2025 Volume 2025 Pages 369-396
2024年10月,2期10年にわたり続いたジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権が幕を閉じ,プラボウォ・スビアント大統領とギブラン・ラカブミン副大統領の新政権が始動した。2月14日の大統領選挙で,ジョコウィの後援を受けて圧勝したプラボウォは,その後の移行期間中に連立与党を拡大して政権基盤を固めた。そして,10月20日にプラボウォ政権が発足し,翌21日には大規模な省庁再編が行われ,閣僚が大幅に増加した「紅白内閣」が誕生した。一方,11月に行われた全国統一地方首長選挙をめぐっては,退任後も政治的影響力を維持しようとしたジョコウィが候補者の選定過程に介入した。その一環として,国会が地方首長選挙法の改正を進めたものの,市民社会による大規模デモが発生し,その試みは頓挫した。地方首長選挙の結果,プラボウォ政権の与党連合が全国的に勝利を収め,地方政府との連携を強化する土台が築かれた。
ジョコウィ政権の目標は2024年までに経済成長率を6%台へ引き上げることであったが,最後の年も5%成長にとどまった。国内総生産(GDP)に占める割合が最大の民間消費の成長率が鈍化するなか,政府や政党などによる選挙関連の支出増に支えられてかろうじて達成した格好となった。消費者物価上昇率は1.57%と史上最低水準を記録したが,購買力の弱さがその低下をもたらしたとの指摘もあり,景気の悪化を懸念する声が強い。このような環境のもとで10月に誕生したプラボウォ政権は,任期中の8%成長を目標に,その発足直後から選挙公約に沿って貧困削減や教育・健康への投資を中心とした政策を矢継ぎ早に打ち出している。こうした重点政策を拡張していくのに伴い歳出も増加するため,その不足分を補うための歳入確保が大きな課題となっている。
対外関係において,プラボウォ新政権は,インドネシアの伝統的な自主・積極に基づく外交原則を維持しつつも,外交政策を大統領自らが主導する姿勢を鮮明にしている。また,発足直後にBRICS加盟を表明したことは,ジョコウィ政権の外交方針からの大きな転換となった。
2024年2月14日,5年に一度の大統領選挙および議会選挙が実施された。3月20日に総選挙委員会が発表した最終集計結果によれば,プラボウォとギブランのペアが58.59%の得票率を獲得し,アニス・バスウェダンとムハイミン・イスカンダルのペア(24.95%),およびガンジャル・プラノウォとマフッド・MDのペア(16.47%)を大きく引き離した(候補者の詳細は『アジア動向年報2024』参照)。いずれの候補者も過半数の得票率を獲得できなかった場合,6月26日に決選投票が予定されていたが,プラボウォ=ギブラン組が過半数を超える得票率を獲得した。したがって決選投票は行われず,第1回投票での同ペアの勝利が決まった。
プラボウォ=ギブラン組の圧勝をもたらしたのは,ジョコウィ前大統領による実質的な後援であった。ジョコウィは闘争民主党に所属していたが,同党党首メガワティ・スカルノプトゥリに選ばれた大統領候補のガンジャルではなく,自身の長男ギブランを副大統領候補に選んだプラボウォの支援にまわった。自らの退任後も影響力を維持できる候補と判断したのである。そして,現金給付などの社会扶助の提供を選挙期間まで延長するなど,大統領権限を利用して選挙活動を後押しした(『アジア動向年報2024』参照)。さらに,ジョコウィ政権に対する有権者の高い満足度が,その後継者とみなされたプラボウォの支持拡大を促した。
また,プラボウォ陣営の若者を意識した選挙戦略も功を奏した。今回の選挙では,有権者の56%をY世代(30〜44歳)およびZ世代(17〜29歳)の若年層が占めていた。選挙権は17歳以上に付与される。プラボウォは,スハルト時代に陸軍特殊部隊や陸軍戦略予備軍の司令官として人権侵害行為に関与した疑いがもたれているが,若者の間ではその経歴はほとんど認知されていない。そのためプラボウォ陣営は過去の大統領選とは異なるイメージ戦略を採用し,「強い指導者」ではなく「親しみやすい好々爺」というイメージ作りに注力した。特に,TikTokなどでプラボウォのダンス動画を拡散して若者の注目を集め,「gemoy」(かわいらしい)という若者言葉をキャッチフレーズとして浸透させることに成功した。
しかし,ジョコウィ政権による社会扶助の提供などを通じたプラボウォ陣営への露骨な支援は,知識人層から強い批判を受けた。現職大統領が一有権者として特定候補を支持,投票することは認められているものの,大統領権限を行使して選挙プロセスに影響を与えることは職権濫用として選挙法で禁じられている。ジョコウィの職権濫用を批判する意味を込めて,ガンジャルの副大統領候補マフッド・MDは,1月31日に政治・法務・治安担当調整相職を辞任した。また,1月末から,ジョコウィの出身校である国立ガジャ・マダ大学をはじめとする全国の大学で,教員による抗議声明が出され,介入中止を求める署名活動も行われた。
総選挙委員会が集計結果を発表した後,対抗陣営は,プラボウォの勝利が大規模な不正と政府の干渉によって支えられたとして,憲法裁判所に異議を申し立てた。4月22日,憲法裁判所は証拠不十分を理由に請求を棄却し,プラボウォ=ギブラン組の勝利を法的に正当と認定した。しかし,社会扶助の提供などが選挙結果に影響を与えた可能性があるとして,3人の判事が反対意見を表明し,一部地域での再投票を求めた。大統領選挙後の異議申し立ては過去の選挙でも毎回出されているものの,これまでは全会一致で棄却されてきた。それに対して,今回は判事の判断が5対3に分かれる異例の結果となった。これは今回の選挙の不正が,過去の選挙では観察されなかった規模で行われた可能性を示唆している。
移行期間中の連立与党の拡大投票日から政権の発足まで8カ月と過去に例のない長さとなった政権の移行期間には,各政党が新政権での発言力確保を目指そうとした一方で,プラボウォも可能な限り多くの政党を連立与党に取り込もうとした。
2月の議会選挙では,各政党の得票率に大きな変動はみられなかった。闘争民主党は2019年の選挙から得票率を2.61ポイント減らしたものの,第1党の座を維持した。第2党となったゴルカル党は,得票率を2.97ポイント伸ばし,連立政権内の第1党となった。この要因のひとつとして,ゴルカル党のアイルランガ・ハルタルト党首が,経済担当調整相という肩書を利用するかたちで,選挙期間中に社会扶助の配布を直接行ったことが挙げられる。一方,第3党となったグリンドラ党は,党首であるプラボウォが大統領選で圧勝したにもかかわらず,得票率の増加は0.65ポイントにとどまった。他方で,アニス=ムハイミン組を支持した民族覚醒党,ナスデム党,および福祉正義党は得票率をおおむね維持した。ただし開発統一党は得票率が3.87%にとどまり,代表阻止条項の要件4%を満たせなかったため,1977年の総選挙参加以来,初めて議席を失った。
結果的に,プラボウォを擁立した「先進インドネシア連合」(KIM)を構成する政党の合計議席数は280にとどまり,過半数の291議席には届かなかった。そこでプラボウォは,連立与党を拡大するために積極的に多数派工作を行った。2月下旬には,対抗馬を支持した各政党が国政調査権の発動を通じて総選挙委員会による選挙不正の可能性を追及しようとした。しかし,発動に2政党以上から成る25議員の署名を要するなか,政権による制裁を恐れてかどの政党も主導せず,各党の足並みは揃わなかった。プラボウォも,内閣のポストと引き換えに国政調査権を行使しないよう一部の政党に働きかけを行った。結局,国政調査権の発動は頓挫した。憲法裁が異議申し立てを棄却し,総選挙委員会が4月24日にプラボウォ=ギブラン組の勝利を確定させると,ナスデム党と民族覚醒党はプラボウォ政権を支持すると表明した。その結果,新政権発足後に野党となり得るのは,4月末の時点で闘争民主党と福祉正義党の2党のみとなった。
