に認定。 |
14日 | 中スラウェシ州モロワリの中国資本ニッケル精錬所で労組と工場の間で暴力発生,中国人作業員1人含む2人が死亡。 |
19日 | 中銀,政策レートを0.25ポイント引き上げ5.75%へ。 |
2月 | |
7日 | 国内最大イスラーム組織,ナフダトゥル・ウラマーが100周年記念式典開催。 |
7日 | パプアの独立派武装勢力,西パプア民族解放軍(TPN-PB)が民間の航空機を襲撃し,ニュージーランド人の操縦士を人質に取る。 |
7日 | トルコ・シリアでの大震災を受けて,外相,マレーシアおよびミャンマー国籍を含む123人を緊急避難させ,支援物資派遣。 |
13日 | フェルディ・サンボ元国家警察職務治安局長にジャカルタ地方裁判所が死刑判決。 |
20日 | 財務省局長の子息による暴行事件がきっかけで政府高官の不相応な資産が社会問題に。 |
22日 | 中国の秦剛新外交部長(当時)が来訪。 |
3月 | |
2日 | 中央ジャカルタ地裁,選挙準備のやり直しと選挙の延期を命ずる判決を下す。総選挙委員会は判決が無効であると反発。 |
3日 | 北ジャカルタにある国営石油公社プルタミナの油槽所で爆発事故発生,33人死亡。 |
6日 | リアウ群島州ナトゥナ県セラサン島で豪雨によるが地滑りが発生,50人死亡。 |
9日 | スラバヤ地裁,東ジャワ州マラン県のサッカースタジアム暴動をめぐり,試合関係者2人に実刑判決。 |
15日 | アンワル・ウスマン憲法裁長官が再選,サルディ・イスラ判事が副長官に就任。 |
16日 | スラバヤ地裁,サッカースタジアム暴動事件をめぐり,東ジャワ州警察機動隊長1人に実刑判決,警察官2人を無罪釈放。 |
21日 | 国会,雇用創出法の法律代行行政の法律化を可決。 |
21日 | 国会,ペリー・ワルジヨ中銀総裁の再任を承認。 |
29日 | 国際サッカー連盟(FIFA),インドネシアでのU-20サッカーW杯の開催を中止。 |
4月 | |
18日 | 総選挙委員会,立候補者届出に向けた総選挙委員会令を公表。 |
21日 | 闘争民主党,ガンジャル・プラノウォ中ジャワ州知事を大統領候補に擁立。 |
24日 | スーダンでの内戦勃発を受けて在住インドネシア人の避難が開始。 |
29日 | 岸田文雄首相が来訪(~30日),日インドネシア首脳会談実施。 |
30日 | 開発統一党,ガンジャル候補支持を発表。 |
5月 | |
1日 | 総選挙委員会,議会選挙立候補者登録を開始。14日に締め切られる。 |
10日 | 東ヌサトゥンガラ州ラブアンバジョにて第42回ASEAN首脳会議が開催(〜11日)。 |
17日 | 検察庁,通信・情報相でナスデム党幹事長のジョニー・G・プラテを収賄容疑で逮捕。 |
19日 | ジョコ・ウィドド大統領,広島で開催のG7サミットにASEAN議長国首脳として出席(~21日)。日インドネシア首脳会談実施(20日)。 |
25日 | 憲法裁,汚職撲滅委員会委員長の任期延長を可決。 |
6月 | |
3日 | プラボウォ国防相,ロシア・ウクライナ戦争の和平案として非武装地帯の設置や住民投票の実施を提案するも,ロシア側に有利な案として欧米諸国の反発を受ける。 |
7日 | 大統領,シンガポールとマレーシア(〜8日)を訪問。マレーシアと海上境界線について合意。 |
9日 | ペリンド党,ガンジャル候補支持を発表。 |
10日 | ボーキサイト鉱石の輸出禁止措置を実施。 |
14日 | 防衛省,カタール空軍より12機の中古戦闘機を購入したことを発表。 |
15日 | 憲法裁,非拘束名簿式選挙制度の維持を決める判決を下す。 |
15日 | 国家長期開発計画2025~2045最終案発表。 |
17日 | 天皇と皇后が親善のため来訪(~23日)。 |
7月 | |
1日 | 世界銀行の所得分類でインドネシアが上位中所得国に復帰。 |
2日 | 総選挙委員会,2024年総選挙の確定有権者名簿を発表。 |
3日 | 大統領,オーストラリア訪問(〜5日)。アルバニージー首相と共同声明を発表。 |
5日 | 大統領,パプアニューギニア訪問。 |
5日 | インドネシア全国村落政府協会が国会前で村落法改正を要求する大規模デモ実施。 |
11日 | ASEAN外相会合が開催(〜12日)。13日にASEAN+3外相会合開催。 |
11日 | 保健オムニバス法が可決成立。 |
17日 | 内閣改造により,大統領を支援するボランティア団体「プロジョ」の設立者ブディ・アリ・セティアディが通信・情報相に任命される。 |
