Biwako Journal of Rehabilitation and Health Sciences
Online ISSN : 2758-1799
Print ISSN : 2758-1780
Validation of Factors Associated with National Examination Scores in Physical Therapist Training School Students: A Case-Control Study
Hiroya HondaKenji KanekiyoJun TeraiYasuhiro Maruyama
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2025 Volume 4 Pages 9-16

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Abstract

【はじめに】理学療法士養成校の学生にとって国家試験(国試)の得点は重要な目標の一つであり,その対策には国試得点に関連する因子の特定が必要である.本研究の目的は,専門職大学の理学療法学科学生を対象として,国試得点に関連する因子を具体的な科目および学修行動まで含めて調査し,明らかにすることである.【方法】本研究は,第59回理学療法士国家試験を受験したびわこリハビリテーション専門職大学の理学療法学科学生39名を対象にした教育実践研究であった.目的変数を国試得点(自己採点結果),説明変数を各学年次のGrade point average(GPA),模擬試験点数,専門基礎科目成績得点,各種学修行動とし,学修行動は本学で4年次の1月に実施されたアンケート調査から抽出した.統計解析として,単変量解析にSpearmanの順位相関係数およびPearson相関係数を用い,多変量解析に重回帰分析を用いた.【結果】重回帰分析の結果,国試約2か月前の模擬試験点数,解剖学I成績,「勉強方法が自分に合うか考える」の学修行動が国試得点に関連していた.【考察】本研究により,専門職大学の理学療法学科学生において,模擬試験点数や解剖学の専門基礎科目成績得点,学修方略の工夫に関する学修行動が国試得点に関連する可能性が示唆された.国試得点を向上させるためには,模擬試験や解剖学,学修方略の工夫に関する支援を検討していくことが重要な可能性がある.

Translated Abstract

[Introduction] The purpose of this study was to identify factors related to the national examination for physical therapists among students in physical therapist training schools. [Methods] This was a case-control study of 39 physical therapy students from the Biwako Professional University of Rehabilitation who took the 59th national examination for Physical Therapists. The outcome was the national examination scores (self-scored results), and the exposure factors were the grade point average (GPA), the mock exam scores, the scores in basic specialized subjects, and the learning behavior. [Results] Correlation analysis revealed significant positive correlations between the GPA across all academic years, the mock exam scores taken one and two months before the national examination, and the scores in basic specialized subjects in anatomy, physiology, internal medicine, and orthopedics, and the learning behavior such as “thinking about whether the study method suits me,” “trying to improve my assignments,” and “asking questions to teachers and friends” and the national exam scores. [Discussion] This study suggests that GPA, mock exam scores, scores in basic specialized subjects such as anatomy and physiology, and learning behaviors related to planning, proactivity, and problem-solving may be related to national exam scores for students at physical therapist training schools. In order to improve student’s success rate of the national examination, it is important to promote academic training from the first year onward, emphasize basic specialized subjects such as anatomy and physiology, and encourage effective learning behaviors.

 はじめに

国家試験(以下,国試)の得点は,理学療法士養成校の学生にとって大きな目標の一つであり,卒業時に到達すべき知識面の指標として重要視されている.有効的な国試対策を行うためには国試得点に関連する因子を抽出することが重要であることから,これまでに複数の研究において調査が行われてきた[16].模擬試験に着目した研究では,国試1か月前に実施される模擬試験が国試の結果と関連する可能性が示されており[2],Grade point average(以下,GPA)に関する研究では,全学年を通じて国試結果との関連性が報告されている[4].これらの知見から,模擬試験やGPAは早期から国試の結果を予測し得る指標として活用できることが示唆されており,実際に多くの養成校で注目されている.しかし,大学全入時代を迎え学生の学習意欲などの低下が懸念される我が国の養成校では[7],初年次から積極的な国試対策を行うことで更なる学習意欲低下やストレス状態を惹起する可能性があると指摘されている[8].今後,学生の学習意欲低下やストレス状態の惹起を防ぎながら有効的な国試対策を行うためには,特に注力すべき科目や促すべき学修行動の優先度を明確にすることが重要である.

これまでに理学療法士養成校において,科目に着目して国試との関連性を調査した赤木らの研究では,専門基礎科目群と国試得点との間に強い相関を認めたことが報告されている[5].この報告は,専門基礎科目群に焦点を当てた対策の有用性を示唆する意義深い知見であるが,専門基礎科目群の中の具体的な科目との関連性までは明らかでない.また,学修行動に着目して国試との関連性を調査した北村らの研究では,理学療法士養成校の学生における学習の自己管理(自分自身の教育を管理する意思と能力)が国試と関連していたことが報告されている[3].しかし,我々が調査した限りでは,具体的な学修行動を幅広く調査した研究はほとんどない.国試に関連する具体的な科目や学修行動を明らかにすることで,より焦点を絞った効果的な国試対策が立案できる可能性がある.