統一地方首長選挙と絡んだ移行期間の政治議会選挙後の移行期間における政治は,11月27日に予定されていた統一地方首長選挙をめぐる駆け引きと密接に絡みながら展開していった。10月の退任を控えたジョコウィが影響力の温存を目論む一方,メガワティ率いる闘争民主党は,ガンジャルではなくプラボウォを支援したジョコウィの「裏切り」を許さず,反ジョコウィ姿勢を維持しつつ政治的交渉力を維持する道を模索した。
今回の地方首長選挙は,初めて全国で一斉に実施された。対象となったのは,37の州,415の県,93の市を合わせた計545の地方政府である。通常,地方首長選挙では各地方の独自の政治状況に基づいて,大統領選挙とは異なる連立が組まれることが多い。それに対して,今回は大統領選挙と同年に実施され,新政権発足前の8月末に候補者登録が行われた。プラボウォの与党連合KIMは,新政権下での中央政府と地方政府の連携関係を強化することを目的に,地方自治体レベルでも連合を維持して候補者を擁立した。新たにプラボウォ支持を表明した民族覚醒党やナスデム党も加わるかたちで「KIMプラス」として政党連合が形成される事例も多くみられた。しかし同時に,KIMプラス連合が各地で形成されることは,地方首長選挙の競争性が損なわれることを意味した。
特に注目されたのはジャカルタ特別州の州知事選挙である。同州の議会選挙で第1党となった福祉正義党は,元ジャカルタ州知事で世論調査結果では最も人気があったアニスを擁立することを画策した。また,闘争民主党も同様に独自候補の擁立を模索した。しかし,地方首長選挙の候補者を擁立するには,地方議会での議席率が20%以上または地方議会選での得票率が25%以上必要であると地方首長選挙法で規定されており,両党とも単独ではこの要件を満たすことはできなかった。両党が共闘する可能性も議論されたが,イスラーム保守派の福祉正義党と世俗派の闘争民主党は立場が大きく異なり,支持層が相容れないことから,協力することは現実的ではなかった。
一方でKIMプラス連合では,元西ジャワ州知事で知名度が高く,2023年1月にゴルカル党へ入党したリドワン・カミルが候補に挙がった。ジョコウィは,アニスが再びジャカルタ州知事となり,その実績を背景に2029年大統領選挙で有力な候補として出馬することを恐れていた(ジョコウィとアニスの関係については『アジア動向年報2024』参照)。これを阻止するうえで,ジョコウィとの関係も良好なリドワンは適任の候補であった。しかしゴルカル党のアイルランガ党首は,自党の有力政治家であるリドワンが,ジャカルタの中間層やイスラーム保守派を支持基盤とするアニスに敗北するリスクを懸念し,より当選が確実視される西ジャワ州知事選挙に出馬させることを望んだ。
こうしたなか,8月11日,アイルランガが突然ゴルカル党党首からの辞任を発表する。アイルランガは総選挙における党の議席増に貢献しており,突然の辞任は不可解なものであった。この背景には,ジョコウィが,自らの意向に従わないアイルランガに対して,汚職疑惑を用いて圧力をかけた可能性があると指摘されている。アイルランガの辞任を受けて,もともと12月に実施される予定だった2024年のゴルカル党大会が,8月20日に前倒しで開催された。同大会では,2024~2029年期の新党首に,ジョコウィの側近であり,ジョコウィ内閣で投資相を務めたバフリル・ラハダリアが選出された。これにより,与党第1党のゴルカル党は実質的にジョコウィの影響下に置かれることとなった。
アイルランガの辞任と同時期に,福祉正義党がKIMプラス連合への参加を決定した。8月19日にはリドワンが,福祉正義党のススウォノ元農業相を副知事候補に据えてジャカルタ州知事選への出馬を発表した。これによりアニスは福祉正義党の後ろ盾を失い出馬できない状況に追い込まれた。闘争民主党も単独では候補を擁立できず,この時点でリドワンの勝利は揺るぎないようにみられた。
地方首長選挙をめぐる憲法裁判決統一地方首長選挙では,長男ギブランが副大統領に当選したジョコウィが,さらに「政治王朝」を築こうとする動きも注目された。娘婿でメダン市長のボビー・ナスティオンはKIMプラス連合の支持を得て北スマトラ州知事選挙に出馬した。また,ジョコウィは次男のカエサン・パンガレップを,ジョコウィの出身地で強固な支持基盤のある中ジャワ州知事選へ出馬させることを画策した。しかし,カエサンは候補者登録が行われる8月時点では29歳であり,「出馬時に30歳」とする総選挙委員会令が定めた州知事選挙の立候補要件を満たしていなかった。同令は,地方首長選挙法が州知事選挙の立候補要件を30歳としていることに基づいたものである。この立候補要件を争点として,KIM連合の政党のひとつであるガルーダ党が最高裁判所に対して審査請求を出した。これを受け,最高裁は5月29日,年齢要件を「出馬時に30歳」から「就任時に30歳」へと解釈し直し,総選挙委員会令の修正を求めた。
しかし,8月20日に出された憲法裁の判決が,カエサンの出馬の行方とジャカルタ州知事選の情勢を大きく揺るがした。憲法裁には,出馬年齢要件と,政党による地方首長選候補者の擁立要件に関する審査請求が出されており,20日の憲法裁判決はそれぞれに対して次のような判断を示した。まず,立候補要件は「出馬時に30歳」のまま維持された。次に,政党が候補者を擁立するための得票率の基準が緩和された。得票率の基準は,州および県・市の登録有権者数に応じて6.5%から10%に設定され,ジャカルタ特別州では基準が7.5%に引き下げられた。これらの決定により,出馬時に29歳のカエサンは州知事選挙には出馬できなくなり,また,ジャカルタ州知事選では闘争民主党が候補者を単独で擁立することができるようになった。これは,退任後も影響力を維持しようとしていたジョコウィにとって大きな誤算となった。
翌日の8月21日,国会は憲法裁判決を覆すために強硬手段をとった。闘争民主党会派を除くすべての会派が,得票率の基準をおおむね維持し,最高裁判決に基づいて年齢要件を「就任時に30歳」と変更する方針で,地方首長選挙法の改正を進めることに合意したのである。こうした国会の動きは市民の怒りを買う結果となった。翌22日には,学生・市民・労働運動の活動家が「緊急事態」であると呼びかけて,国会前で大規模な抗議デモを展開した。デモは全国各地に波及し,夜間には国会前でデモ隊と機動隊との激しい衝突が発生した。この抗議デモを受けて,22日午後,グリンドラ党のスフミ・ダスコ・アハマド国会副議長は,選挙法改正を正式に取りやめることを宣言した。25日には,総選挙委員会も憲法裁決定に基づいた選挙規則を制定した。
この一連の出来事によりカエサンの出馬は阻止され,ジョコウィの「政治王朝」拡大に歯止めがかけられた。一方,ジャカルタ州知事候補者の単独擁立が可能となった闘争民主党は,プラモノ・アヌン内閣官房長官と,元俳優で元バンテン州知事でもあるラノ・カルノのペアを擁立し,州知事選に向けて態勢を整えた。
新政権の地方基盤を強化した統一地方首長選挙11月27日に実施された統一地方首長選挙の結果,KIM連合は各地で勝利を収め,プラボウォ新政権の政策遂行を支える安定した地方政治の基盤を構築することに成功した。KIM連合やその派生型の政党連合が擁立した候補は,西ジャワ州,中ジャワ州,東ジャワ州,北スマトラ州などの人口の多い州を含む26州で勝利を収めた。そのほか,5州ではKIM連合の政党が闘争民主党と連立を組んで勝利した。闘争民主党が主導して勝利したのは6州にとどまった。
