2024 Volume 2024 Pages 441-464
2023年は,翌年1月に予定されている第12次国民議会選挙(以下,総選挙)を見据えて与野党の動きが活発化した。現政権与党であるアワミ連盟(Awami League: AL)は,野党であるバングラデシュ民族主義党(Bangladesh Nationalist Party: BNP)への攻勢を強め,BNP指導者層や支持者は警察・治安部隊によりさまざまな容疑で拘束された。総選挙の日程が近づくにつれ,野党やその支持者らによる大規模集会やホルタル(ゼネスト),オボロド(道路封鎖)の回数が増加したことから,緊張が高まった。5~6月にかけて行われた特別区市長選挙においては,BNPが参加をボイコットしたため,AL候補者の当選が多数を占めた。
2022/23年度の経済は,貿易収支の改善やインフラ整備などの要因が重なり前年度に引き続き高い成長率を維持した。実質国内総生産(GDP)成長率は6.0%と好調であったものの,対ドル為替レートと金融収支が悪化した。インフレ率は通年で7.5%と高い水準で推移しており,民間消費の減少につながった。5月にサイクロン「モカ」がコックスバザールを直撃し,ロヒンギャ難民キャンプも被害を受けたため,政府は国際支援を強く呼びかけた。
外交面では,公正で自由な選挙を求めて米国が圧力を強めた。その一方で,隣国インドは内政不干渉の立場を堅持し,むしろ強権的なALを支持する姿勢をみせた。また,ウクライナ危機やパレスチナ問題をめぐる立ち位置から国際社会の分断が露見するなか,ロシアや中国はバングラデシュとの距離を積極的に縮めた。ロシア国営企業による原子力発電所建設は元建て決済で進められることが決定し,中国は,バングラデシュのBRICS加盟やロヒンギャ難民の送還に積極的な姿勢をみせた。日本に関しては,約4年ぶりにハシナ首相が来訪し,岸田首相との会談で両国関係の「戦略的パートナーシップ」への引き上げが宣言された。
2023年はガジプール,クルナ,ボリシャル,ラジシャヒ,シレットの5つの特別市(City Corporation)で市長選挙が実施された。5月25日のガジプール市長選挙では前市長の母親にあたるジャエダ・カトゥンが独立系候補として立候補し,AL公認候補を破って国内2人目となる女性市長に選出された。この際,選挙管理委員会は選挙が平和裏に実施されたと評価する発言をしたほか,AL公認候補も翌日には敗北を素直に認めた。また政府も敗北を自由で公正な選挙が行われたことの証として国内外にアピールするかのような対応をとった。
6月12日にはクルナとボリシャルで,21日にはラジシャヒとシレットで市長選挙が行われた。2018年の前回選挙と異なり,いずれの選挙においても最大野党BNPが選挙をボイコットして候補者を擁立しなかったため,AL候補者が当選する結果となった。総選挙前の地方選挙は通常,各政党が支持率を測り,また不正や暴動なく平和裏に選挙を実施できるかどうかを判断する試金石となる。しかし,今回の地方選挙ではBNPがボイコットしたため,各党の支持率を判断することが困難となった。地方選挙前後の治安情勢に関しては,前回選挙時に発生したAL支持者による野党候補やその支持者に対する暴力行為,野党による大規模な抗議運動などはみられず,比較的穏やかなものであった。平和裏に選挙が実施されたことを歓迎する選挙管理委員会に対し,現地メディアは「選挙管理委員会が良い仕事をしたのではなく,そもそも今回の選挙に競争が存在しなかったのだ」と冷ややかな論調であった。市長選挙の期間中,野党による抗議活動や公正な選挙を求める市民運動を徹底的に取り締まる状況が続いたことで,人々は選挙への信頼を失ったといえる。自由で公正な選挙を行う土壌そのものが損なわれた感が否めない。
第12次国民議会選挙に向けた与野党の動き第12次総選挙は,選挙管理委員会に登録されている44政党のうち28政党の計1970人の候補者(無所属候補者436人を含む)によって争われることとなった。今回の選挙においては争点といえるほどの政策論争はなく,選挙実施体制をめぐる2大政党間の駆け引きに注目が集まった。
最大野党BNPは総選挙実施に向けて,過去に導入されていた中立的な非政党選挙管理内閣制度の復活を要求したが,現政権与党であるALはそれを拒否し,むしろ野党への締め付けを強化した。こうしたALの対応に対して,欧米諸国,特に米国からは,バングラデシュにおける民主主義のあり方に懸念の声が上がり,5月には民主的な選挙のプロセスを阻害した個人やその家族に対する米国入国ビザへの規制措置が発表された。また同月,2018年の総選挙に引き続き,EUが選挙監視団を送らないことを決定した。
前回の第11次総選挙でBNPは,大規模なボイコット運動を展開することなく,大野党連合・国民戦線(Jatiya Oikya Front: JOF)の一員として候補者を擁立し選挙に参加したが,AL主導の選挙の下でわずか7議席を獲得するにとどまった。この経験からBNPは,「ALとの対話はもはや不可能」として2024年の第12次総選挙に向けて比較的大規模な集会やホルタル,オボロドを実施し,ALへの対決姿勢を鮮明にした。これに対しALもBNPを拒絶する態度をみせ,ハシナ首相がBNPを「テロリスト政党」と呼んで痛烈に批判したほか,かつてのBNPとイスラーム協会(Jamaat-e-Islami)による連立政権について「かたやテロリスト,かたや戦争犯罪者」という趣旨の発言をした。
野党勢力による抗議運動へのALの懸念が反映されたのか,BNPが大規模集会を実施した10月28日から11月11日までの間に,ダカ首都圏だけで2000人以上,全国規模では9000人以上のBNP関係者が警察,治安部隊によって逮捕された。そのなかにはBNPのファクルル幹事長等,党指導部の有力者も含まれる。ALはこれらの逮捕に政治的な意図はないとしているが,現地報道によると,今回の逮捕のうち少なくないケースが,現政権に反対する活動家や政治家への虚偽事件であることが指摘されている。主な容疑は暴行や爆発物の使用であるが,そのような事件は実際にはほとんど発生していない。「幽霊事案」と呼ばれるこれら虚偽の訴えにより野党関係者や市民活動家を一時的に拘束し,反政府活動を阻止する狙いがあるとみられている。
