2025 Volume 2025 Pages 263-290

2024年,タイは連立政権内の主導権争いに翻弄された。与党中核であるタクシン派・タイ貢献党に対し,連立内の保守派各党は,タイ矜持党(Phumjai thai Party)を中心に勢力拡大を図った。上院選挙ではタイ矜持党が多数派を押さえ,下院では保守派勢力がセーター・タウィーシン首相に対する解職審理を利用してタクシン元首相の次女であるペートーンターン・チンナワット・タイ貢献党(Pheu thai Party)党首を新首相に選出した。一見タクシンが娘を介し権力を握ったかにみえるが,実際は保守派が自派に都合の良い人物を首相に据え,タクシン派への統制を強めたといえる。連立内の角逐が続くなかで重要法案の審議は迷走し,首相交代後も政治対立解消の目途は立たなかった。
経済は,実質国内総生産(GDP)成長率が前年比2.5%と前年から加速した。しかし,新型コロナウイルス禍以降,経済成長率の低迷が目立っており,家計債務累積と融資条件引き締めにより,堅調に推移してきた民間消費,特に家計部門の耐久財消費が押し下げられている。このような状況に対し,政府は国民にデジタル通貨を配布する「デジタルウォレット」や最低賃金の引き上げによる内需拡大を目指したが,財源確保や経済界との調整は難航した。電気・電子,デジタル産業における投資が増加したが,タイ国内の供給側の課題も残されている。
対外関係では,経済分野を中心に活発な外交を展開した。経済協力開発機構(OECD)およびBRICSへの参加表明に加え,米中双方と協力関係を維持しながら欧州や近隣諸国とも関係を強化し,外交関係の多角化が進んだ。
2023年の下院選挙後,国会では体制改革を主張する革新派の前進党(Move Forward Party)が,第1党となりながらも違憲容疑を理由に政権への道を阻まれた。体制維持を目指すパラン・プラチャーラット党(Palang Pracharat Party: PPRP)など保守派各党は,第2党となったタクシン派のタイ貢献党と新たな連立を形成した。その結果,下院ではタクシン派・保守派連合(連立与党)と革新派(前進党など野党)とが対峙する構図となった。タクシン派は保守派の攻撃を誘発しないよう慎重に行動しつつも,権力奪回を狙い政権や党の運営に臨んだ。
一方,革新派に対する保守派の攻撃は2024年も続いた。1月末,憲法裁判所は前進党に違憲判決を下した。2023年の下院選挙で前進党が掲げた刑法112条(不敬罪)改正の公約が,「国王を元首とする民主主義体制」転覆を禁じた憲法第49条に違反するという理由である。判決を踏まえ,保守派は前進党をめぐる2件の司法審査を要請した。2月1日,元PPRP所属下院議員が前進党の解党と党幹部に対する10年間の被選挙権停止についての審理を国家選挙管理委員会(選管)に要請した。また9日には,保守派の弁護士が憲法の定める「倫理規定」への違反容疑で前進党議員44人の審理を国家汚職防止取締委員会(NACC)に訴え出た。憲法裁判所は4月に前進党の解党審理を開始し,NACCも8月に調査を開始した。
憲法裁判所は8月7日,前進党の解党を決定した。チャイタワット党首やピター最高顧問(前党首)ら幹部11人は,10年間の被選挙権停止となった。他の党員143人は「プラチャーチョン(人民)党」(People’s Party: PP)と改称した小政党に移籍し,国会内にとどまった。
支持率低迷に悩むタイ貢献党タイ貢献党は,保守派には合流しないという選挙前の公言を翻し連立に参加したことで,支持者の離反を招き支持率低下に苦しんだ。2023年9月に発足したセーター内閣が,前政権の定めた予算に制約され,目立った成果を出せないことも党の不人気に拍車をかけた(「経済」の項を参照)。国立開発行政学院の世論調査機関(NIDA Poll)による定例の四半期調査では,2024年3月の時点でタイ貢献党の支持率は約22.1%であり,首位の前進党(48.5%)には大きく及ばなかった。
支持率回復が急務となるなか,警察は2月にタイ貢献党の実質的首領であるタクシン・チンナワット元首相の仮釈放を決定した。タクシンは2023年8月の帰国後に最高裁判所から職権濫用などで実刑を言い渡されたものの,体調などを理由に収監されないまま警察病院で入院を続けていた。仮釈放決定の裏で保守派と何らかの取引があったのではないかとの疑惑を尻目に,タクシンは精力的に政治活動を展開した。3月中旬には,セーター首相や連立パートナーであるPPRPのタマナット・プロムパオ幹事長(農業・協同組合相)を伴い,自身の地盤であるチェンマイを17年ぶりに訪れた。その後バンコクのタイ貢献党本部を訪問し,4月から5月にかけ全国各地に赴き地元の支持者や有力者らと交わった。しかし地方行脚の甲斐もなく,タイ貢献党の支持率は6月半ばには16.9%まで下がり,首位の前進党(49.2%)との差は縮まらなかった(NIDA Poll 2024年6月30日公表の世論調査結果)。6月から12月にかけて行われた25県における県自治体首長選挙でも,タイ貢献党関係候補の当選は7県にとどまった。タクシンの再登場はタイ貢献党のコアな支持層を引きとめはしたものの,方針転換で失った支持者を取り戻し,新たな支持者を獲得するには至らなかった様子がうかがわれる。
タクシン派に対する保守派の攻撃タクシンの政治活動再開は党勢拡大に繋がらなかったばかりか,かえって保守派内に残る反タクシン勢力に攻撃の口実を与えた。決定的となったのが,4月28日に行われた内閣改造である。新内閣ではインラック元首相の経済顧問だったピチャイ・チュンハワチラタイ証券取引所理事長が新財相に就任したほか,タクシン一家の弁護士だったピチット・チューンバーンが新首相府相となるなど,タクシンと近しい人物が抜擢された。他方,副首相兼務からはずされパーンプリー・パヒッターヌゴン外相,ピチャイ新財相のもとで権限を縮小されたクリッサダー財務副相らは,この人事を不服とし相次いで辞任した。パーンプリーの後任には,タクシン政権で首相の外交顧問を務めた元外交官のマーリット・センギアンポンが任命された。
タクシン色を深めた新内閣人事を受け,反タクシン派は攻撃を開始した。5月15日,元上院議員40人がピチット首相府相の入閣資格に疑義を呈し,ピチットと彼を任命したセーター首相の罷免を要求した。訴えは,ピチットが2008年にタクシン夫妻による国有地不正取得疑惑審理における贈賄で禁錮6カ月の判決を受けた経歴が,閣僚資格を定めた憲法第160条に違反するというものである。さらに元上院議員らは,ピチットを任命したセーター首相も倫理上の責任があるとして両者の罷免を求めた。憲法裁判所は訴えを受理し,5月23日に審理を開始した。ピチットはこれに先立ち21日に辞任している。元上院議員らの背後には,首相の座を狙うプラウィット・ウォンスワンPPRP党首の存在があると目された。さらに5月,最高検察庁がタクシンの起訴を決定した。2015年に韓国で受けたインタビューでの発言が,刑法112条とコンピューター犯罪法に違反するという容疑である。2件の司法審理請求は,影響力を増大しつつあったタクシンに対する保守派のけん制の意図を示していた。