激戦区となった中ジャワ州では,カエサンが出馬できなくなったため,2020年から2024年にかけて中ジャワ州警察本部長を務めたアハマド・ルトフィがジョコウィの後援を受けて出馬した。ルトフィは59.14%の得票率を獲得し,闘争民主党が擁立した元国軍司令官アンディカ・プルカサ(40.86%)を破って勝利を収めた。ただし,闘争民主党は,大統領選挙の時と同様に,選挙期間中に治安機関の介入があったと主張している。
一方,ジャカルタ特別州では,闘争民主党のプラモノが50.07%の得票率で勝利した。KIMプラス連合が擁立したリドワンの得票率は39.4%にとどまった。立候補受付前の世論調査では,リドワンはアニスに次ぐ人気を誇っていた一方,プラモノは候補予定の名前にすら上がっていなかった。そのため,この結果はリドワンならびにその後援者であったジョコウィにとって大きな誤算であった。主な敗因は,政治リテラシーが比較的高いジャカルタの中間層がジョコウィの介入に強く反発し,反ジョコウィ票がプラモノの支持につながったからとみられている。
プラボウォ新政権の大規模な省庁再編と「紅白内閣」の発足10月20日に発足したプラボウォ政権は,政治的安定を確立したジョコウィ政権にならい,可能な限り多くの政党,政治勢力および政治的有力者を政権のステークホルダーとして取り込む方針をとった。しかし,プラボウォの勝利に貢献した勢力は,ジョコウィ,KIM連合の9政党,国軍や警察,各種イスラーム大衆団体,選挙資金を提供した有力な実業家など多岐にわたる。さらに,選挙後にプラボウォ支持に回った3政党も考慮すると,取り込むべき対象は膨大であった。
さまざまな勢力に利権を分配するうえでプラボウォが目をつけたのが省庁の数である。プラボウォは,ジョコウィの協力も得ながら,34と規定された省の上限数を撤廃するため,改正国家省法を9月19日に成立させた。これにより,必要に応じて新たな省庁を設置できる権限が大統領に与えられた。その結果,プラボウォ政権発足時には,3つの省が新設されたほか,既存の2つの調整大臣府と7つの省が分割され,省の数は34から48に拡大した。加えて,プラボウォは大統領直轄の非省政府機関を新たに5庁新設した。しかし,政策的な必要性に基づいて省庁が再編されたわけではないため,予算が膨らむことや,行政の無駄が増えることが懸念されている。
プラボウォ内閣は,インドネシアの国旗の色にちなんで「メラプティ(紅白)内閣」と名付けられた。閣僚48人,大臣級長官6人(後述するように後に5人となる),副大臣56人が任命され,その他大統領顧問職や非省政府機関長官職などを含めると合計137人の高官が就任し肥大化した。そのため,メディアは「肥満内閣」と揶揄した。内閣の顔ぶれをみると,調整大臣職には支持政党それぞれの党首が任命されており(ゴルカル党を除く),人間開発・文化担当調整相にはジョコウィ内閣の国家官房長官を2期10年にわたって務めたプラティクノが任命されている。また,政権発足時点で闘争民主党は野党の立場を維持しているが,メガワティと関係が深いブディ・グナワン元国家情報庁長官が政治・治安担当調整相に就任した。政党別でみると,大臣職はゴルカル党が8人と最も多いが,副大臣職なども含めると,グリンドラ党が18人と最多である。
ジョコウィ政権から続投した大臣は13人となった。その多くは必ずしもジョコウィの利権を代表しているわけではないが,ジョコウィ支持団体の代表ブディ・アリ・セティアディが協同組合相に任命されるなど,ジョコウィの意向が反映された人事もみられる。また,経済テクノクラートであるスリ・ムルヤニ財務相の続投も注目された。ジョコウィ政権時代に,戦闘機調達予算をめぐりプラボウォとスリの間で確執があったことから,スリは選出されないと予想されていた。しかし,財政運営に対する国際的な懸念を払拭する必要性から,彼女の手腕や実績が不可欠と判断され予想に反して続投が決定した。プラボウォはスリの続投を確保するため,選挙公約であった国家歳入庁の設立を見送ったとされる。一方で,プラボウォは大統領令を通じて財務省を大統領直属の省として位置付けた。さらに,財務相の下に,プラボウォの甥で元グリンドラ党財務部長のトーマス・ジワンドノを含む3人の副大臣を置いた(トーマスは7月に財務副大臣就任)。これにより,無料栄養食プログラムなど多額の予算を要する政策の実現に向けて,プラボウォが財政運営に直接関与できるようになった。
その他,退役軍人および警察官からの任命も目立った。特に,プラボウォと深い繋がりをもつ陸軍特殊部隊の出身者が複数任命されている。これには,プラボウォの陸軍士官学校時代の同期である国防相のシャフリ・シャムスッディンや,プラボウォの個人秘書を務めたことがある外相のスギオノが含まれる。また,内閣官房長には,現役陸軍軍人でプラボウォの側近であるテディ・インドラ・ウィジャヤが任命された。現役軍人が文民ポストに就くことは国軍法に違反しているため,テディの任命は問題視された。これに対しプラボウォ政権はテディを交代させるのではなく,政権発足後に内閣官房を国家官房のなかに置かれている大統領軍事官房の下部組織として統合した。大統領軍事官房は国軍法により現役軍人が就任できる政府ポストとして定められているため,これによってプラボウォはテディの任命を正当化した。
テロ組織ジュマー・イスラミヤの解散2002年のバリ島爆弾テロ事件を主導したインドネシアのイスラーム過激派テロ組織,ジュマー・イスラミヤ(JI)が,6月30日に解散を宣言した。JIは,9・11同時多発テロを指揮したウサーマ・ビン・ラーディン率いるアル・カーイダと協力関係をもっていた。バリ島爆弾テロ事件の後,オーストラリアやアメリカの支援を受けたインドネシア国家警察の対テロ特殊部隊Densus 88による摘発で,指導者の逮捕が相次いだ。これを受け,2008年以降,最高指導者パラ・ウィジャヤントの下で,JIは暴力を手段として放棄し,インドネシア社会のイスラーム化を進めるための宣教活動や教育活動に注力するようになった。しかし,2019年にパラが逮捕された後に行われた捜査で,JIの構成員が大幅に増加していることが発覚し,Densus 88が取り締まりを再度強化した。JI指導部は,残りのメンバーを守り,教育施設などの資産の差し押さえを防ぐため,2022年から解散に向けて警察と交渉を進めてきた。12月21日には,国家テロ対策庁(BNPT)が主催するかたちで,元JIメンバー1200人がインドネシア共和国への忠誠を誓い,過激思想の放棄を宣言する式典がソロで開催された。JIから分裂したジャマー・アンシャルット・ダウラ(JAD)などの派生組織が今後どのような動きをみせるのかは未知数だが,JI解散の象徴的意義は極めて大きい。
(水野)
2024年のGDPは2京2138兆ルピア,経済成長率は前年を0.02ポイント下回る5.03%にとどまり,ジョコウィはその任期中,国家中期開発計画で掲げた6%以上の成長という目標を一度も達成することなく,退任することになった。以下,GDPを支出項目別にみていく。まず,GDPの5割を占める民間消費の成長率は前年比4.94%増であった。民間消費は2019年に同5.05%増を記録して以来,5%を下回り続けている。一方,2024年には総選挙・大統領選挙に加えて地方首長選挙も実施され,政党などの支出が増えたことを反映して,対家計民間非営利団体の消費支出は同12.48%増となり,2桁増を記録していた前年を2.4ポイント上回った。政府支出も選挙の実施に伴って6.61%増となり,5%成長を支えた。
