2024 Volume 2024 Pages 545-570
2023年のパキスタンは前年からの中央・州議会の混乱が続いた。経済面でも前年からのデフォルト危機がさらに現実味を帯びた。
1月にパンジャーブ州とハイバル・パフトゥンハー(KP)州議会が,8月には連邦下院が任期満了を待たずに解散されたが,いずれも選挙の延期が繰り返され,年末になってようやく日程が決まった。与野党とも有力政治家が選挙に立候補できるかが焦点となった。パキスタン正義運動党(PTI)のイムラン・ハーン前首相は,汚職などの容疑で逮捕され,出馬の見通しが立たない一方,ムスリム連盟ナワーズ派(PML-N)のナワーズ・シャリーフが事実上の亡命生活を送っていた英国から4年ぶりに帰国し,法律改正によって選挙参加が可能となった。治安状況は前年よりさらに悪化し,テロ件数,犠牲者数ともに増加した。
2022/23年度の経済は実質経済成長率がマイナス0.2%と,新型コロナウイルス禍を除けば史上最低に近い成長率であった。外貨準備高が落ち込み,デフォルト危機が前年度以上に現実味を帯び,為替相場も史上最低水準に下落した。2022年の洪水の影響を受けた食糧不足に加えて,食料や石油を輸入に頼るパキスタンにとって,ルピー安はインフレを加速させた。デフォルト危機回避のためにはIMFに頼らざるを得なかったが,その融資条件が短期的にはルピー安,また電気やガス料金の引き上げを容認するものであったため,苦渋の政策判断を迫られた。
対外関係では,インドとの関係は停滞し,アメリカ,中国との関係も大きな変化はない。アフガニスタンとは国境管理やパキスタン国内のターリバーンとの関係,難民の扱いをめぐって緊張をはらんでいる。またパキスタンからイランへ,越境テロがあった可能性が指摘され,両国間の新たな懸念材料となっている。
前年に失脚したハーン前首相とPTIが反政府デモや政府批判を繰り返し,解散総選挙を求めるなかで,パンジャーブ州とKP州の議会がそれぞれ1月14日と18日に解散された。州議会も連邦議会同様,解散から90日以内に選挙を実施すると憲法に定められている。アルヴィ大統領は2月8日,選挙管理委員会に対し選挙日程を発表するよう促したが,4月14日と18日の期日までに選挙は実施されなかった。両州は2018年の総選挙でPTIが与党となっている州であるが,知事はそれぞれPML-Nとイスラーム・ウラマー党(JUI)で,いずれも前年のハーン前首相失脚後にシャハバーズ・シャリーフ政権下で任命されており,同前首相の総選挙を求める運動に対抗する意図があったとみられる。なお州知事は,首相の助言を受けて大統領が任命する。
こうしたなか,最高裁判所は4月4日,選挙が実施されないのは違憲状態であるとして,5月14日に両州議会選挙を実施するよう求める裁定を下したが,PML-Nはこれに従わない姿勢をとり続けた。与野党の話し合いも結論を得ることができず,選挙が行われないままとなった。
この間ハーン前首相は,自身が前年11月にワジラバードで銃撃を受けた件について,軍や与党幹部が関与していたと主張するなど,SNSなどを通じて批判を続けた。これに対して軍広報部は,事実無根の悪意に満ちた批判をやめなければ法的措置をとると声明を出すに至り,ハーン前首相と軍との対立は深まった。
ハーン逮捕への抗議活動の激化5月9日にイスラマバードで,ハーン前首相が土地の不正取得にかかわる汚職の容疑で逮捕された。すると直後からこの逮捕に抗議するPTI活動家らによるデモが始まり,翌10日にはPTI関係者による抗議活動が全国に拡大したばかりでなく,各地でデモ参加者が暴徒化する事態となった。特にイスラマバードに隣接するラーワルピンディーで陸軍司令部に暴徒が乱入したこと,ラホールで軍団長の官舎が放火されたこと,そして全国20カ所で軍関連の施設が襲撃を受けたことは,軍に大きな衝撃を与えた。軍施設への攻撃は,前代未聞だったからである。
この暴動により,全国で24人が死亡し,3500人以上(5000人以上という報道もある)が逮捕される事態となった。ハーン前首相が扇動したものかどうかは判然としないが,PTI支持者の暴徒化であり,政党としての遵法意識が問われる。軍はこの件について「暗黒の一章と記憶されるだろう」と声明を出し,PTIとハーン前首相を批判した。5月17日にシャリーフ首相が国家安全保障会議(NSC)を開催し,政治問題解決のための対話を強調しつつ,9日の暴動については軍事施設の放火行為を強く非難し,5月9日を「ブラックデー」とすると宣言した。なお,ハーン前首相は11日に釈放された。
軍施設襲撃の余波この軍施設襲撃事件は,軍とPTI双方に大きな影響を与えた。軍内部では,軍施設への襲撃を許した責任を問われ,氏名は公表されなかったものの,高官3人が免職となり,15人が懲戒処分を受けたと発表された。このことをめぐって処分された軍人は職務上の責任を問われたものとみられるが,実はPTI支持者が軍内部にいたのではないかとの憶測を呼んだ。とりわけラーワルピンディーの陸軍司令部本部襲撃では,手引きする者がなければ司令部に暴徒が侵入することは考えにくかったからである。とはいえ,その後PTIをめぐる軍内部の確執などを明らかに裏付ける情報は確認できない。抗議活動が激化した9日夜には,サナウッラー内相の指示で携帯電話によるインターネット接続が制限された。また,アーシフ国防相は「暴力の台本はソーシャルメディアを通じて準備された」と述べている。
一方PTI側では,この一件をきっかけに大量の離党者が出た。100人を超えると報じられた離党者のなかには,閣僚経験者も多数含まれていた。ハーン前首相の特別補佐官を務めたウスマン・ダールは,この事件後,党を離れたばかりか政界をも引退した。後日,彼はテレビのインタビューに答えて,この暴動は事前に計画されていた恥ずべき事件で,PTIにとって最大限に非難されるべき汚点であり,洗い流すには時間がかかるとしたうえで,ハーン前首相がこの暴動に深く関与していたことを示唆し,この件によって党の基盤は揺らいだ,と述べている。6月8日には,ハーン前首相の旧友でありPTI幹部であったジャハンギール・タリーンが,離党して新党パキスタン安定党(IPP)を結成したことが発表された。そして,イムラン・イスマイル(元シンド州知事),アリー・ザイディ(元海事問題相)らがPTIを離党して,この党に合流した。