最終的にBNPは,現政権下では自由で公正な選挙の実施は不可能であるとして,11月末の立候補締切日までに公認候補を擁立せずに選挙をボイコットし,ALによる不正選挙を国内外に訴える戦略へと舵を切った。
パレスチナ情勢をめぐる対応2023年10月7日にパレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配するハマスがイスラエルに攻撃を行い,それへの報復としてイスラエル軍は同地区に対する大規模な軍事作戦を展開した。以降多くのムスリムが殺害されたことから,建国以来パレスチナとの間で良好な関係を維持してきたバングラデシュも例外なく事態への対応を迫られた。
10月26日,国連は一連の軍事衝突に関して議論する緊急特別会合を開催した。この時バングラデシュは,イスラーム諸国やロシアに並んで同会合の要請国として名を連ねた。翌27日まで続いた会合の結果,人道支援や拘束された市民の解放等を呼びかけた決議は,「即時停戦」が「人道的な休戦」とされる等の変更こそあったものの,121カ国の賛同によって可決された。また,これに続き12月12日には,人道目的の即時停戦を求める決議が153カ国の賛同のもと可決された。
バングラデシュは独立以来パレスチナ解放機構(PLO)との間で良好な関係を築いてきた。第4次中東戦争の際にはバングラデシュ政府がパレスチナに対して医療団の派遣や救援物資を提供したほか,1988年にはパレスチナ独立宣言を承認しており,今日に至るまで人材交流や安全保障を中心とした関係が続いている。ALが今回の軍事衝突に際してパレスチナ側に寄り添う姿勢を前面に押し出した背景には,長年のパレスチナとの友好関係はもちろんのこと,総選挙を見据えてイスラーム保守・タカ派グループに政権批判の材料を与えない意図があったと考えられる。また,バングラデシュはイスラエルを国家承認しておらず貿易関係がないこともあり,ALは強い姿勢でパレスチナ支持に臨めたといえる。
苦境に立たされる先住民族の人々2023年は,南東部のチョットグラム(チタゴン)丘陵地帯に住む先住民「ジュマ」の人々の脆弱性がより顕著になった年といえる。1997年12月に政府とチョットグラム丘陵人民連帯連合協会(Parbatya Chattagram Jana Samhati Samiti: PCJSS)の間で和平協定が締結された後も,ベンガル人入植者による暴力や民族間衝突等によって,ジュマの人々は不安定な状況に置かれてきた。
2022年10月,軍と治安部隊(Rapid Action Battalion: RAB)が先住民族武装組織を摘発する名目でバンドルボンの一部地域を封鎖して掃討作戦を開始したことから,ジュマの人々がインドのミゾラム州へ避難する事態となった。2023年に入ってからも,ミゾラム州へ逃れる人々の増加は止まらず,500人ほどが越境したとされる。その一方で,インドの国境警備隊に押し返された推定8000人ほどの人々がジャングルで国内避難民としての生活を余儀なくされた。避難が長期化することで,伝統的に生業としてきた焼畑農業を続けられず,食料危機のリスクも生じている。
2023年4月17日には,ジュマの若手活動家のチャンドラ・トリプラが,国連先住民族常設フォーラムに参加するため空港に向かう途中で誘拐未遂の被害にあった。同様の事件が12月11日にも発生し,ジュマの若手活動家4人が銃殺,3人が誘拐された。その後15日に,誘拐された3人が救出されたと報道されたが,一連の事件には軍の後ろ盾をもつ武装グループが関与しているとして,チタゴン丘陵地帯委員会(Chittagong Hill Tracts Commission: CHTC)や支援団体は強い懸念を表明した。
デング熱の流行2023年はデング熱が流行し,2019年の流行を上回る過去最多の感染者数となった。保健・家族福祉省の傘下にある保健サービス総局の統計によると,2023年1月1日から12月31日までの感染者数は累計で32万人を超え,死者数は1700人以上となった。デング熱の感染ピークは9月で,この1カ月だけで約8万人が感染し,約400人が死亡した。12月末の時点では1カ月の感染者数が1万人を下回り,死者数も83人まで減少した。特にダカでの感染被害は甚大で,8月14日までは感染の半数以上がダカで発生し,12月末時点でも感染者の3分の1はダカに集中している。
2021年に世界銀行が発行した報告書Climate Afflictionsにおいて,近年のバングラデシュの気候変動による気温と湿度の上昇や,雨量の増加がデング熱の流行を助長していると警鐘が鳴らされていた。殺虫や病床の確保など,事前に十分な対策を講じなかったとして政府への批判が高まった。
(日下部)
2022/23年度(2022年7月~2023年6月)のバングラデシュ経済は,前年度に引き続き高い成長を維持した。実質GDP成長率は6.0%(推計値)で1人当たり所得は前年度の24万1470タカから27万414タカ(推計値)に増加した。総輸出額は前年度の609億7126万ドルから630億5625万ドル(推計値)に増える一方で,総輸入額は同893億3690万ドルから782億9580万ドル(推計値)に縮小し,過去最大の貿易赤字であった前年度から赤字幅は減少した。ロシアのウクライナ侵攻等に起因する世界的な食料価格やエネルギー価格の高騰によりインフレ率は通年で7.5%と高い水準で推移していたが,財務省の報告書Bangladesh Economic Review 2023によると,貿易収支の改善,バングラデシュ初の高架式高速道路の開業,首都ダカにおけるメトロの一部完成などの大規模なインフラ整備が経済全体を支えた。2026年11月24日に後発開発途上国から卒業することを国連から認可されたバングラデシュは順調な経済発展の歩みを進めている。
四半期別の実質GDP成長率は,暫定値で第1四半期は対前年同期比9.4%増,第2四半期は7.8%増と,2020/21年度第3四半期から高い成長率が続いた。続く第3四半期は,2.0%増の成長に落ち込んだが,第4四半期は5.8%増と前年度第4四半期の3.2%増を大きく上回り再び上向いた。