総固定資本形成(投資)は前年比4.61%増と2018年以来の高い成長率を記録している。その7割を占める建設部門の成長率が5.51%と続伸して成長を牽引した。投資調整庁のデータ(石油・ガス,金融部門を除く)をみると,2024年の直接投資実績額は前年を3.3ポイント上回る前年比20.8%増の1714兆ルピアであった。国内直接投資は同20.6%増の814兆ルピア,外国直接投資は同21%増の900兆ルピア(600億ドル)であった。外国直接投資を出資国別にみると,シンガポールが最大(シェア33.5%)で,中国(香港含む)が続いている(同27.2%)。また,その投資先は前年に続いて第一次金属製造業(同22.6%)の占める割合が最も高い。ニッケルの川下産業振興策に伴い,中国を中心にニッケル製錬所への投資が引き続き進んでいるとみられる。国内直接投資では運輸・倉庫・通信の占める割合が最大(同14.8%)で,採掘業(同13.1%)が続く。
実質GDPの25%弱を占める輸出は,前年比6.51%増となった。通関ベースでの財輸出額(暫定値)をみると,非石油・ガス輸出は前年比4.8%増の2488億ドル,石油・ガス輸出は同4.1%増の159億ドル,総額では同4.8%増の2647億ドルとなっている。非石油・ガス輸出の内訳をみると,HS類コード(統計品目番号上2桁)でみた上位3品目は,前年と同じく鉱物性燃料(シェア15.9%),動植物性油脂(同10.8%),鉄鋼(同10.4%)が並んでいる。それぞれ石炭,パームオイル,そして川下産業振興策により生産されたフェロニッケルが代表的な輸出品である。なお,HS類コードではどの品目も中国が最大の輸出先となっている。
実質GDPのほぼ2割に相当する輸入は前年比7.95%増であった。通関ベースでの財輸入額(暫定値)は前年比11.1%増の総額2337億ドル,非石油ガス輸入は同13.9%増の1974億ドル,石油ガスは同2.2%減の363億ドルであった。非石油・ガス輸入に占める割合が高い品目は機械類・同部品(シェア17%)と電気機器(同13.7%)であり,どちらも中国からの輸入が5割程度を占めている。
一方,経済成長が伸び悩むなか,新型コロナウイルス感染症の拡大後に上昇した失業率は2020年の7.1%をピークに下がり続けており,2024年には2019年の水準を下回る4.9%を記録した。ただし,労働時間が35時間未満の不完全就労者が労働力に占める割合は前年比1.3ポイント増の7.6%に,そして被雇用者の賃金の伸び率(前年同月比)も前年を0.8ポイント下回る2.6%増にとどまった点は,雇用環境がまだ完全には回復していないことを示唆している。
消費者物価指数の上昇率(12月時点の前年同月比)は1.57%であった。中央統計庁によれば,計測が開始された1958年以来の最低値である。ただし,民間消費の成長率の弱さや不完全就労者の増加,被雇用者の賃金上昇率の低さにみられるように,購買力の弱さから物価が上昇していない可能性も指摘されている。
インフレ率が安定的に低い水準で推移していることを受けて,中央銀行のインドネシア銀行は9月に政策金利を6%に引き下げた。政策金利の引き下げに転じたのは2021年2月以来のことであった。その5カ月前には,米国の利上げ見送り観測のもとルピア安が進んでいたため,2023年10月から維持していた6%の政策金利を6.25%へと引き上げていた。この9月の政策金利の引き下げをきっかけに,内需の喚起を通じた経済成長の促進が期待されている。
不振が続く製造業と輸入規制策の導入名目GDPでみた製造業のシェアは19%であった。第2期ジョコウィ政権が策定した国家中期開発計画では,2024年までにその比率を21%まで引き上げることを目標に掲げていたが,2022年に18.3%まで落ち込んだ後,そのシェアは上昇しつつあるもののコロナ禍前の水準(19.7%)を回復していない。この減少の背景には,石油・ガス産出量の減少に伴う石油製品製造業の長期的衰退がある。さらに,輸送用機械や繊維・衣服といった労働集約的産業でも成長率に回復がみられず,それらの名目GDP比でみたシェアは徐々に下がり続けている。
こうしたGDPに占める製造業部門のシェアの低下を象徴するように,5月には老舗の製靴会社バタ社が販売のみに集中するとして工場を閉鎖し,10月には繊維産業大手スリテックス社の破産が報じられた。あわせて,製造業企業の不振の原因は中国からの繊維製品などの違法輸入の増加にあるとして,メディアでは政府の対策を問題視する指摘が相次いだ。
インドネシアでは国内産業保護を目的とした輸入規制策がとられてきたが,2022年には,それまでの品目ごとの制限から一括管理への移行を目的に,商品バランス制度(大統領令2022年第32号)が導入された。その細則のひとつとして商業相令2023年第36号が定められ,2024年3月以降は輸入規制を強化していた。ただし,この規制に伴う物流の停滞といった問題の発生を受けて,6月には規制を緩和している(商業相令2024年第8号)。
この緩和が違法輸入の急増を招いたとして批判の対象となったが,他方で,政府は別途,輸入規制策を進めた。7月には,繊維製品を一例に,ある国の輸出統計とインドネシアの輸入統計との間で,金額に大きな違いがみられる点を根拠に違法輸入の疑いを指摘し,年末までの時限的措置として輸入品を監視するタスクフォースを結成している(商業相決定2024年第932号)。その直後に制定された財務相令では,繊維製品などの輸入に対する緊急輸入制限措置を導入した(財務相令2024年第48号・第49号)。このような輸入規制策は,短期的には国内産業の保護につながるものの,長期的には競争力の低下をもたらしうるため,国内製造業のさらなる不振を招く可能性を検証する必要があるだろう。
新政権発足直後の経済政策10月の大統領就任直後から,プラボウォは選挙公約で掲げた8項目の最優先プログラムに沿った政策を進めている。そのプログラムとは,(1)学校などでの無料の昼食・牛乳提供,(2)無料健康診断の提供と結核撲滅,良質な病院建設,(3)食料自給を目的とした農地の生産性向上,(4)優秀な一貫校建設と学校改修,(5)貧困削減のための社会福祉制度の継続と拡張,(6)公務員・国軍・警察の給与引き上げ,(7)村や郡のインフラ整備と現金直接給付策の継続,安価で衛生的な住宅提供,(8)歳入庁設立と歳入増,である。これらのプログラムを具体化するなかで,就任後の100日間にプラボウォが積極的に推し進めたのが,無料栄養食の提供と低所得者向け300万戸住宅建設プログラム,そして食料自給策であった。
無料栄養食プログラムは,発育阻害(スタンティング)の根絶や貧困削減を目的としたものである。受給対象予定者は幼児から高校生,妊婦および授乳中の母親の計8290万人にのぼり,その完全実施にあたって必要となる予算は400兆ルピアとも見積もられている。これは2024年国家予算の14%に相当する。2025年国家予算では同プログラムのために71兆ルピアが計上されており,2025年1月6日,26州の幼稚園児から高校生までの60万人を対象に正式に開始した。当初の予定では,2025年末にかけて1500万人へと拡張していくことになっている。
300万戸住宅建設プログラムも貧困削減策のひとつに位置づけられる。政府は,低価格で衛生的な住宅が不足しているとして,毎年,農村部で200万戸,都市部で100万戸の住宅建設や改築を通じて,低所得者向けに供給すると説明している。プラボウォはこのプログラムのタスクフォース長に,実弟で実業家のハシム・ジョヨハディクスモを任命して海外との交渉にもあたらせており,2025年1月8日にはカタールとの間で覚書が調印され,政府間協力による国有地での100万戸の住宅建設計画が発表された。また,2025年国家予算では低利住宅ローンプログラムなどの低所得者向け住宅取得支援策に35兆ルピアの予算が計上されている。
