Journal of The Medical Assoc. South Hokkaido
Online ISSN : 2433-667X
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2026 Volume 9 Issue 1 Pages 52-56

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Abstract

【背景】回復期病棟において低体重(BMI≤18.5kg/m²)はFIM利得の低さと関連し、さらに入院中に体重が減少しやすいため十分なエネルギー摂取量の確保が重要である。一方、低体重患者のエネルギー消費量に加えてどの程度のエネルギー蓄積量(kcal/日)を付加すべきかは未確立である。【目的】低体重患者におけるエネルギー蓄積量とFIM利得について、全国平均を比較対象として検証する。【方法】2024年度に当院回復期病棟へ入院した低体重患者で、NSTの対象となった患者を対象とした。死亡退院や病状の悪化などによる転院の患者を除外した。管理栄養士は早期に栄養評価とプラン作成を行い、栄養介入を開始した。その後NSTが加わり評価・プランの調整を行った。摂取量や体重が安定した段階でNSTは終了したが、管理栄養士によるフォローは退院まで継続した。主要評価項目はFIM利得、副次的評価項目は体重変化などとし、回復期リハビリテーション病棟協会より報告されている全国平均と比較した。なお、エネルギー蓄積量(kcal/日)は管理栄養士が推定したエネルギー摂取量とエネルギー消費量の差として計算した。【結果】対象患者は22人、NST介入日数は平均46.9日、在院日数は平均90.7日であった。NST介入時の平均エネルギー蓄積量は+178kcalで、NST終了時の平均エネルギー蓄積量は+402kcalであった。FIM利得は当院25.9点(95%CI 16.6〜35.3)、全国平均24.8点(95%CI 24.6〜25.0)で有意差はなかった(p=0.81)。体重変化は入院前後で+2.08kg(95%CI 1.14〜3.03)、全国平均は-1.0 kg(95%CI -1.22〜-0.78)で、当院と全国の差は+3.08 kg(95%CI 2.16〜4.00,p<0.01)であった。【結語】回復期病棟の低体重患者はFIM利得が得られにくいが、エネルギー消費量に蓄積量を付加する栄養介入の下で、全国平均と同程度のFIM利得が得られ、体重も改善する可能性がある。蓄積量の目安について、さらなる検証が望まれる。

第78回道南医学会大会一般演題

【要旨】

【目的】回復期リハビリテーション(以下回リハ)病棟において、低体重はFunctional Independence Measure(以下FIM)利得と関連し、Activities of Daily Living(以下ADL)向上を阻害する要因となりうるため、十分なエネルギー摂取量の確保が重要とされている。本研究では、低体重患者に対するエネルギー蓄積量を付加した栄養管理の有用性を検討することを目的とした。【方法】2024年4月から2025年3月に当院回復期リハビリテーション病棟に入院したBMI≤18.5 kg/m²の低体重患者のうち、栄養サポートチーム(以下、NST)の介入を受けた症例を対象とした。評価項目はFIM利得、体重変化、エネルギー蓄積量とした。全国平均との比較には回復期リハビリテーション病棟協会の統計データを用いた。【結果】対象は22例であった。エネルギー蓄積量は+178kcal/日から+402kcal/日に有意に増加した。体重変化は+2.08kgであり、全国平均の−1.00kgと比較して有意に高かった。FIM利得は25.9点で、全国平均の24.8点との有意差は認めなかった。【結論】低体重患者に対するエネルギー蓄積量を付加した栄養管理により、体重増加を得つつ全国平均と同程度のFIM利得が得られる可能性が示唆された。

【はじめに】

回リハ病棟では、低栄養はFIM利得の低さと関連することが報告されており1)-2) 、低体重(BMI≤18.5 kg/m²)や低栄養が機能回復の阻害要因となりうる。さらに、回リハ病棟では入院中に体重が減少しやすいことが指摘されており3) 、機能回復のため十分なエネルギー摂取量の確保が重要である4)-5) 。しかし、目標とすべきエネルギー摂取量の明確な基準は明らかになっておらず、臨床現場で何を目標に、どのように栄養管理すべきか悩むことは少なくない。

リハビリテーションを実施する際の栄養管理の方法として、推定エネルギー消費量に対して、体重増加や除脂肪量増加を目的にエネルギー蓄積量(kcal/日)を付加した目標量を設定することが推奨されている6) 。そこで、当院回リハ病棟の低体重患者におけるエネルギー蓄積量とFIM利得、体重変化(退院時体重−入院時体重)を分析し、全国の全患者平均データとの比較を通じて妥当性を検討した。

【対象と方法】

対象は2024年4月から2025年3月に当院回リハ病棟へ入院した患者のうち、入棟時BMI≤18.5 kg/m²で、NSTの対象となった患者とした。死亡退院または病状悪化による転院を除外した。