次に実質GDPの生産面をみると,各セクターの成長率は農業3.4%,製造業8.4%,サービス業5.4%となった。成長率が最も高かった製造業のなかでも特に中小規模製造業が9.2%,零細製造業が10.0%の伸びを記録した。これは,中央銀行が昨年立ち上げた中小・零細企業の融資アクセスを支援する総額2500億タカの基金や,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大時から続くアジアインフラ投資銀行の支援を受けた緊急融資(COVID-19 Emergency and Crisis Response Facility Project)によるところが大きい。実際に,2022/23年度上半期の時点で9551億6960万タカの融資が中小規模製造業に行われ,前年度の総額8300億7290万タカを超えた。輸出は,4兆4114億タカと前年度比14%増を記録し,実質GDPの12.2%を占めた。輸出を支えるアパレル品は,2022/23年度も輸出額の85%(前年度81%)を占めた。
支出面では,民間消費が推計値で実質GDPの68.2%(前年度69.1%),政府消費が同5.6%(前年度5.7%),総消費が同74.0%(前年度74.8%)を占め,前年度から若干減少した。年度平均の消費者物価指数上昇率が前年度の6.2%を上回る9.0%であり,食料価格指数上昇率8.7%とともに民間消費が落ち込む要因となった。
経常収支は貿易収支や海外出稼ぎ労働者からの海外送金額の改善により第3四半期にプラスに転じたもののマイナス34億3400万ドルであり,2016/17年度から6年連続で赤字であった。貿易収支は非生活必需品を対象とした輸入抑制政策の効果もあり,貿易赤字は過去最大であった前年度332億250万ドルから171億5500万ドルに減少したが,依然として赤字は続いている。対ドル為替レートは中央銀行が2022年9月に複数為替相場制度を導入しタカ安の容認を表明したことから同年1月の1ドル87.3タカから2023年12月の110.2タカまで下落した。対ドル為替レートの下落を抑制するためのドル売り介入により,2023年9月末時点での外貨準備高は輸入額の5.3カ月分(260億3000万ドル)となり,前年9月時点の360億5000万ドルから減少した(詳細は後述)。
政策金利は高いインフレ率に対応して7月に6.5%,10月に7.25%,11月には7.75%まで段階的に引き上げられた。商業銀行の貸出予定平均金利は10月時点で7.9%であった一方,商業銀行の預金金利は引き上げられずに金利差は3.3%と1月時点の3.0%から広がった。また,12月1日より縫製産業に従事する労働者の最低賃金が5年ぶりに改定され月8000タカから1万2500タカに上昇した。縫製産業に従事する労働者は頻繁に待遇改善を求める抗議活動を行っており,彼らの要望が一定程度達成された。また,全産業の賃金率指数は7.0ポイント上昇し205.3(2010/11年度基準=100)となり,2010年から2倍以上になった。ダカ管区の賃金率指数は前年度比5.5ポイント増にとどまったものの,ロングプール管区で前年度比11.0ポイント増,ボリシャル管区で前年度比7.9ポイント増など地方での賃金上昇が大きかった。
不安定な為替相場と減る外貨準備高2023年は大幅な対ドル為替相場の下落と外貨準備高の減少に見舞われた。図1は対ドル為替相場とバングラデシュ銀行の外貨準備高の変動を示している。2022年9月に複数為替相場制度を導入し,中央銀行が実勢レートに公定レートが近づくこと容認したことでタカ安が一気に進んだ。この複数為替相場制度は,さらなるタカ安を見越した輸出企業が本国への送金を先延ばしするなどの問題も発生している。
(出所) バングラデシュ中央銀行,Monthly Economic Trends,各号を基に筆者作成。
2022年時点で外貨準備高は300~450億ドルの間で推移していたが,タカ安を食い止めるために中央銀行が行ったタカ買い・ドル売りの介入により,2023年5月末には300億ドルを割り込み,2023年11月には250億ドル以下に落ち込んだ。純外貨準備高(外貨準備高から短期的な対外負債を除いたもの)も,IMFが目標として設定していた177億8000万ドルに届かない172億ドルであった。2020年に輸入の9.0カ月分あった外貨準備高は2023年9月末時点で5.3カ月分になった。IMFは2023年1月30日に総額47億ドルの拡大クレジット・ファシリティー(Extended Credit Facility),拡大信用供与(Extended Fund Facility: EFF),強靭性・持続可能性ファシリティー(Resilience and Sustainability Facility)によるバングラデシュへの融資を発表し,即時払い込みとして約4億6830万ドルの融資を行った。12月12日にはIMFによる初回審査が完了し,約6億8980万ドルの2回目の払い込みが承認された。42カ月に及ぶ融資を受けながらマクロ経済の安定性を担保していくことになる。
また,格付け会社ムーディーズはバングラデシュ国債の信用格付けを2023年6月1日に投機的格付けであるBa3から1ランク引き下げB1とした。ムーディーズは外貨準備高の減少を抑えるための輸入制限措置が経済成長を妨げる要因に成りうると指摘している。
外貨準備高の減少を抑制する外貨獲得手段のひとつとして,政府は海外出稼ぎ労働者からの送金を促進する積極的な措置を講じてきた。例えば,公式な送金システムを利用した場合にボーナスとして総額に上乗せする現金インセンティブを2022年1月1日に2.0%から2.5%に,2023年10月22日には5%まで引き上げた。2022/23年度の海外出稼ぎ送金額は前年度を2.8%上回り合計216億1073万ドルとなり,マイナス成長だった前年度から再びプラス成長に転じた。COVID-19の収束による海外出稼ぎ労働者の増加とともに送金インセンティブの成果も一定程度みられた。
労働市場構造の変動バングラデシュ統計局(Bangladesh Bureau of Statistics)が2022年に実施した全国労働力調査(Labour Force Survey)の暫定結果が2023年3月に公開された。本調査は2016/17年度に行われて以来6年ぶりであった。2022年の労働力人口は7341万人であり,2016/17年度から990万人増加した。2022年の全国失業率は3.6%で,南アジアのなかでは最も低い数字であった。農村部失業率は3.3%,都市部失業率は4.2%となっている。前回調査時の全国失業率は4.2%であり,雇用状況は改善傾向にある。本調査の雇用と失業の定義は国際労働機関(ILO)に基づいているが,日雇い労働や生活を満足に送れない水準の労働,未活用労働も雇用に含まれているため,実態を反映していないという批判もある。