21日 | 防衛相と外相,フランスのカウンターパートと2+2会合を実施。 |
25日 | 汚職撲滅委員会,国軍から出向中の国家捜索救助庁高官など10人を収賄容疑で逮捕。 |
25日 | 香港政府の李家超行政長官が来訪。 |
27日 | 大統領が訪中し習近平国家主席と会談。ガラス大手シンイー社の投資契約締結。 |
30日 | 月星党,プラボウォ候補支持を発表。 |
8月 | |
8日 | 最高裁判所,サンボ元国家警察職務治安局長に対して終身刑を下し,死刑から減刑。 |
10日 | OECD事務総長マティアス・コーマンが訪問。インドネシアのOECD加盟申請に向けて協議。 |
13日 | ゴルカル党,国民信託党がグリンドラ党と連合を組みプラボウォ候補を支持。ゴルカル党・国民信託党・開発統一党から成るインドネシア統一連合は自然消滅。 |
16日 | 国民協議会にて大統領の国政演説。国会に2024年度国家予算案を上程。 |
20日 | 大統領,ケニア,タンザニア,モザンビーク,南アフリカを歴訪。22日には南アフリカで開催のBRICS首脳会議に出席。 |
24日 | 最高裁,サッカースタジアム暴動事件をめぐり,警察官2人に対するスラバヤ地裁の無罪判決を覆して懲役2〜2年半の実刑判決を下す。 |
28日 | 軽量高架鉄道(LRT)ジャボデベックが正式に開業。 |
28日 | ハヌラ党,ガンジャル候補支持を発表。 |
31日 | ナスデム党,民族覚醒党党首ムハイミン・イスカンダルをアニス・バスウェダン大統領候補のペアとなる副大統領候補に決定したことを発表。 |
31日 | 日米などが参加する多国間共同軍事演習「スーパー・ガルーダ・シールド」が開催。 |
9月 | |
1日 | 民族覚醒党,アニスを擁立する統一変革連合に参加。民族覚醒党とグリンドラ党の連合は自動的に解消。民主主義者党はアニス支持を撤回し,統一変革連合からの離脱を決定。 |
1日 | ガルーダ党,プラボウォ候補支持を発表。 |
2日 | アニス候補,ムハイミンを副大統領候補とすることを正式に発表。 |
2日 | 外国人投資家向けにゴールデンビザ導入。 |
2日 | グロラ党,プラボウォ候補支持を発表。 |
5日 | ジャカルタで第43回ASEAN首脳会議が開催(〜7日)。同時にASEANインド太平洋フォーラム,ASEAN+3首脳会議,東アジア首脳会議が開催。 |
7日 | 大統領,岸田首相と会談し,日インドネシア関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に引き上げることで合意。 |
7日 | リアウ群島州バタムのレンパン島で中国資本の太陽光パネル工場建設に伴う土地収容の問題をめぐり住民と地元警察が衝突。 |
7日 | 汚職撲滅委員会,ムハイミンに2012年の労働力大臣時代の汚職問題で審問を実施。 |
8日 | 大統領,中国の習近平国家主席および韓国の尹錫悦大統領と会談。 |
11日 | レンパン島で太陽光パネル工場建設に反対する1000人規模の住民デモが警察と衝突。 |
19日 | 初のASEAN合同軍事演習が開催(〜23日)。 |
20日 | 総選挙委員会,正副大統領立候補者の届出期間を10月19日から10月25日に決定。 |
21日 | 民主主義者党,グリンドラ党と連合を組み,プラボウォ候補支持を発表。 |
23日 | 大統領の次男,カエサン・バンガレプが連帯党に入党。26日には党首に就任。 |
25日 | 電子システムを通じた取引における事業者の事業許可・広告・指導・監督に関する商業大臣令が発令。TikTok Shopが違法化される。 |
26日 | 炭素排出権取引市場が開業。 |
28日 | 汚職撲滅委員会,シャフルル・ヤシン・リンポ農業相の自宅を家宅捜索。 |
10月 | |
2日 | ジャカルタ=バンドン高速鉄道が正式に商用開業。 |
4日 | TikTok Shop,インドネシアでの売買取引を停止。 |
8日 | 大統領,イスラエルのガザ攻撃を受けて暴力の即時停止を求める声明を発表。 |
10日 | 政府,インドネシア人のパレスチナおよびイスラエルへの渡航を中止するよう呼びかけ,ガザ地区・西岸地区・イスラエルに滞在中のインドネシア人の退避計画を策定。 |
10日 | インドネシア,2024~2026年期の国連人権理事会の理事国として選出される。 |
12日 | 汚職撲滅委員会,シャフルル農業相を逮捕。 |
14日 | 大統領を支援するボランティア団体「プロジョ」がプラボウォ候補への支持を発表。 |