また,5月9日の一件後は,PTI支持者や党の活動家などの自宅が襲撃を受けたり,不在中に事務所や自宅が荒らされたりする事件が連続した。いずれも動機や背景は不明のままであるが,報復ではないかとの見方もある。さらに,著名なジャーナリストであるイムラン・リアズ・ハーンが,5月11日に逮捕され,その日のうちに釈放された後,誘拐されるという事件も起きた。彼は軍やPML-N政権に批判的な記事や,YouTubeでの発信で知られ,ハーン前首相の失脚にはアメリカの陰謀があった等の見方を公表していた。彼はそのまま行方不明となったが,9月25日に,パンジャーブ警察が無事を確認したと発表した。この事件については軍が関与していると言われているが,その真相は明らかにされていない。
下院の解散8月9日,アルヴィ大統領はシャリーフ首相の助言に基づき,下院を解散した。これを受けて内閣は総辞職し,同14日,アンワールル・ハク・カーカルが第8代暫定内閣首相に就任した。先述のとおり,憲法規定により総選挙は解散から90日となる11月上旬までに行う必要がある。しかし最新の国勢調査結果に基づく選挙区割り調整を理由に,実施は数カ月遅れるとみられていた。その後選管理委員会は11月2日に,翌年2月8日に総選挙を実施すると発表した。12月15日にはさらに詳細な日程が公表されたことで,ようやく選挙の実施が見通せることとなった。
首相在任中に外国からの贈り物を売却して得た利益を資産報告書に虚偽記載した罪で起訴されていたハーン前首相については,8月5日に禁錮3年の有罪判決が下った。判決後はラホールの自宅で拘束され,アトックの刑務所に収監された。この判決から,選挙管理委員会は,ハーン前首相は今後5年間,連邦,州いずれにおいても議員に選出される資格がないと発表した。判決を受けてハーン前首相はイスラマバードの高等裁判所に控訴し,29日に刑の執行停止と保釈が命じられたが,彼は別件の秘密文書を漏洩した容疑で逮捕され,収監が続いた。その後,同じ罪で逮捕されたクレーシー元外相とともにアディヤラ刑務所に移された。
シャハバーズの兄,ナワーズ・シャリーフ元首相の帰国10月21日,ナワーズ・シャリーフは4年ぶりに帰国を果たした。彼はいわゆる租税回避地の利用者などを暴露した「パナマ文書事件」で,マネー・ローンダリング,汚職などが明らかになったとして,ハーン元首相らに訴えられた。そして2017年に汚職裁判所で有罪判決を受けて,収監された。これにより,最高裁はナワーズ・シャリーフに公職追放の判決を言い渡した。その後,彼は2019年に病気の治療のためとして期限付きでロンドンへの渡航を許されたが,4週間の期限を過ぎても帰国しなかった。本来は帰国と同時に逮捕されるはずであった。
来たる下院選挙に,ナワーズ・シャリーフを政治家として復帰させたいPML-N政権は,一部野党からの賛同をもとりつけ,まず2023年5月,議員資格喪失の期間を,最高裁の判断にかかわらず5年以下とし,その適用は第18次憲法改正の施行日(2010年4月20日)に遡ることとする選挙法改正を行った。この法改正によって,ナワーズ・シャリーフが選挙に出馬できない理由がなくなった。
帰国後ナワーズ・シャリーフは,有罪判決を受けていた2件の事件について無罪を主張してイスラマバード高裁に控訴し,これを認められた。同高裁は,審議の結果11月29日と12月12日に,2件の汚職事件についてそれぞれ判決を破棄して,ナワーズに無罪判決を下した。こうしてナワーズ・シャリーフは再びパキスタンの政界に復帰する機会を得たが,一連の流れが,前の選挙でPTI政権を成立させる原動力となった若い世代に受け入れられるのか,さらにPML-N支持者を増やすことにつながるのかは未知数である。
治安状況の悪化2023年は治安状況に改善がみられなかった。むしろテロ件数とそれによる犠牲者は,いずれも3年連続で増加し,悪化の一途をたどっている。本年のテロ件数は306件(前年比17%増)で,それによる犠牲者は693人(同65%増)となった。犠牲者のうち330人は国境警備隊,軍,警察などの治安機関の関係者であったが,市民の犠牲も260人に上った。それ以外にテロ実行者自身の死(自爆による場合や治安当局との交戦の結果)も含まれる。
テロ実行者の内容をみると,パキスタン・ターリバーン運動(TTP)とその関連グループ,イスラーム国ホラーサーニー(ISKP,昨年度までIS-Kとしていたが本年からISKPという表記に統一する)によるものが208件(前年179件)と最も多いが,バローチスタン州およびシンド民族主義グループによる事件も86件と,前年の79件から増加している。また9月29日にバローチスタン州とKP州で相次いだ爆弾テロのように犯行声明が出ていない例もある。
イスラーム勢力によるものとしては,1月30日にペシャーワルのモスクで爆弾が爆発し100人以上が犠牲となった。TTPとISKPが犯行声明を出したが,のちにTTPは取り下げた。8月の下院任期満了を控えた7月30日にも,KP州で約400人が参加していたJUI集会で自爆テロが発生し,死者は子供20人余りを含む54人と報じられた。シャリーフ首相は,「明らかにパキスタンの民主主義体制に対立する犯行で絶対に許されない」とSNSで非難した。ISKPが,民主主義は「真のイスラーム教やその神聖な法と相いれない体制」とする犯行声明を出した。
一方,TTPは,2022年11月に政府との停戦を破棄して以降,警察や治安部隊を狙ったテロを繰り返してきた。2023年1月には関連組織が北西部ペシャーワルの警察敷地内で100人超が死亡する自爆テロを起こしている。ISKPとは競合関係にあるため,今後も双方が相手のテロ活動に刺激されて犯行を重ねる状況が懸念される。そのほか,11月にはパキスタン・ジハード運動(TJP)がミアンワーリー訓練基地を襲撃したが,パキスタン空軍によって9人全員が殺害された。
そのほか,宗派・宗教間対立による件数が12件と,前年の4件から3倍に増加していることが注目される。ここにはシーア派とスンナ派の対立,キリスト教徒への襲撃が含まれる。特に宗教間対立では8月16日,ファイサラバードのジャランワーラーでキリスト教コミュニティーへの大規模な襲撃が発生した。シネマチョウクと呼ばれる通りでクルアーンのページが数枚捨てられているのが見つかったことが発端となり,その近くにキリスト教徒が住んでいたことから,彼らが冒涜行為を行ったとして,群衆が市内のキリスト教徒の住宅や教会を襲撃したと報じられている。22の教会,90軒以上の家屋が被害を受けた。21日にはカーカル暫定首相が就任後初の国内視察として現地を訪問し,「キリスト教徒コミュニティーはパキスタン建国に重要な役割を果たした。少数派コミュニティーを守ることはムスリムの責任である」などと述べた。パキスタンでは社会不安が高まると,こうした宗派・宗教間対立による暴力が増加する傾向があり,経済の停滞や政治的な混乱の影響が長引くことで,さらにテロ件数の増加傾向が強まるという負の連鎖に陥ることが懸念される。