食料自給策は食料安全保障という視点から重視されている政策である。政府は2025年予算に15兆ルピアを計上しており,これらは農地の改良や新規開拓に充てられる予定である。プラボウォは当初,その就任演説の発言でもみられたように,4,5年以内の食料自給を目指していた。しかし,11月にブラジルで開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席した際に,2027年までの達成へと前倒しを発表した。これを受けて12月,政府は食用の塩および砂糖とコメ,飼料用トウモロコシの2025年の輸入停止を決定している。今後5年間で,パプアなどでの農園の開発(フード・エステート)を通じてコメやサトウキビの生産が進められるとみられている。
このように政権発足と同時に,選挙公約を反映した政策が円滑に進められているのは,事前に周到な移行準備が行われていたためであった。グリンドラ党の政権移行チームの財政担当だったトーマス・ジワンドノは,4月に財務省との協議を開始し,7月には財務副大臣に任命されて2025年国家予算案作成にも加わっていた。こうしてプラボウォ新政権の意向も反映されて策定された2025年予算には,インフラ整備を積極的に推進したジョコウィ政権とは異なり,上述した貧困削減策に加えて,教育や健康といった人的資本の重視と国防・治安の増強といった特徴がみられる。
2025年予算をみると,優先プログラムに沿って,学校改修や優秀な一貫校の建設に22兆ルピアが,そして結核対策や無料健康診断,病院改善に13兆ルピアが計上されている。また,省庁別にみると,国防省は前年予算比19.4%増の166兆3000億ルピアが配分された一方,インフラ整備を担当する公共事業省は同マイナス24.7%の111兆ルピアとなった。過去3年間で72兆5000億ルピアの予算が計上され,8月にはジョコウィ大統領(当時)が初閣議を開催した新首都予定地ヌサンタラの建設も,2025年予算では1430億ルピアの配分にとどまっている。
国家財政法のもと,政府はGDP比3%を超えた財政赤字が発生するような予算は組めないため,最優先プログラムに沿った政策の実施にあたってのプラボウォ政権の課題は,歳入を確保することである。2021年に成立した租税規則調和法により,本来であれば付加価値税を遅くとも2025年1月1日までに11%から12%へと引き上げることになっていたが,世論の反発や購買力の一層の低下に対する懸念などから,直前の12月31日になって増税は奢侈税の対象となっている品目に限定されることになった。これにより2025年の歳入は当初予算から70兆ルピア以上減るともみられている。最優先プログラムが実施される一方で,政府は公務員の出張制限といった予算見直しに追われ始めており,今後も財政面では難しい舵取りが続くとみられる。
最低賃金の大幅引き上げ11月29日,プラボウォ大統領は2025年の最低賃金は平均して前年比6.5%増に決定したと発表した。その後,州ごとに決定された最低賃金をみると,4州を除くすべての州で6.5%の引き上げとなっている。2024年の州別最低賃金は前年比平均3.6%増であったため,大幅な引き上げとなった。この引き上げをもたらしたのは,10月31日に下された雇用創出法の一部に対する条件付き違憲判決であった。この憲法裁判決に伴い,業種別最低賃金が復活したほか,最低賃金の計算式の解釈に変更が加えられた。この結果,政労使の交渉過程において,従来よりも最低賃金を引き上げる余地が生まれた。
今回,経営者側からの批判にもかかわらず,政府が労働者側の要求に近いかたちで最低賃金の大幅引き上げを決定した背景には,中間所得層の減少や購買力低下からくる経済成長の鈍化に対する懸念がある。新型コロナ感染症の拡大をきっかけに,雇用環境の悪化から中間層の購買力が低下し,2018年には人口の23%を占めていた中間所得層は2023年に18.8%にまで減少したとみられている。
先にみたように,8月の時点で失業率はすでにコロナ禍前の水準を下回っている。しかし,就業者の多くは自営業者や無給・家族労働者といったインフォーマル部門に吸収されている。フォーマル部門の代表的雇用である製造業部門に注目すると,被雇用者数(推計値)は2019年の水準を回復していない。こうした状況下で,最低賃金が大幅に引き上げられた場合は,かえってフォーマル部門での雇用が阻害される懸念がある。10月の憲法裁判決では今後2年以内に新しく労働力法を制定することも求められている。最低賃金水準の決定方法を含めて,労働市場に大きな影響を及ぼすことになる新法案の行方が注目される。
(東方)
プラボウォ新政権の発足後,それまでのジョコウィ政権との外交スタイルの連続性および違いが浮き彫りになっている。ジョコウィは,経済開発に資する実利主義外交を一貫してとり,スシロ・バンバン・ユドヨノ元大統領が得意としていた「価値観外交」には取り組まなかった。また,多国間外交よりも二国間関係の深化に力を入れた。これらの姿勢は,ジョコウィが任期中に一度も国連総会に直接出席して演説を行わなかったことに象徴されている。
同時に,ジョコウィは外務省が掲げるASEAN重視外交の方針を尊重した。ジョコウィ外交の「顔」としてルトノ・マルスディ外相が主導するなか,インドネシアはASEANを通じてミャンマーのクーデタ問題をはじめとした域内問題に対処した。また,東南アジアが大国間の抗争の場とならないよう,ASEANを中心とするインド太平洋秩序の構想,「インド太平洋に関するASEANアウトルック」(AOIP)を打ち出した。
プラボウォの外交路線は,インドネシアの伝統的な自主・積極の外交原則に基づいており,すべての国と友好関係を築こうとする点ではジョコウィ政権と変わらないものとみられる。大統領選挙の後,プラボウォは中国と日本を皮切りに,マレーシア,シンガポール,サウジアラビア,フランス,トルコ,ロシア,オーストラリアなどを歴訪した。大統領就任後もプラボウォは休むことなく外遊を続け,11月上旬には初の外遊先として中国とアメリカを訪問した。その後,ペルーでのアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議とブラジルでのG20首脳会議に参加し,さらにイギリスとアラブ首長国連邦も訪れた。世界の多極化が進むなかで,プラボウォは勢力バランスに配慮しながら地域ごとの大国を訪問しており,その全方位外交の姿勢がうかがえる。また,プラボウォが重視する食料安全保障や貧困撲滅などの国内政策は,外国の技術協力や投資によって実現可能なものである。そのため,国内政策に寄与する外交関係を重視する実利主義もジョコウィ政権から継続されるとみられる。
積極外交を主導するプラボウォの外交姿勢プラボウォの外交スタイルがジョコウィと最も異なっている点は,外交政策を自ら主導しようとする姿勢である。この特徴は,プラボウォが国防相を務めていた頃からすでに表れていた。2023年6月,シンガポールで開催された英国国際戦略研究所アジア安全保障会議(シャングリラ会合)に出席したプラボウォは,ロシアのウクライナ侵攻に対して住民投票の実施などを内容とする「調停案」を提示し,西側諸国から批判を浴びた。翌年のシャングリラ会合では,イスラエルとハマスの間の恒久的な停戦を呼びかけるとともに,ガザへ平和維持部隊を派遣する用意があることを表明した。
プラボウォ自らが外交を主導する姿勢は,外交人事にも現れた。先述のように新政権の外相には,プラボウォの個人秘書を務め,グリンドラ党の元副党首であり陸軍軍人としての経歴をもつスギオノが任命された。これは,外相が外務省官僚から選ばれるという長期にわたる慣例を破るものであった。外相に自らの側近を配置したことからは,外交政策を外務省に委ねる意思はないと考えられる。