けん制に対し,タクシンは恭順の姿勢を示した。病気を口実に一度は海外渡航を試みたものの,最終的には最高検察庁の召喚に応じ国内にとどまった。7月にはタクシンとアヌティン・チャーンウィーラクン・タイ矜持党党首が私的に会談したことから,タクシン派に対する保守派の司法を用いた圧力は収束するとの見方が強まった。セーター首相についても,解任回避が濃厚とみられていた。7月に国王ラーマ10世から2つの勲章を授与されたうえ,同月に行われたセーターの母親の葬儀には国王名代としてスラユット枢密院議長が臨席したためである。しかし後述するように,セーターは職を解かれることになる。
上院選挙はタイ矜持党が多数派に5月10日,上院が任期満了を迎え新議員の選出が始まった。2019年に成立した旧上院は,クーデタを実行した国家平和秩序維持評議会(NCPO)の任命した議員(定数250)で構成されていた。上院は,下院(定数500)におけるNCPOの受け皿であるPPRPと足並みをそろえ,保守派として首相選出投票や重要法案の審議を左右してきた。これに対し,新たな上院は定数を200に削減され,首相選出投票への参加資格を失う。しかし憲法改正審議への参加や下院が可決した法案の差し戻し,憲法裁判所など独立機関の人事承認といった権限は引き続き保持することから,上院における多数派形成が大きな争点となった。
今回の上院議員選出手続きは憲法に基づき,20の職能グループごとに立候補者間で互選して当選者を絞り込むという複雑な方法が採用された。具体的には郡レベルで職能グループごとに3人ずつ(928カ所5万5680人)選出し,そのなかから県レベルで各グループから2人ずつ(77県3080人),さらにそのなかから全国レベルで各グループ10人ずつ(200人)を選出する。投票権は立候補者にのみ与えられ,立候補資格として,年齢40歳以上で当該職業勤務経験10年以上,国会議員,閣僚,政党幹部などの公職から離職して5年以上経過していることなど細かい条件が設けられた。さらに選管は,候補者に手数料2500バーツの支払いと経歴を証明する書類の提出を義務づけ,組織的投票を防止するためとして候補者間の相互連絡や広報活動を厳しく制限した。革新派の政治団体「進歩団」(Progressive Movement)のタナートーン・ジュンルンルアンキット代表や司法の公正を監視する法律NPO「iLaw」は,体制改革派の市民に広く立候補を呼びかけた。投票資格をもつ人々を増やすことで,保守派各党の組織的投票を防ごうとしたのである。
しかし,高額な手数料や経歴証明手続きの煩雑さが障害となり,立候補者数は全体で伸び悩んだ。1週間の立候補期間に登録した候補者は,選管の予想した10万人を大きく下回る4万8117人だった。そのうち選管の資格審査を経て公式候補となった4万6206人により,6月9日に郡レベル,16日に県レベル,26日に全国レベルで互選投票が行われた。選挙期間中には一部の立候補者が上院議員選出法の不備を憲法裁判所に訴え,選挙自体が無効になる可能性が生じた。また選挙後には約600件の不正調査申立てが出されるなどプロセスは混乱した。選管による審査を経て,公式に当選者が発表されたのは7月10日だった。
今回の選挙では政党所属者の立候補に加え,候補者間の事前打ち合わせなどが禁止されていたが,実際には特定政党の関係者が大量に立候補し,SNSで連絡を取り合い組織的投票が行われたとみられる。マスメディアや研究者が当選者の経歴をもとに各党との関係を分析した結果,新上院は保守派連立与党であるタイ矜持党の関係者が約6割を占めるとの見方が示された(Krungthep Thurakit オンライン版2024年6月28日)。報道を裏付けるように,上院発足後の議長・副議長選出では,タイ矜持党の地盤であるブリラム県選出の議員が議長に推され,副議長もタイ矜持党関係者とみられる2人が多数の支持を得て選出された。対照的に,革新派の市民やタイ貢献党関係とみられる候補者は大半が落選した。これらの勢力は,規定違反を理由に選管から解党処分を受けることを恐れ,ルールを慎重に守り候補者間の相互連絡を控えたと思われる。
タイ矜持党は,ブリラム県出身の有力政治家ネーウィン・チッチョープを中心に,地方有力家系のネットワークを利用し勢力を拡大してきた。特に近年はアヌティン党首を中心に王党派としての姿勢を全面に打ち出し,2023年の下院選挙で第3党となって,連立政権や保守派内での影響を拡大した。今回上院で多数派を掌握したことにより,タイ矜持党はその政治的発言力をさらに強化したといえる。
保守派が仕掛けた首相交代8月,政局は2件の憲法裁判所判決で大きく動いた。ひとつは先述の前進党の解党,もうひとつは14日に憲法裁判所が下したセーター首相に対する解職判決である。その根拠は,4月の内閣改造で犯罪歴のあるピチットを閣僚に任命したことが憲法170条および160条の定める倫理規定に違反したというものだった。判決を受け,連立与党は協議の末に15日にペートーンターン・タイ貢献党党首を新首相とすることで合意した。ペートーンターンは16日の国会下院特別会議で,下院議員319人の支持を得て第31代首相に選出された。
セーター解任とペートーンターンの首相任命という一連の首相交代劇の背景には,首相解任を利用して政権内での優位を確保しようとしたタイ矜持党の存在があった。提訴した元上院議員らの背後にいたとされるプラウィットPPRP党首は,セーター解職後に自身が首相に選出されることを目論んだ。しかしタイ矜持党など他の保守政党は,首相解任要求に乗じ,プラウィットではなく,タクシンを操作するための「人質」としてタイ貢献党のペートーンターンを首相に選出した。タクシンは将来的に娘を首相にする目算だったが,彼女の政治経験が不十分な現時点での就任は時期尚早として望んでいなかった。しかし保守派の要求を拒否すれば,セーター解任に連座してタイ貢献党も解党されかねない。このため,タクシンはやむを得ず娘の首相就任に同意したと思われる。
新内閣では,PPRPプラウィット派の閣僚が更迭される一方,タイ矜持党やタイ団結国家建国党(UTN)など他の保守派政党は閣僚ポストを維持した。PPRP内では,プラウィット党首と対立していたタマナット幹事長が議員20人を伴って離党し,「グラータム党」(Klatham Party)を結成して3人を入閣させた。2023年の選挙で野党となっていた保守派の民主党(Democrat Party)からも,集票力のある議員2人が入閣した。最終的に保守派内ではタイ矜持党がPPRPから主導権を奪い,他党を糾合して新たな保守派主流を形成した。同時にペートーンターンを通じてタクシンへの統制を強め,タイ貢献党に対し優位に立ったのである。
国会での重要法案をめぐる対立上院選挙や首相交代と並行し,国会内では2024年を通じて重要法案をめぐる攻防が続いた。争点となったのは,恩赦法案と国民投票法改正案である。
恩赦法は3つ政治的亀裂の修復に関係している。すなわち,2006年9月クーデタ以降の政治対立で深まったタクシン派と反タクシン派,選挙による政権交代の是非をめぐる民主派と軍政支持派,国王を元首とする民主主義体制にかかわる革新派と保守派の間の対立である。議論の争点は,不敬罪や国家毀損罪の違反者を恩赦対象とするかどうかにあった。なぜなら,2009年から2010年に民主党政権退陣要求運動を展開した「赤シャツ」こと反独裁民主戦線(タクシン派)や,2014年から2019年に反軍政運動を続けた学生,市民(民主派),2020年から体制改革要求を行った政治運動「人民党」(Khana Ratsadon)の活動家ら(革新派)のなかに,国家毀損罪や不敬罪を適用され勾留中の者が多数含まれるためである。