16日 | 憲法裁,正副大統領候補の年齢制限に関する司法審査で,下限を40歳から35歳に引き下げる請求および40歳未満には国家機構での経験を追加する請求を却下。同時に,「40歳以上または総選挙・地方首長選挙選出ポストの経験者・現職者」とする判断を下す。 |
17日 | 大統領,18日の第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラム出席のため訪中。 |
17日 | ガンジャル候補,マフッド法務担当調整相を副大統領候補とすることを正式に発表。 |
19日 | アニス・ムハイミン組およびガンジャル・マフッド組が立候補登録。 |
19日 | 大統領,ASEAN・湾岸協力理事会首脳会議に出席。イスラエルのガザ攻撃を非難する共同声明発表。 |
19日 | 中銀,政策レートを0.25ポイント引き上げ6.00%へ。 |
19日 | ジャカルタ汚職裁,元パプア州知事ルカス・エネンベに禁錮8年の実刑判決。 |
23日 | プラボウォ候補,大統領の長男でソロ知事のギブラン・ラカブミンを副大統領候補とすることを正式に発表。 |
23日 | 憲法裁,アンワル・ウスマン憲法裁長官の倫理規定違反疑惑に関する調査を行う憲法裁名誉評議会を設置。 |
24日 | 連帯党,プラボウォ候補への支持を発表。 |
25日 | 陸軍参謀長にアグス・スビヤント陸軍副参謀長が就任。 |
25日 | プラボウォ・ギブラン組が立候補登録。 |
25日 | 大統領,内閣改造により農業相にアムラン・スレイマンを任命。 |
26日 | 警察,フィルリ・バフリ汚職撲滅委員会委員長が所有する2軒の家を家宅捜索。 |
11月 | |
5日 | モナス広場で大規模な反イスラエル抗議デモが開催される。 |
7日 | 憲法裁名誉評議会,アンワル長官を倫理規定違反で長官職から解任。 |
8日 | ジャカルタ汚職裁,プラテ元通信・情報相に懲役15年の実刑判決。 |
8日 | 汚職撲滅委員会,法務人権副大臣エドワード・OS・ヒアリジュを収賄で容疑者に指定。 |
8日 | 2024年議会選挙に参加する18政党のうち17政党が女性候補者比率要件を満たしていないことが判明。 |
9日 | 解任されたアンワル憲法裁長官の後任にスハルトヨ判事が選出される。 |
11日 | 大統領,サウジアラビアでのイスラーム協力機構の臨時首脳会議に出席。 |
13日 | 総選挙委員会,正副大統領候補3組を確定し,それぞれの候補者番号を決定。 |
14日 | 大統領が訪米,ホワイトハウスでバイデン米大統領と会談。両国関係を「包括的戦略パートナーシップ」に引き上げることで合意。 |
15日 | 大統領,サンフランシスコで開催のAPEC首脳会議に出席。 |
16日 | 大統領,インド太平洋経済枠組み(IPEF)首脳会議に出席。 |
20日 | インドネシア語がユネスコの公用語に認定。 |
22日 | 国軍司令官にアグス・スビヤント陸軍参謀長が就任。 |
22日 | 200人以上のロヒンギャ難民がアチェに漂着,同週に漂着した難民の数が1100人を超える。一部の現地住民は反発。 |
23日 | ジャカルタ警察,フィルリ汚職撲滅委員会委員長を恐喝および収賄で容疑者指定。 |
27日 | 大統領,ナワウィ・ポモランゴを汚職撲滅委員会の暫定委員長に任命。 |
28日 | 選挙戦が正式に始動。 |
29日 | 陸軍参謀長にマルリ・シマンジュンタク陸軍戦略予備軍司令官が就任。 |
12月 | |
1日 | 大統領,国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)首脳会議に出席。 |
3日 | 西スマトラ州でマラピ山が噴火。死者23人。 |
11日 | TikTokとTokopedia社が事業統合。TikTok Shopは事業再開。 |
12日 | 第1回大統領候補公開討論会開催。 |
16日 | 大統領,日ASEAN特別首脳会議などに出席するために訪日(~19日)。岸田首相と会談。 |
18日 | 汚職撲滅委員会,北マルク州知事アブドゥル・ガーニ・カスバを収賄容疑で逮捕。 |
22日 | 第2回大統領候補公開討論会開催。 |
24日 | 中スラウェシ州モロワリの中国資本ニッケル精錬所で爆発事故発生,中国人作業員八人を含む21人が死亡。 |
27日 | フィルリ委員長の重大な倫理規定違反が確定。28日に大統領はフィルリを更迭。 |