大統領主導の外交は,スギオノ外相が政権発足直後の10月24日に行ったBRICSへの加盟意向表明にもみてとれる。もともとインドネシアは,2023年のBRICS会合では加盟を見送っており,また,経済協力開発機構(OECD)加盟に注力する姿勢を世界に発信していたため,これはジョコウィの外交方針からの大きな方向転換となった。ジョコウィは,BRICS加盟がインドネシアの外交的中立性を損なう印象を与えることを懸念していたとみられる。しかし,プラボウォはOECDとBRICSの両方に加盟することに問題はないと主張し,両機構の国々と安定した関係を維持できると判断しているようである。9月に正式に加盟申請が行われた環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(TPP11/CPTPP)に関しても,プラボウォは加盟プロセスを進める意向を示している。
しかし,プラボウォと外務省の連携が十分とれていないことで問題も生じた。プラボウォが11月に訪中した際に締結された共同海洋開発協定には,「重複する海域での共同開発について重要な共通理解に達した」という文言が含まれていた。これは,中国が南シナ海における領有権を主張する際に用いる「九段線」を法的に認めるものであるとして批判を浴びた。この協定の発表直後,外務省は,南シナ海をめぐる外交姿勢がこれまでと変わらず「九段線」を認めていないこと,同協定が北ナトゥナ海域における主権や管轄権に影響を及ぼさないことを表明する必要に迫られた。この出来事を受け,対中関係におけるASEANの連携を重視してきたジョコウィ政権と比べて,プラボウォ外交においてASEANの優先度が低下する可能性を懸念する見方もある。
経済連携協定の拡大8月,インドネシア政府は,日本との経済連携協定(EPA)の改正議定書に署名したことを発表した。インドネシアからみた貿易・投資額に占める日本のシェアは,ジョコウィ政権期にも減少し続けており,2025年に発効するとみられているこの改正の影響が注目される。今回の改正では,日本から輸出される自動車および鉄鋼・同製品に対する関税が減免される一方,インドネシアから輸出される農水産品等にも同様の措置が適用される。これに加えて,インドネシア人看護師・介護福祉士候補者の受入条件の改善や,電子商取引章の追加や知的財産章の拡充といった変更も新たに加えられた。このEPAはインドネシアにとって最初の二国間貿易協定であり,その見直し交渉が始まったのは2015年のことであった。ジョコウィ政権はその10年を費やして今回の正式署名に至ったことになる。
プラボウォ政権にとって最初の二国間貿易協定となったのが,カナダとの包括的経済連携協定(CEPA)であった。11月,ペルーで開催されたAPECの場で,プラボウォとカナダのジャスティン・トルドー首相が会談し,ジョコウィ政権下で進んでいた同協定の交渉について,実質的に妥結に至ったことを発表していた。これを受けて,12月,政府は交渉妥結に関する共同声明に署名した。この協定は2026年中に発効するとみられている。なお,ペルーとのCEPAの交渉も進んでいたことから,同じくAPECの場での実質合意が期待されていたものの,実現に至らなかった。
他方で,ジョコウィ大統領の任期満了前の合意を目指していたEUとのCEPAは,妥結には至らなかった。2024年現在,インドネシアはEUの一般特恵関税制度(GSP)の対象国となっており,インドネシアのEUへの輸出の3割が低関税の恩恵を受けているとみられる。2022年に再び上位中所得国入りしたインドネシアは,近い将来その対象から外される可能性がある。EUとの間でCEPAを結ぶことは,プラボウォ政権にとって重要な課題として引き継がれることになった。
(水野・東方)
プラボウォ新政権は好調な滑り出しをみせた。就任後100日間のパフォーマンスを評価する大手紙『コンパス』の世論調査で,プラボウォの支持率が79.3%を記録していることはそれを示している。しかし,実際にプラボウォが国民の期待に応えられるかどうかが明らかになるのはこれからである。特に,目玉政策の無料栄養食プログラムは,導入直後に早くも課題が浮上している。このプログラムに必要な多額の予算を捻出するため,他の政策分野の予算が大幅に削減されている。膨張した内閣が効率的な行政運営を行えず,予算削減の影響で十分な行政サービスを提供できなければ,国民の信頼や期待が徐々に失われていく恐れがある。
国家予算に関しては次の2点が注目される。まず,歳入不足への対応が喫緊の課題である。先述したように2025年1月から付加価値税を引き上げる予定であったが,対象が奢侈品に限定されてしまったため,歳入不足が予想される。次に,投資管理機関ダナンタラの運用がある。財政赤字比率3%という規則にしばられずに公的投資を増やす方策として,プラボウォ政権は法律の改正を通じて2月,ダナンタラの設立にこぎつけた。当初の資本金は1000兆ルピア(約600億ドル)であるが,今後は総額9000億ドルとも言われる国営企業の資産を運用することになるとみられる。その資金はプラボウォ政権が重視する分野に重点的に投資されると見込まれており,運用にあたってのガバナンスや透明性の確保が大きな課題となる。
対外関係においては,対中関係や対米関係の具体的な方向性が明らかになっていくだろう。ドナルド・トランプ政権の発足に伴い,アメリカが保護主義の傾向を深めていく一方で,中国はジョコウィ政権期と同様に,インドネシアの経済開発ニーズに応えるかたちで経済外交を展開している。プラボウォの訪中時に締結された総額100億ドル規模の投資契約はそれを示している。インドネシアが2025年1月に正式にBRICSに加盟したこともあり,すでに強固な中国との経済関係は今後一層深まるものと考えられる。その一方で,外交的中立性の維持と,北ナトゥナ海域での主権保護をどのようにバランスよく調整していくかが課題となるだろう。
(水野:地域研究センター)
(東方:地域研究センター)
1月 | |
3日 | 中央ジャカルタ選挙監視委員会,ギブラン副大統領候補がカーフリーデーにて牛乳を配布したことが州知事令に違反したとの判断を示す。 |
7日 | 第3回大統領選挙公開討論会,実施。 |
8日 | 東ジャカルタ地裁,ルフット・パンジャイタン海事・投資担当調整相に告訴されていた活動家に無罪判決。 |
8日 | 国防相,仏製ラファール戦闘機18機の購入契約に署名し,2022年に発注した計42機の契約を完了。 |
10日 | 闘争民主党51周年式典,開催。ジョコウィ大統領は欠席。 |
21日 | 第4回大統領選挙公開討論会,実施。 |
31日 | 副大統領候補のマフッド,政治・法務・治安担当調整相を辞職。 |
31日 | 全国各地の大学教員が,大統領の選挙プロセスへの介入に対して抗議活動を実施。 |
2月 | |
14日 | 大統領選・議会選の投票実施。 |
21日 | 大統領,内閣改造を行い,ハディ・チャハヤント農地・空間計画相を政治・法務・治安担当調整相に,アグス・ハリムルティ・ユドヨノ民主主義者党党首を農地・空間計画相/国家土地庁長官に任命。 |
28日 | 大統領,プラボウォ国防相に国軍名誉大将(四つ星)の称号を授与。 |
29日 | 憲法裁,議会選の阻止条項4%に合理的根拠がないとして,2029年以降の議会選に向けて選挙法の改正を命じる判決を下す。 |
3月 | |
20日 | 総選挙委員会,大統領選と議会選の結果を発表。それぞれプラボウォ=ギブラン組と闘争民主党の得票数が最多となる。 |
20日 | プラボウォの勝利に対し中国の習近平国家主席が祝辞。バイデン米大統領からも祝電(22日)。 |
21日 | アニス=ムハイミン組,大統領選の結果に対する異議申し立てを憲法裁に提出。23日にはガンジャル=マフッド組も同様の申し立てを提出。 |
25日 | 国軍,パプアでの拷問行為がソーシャルメディア上で拡散したことを受けて謝罪。26日に13人の国軍兵士が容疑者として認定される。 |
