Acta Phytotaxonomica et Geobotanica
Online ISSN : 2189-7050
Print ISSN : 0001-6799
Compositae of Southeast Asia and Himalayas I
Siro KITAMURA
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1968 Volume 23 Issue 1-2 Pages 1-19

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Abstract

東南アジアおよびヒマラヤのキク科植物の研究のうち,日本に関係の深い植物について,摘要する.ヤマノコギリソウ Achillea alpina L. var. discoidea (PEGEL) KITAMURA が北ベトナム,チヤパに産することがわかった.従来印度支那植物誌ではセイヨウノコギリソウ A. Millefolium L. にあてられていたが,セイヨウノコギリソウは葉が3回羽裂し,葉が2回羽裂するヤマノコギリソウとちがう.セイヨウノコギリソウは,ヨ-ロッパからシベリアに広く分布するが,ヒマラヤでは西からクマオンまであるがネパ-ル以東と東南アジアには野生していない.ヒマラヤのセイヨウノコギリソウは葉に綿毛が多く,日本で時に野生化しているセイヨウノコギリソウとは少し異なる.セイヨウノコギリソウは変異が多いので,綿毛の多いものも同一種に含むべきものと思う.北ベトナムのチヤパは高地で,ヤマノコギリソウのほかにヤマニガナ,ムラサキニガナも日本と同じものがあり,この高地は日華区系の中に含まれるのであろう.然し北ベトナムの低い所は勿論東南アジア区系である.これらは,早田文蔵博士が1917年に当時の仏印で採集された資料にもとずく.ヤマノコギリソウの学名は従来 Achillea sibirica var. discoidea REGEL であったが,ソ聯の APHANASEV (1961) によると,それより古い A. alpina L. (1753) があるので,A. sibirica LEDEB. (1811) は用いられないという.私は A. alpina L. の type は見ていないが,IDC の micro-edition の type 写真で見るとノコギリソウである.Type locality は Siberia であるし,原記載も短いがノコギリソウに一致するので,ノコギリソウの学名に,A. alpina L. を用いるのが正しいと思う.それにもとづいて,ヤマノコギリソウの学名を変更し,また,シュムシュノコギリソウ A. alpina subsp. camtschatica (HEIMERL) KITAMURA,アソノコギリソウ A. alpina subsp. subcartilaginea (HEIMERL) KITAMURA,ホロマンノコギリソウ A. alpina subsp. japonica (HEIMERL) KITAMURA,アカバナノコギリソウ A. alpina subsp. pulchra (KOIDZUMI) KITAMURA その他の学名を更新した.

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© 1968 The Japanese Society for Plant Systematics
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