8月13日,グワーダルで中国人労働者を乗せた車列に路肩爆弾が爆発した。死傷者はなかった。こうした中国人に対するテロは散発しているものの,以前よりも犠牲数は減少した。テロ件数全体に占める割合も小さくなっている。
(井上)
2022/23年度(2022年7月~2023年6月)の実質国内総生産(GDP)成長率はマイナス0.2%と,コロナ禍に見舞われた2019/20年度を除けば1952年以降で最低であった。デフォルト危機やインフレなど,基本的に前年度と抱える問題に変わりはないが,今年度はさらにそれらが悪化した。
セクター別では,農業部門が対前年度比1.6%(前年度4.3%),工業部門がマイナス2.9%(同6.8%),サービス部門が0.9%(同6.6%)の伸びであった。工業部門では大規模製造業部門が大きく落ち込み,それが史上最低レベルの成長率の要因にもなった。年度初めの洪水の影響,およびデフォルトの危機を受けて輸入抑制政策がとられたことで原料や中間投入財が不足し,多くの工場が一時的に操業停止せざるを得なくなった。また,金融引き締めによる借入コストの上昇も大きい。農業は雨季の作物である綿花やコメが収穫直前に洪水の影響を受けて減産となったが,乾季の小麦が豊作だったことで相殺した感がある。生産部門の低迷を受けて,サービス部門のうちでも特に小売・卸売が伸び悩んだ。
長年にわたり,パキスタン経済唯一の好材料であり続けた労働者送金も伸び悩んだ(対前年度比13.6%減)。先進国の金融引き締め政策は石油需要の伸び悩みにもつながったことから,パキスタン人労働者の最大の受け入れ先である中東湾岸諸国からの送金が落ち込んだ。大規模製造業部門の伸び悩みは,輸出の伸び悩みにも直結するため,輸出額は対前年度比で10.4%減であった。しかしデフォルトの危機に直面して前年4月から続いた輸入抑制政策のため,輸入も同28.5%減であった。これにより経常収支赤字は同87.2%削減され,対GDP比0.7%となった。経常収支赤字は小さく抑えられたものの,IMFによる条件付き融資である拡大信用供与措置(Extended Fund Facility: EFF)の第9次審査が遅れたことで,海外からの資金流入は緩慢であった。IMFのEFF審査を基準にパキスタンの国債格付けやリスクが決まり,IMFが条件達成を認めないかぎり,各国や国際機関が融資に躊躇するからである。審査遅れの原因は,IMFとパキスタン政府との間で,条件について合意が得られないためであった(詳細は後述)。2023年の国際収支は前年度よりさらに悪化し,外貨準備高は危機的な状況が続いた。ルピーは大幅に下落し,対前年度比で39.8%,9月6日には,パキスタン史上最安かつ大台突破の1ドル307ルピーまで落ちた(図1)。
(出所) State Bank of Pakistan, Statistical Bulletin各号。
IMFによるEFF審査に生殺与奪を握られていたパキスタンは,主に財政赤字の削減を目標とした条件を受け入れざるを得ず,補助金の削減を中心とした緊縮的な財政支出を余儀なくされた。しかし利子率の上昇により利子払い額が増加し,財政赤字は対GDP比7.7%と,目標の4.9%には遠く及ばなかった。
選挙を控えたパキスタンにとって,経済面の最大の悪条件は,世論が最も嫌うインフレであった。2022/23年度の消費者物価指数(CPI)上昇率は,2桁台に乗り大騒ぎした前年度の12.2%からさらに加速して29.2%であった(詳細は後述)。
デフォルト危機とIMF2023年のパキスタン経済は,2022年をさらに上回るかたちで,デフォルト危機が現実味を帯びた。年初には,外貨準備高が適正水準とされる輸入の3カ月分を大幅に下回る3週間分までに減少していた。デフォルト危機が輸入抑制政策につながったため食糧不足に拍車をかけており,インフレとも相まって850万人が食糧難に直面したという(World Bank Pakistan, Reforms for a Brighter Future: Discussion Note 2, 2023年9月19日)。
主だった国際報道でも,2023年中にデフォルトするだろうとの予想が散見された(例えばEconomist,2023年2月7日)。IMFによるEFFプログラム(総額65億ドル)は6月末に終了が決まっていた。引き続きIMFの支援を得るには,その条件に沿った緊縮的な財政政策を維持する必要があった。しかし当初は10月に総選挙が予定されていたため,政府は難しい選択を迫られた。IMFの条件は財政赤字削減,とりわけ増税や石油・ガス関連の補助金削減や中止を求めており,世論の賛成は得られにくい。シャリーフ首相は2月3日,IMFの「想像を超えた」(Reuters,2023年2月3日)要請に応えざるを得ないと発言し,国民の理解を求めた。
実際にIMFとの協議は難航した。2月1日からIMFの審査団が来訪し,EFFの第9次審査を開始した。これはもともと前年に予定されていたものだが,パキスタンの財政改革が遅れてIMFとの間で折り合いがつかず,審査も遅れていた。2月9日に対面審査は終了したが,パキスタンが条件を満たしていることを認めない厳しい判断だった。このため,この審査で供与が期待されていた11億ドル分については結論が出ず暗礁に乗り上げた。しかし,IMFとの協議そのものは審査終了後も継続し,早くも10~12日に,オンラインで協議を開始した。2月15日に,ガス料金引き上げ,所得税や売上税の増税,結婚式などのセレモニーに課税を決定したのは,IMFの要請に応えてのものであった。また3月31日には,経常収支赤字削減のために,前年4月からとっていた輸入177品目について,輸入価格100%に相当する現金のデポジットを必須とした輸入制限を撤廃した。これも,IMFのEFF供与条件のひとつであった。
IMFとの協議がなかなか実を結ばないために,政府はなりふり構わずデフォルト回避を図った。具体的には主に友好国からの融資である。まず1月12日,アラブ首長国連邦(UAE)から10億ドルの新規融資とともに,20億ドルの返済繰り延べについて了承を得た。2月22日,中国からの7億ドル融資の合意を取り付けた。3月31日,イスハーク・ダル財務・歳入・経済問題相は,前週に満期を迎えた中国からの債務20億ドルについて,返済繰り延べの合意に至ったと発表した。4月6日,サウジアラビアは,パキスタンへの20億ドル融資を合意した。これは,IMFのEFF供与条件のひとつである二国間融資の獲得にパキスタンが応えたかたちとなった。