評価項目はFIM利得(退院時FIM-入院時FIM)と体重変化(退院時体重-入院時体重)、およびNST介入前後のエネルギー蓄積量の変化とした。エネルギー蓄積量は管理栄養士が推定したエネルギー摂取量とエネルギー消費量の差として算出した。

全国平均との比較には回復期リハビリテーション病棟協会が公表する全患者平均データの統計情報を用いた3) 。対象群のNST前後のエネルギー蓄積量の変化の検証にはWilcoxon符号付順位検定を用い、全国平均との比較にはWelchのt検定を用いた。

【結果】

入院患者は204人で、そのうち低体重患者は45人であった。入院時に経口摂取可能で体重増加が見込まれる患者はNST対象外としており、除外基準に照らし死亡1名と病状悪化による転院3名を除外し、最終的に対象患者は22例であった(図1)。対象群は全国平均と比較して高齢かつ低体重であり、入院時FIMが低かった(表1)。在院日数は平均90.7日、NST介入日数は平均46.9日であった(図2)。

エネルギー蓄積量の平均は+178kcal/日から+402kcal/日に有意に増加した(図3)。体重変化は+2.08kgで、全国平均の-1.00kgと比較し、有意に高かった(図4)。FIM利得は25.9点で、全国平均24.8点との間に有意差は認めなかった(図5)。

【考察】

回リハ病棟の低体重患者に対して、推定エネルギー消費量にエネルギー蓄積量を付加する栄養管理をすることで、体重増加を得つつ、FIM利得を損なわない可能性が示唆された。本研究では全国の全患者平均データとの比較を行っており、低体重患者に限定した比較ではないため、解釈には注意が必要である。一方、今回の対象群は高齢であり、入院時FIMも低かったため、全国の全患者平均よりFIM利得が得られにくい集団であったと思われる7)-8) 。それでも、FIM利得が全国平均に劣らなかった点は臨床的に一定の意義を有する可能性がある。また、体重変化とFIM利得の関連を示唆するものではあるが、直接的な因果関係を示すものではない。NST前後のFIM利得や、筋肉量や脂肪量など体重増加が何を反映しているのかについて追加の分析ができると、栄養管理の効果をより直接的に検証できる可能性があり、今後の課題である。

体重増加に寄与した要因として、推定エネルギー消費量に、エネルギー蓄積量を付加したエネルギー量を、エネルギー摂取量の目標値とする栄養管理を行ったことが挙げられる。さらに、エネルギー摂取量の目標値が明確になることで、より個別性が高く、質の高い栄養管理になった可能性がある。低栄養の患者は食欲低下を訴える患者が多いなどの理由で9) 、目標値までエネルギー摂取できるようにすることは容易ではないが、NSTにおいて多職種で検討したことも、体重増加に寄与したと考える。

一方で、必要以上のエネルギー投与は代謝関連合併症や心不全、リフィーディング症候群などのリスクとなるため、リスク評価とモニタリングが不可欠であり、合併症や個々のリスクを考慮しながらエネルギー蓄積量は最大+750kcal/日を上限目安とすることが推奨されている10) 。今回、NST終了時のエネルギー蓄積量の平均が+402kcal/日であったため、さらに栄養量を付加する余地があったと思われる。

栄養管理の方法として、1日のエネルギー必要量をkcal/kg/dayで算出する方法もあるが、回リハ病棟での栄養管理として適していないと考える。入院期間は数か月に及び、活動量はベッド上生活から歩行生活のレベルへと大きく変化することが少なくないため、体重に一定係数をかけて栄養管理する方法では、ADL変化によるエネルギー消費量の変化を反映できない。

本研究の限界として、単施設の後方視的研究である点が挙げられる。また、疾患構成や低栄養の重症度、訓練量、併存疾患の有無などが体重変化やFIM利得に与える影響について、十分な調整・検討ができていない。これらを踏まえたより個別的で質の高い、かつ安全性を考慮した栄養管理の確立が今後の課題である。さらに、前向き研究や多施設研究により、エネルギー蓄積量の最適範囲や安全性について検証する必要がある。加えて、低体重患者と非低体重患者に同一の栄養管理を行った際の体重変化やFIM利得の差についても、今後の検討課題と考えられる。

【結語】

回リハ病棟の低体重患者において、推定エネルギー消費量にエネルギー蓄積量を付加する栄養介入の下で、体重増加を得つつ、FIM利得を損なわない可能性が示唆された。

エネルギー蓄積量は、早期に+180kcal/日、1か月半程度で+400kcal/日、最大+750kcal/日を当面の目安と考えたい。

【利益相反】

本論文内容に関連する著者の利益相反なし

表1

図1

図2 栄養管理のプロセス

図3 エネルギー蓄積量の変化

図4 入院前後の体重の平均値と変化

図5 入院前後のFIM利得の平均値と変化

【文献】
 
© The Medical Assoc. South Hokkaido
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