バングラデシュでは,労働市場におけるジェンダー不平等がこれまで問題視されてきた。女性の就学率が上がっているにもかかわらず労働参加率はいまだに低い。図2は性別ごとの労働参加率を示している。労働参加率は15歳以上の人口に対する労働力人口の割合から求められる。男性の労働参加率は2010年から80%以上を保ってきたが,女性の労働参加率は30%台を推移していた。2022年の全国労働力調査で女性の労働参加率は初めて40%を,また全体の労働参加率も60%を超えた。女性の労働参加率が低い理由にはムスリム国家であるバングラデシュの社会規範があると考えられる。ムスリムの家庭では女性が家の外で働くことに男性家長が難色を示す傾向にある。それでも女性の労働参加率が上昇した要因のひとつには,輸出額の約85%を占める縫製産業の拡大がある。縫製産業の工場では若い女性が多く雇用されており,バングラデシュ縫製品製造業・輸出業協会(BGMEA)が発表した2020年の数値によると縫製産業は約410万人の雇用を抱えており,そのうち65%が女性である。日本企業でも2019年にファーストリテイリングが国連女性機関(UN Women)とパートナーシップを結び縫製工場で働く女性のキャリア形成を支援する「女性エンパワーメントプログラム」を開始している。特に女性の社会進出と縫製産業は密接な関係にあるといえる。
(出所) バングラデシュ統計局,Quarterly Labour Force Survey 2022 Bangladesh Provisional Reportを基に筆者作成。
コックスバザールを直撃したサイクロン「モカ」
気候変動対策の状況分析を行っているNGOジャーマンウォッチが発行する“Global Climate Risk Index 2021”によると,バングラデシュは世界で7番目に異常気象や災害に対して脆弱であるとされている。バングラデシュが直面している主要な気候リスクはサイクロン,洪水,沿岸部における浸食,干ばつ,地滑りである。気候変動への脆弱性が高まると,異常気象の被害が拡大しリスクも高まる。
2023年5月13日から14日にかけて,大型のサイクロン「モカ」がミャンマーとの国境沿いにあるバングラデシュ南部のコックスバザール県を直撃した。およそ15時間にわたる豪雨により数カ所で地滑りが発生した。国際人道団体ACAPSが2023年5月23日に発行した“Bangladesh and Myanmar: Impact of Cyclone Mocha”によるとバングラデシュ国内の被害人数は約230万人で,そのうちバングラデシュ人が約130万人,ロヒンギャ難民キャンプの住民が約100万人である。国連のレポートによるとサイクロンによる直接の死者はいない。全壊した家屋は2000軒以上に上り,ロヒンギャ難民キャンプのほぼすべてが影響を受けた。また,コックスバザール県の南方に浮かぶセントマーティンズ島では,飲料水の枯渇が発生した。このように重大な被害を受けたものの,死者・行方不明者4000人以上を出した2007年のサイクロン「シドル」よりも被害は少なかった。
緊急対応として,バングラデシュ政府は直ちに1万7240人を避難させ,コックスバザール県に11棟のサイクロンシェルターを作成した。5月14日には3060人のロヒンギャ難民に非常食を配布し,コックスバザール県南部テクナフ郡(ウポジラ)の5601軒のバングラデシュ人世帯が各4100タカの緊急現金給付を受けた。栄養面の支援として,食事や飲料水の支給も行われた。人道支援を適切に行うには4216万ドルが必要と推定されており,バングラデシュ政府のみならず国連やNGOを含む国際社会全体からの支援が欠かせないため,ハシナ首相を筆頭にバングラデシュ政府は継続的な国際支援を呼びかけている。
(松浦)
2024年1月の総選挙を前にして,公正で自由な選挙の実施に向けた与野党の動きに国際社会の注目が高まるなか,米国はバングラデシュに対する圧力を強めた。バイデン政権はこれまでもハシナ政権の強権的な姿勢を暗に批判するかのような措置を講じてきた。2021年12月に米国が開催した民主主義サミットにバングラデシュは招待されず,また強制失踪や超法規的殺害に関与しているとしてRABの現・元幹部6人の入国も制限されてきた。
2023年5月24日には,アントニー・ブリンケン米国務長官が,民主的な選挙のプロセスを阻害した個人やその家族に対しビザの発給を制限することを発表した。同長官は現・元政府高官,与野党関係者,法執行当局,警察当局など幅広い関係者が制裁の対象になり得ると述べており,異例の厳しい措置といえる。さらに11月には,労働運動や組合活動家に暴力を加えた者に対して貿易上の制裁やビザの制限等の制裁を課すことも視野に入れるとの発表が米国務省によって追加的になされたことから,制裁対象が大きく広がることとなった。
バイデン政権は発足当初から自由で開かれた民主主義の価値観の尊重を掲げており,今回のバングラデシュに対する圧力強化もその一貫と捉えることができる。しかし,米国がハシナ政権の強権化を強い態度で批判することにより,バングラデシュが中国,ロシアといった国との距離を縮めていくのではないかとの懸念もあることから,外交関係者の間では,これが単なる警告なのか,実効性を伴う強い措置なのか,はたまた同じく2024年に総選挙を控えるインドに対する間接的なメッセージなのか等,さまざまな憶測が飛び交った。米国の狙いが読めないなか,欧州諸国や日本は公正な選挙に向けてどの程度現政権に圧力を加えるべきなのか,米国との共同歩調がとれず対応に苦慮した。
対中関係:BRICS加盟の後押しとロヒンギャ送還事業への積極的関与中国はバングラデシュにとって最大の輸入相手国であり,近年その影響力を強めている。8月22日から24日にかけて南アフリカのヨハネスブルクで開催された第15回BRICSサミットの際に,ハシナ首相は中国の習近平国家主席と4年ぶりとなる直接会談を行った。バングラデシュのBRICS加盟は実現しなかったものの,中国は積極的な支援の姿勢をみせた。