6月9日,イスハーク・ダル財務・歳入・経済問題相が2023/24年度の予算案を発表した。これにIMFは反対した。結局,IMFの要求を盛り込むかたちで,具体的には増税と補助金削減などの修正を加えた予算案を24日,ダル財務・歳入・経済問題相は再提出した。25日,この修正予算案を議会が承認した。これを評価したIMFは29日,9カ月にわたり総額約30億ドルの金融支援を行うスタンドバイ融資(SBA)を事務レベルで合意した。
これを受け7月12日,IMF理事会はSBAを正式に承認した。最初のトランシュ(分割融資)にあたる12億ドル分はただちに供与された。SBAの条件も,融資期間が短いというだけでEFFと変わらず,補助金の削減や打ち切りを中心とした財政赤字削減であったが,パキスタン政府も背に腹は代えられなかったのだろう。実際に,このSBAプログラムの承認によって,デフォルト危機を回避したと考えられている。同プログラム承認後も,供与を得ていくためには補助金削減,増税といった条件は満たし続けなければならない。11月15日には,IMFによるSBAの第1次審査が終了し,事務レベルで約7億ドル分の供与が合意された。
デフォルト危機を回避した直後の2023年11月27日,中国は,中国輸出入銀行を通じた債務約24億ドル分について2年間繰り延べすることに合意した。SBAによって救済されるまでのパキスタンは,中国の債務繰り延べによって生きながらえてきたといっても過言ではない。ただこれは単に支払いを先延ばしにしているにすぎず,利子率が高いなど融資条件がそれほど良くない中国の支援に頼ることは,将来の自らの首を絞めることにつながりかねない。
インフレーションデフォルトの危機に呼応してルピーが大幅に下落し,2022年を通じて2桁を記録したと騒がれたインフレは,2023年に加速した。とりわけ,2月から5月にかけて,対前年同月比30%を軒並み超えた消費者物価指数(CPI)上昇率(図2)については,パキスタン「史上最悪」,「記録更新」といった報道が目立った(Business Recorder,2023年6月1日)。
(出所) State Bank of Pakistan, Statistical Bulletin各号。
インフレの要因は,前年の洪水の影響を受けた食糧不足,インフラの破壊,外貨準備高の激減を受けて輸入を抑制したことなどによって生じた,供給不足によるところが大きい。ルピー下落によって軒並み輸入価格が上昇し,とりわけ輸入額の半分以上を占める石油などエネルギー関連価格の高騰が拍車をかけた。また,パキスタンは農業国ではあるが,食料の純輸入国でもあり,時には主要作物の小麦も輸入している。2022/23年度の小麦輸入額は前年度の3倍であった。
ルピーの下落は,短期的にみればIMFの融資条件によるところも大きい。条件のひとつが為替相場の完全自由化で,パキスタン政府はその要請に応じざるを得ず,2023年1月24日には下落制限が撤廃された。その影響は顕著で,26~27日にかけて,為替相場が13.7%下落するなど一気にルピー安が進んだ。IMFのほかの条件である補助金の削減は,電気やガス料金の高騰にもつながった。例えば石油ガス規制庁(OGRA)は2月15日,IMFの要請に応じてガス料金値上げを発表し,平均して64%の大幅値上げが1月1日に遡及して発効した。この問題の根本は,これまで慢性的に続いてきた,発電,送・配電部門における非効率,つまりそれらの部門が補助金漬けであったことにある。
インフレを受けて,パキスタン中央銀行(SBP)は,前年度に続き年初から金融引き締め政策を強力に推し進めた。SBPは1月23日,政策金利を1ポイント引き上げ,17%にした。矢継ぎ早に,3月2日に20%,4月4日に21%,6月27日に22%に引き上げた。これはパキスタン史上最高の引き締め水準である。その後はインフレが比較的落ち着いたという理由で年末までこの水準のままであった。
しかしパキスタンのインフレは,食料,原料,中間財不足など,主に供給サイドに起因しており,需要サイドの過熱ではないため,かなりアグレッシブな緊縮金融政策に実効性があるのかは疑わしい。むしろ,国内の産業にとって致命的な借入コスト上昇をもたらしかねない。
(牧野)
1月16日,シャリーフ首相がインドに対し,カシミール問題解決のための対話を呼びかけた。この背景には,燃料価格高騰や前年からの洪水被害が重なり,経済危機が深刻化していることや,テロ活動の活発化で国内の治安が悪化していることにより,インドとの対立を回避したいという思惑があろう。
しかしインドにパキスタンとの関係を改善する動機は今のところないとみられ,反応は鈍かった。まず,インドも2024年に選挙を控えて,モディ首相もインド人民党もパキスタンへの強い姿勢を国民に誇示する必要がある。そして何より,パキスタンの内政が混乱し,強いリーダーシップが不在な時に交渉しても成果は期待できなかった。結局,パキスタン首相府は,シャリーフ首相の呼びかけの翌日には,「インドが2019年8月5日の不法な行動(ジャンムー・カシミールの自治権を認めたインド憲法370条が廃止されたこと)を取り消さないかぎり,インドとの交渉は不可能」と発表せざるを得なかった。
そのようななか,インドはパキスタンに強硬な姿勢をとった。7月4日,インドが議長国を務める上海協力機構(SCO)のオンライン首脳会合に,シャリーフ首相が出席した。モディ首相はパキスタンの名前は挙げないながらも,越境テロについて繰り返し指摘したうえで,参加国に対してこうしたテロは非難されるべきであると述べた。
アフガニスタンとの難しい関係2月にアーシフ国防相率いる代表団がカーブルを訪問し,ターリバーンのバラーダル副首相代行らと会談した。パキスタンとアフガニスタンの間には,国境管理,アフガニスタン難民の扱いなど問題が多いが,この代表団には三軍統合情報局(ISI)長官も同行していたことから,とりわけ国内のテロを抑えるため,TTPと関係の深いターリバーン政権に協力を要請したとみられている。
この会談の成果について,パキスタン外務省は「TTPとISKPによるテロの脅威の増大に関する問題が議論された。パキスタンとアフガニスタンは,さまざまな主体や組織によってもたらされるテロの脅威に有効な対策をとるために協力することで合意した」とした。一方,アフガニスタン政府は,両国は経済協力,地域の連結性,貿易,二国間関係について話し合ったと発表した。そして,バラーダル副首相の発言を引用して,「隣国同士であるパキスタンとアフガニスタンは友好関係を築くべきで,アフガニスタンはパキスタンとの通商・経済関係の拡大を望んでいる。そのような関係は両国の利益にかなうものである」としており,双方が重視する論点の違いが現れている。