27日 | 憲法裁,大統領選の結果に関する審理を開始。 |
28日 | 国会,ジャカルタ特別州法案を可決。 |
4月 | |
1日 | プラボウォ,中国の招待を受けて訪中し,習近平国家主席と会談。3日,訪日して岸田首相と会談。4日にマレーシアでアンワル首相と会談。 |
10日 | 国軍,パプア武装勢力の呼称を「武装犯罪集団」(KKB)から,以前の「パプア独立運動」(OPM)に戻すと発表。 |
17日 | アップル社CEOのティム・クックが来訪,ジョコウィ大統領と会談。 |
18日 | 中国の王毅外相,来訪。 |
22日 | 憲法裁,大統領選挙結果の異議申し立てを棄却。 |
24日 | 総選挙委員会,プラボウォとギブランの正副大統領当選を確定。 |
24日 | 中銀,政策金利を6.25%に引き上げる。 |
29日 | 憲法裁,議会選挙の結果に関する審理を開始。 |
29日 | シンガポールのリー・シェンロン首相とローレンス・ウォン次期首相が来訪。 |
30日 | マイクロソフト社,インドネシアへの17億ドルの投資を表明。 |
5月 | |
13日 | プラボウォ,アラブ首長国連邦とカタールを訪問(〜15日),各国首脳と会談。 |
18日 | 第10回世界水フォーラムがバリで開催(〜25日)。 |
19日 | スペースX社CEOのイーロン・マスクが世界水フォーラムにあわせて来訪。スターリンクのオペレーション開始。 |
20日 | 大統領,住宅積立制度(Tapera)に関する政令を制定し,適用対象を拡大。 |
21日 | 憲法裁,すべての選挙区に関する開発統一党の異議申し立てを棄却。 |
24日 | 闘争民主党の全国作業会議,開催。 |
29日 | 最高裁,地方首長選挙の出馬年齢要件について「出馬時30歳」を「就任時30歳」とするよう命じる。 |
30日 | 政令第25号により,宗教大衆団体が鉱山事業許可を取得可能に。 |
6月 | |
1日 | プラボウォ,シンガポールで開催のシャングリラ会合で講演。 |
3日 | ヌサンタラ首都庁バンバン・スサントノ長官とドニー・ラハジョ副長官が辞任。 |
11日 | プラボウォ,ヨルダンを訪問。12日にはサウジアラビアを訪問。各国首脳と会談。 |
14日 | 政府,オンラインギャンブル撲滅タスクフォースを結成。 |
20日 | 国家データセンター(PDN)がランサムウェア型サイバー攻撃を受ける。 |
24日 | 独BASF社および仏エラメット社による北マルク州のニッケル・コバルト精錬所への共同投資案件が中止。 |
30日 | イスラーム過激派テロ組織ジュマー・イスラミヤ(JI)が解散を宣言。 |
7月 | |
3日 | 現代自動車グループとLGエナジーソリューションの合弁会社HLIグリーンパワー,インドネシア初の電気自動車(EV)用バッテリーセル工場を開所。 |
11日 | 中央ジャカルタ汚職裁,シャフルル前農業相に懲役10年の実刑判決。 |
24日 | プラボウォ,フランスを訪問しマクロン大統領と会談。26日の五輪開会式に参加後,セルビア,トルコ,ロシアを訪問し各国首脳と会談(〜31日)。 |
24日 | ハムザ・ハズ元副大統領が死去。 |
8月 | |
8日 | 商業相,日本との経済連携協定の改定議定書に署名。 |
11日 | ゴルカル党のアイルランガ・ハルタルトが党首を辞任。 |
12日 | 大統領,新首都予定地ヌサンタラで閣議を初開催。 |
15日 | 国家栄養庁の発足。 |
16日 | 大統領,2025年度予算案を国会に提出。 |
17日 | 独立記念式典が新首都予定地ヌサンタラとジャカルタで同時に開催される。 |
19日 | 大統領,内閣改造を実施。バフリル・ラハダリアがエネルギー・鉱物資源相,ロサン・ロスラニが投資相,スプラトマン・アンディ・アグタスが法務・人権相,ダダン・ヒンダヤナが国家栄養庁の長官,ハサン・ナスビが新設の大統領広報官室の室長にそれぞれ就任。 |
19日 | リドワン・カミル,福祉正義党のススウォノとペアを組んでジャカルタ州知事選に出馬することを表明。 |
19日 | プラボウォ,オーストラリアを訪問。アルバニージー首相と会談。 |
20日 | 憲法裁,地方首長選挙の候補者選定方法をめぐり,候補者の年齢要件を出馬時30歳で維持し,政党による地方首長候補者の擁立条件を緩和。 |
20日 | ゴルカル党,第11回党大会を開催。21日にはバフリル・ラハダリアが2024~2029年期の新党首に選出。 |
21日 | 国会立法局,憲法裁の決定に反する地方首長選挙法の改正案で合意。 |
21日 | プラボウォ,パプアニューギニアを訪問。 |
22日 | 全国各地で国会に対して憲法裁判決遵守を求める大規模な抗議デモが発生。国会は地方首長選挙法の改正を中止。 |
23日 | 国民信託党,第6回党大会を開催。ズルキフリ・ハサン党首が2024~2029年期党首を続投。 |
23日 | グリンドラ党,アフマド・ルトフィとタジ・ヤシンのペアを中ジャワ正副州知事候補として擁立。 |
24日 | 民族覚醒党,第6回党大会を開催。ムハイミン・イスカンダル党首が2024~2029年期党首を続投。 |
25日 | 総選挙委員会,憲法裁決定に基づいた総選挙委員会令を制定。 |
26日 | 闘争民主党,アンディカ・プルカサとヘンドラ・プリハディのペアを中ジャワ州正副州知事候補として擁立。 |
28日 | プラモノ・アヌン内閣官房長官とラノ・カルノのペアが闘争民主党に擁立されてジャカルタ正副州知事候補として登録。 |
29日 | インドネシアとオーストラリア,二国間防衛協定に調印。 |
9月 | |
3日 | ローマ教皇が来訪(〜6日)。 |
5日 | プラボウォ,東南アジア5カ国(ブルネイ,ラオス,カンボジア,タイ,マレーシア)を歴訪(〜7日)。 |
9日 | 国民協議会,1967年の暫定国民協議会決定第33号を破棄し,スカルノ元大統領の反逆とインドネシア共産党支持の疑惑を公式に否定。 |
11日 | ジャカルタ都市高速鉄道(MRT)東西線事業フェーズ1の着工式,開催(5月13日に円借款貸付契約に署名)。 |
14日 | インドネシア商工会議所,臨時総会でアニンディア・バクリを新会頭に選出。任期が2026年まで残っていたアルシャド・ラシド前会頭は抗議。 |
18日 | 中銀,政策金利を6%に引き下げ。 |
19日 | 国会,国家省法改正案を可決。 |
21日 | 西パプア民族解放軍,人質として拘束していたニュージーランド人パイロット,フィリップ・メヘルテンスを解放。 |
25日 | 国民協議会,汚職・癒着・縁故主義撲滅に関する国民協議会決定1998年第11号からスハルト元大統領の名前を正式に削除。また,アブドゥルラフマン・ワヒド元大統領の解任に関する国民協議会決定2001年第2号を破棄。 |
25日 | 政府,CPTPPへの加盟手続き開始(9月19日付)を発表。 |
26日 | テルナテ汚職裁判所,北マルク州元知事アブドゥル・ガーニ・カスバに贈収賄で懲役8年の実刑判決。 |
10月 | |
1日 | 2024~2029年期の国会が発足。議長に闘争民主党のプアン・マハラニが再選。 |
2日 | 国民協議会の議長にグリンドラ党のアフマド・ムザニが選出。 |
9日 | 通信・情報相,格安オンライン通販サイトTemuを中小企業保護の目的で制限。 |
16日 | 最高裁,特別全体会議でスナルトを新長官に選出。 |
18日 | 大統領,裁判官の給与を大幅に引き上げる政令第44号を発布。 |
20日 | プラボウォ,大統領に就任。21日,紅白内閣が発足。 |
21日 | 国家経済評議会が設立され,ルフット・パンジャイタンが議長に任命される。 |
21日 | 大統領令第139号により,財務省は大統領直轄となる。 |