5月には,姚文駐バングラデシュ中国大使が,「中国はロヒンギャの祖国への送還を促進するためにバングラデシュとミャンマーの間を仲介している」と発言し,ロヒンギャ問題解決に向けた姿勢をアピールした。2017年のミャンマー軍によるロヒンギャ武装勢力ARSA(アラカン・ロヒンギャ救世軍)に対する大規模掃討作戦から逃れる形で70万人以上のロヒンギャがバングラデシュに避難してから6年が経過したが,帰還は進んでいない。難民キャンプの生活・治安状況も一向に改善しないことから,2023年は難民キャンプを船で脱出し国外へ逃れようとしたロヒンギャが漂流・遭難する事故が続発した。また,3月には不審火による大規模火災,5月にはサイクロン「モカ」による被害がキャンプで発生しため,生活再建に多額の費用が必要となった。このような状況下で,12月に中国が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じてロヒンギャ難民女性に対して150万ドルの支援を行った。この際に,姚文中国大使は,「長期的な解決策は難民の送還である」と述べ,難民の送還に意欲を示した。
対ロシア関係:原発建設における人民元決済の導入ロシアによるウクライナ侵攻以来,直接的な制裁を科していない多くの国々もロシアとの経済関係の見直しを迫られたが,バングラデシュにとってロシアは依然として重要な経済パートナーである。特にロシア国営企業ロスアトムが進めるループプル原子力発電所建設計画は,エネルギー問題を抱えるバングラデシュにとって悲願ともいえる大規模プロジェクトである。費用の9割がロシアからの融資によって賄われ,2024年末に稼働開始が予定されている。2023年4月17日のバングラデシュ政府高官の発表によると,両国政府は原子力発電所建設のための融資を人民元で支払うことで合意した。これはロシアが国際銀行間通信協会(SWIFT)の枠組みから締め出された制裁措置に起因する。いずれにしろバングラデシュが人民元建てにしてまで原子力発電所建設計画を続けることを選択したことは,中ロとバングラデシュの連携強化を意味しており,欧米諸国は警戒する姿勢をみせた。10月にはロシアからウラン燃料が引き渡され,バングラデシュは33番目の核燃料保有国となった。
しかしながらバングラデシュが基本的な対外姿勢として全方位外交の立場を取っていることに変わりはなく,欧米諸国とロシアの間でバランスを保とうと苦心している。2023年9月7~8日にかけて,ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相がロシアの外相としてはバングラデシュの建国以降初めてダカを訪問した。ハシナ首相はラブロフ外相との会談で,ウクライナにおける戦争に関し,対話をもって平和的に事態を収集する方法を見つけるべきだと発言した。ウクライナ危機においては,国連での非難決議を棄権するなどロシア寄りの対応をとっていたALだが,ここにきて欧米諸国に配慮する姿勢をみせた。
対印関係:ALに歩み寄るインド外交インドは,バングラデシュへの内政不干渉の立場を表明することで,ALに歩み寄る姿勢を示した。2023年,インドが議長国となった主要20カ国・地域(G20)首脳会議では,バングラデシュは他のアジア・アフリカ諸国と並んで招待国に加えられた。2023年11月10日にインドのニューデリーで実施されたインドと米国の2+2の大臣会合においては,バングラデシュの総選挙に関する議題が上がったが,会合後インドのビノイ・クワトラ外務書記官はメディアの取材に対し「第三国の政策について我々(インド)はコメントする立場ではない。バングラデシュの開発や選挙は内政問題であり,バングラデシュの人々が決めることだ」とALを擁護する発言をした。こうしたインドの対応は,ALへの圧力を強める米国とは一線を画するもので,近年,日米豪印の協力枠組み(QUAD)等を通じて急速に接近する米国とインドとの間でも,バングラデシュをめぐる外交方針には決定的な違いがあることを浮き彫りにしたといえる。
また,経済協力の一環として,3月に両国を結ぶ送油管「インド=バングラデシュ友好パイプライン」(IBFP)が開通した。同月18日に開催された記念式典には両国首相がオンラインで参加し,強固な二国間関係がアピールされた。インドの支援によって建設された132キロメートルのパイプラインは,インド西ベンガル州シリグリとバングラデシュのディナジプル県にあるメグナ石油貯蔵所を結ぶ。これによりエネルギー輸送コストと時間の削減,ルピー建取引によるドル不足の緩和が期待されている。ハシナ首相は「ロシア・ウクライナ戦争により多くの国がエネルギー危機に直面している現在,このパイプラインは国民のエネルギー安全保障に重要な役割を果たすだろう」と期待を述べた。
対日関係:ハシナ首相の訪日と安全保障関係の強化2023年4月25~28日にかけてハシナ首相は公式実務訪問賓客として日本を訪れ,念願であったとされる天皇との面会を果たし,26日に岸田首相や西村経済産業相と会談した。首脳会談後には両国関係を「包括的パートナーシップ」から「戦略的パートナーシップ」に格上げする共同声明が発表された。また,安全保障や経済協力,ロヒンギャ問題を含めた地域情勢についても議論がなされた。安全保障分野については,「政府安全保障能力強化支援」(OSA)の活用を含めた防衛装備品・技術移転に向けた取り組みの促進が議題に上った。8月にはOSAに基づく支援の供与対象4カ国のひとつにバングラデシュが選ばれたことが発表された。それを受けて11月15日に岩間駐バングラデシュ大使とワカル・ウズ・ザマン首相府軍務局主席幕僚との間で,5億7500万円を供与額とするOSAに関する書簡の署名・交換が行われた。バングラデシュの他にOSA供与国となったのはフィリピン,フィジー,マレーシアであり,いずれもアジア太平洋地域での中国の影響力の高まりを意識したものであるとみられている。他方,防衛装備品を中ロに依存するバングラデシュにとっては,安全保障上の協力相手国を多角化するという意味で今回のOSAに関する協定はメリットがあると考えられる。