実際,TTPをめぐる両国の関係には改善がみられなかった。10月3日,カーカル暫定政権はパキスタンに不法滞在している110万人の外国人に11月1日までに退去することを求め,従わなければ強制送還することを発表した(12月に2月29日まで期限を延長)。理由は,こうした不法滞在の外国人によって,テロを含む違法行為を行う者への資金提供や幇助が行われているからだという。この不法滞在の外国人とは事実上アフガニスタン難民を指している。9月には不法移民と犯罪の増加を理由に,アフガニスタン難民の一斉検挙と拘束が拡大した。カラチだけで少なくとも700人のアフガニスタン人が逮捕されており,ほかの都市でも数百人以上が拘束されたと報じられている。
イスラマバードのアフガニスタン大使館は,アフガニスタン難民に対する「冷酷な」作戦と非難した。アムネスティ・インターナショナルも,難民に「恐怖」の空間を与えているとしてパキスタン政府を非難している。パキスタン国内には170万人のアフガニスタン難民がいるが,期限前日の10月31日には,衣服や家具を満載したトラックに乗った大勢の難民が,アフガニスタンとの国境に殺到した。パキスタンによると30日までにアフガニスタン人20万人が自国に戻り,31日には2万人が国境へと移動したと報じられている。
今回の難民の送還は,2月の国防相,ISI長官らのアフガニスタン訪問が事態の改善につながらなかったことを示唆している。パキスタンとしては,2022年以来,アフガニスタンにTTPの拠点を作らせないよう協力を求めており,ターリバーン政権は他国を攻撃するための拠点を国内に作らせることはない,と応じていた。しかしその後,パキスタンではアフガニスタン国境付近でのテロが増加し,国境での双方治安部隊による衝突も起こり,両国の緊張は高まっている。アフガニスタンにとってもパキスタンにとってもTTP,ISKPへの対処は共通の重要課題であるが,両国がこの点で本格的な協力を開始する道筋はみえていない。
中国とアメリカパキスタンにとって中国とアメリカが重要な外交相手であることは言うまでもない。これまでパキスタンは,中国とは全天候型と呼ばれるほど一貫して良好な関係を続け,アメリカとも同盟関係を維持してきた。言い換えれば,友好関係のバランスをとりながら双方からパキスタンにとっての利益を引き出してきたということである。しかし,中米の対立が深まるなか双方との良好な関係が今後も成り立つのか,という議論がある。8月の独立記念日の翌日,国内最大の英字紙DAWNは「世界の大国がパキスタンのテロ対策と経済振興への支援を約束」という見出しで,中国とアメリカがパキスタンを支持している,と報じた。
この記事は,中国とアメリカがパキスタンに友好的なシグナルを送っていると論じたものである。中国については,8月13日にグワーダルで中国人労働者を乗せたバスが爆弾テロの標的になった翌日,中国外務省報道官の汪文斌が「国際情勢やパキスタンの国内状況がどのように変化しようとも,中国とパキスタンの不変の友情は常に岩のように堅固である。中国はパキスタンとともに,戦略的な協力関係を推進し,新しい時代においてより緊密な中パ共同体を構築し,両国と両国民により多くの利益をもたらす用意がある」と述べたとして,パキスタンに対する特段の好意的な対応を紹介している。
一方同記事はアメリカについて,ブリンケン国務長官が独立記念日のメッセージを寄せ,ワシントンとイスラマバードとの連携を深め,両国にとってより繁栄した未来を築くことを期待している,パキスタンとの76年にわたる関係を重んじるなどと述べたことを挙げている。同国務長官はこれに加えて,パキスタンが選挙を実施し,包括的な経済成長,エネルギーの安全保障,および平和と地域の安定を推進することを期待する,民主主義の原則と法の支配への尊重に対する共有のコミットメントが,今後も両国の連携を導くことになる等と述べている。アメリカが,民主化や選挙の実施について釘を刺すかたちになっていることは,中国との違いである。さらに,12月にムニール陸軍参謀長が米首都ワシントンを訪問し,オースティン国防長官やブリンケン国務長官,サリバン国家安全保障担当大統領補佐官らと会談した。米国務省報道官は,「パキスタンは主要な非NATO同盟国であり,NATOパートナーでもある。我々は地域の安全保障と防衛協力に関して広く彼らと提携できることを楽しみにしている」と述べた。
この背景には,アメリカが,南アジアの紛争を脅威と捉えていることがある。3月上旬に議会に提出された治安情報の報告書は,依然としてカシミールにおけるインドとパキスタンの緊張が高まれば核保有国が直接ぶつかる事態につながる可能性があり,安定した南アジア,あるいはテロから解放された同地域の安全確保という目標は,大部分がパキスタンとの提携の強さに依存する,と指摘している。つまりたとえ不本意であろうと,アメリカはパキスタンとの関係を構築せざるを得ないということである。
一方パキスタン国内では,アメリカとより深く付き合うべきか,中国との関係に重点を置くべきかという議論がある。アハメル・ビラール・スーフィー元暫定内閣法相が,5月6日付DAWN紙に両国関係について寄稿した。そのなかでスーフィーは,パキスタンはアメリカとも中国とも国際条約を結んでおり,どちらかを選ぶことはできず,両方の間でバランスをとることが義務だとの見解を示した。そのうえで,二国間条約の件数を根拠に(対米48件,対中145件),中国は法的な関係を重視しており,アメリカは政治的関係を重視している,と論じた。
それとは反対の意見もある。4月30日付米Washington Post紙がヒナ・ラッバーニー・カール外務担当首相補佐官と,シャリーフ首相との外交政策についての会話を報じた。そのなかでカールは,もはや中国とアメリカの中間点を維持しようとすることはできないと述べたとされている。カールによると,パキスタンはアメリカと中国に警戒感をもちながらも,双方からメリットを受けてきた。しかしトランプ政権時代にアメリカとの関係は急速に冷え込んだ。バイデン政権になって関係は改善しているものの,中国からの中パ経済回廊(CPEC)関連投資やコロナ禍での医療支援をはじめ,現在のパキスタンでは中国の存在感が強くなっている,というのである。すなわち,アメリカとの戦略的パートナーシップを維持しようとすると,より長期的な友好国である中国との関係を犠牲にすることになりかねない段階に来ているという見方であろう。
また,2月23日に国連緊急特別会合で採決されたウクライナの平和を求める決議で,パキスタンは今回も棄権した(賛成141,反対7,棄権32)。パキスタンにとってロシアは重要な貿易相手国であり石油を輸入している。アメリカに同調することは難しく,当面この姿勢は変わらないとみられる。