(注) 1)国家行政院(LAN),国家公文書館(ANRI),国家人事院(BKN),国立図書館,中央統計庁(BPS),国家標準化庁(BSN),原子力監視庁(Bapeten),国家情報庁(BIN),国家コード院,国家家族計画調整庁(BKKBN),国土地理院,財政開発監督庁(BPKP),食品・薬品監視庁(BPOM),国家情報院(LIN),国家防衛研修所(Lemhannas),文化観光振興庁(Budpar),国家研究革新庁(BRIN)などを含む。
2)2019年の第2期ジョコ・ウィドド政権の発足に伴い,省庁の再編が行われた。文化・初中等教育省が教育・文化省に,研究・技術・高等教育省が研究・技術省に,観光省が観光・創造経済省に再編された。また,所管する調整大臣府が変更された省庁もある。2021年にも省庁の再編が行われた。投資省が新設され,教育・文化省と研究・技術省が統合し教育・文化・研究・技術省が設立された。
(注) 1)出身組織の略称は以下のとおり。PDIP:闘争民主党,Golkar:ゴルカル党,PKB:民族覚醒党,NasDem:ナスデム党,PPP:開発統一党,Gerindra:グリンドラ党,PAN:国民信託党。2)2021年4月28日の省庁再編により新設された役職。3)2021年4月28日の省庁再編により新設された役職に任命された大臣。4)2022年6月15日の内閣改造で任命された大臣。5)前任者の死去に伴い2022年9月7日に任命された大臣。6)前任者が汚職疑惑で逮捕されたことに伴い2023年7月17日に任命された大臣。 7)前任者が汚職疑惑で逮捕されたことに伴い2023年10月25日に任命された大臣。
(注) 1)これまではすべての政党の登録番号を抽選で決めていたが,今回は国会に議席を有する政党は前回の登録番号と同じものを選択できるようになった。開発統一党のみ,今回も抽選で登録番号を決めることを選択した。2)登録番号18~23の政党は,アチェ州内の地方議会議員選挙のみに参加するアチェ地方政党。3)登録番号24の信徒党は,総選挙委員会の審査では選挙参加資格なしと判断されたが,総選挙監視庁が参加資格を認める決定を下したため,2022年12月30日に総選挙参加政党に追加された。
(注) 1)人口は2020年は人口センサス結果。それ以外は中央統計庁(BPS)による推計値。2) 労働力人口は,15歳以上の労働可能人口を指す。労働力人口と失業率は8月時点の調査結果。3) 消費者物価上昇率は12月時点での前年比。
(出所) BPSのウェブ資料(https://www.bps.go.id/),Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, ウェブ版(https://www.bi.go.id/id/statistik/ekonomi-keuangan/seki/Default.aspx)。
(注) 小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。
(出所) BPSのウェブ資料(https://www.bps.go.id/)。
(注) 小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。
(出所) 表2に同じ。
(注) IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。ただし,金融収支の符号は(+)は資本流入,(-)は資本流出。
(出所) Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, Statistik Utang Luar Negri Indonesia (https://www.bi.go.id/id/statistik/ekonomi-keuangan/sulni/Default.aspx), ウェブ版。
(注) ASEANは9カ国の合計。EUはイギリスを含む28カ国の合計。輸出額・輸入額とも本船渡条件(FOB)価格での表示。小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。
(出所) Bank Indonesia, Statistik Ekonomi dan Keuangan Indonesia, ウェブ版。
(注) 2020~2022年は執行分。2023年は執行見通し額。2024年は予算。
(出所) 財務省,APBN KITA 2024 Januari,Nota Keuangan Anggaran tahun 2024(https://www.kemenkeu.go.id/apbnkita)。