また,経済協力関係強化の一環として,2023年9月にダカ=成田間の直通便運行がスタートした。これにより,移動にかかる時間が大幅に削減されることから,今後の人的・物的交流の拡大が期待される。
(日下部)
選挙管理委員会の発表によると,2024年1月7日に実施された総選挙では,ALが298議席中222議席を獲得して圧勝した。ハシナ総裁は4期連続での首相就任となり,ALは20年におよぶ長期政権を築くこととなる。
しかし,強権的なALの選挙運営や言論統制に対する批判は国全体で高まりつつある。ALとしては国民の不満を抑えるためにも生活が豊かになっていることを実感させる必要があるが,ウクライナ危機以降の物価の高騰により,人々の生活は目に見える形で苦しくなっている。新内閣が,最低賃金のさらなる引き上げや物価抑制策など国民目線の政策を打てるかが政権安定の鍵となる。
また,AL,BNPともに後継者問題が今後の課題になることは間違いない。ハシナAL総裁は1947年生まれ,カレダ・ジアBNP総裁は1946年生まれで,ともに70代後半を迎えている。両党首の直系血族で政治経験があるのはジア総裁の息子,タリク・ラフマンBNP副総裁のみだが,ロンドンに亡命中で影響力は限定的である。ハシナ総裁の長女サイマ・ワゼッドは2023年11月に世界保健機関(WHO)の南東アジア地域事務局長に選出されたが,母親の政治力による縁故採用だとの批判が上がるなど,国民の支持が十分とはいえない。
経済面では,国際商品価格の上昇が落ち着くと予想され,それに伴い国内のインフレ率も下がると考えられる。また,IMFからのEFFを含む融資を受けながら,減少し続けた外貨準備高を一定水準に回復させ,歳入を改善する必要がある。2024年も引き続き縫製品の輸出は好調と見込まれるが,2026年には後発開発途上国卒業後の関税優遇措置が無くなる可能性があるため,いち早い諸外国と経済連携協定の締結が求められる。
対外関係では,公正な選挙をめぐり非難を強めている米国が,具体的な制裁措置に打って出るのかが焦点となる。最大の輸出先である米国が貿易制裁措置を発動すれば大きな痛手となる。また,ロヒンギャの帰還事業に積極的な中国が,バングラデシュ政府とともに難民の十分な同意を得ないままに送還を推進しないか,国際社会は注視する必要がある。ミャンマーのラカイン州におけるアラカン軍(AA)とミャンマー国軍の紛争激化から,バングラデシュ側に避難するロヒンギャや戦闘から逃れる両軍兵士が増加しており,こうした人々を軍事政権下のミャンマーに送還すれば国際的な非難は免れない。
(日下部:立教大学異文化コミュニケーション学部准教授)
(松浦:地域研究センター)
1月 | |
5日 | アワミ連盟(AL),2041年までのビジョンとして「スマートバングラデシュ」構想を発表。 |
19日 | 政府,エネルギー規制委員会に対してガス料金の引き上げを指示。 |
24日 | 選挙管理委員会,第12次国民議会選挙(総選挙)において150の選挙区での電子投票機の導入を断念。 |
30日 | 国際通貨基金(IMF),バングラデシュへの47億ドルの融資を最終承認。 |
2月 | |
3日 | ダカメトロ2路線目となる1号線,着工。 |
5日 | スリランカのラニル・ウィクラマシンハ大統領,バングラデシュからの経済援助に対する謝意を表明。 |
6日 | ロヒンギャ難民の男性,ウキヤで銃殺。 |
7日 | ベルギーのマティルド・デュデケム・ダコ女王,国連の任務のために来訪。 |
8日 | 補選で選出された国会議員6人が就任を宣誓。 |
12日 | モハンマド・シャハブディンが次期大統領として選出。 |
14日 | 政府,9月から子宮頸がんワクチンの無料接種を10歳から15歳までの女児を対象に導入することを決定。 |
14日 | インドのクァルトラ外務次官,来訪。 |
16日 | 高等裁判所,教育機関の入学試験で婚姻状況を聞くことに対して違法判決。 |
18日 | 国連,資金不足によりロヒンギャ難民への食料援助を削減する計画を発表。 |
20日 | 国連開発計画(UNDP),国際母語デーを記念しベンガル語のユニコードをオンラインでリリース。 |
22日 | 内閣府調達委員会,1600万リットルの大豆油と6万トンの肥料の購入を承認。 |
24日 | バングラデシュ,ロシアのウクライナ侵攻について即時停戦を求める国連の投票を棄権。 |
25日 | バングラデシュ民族主義党(BNP)のデモ隊が治安部隊と衝突し100人以上が負傷。 |
28日 | 政府,1月から3度目となる電気料金値上げを発表。毎回5%ごとの引き上げ。 |
28日 | ロシアのプーチン大統領,モハンマド・シャハブディン次期大統領に祝辞を送る。 |
3月 | |
3日 | バングラデシュとインド,両国間の公式通貨としてのドル廃止を協議。 |
4日 | 縫製産業に従事する女性労働者が車にひかれ死亡したことに対して縫製工らがダカの道路を塞いで抗議。 |
4日 | ハシナ首相,カタールのドーハで行われた第5回国連後発開発途上国会議に出席。 |
4日 | シタクンドにある酸素製造工場が爆発し,300軒の家と10カ所の工場が全壊。 |
5日 | ロヒンギャ難民キャンプで大規模火災が発生し1万2000人が避難。アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)の関与が疑われる。 |
7日 | オールドダカのグリスタン地区で爆発が発生。10日までに少なくとも22人が死亡,100人以上が負傷。 |
11日 | バングラデシュビジネスサミット 2023,開催(~13日)。 |
13日 | 政府,半年以内に海外で失職したバングラデシュ移民に5万タカの補償を行うことを発表。 |
16日 | ロシア,ループプル原子力発電所の建設費用をルーブルで支払うよう提案。 |
16日 | バングラデシュ最高裁判所弁護士会の執行委員の選挙が行われALの支援を受けた候補が全14ポストを独占。 |
18日 | バングラデシュ=インド間の送油パイプライン開設。 |
20日 | 米国国務省の報告書,2018年12月の第11次総選挙は民主的ではなかったと記載。 |
21日 | ロヒンギャ難民キャンプで2人が銃撃により死亡。 |