イランとのテロ対策協力12月18日,ジーラーニー暫定外相がイランのホセイン・アーミル・アブドッラヒアン外相と電話会談を行い,テロ対策で協力することを確認した。これは,12月16日にイラン南東部,パキスタンとアフガニスタンとの国境に近いシースタン・バローチェスタン州で,警察署が襲撃され11人が犠牲となったテロ事件を受けて行われたものである。この事件には,イランのバローチ民族独立を主張するジャイシュ・アル・アドル(正義軍)が犯行声明を出している。外相同士の今回の電話会談は,テロ対策協力の確認にとどまっているが,イランの本音は,アフマド・ワヒディー内相の発言に現れている。ワヒディー内相は,事件現場となった警察署を視察し,パキスタンは自国内にテロ・グループが拠点を完成させないよう全力を尽くすべきである,と述べ,さらに事件直後の捜査で,襲撃犯たちがパキスタンからイランへ侵入してきたとみられる根拠が出ていると述べたという。イランは従来パキスタンとの間で穏当な関係を維持してきているだけに,この件がきっかけで大事に発展しないよう,両国の対応が注視される。
(井上)
国内政治では,2月の選挙が自由,公正に実施されることが当面の注目点だった。PML-Nが有力とみられていたが,ハーン前首相が逮捕,収監されても若い世代のPTIに対する期待は衰えていないという観測もあった。予定どおり2月8日に投票が行われ,PML-N(122議席)とPPP(71議席)を中心とした連立政権が成立した。PTIは党として選挙への参加が認められなかったため所属候補は無所属として立候補し,無所属当選者91人のうち87人がPTIと健闘し,PTIは依然として多数の支持を得ていることが明らかになった。彼らは当選後全員がスンニー統一会議(SIC)という議員のいなかった政党に入党した。
ナワーズ・シャリーフの復権を画策していたPML-Nは,第一党となったものの軍と対立してきたナワーズの首相選出は断念し,軍と協力的な立場をとってきたシャハバーズが再び首相の座についた。単独過半数を得られなかったことで,軍に敵対的なナワーズでは政権維持は難しいとの党判断があったとみられている。今後も軍との関係を良好に保てるか,物価高,治安の悪化などによる社会不安を解消できるかなど,新政権の課題は山積している。国内の治安は引き続き懸念が大きい。TTPやバローチスタン州の民族運動への新政権の対応も問われる。
デフォルトの危機は,2023年7月にIMFがSBAに合意し,向こう9カ月にわたり総額約30億ドルの条件付き融資が得られることで,当面は緩和された。予算案もIMFの要請に応じて即座に修正せざるを得ないほど,なりふり構わずIMFに支援を求めた結果と言えるが,果たして実行可能だろうか。SBAの条件はこれまでと変わらず補助金の削減や打ち切りを中心とした緊縮政策で,国民の賛同が得られにくい。2月に実施された総選挙を前に,緊縮財政が維持できるかというIMFの試練は何とか乗り切った。しかしデフォルトについては,綱渡りの状態であることに変わりがなく,新政権もIMFとの交渉に耐えていくしかない。
対外関係では,隣国や米中との関係が重要となる。アフガニスタンの政権はパキスタンと対等の立場で主として経済関係構築を求めており,パキスタン政府はISKPやTTP対策を優先しているが,建設的な交渉ができるか,注目される。インド関係は,パキスタンからは宥和的な方向で交渉を求めるとみられるが,大国インドの出方次第であることは否めない。モディ政権の継続が予想されているため交渉の大きな進展はないにしても,両国が対話を継続する意思を持ち続けることが重要となろう。米中との関係は,引き続き大きな変化なく推移するだろう。PML-N政権は親米の路線を続けるのか,また,米大統領選挙の結果次第でパ米関係後退もありうる一方,中国経済の動向が「一帯一路」にどう影響するかも注目される。
(井上:就実大学教授)
(牧野:開発研究センター)
1月 | |
1日 | ベーナズィール所得補助プログラムの無条件現金給付(770万世帯対象),インフレに合わせて支給額を一世帯当たり25%増の8750ルピーに。 |
9日 | シャリーフ首相がジュネーブを訪問し,パキスタンと国連共催の洪水に関するドナー国会議に出席。オンライン会議となったためパキスタン正義運動党(PTI)が経費の無駄遣いと批判。 |
11日 | 経済調整委員会(ECC),砂糖輸出量上限の2.5倍引き上げを承認。 |
12日 | 首相,アラブ首長国連邦(UAE)訪問(~14日)。UAE,10億ドル新規融資,20億ドルの債務繰り延べを了承。 |
14日 | パンジャーブ州議会解散。 |
16日 | シャリーフ首相,カシミール問題解決のためインドに対話を呼びかける。 |
18日 | ハイバル・パフトゥンハー(KP)州議会解散。 |
19日 | ロシアのシュリギノフ・エネルギー相来訪。シャリーフ首相と会談。液化天然ガス(LNG)輸入について協議。 |
23日 | 全国的な大規模停電。 |
23日 | パキスタン中央銀行(SBP),政策金利を1ポイント引き上げ,17%に。 |
24日 | 為替相場の下落制限撤廃。26~27日にかけてルピーは13.7%下落。 |
29日 | バローチスタン州でバスが谷底に落下。少なくとも43人死亡。 |
30日 | ペシャーワルのモスクで爆弾テロ。死者100人以上。パキスタン・ターリバーン運動(TTP)とイスラーム国・ホラーサーニー(ISKP)が犯行声明。のちにTTPは声明を取り下げ。 |
2月 | |
1日 | IMFの拡大信用供与措置(EFF)審査団来訪。 |
5日 | パルヴェーズ・ムシャッラフ元大統領がドバイで死去。 |
8日 | アルヴィ大統領,選挙管理委員会に対しパンジャーブ州とKP州の議会選挙日程を示すよう要求。 |
9日 | IMF,前年から遅れていたEFF第9次審査終了。11億ドル分の供与に結論出ず。 |
13日 | 米首都ワシントンでパ米防衛対話第2ラウンド開催(〜16日)。 |
15日 | 石油ガス規制庁(OGRA),ガス料金値上げを発表。1月1日に遡及して発効。平均して64%の大幅値上げ。 |
15日 | 政府,2023年財政補正予算案提出。所得税・売上税の増税のほか,結婚式などに課税。 |
16日 | 首相,トルコ訪問(~18日)。エルドアン大統領と会談し,地震の被害者に弔意。 |
17日 | TTPがカラチ市警察本部を襲撃,一時立てこもる。治安部隊4人,TTP3人,民間人1人死亡。 |
22日 | アーシフ国防相がアフガニスタンのカーブルを訪問し,ターリバーンのバラーダル副首相代行らと会談。 |
22日 | 中国,対パキスタン7億ドル融資に合意。 |