国会での審議は難航した。2024年2月の時点で恩赦法案は4本あった。このうち,不敬罪を恩赦対象に含めていたのは,前進党の草案と市民団体が国会に提出した草案の2本である。国会では4本の草案から選ぶことを避け,タイ貢献党の法律顧問を委員長とする特別検討委員会を2月に設置して,新たに枠組みを検討させた。最終的に委員会は結論を避け,不敬罪犯を恩赦対象に含める場合と含めない場合,そして条件付きで含める場合の3案を併記した報告書をまとめた。下院での審議は10月半ばに始まり,保守派のタイ矜持党,UTN,民主党の提案で,恩赦対象に不敬罪を含める案について採決が行われた。総投票数425票のうち賛成151票(タイ貢献党11人,PP138人,その他2人),反対269票(タイ貢献党115人,タイ矜持党65人,UTN27人,PPRP26人,民主党13人,その他23人),棄権5人で,不敬罪犯への恩赦適用提案は否決された。報告書作成を主導したタイ貢献党だったが,採決では保守派に妥協せざるを得なかったとみられる。
一方の国民投票法改正は,憲法改正と深くかかわる。2023年の選挙でタイ貢献党と前進党は憲法改正を公約に掲げたが,そのハードルが国民投票法だった。憲法裁判所は,2021年3月に憲法の全面改正には国民投票が必須だとする判断を下している。そして現行の国民投票法は,有権者の過半数が投票し,かつ投票者の半数が改正に賛成した場合のみ投票が成立する「二重過半数制」を定めており,この規定が改憲を困難にしている。加えて,国民投票を改憲過程のどのタイミングで何回行うべきかといった手続きは曖昧なままだった。このためセーター政権は,まず2024年4月の閣議で,改憲の可否を問う国民投票を,2025年2月に行われる47県自治体の首長・議員選挙と同日に行うことを決定した。これは現下院の任期中に改憲を果たすうえでぎりぎりのタイミングである。
国会審議は,二重過半数制をめぐって紛糾した。6月の時点で内閣とタイ貢献党,前進党は同制度の廃止を掲げたのに対し,タイ矜持党は維持を主張した。審議の末,8月に下院は二重過半数制を廃止し「投票者の過半数が投票すれば国民投票は成立する」とする改正案(下院改正法案)を新たにまとめ,圧倒的多数で可決した。下院改正法案は上院に回され,賛成多数で第1読会を通過した。しかし,9月の第2読会ではタイ矜持党系とみられる上院国民投票法審議委員長の提案で二重過半数制に戻す修正案(上院修正法案)が提出され,賛成多数で承認された。上院修正法案は第3読会でも賛成多数で可決され下院に回されたが,下院はこれを否決した。両院が真っ向から対立するなか,国会は手続きに従い上下院合同の検討委員会(合同委員会)を設置し,上下院どちらの案を両院に戻すかを検討させた。合同委員会は,11月に13対9で上院修正法案を承認した(投票では委員28人のうち3人が欠席,タイ矜持党所属下院議員2人と上院議員1人が棄権)。上院修正法案は12月に両院で再審議に付されたものの,上院は可決,下院は否決し再びもの別れに終わった。このため憲法規定に従い,法案は180日間凍結された。これにより,予定されていた2025年2月の第1回憲法改正国民投票は実施不可能となり,現下院任期中に憲法改正を果たす可能性は潰えた。
法案が凍結された場合の次善策として,タイ貢献党とPPは国民投票の要らない部分改憲案を準備していた。その焦点のひとつが,セーター首相の違憲審理で問題となった倫理規定である。タイ貢献党とPPは倫理規定の明確化と厳罰見直しを盛り込んだ改憲案をそれぞれ公表した。しかし,タイ矜持党など保守派主流の猛反発を受け,タイ貢献党は9月末に倫理規定検討の断念を宣言し,PPもこれに倣わざるを得なかった。一連の重要法案審議は,上院を掌握したタイ矜持党の影響力と,司法攻撃を回避するため保守派の顔色をみながら妥協せざるをえないタイ貢献党の姿とを印象付けた。
(青木)
2024年,タイの実質国内総生産(GDP)成長率は前年比2.5%と前年から加速したものの,近年は経済成長率の低迷が続いている。生産面では観光業の回復,支出面では民間消費の拡大が経済成長に貢献したが,主力の製造業は低迷が続き,民間消費は家計債務膨張による下押し圧力を受けて減速傾向を示している。
国内総生産の生産面をみると,自動車産業など代表的な製造業が内需・外需低迷と在庫積み上がりの影響を受けて,第1四半期は前年同期比-2.9%のマイナス成長,第2四半期以降も同0%台の停滞が続き,通年では前年比-0.5%の成長率なった。製造業生産指数(付加価値ベース,2021年=100)は年間平均で95.8(前年比-1.8%)と減退し続けている。対して,観光業の回復を受けてサービス業は好調で前年比3.9%増を記録しており,産業間で回復ペースの差が目立っている。農業は不安定な気候により第1四半期から第3四半期までマイナス成長が続き,通年で前年比-1.0%となった。ただし,同じように国内農業生産が落ち込んだインドネシアやフィリピンなど周辺国における需要増大を受けコメの輸出量は955万トンと増加し,輸出額は2256億バーツと非常に好調であった。
支出面では前年と同様,民間最終消費支出が前年比4.4%成長となり,経済を下支えした。年平均0.4%と低いインフレ率が購買力を底上げした一方で,民間最終消費支出は第3四半期に前期比0.6%増,第4四半期には同0.5%増と年後半にかけて停滞傾向を示した。また,総固定資本形成は前年比0.0%と横ばいとなった。政権交代に伴い,2024年度国家予算(2023年10月〜2024年9月)の執行が2024年4月まで遅れ,新規事業や施策は暫定予算の元で凍結されていた。結果,政府支出は前年末から大幅な減速を続け,政府最終消費支出は第1四半期に前年同期比-2.3%,公的部門の固定資本形成も第1四半期に前年同期比-20.0%となった。予算法執行後,政府最終消費支出は回復し通年で前年比2.5%成長ともち直したものの,その実質額は2022年の水準を下回っている。また,第2四半期からは民間部門の設備投資が縮小し,総固定資本形成の改善を妨げた。財輸出は通年で4.3%増と回復したが,基準となる前年の数値が低いことに加え,原材料・中間財の輸入も増加し,純財輸出の経済成長率寄与度は通年で-0.3ポイントであった。
財貿易を詳しくみると,輸出は前年比7.3%増の10兆5487億バーツ,輸入は同8.2%増の10兆8964億バーツで,3年連続の貿易赤字となった。特に中国との貿易赤字は1兆6200億バーツまで膨張した。輸出を品目別にみると,コンピューター・関連部品(前年比40.2%増),宝石・宝飾品(同24.5%増),機械・関連部品(同18.0%増)などの品目で前年の輸出不振から回復したものの,輸出額シェアが最も大きい自動車・関連部品は同-1.5%,ほか集積回路も同-9.3%の減少となり,不安定な外需により回復は一様ではなかった。