23日 | ブータンのタンディ・ドルジ外務相,3月26日のバングラデシュ独立記念日に向け祝辞を贈る。 |
29日 | 全国労働力調査Labour Force Survey 2022が公表される。 |
4月 | |
2日 | クルナ県で59人のBNPメンバーが座り込み活動により逮捕。 |
4日 | ボンゴバジャールで大規模火災発生。 |
4日 | 選挙委員会,第12次総選挙で電子投票機を使用しないことを決定。 |
5日 | 財務省とバングラデシュ橋梁公社間で交わされたパドマ橋の建設費用の返済が開始。 |
6日 | 2013年に倒壊したラナ・プラザのオーナーであるソヘル・ラナが保釈。 |
13日 | ポンチョゴルでインドの国境警備隊(BSF)が投げた爆弾によりバングラデシュ農家が負傷。 |
16日 | ダカで1965年からの観測史上最高気温となる40.5度を記録。 |
18日 | 政府,ループプル原子力発電所建設に関わる費用を人民元で決済することでロシアと合意。 |
19日 | コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプで50軒の家屋が焼失。 |
24日 | モハンマド・シャハブディン,第22代大統領に就任。 |
25日 | ハシナ首相,日本を含む15日間の外遊に出発。日本訪問は約4年ぶり。 |
26日 | ハシナ首相,岸田首相と会談。岸田首相はロヒンギャ難民問題解決に向けた継続的な支援を約束。 |
29日 | ハシナ首相,訪米し世界銀行とバングラデシュのパートナーシップ50周年を祝う。 |
5月 | |
4日 | 韓国から5年間で計30億ドルの優遇融資を受けることで両国が合意。 |
5日 | ハシナ首相が訪英し,スナク英首相とロンドンで会談。 |
6日 | 中国の姚文駐バングラデシュ大使,ロヒンギャの本国送還のためにバングラデシュとミャンマーの仲介をしていると発言。 |
7日 | スーダン内戦から退避してきた135人のバングラデシュ人,サウジアラビアに到着。 |
13日 | ハシナ首相,バングラデシュに制裁を科す国からの輸入を止めると発言。 |
14日 | サイクロン「モカ」,コックスバザール県に直撃。120万人以上が避難。 |
16日 | ハシナ首相,ナクバから75周年を記念してパレスチナの主権を訴える声明を発表。 |
20日 | 野党全国集会でBNPとALの支持者が衝突。少なくともBNP支持者141人が逮捕。 |
22日 | ハシナ首相,カタールで行われるエコノミックフォーラムに参加するためにドーハを訪問。 |
24日 | シェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ・カタール国首長,液化天然ガス(LNG)のバングラデシュへの供給拡大を約束。 |
24日 | 米国,バングラデシュ総選挙の民主性を阻害した個人とその家族の入国ビザ規制を発表。 |
26日 | ガジプール市長選挙でジャイダ・カトゥンが勝利。国内2人目となる女性市長誕生。 |
31日 | タジュル・イスラム地方政府・農村開発・協同組合相,ナイジェリアの新大統領就任式にバングラデシュ代表として参加。 |
6月 | |
2日 | ムスタファ・カマル財務相,2024年度から,国民皆年金制度を開始すると発表。 |
4日 | BNP幹部,岩間駐バングラデシュ日本大使とダカにて会談。 |
8日 | ロヒンギャ難民,本国送還を求めてコックスバザールで抗議デモを実施。 |
12日 | クルナ,ボリシャルの2特別市で市長選挙が実施され,ALの候補者が勝利。 |
19日 | バングラデシュ政府,BRICSへの加盟を申請。 |
21日 | ラジシャヒ,シレットの2特別市で市長選挙が実施され,ALの候補者が勝利。 |
21日 | バングラデシュ銀行理事の任期が最大12年に延長。 |
22日 | バングラデシュ議会,1984年制定の所得税条例を廃止し,新しい所得税法を制定。 |
7月 | |
7日 | EU,ロヒンギャ難民への食料支援等を目的として1250万ユーロの拠出を発表。 |
8日 | コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプで,5人のロヒンギャ男性が射殺。 |
9日 | ブータンのジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王,来訪。マハムド情報相と会談。 |
11日 | バングラデシュとインドの貿易においてルピー決済を確立。 |
16日 | ダカの鉄道が雇用条件の改善を求める鉄道労働者によって5時間封鎖。 |
17日 | ダカ第17選挙区国会議員補選の実施。BNPはボイコット。 |
17日 | ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC)外相会合,バンコクで開催。 |
22日 | 米価の上昇。前月比較でくず米の価格が1kg当たり3〜5タカ上昇。 |
23日 | ハシナ首相,国連食料システムサミットに参加するためにローマを訪問。 |
31日 | 国連事務総長副広報担当官,国連本部でバングラデシュに対して平和的で信頼性のある包括的な総選挙を求める声明を発表。 |
8月 | |
1日 | 中学校の教師が記者クラブの前で待遇改善を求めるハンガーストライキを実施。 |
1日 | ピーター・ハース駐バングラデシュ米国大使,カジ・ハビブル・アワル選挙管理委員長と選挙管理委員会オフィスで面会。総選挙前の監視団を10月に送ることを伝える。 |
4日 | 国連,バングラデシュ警察に総選挙前の過度な武力行使は控えるよう勧告。 |
5日 | デング熱による死亡者が1月1日からの累計で300人を超える。 |
22日 | ハシナ首相,ヨハネスブルクで開催された第15回BRICSサミット(~24日まで)に参加。新規加盟国には選出されず。 |
23日 | 軍司令部作戦・計画総局長フシェイン・ムハンマド・モシウル・ウフマン准将,米国と防衛協力に関する二国間対話をダカにて実施。 |
26日 | クミッラで15人のBNP党員がAL党員に襲われ負傷。 |
27日 | マスード・ビン・モメン外務次官,ロヒンギャ難民約1000人のミャンマーへの送還を計画していると発表。 |