加えて,これまでの報告の多くは専門学校や大学を対象としたものであり,教育環境が異なる専門職大学においても同様の傾向が認められるのかは明らかでない.専門基礎科目の教育課程については,専門学校や大学との大きな差異はないため,先行研究と同様の結果が期待される一方,学生の学修行動については専門職大学特有の実践を重視する教育環境(実習の長期化・実務家教員の配置など)[9]が影響する可能性がある.制度発足から数年が経過し,完成年度を迎える専門職大学も出始めた状況下で,専門職大学における国試関連因子を明らかにすることは,今後の教育実践に資する重要な課題である.

本研究の目的は,専門職大学の理学療法学科学生を対象として,国試の得点に関連する因子を具体的な科目および学修行動まで含めて網羅的に調査し,明らかにすることである.

 方法

1. 対象・研究デザイン

本研究デザインは,第59回理学療法士国家試験を受験したびわこリハビリテーション専門職大学(以下,本学)の理学療法学科学生39名(男性22名,女性17名)を対象に,国試に関連する因子を調査した教育実践研究である.専門職大学とは,我が国で2019年4月より制度化された養成校であり,高度な実践力と豊かな創造力を兼ね備えた質の高い専門職業人材を養成する大学であるとされる[9].本対象者の除外基準は,①本研究の参加を辞退した者,②データ欠損および外れ値があった者とした.

2. 調査項目

本研究では,目的変数である国試得点として,第59回理学療法士国家試験の翌日に三輪書店国試模試センターより提示された採点表を基に自己採点した得点を用いた.問題数は午前,午後各100問の計200問であり,合計点は280点,合格点は168点以上であった.

説明変数としては,GPA(1年前期,1年後期,2年前期,2年後期,3年前期,3年後期,4年前期,1年前期から2年前期の変化率,1年前期から3年前期の変化率,1年前期から4年前期の変化率),専門基礎科目成績得点(解剖学I,解剖学II,解剖学III,生理学I,生理学II,運動学I,運動学II,内科学I,内科学II,整形外科学I,整形外科学II,人間発達学,保健医療福祉関連制度論,小児科学,心理学,神経内科学I,神経内科学II,精神医学,薬理学概論),模擬試験点数(国試約2か月前2023年12月14日実施分,国試約1か月前2024年1月18日実施分),各種学修行動であった.専門基礎科目得点は,最終成績得点が用いられた.また,本研究に用いた学修行動は,本学において電子システムツールCampus Planを用いて毎年1月に全学生に対して行われるアンケート調査から抽出された内容であり,本研究では4年次の1月に実施された内容を用いた.本アンケート調査は,「自身の才能は伸ばせる」,「勉強方法が自分に合うか考える」,「勉強時には計画を立てる」,「得意不得意を理解している」,「課題はより良くなるよう努力する」,「学業が大変でもあきらめない」,「図書館を週1回以上利用する」,「教員や友達に質問する」,「教員に安心して相談できる」,「悩みを相談できる人がいる」,「対人関係はうまくいっている」の11項目に対し,1:まったく当てはまらない,2:あまり当てはまらない,3:少し当てはまる,4:とても当てはまる,の4件法を用いて回答されたものであった.

3. 統計解析

Shapiro-Wilk検定を用いてデータが正規分布しているか否か確認した後,国試得点と各調査項目の関連性を調査するために,正規分布に従う連続尺度はPearson相関係数,正規分布に従わない連続尺度および順序尺度はSpearmanの順位相関係数を用いた.その後,国試得点を目的変数,GPA,模擬試験点数,専門基礎科目成績得点,学修行動の各項目の中で相関係数が高く多重共線性を認めない(Variance Inflation Factor3以下)因子を説明変数とした重回帰分析(強制投入法)を実施した.有意水準は5%とし,解析ソフトにはIBM SPSS Statistics version28を使用した.

4. 倫理的配慮

本研究ではOpt-Out式を採用し,研究内容や個人情報の取り扱いなどに関する情報を電子システムにて通知することで,参加辞退の申し出を1か月間受け付けた.本研究は,びわこリハビリテーション専門職大学の研究倫理委員会の承認を経て実施された(BR24006).