新型コロナウイルス禍以降,タイのGDP成長率は1〜2%台にとどまり低成長が続いている。近年のタイ経済は,財輸出の伸びが小さく製造業がくすぶる一方で,観光業の回復,そして民間消費の拡大によって下支えされている。ただし,観光業の動向は外的要因に著しく左右されるうえ,家計債務累積が民間消費の足枷となる可能性が高く,経済構造は依然として脆弱な状態にある。2024年,タイを訪れた国際観光客数は3554万人とほぼコロナ禍以前の水準に回復したものの,最も多数を占める中国人観光客の客足は,短期ビザ相互的免除措置が無期延長されたにもかかわらず,2024年は673万人にとどまった。東南アジア周辺国やインド,ロシアからの旅行客の伸びが観光業を支えた。
その他,失業率は通年で1.0%と安定している。経常収支は対名目GDP比で2.1%とサービス収支の回復により黒字幅が拡大傾向にある。政策金利は10月のタイ中央銀行金融政策委員会にて2.25%へ引き下げられた。国内外経済の動向を鑑みて利下げに慎重な姿勢を保持する中銀に対し,政府はバーツ高と低いインフレ率を理由に公然と金利引き下げを要求し,さらに中銀の次期理事長選出においてタイ貢献党支持のキティラット・ナ・ラノンを擁立するなど,金融政策への政治圧力が露見した。最終的にキティラットは過去1年間における政治関連ポストへの就任を理由に不適格と判断された。
デジタルウォレット政策の顛末セーター政権と,9月に発足したペートーンターン政権の両政権において重点的に進められたのは,国民に電子マネーを配布する「デジタルウォレット」や最低賃金の引き上げといった景気刺激策である。しかしながら,財源確保や経済界との交渉は難航を極めた。一方で,家計債務削減については前年に引き続き中央銀行,金融機関などと協同で推進された。
まず「デジタルウォレット」は,当初の計画から財源と支給時期の大幅な修正を余儀なくされた。セーター首相が2023年11月に明らかにした計画では,5000億バーツの財源は特別立法による借入金で賄うとし,2024年5月から支給を開始するとされていた。しかしながら,巨額の借入についてNACCから法律違反と汚職助長の可能性があるとの指摘を受け,最終的に「デジタルウォレット」は2024年度の補正予算から1220億バーツ,そして2025年度予算からおおよそ3000億バーツ,残りを政府系金融機関からの借り入れにより支出することを決定し,支給時期も5月から10月へと延期された。ペートーンターン政権発足後の9月17日,社会的弱者を優先するため,第1段階として「国民福祉カード」をもつ国民および障がい者の約1455万人を対象とする支給を閣議決定し,9月下旬に支給を開始した。また,第2段階では2025年1月に60歳以上の高齢者に,第3段階は2025年第2四半期に残りの対象者への給付開始を目標としている。しかし,膨大な予算を投入するこの政策の効果について,依然として経済界,中央銀行から懐疑的な声が上がり続けている。
タイ貢献党が2023年選挙の公約で掲げていた,全国一律の最低賃金引き上げについても経済界と政府の応酬がみられた。セーター政権は,まず限定的措置として4月13日から一部の地域の高級ホテル・リゾートで雇用される従業員を対象に最低賃金の改定を実施し,徐々にその地域と業種を拡大するとした。5月14日の閣議にて全国一律で1日400バーツにまで引き上げる方針を固めたが,使用者側団体から企業競争力維持の観点から適切ではないと難色を示され,実施には至らなかった。ペートーンターン政権発足後も政府は積極的な賃上げ姿勢をみせたが,タイ商工会議所など経済団体は全国一律での最低賃金引き上げを批判した。政労使三者が参加し適正賃金について調整・決議を行う中央賃金委員会は,定足数不足や委員の入れ替わりを理由に延期が繰り返された。最終的に12月23日の委員会において,2025年1月1日から地域別で全国平均2.9%の引き上げ実施を決定した。
他方,家計債務への対応も引き続き行われた。中央銀行によれば,家計債務残高の対GDP比は,第4四半期に88.0%(前年同期の修正値は90.9%)であり,高水準で推移している。さらに,金融機関は中銀の家計債務削減方針に従って融資基準を強化し,自動車ローン審査が厳格化したことから国内自動車新規登録台数は57万2000台と前年比-26%の大幅な減少となった。家計消費指数(季節調節済み,2010年=100)をみると,耐久財消費指数の年平均は前年比-10.8%の106.8と大幅に落ち込み,家計債務が少なからず国内経済へ影響を及ぼしている。問題解決のため,12月11日に財務省は中央銀行および銀行協会等団体と連名で家計・中小企業の債務問題を解決するプロジェクト「クンスー・ラオチュワイ」を公表した。これは,少額ローンの返済支援を目的とし,(1)一定額以下の住宅・自動車・二輪車・中小企業ローンの債務者に対し,3年間の利息支払い停止および返済条件の緩和と,3年経過後には支払い状況に応じた利息支払い免除,(2)5000バーツ未満の不良債権化した個人ローンを対象とし,債務額の10%の返済を条件に残額の債務放棄を可能とするという2つの措置を盛り込んだ。
タイ愛国党時代の政策復活ペートーンターン政権の政策方針における特徴のひとつは,タクシンおよびその経済チームの影響が如実に現れていることである。ペートーンターン首相は,9月12日に施政方針演説,そして就任3カ月を迎える12月12日に国営放送番組内にてスピーチを行っている。言及された具体的政策を表1に整理した。

(出所)内閣官房資料およびタイ王立政府ウェブサイト( https://www.thaigov.go.th/news/contents/details/91275 ,2025年2月7日最終アクセス)より筆者作成。
ペートーンターン首相が表明した政策は,「デュアル・トラック政策」の再来を想起させる。それは,タイ経済を導く車輪として,ひとつに農村や中小企業,草の根経済を振興し,内需拡大と都市農村間の経済格差是正を図り,ふたつに大型インフラ計画や対内投資を重視し,国内産業の国際競争力強化を目指す,というタクシンが任期中に掲げた政策である。ペートーンターン政権の政策方針もこれと同じ構造をとっている。すなわち,前者の例としては,既存の「村落基金」を強化する「SMLプログラム」,低所得者向けに提供された「バーン・ウアアートン」と類似する安価な公営住宅設営など,過去のタイ愛国党の実績を念頭に置いたポピュリズム的政策が挙げられる。一方後者には,産業基盤強化としてデジタルや先端技術分野における投資強化,洪水対策インフラやランドブリッジなど大規模公共事業の推進が含まれ,デュアル・トラック政策の両輪を揃えている。
また,「インフォーマル経済・地下経済の税制への組み込み」にもタクシンの影響がうかがえる。デュアル・トラック政策が開始した当時,タクシンは労働人口の半数以上を占めるとされているインフォーマル経済,つまり税制や社会保障制度の枠外にいる人々を各種制度に取り入れることで,より強固な財政基盤と包括的な社会保障制度の形成を試みた。ペートーンターン政権でも同様に,高齢化社会に備えて社会保障制度を充実させつつ,将来的な課税対象を拡大させるという目的を掲げている。
つまり,ペートーンターン政権の政策方針はタクシンの旧構想に基づき現代の経済社会問題に取り組むことを示す。しかし,国家経済社会開発協議会事務局(NESDC)によると,タクシンが首相を務めた2000年代,所得格差を表すジニ係数は大きく改善せず,都市農村格差は解消されなかった。また,タクシン政権から20年以上が経過し社会背景も大きく変容していることから,政策とその実効性には検討の余地が残されている。さらに,連立政権内でもタクシン派の経済政策には賛否が存在する。連立与党の保守派は必ずしも一貫した経済政策を持ち合わせていないが,連立与党内の主導権争い(「政治」の項参照)によりタクシン派が主導する政策への合意形成は容易に図られにくい状況にある。政治経験の少ないペートーンターン首相は経済政策についても難しい舵取りを迫られている。