30日 | ハース在駐バングラデシュ米国大使,ダカ警察署長と面会。 |
9月 | |
1日 | ビーマン・バングラデシュ航空の成田とダカを結ぶ直行便が17年ぶりに再開。 |
2日 | ダカでバングラデシュ初の高架式高速道路が開通。 |
5日 | モハンマド・シャハブディン大統領,ジャカルタで行われたASEANサミットに参加。 |
7日 | ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相,来訪。 |
8日 | ハシナ首相,主要20カ国・地域(G20)首脳会議参加のためニューデリーを訪問。 |
8日 | フランスのマクロン大統領,来訪。 |
13日 | サイバーセキュリティ法(Cyber Security Bill)が国会で可決。 |
14日 | 食料価格の高騰を受け,卵,玉ねぎ,ジャガイモの固定価格制を導入。 |
21日 | 米国,ミャンマーとバングラデシュにロヒンギャ難民関連の人道支援,総額1億1600万ドルの拠出を表明。 |
28日 | BNP,大規模集会をアミンバジャールで実施。 |
10月 | |
3日 | ネパール国会議員代表団,国会議長と会談。 |
4日 | ARSAとロヒンギャ連帯機構(RSO)の衝突によりロヒンギャ難民2人が死亡。 |
5日 | ロシア,バングラデシュにウラン燃料引き渡し。バングラデシュは33番目の核燃料保有国となる。 |
7日 | 米国の事前選挙監視団,到着。 |
11日 | アジア開発銀行(ADB),2026年まで毎年30億ドルの支援を行うと表明。 |
11日 | 内閣府調達委員会,肥料・レンズ豆・食用油の輸入を許可。 |
21日 | 政府,イスラエルの攻撃によるパレスチナ人犠牲者への弔意を公式表明。 |
24日 | ハシナ首相,ベルギーを訪問し(~26日),EU首脳と会談。 |
30日 | 高等裁判所,2016年のダカ襲撃テロ事件の首謀者への判決を言い渡す。 |
31日 | BNP主導で全国的な道路封鎖を実施(~11月2日)。 |
11月 | |
2日 | 政府,スリランカに1億タカの支援を決定。 |
5日 | ハシナ首相,サウジアラビア訪問。 |
8日 | BNPとイスラム協会(JI)が2日間の道路封鎖を実施。 |
8日 | 縫製業労働者による賃金引上げデモがガジプールで発生し,労働者1人死亡,30人が負傷。 |
12日 | BNP,2日間の道路封鎖を実施。 |
15日 | 第12次総選挙が2024年1月7日に実施されると発表。 |
16日 | バングラデシュ,国連教育科学文化機構(UNESCO)の執行理事会メンバーに選出。 |
17日 | 保健省保険サービス局(DGHS),デング熱の発生が2000年の記録開始以来最多になるとの見解を発表。 |
19日 | ロヒンギャ難民1人がARSAとRSOの衝突に巻き込まれて死亡。 |
22日 | 国民党(JP),総選挙への参加を表明。 |
26日 | AL,総選挙候補者を発表。 |
26日 | 最低賃金委員会,縫製産業の最低賃金を月1万2500タカに引き上げることで最終合意。 |
28日 | ADB,10億ドルの拠出に合意。 |
29日 | BNP,2日間の道路封鎖を実施。 |
30日 | 選挙管理委員会,候補者受付締切り,無所属候補申請者数過去最高の747人と発表。 |
30日 | ラウシャン・エルシャドJP党首,総選挙に出馬しない意向を表明。 |
12月 | |
1日 | ハシナ首相,アジア気候モビリティチャンピオンリーダーを受賞。 |
4日 | IMF,バングラデシュの気候変動緩和のための80億ドルの基金設立を発表。 |
6日 | 総選挙の立候補者のうち731人の立候補が却下。うち423人が無所属。 |
12日 | IMF,6億890万ドルの融資を発表。 |
13日 | 米国,ロヒンギャ難民支援に対する8700万ドルの追加拠出を発表。 |
15日 | IMF,バングラデシュの外貨準備高の最小基準額を170億ドルに下方修正。 |
17日 | 選挙管理委員会,第12次総選挙に出馬する候補者数が1896人に確定したと発表。 |
18日 | ハシナ首相,コソボのギュナー・ウレヤ駐バングラデシュ大使と会談。 |
22日 | BNP,総選挙の投票ボイコットキャンペーンを開始。 |
27日 | AL,マニフェストを発表。雇用の創出を目標に掲げる。 |
(出所) Statistical Yearbook of Bangladesh 2022 (June 2023発行)より作成。
(注) *女性閣僚。
(注) 1) 消費者物価上昇率は2022/23年度から2021/22年度=100ベースに変更。それ以外は2005/06年度=100ベース。2)消費者物価上昇率,為替レートは年平均値。3)2022/23年度は暫定値。
(出所) 人口データはBangladesh Bureau of Statistics, Gross Domestic Product of Bangladesh, 2022-23 (Final)などより,その他はBangladesh Bank, Monthly Economic Trends, December 2023より作成。
(出所) Bangladesh Bureau of Statistics, Gross Domestic Product of Bangladesh, 2022-23 (final) などより作成。
(注) 1) 実質値。2)暫定値。
(出所) Bangladesh Bank, Monthly Economic Trends, Feburary 2024より作成。
(出所) Bangladesh Bank, Monthly Economic Trends, February 2024 より作成。
(注) IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。ただし金融収支の符号は(+)は資本流入,(-)は資本流出を意味する。1)修正値。2)暫定値。
(出所) Bangladesh Bank, Bangladesh Bank Quarterly, July-September 2023 などより作成。
(出所) Ministry of Finance, Budget in Brief 2023/24 などより作成。