 結果

本研究における最終的な解析対象者は34名(男性:18名,女性16名)であった(図1).対象者における国試の得点は,中央値208(四分位範囲:173~219)点であり,合格者32名(82.1%),不合格者7名(17.9%)であった.

図1  本研究のフローチャート

1. 国試得点とGPA,模擬試験点数の関連

国試得点と各学年次のGPAの相関分析の結果,1年前期GPA(r = 0.682, p < 0.001),1年後期GPA(r = 0.705, p < 0.001),2年前期GPA(r = 0.486, p = 0.002),2年後期GPA(r = 0.526, p < 0.001),3年前期GPA(r = 0.473, p = 0.003),3年後期GPA(r = 0.521, p < 0.001),4年前期GPA(r = 0.668, p < 0.001)の調査学年と前・後期全てにおいて有意な正の相関を認め,特に1年後期のGPAの相関係数が高値を示した.また,1年前期から2年前期の変化率には有意な相関は認めなかった一方(r = 0.11, p = 0.947),1年前期から3年前期の変化率(r = −0.461, p = 0.004),1年前期から4年前期の変化率(r = −0.332, p = 0.04)では有意な正の相関を認めた.模擬試験点数においても,国試約2か月前実施分(r = 0.814, p < 0.001),国試約1か月前実施分(r = 0.83, p < 0.001)ともに有意な正の相関を認めた(表1).

表1 国試得点とGPA,模擬試験点数の関連性

項目 結果 相関係数 p値
GPA
 1年前期 2.39 ± 0.39 0.682 <0.001*
 1年後期 2.19 ± 0.48 0.705 <0.001*
 2年前期 2.04 ± 0.42 0.486 0.002*
 2年後期 2.13 ± 0.39 0.526 <0.001*
 3年前期 2.66 ± 0.27 0.473 0.003*
 3年後期 2.79 ± 0.19 0.521 <0.001*
 4年前期 2.36 ± 0.32 0.668 <0.001*
 1年前期から2年前期の変化率 −14.43 ± 12.36 0.11 0.947
 1年前期から3年前期の変化率 12.99 ± 14.14 −0.461 0.004*
 1年前期から4年前期の変化率 −0.65 ± 8.01 −0.332 0.042*
模擬試験点数
 国試約2か月前(2023/12/14)実施分 点 135.9 ± 34.7 0.814 <0.001*
 国試約1か月前(2023/1/18)実施分 点 151.9 ± 34.5 0.83 <0.001*
 国試約2か月前と1か月前の変化率 13.88 ± 15.2 −0.135 0.433

平均値(± 標準偏差),Pearson’s積率相関係数,*有意差あり

2. 国試得点と専門基礎科目成績得点の関連

国試得点と専門基礎科目成績得点の相関分析の結果では,解剖学I(r = 0.767, p < 0.001),解剖学II(r = 0.749, p < 0.001),解剖学III(r = 0.675, p < 0.001),生理学I(r = 0.687, p < 0.001),生理学II(r = 0.569, p < 0.001),運動学I(r = 0.610, p < 0.001),運動学II(r = 0.528, p < 0.001),内科学I(r = 0.469, p = 0.003),内科学II(r = 0.478, p = 0.002),整形外科学I(r = 0.461, p = 0.004),整形外科学II(r = 0.567, p < 0.001),人間発達学(r = 0.362, p = 0.025),小児科学(r = 0.613, p < 0.001),心理学(r = 0.401, p = 0.013),神経内科学I(r = 0.425, p = 0.008),神経内科学II(r = 0.562, p < 0.001),精神医学(r = 0.325, p = 0.046),薬理学概論(r = 0.591, p < 0.001)といった,保健医療福祉関連制度論(r = −0.108, p = 0.52)を除く多くの科目において有意な正の相関を認め,特に解剖学Iの相関係数が高値を示した(表2).

表2 国試得点と専門基礎科目成績得点の関連性

項目 結果 相関係数 p値
解剖学I成績 70(60~77.5) 0.767 <0.001*
解剖学II成績 65(60~80) 0.749 <0.001*
解剖学III成績 75(70~85) 0.675 <0.001*
生理学I成績 85(70~96) 0.687 <0.001*
生理学II成績 80(72.5~84) 0.569 <0.001*
運動学I成績 67(60~76) 0.610 <0.001*
運動学II成績 83(76.5~89) 0.528 <0.001*
内科学I成績 60(60~65.5) 0.469 0.003*
内科学II成績 60(60~64) 0.478 0.002*
整形外科学I成績 68(60~80) 0.461 0.004*
整形外科学II成績 66(60~78) 0.567 <0.001*
人間発達学成績 80(70~86) 0.362 0.025*
保健医療福祉関連制度論成績 78(74.5~83) −0.108 0.520
小児科学成績 68(61~79) 0.613 <0.001*
心理学成績 72(65.5~79.5) 0.401 0.013*
神経内科学I成績 60(60~60) 0.425 0.008*
神経内科学II成績 60(60~60) 0.562 <0.001*
精神医学成績 60(60~65.5) 0.325 0.046*
薬理学概論成績 79(67~87) 0.591 <0.001*