自然災害の多発と気候変動法による対応2024年のタイは,干ばつ,熱波,洪水といった自然災害に多く見舞われた。2023年終わりから2024年の3月まで干ばつが深刻化し,農業用水の不足からコメ乾季作は前年同期比-5.0%,サトウキビは-12.1%と減産に転じた。また,暑季の熱波到来で,気温が40度を超える期間が続いた結果,公衆衛生省は1月から4月の間に計61人が熱中症により死亡したと報告している。さらに,雨季に入ると豪雨や台風の影響を受け,地方部で洪水が頻発した。内務省災害予防軽減局によれば,8月から9月にかけて北部と東北部で発生した洪水により,約18万世帯が被害を受け,49人の死亡が確認された。さらに,11月下旬からは南部11県でも洪水が発生し,70万以上の世帯に被害をもたらした。政府は東北・北部地域,南部地域それぞれに50億バーツほどの支援金を支給している。
気候変動の影響緩和,自然災害リスク増大への対応が必至となるなか,2024年の洪水では,早期警報システムの不備,被災地域における指揮系統の未確立,関連行政機関同士の連携の欠如など,制度上の問題が多く指摘された。政府は2023年に天然資源・環境省内に気候変動・環境局を設立し,気候変動の緩和・適応策を定める気候変動法の早急な制定を試みている。草案では,緩和策として民間事業者に対して温室効果ガス排出量の報告を要求できる条項,排出量取引制度,炭素税の導入のほか,適応策として,自然災害を含めたリスク評価や地方レベルでの適応行動計画策定など広範に盛り込まれる予定である。タイでは伝統的に中央集権的体制のもと開発政策が実施され,現在でも中央政府の権限が依然として強い。しかし,気候変動による影響の表れ方には地域差が大きく,地方レベルでの権限拡大や危機管理体制確立を含め,柔軟なシステムの構築が求められている。
新産業育成への長期的戦略2024年のタイ投資委員会(BOI)を通じた対内直接投資は,申請ベースで2050件・8321億バーツ(前年比51%増,25%増),承認ベースでは1910件・7271億バーツ(前年比43%増,30%増)という過去10年間での最高額を記録した。うち,東部経済回廊(EEC)への投資申請が1121件4388億バーツであった。産業別でみると電気・電子への投資申請が最も多く,申請ベースで総投資額の28%を占める2293億バーツ,ついでデジタルが2203億バーツとなった。デジタル分野では,データセンター関連の投資が多く,米国のマイクロソフトとグーグルがタイ国内でデータセンター設立を表明したことや,中国データセンター大手のGDSによる280億バーツ規模の投資申請など,大型投資案件が追い風となった。
一方,普及し始めた電気自動車(EV)分野では,耐久財の需要縮小により,EV国内販売台数は前年比-5.6%の6万2000台と落ち込んだ。EV販売奨励策に参加している企業は,制度登録時から2023年の間に販売補助金を利用してタイに輸入販売した台数に応じて,2024年の国内生産台数を達成する必要があった。国内需要縮小により達成が困難であることから,必要な国内生産台数を2025年に繰り越せるようにする対応が行われた。一方で,国内エネルギー大手PTTは台湾の鴻海精密工業と合同で計画していたEV工場の建設中断を検討していると公表した。また,これまで国内の自動車販売で9割以上のシェアを誇ってきた日本メーカーは,国内需要の低迷の影響を受け,国内工場の閉鎖や人員整理を迫られた。反面,EV工場新設を急ぐ中国メーカーは,タイ国トヨタの報告によれば,国内新車販売数シェアを11.6%まで伸ばし,その存在感を一層際立たせた。
「デジタルウォレット」を皮切りに,政府は消費刺激策など需要側への介入を最優先としているが,タイの低成長の要因として,労働生産性の低迷,技術人材不足といった供給側の問題も指摘されている。新規産業について政府は外資企業に依存する姿勢を保っているが,国内産業高度化の基点とするために,人的資本開発や裾野産業育成といった供給側課題の解消が重要になる。新規産業育成を含む長期開発戦略は,旧与党による政権が策定した「20年国家戦略」であり,これは憲法で規定されている。この下位戦略である「タイランド4.0」や「バイオ・サーキュラー・エコノミー(BCG)経済モデル」はBOIの対内投資戦略や経済回廊開発,各省庁の基本計画の基盤になっているが,セーター政権同様,ペートーンターン政権もこれら長期戦略の扱いを明確にしておらず,宙に浮いた状態となっている。
(高橋)
2024年,タイは積極外交を展開したと同時に,外交の「タクシン色」が深まった1年でもあった。なかでも関心を集めたのが,OECDとBRICSへの参加表明である。OECD加盟はかつてのタクシン政権の外交目標であった。2024年2月,パーンプリー外相が加盟趣意書をOECD本部へ提出し,6月にはOECD閣僚理事会がタイを加盟協議に公式に招待する決定を下した。今後はNESDCと外務省を中心に,貿易・投資や労働者の権利,市民的自由の保障,腐敗防止などさまざまな分野の政策や慣習をOECDの要求基準に合致させるための作業が続く。
これと並行して,内閣は5月にBRICS加盟申請を決定した。6月にはマーリット外相がBRICS外相・国際関係担当大臣拡大会議でタイの加盟意思を表明した。10月のBRICS首脳会議では新たにBRICSパートナー国制度が設けられ,タイは他の12カ国とともにその候補国となった。
狙いは主に2つある。OECD加盟の最大の狙いは,国内で「OECD並み」の貿易・投資制度を整備し,民間投資を呼び込むことである。一方BRICSでは,大人口を擁し経済的潜在力に富む国々との関係強化に加え,国際経済・金融システム再編や開発協力に関する国際ルール形成への参加を目指す。先進国の仲間入りを果たすと同時に,非先進国による国際経済ルール形成過程への関与を強め,自国にとってより好ましい国際環境を創出しようという政権の意図がうかがわれる。
積極的な通商外交多国間協議体への参加表明と並行し,2024年は主要経済パートナーとの貿易投資拡大交渉が進展した。なかでも注目を集めたのが,欧州との自由貿易協定(FTA)交渉再開である。セーター政権は,貿易総額に占めるFTA締結相手国・地域との貿易額シェアを,2027年までに80%へ引き上げようとしていた。欧州連合(EU)はタイにとって中国,米国,日本に次ぐ4番目の貿易相手である。FTA締結により,貿易投資拡大だけでなくEUへの輸出を志向する外国企業に対する投資誘致効果が期待される。EUとのFTA交渉は2014年の軍事クーデタで停止したが,2019年の下院選挙を機に交渉再開の機運が高まっていた。セーター政権は2024年3月にFTA交渉再開を宣言しEU側がこれに同意したことで,7月にバンコクで10年ぶり3回目となるFTA交渉を行った。また12月には,アイスランド,スイス,ノルウェー,リヒテンシュタインの4カ国で構成される欧州自由貿易連合(EFTA)とFTA締結で合意した。