23日 | 国連総会でロシアのウクライナ侵攻非難決議を棄権(賛成141,反対7,棄権32)。 |
28日 | ムーディーズ,パキスタン国債の信用格付けをCaa1(ジャンク債)からCaa3に2ランク引き下げ。 |
3月 | |
2日 | SBP,政策金利を3ポイント引き上げ,20%に。 |
5日 | 首相,カタール訪問(~6日)。第5回国連後発開発途上国会議出席。パキスタン移民たちとも会合をもつ。 |
7日 | イスラマバード高等裁判所がハーン前首相の逮捕状を停止。 |
8日 | 首相,ラマダン期間中の小麦無料提供スキーム発表。14日から実施。3100万家計が援助対象となるも,流通に関する汚職告発を受け5月20日,国家説明責任局(NAB)が調査開始。 |
14日 | ハーン前首相逮捕の動きに対するPTI活動家による抗議運動が開始。ラホールの前首相自宅前などで警官隊と激しく衝突。 |
22日 | ヒンドゥークシ山脈を震源とする地震発生。KP州を中心に被害。 |
28日 | 外務省,アメリカ主催の第2回民主主義サミット(29~30日開催)欠席を発表。中国に配慮との憶測。 |
31日 | イスハーク・ダル財務・歳入・経済問題相,前週に満期を迎えた中国への債務20億ドルについて繰り延べに合意と発表。 |
31日 | SBP,輸入177品目に関し,輸入価格100%(前年8月に条件緩和)に相当する現金のデポジットを必須とした輸入制限撤廃。 |
4月 | |
4日 | 最高裁判所,パンジャーブ州とKP州の議会選挙が未実施なのは違憲と判断下す。 |
4日 | SBP,政策金利を1ポイント引き上げ,21%に。 |
6日 | サウジアラビア,パキスタンに20億ドル融資を合意。IMFの条件のひとつ(二国間融資)にパキスタンが応える結果に。 |
27日 | 米国務省はパキスタンがロシアから原油を購入することに異論ないとしたことがパキスタンで報じられる。 |
5月 | |
1日 | トルコとの特恵貿易協定発効。261輸出品目が対象に。 |
4日 | 首相,チャールズ新国王戴冠式出席のためイギリスを訪問(~7日)。 |
4日 | 上海協力機構(SCO)外相会議(~5日)に出席のため,ブットー・ザルダーリー外相,インド訪問。 |
6日 | イスラマバードでアフガニスタンのムッタキ外相,中国の秦剛国務委員兼外相,ブットー外相の3者が会談。 |
8日 | 軍広報部がハーン前首相の軍・政府批判を強くけん制。 |
9日 | ハーン前首相,汚職の疑いで逮捕。 |
9日 | 夕方からハーン逮捕への抗議のデモが暴徒化。インターネット接続が制限される。 |
10日 | 全国でハーン前首相逮捕への抗議運動が拡大,ラーワルピンディー,ラホールほか各地で軍施設への乱入・放火などが発生。 |
11日 | 最高裁がハーン前首相逮捕の方法は「無効で違法」として釈放を命じる。 |
11日 | ハーン前首相釈放。 |
13日 | インターネットの接続が回復。 |
18日 | 首相,イラン訪問。ライシ大統領と会談。 |
25日 | 世銀,洪水対策のためインフラ等の整備に3.12億ドル融資を承認。 |
25日 | ラホールの軍施設襲撃(10日)に関与した16人について,反テロ法廷で審理開始。 |
6月 | |
3日 | 首相,トルコ訪問(~4日)。エルドアン大統領と会談。 |
8日 | ジャハンギール・タリーンがPTIを離党してパキスタン安定党設立。 |
8日 | ダル財務・歳入・経済問題相,2023年度『経済白書』発表。 |
8日 | トルクメニスタン=アフガニスタン=パキスタン=インド(TAPI)ガスパイプライン・プロジェクトにつき,トルクメニスタンとの間で実行計画に合意。 |
9日 | ダル財務・歳入・経済問題相,2023/24年度予算案発表。前年度修正予算と比べ約15.7%増の14.46兆ルピーを計上。しかし,IMFの反対にあい,増税と補助金の削減を盛り込んだ修正案を24日に発表。25日議会が承認。 |
13日 | 世銀,KP州農村開発のため,2億ドル融資を承認。 |
14日 | 首相,アゼルバイジャン訪問(~15日)。アリエフ大統領と会談。 |
16日 | 中国,約10億ドル融資を実行。 |
17日 | 首相,湾岸諸国からの直接投資(FDI)促進のため,特別投資促進評議会(SIFC)を設置。閣僚や州首相のほか,陸軍参謀長がメンバー。 |
18日 | 在英パキスタン人実業家シャハザーダ・ダーウードと息子スレイマーンが深海艇の事故で死亡。 |
21日 | シャリーフ首相,「新グローバル金融協定サミット」(22〜23日)出席のためフランス訪問。 |
22日 | インドとアメリカが共同声明,パキスタンに対して同国の領土が過激派組織に利用されない行動を求める。 |
22日 | UAEの港湾運営大手Abu Dhabi Ports Groupがカラチ港のリース権を得てインフラ整備投資に合意(2.2億ドル)。 |
26日 | 選挙法改正により,ナワーズ・シャリーフ元首相の議員資格喪失が消滅。 |
26日 | 統合情報局広報部(ISPR)が,5月9日の暴動を防げなかったことに責任がある軍幹部を複数更迭したと発表。 |
26日 | 外務省が米印共同声明について米次席公使を呼んで懸念表明。 |
27日 | SBP,政策金利を1ポイント引き上げ,22%に。 |
28日 | 首相,UAE訪問。 |
29日 | IMF,9カ月で総額約30億ドルの金融支援を行うスタンドバイ融資(SBA)を事務レベルで合意。パキスタンのデフォルト回避のため。 |
7月 | |
2日 | ブットー外相が訪日。 |
4日 | SCOのオンライン首脳会議開催。シャリーフ首相が出席。 |
12日 | IMF理事会,SBAを承認。最初の12億ドル分のトランシュ(分割融資)は即時供与。 |
12日 | 世銀,パンジャーブ州の家族計画改善のため1億ドル融資を承認。 |
17日 | パルヴェーズ・ハタック前国防相がパキスタン正義運動党(議会派)を設立。 |
27日 | 中国政府,中国輸出入銀行を通じた債務約24億ドル分につき2年間の繰り延べに合意。 |
30日 | 中国の何立峰副首相が中パ経済回廊(CPEC)10周年式典出席のため来訪(〜8月1日)。シャリーフ首相,アルヴィ大統領と会談。 |
30日 | KP州カールでのイスラーム・ウラマー党(JUI)の集会で自爆テロ発生,死者54人。ISKPが犯行声明。 |
8月 | |
5日 | ハーン前首相に資産報告書虚偽記載の罪で禁錮3年の有罪判決。判決後ラホールの自宅で拘束され収監。 |
6日 | シンド州ナワーブシャーで鉄道脱線事故,28人死亡。 |
8日 | 選挙管理委員会がハーン前首相について今後5年間は議員立候補資格がないと発表。 |