中央値(四分位範囲),Spearman順位相関係数,*有意差あり

3. 国試得点と学修行動の関連

国試得点と学修行動の相関分析では,「勉強方法が自分に合うか考える」(r = 0.578, p = 0.001),「課題はより良くなるよう努力する」(r = 0.565, p = 0.002),「教員や友達に質問する」(r = 0.414, p = 0.029)といった学修行動に有意な正の相関を認めた(表3).

表3 国試得点の学修行動の関連性

項目 結果 相関係数 p値
自身の才能は伸ばせる 3(3~3) 0.108 0.585
勉強方法が自分に合うか考える 3(3~4) 0.578 0.001*
勉強時には計画を立てる 3(2~3.3) 0.344 0.073
得意不得意を理解している 3(2~3) 0.21 0.283
課題はより良くなるよう努力する 3(3~3) 0.565 0.002*
学業が大変でもあきらめない 3(2~3) 0.21 0.283
図書館を週1回以上利用する 2(2~3) 0.028 0.889
教員や友達に質問する 3(3~4) 0.414 0.029*
教員に安心して相談できる 3(3~3.5) 0.347 0.076
悩みを相談できる人がいる 3(3~4) 0.224 0.253
対人関係はうまくいっている 3(3~4) 0.262 0.178

中央値(四分位範囲),Spearman順位相関係数,*有意差あり

1:まったく当てはまらない,2:あまり当てはまらない,3:少し当てはまる,4:とても当てはまる

4. 重回帰分析の結果

国試得点を目的変数,各項目の中で相関係数が高く多重共線性を認めなかった1年後期のGPA,国試約1か月前の模擬試験点数,解剖学Iの成績得点,「勉強方法が自分に合うか考える」の学修行動を説明変数とした重回帰分析(強制投入法)の結果,国試約2か月前の模擬試験点数(β = 0.531, 95%CI = 0.223~0.545, p < 0.001),解剖学Iの成績得点(β = 0.309, 95%CI = 0.164~1.323, p = 0.013),「勉強方法が自分に合うか考える」の学修行動(β = 0.178, 95%CI = 0.337~10.696, p = 0.038)において,国試得点との有意な関連を認めた(表4).

表4 国試得点に関連する因子についての重回帰分析の結果

項目 偏回帰係数 標準偏回帰係数 95%信頼区間 p値 VIF
1年後期GPA 6.001 0.119 −6.667~18.669 0.343 2.350
模擬試験点数
国試約1か月前実施分
0.384 0.531 0.223~0.545 <0.001* 1.841
解剖学I成績 0.744 0.309 0.164~1.323 0.013* 2.149
勉強方法が自分に合うか考える 5.517 0.178 0.337~10.696 0.038* 1.036

*有意差あり,VIF:Variance Inflation Factor

 考察

本研究により,専門職大学の理学療法学科学生において,国試約2か月前の模擬試験点数,解剖学Iの専門基礎科目成績得点,「勉強方法が自分に合うか考える」の学修行動が国試得点と関連することが明らかになった.

1. 国試得点とGPA,模擬試験点数の関連

本研究では,4年間の全学年次GPAや1年前期から3・4年のGPA変化率が国試得点と有意に相関していたが,重回帰分析では関連を認めなかった.これは,GPAが複数科目の成績の総合値であるため,解剖学Ⅰの成績得点や模擬試験点数と重複した情報を有することで,GPA独自の説明力が相対的に低下したためと考えられる.したがって,GPAは学習到達度の全体像を示す有用な指標ではあるものの,国試得点の予測においては,解剖学Ⅰの成績得点や模擬試験点数といったより直接的な指標を重視する必要があると考えられる.

また,本研究では,国試約2か月前の模擬試験点数と国試得点が関連することが明らかとなった.理学療法士養成校などの学生を対象に実力試験や模擬試験と国試の関連性を調査した研究では,特に国試約1か月前に行われる試験が国試得点と強い相関を示すことが報告されており[2,10],本結果は先行研究を支持するものであった.一方で,本研究では国試約2か月前に行われた模擬試験において国試得点と有意な関連を認めており,本結果は成績不良者をより早期に検出し,対策を練る上で重要な知見を示したといえる.