またEUのほかにも,7月には韓国とFTA交渉を開始し,サウジアラビアとも貿易・経済連携強化に関する2国間会合を開催した。10月にはロシアのレヴィン副農相来訪に際し,ユーラシア連合(EAEU)とタイとのFTA交渉でロシアの支援を要請するなど,経済関係の多角化を進める動きが続いた。
対米関係は現状維持,中国とは新課題緊張の続く米中の間で,タイは双方と比較的安定した関係を維持した。タイ米関係では,米国の大統領選挙を前に双方が現状維持に徹したとみられる。2月26日からは,43回目となる多国籍軍事演習「コブラ・ゴールド」がタイで開催され,宇宙空間での攻撃に対する各国の連携演習が初めて実施された。演習に合わせ開催された第2回タイ・米国戦略防衛対話では,米国がタイ国軍の近代化および専門化計画に資金を援助することで合意した。経済面では,2023年11月に署名した「インド太平洋経済枠組み(IPEF)サプライチェーン協定」に基づき,タイ米間で協力の内容を詰める実務協議が行われた。8月の首相交代に際しても,ブリンケン米国務長官がペートーンターンの首相就任を祝う公式声明を速やかに発表するなど,両国政府の友好関係を確認するイベントが続いた。
他方で中国とは,拡大する二国間交流から生じた摩擦に焦点があたる1年となった。その例が,タイの対中貿易赤字問題である。2月,民間経済三団体合同委員会は,ネット通販を通じた安価な中国製品がタイの国内市場を席捲しているとして政府に対応を求めた。セーター政権はタイ国内で操業する違法中国企業の取り締まりなどを命じたものの成果は出ず,9月のペートーンターン政権発足後に駐タイ中国大使とタイ商務相とが対策をめぐる協力を確認するにとどまった。
またタイと周辺国との国境地帯における国際犯罪も,タイ・中国間で新たな問題となった。これらの地域ではオンライン詐欺や人身取引の拠点が形成され,その被害が国際化し問題となっている。11月にペルーで行われたペートーンターン首相と習近平・中国国家主席の会談でも,越境的犯罪対策での協力を確認した。
こうした摩擦が話題になる一方,タイ・中国間では2025年の国交50周年に向け,北京の霊光寺が所有する仏牙舎利(釈迦の歯といわれる聖遺物)をタイへ短期間貸与する合意が交わされるなど,友好ムードを盛り上げる動きも目立った。
近隣諸国とタクシンの「要人外交」活発な外交のなかでも注目を集めたのが,タクシン元首相による近隣諸国との協議である。2月,セーター首相は来訪したカンボジアのフン・マナエト首相との間で,両国の国境未画定海域にあるガス田の共同開発開始で合意した。同月には仮釈放直後のタクシンをフン・マナエトの父であるフン・セン前首相が訪問し,両者の間で共同開発協力のための話し合いがあったとみられる。共同開発計画はタクシン政権期に二国間で合意したものの,タイ国内の反タクシン派から「国境問題を曖昧にして国益を損なう計画」との批判を受けてとん挫した。今回の合意後も反タクシン派の市民団体が批判集会を開いたほか,10月にはPPRPの一部議員が合意取り消しを訴えるなど,国内政治対立の余波を受けた動きが続いた。
そうした批判を受けながらも,タクシンは近隣諸国の要人と積極的に交流を展開した。5月にはミャンマーのカチン独立機構(KIO)や国民統一政府(NUG)などの反軍政勢力と会見したことが話題となった。タクシンの動きと並行してタイ政府は外務省を中心にミャンマー問題をめぐる周辺国との調整を進め,12月にはミャンマー軍政のタンスェ外相を交えて非公式外相会合を開催している。そして同月には,マレーシアのアンワル首相が,2025年のASEAN議長国を務めるにあたり,タクシンを外交顧問に迎えると発表した。タクシンを軸とする「要人外交」は,単なる私的交友を越えて地域の国際関係に影響を及ぼしつつある。
(青木)
国内政治は,タクシン派と保守派との関係が引き続き焦点となる。2025年2月にはPPがペートーンターン首相の執務能力に疑義を呈し,不信任動議を提出した。政権内の対立を利用して内閣総辞職と下院解散を狙った不信任案だが,連立与党は3月末の投票で結束してこれを否決した。PPという共通の敵を前に連携したタクシン派と保守派だが,両者の間には改憲など重要な政治案件をめぐる不一致が依然として残る。両派が今後どこまで協力できるのかが注視される。
不信任決議を乗り越えたものの,タイ貢献党にとって支持率回復が急務である状況に変わりはない。2025年2月1日に行われた47県での県自治体首長選挙の結果を,2024年中に行われた選挙の結果(「国内政治」の項を参照)と合算すると,76県中でタイ貢献党が勝利した県が25県,タイ矜持党が21県とその差はわずかだった。タイ貢献党は最大の地盤であるチェンマイでも辛勝に甘んじ,タクシンが足を運んだ7県のうち3県で後援した候補が落選するなど,党幹部の見込みからは程遠い結果となった。同党が2027年に予定される次期下院選挙までに往年の党勢を取り戻せるかは,経済面を中心とした今後の政策の成果にかかっている。
ただし経済面の見通しは明るくない。米中関係など国際情勢が激しく変容するなか,停滞する製造業を押し上げる財輸出には不確実性が残るうえに,国内経済を支える民間消費もインフレや家計債務累積による下押し圧力がかかり,低成長が持続する不安も拭えない。政策実施にあたっては,連立与党内での利害を調節すること,また,内需刺激策だけでなく産業構造の高度化や財政基盤の拡大,人材不足など構造的問題へ長期的に取り組むことのできる体制作りが重要となる。国内改革の進捗は,タイのOECD加盟にもかかわる。OECD加盟の条件には財政改革や市民的自由の確保が含まれるためである。政治対立が続くなか,政府がどこまで包括的構造改革を断行できるかが注視される。
対外関係では,対中関係とミャンマー問題が焦点となろう。中国とは2025年に国交正常化50周年を迎える。記念すべき年に合わせ,両国間で友好の深化と協力の成果をアピールすることが予想される。2025年2月には,ペートーンターン首相が訪中し,習近平主席とともにミャンマー国境地帯の犯罪組織根絶に向けた協力を宣言した。今後は,ミャンマー国内各勢力に接触しつつASEAN諸国も巻き込んで,国境地帯の治安回復に向けた協力が続くと思われる。また対中友好の一方で,新政権発足後の米国とどう向き合うかも問われている。タイの輸出を支える米国市場へのアクセスをどれだけ保持できるか,その一方で安全保障上の支援をどれほど引き出せるかが試される1年となるだろう。
(青木:地域研究センター)
(高橋:地域研究センター)
| 1月 | |
| 10日 | セーター首相とセータプット中央銀行総裁が会談。 |
| 15日 | 2万5000世帯の農地利用権利書を所有権利書に更新し再交付。タイ貢献党の公約のひとつ。 |
| 16日 | 2025年度予算大枠を閣議承認。 |
| 16日 | 内閣,軽油の30バーツ小売価格上限と間接税引下げ措置の延長を承認。 |
| 17日 | スパンブリー県の花火工場で爆発,23人が死亡。 |
| 17日 | 財務省,デジタルウォレット給付の延期を公表。 |
| 23日 | 内閣,南部6県(クラビー,トラン,パンガー,プーケット,ラノーン,サトゥーン)の開発計画18件,総額5億5200万バーツを承認。 |
| 24日 | 憲法裁判所,ピター元前進党党首のメディア株所有容疑について合憲判断。 |