21日 | 内閣官房は国家官房に統合され,長官職は大臣級でなくなる。 |
23日 | 中ジャワ州スマラン地方裁,繊維大手スリテックス社の法的破産を宣告。 |
24日 | スギオノ外相,BRICSプラス首脳会議でインドネシアの加盟意向を表明。 |
25日 | プラボウォ大統領,中ジャワ州マゲランの陸軍士官学校に全閣僚を集めて合宿型研修を実施。 |
29日 | 最高検察庁,トーマス・レンボン元商業相を砂糖輸入の汚職疑惑事件に関与したとして容疑者に指定し,身柄を拘束。 |
31日 | 憲法裁,雇用創出法の一部条項に対して条件付き違憲判決。 |
11月 | |
3日 | レウォトビ・ラキラキ山が噴火。9人死亡,1万3000人が避難。 |
4日 | インドネシア海軍,ロシア海軍と初の二国間共同海軍演習を実施(〜8日)。 |
5日 | プラボウォ大統領,バスキ・ハディムルヨノをヌサンタラ首都庁の新長官に任命。 |
5日 | プラボウォ大統領,中小零細企業の不良債権の償却に関する政令を制定。 |
7日 | 財務相,省庁・政府機関の公務出張費を50%削減する通達を発出。 |
9日 | プラボウォ大統領,初の外遊。中国で習近平国家主席と会談し,100億ドル超の投資協定に合意。11日には米国を訪問。トランプ次期米大統領と電話会談を実施。その後,バイデン米大統領とホワイトハウスで会談。 |
11日 | 外務省,中国との海洋協力に触れた共同声明が「九段線」を認めたと解釈されうる懸念に対し,外交方針には変化ないと表明。 |
11日 | プラボウォ大統領の実弟ハシム・ジョヨハディクスモ,アゼルバイジャン・バクーで開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)にインドネシア代表団長および大統領特使として出席。 |
13日 | オーストラリアと二国間軍事演習「クリス・ウーメラ」を実施(〜16日)。 |
15日 | プラボウォ大統領,リマで開催されたAPEC首脳会議(~16日)に出席。カナダのトルドー首相との会談では包括的経済連携協定の交渉妥結を発表。石破首相とも懇談。 |
19日 | プラボウォ大統領,リオデジャネイロで開催されたG20首脳会議に出席。 |
21日 | 2024~2029年期汚職撲滅委員会委員が選出され,セティヨ・ブディヤントが委員長に就任。 |
21日 | プラボウォ大統領,英国を訪問し英国王チャールズ3世と面会。23日にはアラブ首長国連邦を訪問。各国首脳と会談。 |
27日 | 全国で統一地方首長選挙実施。 |
29日 | プラボウォ大統領,2025年最低賃金は平均6.5%増と発表。 |
12月 | |
2日 | 商業相,カナダとの包括的経済連携協定の交渉妥結に関する共同声明に署名。 |
7日 | 中ジャワ州総選挙委員会,中ジャワ州知事選挙でルトフィ=ヤシン組が最多得票を獲得したと発表。 |
8日 | 総選挙委員会,ジャカルタ州知事選挙でプラモノ=カルノ組の得票率は50.07%と発表。 |
16日 | 闘争民主党,14日付でジョコ・ウィドド前大統領とその長男ギブラン,および義子ボビー・ナスティオンの党籍を公式に剥奪したことを発表。 |
18日 | 最高裁,スマラン地方裁の破産判決に対するスリテックス社の控訴を棄却。 |
22日 | 大統領令第202号により国家防衛評議会が設立。 |
22日 | 外務省,20~21日にシリアから合計156人のインドネシア人を退避させたと発表。 |
23日 | 中央ジャカルタ地裁,国営錫会社ティマによる違法採掘や環境破壊を伴う汚職事件に関与した実業家ハーヴィー・モイェスに対し,懲役6年6カ月の実刑判決。 |
24日 | 汚職撲滅委員会,闘争民主党のハスト・クリスティヤント幹事長をハルン・マシク汚職事件の容疑者に指名。 |
31日 | 政府,2025年1月1日からの付加価値税引き上げの対象は奢侈品限定と発表。 |
(注)1)2024年のプラボウォ・スビアント政権の発足に伴い,大規模な省庁の再編が行われた。
2)国家行政院(LAN),国家公文書館(ANRI),国家人事院(BKN),国立図書館,中央統計庁(BPS),国家標準化庁(BSN),原子力監視庁(Bapeten),国家情報庁(BIN),国家コード院,国土地理院,財政開発監督庁(BPKP),食品・薬品監視庁(BPOM),国家情報院(LIN),国家防衛研修所(Lemhanas),文化観光振興庁(Budpar),国家研究革新庁(BRIN)などを含む。2024年8月に国家栄養庁(BGN)が新設された。また,2024年10月の省庁再編に伴い,巡礼実行庁,ダヤ・アナガタ・ヌサンタラ投資運用庁(ダナンタラ),貧困脱出加速化庁,ハラール製品保証運営庁(BPJPH),開発管理・特別捜査庁が新設された。
(注)1)出身組織の略称は以下のとおり。Gerindra:グリンドラ党,Golkar:ゴルカル党,PD:民主主義者党,PKB:民族覚醒党,PDIP:闘争民主党,PAN:国民信託党,PBB:月星党,PSI:インドネシア連帯党。2)2024年10月20日の新政権発足に伴う省庁再編で新設された役職。3)10月20日の新内閣発表時には内閣官房長官職が大臣級ポストに含まれていたが,10月21日に内閣官房が国家官房に統合され,大臣級ポストではなくなった。
(出所)2024年3月20日発表の総選挙委員会決定を元に作成。
(出所)2024年3月20日および8月25日発表の総選挙委員会決定を元に作成。
(注)1)中央統計庁(BPS)による推計値。ただし2020年は人口センサス結果。2)8月時点のBPSによる推計値。3)12月時点での前年比の値。
(出所)BPSのウェブ資料( https://www.bps.go.id/ ),インドネシア銀行(中銀),Statistik dan Keuangan Indonesia,2025年1月,ウェブ版( https://www.bi.go.id/id/statistik/ekonomi-keuangan/seki/Default.aspx ),およびIMF,International Financial Statistics,ウェブ版( https://data.imf.org/regular.aspx?key=61545850 )。
(注)小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。
(出所)BPSのウェブ資料。
(注)小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。1)暫定値。2)速報値。
(出所)表2に同じ。
(注)IMF国際収支マニュアル第6版に基づく。ただし,金融収支の符号の(+)は資本流入,(-)が資本流出を意味する。2024年は暫定値。輸出額・輸入額ともに本船渡条件価格(FOB)での表示。
(出所)中銀,Statistik dan Keuangan Indonesia,2025年1月,ウェブ版。
(注)ASEANは9カ国の合計。EUは27カ国の合計。小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。2024年は暫定値。輸出額・輸入額ともに本船渡条件価格(FOB)での表示。
(出所)表4に同じ。
(注)2021~2023年は決算額。2024年は決算前の執行額。2025年は予算額。小数点以下を四捨五入したため,合計数値が合わないものがある。
(出所)財務省,Nota Keuangan beserta Anggaran Pendapatan dan Belanja Negara Tahun Anggaran 2025,および中銀,Statistik dan Keuangan Indonesia,2025年1月,ウェブ版。