9日 | 下院が解散。任期満了の3日前。 |
13日 | グワーダルで中国人労働者を乗せた車列に路肩爆弾が爆発。死傷者なし。 |
14日 | アンワールル・ハク・カーカルが第8代暫定内閣首相として宣誓。 |
14日 | 中国外務省報道官汪文斌が,グワーダルの爆弾について,パキスタンとの友好関係は変わらず強固であると述べる。 |
16日 | ファイサラバードのジャランワーラーでキリスト教コミュニティーへの大規模な襲撃が発生。 |
17日 | 暫定内閣の閣僚が宣誓して就任。 |
20日 | パンジャーブ州でバスと小型トラックが衝突。少なくとも18人死亡。 |
21日 | カーカル暫定首相がキリスト教徒への襲撃があったジャランワーラーを訪問。 |
29日 | イスラマバード高裁がハーン元首相の刑の執行停止と保釈を命じる決定。 |
9月 | |
6日 | アフガニスタンとのトールハム国境で国境警備隊同士の銃撃戦。国境封鎖。15日に封鎖解除。 |
6日 | パキスタンルピー,史上最安かつ大台突破の1ドル=307ルピーを記録。 |
6日 | KP州チトラールでTTPがパキスタン軍哨戒所を襲撃,兵士4人,TTP12人死亡。 |
9日 | トールハム国境封鎖の継続につき,アフガニスタン政府がパキスタンを非難。 |
12日 | シャリーフ前首相がロンドンで記者団に対し,兄ナワーズは10月21日にパキスタンへ帰国すると述べる。 |
23日 | カーカル暫定首相が国連で演説。洪水被害からの復興計画に対し国際社会による支援の約束が守られていないと訴える。 |
29日 | クエッタでムハンマド生誕祭集会に自爆攻撃。52人死亡,50人以上負傷。 |
29日 | KP州でモスクが爆破され,2人死亡。 |
10月 | |
3日 | 政府,アフガニスタン難民に退去を求める方針を発表。 |
15日 | カラチでジャマーアテ・イスラーミーがパレスチナに連帯するデモ実施。 |
17日 | 北京で「一帯一路」の国際会議。カーカル暫定首相が出席。 |
21日 | ナワーズ・シャリーフ元首相が4年ぶりに帰国。 |
11月 | |
2日 | 選管が2024年2月8日に総選挙を実施と発表。 |
15日 | IMFのSBAの第1次審査終了。事務レベルで約7億ドル分の供与に合意。 |
17日 | ADB,送電システム改善のため,2.5億ドル融資を承認。 |
27日 | ADB,都市部水インフラ支援のため,1.8億ドル融資を承認。 |
29日 | イスラマバード高裁がナワーズ・シャリーフ元首相の無罪判決。 |
12月 | |
4日 | ADB,公共セクター支援のため,3億ドル融資を承認。 |
5日 | ADB,洪水被害を受けたシンド州の学校再建のため,2.75億ドル融資を承認。 |
7日 | ADB,中央アジア地域との経済協力促進のためのインフラ整備に3.8億ドル融資を承認。 |
11日 | ADB,女性起業家向け融資政策に1.5億ドル融資を承認。 |
11日 | KP州の軍施設を狙った自爆テロ(~12日)。少なくとも軍関係者25人,テロリスト27人死亡。TTP関連組織が犯行声明。 |
13日 | アフガニスタン難民の退去期限を2月29日まで延長。 |
13日 | ムニール陸軍参謀長が訪米。オースティン国防相と会談。 |
15日 | KP州の警察施設を狙った攻撃。警察官5人,テロリスト5人死亡。 |
15日 | 選管が総選挙の詳細日程を発表。 |
18日 | ジーラーニー暫定外相がイランのホセイン・アーミル・アブドッラヒアン外相と電話会談,テロ対策で協力を確認。 |
19日 | 世銀,パキスタン財政健全化のため,3億5000万ドル融資を承認。 |
20日 | 総選挙の立候補届出開始(〜22日)。 |
25日 | パキスタン紛争安全保障研究所が,自爆テロ件数が2014年以降最多と発表。 |
27日 | クレーシー元外相がアトック刑務所からアディアラ刑務所へ移送される。 |
30日 | 選管がハーン元首相の立候補資格を認めず。 |
(注) 1) PTI (Pakistan Tehreek-i-Insaf) パキスタン正義運動党。2) PPP (Pakistan People's Party) パキスタン人民党。3) BAP (Balochistan Awami Party) バローチスタン人民党。4) BNPM (Balochistan National Party Mengal) バローチスタン国民党メンガル派。5) IPP (Istehkam-e-Pakistan Party) パキスタン安定党。
(注) 1) PTI (Pakistan Tehreek-i-Insaf) パキスタン正義運動党。2) PPP (Pakistan People's Party) パキスタン人民党。3) BAP (Balochistan Awami Party) バローチスタン人民党。4) BNPM (Balochistan National Party Mengal) バローチスタン国民党メンガル派。5) IPP (Istehkam-e-Pakistan Party) パキスタン安定党。
(注) 1)会計年度は7月1日~翌年6月30日。以下,同。人口,労働力人口は年度末の数値,その他は各年度平均値。2)修正値。3)暫定値。
(出所) Government of Pakistan, Finance Division, Economic Survey 2022-23; State Bank of Pakistan, Annual Report Statistical Supplement 2022-23.
(注) 1)確定値。2)暫定値。
(出所) Government of Pakistan, Finance Division, Economic Survey 2022-23.
(注) 1)確定値。2)暫定値。
(出所) 表2に同じ。
(注) 1)再輸出/輸入を除く。
(出所) State Bank of Pakistan, Statistical Bulletin, 各号。関税統計ベース。
(注) IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。したがって,金融収支の符号は(+)は資本流出,(-)は資本流入を意味する。1)修正値。
(出所) State Bank of Pakistan, Statistical Bulletin, 各号。銀行統計ベース。
(注) 1)暫定値。
(出所) State Bank of Pakistan, Statistical Bulletin, 各号。