| 28日 | パーンプリー外相兼副首相,ASEAN閣僚会議出席のためラオス訪問。サルームサイ・ラオス外相,ルトノ・インドネシア外相らと個別会談。 |
| 28日 | タイ・中国短期ビザ相互的免除措置協定署名。3月1日発効。 |
| 31日 | 憲法裁判所,刑法112条(不敬罪)改正公約をめぐり前進党に違憲判断。 |
| 2月 | |
| 1日 | ルアンクライ元PPRP議員,前進党の解党手続きを国家選挙管理委員会(選管)に請求。 |
| 3日 | タイ・スリランカ間FTA,署名。 |
| 7日 | カンボジアのフン・マナエト首相来訪。セーター首脳との会談でシャム湾の国境未画定海域における共同資源開発に合意。 |
| 7日 | NACC事務局長,デジタルウォレット計画の政策汚職リスクを指摘。 |
| 8日 | パーンプリー外相,ミャンマー避難民支援の人道回廊建設のためターク県を視察。 |
| 15日 | 選管制定の上院議員選挙規則,官報掲載。 |
| 18日 | 警察,タクシン元首相の仮釈放決定。 |
| 26日 | 多国籍軍事演習「コブラ・ゴールド」開始(~3月8日)。参加者9590人。 |
| 3月 | |
| 7日 | セーター首相,欧州歴訪(~12日)。 |
| 12日 | 選管,前進党解党についての判断を憲法裁判所に請求決定。18日に請求。 |
| 13日 | レモンド米商務長官,来訪。 |
| 14日 | タクシン元首相,17年ぶりに地元チェンマイ訪問。 |
| 20日 | セーター首相,違法賭博疑惑に関連して,トーサック国家警察庁長官とスラチェート副長官の首相府への異動を決定。 |
| 23日 | 2024年予算法案,下院で可決。4月26日官報掲載。 |
| 23日 | 深南部4県の44カ所で同時放火事件発生。 |
| 28日 | 投資委員会(BOI),プリント基板事業への投資奨励措置拡充を決定。 |
| 4月 | |
| 2日 | 閣議,10都県の特定地域における高級ホテルで雇用される労働者の最低賃金を1日あたり400バーツに引き上げ決定。4月13日施行。 |
| 16日 | タイ政府,OECDに加盟申請の趣意書を提出。 |
| 19日 | 軽油の物品税引き下げ措置の継続を中止する閣議決定。 |
| 28日 | セーター首相,内閣改造発表。同日パーンプリー外相辞任。30日にマーリット新外相就任。 |
| 29日 | プームタム商務相,中国の関累を訪問し新港開発を協議。 |
| 5月 | |
| 1日 | 米マイクロソフト社,タイにおけるデータセンター建設構想を公表。 |
| 7日 | 閣議,軽油の小売価格上限を33バーツに引き上げ,価格抑制措置の継続を決定。期限は10月31日まで。 |
| 10日 | 上院議員の任期満了。 |
| 13日 | 選管,3段階からなる上院議員選挙日程を発表。最終選出は6月26日。 |
| 14日 | 刑法112条違反で勾留中にハンストを行っていた女性活動家ネティポーン,死亡。 |
| 14日 | 内閣,在台北タイ貿易経済事務局と台北経済文化事務局の投資振興合意案を承認。 |
| 14日 | 東部経済回廊(EEC)政策委員会,10年間の長期特別ビザを承認。専門家や企業家への優遇措置を追加。 |
| 15日 | セーター首相,欧州および日本歴訪(~27日)。 |
| 15日 | 元上院議員40人,ピチット首相府相の閣僚資格に疑義を呈し,憲法裁判所にセーター首相の罷免を請求。 |
| 20日 | 上院議員立候補登録の受付開始(~24日)。最終的に4万6206人の候補を認定。 |
| 21日 | 2024年度補正予算案を閣議承認。 |
| 23日 | 憲法裁判所,セーター首相資格判断請求を受理。職務停止は命じず。 |
| 23日 | セーター首相,個人資格で訪日。企業要人らと会談。 |
| 23日 | マーリット外相,イラン大統領および外相の事故死を受け,イラン大使館を弔問。 |
| 23日 | ピパット労相,イスラエル訪問。タイ人労働者の安全確保を要請。同日に2023年10月のガザ攻撃から初となるタイ労働者100人がイスラエルへ渡航。 |
| 27日 | 第1回タイ・中国地域的な包括的経済連携(RCEP)商談会開催(バンコク)。 |
| 28日 | 内閣,BRICS加盟趣意書案を承認。 |
| 28日 | 中期財政計画の修正案を閣議承認。 |
| 29日 | 最高検察庁,刑法第112条およびコンピュータ犯罪法違反容疑でタクシン元首相の起訴を決定。 |
| 6月 | |
| 7日 | 自動車メーカー・スズキがタイ国内の自動車工場閉鎖,撤退を公表。 |
| 11日 | マーリット外相,BRICS外相・国際関係担当大臣拡大会議でBRICS加盟の意思を表明。 |
| 14日 | 先物取引所と天然ゴム公団がゴムの参考価格策定に関する覚書を締結。 |
| 17日 | 2011~2013年に行われた籾米担保融資制度のもと買い取られた政府備蓄米の売却オークションを実施。 |
| 18日 | タクシン元首相,最高検察庁で起訴手続き後,50万バーツの保釈金を払い保釈。 |
| 18日 | 上院,婚姻平等法を可決。9月22日官報掲載。2025年1月23日施行。 |
| 26日 | 上院議員選挙,最終選出実施。 |
| 7月 | |
| 9日 | 第1回タイ・韓国経済連携協定(EPA)交渉(~10日)。 |
| 10日 | 選管,上院議員選挙最終結果を承認,同日官報掲載。 |
| 10日 | OECD閣僚理事会,タイの加入趣意書を承認。 |
| 14日 | マーリット外相,サウジアラビア訪問。実業家らと対タイ投資誘致協議。 |
| 17日 | 第3回タイ・EU間FTA交渉(~21日)。 |
| 23日 | 上院,初会合。議長・副議長を選出。 |
| 26日 | 国家電気自動車(EV)委員会,国内で生産・組立されたハイブリットEVの物品税引き下げを決定。 |
| 8月 | |
| 7日 | 憲法裁判所,前進党に解党判断。党首以下幹部11人の公民権を10年間停止。 |
| 14日 | 憲法裁判所,セーター首相に解職の決定。 |
| 16日 | 下院,首相指名会議でペートーンターン・タイ貢献党党首を首相に選出。18日に国王が首相任命。 |
| 16日 | 第9回メコン-ランツァン(瀾滄江)協力外相会議開催(バンコク)。 |
| 17日 | 国王,タクシン元首相に恩赦。 |
| 19日 | タイ=ラオス間を結ぶ国際旅客鉄道線が開通。 |
| 20日 | タマナットPPRP幹事長,同党所属議員20人とともに離党。 |
| 22日 | タクシン元首相,講演で新政策14項目を発表。 |
| 24日 | ペートーンターン首相,ナーン県の洪水被災地を訪問。 |
| 27日 | 内閣,総額91億バーツの洪水対策予算案を承認。 |
| 9月 | |
| 3日 | 低品質・違法な輸入品の流入を規制する措置を閣議承認。輸入時検査や電子商取引規制を強化。 |
| 4日 | ペートーンターン首相,新閣僚名簿を国王に上奏。同日に官報記載,新内閣発足。6日に国王宣誓式。 |
| 9日 | 2025年度予算法案,上院で可決。歳出総額3.7兆バーツ。9月30日官報掲載。 |
| 12日 | ペートーンターン首相,施政方針演説で10項目の緊急政策を公表。同日に北部・東北部洪水被害対策の緊急閣議開催。 |