2. 国試得点と専門基礎科目成績得点の関連

本研究では,解剖学Iの科目成績得点が国試得点と関連することが明らかとなった.従来,解剖学や生理学,運動学などの専門基礎科目は,国家試験における出題割合が比較的高く[11],専門科目においてもこれらの基礎的理解が前提となる設問が多い.そのため,結果的に専門基礎科目の知識は合否に直結し得る重要な要素と考えられており,先行研究でも生理学や運動学と国試得点との関連が示唆されている[11, 12].一方,先行研究では解剖学を含むその他の科目成績得点との関連性までは調査しておらず,生理学や運動学以外の専門基礎科目と国試得点の相関まで示した本結果は意義深いといえる.特に解剖学に関しては,短期間での集中戦略よりも間隔を置いた分散戦略,受動的な学習戦略よりも能動的な検索戦略が知識定着に有効であるとの報告もある[13].本結果は,解剖学への着目が有効的な国試対策を検討するうえで重要であることを示唆する意義深い結果であった.

3. 国試得点と学修行動の関連

本研究では,「勉強方法が自分に合うか考える」という学修行動が国試得点と関連することが明らかとなった.一方で,「自身の才能は伸ばせる」,「学業が大変でも諦めない」といった心理的要素や,「教員に安心して相談できる」,「悩みを相談できる人がいる」といった環境的要素は有意な関連を示さなかった.このことは,国試得点の向上には基盤となる心理・環境的要素よりも,学習方略の工夫といった能動的行動の方が重要である可能性を示唆している.学修行動と国試得点の関連性を調査した研究は乏しいが,作業療法士養成校の学生を対象とした増田らの研究では[14],グループ学習や自己学習,反復学習,疑問解決,計画性,気分転換などに精力的に取り組んでいた学生が国試に合格する可能性が高いことが示唆されている.加えて,看護師養成校の学生を対象とした安ヶ原らの研究では[15],主体的な学習態度,思考プロセス,知識の関連付けなどの特徴が国試に強い影響を与える可能性があることが示唆されている.各研究の調査方法は異なるため解釈には注意が必要だが,いずれの報告も学修方略の工夫などの能動的行動の重要性を示唆しており,本結果も妥当であったといえる.「勉強方法が自分に合うか考える」という学修行動を促す方略について,松林らは勉強方法が不明確な学生への対応として,国試問題に即した課題の①遂行(参考図書を用いた自己学習),②発言(グループでの自己学習の共有),③確認(教員による確認とフィードバック)という手順が重要であることを報告している[16].本結果から,有効的な国試対策を立案するうえでは,勉強方法の不明確な学生に対する支援が重要である可能性が示唆された.

本研究の限界点は2つある.1つ目は,対象者数が少なく多変量解析において投入できる説明変数が限定されてしまった点である.本研究では,相関係数が高く多重共線性を認めないものを優先し説明変数に投入したが,今後さらに幅広く国試得点と関連する専門基礎科目成績得点や学修行動を調査するためには,対象者数を増やす必要がある.2つ目は,学生の心理的側面や健康状態の調査まで行うことができなかったことである.初年度の自己肯定感や自己効力感などの心理的側面や,自律神経障害や睡眠障害などの健康状態は,その後の学修行動や科目成績得点,国試得点に影響を与える重要な交絡因子となる可能性があるが,本研究ではそこまで調査することができなかった.そのため,今後は調査項目を更に増やし,交絡因子を十分に調整したうえで検証することが必要である.

 結語

本研究によって,専門職大学の理学療法学科学生における国試得点には,国試約2か月前の模擬試験点数,解剖学Iの科目成績得点,「勉強方法が自分に合うか考える」の学修行動が関連することが明らかになった.これらの結果は,模擬試験や解剖学,学修方略の工夫といった学修行動が国試得点に寄与する可能性を示しており,効果的な国試対策を検討する上で有益な知見となる.今後は,対象者数を増やすとともに,心理的側面や健康状態などの交絡因子を考慮しながら,より精緻に国試得点に関連する要因を明らかにしていくことが望まれる.

 謝辞

本研究を実施するにあたり,調査にご協力いただいたびわこリハビリテーション専門職大学の職員ならびに学生の皆様に深く感謝いたします.

 利益相反

該当する利益相反は存在しない.

 文献
 
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