| 17日 | 内閣,社会的弱者1455万人向けデジタルウォレット計画,および緊急予備費からの洪水被災者支援経費支出を決定。 |
| 17日 | バイオ燃料に対する価格支援措置を2026年まで延長。 |
| 26日 | ペートーンターン首相,首相公邸で首相顧問5人と初会合。 |
| 27日 | ペートーンターン首相,洪水被害視察のためチェンラーイ県,チェンマイ県訪問(~28日)。 |
| 30日 | 上院,国民投票法の上院修正法案を可決。 |
| 30日 | 米グーグル,タイ国内のデータセンター建設を含む10億ドルの投資計画を公表。 |
| 10月 | |
| 3日 | ペートーンターン首相,第3回アジア協力対話(ACD)首脳会議出席のためカタール訪問。 |
| 3日 | ピチャイ財務相とセータプット中央銀行総裁が対談。 |
| 8日 | ペートーンターン首相,ラオス訪問。ソーンサイ首相と会談。 |
| 9日 | 国会下院,上院が可決した国民投票法修正法案を否決。 |
| 10日 | ペートーンターン首相,ASEANプラス3首脳会議および日・ASEAN首脳会議に出席(首都ビエンチャン・ラオス)。同日に尹錫悦・韓国大統領と会談。 |
| 10日 | 国連,タイを人権理事会(UNHRC)理事国に選出。 |
| 11日 | ペートーンターン首相,東アジアサミット(首都ビエンチャン・ラオス)に参加。同日に日本の石破首相と会談。 |
| 11日 | イスラエル北部国境付近の農場に砲弾が落下。タイ人労働者1人死亡,1人重傷。 |
| 16日 | 韓志強・中国大使,首相公邸でペートーンターン首相と会談。 |
| 16日 | 中央銀行政策金融委員会,政策金利を0.25%引き下げ,2.25%を適用。 |
| 18日 | 選管,タイ貢献党解党を求める請求を受理。 |
| 22日 | マーリット外相,第4回BRICS首脳会議出席のためタタールスタン訪問(~24日)。 |
| 25日 | 2004年に起きたタークバイでのイスラーム教徒虐殺事件,時効を迎える。 |
| 25日 | 首相府命令にて国家半導体・先端エレクトロニクス政策委員会を設置。 |
| 30日 | コーマンOECD事務総長,来訪。ペートーンターン首相と会談。 |
| 31日 | レヴィン・ロシア副農相,来訪。タイとEAEUのFTA交渉におけるロシアの支援をピチャイ商務相と協議。 |
| 11月 | |
| 4日 | ペートーンターン首相,タイ・カンボジア間資源共同開発計画の継続を表明。 |
| 6日 | ペートーンターン首相,第8回大メコン圏(GMS)首脳会議およびエーヤーワディー・チャオプラヤー・メコン経済協力戦略(ACMECS)首脳会議に出席のため,昆明訪問(~7日)。 |
| 9日 | プームタム副首相兼国防相,タイ・カンボジア領海問題係争区域にあるカンボジア領クード島訪問。11日にはアヌティン副首相兼内相も同島視察。 |
| 11日 | 中央銀行の理事指名委員会,キティラット元財相を次期理事長に選出。12月25日,内閣法制委員会事務局がキティラット元財相は理事長に不適格であると判断。 |
| 12日 | 運輸省,イギリス式渋滞税導入に関する調査に言及。 |
| 12日 | 低所得者向けに住宅購入,修繕のための低金利ローンを提供する施策を閣議承認。予算550億バーツ。 |
| 14日 | ペートーンターン首相,アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議出席のためペルー訪問(~16日)。 |
| 15日 | ペートーンターン首相,訪問先のペルーで中国の習国家主席と会談。 |
| 19日 | ペートーンターン首相,米国大統領選挙で当選したトランプ氏と電話会談。 |
| 20日 | 国会上下院合同委員会,国民投票法改正について上院修正法案を承認。 |
| 20日 | 60歳以上の高齢者約400万人を対象とするデジタルウォレット給付を閣議決定。 |
| 22日 | 憲法裁判所,タクシン元首相とタイ貢献党に対する体制転覆容疑の訴えを棄却。 |
| 25日 | 第4回タイ・EU間FTA交渉(~29日)。 |
| 28日 | シンガポールのウォン首相来訪。ペートーンターン首相と会談。 |
| 30日 | タイ・EFTA間FTA交渉妥結。2025年1月下旬署名。 |
| 12月 | |
| 3日 | 内閣,南部の洪水被災地へ緊急支援措置導入を決定。予算50億バーツ。 |
| 3日 | コメ農家支援・品質開発に385億バーツを閣議承認。 |
| 4日 | 中国政府から貸与された仏牙舎利がバンコク到着。首相主催の奉安式典開催。 |
| 11日 | 家計・中小企業を対象とした債務救済プログラム「クンスー・ラオチュワイ」を閣議承認,公表。 |
| 15日 | ペートーンターン首相,マーリット外相らとマレーシア訪問。16日にアンワル首相と会談。 |
| 17日 | 上院,国民投票上院修正法案を再可決。18日に下院が同法案を再び否決したため,180日間の審議凍結が決定。 |
| 19日 | 越境的犯罪対策のための6カ国非公式閣僚会議開催(バンコク)。 |
| 19日 | クラータム党,タマナット農業・協同組合相の党派への合流を公表。 |
| 23日 | 中央賃金委員会,全国平均2.9%の最低賃金引き上げを決定。2025年1月1日から適用。 |
| 24日 | タクシン元首相,県自治体選挙の応援でチェンマイ訪問。 |
| 25日 | ペートーンターン首相,基礎的な医療サービスを低料金で提供する「30バーツ医療制度」の地理的制限撤廃を公表。 |
| 26日 | タクシン元首相,マレーシア訪問。アンワル首相と会談。 |

(注)各省の大臣官房は省略。
(出所)官報など。

(注)各省の大臣官房は省略。
(出所)官報など。

(注)政党名は,PJT(タイ矜持党),PT(タイ貢献党),UTN(タイ団結国家建国党),PCC(プラチャーチャート党),CTP(タイ国家開発党),KLT(グラータム党),DP(民主党)。*兼務。

④ 警察人事
(注)カッコ内は着任日。
(出所)官報および警察ウェブサイト。

(出所)人口:内務省地方行政局( https://stat.bora.dopa.go.th/ )。労働人口,消費者物価上昇率,失業率,為替レート:タイ中央銀行( http://www.bot.or.th/ )。

(注)2023年と2024年は暫定値。2021年と2022年は修正値。国内総生産(生産側)-国内総生産(支出側)は統計上の誤差。
(出所)国家経済社会開発評議会事務局( http://www.nesdc.go.th/ )。

(注)2023年と2024年は暫定値。2021年と2022年は修正値。
(出所)表2に同じ。

(注)EUはイギリスを含む28カ国の合計値。CLMVはカンボジア,ラオス,ミャンマー,ベトナムの合計値。中東は15カ国の合計値。
(出所)タイ中央銀行( http://www.bot.or.th/ )。

(注)2023年と2024年は暫定値。2021年以降,資本移転等収支はデジタル資産取引を含む。IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。ただし,金融収支の符号は(-)は資本流出,(+)は資本流入を意味する。
(出所)表4に同じ。